説明

乗用型草刈機

【課題】モーアへの駆動力を、モーアが所定高さへの上昇するに伴って断つように連係させるにあたり、その連係操作を精度良く行えるようにするとともに、構造の簡素化ならびに組み付け作業の簡素化を図る。
【解決手段】リフトアーム30と昇降操作レバー27との間、及びリフトアーム30とクラッチレバー29との間に、それぞれフィードバック操作用の連動機構5を設けて、リフトアーム30の所定高さ以上の上昇側への操作に伴って、昇降操作レバー27を中立位置に復帰させるとともに、クラッチレバー29を切り側へ戻し操作するように連係させてあり、それぞれの連動機構5部分に、リフトアーム30の上昇作動に伴って昇降操作レバー27を中立位置に復帰させるタイミング、及びクラッチレバー29を切り側へ戻し操作するタイミングを調節可能な調節操作具55を設けてある。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、芝などの草を刈取るためのモーアを自走車体に対して昇降可能に吊設した乗用型草刈機の改良に関する。
【背景技術】
【0002】
上記乗用型草刈機においては、自走車体に対して昇降可能に吊設されたモーアを、自走車体側から伝動軸を介して駆動するように構成しているのであるが、このようなモーアを備える乗用型草刈機としては、従来より下記[1],[2]に記載した構造のものが知られている。
[1] リフトアームの所定高さへの上昇にともなってPTO変速を中立に操作し、走行クラッチを切るようにフィードバック操作する構造のもの(特許文献1参照)。
[2] リフトアームの所定高さへの上昇にともなって、モーアの昇降操作レバーを中立に戻し操作し、モーア駆動用のPTOクラッチレバーを切り操作するように構成したもの(特許文献2参照)。
【0003】
【特許文献1】特開平5−260837号公報(段落〔0021〕、〔0022〕、図5、図6)
【特許文献2】特開平6−133631号公報(段落〔0011〕、〔0012〕、図1)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記[1]に記載の乗用型芝刈り機においては、リフトアームの所定高さへの上昇にともなって揺動操作される揺動板と、その揺動板に形成されたカム部と連係して揺動操作されるカムフォロワーとしての複数の揺動部材とを用い、かつ前記複数の揺動部材の動きを、それぞれPTOレバーやクラッチレバーに連係させることによって、リフトアームの動きをフィードバックするように構成していた。
このように構成された特許文献1に記載の構造のものでは、リフトアームの上昇側への運動を、カム体として機能する揺動板と、複数のカムフォロアーとして機能する揺動部材とを用いて2方向に分岐させて伝達するようにしていたものであるから、全体構造が複雑で多くの部品点数を要するものであった。また、その製作加工上の精度も要求され、組み付け作業などもかなり複雑で多大な手数を要するものであった。
【0005】
上記[2]に記載の乗用型芝刈り機においては、リフトアームに対してプッシュプルワイヤを連係させ、プッシュプルワイヤのインナーワイヤをPTOクラッチレバーに連係させ、アウターワイヤをモーアの昇降操作レバーに連係させることにより、リフトアームの動きをPTOレバーやクラッチレバーにフィードバックするように構成していた。
このように構成された特許文献2に記載の構造のものでは、連係構造としてシンプルなプッシュプルワイヤを用いることにより、構造の簡素化を図り得る点では有用なものであるが、プッシュプルワイヤと各レバーとの接当による連動構造であるため、連係タイミングを精度良く設定し難く、また、経年変化によるワイヤの伸びなどによって、さらに連係精度が低下する虞があった。
【0006】
本発明の目的は、乗用型草刈機において、自走車体に昇降可能に吊設されたモーアへの駆動力を、モーアが所定高さへの上昇するに伴って断つように連係させるにあたり、その連係操作を精度良く行えるようにするとともに、構造の簡素化ならびに組み付け作業の簡素化を図ることにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
〔解決手段1〕
