説明

乗用型草刈り機

【課題】ガスボンベを機体の比較的低い位置で安定良く、かつ視界を妨げずに支持し、ガスボンベが他物と接触する可能性を少なくする。
【解決手段】左右各別に正逆転駆動可能な走行用の後輪12と、操向操作可能な左右一対の前輪11とを備えた乗用型草刈り機において、転倒保護フレーム2の横外側に円筒状のガスボンベ5を横倒し姿勢で搭載可能な支持装置3を設け、この支持装置3を、搭載されたガスボンベ5が転倒保護フレーム2の前後にわたって位置し、かつ円筒状のガスボンベ5の中心軸線が平面視で後方側ほど機体左右方向での中心側に近付く傾斜姿勢で搭載されるように構成した。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、左右各別に正逆転駆動可能な走行用後輪と、操向操作可能な左右一対の前輪とを備え、前記後輪と前輪との前後間隔に操縦席を備えるとともに、その操縦席の後部側の左右位置に下端側を固定した門形の転倒保護フレームを備えた乗用型草刈り機に関する。
【背景技術】
【0002】
上記のように左右各別に正逆転駆動可能な走行用後輪と、操向操作可能な左右一対の前輪とを備えた乗用型草刈り機としては、一般にガソリンエンジンを搭載し、その燃料タンクをエンジンボンネット内、もしくは後輪フェンダの下方で後輪フェンダと後輪との間に配設していた(特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2000−351330号公報(段落〔0029〕、図1、図2)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、近年では、ガソリンの代替燃料としてLPガス等の燃料ガスを用いることが試みられている。これはLPガス等の燃料ガスがCO2の低減や燃費節減に役立つと見られているためである。しかしながら、このようにLPガス等の燃料ガスを用いる場合には、大容量のガスボンベを搭載して走行する必要があり、そのようなガスボンベをエンジンボンネット内や後輪フェンダ下に設置することはスペース的に困難である。
そこで、ガスボンベをエンジンボンネット上、もしくは後輪フェンダの上側に配設することも考えられるが、その何れの場合も機体上の比較的高い位置に大きなガスボンベが存在することになるため、機体重心が高くなって機体の安定性を欠いたり、後方視界や側方視界が妨げられる虞がある。
【0005】
本発明の目的は、乗用型草刈り機にガスボンベを搭載するにあたり、ガスボンベを機体の比較的低い位置で安定良く、かつ極力搭乗者の視界の妨げとなりにくい位置に支持するとともに、ガスボンベが他物と接触する可能性を少なくした状態で搭載することのできる乗用型草刈り機を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
〔解決手段1〕
上記課題を解決するために講じた本発明の乗用型草刈り機における技術手段は、請求項1に記載のように、左右各別に正逆転駆動可能な走行用後輪と、操向操作可能な左右一対の前輪とを備え、前記後輪と前輪との前後間隔に操縦席を備えるとともに、その操縦席の後部側の左右位置に下端側を固定した門形の転倒保護フレームを備えた乗用型草刈り機であって、
前記転倒保護フレームの横外側において円筒状のガスボンベを横倒し姿勢で搭載可能な支持装置を設け、
この支持装置を、搭載されたガスボンベが前記転倒保護フレームの前後にわたって位置し、かつ円筒状のガスボンベの中心軸線が平面視で後方側ほど機体左右方向での中心側に近付く傾斜姿勢で搭載されるように構成してあることを特徴とする。
【0007】
〔解決手段1にかかる発明の作用及び効果〕
上記のように、解決手段1にかかる本発明の乗用型草刈り機では、転倒保護フレームの横外側箇所は、機体上ではあっても操縦座席やエンジンボンネットからは外れた比較的低い位置であるため、機体上の空間を有効利用して、低い位置にガスボンベを配置し、機体重心が高くなりすぎることを回避するとともに、側方視界や後方視界を妨げる虞も少ない。そのうえ、搭載位置が低いことによって、ガスボンベの積み降ろしの労力をも低減し得る利点がある。
