説明

乗用車用バンパー構造体

【課題】 バンパー補強材の圧壊強度を大きくするために、高いエネルギ吸収特性と重量軽減効果があり、かつ取り付け性に優れるバンパー補強材構造を提供することを目的とする。
【解決手段】 バンパー補強材1 のステイ取り付け位置に対応する中空空間内に、開断面形状のアルミニウム合金製補強用部材20a を設け、この補強用部材20a は、バンパー補強材1 長手方向に延在するとともに、バンパー補強材1 幅方向に互いに間隔を置いて略平行に配置された一対の縦壁状フランジ21a 、22a と、バンパー補強材1 幅方向に延在して、これら一対のフランジ21a 、22a 同士をつなぐ壁状リブ23a とから構成される略コの字状または略I型状の断面形状を有し、少なくとも後面側の前記縦壁状フランジ22a において、ステイ10およびバンパー補強材1 と一体に接合された構成とされ、この補強用部材20a も、バンパー補強材1 への衝突荷重負荷時に変形して衝突エネルギを吸収することである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、衝突時のエネルギー吸収性能が優れた、軽量な乗用車用バンパー構造体に関し、バンパー補強材(あるいはバンパ補強材)がアルミニウム合金製であるバンパー構造体 (以下、アルミニウムを単にAlとも言う) に関するものである。
【背景技術】
【0002】
自動車などの車体の前端 (フロント) および後端 (リア) に取り付けられているバンパーの内部には、強度補強材としてのバンパー補強材 (バンパーリインフォースメントあるいはバンパーアマチャアなどとも言う) が設けられている。
【0003】
このバンパー補強材は、周知の通り、バンパー(あるいはバンパ)と車体との間に、車体に対し略水平方向で車幅方向に対し平行に延在するように配置される。そして、このようなバンパー補強材は、その長手方向の形状では、自動車車体やバンパーのデザインに応じて、種々の形状が選択される。
【0004】
代表的な形状は、車幅方向に対し中央部や端部も含めて平行に延在する真っ直ぐなバンパー補強材 (直線型バンパー補強材) と、直線的な中央部の両端に車体側へ曲げられた、直線的または曲線的な湾曲部 (屈曲部) を有するか、全体が車体側へ湾曲しているバンパー補強材 (湾曲型バンパー補強材) とに大別される。
【0005】
これらバンパー補強材の車体への取り付けは、フロントサイドメンバやリヤサイドメンバ等、車体前後方向の骨格部材の車体フレーム類 (車体メンバ類) に連結されて行われる。また、バンパー補強材の車体への固定は、車体のフロントやリヤのサイドメンバの先端或いは後端に直接、あるいはバンパーステイなどの後面からの支持部材 (車体連結用部材) を介して行われる。
【0006】
周知の通り、バンパー補強材は、バンパーと車体間で、車体の前方や後方からの衝突、あるいは前方や後方への衝突に対し、車体用のエネルギ吸収部材を構成している。したがって、車体用エネルギ吸収部材としてのバンパー補強材には、車体の衝突により、バンパー補強材前面から加わった衝突エネルギを、自らの曲げ変形および車体前後方向 (略水平な断面方向) の押しつぶれ変形 (圧壊) により吸収し、車体を保護する性能が求められている。
【0007】
近年、これらバンパー補強材やバンパーステイに、車体軽量化のために、従来使用されていた鋼材に代わって、高強度Al合金製の押出中空形材などが使用され始めている。このため、このようなAl合金製バンパー補強材に対して、Al合金製やハイテン等の鋼製などのバンパーステイが設けられて使用されることが増している。
【0008】
ところで、車体用エネルギ吸収部材としてのバンパー補強材には、従来からの正面衝突 (バリア衝突、フルラップ前面衝突) や、車体が対向車や障害物などと部分的に衝突するような、所謂オフセット衝突時など、種々の衝突形態において、優れたエネルギ吸収性能を発揮することが求められる.
