乗用型苗植機
【課題】予備苗載台を装着した色々な形態の乗用型苗植機があるが、何れも、機体の前後長を短くし且つ作業性も良いものはなかった。
【解決手段】乗用型走行車輌1の車体カバー41を前部ステップ30aと後部ステップ30bとに分割構成し、後部ステップ30bに左右駆動後輪7の上方を覆うフェンダー部30cと乗降用ステップ30dを一体形成し、前部ステップ30aに操縦ハンドル42の左右両側から前方まで延設された左右通路Aを構成すると共に、機体フレーム4から上方に向けて立設した左右支持フレーム71の上部に各々左右予備苗載台70を設けて、該左右予備苗載台70を機体側面視で乗用型走行車輌1の操縦座席43の前側に配置すると共に、左右予備苗載台70は前後長さを短くした収納状態と前後長さを長くした苗載置作用状態とに変更調節自在に構成した乗用型苗植機。
【解決手段】乗用型走行車輌1の車体カバー41を前部ステップ30aと後部ステップ30bとに分割構成し、後部ステップ30bに左右駆動後輪7の上方を覆うフェンダー部30cと乗降用ステップ30dを一体形成し、前部ステップ30aに操縦ハンドル42の左右両側から前方まで延設された左右通路Aを構成すると共に、機体フレーム4から上方に向けて立設した左右支持フレーム71の上部に各々左右予備苗載台70を設けて、該左右予備苗載台70を機体側面視で乗用型走行車輌1の操縦座席43の前側に配置すると共に、左右予備苗載台70は前後長さを短くした収納状態と前後長さを長くした苗載置作用状態とに変更調節自在に構成した乗用型苗植機。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、乗用型田植機や乗用型野菜移植機や乗用型イ草移植機等の乗用型苗植機に関するものである。
【背景技術】
【0002】
予備苗載台を装着した色々な形態の乗用型苗植機がある。
【特許文献1】特開平11−178412号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかしながら、予備苗載台を装着した色々な形態の乗用型苗植機があるが、何れも、機体の前後長を短くし且つ作業性も良いものはなかった。
【課題を解決するための手段】
【0004】
請求項1記載の発明は、左右操向駆動前輪6と左右駆動後輪7と操縦座席43と操縦ハンドル42を装備した乗用型走行車輌1にリンク機構44にて苗植装置46を装着した乗用型苗植機において、該乗用型走行車輌1の車体カバー41を前部ステップ30aと後部ステップ30bとに分割構成し、後部ステップ30bに左右駆動後輪7の上方を覆うフェンダー部30cと乗降用ステップ30dを一体形成し、前部ステップ30aに操縦ハンドル42の左右両側から前方まで延設された左右通路Aを構成すると共に、機体フレーム4から上方に向けて立設した左右支持フレーム71の上部に各々左右予備苗載台70を設けて、該左右予備苗載台70を機体側面視で乗用型走行車輌1の操縦座席43の前側に配置すると共に、左右予備苗載台70は前後長さを短くした収納状態と前後長さを長くした苗載置作用状態とに変更調節自在に構成した乗用型苗植機としたものである。
【0005】
従って、乗用型走行車輌1の車体カバー41を前部ステップ30aと後部ステップ30bとに分割構成し、後部ステップ30bに左右駆動後輪7の上方を覆うフェンダー部30cと乗降用ステップ30dを一体形成し、前部ステップ30aに操縦ハンドル42の左右両側から前方まで延設された左右通路Aを構成すると共に、機体フレーム4から上方に向けて立設した左右支持フレーム71の上部に各々左右予備苗載台70を設けて、該左右予備苗載台70を機体側面視で乗用型走行車輌1の操縦座席43の前側に配置すると共に、左右予備苗載台70は前後長さを短くした収納状態と前後長さを長くした苗載置作用状態とに変更調節自在に構成した乗用型苗植機としたので、田植作業時には予備苗載台70を苗載置作用状態にして予備苗の載置及び取り出しが容易にできて良好な田植作業が行なえ、非田植作業時には収納状態にして予備苗載台70があまり邪魔にならず作業性が良い。
【0006】
請求項2記載の発明は、予備苗載台70が、機体側面視で収納状態では乗用型走行車輌1の前部と略々同じ位置で、苗載置作用状態では乗用型走行車輌1の前部から前方に突出する請求項1記載の乗用型苗植機としたものである。
【0007】
従って、請求項1記載の発明の作用に加えて、予備苗載台70の前部が収納状態では乗用型走行車輌1の前部と略々同じ位置なので機体全長が短くなり、トラック等への積み込み効率が良く、然も、納屋等に収納する場合も収納スペースが狭くて済み効率的である。また、予備苗載台70の前部が苗載置作用状態では乗用型走行車輌1の前部から前方に突出するので、機体を畦に着けて畦から予備苗載台70に苗を供給載置する場合に楽な姿勢で行なえて能率的である。
【0008】
請求項3記載の発明は、少なくとも予備苗載台70後部を位置変更して前後長さを短くした収納状態と前後長さを長くした苗載置作用状態とに変更調節される請求項1記載の乗用型苗植機としたものである。
【0009】
従って、請求項1記載の発明の作用に加えて、操縦座席43の前側にある予備苗載台70後部が位置変更できるので、収納状態にすることにより、操縦座席43への乗り降りが容易になる。
【0010】
請求項4記載の発明は、予備苗載台70の前部と後部とが連繋されて同時に位置変更される請求項1乃至請求項3記載の乗用型苗植機としたものである。
従って、請求項1乃至請求項3記載の発明の作用に加えて、予備苗載台70の収納状態と苗載置作用状態との切り換え操作が容易で且つ能率良く行なえる。
【発明の効果】
【0011】
上記のように乗用型苗植機を構成することにより、機体の前後長を短くし且つ作業性も良い乗用型苗植機を得ることができて、課題を簡潔な構成で解決することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
以下、図面に示すこの発明の一実施例である乗用型田植機について説明する。
1は乗用型走行車輌であって、機体は、前部に配置されたミッションケース2と機体後部に配置された左右後輪伝動ケース3・3とをフレーム4で連結して構成されている。ミッションケース2の後部にはその左右側面に左右フロントアクスルケース5・5を固着し、該左右フロントアクスルケース5・5の下部には左右操向駆動前輪6・6が設けられている。
【0013】
7・7は左右駆動後輪であって、各々上記左右後輪伝動ケース3・3外側に軸架されている。
8はエンジンであって、フレーム4上部に搭載され、該エンジン8より機体前部のミッションケース2に動力が伝えられ、ミッションケース2より前輪デフ機構を介して左右フロントアクスルケース5・5内の伝動軸にて左右操向駆動前輪6・6に動力を伝動し、ミッションケース2の後端壁からは後輪駆動軸9が突出して設けられている。
【0014】
10はフレーム4上部に固着された後輪駆動分配ケースであって、上記後輪駆動軸9の後端部を軸支し、この後輪駆動分配ケース10から前記左右後輪伝動ケース3・3に駆動力が伝達されて、左右駆動後輪7・7が駆動回転される構成になっている。