【0008】
また、前記支持装置は、円筒状のガスボンベの中心軸線が平面視で後方側ほど機体左右方向での中心側に近付くように傾斜した姿勢となるようにガスボンベを取り付けるものであるから、ガスボンベの中心軸線を機体前後方向での中心線に沿うように配設した場合に比べて、ガスボンベの後端側をできるだけ機体後端の旋回軌跡に近付けた状態に配設することができる。
したがって、例えば、機体の後端側が壁際に近接した状態で機体後端側の旋回が行われた場合に、前記ガスボンベが前記旋回軌跡から大きくはみ出すことはなく、近接した壁との接触を避けながら機体を旋回させ、壁際からの離脱を行い易いものであり、壁などの他物と接触する可能性を低減し得る点でも有利である。
【0009】
〔解決手段2〕
本発明の乗用型草刈り機における第2の解決手段は、請求項2の記載のように、転倒保護フレームに支持装置を取り付けてあることを特徴とする。
【0010】
〔解決手段2にかかる発明の作用及び効果〕
上記のように、解決手段2にかかる本発明の乗用型草刈り機では、ガスボンベの支持装置を、もともと頑強な構造体である転倒保護フレームに支持させるようにしているので、支持装置を所定高さに位置させて別途補強材で補強するなどの無用な補強構造を要さず、転倒保護フレーム自体の強度を有効利用して強固に支持することができる。
また、支持装置は、搭載されたガスボンベが転倒保護フレームの前後にわたって位置するように取り付けるものであるから、搭載されたガスボンベは、その前後方向での重心位置近くを転倒保護フレームで支持され、安定良く保持される。
【0011】
〔解決手段3〕
本発明の乗用型草刈り機における第3の解決手段は、請求項3の記載のように、ガスボンベの前後方向での重心位置の近くを転倒保護フレームで支持し、かつ、支持装置が平面視で後輪の上側に重複するように設けられていることを特徴とする。
【0012】
〔解決手段3にかかる発明の作用及び効果〕
上記のように、解決手段3にかかる本発明の乗用型草刈り機では、ガスボンベの前後方向での重心位置の近くを転倒保護フレームで支持し、かつ、支持装置が平面視で後輪の上側に重複するように設けられているので、ガスボンベの重量は後輪の接地点近くに作用する状態となっている。
したがって、ガスボンベのガス容量の変化によって機体の前後バランスに変化を生じる虞が少なく、特に小型の草刈り機である場合に前後バランスが大きく変化して旋回性能が変化するというような問題を生じることもない。
【0013】
〔解決手段4〕
本発明の乗用型草刈り機における第4の解決手段は、請求項4の記載のように、支持装置は後輪の上側を覆う位置にあって機体前後方向に対して平行な姿勢に設けられた支持台を備え、ガスボンベの中心軸線は平面視で前記支持台の左右側縁に対して傾斜していることを特徴とする。
【0014】
〔解決手段4にかかる発明の作用及び効果〕
上記のように、解決手段4にかかる本発明の乗用型草刈り機では、平面視で後方側ほど機体左右方向での中心側に近付くように傾斜させてあるガスボンベの中心軸線は、平面視で支持台の左右側縁に対して傾斜し、その支持台は後輪の上側を覆う位置にあって機体前後方向に対して平行な姿勢に設けてある。
したがって、支持台は後輪に対しても平行な位置関係にあって後輪上方側の保護カバーとなり、かつ後輪の泥除けカバーとしての機能をも兼ね備えることができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】乗用型草刈り機の全体側面図である。
【図2】乗用型草刈り機の全体平面図である。
【図3】乗用型草刈り機の上部側を示す背面図である。
【図4】乗用型草刈り機のガスボンベ搭載箇所付近を示す側面図である。
