説明

乗用型茶園管理機

【課題】旋回性及び取り回しの向上を図り、しかも機体バランスを損なうことなくアタッチメントを昇降可能とする乗用型茶園管理機を提供する。
【解決手段】機体11に、機体の前後中心軸に向かって傾斜した傾斜フレーム14を備えるようにすると共に、この傾斜フレームに、アタッチメント30が傾斜フレームの傾斜方向に向かって昇降する昇降装置12を配設し、アタッチメントを上昇させていくのにしたがって機体の前後中心軸に近づけていくようにする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、乗用型茶園管理機に関するものである。
【背景技術】
【0002】
一般に、乗用型茶園管理機は、機体後部に装着されるアタッチメント、例えば、深耕、カルチベータ、サブソイラー、堆肥散布装置、肥料散布装置、防除機等の付け替えによって耕耘、根切り、施肥、防除等の茶園管理作業を1台で可能とするものである。
図3に示されるように、従来、このような乗用型茶園管理機1にあっては、垂直な機体フレーム(縦フレーム)2に沿ってアタッチメント3を昇降可能とする昇降装置4(例えば、油圧シリンダ機構やボールネジ機構を用いたもの)が備えられており、茶畝に沿って移動しながら管理作業を行う状態にあってはアタッチメント3を下降させると共に、畝間での旋回時には、アタッチメント3が茶畝に干渉しないように茶畝よりも高くアタッチメント3を上昇させていた(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
しかしながら、上記した従来の乗用型茶園管理機にあっては、図3に示されるように、茶畝を跨ぎながら走行するため腰高の機体フレームが用いられていると共に、重量があるアタッチメント3を機体後方に張り出し支持した状態で装着している。そのため、アタッチメント3を上昇させても機体全長が一定のため、畝間での旋回性及び取り回しが不充分なことがあった。そのうえ、アタッチメント3を上昇させていくにしたがって機体重心の移動が大きく、機体バランスが崩れやすくなるという虞があった。
そこで、このような問題を解決するために、図4に示されるように、機体後部に装着したアタッチメント3が上昇するにしたがって機体フレーム2に近接させるアーム機構5を備えた構成(例えば、特許文献2参照)が提案されているが、アタッチメント3の上下方向の移動量を確保するためアーム長を長くすると、アタッチメント3を下降させた際に機体後方への張り出し量が増大して取り回しが悪化すると共に機体バランスが損なわれてしまうという問題がある。
【0004】
【特許文献1】特開2002−159211号公報
【特許文献2】特開2002−272230号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
そこで、この発明は、上記した従来技術が有している問題点を解決するためになされたものであって、旋回性及び取り回しの向上を図り、しかも機体バランスを損なうことなくアタッチメントを昇降可能とする乗用型茶園管理機を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するため請求項1に記載の発明は、茶畝を跨ぎながら走行する機体と、前記機体に取り付けられるアタッチメントを昇降させる昇降装置とを備えた乗用型茶園管理機において、
前記機体は、機体の前後中心軸に向かって傾斜した傾斜フレームを有すると共に、前記昇降装置は、前記アタッチメントが前記傾斜フレームの傾斜方向に向かって昇降するように前記傾斜フレームに配設され、前記アタッチメントを上昇させていくのにしたがって前記機体の前後中心軸に近づけていくことを特徴とする。
【0007】
上記目的を達成するため請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の発明の構成に加えて、前記傾斜フレームは、斜交い部材によって支持されていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0008】
請求項1に記載の発明によれば、アタッチメントは、傾斜フレームの長手方向に向かって上昇していくのにしたがって機体の前後中心軸に近づいていく。これにより、アタッチメントを上昇させた際、機体の全長は短縮化されるので旋回性及び取り回しが向上すると共に、重量のあるアタッチメントを上昇させても機体重心の変位が少なくなるので、機体バランスを損なうことなくアタッチメントを昇降可能とする乗用型茶園管理機を提供することができる。
