説明

乳安定剤

【課題】本発明は、増粘多糖類に加え、セロオリゴ糖が配合された、低カロリーで増粘性が低い乳安定剤と、それが配合された食感の良好な乳成分含有組成物を提供することを課題とする。
【解決手段】本発明は、増粘多糖類に加え、難消化性であるセロオリゴ糖を配合することで、低カロリーで増粘性が低い乳安定剤と、それが配合された食感の良好な乳成分含有組成物を提供することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、セロオリゴ糖と増粘多糖類を含有し、低カロリーで増粘性が低い乳安定剤、並びにそれが配合された食感の良好な乳成分含有組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
乳成分は他の成分と反応しやすいため、飲料や食品をはじめとする乳成分含有組成物において、沈殿や分離の発生など安定性に問題を生じる場合が多く、特に酸性領域下で、この現象は顕著である。
【0003】
そこで乳成分の安定性改善のために、増粘多糖類をはじめとする食品添加物を配合する方法が知られているが、消費者の健康志向により、食品添加物の添加量は出来るだけ低減することが望まれている。また増粘多糖類の配合により、組成物が増粘し、食感が損なわれることからも、その使用量の低減が望まれる。
【0004】
そのほか糖質を配合する方法も試みられているが、安定性改善の目的で、ショ糖やトレハロースをはじめとする、高カロリーの消化性糖質を配合することは、健康志向に反するので好ましくない。
【0005】
特許文献1および2には、カルボキシメチルセルロースナトリウム(以下、CMC−Naと言う)を配合した乳酸菌飲料の開示があるが、セロオリゴ糖に関する記載は無い。またCMC−Naは食品衛生法において使用制限が設定されている食品添加物であり、配合量の低減が望まれる。
特許文献3〜6には、大豆多糖類または、大豆多糖類とペクチンの組み合わせによる酸性乳飲料の記述があるが、セロオリゴ糖に関しては何ら言及されていない。
【0006】
特許文献7には、β−グルコオリゴ糖が配合された乳含有飲食物の記載があるが、β−グルコオリゴ糖の実態はゲンチオオリゴ糖であり、セロオリゴ糖とは化学構造が異なり、本発明とは内容を異にする。
特許文献8には、ある特定の水不溶性天然セルロース系物質を、セルラーゼの存在下で酵素分解して得られた、セロオリゴ糖を含むことを特徴とする食品組成物や医薬品組成物の記載がある。しかしながら、具体的にセロオリゴ糖を含有する食品組成物や医薬品組成物の例は示されておらず、その効果の実態は不明である。
特許文献9には、セロオリゴ糖を含有する食品組成物についての記載があるが、多糖類や乳成分含有組成物については何ら言及されておらず、本発明とは内容を異にする。
【0007】
【特許文献1】特開平8−208701号公報
【特許文献2】特開平8−280366号公報
【特許文献3】特開平11−225669号公報
【特許文献4】特開平11−279203号公報
【特許文献5】特開2001−190220号公報
【特許文献6】特開2005−323530号公報
【特許文献7】特開2002−335903号公報
【特許文献8】WO/2006/011479
【特許文献9】WO/2007/037249
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は、セロオリゴ糖と増粘多糖類を含有し、低カロリーで増粘性が低い乳安定剤と、それが配合された食感の良好な乳成分含有組成物を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者は、増粘多糖類に加えセロオリゴ糖が配合することによって、低カロリーで増粘性が低い乳安定剤、並びにそれが配合された食感の良好な乳成分含有組成物を提供することが可能であることを見出し、本発明をなすに至った。
【0010】
すなわち本発明は、以下の通りである。
(1) セロオリゴ糖と増粘多糖類を含有する乳安定剤。
(2) 増粘多糖類が、ペクチン、大豆多糖類、又はカルボキシメチルセルロースナトリウムのいずれかである、(1)に記載の乳安定剤。
(3) 増粘多糖類がカラギーナンである、(1)に記載の乳安定剤。