【0009】
特にオフセット衝突時においては、対向車 (またはオフセットバリヤ) が被衝突車の端部寄りに衝突する。例えば、米国保険機構(Insurannce Institute for Highway Safety) が行っているオフセット衝突での性能評価試験では、車幅の40% がオフセットバリヤと重なって衝突するように規定している。このため、オフセット衝突時においては、バンパー補強材の衝突変形は、補強材の片側に偏して生じることになる。この場合、衝突条件としては、衝突変形が補強材の中央部に生じる正面衝突の場合に比して、著しく厳しい条件となる。
【0010】
一方、バンパーステイによって後面から支持されるタイプのバンパー補強材において、バンパー補強材は、通常は、後面 (背面) から左右2 本のステイで支持されている。したがって、車体衝突時においては、衝突形態にかかわらず、バンパー補強材が受けた衝突力の大部分は、バンパー補強材のステイ取付部に変形が集中する。
【0011】
このため、従来型のバンパー補強材のようにバンパー補強材の曲げ変形のみでエネルギ吸収することは難しく、これに加えてバンパー補強材自体の圧壊変形およびステイの圧壊変形を含めてエネルギを吸収する必要が生じてきている。また、近年では、従来の5mile/h 程度の低速衝突から、16km/h、64km/hなどの中高速衝突に対応できるバンパー構造が求められており、このような中高速衝突でも、同様にバンパー補強材およびステイの圧壊変形によるエネルギ吸収を前提とした設計が必要になってきている。
【0012】
衝突時のエネルギを吸収する際に、バンパー補強材およびステイの変形量が大きくなると、変形したバンパー補強材が車体側へ近づき、バンパーの後方に位置するラジエターなどを始めとする各種自動車部品と干渉し、これら部品を損傷する可能性が高くなる。
【0013】
バンパー補強材は、通常は、衝突力を受けた際に、曲げ変形によりステイ取付部より中央寄りの部位が後方へとたわむ、たわみ変形を生じる。更に、衝突力が大きい、あるいはバンパー補強材の車体前後方向の圧壊強度が小さい場合、曲げ変形に局部的な圧壊が加わった、より変位の大きい「くの字」型の折れ変形を生じる。このため、前記ステイの変形と相まって、変形したバンパー補強材が車体側へ近づき、バンパーの後方に位置するラジエターなどを始めとする各種自動車部品と干渉し、これら部品を損傷する可能性が高くなる。
【0014】
これに対し、バンパー補強材の衝突エネルギの吸収性能を高め、後方の各種自動車部品への干渉や損傷を防止するために、従来から、バンパー補強材の圧壊強度を上げる対策が採られてきた。従来からある、フラットバリヤあるいは振り子、ポール衝突に対しては、バンパー補強材自体の曲げ変形強度を上げる方法が有効であった。しかし、前記オフセットあるいは中高速衝突では、バンパー補強材の曲げ変形強度増大よりも、むしろステイ直上部のバンパー補強材およびステイの圧壊強度を高めることが有効になってきている。
【0015】
Al合金押出中空形材製バンパー補強材の圧壊強度を上げるためには、バンパー補強材の肉厚を増す手段が最も一般的であった。しかし、これらの手段では、オフセット衝突性能を満たす圧壊強度とするためには、かなりの肉厚の増加や、補強材による補強が必要であり、重量が増加する。
【0016】
このような重量増加を抑制するためには、バンパー補強材の部分的な補強を行うことが効果的と考えられる。従来から、バンパー補強材の部分的な補強を行うために、例えば、コの字形などの別の開断面形状補強材を、バンパー補強材の前面に設けたり、バンパー補強材のステイ取り付け部分に設けることが種々提案されている(例えば、特許文献1、2参照)。
【0017】
例えば、特許文献1は、ポール衝突特性の向上を目的とし、バンパー前面にエネルギ吸収部材を部分的に設けることで、この部位の曲げ強度を増加させるとともにバンパー補強材の圧壊を防止することを目的としている。
【0018】
また、特許文献2は、車体内部にスティフナを設置した構造である。本構造は、ステイとバンパーとの取り付け部を局所的に補強し、この部位の結合剛性を強化することでバンパー補強材の曲げ強度の増大を目的とした構造である。
【特許文献1】特開2003-127808 号公報 (図1 、第1 頁、請求項)
【特許文献2】特開2003-276536 号公報 (図5 、図6 、第1 頁、請求項)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0019】
しかし、バンパー補強材の部分的な補強を行う前記特許文献1や2の技術は、バンパー補強材の圧壊強度向上自体を目的としたものではなく、従来からのフラットバリヤあるいは振り子、ポール衝突などに対して、バンパー補強材の曲げ強度を増加させるものでしかない。
【0020】
このため、特許文献1や2の補強構造では、バンパー補強材へ衝突荷重が負荷された際に、補強材も自ら変形して衝突エネルギを吸収する機能は無いか、著しく小さい。
【0021】
また、車体デザインによっては、バンパー前面に補強材を設置することで、バンパー前面側のスペース上の制約から、バンパー補強材自体の取り付け位置が車体後方にならざるを得ない。このため、衝突時のバンパー補強材の変形によって、バンパー補強材の後方に位置するラジエターなどを始めとする各種自動車部品と干渉し、これら部品を損傷する可能性が高くなる場合がある。さらに、別途補強材を接合することで、溶接などの接合に伴う加工時間の増大(コストアップ)も問題になる。
【0022】