【図5】支持装置部分を示す分解斜視図である。
【図6】支持装置部分を示す平面図である。
【図7】ガスボンベを示す斜視図である。
【図8】乗用型草刈り機の比較例を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明の実施形態の一例を図面の記載に基づいて説明する。
〔乗用型草刈り機の全体構成〕
図1に、本発明に係る作業車の一例である乗用型草刈り機の全体側面が、また、図2にその全体平面がそれぞれ示されている。この乗用型草刈り機は、左右一対の前輪11および後輪12によって支持された車体フレーム10を備える自走車体1の前後輪間に、バーブレード型のモーア4が昇降自在に吊り下げ支持された、いわゆるミッドマウント仕様に構成されている。
【0017】
自走車体1の後部にはボンネット19内に、燃料供給用の機器をLPガス仕様にした水冷式ガソリンエンジンと同一仕様のものであるエンジン18を収容した原動部14が、前記車体フレーム10の後側フレーム部10R上に配備されているとともに、自走車体1の前後中間部位には、前記前輪11と後輪12との前後方向での間隔内に位置させた状態で操縦席13が配備されている。
前記車体フレーム10における前側フレーム部10Fには、操縦席13の足元に位置するステップ15が搭載装着されるとともに、操縦席13の左右側方にはフェンダ16が配備されている。このフェンダ16は、図2に示すように、後述する支持装置3に搭載されたガスボンベ5との干渉を避けられるように(ガスボンベ5を極力内側に寄せて配備できるように)、左右のフェンダ16の後方外方側の一部が部分的にガスボンベ5の外形に沿う形状に切り欠かれた凹入側縁16aを備えている。
【0018】
前記操縦席13の後部には、車体フレーム10に左右の下端側を固定された門形の転倒保護フレーム2が側面視で略鉛直に立設されている。
この転倒保護フレーム2は、車体フレーム10に下端側を固定された柱状の下部フレーム20と、その下部フレーム20の上端側に接続されるアーチ状の上部フレーム21と、その上部フレーム21を前記下部フレーム20に連結するための接続部材22とで構成されている。
そして、前記上部フレーム21は、前記接続部材22に対して、その接続部材22に備えた揺動支点x周りで起伏可能に取り付けてあり、前記下部フレーム20の延長線上で起立するように固定ボルト23を締め付けて固定した起立姿勢と、固定ボルト23を緩めて後方側へ倒伏させた倒伏姿勢とに姿勢切換可能に構成してある。
この転倒保護フレーム2の折り畳み可能な構成は、樹木の幹回りの草刈り時に転倒保護フレーム2を折り畳むことで、転倒保護フレーム2が張出した枝に引っ掛かかることなく作業を行えるようにするためのものである。
【0019】
前記転倒保護フレーム2の左右横外側方には、後述するガスボンベ5の支持装置3が取り付けてあり、この支持装置3に前記エンジン18への燃料供給用のLPガスを充填したガスボンベ5が搭載されている。このガスボンベ5から取り出されたLPガスがエンジン18の燃料噴射装置(ガス・インジェクション)(図外)に供給され、供給されたLPガスを燃料として前記エンジン18が稼働するように構成してある。
【0020】
左右一対の前輪11はキャスタ式の遊転輪で構成されているとともに、左右一対の後輪12は左右独立して無段変速および正逆転操作可能な駆動輪に構成されている。
したがって、左右の後輪12を等速で共に正転駆動、あるいは逆転駆動することで、前進あるいは後進での直進走行を行うことができ、左右の後輪12に速度差を与えることで任意の方向に操向及び旋回することができるように構成されている。
すなわち、エンジン18の動力を受けて駆動されるアキシャルプランジャ型の左右の静油圧式無段変速装置(図外)を備え、左右の静油圧式無段変速装置の出力で左右の後輪12が駆動されるように構成してあって、かつ、静油圧式無段変速装置の斜板角操作部と操縦席13の左右に前後揺動操作可能に配備された変速レバー17とがリンク連動されている。