(4) 増粘多糖類が、ゼラチン、又は寒天のいずれかである、(1)に記載の乳安定剤。
(5) さらに1ppm〜10質量%の高甘味度甘味料を含有する、(1)から(4)の何れかに記載の乳安定剤。
(6) セロオリゴ糖と増粘多糖類を1:9〜9:1の質量比で含有する、(1)から(5)の何れかに記載の乳安定剤。
【0011】
(7) (1)から(6)のいずれかに記載の乳安定剤を含有する、乳成分含有組成物。
(8) pH3〜5.5である、(7)に記載の乳成分含有組成物。
(9) 増粘率250%以下の乳飲料である、(7)又は(8)に記載の乳成分含有組成物。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、増粘多糖類に加えセロオリゴ糖を配合することによって、低カロリーで増粘性が低い乳安定剤、並びにそれが配合された食感の良好な乳成分含有組成物を提供することが可能とする。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
本発明者は、増粘多糖類に加え、難消化性であるセロオリゴ糖を配合することで、低カロリーで増粘性が低い乳安定剤と、それが配合された食感の良好な乳成分含有組成物を提供することが可能であることを見出し、本発明をなすに至った。
以下、本発明について具体的に説明する。
【0014】
本発明のセロオリゴ糖とは、グルコピラノース単位が2〜6個程度、β−1,4結合した構造を持つオリゴ糖であり、セロビオース、セロトリオース、セロテトラオース、セロペンタオースおよびセロヘキサオースからなる群より選択される主成分を、50質量%以上含有する。この主成分とその含有量としては、セロビオースを70質量%以上含有することが好ましく、90質量%以上であれば、さらに好ましい。これは上述のセロオリゴ糖主成分の中で、水に対する溶解度はセロビオースが最も高く、使用に適しているからである。
【0015】
また上述のセロオリゴ糖は、副成分としてグルコースを含有しても構わないが、吸湿性やカロリーの問題から、含有量は10質量%以下であることが好ましい。
本発明のセロオリゴ糖の製造方法としては、特に規定するものではないが、安全性の点からは、パルプをはじめとするセルロース系物質を、セルラーゼで酵素分解して得られるものを使用するのが好ましい。
【0016】
本発明におけるセロオリゴ糖の、主たる成分であるセロビオースのエネルギー換算係数は、2kcal/gであり、難消化性糖質である。昨今の消費者の健康志向からみて、品質改良を目的に、高カロリーの消化性糖質を使用することは問題がある。
ここで言う消化性糖質とは、健康増進法に基づく、健康表示基準対応のエネルギー換算係数が、4kcal/gの糖質であり、トレハロースなどがこれに含まれる。
【0017】
ここで言うセルラーゼとは、セルラーゼを分解する酵素の総称であり、セルロースの分解活性を有する酵素が全て含まれる。セルラーゼ酵素源は、特に限定されるものではないが、例えばセルラーゼ産生菌体、菌体の産生する酵素を精製したもの、精製酵素を添加剤等とともに製剤化したものなどがあげられる。またその剤形も、特に限定されるものではないが、例えば液体、粉末、顆粒などがある。
【0018】
セルラーゼの起源についても、特に限定されるものではなく、公知のセルラーゼ産生微生物としては、Tricoderma属、Acremonium属、Aspergillus属、Bacillus属、Pseudomonas属、Penicillium属、Aeromonus属、Irpex属、Sporotrichum属、Humicola属、Cellovibrio属などがあるが、セルロースを分解する酵素であれば、上記公知の菌由来の酵素に限らず、新規の菌由来の酵素も、本発明でいうセルラーゼに含まれる。
【0019】