前記したオフセットあるいは中高速衝突を対象とする場合には、やはり前記した通り、バンパー補強材の圧壊強度を大きくする必要があり、前記従来の技術のように、補強材を部分的に設けてバンパー補強材の曲げ強度を増加させてもあまり効果がない。
【0023】
このため、バンパー補強材の圧壊強度を大きくする場合、通常では、前記した通り、長手方向に延在するバンパー補強材の肉厚を増大させるしかなく、これにより重量が大きく増加する結果となる。
【0024】
したがって、本発明の目的は、オフセット衝突あるいは中高速衝突に対応するバンパー構造に関し、バンパー補強材の圧壊強度を大きくするために、高いエネルギ吸収特性と重量軽減効果があり、かつ取り付け性に優れるバンパー補強材構造を提供しようとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0025】
この目的を達成するために、本発明の乗用車用バンパー構造体の要旨は、アルミニウム合金中空形材製バンパー補強材と、このバンパー補強材後面に設けられたステイとからなり、バンパー補強材への衝突荷重負荷時に、バンパー補強材とともにステイも変形して衝突エネルギを吸収するバンパー構造体であって、バンパー補強材のステイ取り付け位置に対応する中空空間内に、開断面形状のアルミニウム合金製補強用部材を設け、この補強用部材は、バンパー補強材長手方向に延在するとともに、バンパー補強材幅方向に互いに間隔を置いて略平行に配置された一対の縦壁状フランジと、バンパー補強材幅方向に延在して、これら一対のフランジ同士をつなぐ壁状リブとから構成される略コの字状または略I型状の断面形状を有した構成とされるとともに、少なくとも後面側の前記縦壁状フランジにおいて、ステイおよびバンパー補強材と一体に接合された構成とし、この補強用部材も、バンパー補強材への衝突荷重負荷時に変形して衝突エネルギを吸収することである。
【発明の効果】
【0026】
本発明は、バンパー補強材の圧壊強度向上のために、バンパー補強材の部分的な補強を行う。この際、本発明では、上記したように、先ず、バンパー補強材のステイ取り付け位置に対応する中空空間内に、開断面形状のアルミニウム合金製補強用部材を設ける。
【0027】
ここまでは、前記従来の(例えば前記特許文献2の)コの字形などの開断面形状補強材と同様である。しかし、これらの従来のコの字形などの補強材には、その設け方からして、後述する通り、車体の衝突によって、バンパー補強材へ衝突荷重が負荷された際に、自ら変形して衝突エネルギを吸収する機能は無いか、著しく小さい。
【0028】
本発明におけるアルミニウム合金製補強用部材は、上記要旨のような構成からなるので、車体衝突時にバンパー補強材へ衝突荷重が負荷された際に、自ら変形して衝突エネルギを吸収する。それも、バンパー補強材の圧壊強度を向上させるに十分なだけ、衝突エネルギを吸収する。
【0029】
また、本発明では、アルミニウム合金製補強用部材のバンパー補強材への取り付けを簡便にするために、補強用部材の車体後方側(後面側)に、ステイと一体的に取り付けられるフランジを有している。このため、この後面側の前記縦壁状フランジにおいて、ステイおよびバンパー補強材と一体に簡便に接合することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0030】
本発明の実施の形態について、図を用いて、以下に詳細に説明する。
先ず、本発明の乗用車用バンパー構造体の前提となる、中空形材製ステイを設けたアルミニウム合金中空形材製バンパー補強材構造であって、ステイがバンパー補強材を後面から支持する構造の1 実施態様を、図1 を用いて説明する。図1 は、アルミニウム合金中空形材からなるバンパー補強材1 が車幅方向に略水平方向に延在している状態を示している平面図である。
【0031】
図1 において、バンパー補強材1 の全体形状は、両端部分が車体後方に曲げられた湾曲部7 、7 と、中央の直線部8 とを有する。そして、この両湾曲部7 、7 の各々の後面 (背面、裏面とも言う)9 、9 において、通常は、中空筒状の形材からなる2 本のステイ10、10を介して、図示しない車体サイドメンバーと接合され、バンパー補強材1 が車体側に支持される。この図1 の例では、ステイ10、10の後面には、例えば接合用のフランジ11、11が設けられており、図示しない、ステイ後面側のサイドメンバの前面と溶接乃至機械的に接合され、支持される。
【0032】
以上の構成の通り、2 本のステイ10、10は、その中空形材の車体前後方向でバンパー補強材1 を後面から各々支持している。この図1 では、ステイ10、10を、その中空形材の軸 (長手) 方向を車体前後方向 (図の上下方向) として、バンパー補強材1 の後面9 に取り付け、車体前後方向に支持する態様を示している。
【0033】
このステイの取り付け方向は、これ以外に、ステイの中空形材の軸 (長手) 方向を垂直方向 (車体の上下方向) として、バンパー補強材1 の後面9 に取り付け、ステイの中空形材の水平方向の断面で支持する態様としても良い。なお、これら本発明のバンパー補強材またはステイの断面形状や、サイドメンバなどとの取り付け、接続、接合の方法や構造は、前記した通り、基本的に従来のものから選択して使用可能である。
【0034】
(補強用部材)
次に、以上の乗用車用バンパー構造体を前提に、バンパー補強材の圧壊強度を大きくするために、本発明に係るアルミニウム合金補強用部材を設けた態様を、図2 〜10を用いて説明する。なお、図2 〜10では、乗用車用バンパー構造体の左半分を示している。図2 〜8 の右半分は図示しないが、右半分の構造も、左半分の構造と、左右対象をなして同じ構造とされている。
【0035】