【0015】
尚、ミッションケース2内には、主変速レバー40にてエンジン8の回転駆動力が変速される主変速機構と前輪用デフ機構とが内蔵されている。
41はFRPにて成型された車体カバーであって、エンジン8の周囲を覆うエンジンカバー部41aと前記エンジン8の前方及び左右側方に設けられたステップ30とハンドルポスト部42aの下部を覆う前部カバー41bとにより構成され、各々が機体上に固定されている。尚、ステップ30は、後述の主クラッチペダル53aや左右ブレーキペダル53L・53Rの貫通孔部にて前部ステップ30aと後部ステップ30bとに分割構成されており、後部ステップ30bには左右駆動後輪7・7の上方を覆うフェンダー部30cと乗降用ステップ30dが一体形成されている。そして、ステップ30は操縦ハンドル42の左右両側から前方まで延設されて左右通路A・Aを構成している。
【0016】
43は操縦座席であって、エンジンカバー部41aの上部に装着されている。
44は上部リンクと下部リンクとにより構成されるリンク機構であって、その基端部は、フレーム4の左右後部より上方に延設された支持フレーム45に枢着され、後端部は、苗植装置46をローリング自在に支持するローリング軸47が設けられた縦枠48に枢着されている。
【0017】
49は油圧シリンダー装置であって、シリンダーの基部はフレーム4に枢着され、ピストンの先端が上部リンクに枢着されている。
前部カバー41bの上面は、各種表示装置やメータ類が設けられた操作パネルになっている。そして、前部カバー41bの左側部には前記主変速レバー40と機体前方若しくは側方から操作できる手動クラッチレバー50が設けられ、前部カバー41bの右側部には植付クラッチの操作及び苗植装置46の上下操作を行う操作レバー52とが設けられている。尚、手動クラッチレバー50は、後述の主クラッチペダル53aとミッションケース2内のブレーキと連繋しており、イ方向に操作すると、主クラッチが切れて車輪にブレーキがかかるように構成されている。この手動クラッチレバー50は、機体の畦越え時やトラックへの積込時等に操縦者が機体から降りて操作できるので、安全に機体の畦越え時やトラックへの積込が行なえる。また、この手動クラッチレバー50は、機体に乗った状態(操縦座席43に操縦者が着座した状態)でも操作できるので、とっさの時に、この手動クラッチレバー50を操作して機体を止めることができる。
【0018】
53aは該前部カバー41bの左側方に設けられた主クラッチペダル、53L・53Rは左右ブレーキペダルである。
苗植装置46は、前記縦枠48のローリング軸47にローリング自在に装着されたフレームを兼ねる植付伝動ケース54と、該植付伝動ケース54に設けられた下部支持部材55及び上部支持部材56に支持されて機体左右方向に往復動する苗載台57と、植付伝動ケース54の後端部に装着され前記苗載台57の下端より1株分づつの苗を分割して圃場に植え付ける4つの苗植付け装置58…と、植付伝動ケース54の下部にその後部が軸59にて枢支されてその前部が上下揺動自在に装着された整地体である3つの整地フロート60a・60b・60c等にて構成されている。尚、下部支持部材55には、苗植付け装置58…が苗載台57の下端より苗を一株づつ分離する苗分割口が設けられている。
【0019】
61は中央の整地フロート60cの前部上面と植付伝動ケース54との間に設けられた連繋ワイヤであって、その他端は乗用型走行車輌1側に設けられた油圧バルブに連繋されており、整地フロート60cの前部が外力にて適正範囲以上に持ち上げられた時にはミッションケース2の左側面に装着された油圧ポンプにてミッションケース2内から汲み出された圧油を油圧シリンダー49に送り込んでピストンを突出させリンク機構44を上動させて苗植装置46を所定位置まで上昇せしめ、また、整地フロート60cの前部が適正範囲以上に下がった時には油圧シリンダー49内の圧油をミッションケース2内に戻してリンク機構44を下動させて苗植装置46を所定位置まで下降せしめ、そして、整地フロート60cの前部が適正範囲にあるとき(苗植装置46が適正な所定位置にある時)には油圧シリンダー49内の圧油の出入りを止めて苗植装置46を一定位置に保持せしめるべく設けられている。
【0020】
前部カバー41bの右側方より突出して操縦ハンドル42の右下側に設けられた操作レバー52は、ミッションケース2内に設けられたPTOクラッチを操作して苗植装置46への動力を入切り操作できるように構成されていると共に、油圧バルブ38を操作して手動にて苗植装置46を上下動できるように構成されている。即ち、操作レバー52を「固定」位置にすると、PTOクラッチが切れ苗植装置46の作動が停止し且つ油圧バルブ38が油圧シリンダー49内の圧油の出入りを止めて苗植装置46を一定位置に保持せしめる位置に切換えられ苗植装置46は上昇も下降もしない。そして、操作レバー52を後方に操作して「下」位置にすると、PTOクラッチは切りで苗植装置46の作動は停止したままであるが油圧バルブ38は整地フロート60cの上下動にて切換えられる自動制御状態となる。そして、更に、操作レバー52を「入」位置にすると、PTOクラッチが入り苗植装置46が駆動され且つ油圧バルブ38は整地フロート60cの上下動にて切換えられる自動制御状態となる。逆に、操作レバー52を前方に操作して「上」位置にすると、PTOクラッチが切れ苗植装置46の作動が停止し且つ油圧バルブ38が強制的に苗植装置46を上昇する側に切換えられ、苗植装置46が上昇される。
【0021】
62は左右操向駆動前輪6・6の伝動系中の前輪デフ機構のデフロックペダルである。
63は前部カバー41bの前面下部に設けられた前照灯である。
70・70は左右予備苗載台であって、機体フレームより左右方向に延出してその先端部から上方に向けて立設した左右支持フレーム71・71の上部に各々2つづつ設けられている。この左右予備苗載台70・70は同様の構成であるので、左予備苗載台70について詳述する。
【0022】
先ず、左支持フレーム71の上部に予備苗載台70のフレーム72がボルト73にて固定されている。フレーム72は、機体前後方向に設けられた前後方向板72aと該前後方向板72aに側部が溶接固着された苗載せ面板72bとにより構成されている。苗載せ面板72bの裏面には2本の回動枢支ピン74・74の上部が溶接固着されており、該回動枢支ピン74・74の各々の下部には回動アーム75・75が水平回動自在に枢着されている。そして、各回動アーム75には各々2つの長孔76・76が設けられており、苗箱前後受け枠77・77の基端部に設けた係合ピン78が図3及び図4に示すように下方より嵌入して係合している。この苗箱前後受け枠77・77は、各々苗載せ面板72bの前後壁に設けた孔79…を貫通して設けられており、その先端は上方に向けて折り曲げて立ち上がった形状になっている。80は苗箱側部受け枠であって、苗載せ面板72bの側部にその基部が溶接固着されており、苗箱前後受け枠77と同様にその先端は上方に向けて折り曲げて立ち上がった形状になっている。従って、苗箱前後受け枠77・77は、作業者が持って押し引きすることによって、各回動アーム75・75が回動して、図3及び図4に仮想線に示す苗箱載置作用状態と実線に示す収納状態とに切り換えれる構成になっている。尚、図1に示すように、苗箱前後受け枠77・77を収納状態にした場合には、機体側面視で、その前端は前後方向が乗用型走行車輌1の前端と同じか若干乗用型走行車輌1の前端よりも後方になる位置構成になっており、苗箱前後受け枠77・77を苗箱載置作用状態にした場合には、機体側面視で、その前端は前後方向が乗用型走行車輌1の前端よりも前方に突出する構成になっている。