本発明の増粘多糖類とは、糖を構成単位とする高分子の総称であり、例えば、アルギン酸およびその塩(例えば、アルギン酸ナトリウムなど)、アルギン酸プロピレングリコールエステル、カルボキシメチルセルロースカルシウム、カルボキシメチルセルロースナトリウム(CMC−Na)、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、デンプングリコール酸ナトリウム、デンプンリン酸エステルナトリウム、メチルセルロース、ポリアクリル酸ナトリウム、アーモンドガム、アラビアガム、キサンタンガム、アラビノガラクタン、エレミ樹脂、カラヤガム、ガッディガム、ダンマル樹脂、トラガントガム、モモ樹脂、アマシードガム、カシアガム、グアーガム、グアーガム分解物、ローカストビーンガム、タラガム、サイリウムシードガム、サバクヨモギシードガム、セスバニアガム、タマリンドシードガム、ジェランガム、トリアカンソスガム、アルギン酸およびその塩、カラギーナン、フクロノリ抽出物、ファーセルラン、アロエベラ抽出物、オクラ抽出物、キダチアロエ抽出物、トロロアオイ、ペクチン、アエロモナスガム、アウレオバシジウム培養液、アゾトバクター・ビネランジーガム、ウェランガム、エルウィニア・ミツエンシスガム、エンテロバクター・シマナスガム、エンテロバクターガム、カードラン、ジェランガム、スクレロガム、デキストラン、納豆菌ガム、プルラン、大豆多糖類などの水溶性ヘミセルロース、カラギーナン、マクロホモプシスガム、ラムザンガム、レバン、酵母細胞壁、微小繊維状セルロースおよびその製剤、バクテリアセルロースおよびその製剤、結晶セルロースおよびその製剤、粉末セルロースおよびその製剤、キチン、キトサン、グルコサミン、オリゴグルコサミン、グルコマンナン、こんにゃく粉、寒天、デキストリン、分岐デキストリン、難消化性デキストリン、PGA、ポルフィラン、ファーセルラン、フコイダンなどがあげられる。ゼラチンはタンパク質であって、化学的には多糖類ではないが、用途としては増粘多糖類と同じであることから、本発明の増粘多糖類に例外的に含めるものとする。これらは単独で使用しても、複数を組み合わせて使用しても構わない。
【0020】
上述の増粘多糖類は、特に限定するものではないが、乳含有組成物が酸性の場合は、ペクチン、大豆多糖類、CMC−Naのいずれかを選択するのが好ましい。中でも使用に適するpH領域としては、ペクチンでpH3〜3.8付近、大豆多糖類でpH3.8〜4.6付近である。これらは処方やpHに応じて、組み合わせて使用することも可能である。
【0021】
ここで言うペクチンは、ガラクツロン酸を主体とする酸性多糖類と、数種の中性糖で構成されている。主鎖はα−D−ガラクツロン酸が、α−1,4結合しており、部分的にメタノールでエステル化されている。ガラクツロン酸の主鎖に、β−L−ラムノースが入ることにより、構造にねじれが生じる。また中性多糖類のアラバン、ガラクタン、キシランなどが、短い側鎖として結合、あるいは混在している。ペクチンを構成するガラクツロン酸は、メチルエステルの形と酸の2つの形で存在している。そのエステルの形で存在するガラクツロン酸の割合を、エステル化度(DE)と呼び、このDEの割合で性質が異なる。DEが50%以上のものはハイメトキシルペクチン(HMペクチン)、それ以外のものはローメトキシルペクチン(LMペクチン)と呼ばれている。
【0022】
ここで言う大豆多糖類とは、水溶性ヘミセルロースの一種であり、大豆の不溶性食物繊維(オカラ等)から製造される水溶性多糖類である。大豆多糖類の化学構造は完全には解明されていないが、ガラクトース、アラビノース、ガラクツロン酸を主たる構成糖とし、さらにラムノース、キシロース、フコース、グルコースを含むと言われている。その分子構造は、ラムノガラクツロンとホモガラクツロンからなる主鎖骨格に、ガラクタンとアラビナンが結合した構造であると推定されている。
【0023】
ここで言うCMC−Naとは、セルロースの水酸基がモノクロロ酢酸と置換されたもので、D−グルコースがβ−1,4結合した直鎖状の構造を持つ。一般に市販されるCMC−Naのエーテル化度(DS)は、0.6〜2程度であり、この中でも食品用途として供されるものは、通常0.65〜0.95である。
【0024】
上述の増粘多糖類は、特に限定するものではないが、乳含有組成物が中性の場合は、カラギーナンの使用が好ましい。