図2 は、本発明に係るアルミニウム合金補強用部材20a を設けたバンパー構造体の概要を示す平面図である。図2 において、補強用部材20a は、バンパー補強材1 の両端部分の湾曲部7 、7 の中空空間内であって、ステイ10の取り付け位置に対応する中空空間内に装着されている。このように、補強用部材20a は、ステイ10との関係で、ステイ10の先端側 (車体前方向側) に装着されている。したがって、補強用部材20a の取り付け位置は、ステイ10の取り付け位置に対応して決定される。言い換えると、バンパー補強材は、通常は、後面 (背面) から左右2 本のステイで支持されているため、車体衝突時においては、衝突形態にかかわらず、バンパー補強材が受けた衝突力の大部分は、バンパー補強材のステイ取付部に変形が集中する。したがって、ステイ10の取り付け位置に全く対応しない位置に補強用部材20a を装着しても、補強用部材20a の効果は発揮されない。ただ、補強用部材20a の効果発揮を前提として、ステイ10の取り付け位置からの多少のズレは許容される。
【0036】
なお、バンパー補強材1 の別の態様として、バンパー補強材1 が両端部分の湾曲部7 、7 を持たず、全て直線状であるならば、補強用部材20a は、バンパー補強材1 の両端部分の直線部の中空空間内であって、ステイ10の取り付け位置に対応する中空空間内に装着される。
【0037】
図3 、4 に、補強用部材20a の具体的な構造の1 例を示す。図3 は図2 の斜視図、図4 は図3 の側面図である。図3 、4 において、補強用部材20a は、垂直な縦壁状フランジ21a 、22a と、水平な壁状リブ23a とからなる、全体がコの字状形状をしている。即ち、補強用部材20a は、バンパー補強材1 の長手方向 (略車体幅方向) に延在するとともに、バンパー補強材1 の幅方向 (略車体前後方向) に互いに間隔を置いて略平行に配置された一対の縦壁状フランジ21a 、22a と、バンパー補強材1 の幅方向 (略車体前後方向) に延在して、これら一対のフランジ21a 、22a 同士をつなぐ壁状リブ23a とから構成される。
【0038】
なお、図3 、4 において、バンパー補強材1 は、衝突方向乃至衝突荷重F に対峙して立設された前面壁 (前面側フランジ)2と、後方に位置する後面壁 (後面側フランジ)3、およびこれらを直角方向で接続する水平な側壁 (ウエブ)4、5 により構成される、略矩形断面形状を有する。また、この略矩形中空断面内に、更に二つの中空部区画を有するよう、前記側壁4 、5 と平行に、水平な中間壁 (中リブ)6を設けた日形断面形状を有している。
【0039】
このような断面形状のバンパー補強材1 に対して、補強用部材20a は、中リブ6 によって仕切られた上側の中空部区画 (中空空間) に装着されている。この場合、補強用部材20a は、必要により、上下いずれの側かの中空部区画に1 個、あるいは、いずれもの中空部区画に各々1 個づつ装着されても良い。
【0040】
図3 、4 において、補強用部材20a は、少なくとも後面側の前記縦壁状フランジ22a において、ステイ10およびバンパー補強材1 と一体に接合された構成とされている。より具体的には、補強用部材20a の後面側フランジ22a が、ステイ10の先端側フランジ12、バンパー補強材1 の後面壁3 (上側中空部区画の) と、これらを貫通するボルトなどの機械的な締結手段13によって、一体に接合されている。なお、バンパー補強材1 の下側中空部区画の後面壁3 と、ステイ10の先端側フランジ12とも、これらを貫通するボルトなどの機械的な締結手段13によって、一体に接合されている。
【0041】
この補強用部材20a の接合について、少なくとも補強用部材20a の後面側フランジ22a さえ、ステイ10およびバンパー補強材1 と一体に接合されていれば、補強用部材20a の他の部分をバンパー補強材1 と接合しても良いが、接合する必要は必ずしも無い。即ち、補強用部材20a の後面側フランジ22a さえ、ステイ10およびバンパー補強材1 と一体に接合されていれば、前記オフセットあるいは中高速衝突などの荷重F が負荷された際に、車体の前後方向に変形して衝突エネルギを吸収することができる。この点、例えば、前面側フランジ21a をバンパー補強材1 の前面壁2 と、あるいは、壁状リブ23a をバンパー補強材1 の中リブ6 と、など接合する必要は必ずしも無い。
【0042】
(補強用部材の変形モード)
この補強用部材20a の変形の状態を、図5 、6 に模式的に示す。図5 、6 は、前記図4 と同じ側面図である。そして、図5 は、補強用部材20a の理想的な変形状態を示し、図6 は、図5 の変形状態よりは若干劣る変形状態を示している。
【0043】
図5 でも図6 でも、車体前後方向の前記オフセットあるいは中高速衝突などの衝突荷重F が負荷された際には、車体幅方向に延在する一対の縦壁状フランジ21a 、22a の変形は、接しているバンパー補強材1 の前面壁2 と後面壁3 によって、各々規制される。このため、車体前後方向に延在する壁状リブ23a には、縦壁状フランジ21a 側と、22a 側の両方から主たる負荷がかかる。更に、壁状リブ23a は、車体前後方向を、前面壁2 と後面壁3 とによって拘束されている。したがって、これらの負荷にこの壁状リブ23a が耐えきれず、車体前後方向に、円弧状あるいはくの字状に曲げ変形する。したがって、本発明に係る補強用部材20a は、この壁状リブ23a の曲げ変形によって、主として、衝突エネルギを吸収する。
【0044】