【0023】
図5は苗箱前後受け枠77・77を苗箱載置作用状態にして左予備苗載台70に苗箱を載置した状態を示し、苗箱の底面は苗載せ面板72b上に載置されて支持されており、苗箱の前後移動は苗箱前後受け枠77・77の折り曲げて立ち上がった部分で支持され、苗箱の左右移動は苗箱側部受け枠80の折り曲げて立ち上がった部分と左支持フレーム71で支持されて、苗箱は予備苗載台70に安定良く載置される。
【0024】
尚、右予備苗載台70は、上記左予備苗載台70と左右対象の同様の構成である。
次に、植付伝動ケース54より後方に向けて延出した2つの縦伝動ケース54a・54aの各後端部の左右に各々装着された苗植付け装置58・58の駆動構成を説明すると、縦伝動ケース54aに設けられた駆動軸90はその後端部がケースの後端壁に設けたベアリング91にて支持されて設けられており、駆動軸90上には従動クラッチ爪92aが一体に構成されたベベルギヤ92と従動クラッチ爪93aが一体に構成されたベベルギヤ93とが遊転自在に設けられていると共に、該従動クラッチ爪92aに係合する駆動クラッチ爪94aが一体に構成された可動クラッチ体94と従動クラッチ爪93aに係合する駆動クラッチ爪95aが一体に構成された可動クラッチ体95とがスプライン嵌合して駆動軸90の軸方向のみに摺動自在に設けられている。そして、可動クラッチ体94と可動クラッチ体95との間には圧縮バネ96が装着されており、常時は駆動軸90の回転駆動力が可動クラッチ体94と可動クラッチ体95とを介してベベルギヤ92とベベルギヤ93とに伝動されるようになっている。一方、左右苗植付け装置58・58を駆動する左右苗植付け駆動軸97・97が縦伝動ケース54aの後端部の左右両側に各々ベアリング98・98にて回転自在に支持され、該左右苗植付け駆動軸97・97に固着して設けられたベベルギヤ99・99が各々前記ベベルギヤ92とベベルギヤ93に噛みあっている。
【0025】
100は前記可動クラッチ体94と可動クラッチ体95とを操作するシフタであって、その中央部に縦伝動ケース54aに支持されて回転操作されるシフタ軸101の下端が固着され、その中央から延出した2つの先端部には各々下方に向けて操作ピン102・102が設けられており、2つ操作ピン102・102は各々可動クラッチ体94の係合溝94bと可動クラッチ体95の係合溝95bに係合している。
【0026】
然して、シフタ100の図6に示す位置では、駆動軸90の回転駆動力が可動クラッチ体94と可動クラッチ体95とを介してベベルギヤ92とベベルギヤ93とに伝動され、左右苗植付け駆動軸97・97は回転し左右苗植付け装置58・58は苗植付作動する。
【0027】
そして、図7に示すようにシフタ100を操作すると、可動クラッチ体94が移動してクラッチ爪92a・94aの係合が外れて、ベベルギヤ92への伝動は断たれる。従って、駆動軸90の回転駆動力がベベルギヤ93のみに伝動され、右苗植付け駆動軸97のみが回転し右苗植付け装置58のみ苗植付作動する。逆に、図8に示すようにシフタ100を操作すると、可動クラッチ体95が移動してクラッチ爪93a・95aの係合が外れて、ベベルギヤ93への伝動は断たれる。従って、駆動軸90の回転駆動力がベベルギヤ92のみに伝動され、左苗植付け駆動軸97のみが回転し左苗植付け装置58のみ苗植付作動する。そして、図9に示すようにシフタ100を更に回動操作すると、可動クラッチ体94と可動クラッチ体95とが共に移動してクラッチ爪92a・94a及びクラッチ爪93a・95aの係合が両方外れて、ベベルギヤ92とベベルギヤ93への伝動は断たれる。従って、駆動軸90の回転駆動力は何れの苗植付け駆動軸97・97へも伝達されなくなって左右苗植付け装置58・58は共に停止する。
【0028】
以上のような各苗植付け装置58…への駆動構成となっているので、必要に応じて1条単位で苗植付け装置58の駆動を停止することができ、畦際での端数条植え作業が容易に行なえる。
【0029】
図10から図13に示す実施例は、上記のシフタ100に代えてカム形状のシフタ120を用いた例を示す。即ち、この例では、可動クラッチ体94と可動クラッチ体95との間に引っ張りスプリングを入れて、可動クラッチ体94と可動クラッチ体95と接近するように付勢しておき、その可動クラッチ体94と可動クラッチ体95との間にカム形状のシフタ120を介在させたものである。
【0030】
図10に示すシフタ120位置では、可動クラッチ体94と可動クラッチ体95とが共に近づく方向に移動してクラッチ爪92a・94a及びクラッチ爪93a・95aの係合が両方外れて、ベベルギヤ92とベベルギヤ93への伝動は断たれる。従って、駆動軸90の回転駆動力は何れの苗植付け駆動軸97・97へも伝達されなくなって左右苗植付け装置58・58は共に停止する。
【0031】
図11に示すシフタ120位置では、シフタ120の凸状カム120aが可動クラッチ体94のみを押してクラッチ爪92a・94aのみが係合し、ベベルギヤ92への伝動のみが行なわれる。従って、駆動軸90の回転駆動力は左苗植付け駆動軸97へ伝達されて左苗植付け装置58のみが苗植付作動する。
【0032】
図12に示すシフタ120位置では、シフタ120の凸状カム120aと120bが可動クラッチ体94と可動クラッチ体95とを各々押して、クラッチ爪92a・94a及びクラッチ爪93a・95aが共に係合し、ベベルギヤ92・93両方への伝動が行なわれる。従って、駆動軸90の回転駆動力は左右苗植付け駆動軸97・97へ伝達されて左右苗植付け装置58が苗植付作動する。
【0033】
図13に示すシフタ120位置では、シフタ120の凸状カム120bのみが可動クラッチ体95を押して、クラッチ爪93a・95aにみが係合し、ベベルギヤ93への伝動のみが行なわれる。従って、駆動軸90の回転駆動力は右苗植付け駆動軸97へのみ伝達されて右苗植付け装置58のみが苗植付作動する。
【0034】