ここで言うカラギーナンとは、紅藻類から抽出される多糖類であり、その構造としてはβ−D−ガラクトースとα−D−ガラクトースのβ−1,4結合と、α−1,3結合が交互に繰り返され、ガラクトースユニットが結合した構造をとっている。このカラギーナンには様々な種類があり、例えば、κ−カラギーナン、λ−カラギーナン、ι−カラギーナン、μ−カラギーナン、ν−カラギーナン、θ−カラギーナン、ξ−カラギーナン、π−カラギーナンなどが知られている。これらの種類は、特に限定されるものではないが、κ−カラギーナン、λ−カラギーナン、ι−カラギーナンを単独、あるいは組み合わせて用いるのが好ましい。
【0025】
また上述の増粘多糖類は、特に限定するものではないが、乳成分含有組成物のゲル化や、ゲルの離水抑制を目的とする場合は、ゼラチンや寒天の使用が最も簡便であるが、その他、ローカストビーンガム、ジェランガム、カラギーナンなども良く使用される。
【0026】
本発明の乳安定剤とは、乳に含まれる成分(脂肪、タンパク質、炭水化物など)の安定化を目的に配合される製剤をさす。
本発明の乳安定剤における、セロオリゴ糖と増粘多糖類の比率は特に限定されないが、質量比で、セロオリゴ糖:増粘多糖類=1:9〜9:1であることが好ましく、さらに好ましくは、3:7〜7:3である。
【0027】
本発明の乳成分含有組成物とは、後述の乳等を含有する組成物であり、乳等の成分を含有する組成物であれば、特に限定されるものではないが、例えば、発酵食品、酸性乳飲料、中性乳飲料、パン類、ケーキ類、菓子類、流動食、介護食など、食品組成物や医薬品組成物が代表的なものである。
ここで言う乳は、その由来や加工の有無を特に限定するものではないが、例えば、牛乳、「山羊、羊、馬、ラクダなどの動物から得られる乳」、人乳、「豆乳などの植物から得られる乳」などがあげられる。
【0028】
ここで言う乳等とは、その由来や加工の有無を特に限定するものではないが、上述の乳に加え、脱脂乳、加工乳、乳飲料、乳製品(クリーム、チーズ、濃縮ホエイ、濃縮乳、煉乳、全脂粉乳、脱脂粉乳、クリームパウダー、ホエイパウダー、たんぱく質濃縮ホエイパウダー、バターミルクパウダー、加糖粉乳、調製粉乳、発酵乳、乳酸菌飲料、酸性乳飲料など)、豆乳類(調整豆乳、豆乳飲料、大豆飲料、発酵豆乳など)、豆腐類、植物性粉末(大豆全粒粉、脱脂大豆粉など)、植物性たんぱく(大豆たんぱく、小麦たんぱくなど)、脱脂大豆などが含まれる。
【0029】
本発明の発酵食品とは、乳酸菌をはじめとする微生物の発酵により得られる食品であれば、特に限定するものではないが、例えば、「乳及び乳製品の成分規格等に関する省令」(以下、乳等省令と言う)に規定される発酵乳、味噌、醤油、漬物、キムチ、発酵果汁および野菜汁、発酵果実および野菜、およびそれらを配合した食品組成物などがあげられる。
【0030】
本発明の乳飲料とは、乳成分(乳または乳等の成分)を含有する飲料であれば、特に限定されるものではないが、無脂乳固形分が0.3質量%以上の、酸性乳飲料または中性乳飲料であることが好ましい。ここで言う無脂乳固形分とは、乳を構成する成分のうち、乳から水分と脂肪分を除いた値であり、その主たる成分は、タンパク質、炭水化物、ミネラル、ビタミンなどである。
【0031】
本発明の酸性乳飲料とは、乳成分(乳または乳等の成分)を含有する酸性飲料のことであり、一般的にはpH6未満のものを意味し、好ましくはpH3〜5.5である。pH6未満であれば酸性乳飲料の種類や製造方法は、特に限定されるものではないが、例えば、「乳成分を含む飲料ベースに、後述の酸味料やpH調整剤などを添加して酸性にする方法」や、「乳成分を含む飲料ベースを、乳酸菌や酵母などの微生物で発酵させて製造する方法」などがあげられ、発酵乳飲料、乳酸菌飲料、殺菌乳酸菌飲料、酸性豆乳飲料、酸性大豆飲料などもこれに含まれる。
【0032】
ここで言う乳酸菌または酵母とは、乳酸発酵を行う微生物のことであり、単独でも、複数を組み合わせて使用しても良い。またその形態は、特に限定されるものではなく、例えば、寄託株などの菌体、菌体を添加剤とともに製剤化したもの、菌体を含む食品や医薬品組成物などを利用することが可能である。また剤形も、特に限定されるものではないが、例えば、液体、粉末、顆粒などがある。
【0033】
乳酸菌または酵母の菌種としては、特に限定するものではないが、Lactobacillus属、bifidobacterium属、Lactococcus属、Pediococcus属、Leuconostoc属などが良く知られている。