図5 も図6 も、車体前後方向の衝突荷重F の負荷によって、車体前後方向に延在する壁状リブ23a が、円弧状あるいはくの字状に曲げ変形している状態は同じである。更に、これと同時に、バンパー補強材1 の車体前後方向に延在する中リブ6 も、円弧状あるいはくの字状に曲げ変形している状態も同じである。
【0045】
しかし、図5 の場合、壁状リブ23a は上方へ、中リブ6 は下方へ、各々反対方向に向かって変形しているため、リブ同士の接触は無い。このため、リブ同士がお互いに干渉することなく曲げ変形することが可能で、安定して衝突エネルギを吸収することができる (安定した荷重−変位特性が得られる) 。
【0046】
これに対して、図6 の場合には、壁状リブ23a は下方へ、中リブ6 は上方へ、各々向き合う方向に曲げ変形しているため、リブ同士が接触している。このため、リブの曲げ変形に伴う荷重低下が大きい条件では、リブ同士のお互いの干渉により、変形エネルギが増加し、エネルギ吸収量を増加させる効果が得られる。これらの圧壊変形時の荷重−変位特性は、リブの肉厚、幅などの設計条件により変化するため、最適な構造や条件が適宜選択される。
【0047】
(従来の補強用部材の変形モード)
一方、前記した従来のコの字状補強用部材の場合を、図12に平面図で示す。図12において、従来のコの字状補強用部材30は、本発明の補強用部材と同じく、垂直な縦壁状フランジ31、32と、壁状リブ33とからなる。しかし、その配置方向は、縦壁状フランジ31、32が、本発明のような略車体幅方向 (バンパー補強材1 の長手方向) ではなく、略車体前後方向( バンパー補強材1 の幅方向) に延在し、壁状リブ33が、本発明のような略車体前後方向( バンパー補強材1 の幅方向) ではなく、略車体幅方向 (バンパー補強材1 の長手方向) に各々延在している。
【0048】
この従来のコの字状補強用部材の変形状態を、図13に平面図で示す。図13において、車体前後方向 (図の上下方向) の衝突荷重F が負荷された際には、車体幅方向に延在する壁状リブ33の曲げ変形は、接しているバンパー補強材1 の前面壁2 によって規制される。このため、車体前後方向に延在する縦壁状フランジ31、32に主たる負荷がかかる点は同じである。
【0049】
但し、縦壁状フランジ31、32は、その先端部において、壁厚みの分しかバンパー補強材1 の後面壁4 と接合乃至拘束されていない。この結果、大きな負荷がかかった場合に、上記接合部が破損しやすい。上記接合部が破損すれば、縦壁状フランジ31、32の先端部は拘束されないフリーな状態となるため、負荷に応じて、縦壁状フランジ31、32の先端部が、車体幅方向に移動するような弾性的に変形する. 即ち、縦壁状フランジ31、32の先端部が、車体幅方向の、互いに反対方向へ離隔するように、末広がりの状態に移動する。このような弾性的な変形では、前記した図5 、6 の本発明態様の塑性変形(曲げ変形)に比して、補強用部材30がアルミニウム合金製であったとしても、衝突エネルギを吸収できないか、著しく小さい。
【0050】
本発明の補強用部材は、上記のような構成からなるので、車体衝突時にバンパー補強材へ衝突荷重が負荷された際に、自ら変形して衝突エネルギを吸収する。それも、バンパー補強材の車体前後方向の圧壊よりも時間的に先に、ステイの車体前後方向の圧壊が起こるのを防止するに十分なだけ、衝突エネルギを吸収する。
【0051】
(補強用部材の変形例1)
本発明に係る補強用部材は、図3 、4 のコの字状以外に、I 型の断面形状でも良い。図7 、8 に、I 型の断面形状の補強用部材の具体的な構造の1 例を示す。図7 は、前記図4 と同じ側面図、図8 は図7 の平面図である。
【0052】
図7 、8 において、補強用部材20b は、垂直な縦壁状フランジ21b 、22b と、垂直な縦壁状リブ23b とからなる、全体がI の字状形状をしている。即ち、補強用部材20b は、車体幅方向に延在するとともに、車体前後方向に互いに間隔を置いて略平行に配置された一対の縦壁状フランジ21b 、22b と、車体前後方向に延在して、これら一対のフランジ21b 、22b 同士を、これらの中央部で各々つなぐ縦壁状リブ23b とから構成される。
【0053】
なお、図7 、8 において、バンパー補強材1 は、前記図3 、4 と同様に、日形断面形状を有している。また、補強用部材20b のバンパー補強材1 やステイ10との接合方法も、前記図3 、4 の場合と同様である。更に、補強用部材の、車体衝突時の作用も、前記図3 、4 の補強用部材20a の場合と同様である。
【0054】
(補強用部材の変形例2)
本発明に係る補強用部材の、更に、別な態様を図9 、図10に示す。図9 は補強用部材の斜視図、図10は、この補強用部材をバンパー補強材に装着した態様を示す平面図である。また、図11は、図9 、図10の更なる変形例を示す平面図である。
【0055】
図9 に示す補強用部材20c は、エネルギ吸収を行なうコの字状部分自体は、前記図3 、4 で示した、補強用部材20a と同様の形状である。即ち、図9 において、補強用部材20c は、垂直な縦壁状フランジ21c 、22c と、垂直な縦壁な壁状リブ23c とからなる、全体がコの字状形状をしている。一対の縦壁状フランジ21c 、22c は、図10に装着時を示すように、バンパー補強材1 の長手方向に延在するとともに、バンパー補強材1 の幅方向に互いに間隔を置いて略平行に配置されている。また、垂直な縦壁な壁状リブ23c は、バンパー補強材の幅方向に延在して、これら一対のフランジ21c 、22c 同士をつなぐ。
【0056】