上記課題を解決するために講じた本発明の技術手段は、請求項1に記載のように、自走車体に昇降可能に吊設され、自走車体側から駆動力を伝達されるモーアを備えるとともに、前記自走車体側に前記モーアを昇降操作する昇降操作レバーと、昇降操作レバーの操作に基づいてモーアを昇降操作するリフトアームと、モーアの駆動力を断続するクラッチレバーとを備えた乗用型草刈機において、前記リフトアームと前記昇降操作レバーとの間、及びリフトアームと前記クラッチレバーとの間に、それぞれフィードバック操作用の連動機構を設けて、リフトアームの所定高さ以上の上昇側への操作に伴って、上昇側に操作されている昇降操作レバーを中立位置に復帰させるとともに、クラッチ入り側に操作されていたクラッチレバーを切り側へ戻し操作するように連係させてあり、それぞれの連動機構部分に、前記リフトアームの上昇作動に伴って前記昇降操作レバーを中立位置に復帰させるタイミング、及び前記クラッチレバーを切り側へ戻し操作するタイミングを調節可能な調節操作具を設けたことである。
【0008】
〔作用及び効果〕
上記のように、解決手段1にかかる本発明の乗用型草刈機では、次の作用及び効果を奏する。
すなわち、リフトアームと前記昇降操作レバーとの間、及びリフトアームと前記クラッチレバーとの間で、それぞれ設けたフィードバック操作用の連動機構部分に、前記リフトアームの上昇作動に伴って前記昇降操作レバーを中立位置に復帰させるタイミング、及び前記クラッチレバーを切り側へ戻し操作するタイミングを調節可能な調節操作具を設けたものであるから、前記リフトアームの上昇作動に伴って前記昇降操作レバーを中立位置に復帰させるタイミング、及び前記クラッチレバーを切り側へ戻し操作するタイミングを精度良く調節して連係作動させることができる。
そして、このように調節操作具を備えることで、高精度なカムやカムフォロワー、あるいはそのカムやカムフォロワーに連係させるための複雑な連動構造を要することなく、簡単な構造のもので連係機構を構成することができる。
また、調節操作が可能であることにより、構成部材同士の組み付け段階から高精度での組み付け作業が要求されるものではなく、組み付け段階では構成部材同士の間に余裕を持たせた比較的ラフな組み付けであっても、組み付け後の調節操作で組み付け精度を出すことができるので、組み付け作業自体は簡易に行える点でも有効である。
【0009】
その結果、簡単な構造のもので製作加工ならびに組み付け作業も簡易に行えるものでありながら、連係精度の良い構造の乗用型草刈機を得られる利点がある。
【0010】
〔解決手段2〕
本発明の乗用型草刈機における第2の解決手段は、請求項2の記載のように、連係機構は、押し引き操作用の連係ロッドを備え、その連係ロッド上における昇降操作レバーに連係する位置とリフトアームに連係する位置との距離を変更する機構、及び前記連係ロッド上におけるクラッチレバーに連係する位置とリフトアームに連係する位置との距離を変更する機構によって調節操作具が構成されていることに特徴がある。
【0011】
〔作用及び効果〕
上記のように、解決手段2にかかる本発明の乗用型草刈機では、前記解決手段1にかかる発明と同等な作用効果の他に、次の作用効果をも奏する。
すなわち、連係機構として構造簡単な連係ロッドを用いたことにより、連係機構そのものの構造の簡素化を図ることができる。また、その連係ロッド上における昇降操作レバーやクラッチレバーの連係位置とリフトアームの連係位置との間の距離を変更する機構によって連係タイミングの調節を行うことができるので、調節操作具による調節操作が簡単であり、かつ、その構造も簡素化し易い利点がある。
【0012】
〔解決手段3〕
本発明の乗用型草刈機における第3の解決手段は、請求項3の記載のように、昇降操作レバーとクラッチレバーのうち、リフトアームに近い側に配設されたレバーが押し操作によってフィードバック操作され、リフトアームから遠い側に配設されたレバーが引き操作によってフィードバック操作されるように構成してある点に特徴がある。
【0013】
〔作用及び効果〕
上記のように、解決手段3にかかる本発明の乗用型草刈機では、前記解決手段1または2にかかる発明と同等な作用効果の他に、次の作用効果をも奏する。
すなわち、リフトアームから遠い側のレバーは、リフトアームの上昇動作に伴う引き操作でフィードバックできるように連係させることで、連係ロッドなどの連係部材を、座屈や曲げなどの作用を考慮する必要もなく細い部材で構成でき、小型軽量化を図り得る利点がある。