図14はあゆみ連結部材130を示し、端部に嵌合穴部131を有する連結片132と該嵌合穴部131に嵌入する嵌入部133を有する連結片134とに分割構成されており、両連結片132・134には同じピッチで上下方向に貫通穴135…が設けられている。そして、両連結片132・134の外端部には、一般的なあゆみ150の穴部151に嵌合する形状の段部136・136が形成されている。137は係止部材であって、連結片132の嵌合穴部131に連結片134の嵌入部133を嵌入させて、両連結片132・134の貫通穴135を上下方向で合致させた状態で下方より該貫通穴135にその凸部138を貫通させて、連結片132の上面より突出したその凸部138の係合部139に平面視コ字状のストッパ部材140の凹部141を嵌めて、両連結片132・134を一体構成にすることができる。
【0035】
このあゆみ連結部材130を用いて実際に2つのあゆみ150・150で走行車輌(乗用型田植機等)をトラックTから降ろす例を図15により説明する。
先ず、梯子状の2つのあゆみ150・150を土面(路面)とトラックTの荷台との間に掛け渡す。そして、トラックTから降ろす走行車輌1の左右車輪間距離Lに合わせて2つのあゆみ150・150の間隔をあける。次に、左右車輪間距離Lに合わせて間隔をあけた2つのあゆみ150・150の各々の穴部151・151にあゆみ連結部材130の段部136・136が嵌入する長さに両連結片132・134を調節して、両連結片132・134の貫通穴135を上下方向で合致させた状態で下方より係止部材137の凸部138を貫通させて、連結片132の上面より突出したその凸部138の係合部139に平面視コ字状のストッパ部材140の凹部141を嵌めて両連結片132・134を一体構成にした後に、あゆみ連結部材130の段部136・136を2つのあゆみ150・150の各々の穴部151・151に嵌合させる。このようにして、図15に示すように2つのあゆみ連結部材130・130にて2つのあゆみ150・150を上下2か所で連繋する。この状態になると、2つのあゆみ150・150は左右方向の間隔が固定されるので、運転者は安全に2つのあゆみ150・150上を走行して走行車輌(乗用型田植機等)1をトラックTから降ろすことができる。また、走行車輌1をトラックTに積み込む場合も同様にして安全に行なえる。更に、路上と圃場との間に段差や川がある場合に、あゆみを路上と圃場との間に掛け渡して走行車輌1で移動する場合も同様にして安全に行なえる。尚、あゆみ連結部材130の段部136をあゆみ150の穴部151に嵌合させた状態で、図16に示すように段部136の上面があゆみ150の横桟部152の上面と同じか若しくは少し低くなるように段部136を構成しておくと、走行車輌1の車輪が段部136が邪魔にならず安定良く走行でき安全である。
【0036】
上記のように構成された乗用型田植機を水田圃場に入れて、左右予備苗載台70・70の各苗箱前後受け枠77…を引き出して苗箱載置作用状態にして苗箱を載置すると共に、苗載台57に苗を載置して、エンジン8を始動し主変速レバー40を「植付速」位置にして操作レバー52を「入」位置にして各部を駆動し機体を前進せしめれば、苗植装置46は自動的に適正位置に上下制御され田植作業が行われる。
【0037】
そして、苗載台57上の苗が残り少なくなると、操縦者は左右予備苗載台70・70に載置した各苗箱から苗掬板にて苗を取り出して苗載台57に苗を供給して田植え作業を続行する。その後、左右予備苗載台70・70の苗も無くなれば、畦に対して機体が直角になるように乗用型走行車輌1前部を畦に着ければ、左右予備苗載台70・70の各苗箱前後受け枠77…を引き出して苗箱載置作用状態にしてあるので、機体前端より左右予備苗載台70・70前部は前方に突出した状態であるから畦から左右予備苗載台70・70への苗箱供給が楽な姿勢で容易に且つ能率良く行なえる。
【0038】
このようにして田植作業を終えて、機体をトラックに積み込む場合には、左右予備苗載台70・70の各苗箱前後受け枠77…を押し込んで収納状態にすれば、左右予備苗載台70・70は機体側面視で乗用型走行車輌1の前端と同じか若干乗用型走行車輌1の前端よりも引っ込んだ位置になるので、機体全長が短くなって小型のトラック(軽四輪トラック)にも積載が可能となり、また、納屋等に収納する場合も収納面積が狭くてすみ、効率的である。
【図面の簡単な説明】
【0039】
【図1】乗用型田植機の全体側面図である。
【図2】乗用型田植機の簡略全体平面図である。
【図3】左予備苗載台70の斜視図である。
【図4】左予備苗載台70の側面図である。
【図5】左予備苗載台70の作用説明用側面図である。
【図6】縦伝動ケース54aの後部平断面図である。
【図7】縦伝動ケース54aの要部の作用説明用平面図である。
【図8】縦伝動ケース54aの要部の作用説明用平面図である。
【図9】縦伝動ケース54aの要部の作用説明用平面図である。
【図10】縦伝動ケース54aの要部の第2実施例を示す作用説明用平面図である。
【図11】縦伝動ケース54aの要部の第2実施例を示す作用説明用平面図である。
【図12】縦伝動ケース54aの要部の第2実施例を示す作用説明用平面図である。
【図13】縦伝動ケース54aの要部の第2実施例を示す作用説明用平面図である。
【図14】あゆみ連結部材130の作用説明用斜視図である。
【図15】あゆみ連結部材130の使用状態を説明する平面図である。
【図16】あゆみ連結部材130の使用状態を説明する要部拡大斜視図である。
【符号の説明】
【0040】
1 乗用型走行車輌
4 機体フレーム
6 左右操向駆動前輪
7 左右駆動後輪
30a 前部ステップ
30b 後部ステップ
30c フェンダー部
30d 乗降用ステップ
41 車体カバー
42 操縦ハンドル
43 操縦座席
44 リンク機構
46 苗植装置
70 左右予備苗載台
71 左右支持フレーム
A 左右通路
【技術分野】
【0001】
この発明は、乗用型田植機や乗用型野菜移植機や乗用型イ草移植機等の乗用型苗植機に関するものである。
【背景技術】
【0002】
予備苗載台を装着した色々な形態の乗用型苗植機がある。
【特許文献1】特開平11−178412号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかしながら、予備苗載台を装着した色々な形態の乗用型苗植機があるが、何れも、機体の前後長を短くし且つ作業性も良いものはなかった。
【課題を解決するための手段】
【0004】
請求項1記載の発明は、左右操向駆動前輪6と左右駆動後輪7と操縦座席43と操縦ハンドル42を装備した乗用型走行車輌1にリンク機構44にて苗植装置46を装着した乗用型苗植機において、該乗用型走行車輌1の車体カバー41を前部ステップ30aと後部ステップ30bとに分割構成し、後部ステップ30bに左右駆動後輪7の上方を覆うフェンダー部30cと乗降用ステップ30dを一体形成し、前部ステップ30aに操縦ハンドル42の左右両側から前方まで延設された左右通路Aを構成すると共に、機体フレーム4から上方に向けて立設した左右支持フレーム71の上部に各々左右予備苗載台70を設けて、該左右予備苗載台70を機体側面視で乗用型走行車輌1の操縦座席43の前側に配置すると共に、左右予備苗載台70は前後長さを短くした収納状態と前後長さを長くした苗載置作用状態とに変更調節自在に構成した乗用型苗植機としたものである。