【0009】
請求項2に記載の発明によれば、傾斜フレームは斜交い部材によって支持されるため、アタッチメントを上昇させても機体は変形し難くなる。これにより、請求項1に記載の発明の作用効果に加えて、アタッチメントを上昇させても機体バランスをより良好に保つことができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
アタッチメントを上昇させていくのにしたがって機体の前後中心軸に近づけることによって、旋回性及び取り回しが良好で、しかも機体バランスを損なうことがない乗用型茶園管理機が実現した。
【実施例】
【0011】
以下、本発明の一実施例について図面を用いて説明する。図1は、本発明が適用された乗用型茶園管理機の側面図、図2は、同例における乗用型茶園管理機の内部構造を示した模式図である。
【0012】
本発明が適用された乗用型茶園管理機について説明する。
図1,2に示されるように、乗用型茶園管理機10は、茶畝を跨ぎながら走行可能な機体11と、機体11に取り付けられるアタッチメント30を昇降させる昇降装置12とを備えて構成されている。
【0013】
機体11の前部には、前側フレーム13がほぼ直立した状態で備えられている。また、この機体11の後部には、機体11の前後中心軸Z、つまり機体11の中心に向かって上端部が傾斜した長尺状の傾斜フレーム14が備えられている。これら前側フレーム13と傾斜フレーム14とは、正面視門型に形成されていると共に、傾斜フレーム14の上端部、前側フレーム13の上端部及び傾斜フレーム14の中央部には、側面視コ字状に形成されたフレーム枠体15(図2に図示)が接合した状態で一体的に結合固定されている。なお、このフレーム枠体15は、茶畝の高さよりも上方に位置するように設定がなされている。
【0014】
さらに、傾斜フレーム14とフレーム枠体15との間には、傾斜フレーム14を前方側から支持する左右一対の斜交い部材16が介設されており、機体11の補剛がなされている。そして、図2に示されるように、傾斜フレーム14とフレーム枠体15とによって囲われた空間S内には、作業者が乗車してこの機体10及びアタッチメント30を各種操作するための操作部(図示せず)や各種油圧アクチュエータの油圧供給源及び駆動源17が配置されている。
【0015】
また、前側フレーム13と傾斜フレーム14との下端部間には、機体前後方向に延びた連結フレーム18が機体11の左右両側(但し、図1,2にあっては機体左側のみ図示。以下同様)にそれぞれ等しく連結固定されていると共に、この連結フレーム18に、駆動輪19と従動輪20との間にクローラ21を巻装した油圧式の走行装置22が備えられている。そして、この連結フレーム18上の空間に、油圧アクチュエータの油圧供給源及び駆動源17に油圧や燃料を供給する油圧タンク、燃料タンク等(何れも図示せず)が配設されている。なお、走行装置22は、クローラ21を用いたものに限定されるものではなく、例えば、車輪、レール式等を用いたものであってもよい。
【0016】
ところで、傾斜フレーム14には、機体後方に向かって張り出した状態で取り付けられるアタッチメント30を傾斜フレーム14の傾斜方向(長手方向)に向かって昇降させる左右一対の昇降装置12が配設されている。これらの昇降装置12は、アタッチメント30が、アタッチメント30の左右前端部からそれぞれ機体11側に向けて延びるように設けられた左右一対の係合部31を介して着脱可能、且つ昇降可能に取り付けられ、傾斜フレーム14の傾斜方向と同一方向に延びた断面矩形状の左右一対のガイドレール部12Aと、これらのガイドレール部12Aに取り付けられたアタッチメント30の係合部31に着脱可能に係合する伸縮可能なロッド12B1を介してアタッチメント30を昇降移動させる左右一対の油圧式のアタッチメント昇降用シリンダ12Bとを備えて構成されている。なお、昇降装置12は、油圧シリンダ機構を用いたものに限られたものではなく、例えば、ボールネジ機構、リンク機構等を用いたものであってもよい。
【0017】
アタッチメント30の取り付けは、各ガイドレール部12Aの後方から断面コ字状に形成された係合部31をそれぞれ挟み込ませ、転動可能に配設された複数のコロ32をそれぞれの係合部31の左右側面に支持させることによって行われる。そして、ガイドレール部12Aに取り付けられたアタッチメント30は、アタッチメント昇降用シリンダ12Bのロッド12B1の伸縮動作により、傾斜フレーム14の傾斜方向に向かって昇降移動する。