そして、リフトアームに近い側のレバーは、リフトアームの上昇動作に伴う押し操作でフィードバックできるように連係させたものであるが、このように距離的に近い場合には、連係ロッドなどの連係部材をそれほど太くしなくとも座屈や曲げなどの作用に抗し易いので、その大型化を回避し易い利点がある。
【0014】
また、リフトアームからの距離の大小に関わらず両レバーを引き操作でフィードバックさせることも考えられるが、この場合には次のような問題がある。
つまり、リフトアームの上昇側への操作を、昇降操作レバー側とクラッチレバー側との2系統に伝えるに際して、リフトアームの単一の箇所における動きを伝達するように構成すると、それぞれのレバーの位置や操作量などに合わせて適正なタイミングで、モーアの上昇停止やクラッチ切りが行われるように、操作量や操作方向などを変更するための複雑な機構が必要となる。また、各レバーを各別に操作する際の融通構造も必要になって構造上の簡素化が妨げられることにもなる。
そこで、リフトアーム上の複数箇所から個別に各レバーへの連係を行うことが考えられるが、リフトアームの上昇側への作動中におけるリフトアーム角度の変化による影響が少ない状態で所定の操作量を確保し得るリフトアーム上の位置は、各レバーに対する操作方向が同一であればきわめて近接した位置にならざるを得ず、連動構造が錯綜してしまい、組み付け作業の簡易化の妨げとなる虞がある。
これに対して本発明では、前述のように一方を引き、他方を押しとなるように、各レバーに対する操作方向を異ならせてあるので、リフトアームの上昇側への作動を2系統に伝えるための連動構造を互いに離間した状態で配置でき、連動構造が錯綜する不具合をも回避できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
〔乗用型草刈機の全体構成〕
図1に、本発明に係る乗用型草刈機の全体側面が、また、図2にその全体平面がそれぞれ示されている。
この乗用型草刈機は、自走車体1の前部側に左右一対の駆動自在な前車輪11を備え、後部側に左右一対の駆動及び操向操作自在な後車輪12を備えている。前記自走車体1の車体後部には、エンジン13が装備された原動部を備え、この原動部の車体前方側に運転座席14が装備された運転部を配置してあり、運転部と原動部との間で運転座席14の上方側を迂回するように車体側から立設されたロプス15を備えている。
【0016】
前記自走車体1の前部には、車体フレームを構成している前部ミッションケース17から車体前方向きに延出されたリンク機構18を介してモーア4を連結してあり、このモーア4に対しては、前記前部ミッションケース17に設けてある動力取り出し軸17aから、伝動軸19を介して前記エンジン13からの駆動力が伝達されるように構成してある。
【0017】
前記運転部5では、平面視で左右一対の前車輪フェンダー20の間に位置する運転座席14、この運転座席14の車体前方側で車体前端部に立設された操縦塔21、この操縦塔21の上部に回動操作自在に支持されたステアリングホィール22が設けられている。そして、前記操縦塔21の下部の両横側には足載せ台23が位置し、両足載せ台23の間には前記前部ミッションケース17の上方を覆うように形成した中央部床24が設けられている。
前記左右一対の前車輪フェンダー20、前記左右一対の足載せ台23、前記中央部床24は、これらが所定の形状になるように、かつ、一体部品になるようにプレス成形された一枚の板金部材で成る上部構造体によって構成してある。
【0018】
図2に示すように、前記運転部5の運転座席14の一方の横側方に、主変速レバー25、PTO変速レバー26、昇降操作レバー27、PTOクラッチレバー29を、前記前車輪フェンダー20、及び、この前車輪フェンダー20の上面側に配置した合成樹脂製のガイド部材28を挿通するように配置してあり、前記運転座席14を挟んで他方の横側方に、前後輪1,2が共に駆動される4輪駆動状態と、後輪2が駆動されないで前輪1が駆動される2輪駆動状態とを選択切換するための2駆4駆切換レバー16を設けてある。
【0019】
主変速レバー25は、前記前部ミッションケース7に支持された静油圧式無段変速装置で成る走行用変速装置(図示せず)の変速操作軸(図示せず)の回動軸芯のまわりで、前記ガイド部材28が備えているガイド溝に沿わせて車体前後方向に揺動操作することにより、前記走行用変速装置を変速操作して走行速度を変更するものである。