【0005】
従って、乗用型走行車輌1の車体カバー41を前部ステップ30aと後部ステップ30bとに分割構成し、後部ステップ30bに左右駆動後輪7の上方を覆うフェンダー部30cと乗降用ステップ30dを一体形成し、前部ステップ30aに操縦ハンドル42の左右両側から前方まで延設された左右通路Aを構成すると共に、機体フレーム4から上方に向けて立設した左右支持フレーム71の上部に各々左右予備苗載台70を設けて、該左右予備苗載台70を機体側面視で乗用型走行車輌1の操縦座席43の前側に配置すると共に、左右予備苗載台70は前後長さを短くした収納状態と前後長さを長くした苗載置作用状態とに変更調節自在に構成した乗用型苗植機としたので、田植作業時には予備苗載台70を苗載置作用状態にして予備苗の載置及び取り出しが容易にできて良好な田植作業が行なえ、非田植作業時には収納状態にして予備苗載台70があまり邪魔にならず作業性が良い。
【0006】
請求項2記載の発明は、予備苗載台70が、機体側面視で収納状態では乗用型走行車輌1の前部と略々同じ位置で、苗載置作用状態では乗用型走行車輌1の前部から前方に突出する請求項1記載の乗用型苗植機としたものである。
【0007】
従って、請求項1記載の発明の作用に加えて、予備苗載台70の前部が収納状態では乗用型走行車輌1の前部と略々同じ位置なので機体全長が短くなり、トラック等への積み込み効率が良く、然も、納屋等に収納する場合も収納スペースが狭くて済み効率的である。また、予備苗載台70の前部が苗載置作用状態では乗用型走行車輌1の前部から前方に突出するので、機体を畦に着けて畦から予備苗載台70に苗を供給載置する場合に楽な姿勢で行なえて能率的である。
【0008】
請求項3記載の発明は、少なくとも予備苗載台70後部を位置変更して前後長さを短くした収納状態と前後長さを長くした苗載置作用状態とに変更調節される請求項1記載の乗用型苗植機としたものである。
【0009】
従って、請求項1記載の発明の作用に加えて、操縦座席43の前側にある予備苗載台70後部が位置変更できるので、収納状態にすることにより、操縦座席43への乗り降りが容易になる。
【0010】
請求項4記載の発明は、予備苗載台70の前部と後部とが連繋されて同時に位置変更される請求項1乃至請求項3記載の乗用型苗植機としたものである。
従って、請求項1乃至請求項3記載の発明の作用に加えて、予備苗載台70の収納状態と苗載置作用状態との切り換え操作が容易で且つ能率良く行なえる。
【発明の効果】
【0011】
上記のように乗用型苗植機を構成することにより、機体の前後長を短くし且つ作業性も良い乗用型苗植機を得ることができて、課題を簡潔な構成で解決することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
以下、図面に示すこの発明の一実施例である乗用型田植機について説明する。
1は乗用型走行車輌であって、機体は、前部に配置されたミッションケース2と機体後部に配置された左右後輪伝動ケース3・3とをフレーム4で連結して構成されている。ミッションケース2の後部にはその左右側面に左右フロントアクスルケース5・5を固着し、該左右フロントアクスルケース5・5の下部には左右操向駆動前輪6・6が設けられている。
【0013】
7・7は左右駆動後輪であって、各々上記左右後輪伝動ケース3・3外側に軸架されている。
8はエンジンであって、フレーム4上部に搭載され、該エンジン8より機体前部のミッションケース2に動力が伝えられ、ミッションケース2より前輪デフ機構を介して左右フロントアクスルケース5・5内の伝動軸にて左右操向駆動前輪6・6に動力を伝動し、ミッションケース2の後端壁からは後輪駆動軸9が突出して設けられている。
【0014】
10はフレーム4上部に固着された後輪駆動分配ケースであって、上記後輪駆動軸9の後端部を軸支し、この後輪駆動分配ケース10から前記左右後輪伝動ケース3・3に駆動力が伝達されて、左右駆動後輪7・7が駆動回転される構成になっている。
【0015】
尚、ミッションケース2内には、主変速レバー40にてエンジン8の回転駆動力が変速される主変速機構と前輪用デフ機構とが内蔵されている。
41はFRPにて成型された車体カバーであって、エンジン8の周囲を覆うエンジンカバー部41aと前記エンジン8の前方及び左右側方に設けられたステップ30とハンドルポスト部42aの下部を覆う前部カバー41bとにより構成され、各々が機体上に固定されている。尚、ステップ30は、後述の主クラッチペダル53aや左右ブレーキペダル53L・53Rの貫通孔部にて前部ステップ30aと後部ステップ30bとに分割構成されており、後部ステップ30bには左右駆動後輪7・7の上方を覆うフェンダー部30cと乗降用ステップ30dが一体形成されている。そして、ステップ30は操縦ハンドル42の左右両側から前方まで延設されて左右通路A・Aを構成している。
【0016】
43は操縦座席であって、エンジンカバー部41aの上部に装着されている。
44は上部リンクと下部リンクとにより構成されるリンク機構であって、その基端部は、フレーム4の左右後部より上方に延設された支持フレーム45に枢着され、後端部は、苗植装置46をローリング自在に支持するローリング軸47が設けられた縦枠48に枢着されている。
【0017】
49は油圧シリンダー装置であって、シリンダーの基部はフレーム4に枢着され、ピストンの先端が上部リンクに枢着されている。
前部カバー41bの上面は、各種表示装置やメータ類が設けられた操作パネルになっている。そして、前部カバー41bの左側部には前記主変速レバー40と機体前方若しくは側方から操作できる手動クラッチレバー50が設けられ、前部カバー41bの右側部には植付クラッチの操作及び苗植装置46の上下操作を行う操作レバー52とが設けられている。尚、手動クラッチレバー50は、後述の主クラッチペダル53aとミッションケース2内のブレーキと連繋しており、イ方向に操作すると、主クラッチが切れて車輪にブレーキがかかるように構成されている。この手動クラッチレバー50は、機体の畦越え時やトラックへの積込時等に操縦者が機体から降りて操作できるので、安全に機体の畦越え時やトラックへの積込が行なえる。また、この手動クラッチレバー50は、機体に乗った状態(操縦座席43に操縦者が着座した状態)でも操作できるので、とっさの時に、この手動クラッチレバー50を操作して機体を止めることができる。
【0018】
53aは該前部カバー41bの左側方に設けられた主クラッチペダル、53L・53Rは左右ブレーキペダルである。
苗植装置46は、前記縦枠48のローリング軸47にローリング自在に装着されたフレームを兼ねる植付伝動ケース54と、該植付伝動ケース54に設けられた下部支持部材55及び上部支持部材56に支持されて機体左右方向に往復動する苗載台57と、植付伝動ケース54の後端部に装着され前記苗載台57の下端より1株分づつの苗を分割して圃場に植え付ける4つの苗植付け装置58…と、植付伝動ケース54の下部にその後部が軸59にて枢支されてその前部が上下揺動自在に装着された整地体である3つの整地フロート60a・60b・60c等にて構成されている。尚、下部支持部材55には、苗植付け装置58…が苗載台57の下端より苗を一株づつ分離する苗分割口が設けられている。