具体的には、Lactobacillus plantarum、Lactobacillus pentous、Lactobacillus brevis、Lactobacillus sakei、Lactobacillus fementum、Lactobacillus bulgaricus、Lactobacillus helveticus、Lactobacillus gasseri、Lactobacillus reuteri、Lactobacillus acidophilus、Lactobacillus casei、Lactobacillus paracasei、Lactobacillus johnsonii、Lactobacillus rhamnosus、Lactobacillus salivarius、Lactococcus lactis、Lactococcus diacetylactis、Lactobacillus delbruekii subsp.lactis、Lactobacillus delbruekii bulgaricus、Tetragenococcus halophilus(Pediococcus halophilus)、Pediococcus acidilactici、Pediococcus pentosaceus、Streptococcus thermophilus、Leuconococcus cremoris、Leuconosto mesenteroides、Bacillus coagulans、Bifidobacterium bifidum、Bifidobacterium lactis、Bifidobacterium longum、Bifidobacterium breve、Streptococcus lactis、Streptococcus cremoris、Streptococcus diacetilactis、Streptococcus thermophilus、Saccharomyces florentinusなどがあげられる。
【0034】
中でも、発酵状態や風味が良好であることから、Lactobacillus gasseri、Lactobacillus reuteri、Lactobacillus acidophilus、Lactobacillus casei、Lactobacillus delbruekii subsp.lactis、Bifidobacterium bifidum、Bifidobacterium lactis、Streptococcus thermophilusのいずれかを含有するのが好ましい。
【0035】
乳酸菌は、「植物性乳酸菌」と「動物性乳酸菌」に大別され、通常は動物性乳酸菌が使用される。動物性乳酸菌とは、牛乳、肉類、腸管などの動物由来のものから分離される乳酸菌のことである。
植物性乳酸菌とは、味噌、醤油、漬物、キムチ、サワークラウト、ザーサイ、ワイン、糠、牧草、米、麦、麦芽など加工食品を含む植物由来のものから分離され、糖質などを利用して乳酸を産生する乳酸菌のことであり、菌種は特に限定されるものではないが、Lactobacillus plantarum、Lactobacillus pentous、Lactobacillus brevis、Lactobacillus casei、Tetragenococcus halophilusが好ましい。
【0036】
本発明の中性乳飲料とは、乳成分(乳または乳等の成分)を含有する中性飲料のことであり、pH6〜8のものをさす。pH6〜8の範囲内であれば、その種類は特に限定されるものではないが、例えば、コーヒー飲料、紅茶飲料、ココア飲料、抹茶飲料、加工乳、乳飲料、豆乳飲料、大豆飲料などがあげられる。
【0037】
本発明の乳安定剤には、必要に応じて、1ppm〜10質量%の高甘味度甘味料を含有させることができる。本発明の高甘味度甘味料とは、砂糖と比較して、数倍〜数万倍程度の甘味度を持ち、例えば、サッカリン、サッカリンNa、アスパルテーム、アセスルファムK、スクラロース、甘草抽出物、ステビア、ソーマチン、グリチルリチン、ネオテームなどがあげられる。
【0038】