図9 に示す補強用部材20c の特徴の一つは、縦壁状フランジ21c 、22c が平行ではなく、互いに傾斜した、末広がりのテーパ状を有して、対峙するようにしている。
【0057】
この補強用部材20c の特徴のもう一つは、更に、係止め片24を有している点である。この係止め片24は、後面側縦壁状フランジ22c 端部と、コーナー部 (ヘアピン部)25 を介して連接され、後面側縦壁状フランジ22c と略同方向に向かって延在している。
【0058】
補強用部材20c をバンパー補強材1 の端部から、そのステイ取り付け位置に対応する中空空間内に挿入する場合、係止め片24のみが、バンパー補強材1 の、中空空間内ではなく、後面9 側 (外側) に配置されるように、挿入する。挿入後の補強用部材20c は、その後面側フランジ22c と係止め片24とで、バンパー補強材1 の後面壁3 を挟持するように係止される。そして、補強用部材20c の係止め片24とステイ10の筒状先端部とが溶接によって接合されている。また、バンパー補強材1 の後面壁3 と補強用部材20c の後面側フランジ22c 、係止め片24とが、これらを貫通するボルトなどの機械的な締結手段13や溶接などによって、更に一体に接合されている。なお、バンパー補強材1 の前面壁2 と、補強用部材20c の前面側フランジ21c とを、一体に接合しても良いし、しなくても良いのは、前記した通りである。
【0059】
この場合、前記した通り、縦壁状フランジ21c 、22c とは、テーパ状を有して対峙している。このため、前記中空空間内に挿入する際には、縦壁状フランジ21c 、22c 同士の間隔が、前記中空空間内に見合って狭められ、中空空間内に設置時には互いに略平行となる。補強用部材20c はアルミニウム合金製であるので、弾性が大きく、テーパ状を有した縦壁状フランジ21c 、22c とは、大きなスプリングバック力によって、バンパー補強材1 の前面壁 (前面側フランジ)2と、後面壁 (後面側フランジ)3とに、各々押しつけられ、適当な接合力を確保される。
【0060】
また、この際、係止め片24と後面側縦壁状フランジ22c との間隔x を、バンパー補強材1 の後面壁3 の厚みよりも若干小さめとする。これによって、前記とは逆のスプリングバック力によって、係止め片24と後面側縦壁状フランジ22c とで、バンパー補強材の後面壁3 を、比較的大きな力で挟持できる。したがって、このこの係止め片24は、補強用部材20c のバンパー補強材1 空間内への挿入時のガイドの役割や、補強用部材20c のバンパー補強材1 への接合力を増す役割なども果たす。
【0061】
図11は、図9 、図10の更なる変形例を示す。この図11では、前記図9 、図10における補強用部材20c と、ステイ10とを、予め一体化させた態様を示している。この態様であれば、図10のように、補強用部材20c とステイ10とを接合する必要がなくなる。このようなステイと補強用部材とを一体化させたものは、アルミニウム合金の押出形材によって得られる。但し、この場合、ステイ10の軸方向は、これまでの車体の前後方向ではなく、車体の上下方向となる。
【0062】
なお、本発明に係る補強用部材の断面形状をZ字状とした場合、一対の縦壁状フランジの構成は、コの字状型やI 型の本発明例断面形状と同じであるものの、これらをつなぐ縦壁状リブが荷重方向に対して斜めに互いの縦壁状フランジに接続している。このため、縦壁状リブの曲げ変形が生じず、リブとフランジとの接続部の角度が変化するだけであるので、エネルギ吸収特性は、コの字状型やI 型の本発明例断面形状に比して格段に劣る。また、バンパー補強材の中空空間内に斜めに配置されたリブが中空空間を遮る形となるので、補強用部材の取り付け作業なども非常に煩雑となる。
【0063】
(補強用部材用アルミニウム合金)
以下に、本発明に係る補強用部材の制作方法や設計条件、補強用部材用の好ましいアルミニウム合金などを以下に説明する。本発明に係る補強用部材は、略コの字状または略I型状の断面形状を有しているので、これら断面形状の形材を押出により一体に制作することが好ましい。特に、前記図10の場合などは、一体に制作できる押出形材が適している。ただ、板材を上記した各補強用部材形状に一体成形するか、部分的に制作した板材や形材などを溶接などで接合して一体化させるなどして制作することも可能である。本発明では、補強用部材をアルミニウム合金とするため、あまり重量増加にならず、バンパー補強材構造としての軽量化を阻害しない。
【0064】
この軽量化を阻害しないためには、補強用部材の各部位の厚み (肉厚) が、好ましくは5mm 以下の、できるだけ薄い肉厚のアルミニウム合金からなることが好ましい。厚みが例えば5mm を越えて厚い場合、重量と強度との関係から、軽量化を阻害する可能性が有るし、補強のためには、これ以上厚くする必要も無い。
【0065】
本発明に係る補強用部材用のアルミニウム合金材は、この薄肉化条件を満たすために、耐力が180MPa以上であることが好ましい。180MPa未満の場合、前記4mm 以下の薄肉化を前提にすると、前記補強効果が不足しやすい。
【0066】
補強用部材のこれらの特性を満足するアルミニウム合金としては、通常、この種構造部材用途に汎用される、AA乃至JIS 5000系、6000系、7000系等の耐力の比較的高い汎用合金であって、必要により調質したアルミニウム合金が適宜選択される。
【0067】
(バンパー補強材)