【0019】
61は中央の整地フロート60cの前部上面と植付伝動ケース54との間に設けられた連繋ワイヤであって、その他端は乗用型走行車輌1側に設けられた油圧バルブに連繋されており、整地フロート60cの前部が外力にて適正範囲以上に持ち上げられた時にはミッションケース2の左側面に装着された油圧ポンプにてミッションケース2内から汲み出された圧油を油圧シリンダー49に送り込んでピストンを突出させリンク機構44を上動させて苗植装置46を所定位置まで上昇せしめ、また、整地フロート60cの前部が適正範囲以上に下がった時には油圧シリンダー49内の圧油をミッションケース2内に戻してリンク機構44を下動させて苗植装置46を所定位置まで下降せしめ、そして、整地フロート60cの前部が適正範囲にあるとき(苗植装置46が適正な所定位置にある時)には油圧シリンダー49内の圧油の出入りを止めて苗植装置46を一定位置に保持せしめるべく設けられている。
【0020】
前部カバー41bの右側方より突出して操縦ハンドル42の右下側に設けられた操作レバー52は、ミッションケース2内に設けられたPTOクラッチを操作して苗植装置46への動力を入切り操作できるように構成されていると共に、油圧バルブ38を操作して手動にて苗植装置46を上下動できるように構成されている。即ち、操作レバー52を「固定」位置にすると、PTOクラッチが切れ苗植装置46の作動が停止し且つ油圧バルブ38が油圧シリンダー49内の圧油の出入りを止めて苗植装置46を一定位置に保持せしめる位置に切換えられ苗植装置46は上昇も下降もしない。そして、操作レバー52を後方に操作して「下」位置にすると、PTOクラッチは切りで苗植装置46の作動は停止したままであるが油圧バルブ38は整地フロート60cの上下動にて切換えられる自動制御状態となる。そして、更に、操作レバー52を「入」位置にすると、PTOクラッチが入り苗植装置46が駆動され且つ油圧バルブ38は整地フロート60cの上下動にて切換えられる自動制御状態となる。逆に、操作レバー52を前方に操作して「上」位置にすると、PTOクラッチが切れ苗植装置46の作動が停止し且つ油圧バルブ38が強制的に苗植装置46を上昇する側に切換えられ、苗植装置46が上昇される。
【0021】
62は左右操向駆動前輪6・6の伝動系中の前輪デフ機構のデフロックペダルである。
63は前部カバー41bの前面下部に設けられた前照灯である。
70・70は左右予備苗載台であって、機体フレームより左右方向に延出してその先端部から上方に向けて立設した左右支持フレーム71・71の上部に各々2つづつ設けられている。この左右予備苗載台70・70は同様の構成であるので、左予備苗載台70について詳述する。
【0022】
先ず、左支持フレーム71の上部に予備苗載台70のフレーム72がボルト73にて固定されている。フレーム72は、機体前後方向に設けられた前後方向板72aと該前後方向板72aに側部が溶接固着された苗載せ面板72bとにより構成されている。苗載せ面板72bの裏面には2本の回動枢支ピン74・74の上部が溶接固着されており、該回動枢支ピン74・74の各々の下部には回動アーム75・75が水平回動自在に枢着されている。そして、各回動アーム75には各々2つの長孔76・76が設けられており、苗箱前後受け枠77・77の基端部に設けた係合ピン78が図3及び図4に示すように下方より嵌入して係合している。この苗箱前後受け枠77・77は、各々苗載せ面板72bの前後壁に設けた孔79…を貫通して設けられており、その先端は上方に向けて折り曲げて立ち上がった形状になっている。80は苗箱側部受け枠であって、苗載せ面板72bの側部にその基部が溶接固着されており、苗箱前後受け枠77と同様にその先端は上方に向けて折り曲げて立ち上がった形状になっている。従って、苗箱前後受け枠77・77は、作業者が持って押し引きすることによって、各回動アーム75・75が回動して、図3及び図4に仮想線に示す苗箱載置作用状態と実線に示す収納状態とに切り換えれる構成になっている。尚、図1に示すように、苗箱前後受け枠77・77を収納状態にした場合には、機体側面視で、その前端は前後方向が乗用型走行車輌1の前端と同じか若干乗用型走行車輌1の前端よりも後方になる位置構成になっており、苗箱前後受け枠77・77を苗箱載置作用状態にした場合には、機体側面視で、その前端は前後方向が乗用型走行車輌1の前端よりも前方に突出する構成になっている。
【0023】
図5は苗箱前後受け枠77・77を苗箱載置作用状態にして左予備苗載台70に苗箱を載置した状態を示し、苗箱の底面は苗載せ面板72b上に載置されて支持されており、苗箱の前後移動は苗箱前後受け枠77・77の折り曲げて立ち上がった部分で支持され、苗箱の左右移動は苗箱側部受け枠80の折り曲げて立ち上がった部分と左支持フレーム71で支持されて、苗箱は予備苗載台70に安定良く載置される。
【0024】
尚、右予備苗載台70は、上記左予備苗載台70と左右対象の同様の構成である。
次に、植付伝動ケース54より後方に向けて延出した2つの縦伝動ケース54a・54aの各後端部の左右に各々装着された苗植付け装置58・58の駆動構成を説明すると、縦伝動ケース54aに設けられた駆動軸90はその後端部がケースの後端壁に設けたベアリング91にて支持されて設けられており、駆動軸90上には従動クラッチ爪92aが一体に構成されたベベルギヤ92と従動クラッチ爪93aが一体に構成されたベベルギヤ93とが遊転自在に設けられていると共に、該従動クラッチ爪92aに係合する駆動クラッチ爪94aが一体に構成された可動クラッチ体94と従動クラッチ爪93aに係合する駆動クラッチ爪95aが一体に構成された可動クラッチ体95とがスプライン嵌合して駆動軸90の軸方向のみに摺動自在に設けられている。そして、可動クラッチ体94と可動クラッチ体95との間には圧縮バネ96が装着されており、常時は駆動軸90の回転駆動力が可動クラッチ体94と可動クラッチ体95とを介してベベルギヤ92とベベルギヤ93とに伝動されるようになっている。一方、左右苗植付け装置58・58を駆動する左右苗植付け駆動軸97・97が縦伝動ケース54aの後端部の左右両側に各々ベアリング98・98にて回転自在に支持され、該左右苗植付け駆動軸97・97に固着して設けられたベベルギヤ99・99が各々前記ベベルギヤ92とベベルギヤ93に噛みあっている。
【0025】
100は前記可動クラッチ体94と可動クラッチ体95とを操作するシフタであって、その中央部に縦伝動ケース54aに支持されて回転操作されるシフタ軸101の下端が固着され、その中央から延出した2つの先端部には各々下方に向けて操作ピン102・102が設けられており、2つ操作ピン102・102は各々可動クラッチ体94の係合溝94bと可動クラッチ体95の係合溝95bに係合している。