したがって、変速レバー17を、その操作領域内で前後方向での中立位置に保持すると静油圧式無段変速装置が中立停止状態となり、変速レバー17を中立位置から前方に操作することで前進変速が、後方に操作することで後進変速が行えるようになっている。
【0021】
このとき、左右の後輪12が、平面視で各後輪12の回転軸芯同士を結ぶ線分の中央位置を旋回中心P1(図2参照)として、左右等速で互いに相反する回転方向に駆動されると、つまり、左右一対の変速レバー17のうちの一方を、その操作領域内で前後方向での中立位置よりも前方側に操作し、前記変速レバー17のうちの他方を、その操作領域内で前記中立位置よりも前記一方の変速レバー17の前方側への操作量と等量だけ後方側に操作すると、自走機体1は前記旋回中心P1周りでピボットターンするように駆動される。
また、左右一対の変速レバー17のうちの一方を、その操作領域内で前後方向での中立位置に保持し、前記変速レバー17のうちの他方を、その操作領域内で前記中立位置よりも前方側もしくは後方側へ操作することにより、左右の後輪12のうちの一方の後輪12の接地点を旋回中心としたピボットターンが行われる。これとは逆に、左右一対の変速レバー17のうちの他方を、その操作領域内で前後方向での中立位置に保持し、前記変速レバー17のうちの他方を、その操作領域内で前記中立位置よりも前方側もしくは後方側へ操作することにより、左右の後輪12のうちの他方の後輪12の接地点を旋回中心としたピボットターンが行われる。
【0022】
前記モーア4は、左右一対の前揺動リンク40aと、左右一対の後揺動リンク40bとで連結したリンク機構40によって車体フレーム10に吊り持ちされている。
このリンク機構40には、前記後揺動リンク40bを一体揺動自在に支持している支軸41に一体に設けた揺動アーム42が連設されている。この揺動アーム42を、車体フレーム10との間に付設されている油圧シリンダ43の伸縮作動に伴って揺動作動させることにより、前記リンク機構40を作動させてモーア4を昇降させ、ゲージ輪44が地面に接地した、もしくは略接地した下降作業状態と、ゲージ輪44を地面から離して車体フレーム10の腹下に格納した上昇非作業状態とに切り換え操作できるように構成してある。
尚、このモーア4は、バーブレード45で切断された刈芝を、自走車体1の後方側に位置させてある排出口(図示せず)から排出するリヤディスチャージ型式のものに構成されている。
【0023】
〔支持装置〕
図1乃至図6に示すように、ガスボンベ5の支持装置3は、転倒保護フレーム2に取り付けられた支持台30と、その支持台30に対してガスボンベ5を搭載状態で固定するための巻き締め固定具31と、ガスボンベ5の前後方向での取付位置を決めるための前後方向位置決め板32と、ガスボンベ5の軸線周りでの位置決めを行うための周方向位置決め体33とを備えて構成されている。
【0024】
前記支持台30は、前記転倒保護フレーム2の下部フレーム20の前後に溶接固定されている取付ブラケット24に対して取付ボルト25を介して固定される取付板30Aと、その取付板30Aの下端に連なって横外方側へ延出された台座板30Bとを備えるとともに、その取付板30Aと前記台座板30Bとにわたって二辺を接触させた状態で溶接連結された三角形状の補強連結板30Cを、前後方向の二箇所に設けて一体に構成してある。
また、前記台座板30Bは、その左右の側縁部分が、自走機体1の前後方向に沿うように、平面視で自走機体1の前後方向の中心線L0にほぼ平行に形成されている。そして、前記台座板30Bの前部は前下がり状に斜め前方側へ延出され、後部は後下がり状に斜め後方側に延出され、その中間部分は自走機体1が水平姿勢であるときに水平面となるように形成してある。
このように構成された台座板30Bは、平面視で後輪12を覆う位置にあり、側面視で後輪の上方側に位置して、後輪12の泥除け部材としての機能をも果たし得るように構成してある。