【0020】
PTO変速レバー26は、前記前部ミッションケース7の内部に位置するPTO変速装置(図示せず)の変速操作軸(図示せず)の回動軸芯のまわりで、前記ガイド部材28が備えているガイド溝に沿わせて車体前後方向に揺動操作することにより、前記PTO変速装置を変速操作して動力取り出し軸17aの駆動速度を変更するものである。
【0021】
昇降操作レバー27は、油圧バルブ(図示せず)の操作軸(図示せず)の回動軸芯のまわりで、前記ガイド部材28が備えているガイド溝に沿わせて車体前後方向に揺動操作して前記油圧バルブを切り換え操作することにより、前記リフトアーム30を駆動する昇降シリンダ33を操作してモーア4を昇降操作するものである。
【0022】
前記PTOクラッチレバー29は、モーア4への動力を断続操作するためのクラッチレバーとして機能するものであり、前記前部ミッションケース17の内部に位置するPTOクラッチ(図示せず)を、クラッチ入り状態と、クラッチ切り状態との2位置に位置変更操作自在に構成してあり、クラッチ入り位置ONで、動力取り出し軸17aを介してモーア4への動力伝達を可能にし、クラッチ切り位置OFFで前記動力取り出し軸17aの駆動を停止してモーア4への動力伝達を断つように構成されている。
【0023】
〔モーア関係〕
モーア4は、リンク機構18をリフトアーム30で吊り下げ支持した構造となっている。
前記昇降シリンダ33の伸縮作動によってリンク機構18を支持する左右一対のリフトアーム30が上下に揺動操作されると、リンク機構18が前部ミッションケース17に対して上下に揺動操作されてモーア4を、接地ゲージ輪43が地面上に接地した下降作業状態と、接地ゲージ輪43が地面上から上昇した上昇非作業状態とに昇降操作する。
【0024】
モーア4は下降作業状態にして自走車体を走行させながら刈取作業を行う。このモーア4は、刈り刃ハウジング40の内部の車体横方向での複数箇所において車体上下向きの軸芯まわりで駆動回動されるブレード形の回転刈り刃41によって草や芝を切断するマルチング仕様に構成されている。
【0025】
〔昇降連係機構〕
図3乃至図6に示すように、モーア4を昇降操作するリフトアーム30は、前記昇降操作レバー27、及びPTOクラッチレバー29、に対して、次のように構成されたフィードバック操作用の連動機構5を介して連係されている。
すなわち、リフトアーム30側では、その揺動支点x近くの外周部における上下2箇所に連係用係止部31,32を設けてある。この連係用係止部31,32は、図6に示すように、リフトアーム30の外周部の上下2箇所に突設したボス部30a,30aと、そのボス部30a,30aに対して相対回動自在に挿嵌された連結ピン34,34とで構成してある。前記連結ピン34,34には、後述する連係ロッド51,52を挿通した状態で摺動可能に支持するガイド孔34a,34aを形成してある。
【0026】
前記昇降操作レバー27とPTOクラッチレバー29には、そのレバー揺動支点P1,P2の下方側における作用部27a,29aに連係ロッド51,52の連結箇所を形成してある。
そして、前記昇降操作レバー27の作用部27aと、前記リフトアーム30の外周部の上側における連係用係止部31とにわたって第1連係ロッド51が延設され、後述する調節操作具55を介して連結されている。つまり、前記第1連係ロッド51の延出端が連係用係止部31の連結ピン34に形成されたガイド孔34aに挿通され、その連結ピン34よりも昇降操作レバー27の作用部27a側に寄った箇所の第1連係ロッド51の軸上に前記調節操作具55が設けられている。
また、PTOクラッチレバー29の作用部29aと、前記リフトアーム30の外周部の下側における連係用係止部32とにわたって第2連係ロッド52が延設され、後述する調節操作具55を介して連結されている。つまり、前記第2連係ロッド52の延出端が連係用係止部32の連結ピン34に形成されたガイド孔34aに挿通され、その連結ピン34の位置よりもPTOクラッチレバー29の作用部29aから離れた箇所の第2連係ロッド52の軸上に前記調節操作具55が設けられている。
【0027】