【0026】
然して、シフタ100の図6に示す位置では、駆動軸90の回転駆動力が可動クラッチ体94と可動クラッチ体95とを介してベベルギヤ92とベベルギヤ93とに伝動され、左右苗植付け駆動軸97・97は回転し左右苗植付け装置58・58は苗植付作動する。
【0027】
そして、図7に示すようにシフタ100を操作すると、可動クラッチ体94が移動してクラッチ爪92a・94aの係合が外れて、ベベルギヤ92への伝動は断たれる。従って、駆動軸90の回転駆動力がベベルギヤ93のみに伝動され、右苗植付け駆動軸97のみが回転し右苗植付け装置58のみ苗植付作動する。逆に、図8に示すようにシフタ100を操作すると、可動クラッチ体95が移動してクラッチ爪93a・95aの係合が外れて、ベベルギヤ93への伝動は断たれる。従って、駆動軸90の回転駆動力がベベルギヤ92のみに伝動され、左苗植付け駆動軸97のみが回転し左苗植付け装置58のみ苗植付作動する。そして、図9に示すようにシフタ100を更に回動操作すると、可動クラッチ体94と可動クラッチ体95とが共に移動してクラッチ爪92a・94a及びクラッチ爪93a・95aの係合が両方外れて、ベベルギヤ92とベベルギヤ93への伝動は断たれる。従って、駆動軸90の回転駆動力は何れの苗植付け駆動軸97・97へも伝達されなくなって左右苗植付け装置58・58は共に停止する。
【0028】
以上のような各苗植付け装置58…への駆動構成となっているので、必要に応じて1条単位で苗植付け装置58の駆動を停止することができ、畦際での端数条植え作業が容易に行なえる。
【0029】
図10から図13に示す実施例は、上記のシフタ100に代えてカム形状のシフタ120を用いた例を示す。即ち、この例では、可動クラッチ体94と可動クラッチ体95との間に引っ張りスプリングを入れて、可動クラッチ体94と可動クラッチ体95と接近するように付勢しておき、その可動クラッチ体94と可動クラッチ体95との間にカム形状のシフタ120を介在させたものである。
【0030】
図10に示すシフタ120位置では、可動クラッチ体94と可動クラッチ体95とが共に近づく方向に移動してクラッチ爪92a・94a及びクラッチ爪93a・95aの係合が両方外れて、ベベルギヤ92とベベルギヤ93への伝動は断たれる。従って、駆動軸90の回転駆動力は何れの苗植付け駆動軸97・97へも伝達されなくなって左右苗植付け装置58・58は共に停止する。
【0031】
図11に示すシフタ120位置では、シフタ120の凸状カム120aが可動クラッチ体94のみを押してクラッチ爪92a・94aのみが係合し、ベベルギヤ92への伝動のみが行なわれる。従って、駆動軸90の回転駆動力は左苗植付け駆動軸97へ伝達されて左苗植付け装置58のみが苗植付作動する。
【0032】
図12に示すシフタ120位置では、シフタ120の凸状カム120aと120bが可動クラッチ体94と可動クラッチ体95とを各々押して、クラッチ爪92a・94a及びクラッチ爪93a・95aが共に係合し、ベベルギヤ92・93両方への伝動が行なわれる。従って、駆動軸90の回転駆動力は左右苗植付け駆動軸97・97へ伝達されて左右苗植付け装置58が苗植付作動する。
【0033】
図13に示すシフタ120位置では、シフタ120の凸状カム120bのみが可動クラッチ体95を押して、クラッチ爪93a・95aにみが係合し、ベベルギヤ93への伝動のみが行なわれる。従って、駆動軸90の回転駆動力は右苗植付け駆動軸97へのみ伝達されて右苗植付け装置58のみが苗植付作動する。
【0034】
図14はあゆみ連結部材130を示し、端部に嵌合穴部131を有する連結片132と該嵌合穴部131に嵌入する嵌入部133を有する連結片134とに分割構成されており、両連結片132・134には同じピッチで上下方向に貫通穴135…が設けられている。そして、両連結片132・134の外端部には、一般的なあゆみ150の穴部151に嵌合する形状の段部136・136が形成されている。137は係止部材であって、連結片132の嵌合穴部131に連結片134の嵌入部133を嵌入させて、両連結片132・134の貫通穴135を上下方向で合致させた状態で下方より該貫通穴135にその凸部138を貫通させて、連結片132の上面より突出したその凸部138の係合部139に平面視コ字状のストッパ部材140の凹部141を嵌めて、両連結片132・134を一体構成にすることができる。
【0035】
このあゆみ連結部材130を用いて実際に2つのあゆみ150・150で走行車輌(乗用型田植機等)をトラックTから降ろす例を図15により説明する。
先ず、梯子状の2つのあゆみ150・150を土面(路面)とトラックTの荷台との間に掛け渡す。そして、トラックTから降ろす走行車輌1の左右車輪間距離Lに合わせて2つのあゆみ150・150の間隔をあける。次に、左右車輪間距離Lに合わせて間隔をあけた2つのあゆみ150・150の各々の穴部151・151にあゆみ連結部材130の段部136・136が嵌入する長さに両連結片132・134を調節して、両連結片132・134の貫通穴135を上下方向で合致させた状態で下方より係止部材137の凸部138を貫通させて、連結片132の上面より突出したその凸部138の係合部139に平面視コ字状のストッパ部材140の凹部141を嵌めて両連結片132・134を一体構成にした後に、あゆみ連結部材130の段部136・136を2つのあゆみ150・150の各々の穴部151・151に嵌合させる。このようにして、図15に示すように2つのあゆみ連結部材130・130にて2つのあゆみ150・150を上下2か所で連繋する。この状態になると、2つのあゆみ150・150は左右方向の間隔が固定されるので、運転者は安全に2つのあゆみ150・150上を走行して走行車輌(乗用型田植機等)1をトラックTから降ろすことができる。また、走行車輌1をトラックTに積み込む場合も同様にして安全に行なえる。更に、路上と圃場との間に段差や川がある場合に、あゆみを路上と圃場との間に掛け渡して走行車輌1で移動する場合も同様にして安全に行なえる。尚、あゆみ連結部材130の段部136をあゆみ150の穴部151に嵌合させた状態で、図16に示すように段部136の上面があゆみ150の横桟部152の上面と同じか若しくは少し低くなるように段部136を構成しておくと、走行車輌1の車輪が段部136が邪魔にならず安定良く走行でき安全である。
【0036】
上記のように構成された乗用型田植機を水田圃場に入れて、左右予備苗載台70・70の各苗箱前後受け枠77…を引き出して苗箱載置作用状態にして苗箱を載置すると共に、苗載台57に苗を載置して、エンジン8を始動し主変速レバー40を「植付速」位置にして操作レバー52を「入」位置にして各部を駆動し機体を前進せしめれば、苗植装置46は自動的に適正位置に上下制御され田植作業が行われる。
【0037】