【0025】
前記台座板30Bの前端側箇所には水平方向に折り返された前向き取付片30Bfが一体に形成されていて、図4及び図5に示されているように、車体フレーム10から横外側方に延出された前支持枠26の上面側にボルト連結されている。
また、台座板30Bの後部側には、台座板30Bの水平部分の下面から下方に向けて垂設された下向き取付片30Brが溶接して固定してあり、その下向き取付片30Brの前面側を、図4及び図5に示されているように、車体フレーム10から横外側方に延出された後支持枠27の後面側に当てつけてボルト連結してある。このとき、前記後支持枠27の上面と前記台座板30Bの水平部分の下面との間には間隙があり、後支持枠27の上面側で台座板30Bの下面側を直接に支持するものではない。
【0026】
前記巻き締め固定具31は、台座板30Bに固定される下部帯材31Aと、その下部帯材31Aの一端側にヒンジ34を介して連結された上部帯材31Bと、前記下部帯材31Aを前記台座板30Bに取り付けるための脚部ブラケット31Cとを備え、かつ、前記下部帯材31A及び上部帯材31Bの前記ヒンジ34で連結された側とは反対側の端部を連結用バックル35で連結固定するように構成されている。
図2及び図6に示すように、前記巻き締め固定具31は、この巻き締め固定具31によって固定されるガスボンベ5の軸線方向が、自走機体1の前後方向の中心線L0に対して平面視で後方側ほど近付くように、ガスボンベ5の中心軸線L1を所定角度θだけ傾斜させて取り付けてある。
【0027】
したがって、この巻き締め固定具31で固定されたガスボンベ5は、自走機体1の前後方向に沿うように設けられた台座板30Bに対しても後方側ほど機体左右方向での中心側に近付くように傾斜させて搭載された状態となっている。
前記巻き締め固定具31によって固定されるガスボンベ5の中心軸線L1が、自走機体1の前後方向の中心線L0に対して、傾斜する前記所定角度θは、5°〜10°程度に設定されている。
この所定角度θは、図2に示すように、自走機体1を前記各後輪12の回転軸芯同士を結ぶ線分mの中央位置に相当する旋回中心P1周りで旋回させた場合における自走機体1の後端箇所の旋回軌跡Rに対する接線L2とほぼ沿う方向に、ガスボンベ5の中心軸線L1が位置することを考慮して設定されたものである。
このとき、ガスボンベ5の前後方向での重心gの位置は、前記転倒保護フレーム2の近くの位置ではあるが、前記各後輪12の回転軸芯同士を結ぶ線分mよりも少し機体後方側に寄った位置にあり、前記旋回軌跡Rに対する接線L2、及びガスボンベ5の中心軸線L1は、その重心gを通る法線nに対して直交する姿勢に設定されている。
【0028】
前記巻き締め固定具31の脚部ブラケット31Cは、台座板30Bに対してボルト連結により固定されるように構成してあり、脚部ブラケット31Cの台座板30Bへの取付板部36に形成されるボルト穴36aは、固定対象のガスボンベ5の中心軸線L1に直交する方向が長径となる長穴によって形成され、台座部30Bに対する巻き締め固定具31の取付姿勢を微調整可能に構成してある。
【0029】
図4乃至図6に示すように、前記台座板30Bの前部寄り箇所には、ガスボンベ5の前後方向での取付位置を決めるための前後方向位置決め板32を固定してある。
この前後方向位置決め板32は、前記巻き締め固定具31の上部帯材31B、31Bを上方側へ開放して、下部帯材31A,31Aの上側にガスボンベ5を搭載した状態で、ガスボンベ5の前端位置を接当させることにより、そのガスボンベ5が巻き締め固定具31の前後方向での適正箇所に搭載された状態であるように位置決めするためのものであり、台座板30Bに溶接して固定してある。
【0030】
前記巻き締め固定具31の後方側の脚部ブラケット31Cには、ガスボンベ5の中心軸線L1周りでの位置決めを行うための周方向位置決め体33が連設されている。