本発明の食品組成物とは、薬事法で規定される医薬品および医薬部外品と、食品衛生法で規定される食品添加物を除き、飲食に供されるものが全て含まれる。
本発明の食品組成物とは、一般に食品として供される組成物のことであり、特に限定されるものではないが、例えば、「ゼリー、プリン、植物性発酵食品などのゲル状食品」、「アイスクリーム、アイスミルク、ラクトアイス、シャーベット、フローズンヨーグルトなどの冷菓」、「キャンディー、グミキャンディー、トローチ、錠菓、チョコレート、ビスケット、クッキー、米菓、和菓子、羊羹などの餡製品、洋生菓子、スナック菓子、砂糖菓子、プリンなどの菓子類」、「マヨネーズ、ドレッシング、ソース類、たれ類などの調味料」、「フライ類、コロッケ、餃子、中華饅頭などの調理加工品」、「カレー、ハヤシ、ミートソース、シチュー、スープなどのレトルト食品」、「麺類、スープ、野菜加工品などのチルド食品や冷凍食品」、「ハンバーグ、ベーコン、ソーセージ、サラミソーセージ、ハム類などの畜産加工品」、「蒲鉾、ちくわ、魚肉ハム・ソーセージ、揚げ蒲鉾などの水練製品」、「パン、ケーキ、生麺、乾麺、マカロニ、スパゲッティ、中華饅頭の皮、ケーキミックス、プレミックス、ホワイトソース、餃子・春巻等の皮類などの小麦加工食品」、「カレー、ソース、スープ、佃煮、ジャムなどの缶詰類や瓶詰類」、「野菜ペースト、肉のミンチ、果実ペースト、魚介類のペースト等のペースト類」、「果汁・果肉飲料、野菜飲料、酸性乳飲料、乳飲料、乳酸菌飲料、殺菌乳酸菌飲料、コーヒー飲料、紅茶飲料、緑茶、抹茶、ココア飲料、ウーロン茶、煎茶、フルーツ牛乳、炭酸飲料、アルコール飲料などの嗜好飲料」、「豆乳、調製豆乳、豆乳飲料、発酵豆乳、大豆飲料などの豆乳類」、「牛乳、加工乳、低脂肪乳などの牛乳類」、「ホイップクリーム、練乳、バター、発酵乳、チーズなどの乳製品」、「マーガリン、ファットスプレッド、ショートニングなどの油脂加工品」、流動食、介護食などがある。
【0039】
本発明の医薬品組成物とは、薬事法に規定される医薬品または医薬部外品の組成物であり、例えば、錠剤、散剤、細粒剤、顆粒剤、エキス剤、丸剤の固形製剤が挙げられ、上記の固形製剤以外でも、菓子、健康食品、食感改良剤、食物繊維強化剤等の食品、固形ファンデーション、浴用剤、動物薬、診断薬、農薬、肥料、セラミックス触媒などに利用されるものも本発明に含まれる。
【0040】
また医薬部外品組成物の剤形としては、例えば、「セットローション、ヘアスティック、ヘアクリーム、ヘアスプレー、ヘアリキッドなどの整髪料」、「ヘアトニック、ヘアトリートメント、ヘアローションなどの養毛料」、「頭皮料、髪洗粉、シャンプーなどの洗髪料」、「ヘアリンス、オイルリンス、クリームリンス、ボディリンス、フェイシャルリンスなどのリンス類」、「クレンジングクリーム、洗顔クリーム、クレンジングミルク、クレンジングローション、洗粉などの洗顔料」、「パック、油性クリーム、中性クリーム、弱酸性クリーム等のクリーム、ミルクローション、スキンミルクなどの乳液」、「乾性肌用化粧水、普通肌用化粧水、脂肌用化粧水、男性用化粧水、男性ローション、アフターシェーブローションなどの化粧水」、「口紅、リップグロス、リップクリームなどの口紅類」、「バスソルト、バスオイルなどの浴用化粧品」、「オリーブ油、ベビーオイルなどを配合した化粧油」、「日焼け用化粧品」、「日焼け止め化粧品」、「歯磨き粉、歯磨きペースト、口腔用スプレーなどの口腔用組成物」などであっても良い。
【0041】
本発明の乳安定剤と、乳成分含有組成物には、本発明の効果を妨げない限りにおいて、上記の成分以外に、後述の食品素材、食品添加物、医薬品、医薬品添加物などを適宜配合しても良い。
ここで言う食品素材とは、一般に食品の原材料として使用される素材のことであり、薬事法で規定される医薬品および医薬部外品と、食品衛生法で規定される食品添加物を除き、飲食に供される全てのものが含まれる。
【0042】
ここで言う食品添加物とは、食品の加工もしくは保存の目的で添加される物質のことである。