上記の第1連係ロッド51と第2連係ロッド52とは、共に丸棒材で構成してあり、前記リフトアーム30の外周部の上側における連係用係止部31と前記昇降操作レバー27の作用部27aとの間の距離よりも、大きい距離を有した前記リフトアーム30の外周部の下側における連係用係止部32と前記PTOクラッチレバー29の作用部29aとの間に設けられる第2連係ロッド52は、前記第1連係ロッド51よりも長い棒材によって構成されているが、その径は、前記第1連係ロッド51と同径、もしくはそれよりも小径に形成されている。
【0028】
前記第1連係ロッド51と第2連係ロッド52の前記各レバー27,29の作用部27a,29aに連結された側とは反対側の端部近くに設けられる調節操作具55は、前記各連係用係止部31,32によって押し引きされる位置を調節するためのものであり、図6に示すように、前記第1連係ロッド51及び第2連係ロッド52に対して相対摺動自在に外嵌する貫通孔56aを備えたチャンネル状の止め金具56と、その止め金具56を前記第1連係ロッド51及び第2連係ロッド52に対して相対摺動不能な状態に位置固定するための止めボルト57とから構成されている。
【0029】
この調節操作具55を、前記第1連係ロッド51側では、前記リフトアーム30の外周部の上側における連係用係止部31と前記昇降操作レバー27との間に設けて、リフトアーム30の上昇側への操作に伴って前記連係用係止部31が調節操作具55を昇降操作レバー27側へ押圧し、第1連係ロッド51による昇降操作レバー27側への押圧操作が行われるように構成してある。
同様な調節操作具55が前記第2連係ロッド52側では、前記リフトアーム30の外周部の下側における連係用係止部32よりも前記PTOクラッチレバー29から離れる側に設けてあり、リフトアーム30の上昇側への操作に伴って前記連係用係止部32が調節操作具55をPTOクラッチレバー29から離れる側へ押圧して第2連係ロッド52を引っ張るように構成してある。
【0030】
上記の調節操作具55は、止めボルト57を緩めてチャンネル状の止め金具56の位置を、各連係ロッド51,52の長さ方向に位置変更し、適正位置で止めボルト57を締めて位置固定することで、リフトアーム30の上昇動作と、前記昇降操作レバー27及びPTOクラッチレバー29との連係動作のタイミングを変更することができる。
この調節操作具55による連係動作のタイミングの設定は、リフトアーム30が上昇側へ操作されて所定高さに上昇するに伴って、リフトアーム30の外周部の上側における連係用係止部31で押圧される第1連係ロッド51によって前記昇降操作レバー27が上昇操作位置UPから中立停止位置Nに押し戻され、リフトアーム30の外周部の下側における連係用係止部32によって引っ張られる第2連係ロッド52を介して前記PTOクラッチレバー29がクラッチ入り位置ONからクラッチ切り位置OFFへ戻し操作されるようにしてある。
【0031】
連係ロッド51,52側の調節操作具55とリフトアーム30側の連係用係止部31,32との間には、緩衝用のコイルスプリング58を介装してある。
このコイルスプリング58は、モーア4が下降作業位置にある状態で、前記昇降操作レバー27を上昇位置UPに切換操作した状態や、PTOクラッチレバー29をクラッチ入り位置ONに操作した状態で、適度に圧縮されて、各連係ロッド51,52と前記調節操作具55や連係用係止部31.32との間におけるガタツキを抑制するためのものであり、モーア4を浮上させ始めるとほぼ完全に圧縮されて、リフトアーム30の上昇作動に伴う連係用係止部31,32の作用が、調節操作具55に伝えられるようになる。
【0032】
前記PTOクラッチレバー29には、その揺動支点P2近くの付け根位置29bと自走車体1側の固定点P3との間にわたってコイルスプリング53が掛張されており、前記揺動支点P2近くの付け根位置29bと自走車体1側の固定点P3とを結ぶ仮想線分が、前記揺動支点P2を跨いでその前後に移動するように、つまり、前記揺動支点P2と固定点P3とを結ぶデッドポイント線を越えて前記付け根位置29bが移動するように構成されている。 したがって、このPTOクラッチレバー29の操作は、入り位置ONから切り位置OFFへの操作は前記リフトアーム30の上昇作動に連動し、かつコイルスプリング53の付勢力が付与されて行われるが、切り位置OFFから入り位置ONへの操作は、コイルスプリング53の付勢力に抗してデッドポイント線を越えるように人為操作することによって行なわれる。