【0018】
このようにアタッチメント30が取り付けられた乗用型茶園管理機10を用いて茶園管理作業を行う場合、まず、作業者は、機体11を茶畝を跨ぐようにして茶園に乗り入れてから、ロッド12B1が伸張動作するようにアタッチメント昇降用シリンダ12を操作して、アタッチメント30をガイドレール部12A、つまり傾斜フレーム14に沿って所望高さまで下降させる。そして、作業者は、操作部を操作して機体11を茶畝に沿って走行させながらアタッチメント30を用いた茶園管理作業を行う。やがて、機体11が枕地に到達して一列の茶畝の作業が終了すると、作業者は、ロッド12B1が収縮動作するようにアタッチメント昇降用シリンダ12を操作して、アタッチメント30が茶畝に干渉することがない高さまで傾斜フレーム14に沿って上昇させる。すると、アタッチメント30は上昇していくのにしたがって機体11の前後中心軸Zに近づいていく。これにより、所望高さまでアタッチメント30を上昇させても、従来のものよりも機体重心の移動が少なくなると共に機体11の前後長が短縮されるので、作業者は、狭い枕地であっても、アタッチメント30を茶畝に干渉させることなく、しかも非常に安定して機体11を旋回させることができる。そして、機体11を容易に旋回させた作業者は隣の茶畝に移動して茶園管理作業を行う。
【0019】
以上述べたように本発明によれば、機体11の後方に張り出された状態で支持されたアタッチメント30は、昇降装置12のロッド12B1の収縮動作によってガイドレール部12A、つまり傾斜フレーム14の長手方向に向かって上昇していくのにしたがって機体11の前後中心軸Zに近づいていく。これにより、アタッチメント30を上昇させた際、機体11の全長は短縮化されるので旋回性及び取り回しが向上すると共に、重量のあるアタッチメント30を上昇させても機体重心の変位が少なくなるので、機体バランスを損なうことなくアタッチメント30を昇降可能とする乗用型茶園管理機10を提供することができる。
また、傾斜フレーム14は斜交い部材16によって支持されるため、アタッチメント30を上昇させても機体11は変形し難くなる。これにより、アタッチメント30を上昇させても機体バランスをより良好に保つことができるようになる。
【0020】
なお、本発明は、乗用型茶園管理機にのみ適用されるものではなく、例えば、アタッチメントを昇降させて各種作業を行う農業機械、土木建設機械等にも適用することができる。
また、傾斜フレーム14は、機体11を構成する後側メインフレームとは別体として機体11に設けることが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】本発明が適用された乗用型茶園管理機の側面図である。
【図2】同例における乗用型茶園管理機の内部構造を示した模式図である。
【図3】従来の乗用型茶園管理機の側面図である。
【図4】図3とは異なった従来の乗用型茶園管理機の側面図である。
【符号の説明】
【0022】
10 乗用型茶園管理機
11 機体
12 昇降装置
12A ガイドレール部
12B アタッチメント昇降用シリンダ
14 傾斜フレーム
30 アタッチメント
Z 機体前後中心軸

【特許請求の範囲】
【請求項1】
茶畝を跨ぎながら走行する機体と、前記機体に取り付けられるアタッチメントを昇降させる昇降装置とを備えた乗用型茶園管理機において、
前記機体は、機体の前後中心軸に向かって傾斜した傾斜フレームを有すると共に、前記昇降装置は、前記アタッチメントが前記傾斜フレームの傾斜方向に向かって昇降するように前記傾斜フレームに配設され、前記アタッチメントを上昇させていくのにしたがって前記機体の前後中心軸に近づけていくことを特徴とする乗用型茶園管理機。
【請求項2】
前記傾斜フレームは、斜交い部材によって支持されていることを特徴とする請求項1に記載の乗用型茶園管理機。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate


【公開番号】特開2006−67827(P2006−67827A)
【公開日】平成18年3月16日(2006.3.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−252309(P2004−252309)
【出願日】平成16年8月31日(2004.8.31)
【出願人】(000250270)落合刃物工業株式会社 (28)
【Fターム(参考)】