そして、苗載台57上の苗が残り少なくなると、操縦者は左右予備苗載台70・70に載置した各苗箱から苗掬板にて苗を取り出して苗載台57に苗を供給して田植え作業を続行する。その後、左右予備苗載台70・70の苗も無くなれば、畦に対して機体が直角になるように乗用型走行車輌1前部を畦に着ければ、左右予備苗載台70・70の各苗箱前後受け枠77…を引き出して苗箱載置作用状態にしてあるので、機体前端より左右予備苗載台70・70前部は前方に突出した状態であるから畦から左右予備苗載台70・70への苗箱供給が楽な姿勢で容易に且つ能率良く行なえる。
【0038】
このようにして田植作業を終えて、機体をトラックに積み込む場合には、左右予備苗載台70・70の各苗箱前後受け枠77…を押し込んで収納状態にすれば、左右予備苗載台70・70は機体側面視で乗用型走行車輌1の前端と同じか若干乗用型走行車輌1の前端よりも引っ込んだ位置になるので、機体全長が短くなって小型のトラック(軽四輪トラック)にも積載が可能となり、また、納屋等に収納する場合も収納面積が狭くてすみ、効率的である。
【図面の簡単な説明】
【0039】
【図1】乗用型田植機の全体側面図である。
【図2】乗用型田植機の簡略全体平面図である。
【図3】左予備苗載台70の斜視図である。
【図4】左予備苗載台70の側面図である。
【図5】左予備苗載台70の作用説明用側面図である。
【図6】縦伝動ケース54aの後部平断面図である。
【図7】縦伝動ケース54aの要部の作用説明用平面図である。
【図8】縦伝動ケース54aの要部の作用説明用平面図である。
【図9】縦伝動ケース54aの要部の作用説明用平面図である。
【図10】縦伝動ケース54aの要部の第2実施例を示す作用説明用平面図である。
【図11】縦伝動ケース54aの要部の第2実施例を示す作用説明用平面図である。
【図12】縦伝動ケース54aの要部の第2実施例を示す作用説明用平面図である。
【図13】縦伝動ケース54aの要部の第2実施例を示す作用説明用平面図である。
【図14】あゆみ連結部材130の作用説明用斜視図である。
【図15】あゆみ連結部材130の使用状態を説明する平面図である。
【図16】あゆみ連結部材130の使用状態を説明する要部拡大斜視図である。
【符号の説明】
【0040】
1 乗用型走行車輌
4 機体フレーム
6 左右操向駆動前輪
7 左右駆動後輪
30a 前部ステップ
30b 後部ステップ
30c フェンダー部
30d 乗降用ステップ
41 車体カバー
42 操縦ハンドル
43 操縦座席
44 リンク機構
46 苗植装置
70 左右予備苗載台
71 左右支持フレーム
A 左右通路
【特許請求の範囲】
【請求項1】
左右操向駆動前輪(6)と左右駆動後輪(7)と操縦座席(43)と操縦ハンドル(42)を装備した乗用型走行車輌(1)にリンク機構(44)にて苗植装置(46)を装着した乗用型苗植機において、該乗用型走行車輌(1)の車体カバー(41)を前部ステップ(30a)と後部ステップ(30b)とに分割構成し、後部ステップ(30b)に左右駆動後輪(7)の上方を覆うフェンダー部(30c)と乗降用ステップ(30d)を一体形成し、前部ステップ(30a)に操縦ハンドル(42)の左右両側から前方まで延設された左右通路(A)を構成すると共に、機体フレーム(4)から上方に向けて立設した左右支持フレーム(71)の上部に各々左右予備苗載台(70)を設けて、該左右予備苗載台(70)を機体側面視で乗用型走行車輌(1)の操縦座席(43)の前側に配置すると共に、左右予備苗載台(70)は前後長さを短くした収納状態と前後長さを長くした苗載置作用状態とに変更調節自在に構成したことを特徴とする乗用型苗植機。
【請求項2】
予備苗載台(70)が、機体側面視で収納状態では乗用型走行車輌(1)の前部と略々同じ位置で、苗載置作用状態では乗用型走行車輌(1)の前部から前方に突出することを特徴とする請求項1記載の乗用型苗植機。
【請求項3】
少なくとも予備苗載台(70)後部を位置変更して前後長さを短くした収納状態と前後長さを長くした苗載置作用状態とに変更調節される請求項1記載の乗用型苗植機。
【請求項4】
予備苗載台(70)の前部と後部とが連繋されて同時に位置変更される請求項1乃至請求項3記載の乗用型苗植機。
【請求項1】
左右操向駆動前輪(6)と左右駆動後輪(7)と操縦座席(43)と操縦ハンドル(42)を装備した乗用型走行車輌(1)にリンク機構(44)にて苗植装置(46)を装着した乗用型苗植機において、該乗用型走行車輌(1)の車体カバー(41)を前部ステップ(30a)と後部ステップ(30b)とに分割構成し、後部ステップ(30b)に左右駆動後輪(7)の上方を覆うフェンダー部(30c)と乗降用ステップ(30d)を一体形成し、前部ステップ(30a)に操縦ハンドル(42)の左右両側から前方まで延設された左右通路(A)を構成すると共に、機体フレーム(4)から上方に向けて立設した左右支持フレーム(71)の上部に各々左右予備苗載台(70)を設けて、該左右予備苗載台(70)を機体側面視で乗用型走行車輌(1)の操縦座席(43)の前側に配置すると共に、左右予備苗載台(70)は前後長さを短くした収納状態と前後長さを長くした苗載置作用状態とに変更調節自在に構成したことを特徴とする乗用型苗植機。
【請求項2】
予備苗載台(70)が、機体側面視で収納状態では乗用型走行車輌(1)の前部と略々同じ位置で、苗載置作用状態では乗用型走行車輌(1)の前部から前方に突出することを特徴とする請求項1記載の乗用型苗植機。
【請求項3】
少なくとも予備苗載台(70)後部を位置変更して前後長さを短くした収納状態と前後長さを長くした苗載置作用状態とに変更調節される請求項1記載の乗用型苗植機。
【請求項4】
予備苗載台(70)の前部と後部とが連繋されて同時に位置変更される請求項1乃至請求項3記載の乗用型苗植機。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【公開番号】特開2007−125048(P2007−125048A)
【公開日】平成19年5月24日(2007.5.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−41007(P2007−41007)
【出願日】平成19年2月21日(2007.2.21)
【分割の表示】特願2000−94831(P2000−94831)の分割
【原出願日】平成12年3月30日(2000.3.30)
【出願人】(000000125)井関農機株式会社 (3,813)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成19年5月24日(2007.5.24)
【国際特許分類】
【出願日】平成19年2月21日(2007.2.21)
【分割の表示】特願2000−94831(P2000−94831)の分割
【原出願日】平成12年3月30日(2000.3.30)
【出願人】(000000125)井関農機株式会社 (3,813)
【Fターム(参考)】
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