食品添加物の例としては、厚生労働省の「指定添加物リスト」、「既存添加物名簿収載品目リスト」、「天然香料基原物質リスト」、「一般に食品として飲食に供させている物であって添加物として使用される品目リスト」などに収載される食品添加物や、JECFAなどの国際機関で安全性が確認されたもの、米国・欧州などの諸外国で使用が認可されている食品添加物などがあげられ、保存料・日持向上剤、酸化防止剤、甘味料、着色料・色素、乳化剤、増粘ゲル化剤、品質改良剤、調味料、酸味料、強化剤、香料、酵素などに分類される。
【0043】
食品素材や食品添加物の例としては、以下のようなものがあげられる。
ここで言う食品素材としては、例えば、果実・野菜およびそのエキス類、果実・野菜加工品(フルーツプレパレーション、フルーツソース、ジャム等)、乾燥果実(干しぶどう、干しパイナップル等)、ナッツ・種子類(くるみ、ピーナッツ、アーモンド、マカデミアナッツ、ピーカンナッツ、大豆、ゴマ、芥子等)、牛乳、加工乳、豆乳、果汁、野菜汁、卵類(液卵、卵黄粉末等)、ココア末、糖や糖アルコール類、肉や魚のエキス類、タンパク質、ペプチド、アミノ酸類、食物繊維、天然由来高分子(コラーゲン、ヒアルロン酸、天然繊維等)、ビタミン類、生理活性物質(コエンザイムQ10、α−リポ酸、β−グルカン、セラミド等)、澱粉類、デキストリン、油脂類(サラダ油、ゴマ油、ラード、菜種油、ショートニング等)、アルコール類、塩類(食塩、Caなどのミネラル類等)、調味料(醤油、味噌、酢、みりん、砂糖、マヨネーズ、ドレッシング、タレ、豆板醤、ソース類等)、香辛料(シナモン、コショウ、唐辛子等)などがあげられる。
【0044】
保存料・日持向上剤としては、例えば、例えば、過酸化水素、ソルビン酸およびソルビン酸K、デヒドロ酢酸Na、パラオキシ安息香酸エステル類、安息香酸および安息香酸Na、プロピオン酸およびその塩類、次亜塩素酸Na、酢酸、酢酸ナトリウム、グリシン、エチルアルコール、ポリリジンおよびその製剤、プロタミンおよびその製剤、リゾチームおよびその製剤、ペクチン分解物、アラニン、チアミンラウリル硫酸塩、ユッカフォーム抽出物、キトサンおよびその製剤、プロピレングリコールなどがあげられる。
【0045】
酸化防止剤としては、例えば、ブチルヒドロキシアニソール、ブチルヒドロキシトルエン、L−アスコルビン酸およびアスコルビン酸Na、エリソルビン酸およびエリソルビン酸Na、ミックストコフェノールなどがあげられる。
甘味料としては、例えば、上述の高甘味度甘味料、単糖類(アロース、タロース、グロース、グルコース、アルトロース、マンノース、ガラクトース、イドース、フルクトース、リボース、リキソース、キシロース、アラビノース、アピオース、エリトロース、トレオース、グリセルアルデヒド、セドヘプツロース、コリオース、プシコース、ソルボース、タガトース、リブロース、キシルロース、エリトルロース、ジヒドロキシアセトン等)、二糖類やオリゴ糖類(スクラロース、トレハロース、コージビオース、ニゲロース、マルトース、イソマルトース、イソトレハロース、ソホロース、ラミナリビオース、ゲンチオビオース、ラクトース、スクロース、パラチノース、トレハルオース、フラクトオリゴ糖、パラチノースオリゴ糖、グリコシルスクロース、ラクトスクロース、テアンデロース、ガラクトシルラクトース、ラクチュロース、α−結合ガラクトオリゴ糖、マルトオリゴ糖、イソマルトオリゴ糖、パノース、ニゲロオリゴ糖、トレハロース、デキストリン、サイクロデキストリン、分岐サイクロデキストリン、ゲンチオオリゴ糖、キシロオリゴ糖、キチンオリゴ糖、キトサンオリゴ糖、大豆オリゴ糖、ラフィノース、ビートオリゴ等)、糖アルコール類(グリセロール、エリスリトール、キシリトール、リビトール、アラビトール、ガラクチトール、ソルビトール、マンニトール、還元パラチノース、マルオトリイトール、イソマルトトリイトール、マルトテトライトール、イソマルトテトライトール等)、水飴、還元水飴、糖含有シロップ、液糖、糖蜜、蜂蜜などがあげられ、その化学構造や性状(固体、液体、顆粒など)は特に限定されない。
【0046】
着色料としては、β−カロチン色素、抽出カロチン色素、ビタミンB2、銅クロロフィルおよび銅クロロフィルNa、アナトー、アカキャベツ、アカダイコン、イカスミ、植物炭末、ウコン、エルダーベリー、カカオ、カロブ、クロロフィル、クチナシ黄、クチナシ青、クチナシ赤、グレープスキン、コチニール、コーリャン、シソ、シアナット、スピルリナ、タマリンド、タマネギ、トマト、パプリカ、ビートレッド、ブドウ果汁、ベニコウジ、ベニバナ黄、ベニバナ赤、マリーゴールド、ムラサキイモ、ムラサキコーン、ラック、カラメルなどがあげられる。