【0033】
〔別実施形態の1〕
フィードバック操作用の連動機構5としては、最良の実施の形態で説明したような丸棒状の第1連係ロッド51及び第2連係ロッド52で構成されたものに限らず、例えば、パイプ状であったり、形鋼状の断面形状を有したり、板状であったり、各種の形状のものを採用できる。
また、引き操作される側では、連係ロッド51,52に替えてワイヤーを用いてもよい。
【0034】
〔別実施形態の2〕
調節操作具55としては、最良の実施の形態で説明したようなチャンネル状の止め金具56や止めボルト57を用いた構造に限らず、連動機構5中における押し引き作用が及ぶ位置を変更するための任意の構造を採用できる。
また、調節操作具55を設ける位置も、リフトアーム30側の連係用係止部31,32の間ではなく、各レバー27,29との間に設けたものであってもよい。
【0035】
〔別実施形態の3〕
モーア4の仕様としては、最良の実施形態で説明したマルチング仕様に構成されたもの限らず、例えば、回転刈り刃41の回動によって発生した風によって、刈り刃ハウジング40の内部を刈り刃ハウジング40の横一端側に位置する排出口42に刈り草や刈り芝を搬送して、この排出口42から刈り刃ハウジング40外に排出する、所謂サイドディスチャージ型に構成されたものや、機体後方側へ排出するリヤディスチャージ仕様に構成されたものなど、適宜の仕様を選択することができる。
【図面の簡単な説明】
【0036】
【図1】乗用型草刈機の全体側面図
【図2】乗用型草刈機の全体平面図
【図3】連動機構部分を示す側面図
【図4】連動機構部分を示す側面図
【図5】連動機構部分を示す側面図
【図6】調節操作具部分を示す斜視図
【符号の説明】
【0037】
1 自走車体
4 モーア
5 連動機構
27 昇降操作レバー
29 クラッチレバー
30 リフトアーム
31,32 連係用係止部
51,52 連係ロッド
55 調節操作具

【特許請求の範囲】
【請求項1】
自走車体に昇降可能に吊設され、自走車体側から駆動力を伝達されるモーアを備えるとともに、前記自走車体側に前記モーアを昇降操作する昇降操作レバーと、昇降操作レバーの操作に基づいてモーアを昇降操作するリフトアームと、モーアの駆動力を断続するクラッチレバーとを備えた乗用型草刈機であって、
前記リフトアームと前記昇降操作レバーとの間、及びリフトアームと前記クラッチレバーとの間に、それぞれフィードバック操作用の連動機構を設けて、リフトアームの所定高さ以上の上昇側への操作に伴って、上昇側に操作されている昇降操作レバーを中立位置に復帰させるとともに、クラッチ入り側に操作されていたクラッチレバーを切り側へ戻し操作するように連係させてあり、
それぞれの連動機構部分に、前記リフトアームの上昇作動に伴って前記昇降操作レバーを中立位置に復帰させるタイミング、及び前記クラッチレバーを切り側へ戻し操作するタイミングを調節可能な調節操作具を設けてあることを特徴とする乗用型草刈機。
【請求項2】
連係機構は、押し引き操作用の連係ロッドを備え、その連係ロッド上における昇降操作レバーに連係する位置とリフトアームに連係する位置との距離を変更する機構、及び前記連係ロッド上におけるクラッチレバーに連係する位置とリフトアームに連係する位置との距離を変更する機構によって調節操作具が構成されている請求項1記載の乗用型草刈機。
【請求項3】
昇降操作レバーとクラッチレバーのうち、リフトアームに近い側に配設されたレバーが押し操作によってフィードバック操作され、リフトアームから遠い側に配設されたレバーが引き操作によってフィードバック操作されるように構成してある請求項1または2記載の乗用型草刈機。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2010−75149(P2010−75149A)
【公開日】平成22年4月8日(2010.4.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−249864(P2008−249864)
【出願日】平成20年9月29日(2008.9.29)
【出願人】(000001052)株式会社クボタ (4,415)
【Fターム(参考)】