この周方向位置決め体33は、前記後方側の脚部ブラケット31Cの後面側から後方に向けて延出されたチャンネル状の支持体33aとその支持体33aの後端側で上向きに立設されたピン33bとで構成されている。
【0031】
この周方向位置決め体33は、図4乃至図6に示すように、ガスボンベ5の容器本体50を水平方向に向けたとき、後述するガス取り出し口51やリリーフバルブ52が上方側に位置し、容器本体50の内部の液化ガスの液面よりも上側からガスを取り出すことができるように、ガスボンベ5の容器本体50の後端側に突出形成された筒壁部分50Aに形成されている位置決め穴53に前記ピン33bを挿入して、支持装置3に搭載されたガスボンベ5の周方向での位置を正しく定めるためのものである。
【0032】
ガスボンベ5は、容器本体50の胴部が円筒状に形成されたLPガスを充填した市販のボンベであり、その容器本体50の円筒状の胴部を巻き締め固定具31で保持した支持装置3への搭載状態では、前記ガス取り出し口51やリリーフバルブ52が機体後方側に向き、前記ガス取り出し口51に接続した供給ホース54を介してエンジン18の燃料噴射装置(ガス・インジェクション)(図外)に対して燃料となるガスを供給するように構成してある。
【0033】
ガスボンベ5を支持装置3に支持した状態では、ガスボンベ5の上端が操縦席13の上端よりも低い位置にあり、転倒保護フレーム2の下部フレーム20の上端よりも低い位置に位置している。また、ボンネット19の上端に対しても、同程度もしくは低い位置にあるように配設されている。
【0034】
〔比較例〕
図8に、前記支持装置3として、本発明のように、ガスボンベ5の中心軸線L1が、自走機体1の前後方向の中心線L0に対して、平面視で後方側ほど近付くように所定角度θだけ傾斜させて取り付けたものではなく、巻き締め固定具31で固定されたガスボンベ5の中心軸線L1が自走機体1の前後方向の中心線L0に対して、平面視でほぼ平行となる状態で取り付けた場合における自走機体1の後端箇所の旋回軌跡Rと、ガスボンベ5の後端との位置関係を示す。
この図8で表されるように、自走機体1を各後輪12の回転軸芯同士を結ぶ線分の中央位置に相当する旋回中心P1周りで旋回させた場合における自走機体1の後端箇所の旋回軌跡Rに対して、この比較例における構造のものでは、ガスボンベ5の後端が描く旋回軌跡r2が間隔d2だけ離れている。
この間隔d2は、本発明の実施の形態で説明した自走機体1を各後輪12の回転軸芯同士を結ぶ線分の中央位置に相当する旋回中心P1周りで旋回させた場合における自走機体1の後端箇所の旋回軌跡Rと、ガスボンベ5の後端が描く旋回軌跡r1との間隔d1よりもかなり大きなものとなっている(図2参照)。
したがって、この比較例に示す構造では、自走機体1が壁やフェンス、あるいは立木に近接した状態から前記旋回中心P1周りで旋回する場合に、ガスボンベ5の一部が前記壁やフェンス、あるいは立木に接触する可能性が、本発明の実施の形態で説明した構造のものよりも高くなる傾向がある。
【0035】
本発明の実施の形態で説明した構造のものでは、このような比較例に示す構造のものよりも、前記旋回中心P1周りで旋回する場合に、前記壁やフェンス、あるいは立木に接触する可能性が少なくなる点での有利さがある。
【0036】
〔別実施形態の1〕
エンジン18としては、上記実施形態で示したような燃料供給用の機器をLPガス仕様にした水冷式のガソリンエンジンと同一の仕様に構成されたものに限らず、燃料供給用の機器をLPガス仕様にした空冷式のガソリンエンジンと同一仕様にものであってもよい。
【0037】
〔別実施形態の2〕
支持装置3に支持させるガスボンベ5としては、LPガスに限らず、ボンベに充填される形式の任意のガスボンベ5を搭載することができる。
【0038】
〔別実施形態の3〕