バンパー補強材用のアルミニウム合金材として、まず、軽量化の目的を達成するためには、各部位の厚み (肉厚) が、好ましくは5mm 以下の、できるだけ薄い肉厚のアルミニウム合金からなることが好ましい。厚みが例えば5mm を越えて厚い場合、例え中空形材であっても、重量と強度との関係からは、従来の鋼製バンパー補強材と大差なくなり、軽量化のためのAl合金材採用の利点そのものが損なわれてしまう。
【0068】
また、この軽量化条件を満たすためにも、アルミニウム合金は、好ましくは200MPa以上の高耐力アルミニウム合金であることが好ましい。アルミニウム合金の耐力が例えば200MPa以上と高いことによって、前記5mm 以下の厚みが薄い場合であっても、補強用部材やバンパー補強材の圧壊強度を上げることができる。
【0069】
バンパー補強材としての要求特性を満足するアルミニウム合金としては、通常、この種構造部材用途に汎用される、AA乃至JIS 5000系、6000系、7000系等の耐力の比較的高い汎用合金であって、必要により調質されたアルミニウム合金から選択して用いられる。
【0070】
バンパー補強材は、その断面形状からして、アルミニウム合金中空形材であって、アルミニウム合金押出中空形材が好ましい。但し、圧延板を成形加工、接合などして制作することも可能である。
【0071】
バンパー補強材は、バンパーモジュールの一貫として、略水平に車体の幅方向に延在して、車体の前面や後面に取り付けられる。この点、バンパー補強材の長手方向の形状自体は、車体の側の設計に応じて適宜選択される。この点、長手方向に亘る直線型であっても、前記湾曲型バンパー補強材であっても良い。また、湾曲型も、両端に直線的なあるいは曲線的な湾曲部 (屈曲部) を有していても良く、また、全体が湾曲していても良い。ただ、全体が湾曲している、あるいは両端に曲線的な湾曲部を有している場合、湾曲度にもよるが、本発明補強部材をバンパー補強材端部から中空空間内に挿入しにくい場合がある。また、挿入するために、補強部材の側を小径とした場合、中空空間内との隙間が生じて、補強部材の効果が低下する場合がある。したがって、本発明補強部材を適用する場合には、この点も考慮して、バンパー補強材を選択乃至設計することが好ましい。
【0072】
バンパー補強材の中空断面形状は、所望の圧壊強度を得るために適宜選択可能である。即ち、バンパー補強材の基本的な断面形状や構造は、前記図3 に例示する通り、衝突方向乃至衝突荷重F に対峙して立設された前面壁 (前面側フランジ)2と、後方に位置する後面壁 (後面側フランジ)3、およびこれらを直角方向で接続する水平な側壁 (ウエブ)4、5 により構成される、略矩形断面形状(略口形断面形状)の中空形材である。
【0073】
そして、この略矩形断面の中空形状を基本に、更なる補強構造や断面形状が選択される。即ち、図3 のバンパー補強材1 では、口形断面形状に対して、前記略矩形中空断面内に、更に二つの中空部区画を有するよう、前記側壁4 、5 と平行に、水平な中間壁 (中リブ)6を設けた日形断面を有している。同様に、口形断面形状に対し、所望の中リブを設けた補強構造として、前記日形以外に、田形、目形などの断面形状が適宜選択可能である。ただ、断面形状によっては、本発明補強部材をバンパー補強材端部から中空空間内に挿入しにくい場合があるので、本発明補強部材を適用する場合には、この点も考慮して、バンパー補強材断面形状を選択乃至設計することが好ましい。なお、本発明におけるバンパー補強材の中空断面は、以上説明したような完全な閉断面の中空形状でなくとも、いずれか一部の壁乃至辺が開口した中空状の断面でも可である。しかし、強度的には同一乃至類似の閉断面中空形状に比して劣るため、軽量化や圧壊強度などの点で不利となる。
【0074】
また、これら中空構造を基にフランジやウエブを円弧状などの曲線状とする、あるいはフランジを荷重方向に対し上下方向に張り出したような応用形状から、適宜選択される。なお、バンパー補強材の長手方向に渡る断面形状は、必ずしも同一でなくとも部分的あるいは順次断面形状が変化するような中空形状が、車体の設計側から、自由に選択できる。
【0075】
(ステイ)
ステイの材質について、補強用部材やバンパー補強材とともに、ステイもアルミニウム合金とすれば、更に軽量化が期待できる。ただ、軽量化の課題が小さく、電食の問題が回避できるような場合には、ステイをアルミニウム合金とする必要は必ずしもなく、従来から汎用されている鋼製としても良い。但し、鋼製のステイの場合、押出により中空形材を製造するのは無理なので、板材や形材を中空形状に成形後、接合部を溶接など接合して、ステイ用の中空形材を製造する。
【0076】
前記図3 では、口形断面の中空筒状のアルミニウム合金製ステイ10、10を一例として示している。ただ、ステイの断面形状も、この断面形状と材料強度より定まる所望の車体前後方向の圧壊強度を得るために、前記バンパー補強材の場合と同様な、種々の中空形材断面形状、構造が適宜選択される。
【0077】
例えば、略矩形などの中空構造を基本とし、取り付けを容易にするためなどに、更に、荷重方向に対しての前面壁や後面壁に、この前面壁に面一で、かつ側方に更に張り出したフランジ部などを有していても良い。そして、長手方向に断面形状も、均一、または、部分的あるいは順次断面形状が変化するような中空形状が、車体の設計側から自由に選択できる。また、前記湾曲型バンパー補強材など、ステイ取付部のバンパー補強材背面形状に対応して、ステイの前面あるいは前面壁が、直線的あるいは曲線的な傾斜状乃至傾斜壁などの、取り付け易い形状となっていることが望ましい。
【0078】
ここで、ステイをアルミニウム合金製としても鋼製としても、軽量化の目的を達成するためには、各部位の厚み (肉厚) を4mm 以下の厚みとすることが好ましい。一方、厚みが4mm を越えた場合、中空形材であっても重量化し、軽量化の利点そのものが損なわれてしまう。