前述の実施形態では、支持装置3に搭載されるガスボンベ5を、その中心軸線L1が自走機体1の前後方向の中心線L0に対して、後方側ほど機体左右方向で近付くように傾斜させ、支持装置3の台座板30Bは、その左右の側縁部分が、自走機体1の前後方向の中心線L0にほぼ平行に形成されているものを示したが、これに限らず、支持装置3の台座板30Bの側縁部分も後方側ほど機体左右方向で自走機体1の前後方向の中心線L0に近付くように傾斜させたものであってもよい。
この場合、支持装置3の台座板30Bの側縁部分の左右両側縁部分であってもよいし、外側の側縁だけを自走機体1の前後方向の中心線L0に近付くように傾斜させたものであってもよい。
【0039】
〔別実施形態の4〕
支持装置3としては、実施の形態で説明したような、支持台30を、取付板30Aと、台座板30Bと、補強連結板30Cとで構成する構造のものに限らず、台座板30Bや補強連結板30Cを省略して、取付板30Aに直接的に巻き締め固定具31の下部帯材31Aを固定して取り付けたものであってもよい。この場合、下部帯材31A自体に、ガスボンベ5の重量を支持し得るだけの強度を備えさせる必要がある。
【0040】
〔別実施形態の5〕
支持装置3を自走機体1に支持させる構造として、車体フレーム10と転倒保護フレーム2との両方に支持装置3を支持させるものに限らず、例えば車体フレーム10側から適宜取付部材を延出して車体フレーム10のみに支持させるようにしてもよい。あるいは、支持装置3の支持台30の前後を車体フレーム10側には連結せず、転倒保護フレーム2のみに支持させるようにしてもよい。
【産業上の利用可能性】
【0041】
本発明の乗用型草刈り機は、実施形態で示したようにミッドマウント型の乗用型草刈り機に限らず、例えば、フロントマウント型の乗用型草刈り機にも適用することができる。また、リヤディスチャージ型式のモーアに限らず、サイドディスチャージ型式のもの、あるいはマルチング型式のものであってもよい。
【符号の説明】
【0042】
1 自走機体
2 転倒保護フレーム
3 支持装置
4 モーア
5 ガスボンベ
10 車体フレーム
11 前輪
12 後輪
13 操縦席
30 支持台
P1 旋回中心
R 旋回軌跡
L1 中心軸線

【特許請求の範囲】
【請求項1】
左右各別に正逆転駆動可能な走行用後輪と、操向操作可能な左右一対の前輪とを備え、前記後輪と前輪との前後間隔に操縦席を備えるとともに、その操縦席の後部側の左右位置に下端側を固定した門形の転倒保護フレームを備えた乗用型草刈り機であって、
前記転倒保護フレームの横外側において円筒状のガスボンベを横倒し姿勢で搭載可能な支持装置を設け、
この支持装置を、搭載されたガスボンベが前記転倒保護フレームの前後にわたって位置し、かつ円筒状のガスボンベの中心軸線が平面視で後方側ほど機体左右方向での中心側に近付く傾斜姿勢で搭載されるように構成してあることを特徴とする乗用型草刈り機。
【請求項2】
転倒保護フレームに支持装置を取り付けてある請求項1記載の乗用型草刈り機。
【請求項3】
ガスボンベの前後方向での重心位置の近くを転倒保護フレームで支持し、かつ、支持装置が平面視で後輪の上側に重複するように設けられている請求項2記載の乗用型草刈り機。
【請求項4】
支持装置は後輪の上側を覆う位置にあって機体前後方向に対して平行な姿勢の支持台を備え、ガスボンベの中心軸線は平面視で前記支持台の左右側縁に対して傾斜している請求項1、2、又は3記載の乗用型草刈り機。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2012−29579(P2012−29579A)
【公開日】平成24年2月16日(2012.2.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−169592(P2010−169592)
【出願日】平成22年7月28日(2010.7.28)
【出願人】(000001052)株式会社クボタ (4,415)
【Fターム(参考)】