【0079】
ステイ用のアルミニウム合金材は、この薄肉化条件を満たすために、耐力が200MPa以上であることが好ましい。耐力が200MPa未満のように、小さ過ぎると、4mm 以下の厚みを前提にすると、前記車体前後方向の圧壊強度が不足しやすい。
【0080】
これらのステイとしての要求特性を満足するアルミニウム合金としては、通常、この種構造部材用途に汎用される、AA乃至JIS 5000系、6000系、7000系等の耐力の比較的高い汎用合金であって、必要により調質したアルミニウム合金から選択して用いられる。ただ、この中でも、特に、6000系や7000系のアルミニウム合金押出形材が好ましい。また、ステイとしての要求特性を満足する鋼材としては、一般の軟鋼板などでも良いが、ハイテンの鋼板が好ましい。
【産業上の利用可能性】
【0081】
本発明によれば、Al合金採用の軽量化の利点を損なわずに、バンパー補強材の圧壊強度を大きくするために、高いエネルギ吸収特性と重量軽減効果があり、かつ取り付け性に優れるバンパー補強材構造を提供することができる。このため、前記したオフセットあるいは中高速衝突時などでも、バンパー補強材とステイとの全体の変形量を小さくして、後方の各種自動車部品への干渉や損傷を防止できる。したがって、バンパー補強材構造へのAl合金材の用途を大きく拡大するものであり、工業的な価値が大きい。
【図面の簡単な説明】
【0082】
【図1】バンパー補強材の一般的な態様を示す平面図である。
【図2】本発明に係るバンパー補強材構造の一実施態様を示す平面図である。
【図3】図2のバンパー補強材構造の斜視図である。
【図4】図3のバンパー補強材構造の側面図である。
【図5】本発明バンパー補強材構造の車体衝突時の変形を示す側面図である。
【図6】本発明バンパー補強材構造の車体衝突時の変形を示す側面図である。
【図7】本発明バンパー補強材構造の別の態様を示す側面図である。
【図8】図7の平面図である。
【図9】本発明に係る補強用部材の別の態様を示す斜視図である。
【図10】図9の補強用部材を組み込んだ、本発明バンパー補強材構造の態様を示す断面平面図である。
【図11】図9の補強用部材の変形例を組み込んだ、本発明バンパー補強材構造の態様を示す断面平面図である。
【図12】従来例の補強用部材を組み込んだ、バンパー補強材構造の態様を示す断面平面図である。
【図13】従来例の補強用部材を組み込んだ、バンパー補強材構造の衝突後の変形を示す平面図である。
【符号の説明】
【0083】
1:バンパー補強材、2:前面壁、3:後面壁、4 、5:側面壁、6:中間壁、
7:バンパー補強材湾曲部、8:バンパー補強材直線部、
9:バンパー補強材湾曲部後面 (ステイ取付部) 、10: ステイ、11: フランジ、
13、14: 締結手段、20: 補強用部材、21、22: 壁状フランジ、23: 壁状リブ、
24: 係止め片、25: コーナー部、

【特許請求の範囲】
【請求項1】
アルミニウム合金中空形材製バンパー補強材と、このバンパー補強材後面に設けられたステイとからなり、バンパー補強材への衝突荷重負荷時に、バンパー補強材とともにステイも変形して衝突エネルギーを吸収するバンパー構造体であって、バンパー補強材のステイ取り付け位置に対応する中空空間内に、開断面形状のアルミニウム合金製補強用部材を設け、この補強用部材は、バンパー補強材長手方向に延在するとともに、バンパー補強材幅方向に互いに間隔を置いて略平行に配置された一対の縦壁状フランジと、バンパー補強材幅方向に延在して、これら一対のフランジ同士をつなぐ壁状リブとから構成される略コの字状または略I型状の断面形状を有した構成とされるとともに、少なくとも後面側の前記縦壁状フランジにおいて、ステイおよびバンパー補強材と一体に接合された構成とされ、この補強用部材も、バンパー補強材への衝突荷重負荷時に変形して衝突エネルギーを吸収することを特徴とする乗用車用バンパー構造体。
【請求項2】
前記バンパー補強材の両端部が車体側へ曲げられており、この曲げられた両端部部分において、前記ステイおよび補強用部材がバンパー補強材と一体に接合されている請求項1に記載の乗用車用バンパー構造体。
【請求項3】
前記補強用部材が、後面側の縦壁状フランジの端部に連接されるとともに、縦壁状フランジと略同方向に向かう係止め片を更に有しており、この係止め片が前記後面側の縦壁状フランジ後面側に配置されるように、前記バンパー補強材のステイ取り付け位置に対応する中空空間内に補強用部材が挿入されるとともに、この係止め片と前記後面側の縦壁状フランジとで、バンパー補強材の後面壁を挟持し、この係止め片後面にステイが接合されている請求項1または2に記載の乗用車用バンパー構造体。
【請求項4】
前記ステイが、アルミニウム合金押出中空形材の軸方向を車体前後方向として、前記バンパー補強材に取り付けられるとともに、バンパー補強材への衝突荷重負荷時に、中空形材の軸方向に変形して衝突エネルギーを吸収する請求項1乃至3のいずれか1項に記載の乗用車用バンパー構造体。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【公開番号】特開2006−1449(P2006−1449A)
【公開日】平成18年1月5日(2006.1.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−180974(P2004−180974)
【出願日】平成16年6月18日(2004.6.18)
【出願人】(000001199)株式会社神戸製鋼所 (5,860)