色素としては、例えば、赤色2号、赤色3号、赤色40号、赤色102号、赤色105号、赤色106号、黄色4号、黄色5号、青色1号、青色2号、赤色3号レーキ、赤色40号レーキ、黄色4号レーキ、黄色5号レーキ、青色1号レーキ、青色2号レーキなどがあげられる。
【0047】
乳化剤としては、例えば、グリセリン脂肪酸エステル、ソルビタン脂肪酸エステル、PGエステル、ショ糖脂肪酸エステル、有機酸モノグリセリド、ポリグリセリン脂肪酸エステル、ポリグリセリン縮合リシノレイン酸エステル、プロピレングリコール脂肪酸エステル、レシチン類(レシチン、酵素分解レシチン、酵素処理レシチン等)、植物ステロールなどがあげられる。
増粘ゲル化剤としては、例えば、上述の増粘多糖類があげられる。
【0048】
品質改良剤としては、ステアロイル乳酸Ca、フィチン酸、プロピレングリコール、リン酸Ca、リン酸Na、ピロリン酸Na、ポリリン酸Na、メタ・ヘキサリン酸Na、リン酸K、リン酸アンモニウム、リン酸、焼みょうばん、生みょうばん、ホエーたん白、カゼイン、カゼイネート、プラズマパウダー、粉末状大豆たん白、粉末状小麦たん白、ペースト状小麦たん白、EDTA塩類などがあげられる。
調味料としては、例えば、グルタミン酸Na、核酸系調味料、アミノ酸系調味料、エキス系調味料、酵母エキス、グリシン、アラニンなどがあげられる。
酸味料としては、例えば、クエン酸およびその塩、乳酸、リンゴ酸、酒石酸、コハク酸、フマル酸、アジピン酸、グルコン酸液、グルコノデルタラクトンなどがあげられる。
【0049】
強化剤としては、例えば、ビタミンA、ビタミンB1、ビタミンB2、ビタミンB6、ビタミンB12、ビタミンC、ビタミンD、ビタミンE、ニコチン酸およびニコチン酸アミド、葉酸、パトテン酸Ca、グルコン酸Ca、乳酸Ca、天然Ca、ミルクCaなどがあげられる。
香料としては、例えば、ピーチフレーバー、オレンジフレーバー、レモンフレーバー等のフルーツフレーバー類、アロマフレーバー類、マルトール、フラネオール等のシュガーフレーバー類、ソトロン等のフレーバーエンハンサー類、フラボノイド類、カカオマス等のポリフェノール類、プリカーサーフレーバー類、ミートフレーバー類、コーヒーフレーバー類、ミルクフレーバー、メントール類、デカラクトン類などがあげられる。
酵素としては、例えば、αアミラーゼ、βアミラーゼ、グルコアミラーゼ、プルラナーゼ、グルコースイソメラーゼ、プロテアーゼ、レンネット、パンクレアチン、パパインなどがあげられる。
【0050】
ここで言う医薬品とは、薬事法に規定される医薬品をさす。つまり以下の(1)〜(3)に該当するものであり、医薬品薬効成分の多くがこれに含まれる。
(1)日本薬局方に収められている物
(2)人又は動物の疾病の診断、治療又は予防に使用されることが目的とされている物であって、機械器具、歯科材料、医療用品及び衛生用品(以下「機械器具等」という。)でないもの(医薬部外品を除く。)
(3)人又は動物の身体の構造又は機能に影響を及ぼすことが目的とされている物であって、機械器具等でないもの(医薬部外品及び化粧品を除く。)
【0051】
ここで言う医薬品添加物とは、薬事法上の医薬品や医薬部外品に該当しない、医薬品製剤に含まれる有効成分以外の物質であり、「製剤化を容易にする」、「品質の安定化を図る」、「有用性を高める」などを目的として、医薬品や医薬部外品などに添加される物質の総称である。用途により、賦形剤、崩壊剤、結合剤、流動化剤、矯味剤、香料、着色剤、甘味剤、溶剤、油脂、増粘剤、界面活性剤、ゲル化剤、安定剤、保存剤、緩衝剤、懸濁化剤、粘稠剤などに分類される。代表的な医薬品添加物は、「医薬品添加剤事典」(株式会社薬事日報社)、「医薬品添加物ハンドブック」(株式会社薬事日報社)などに収載されている。
【0052】
本発明の乳成分含有組成物が、液状物である場合の安定性改善効果は、沈殿・分離等の外観で評価され、乳安定剤を配合しない乳成分含有組成物を基準として、以下の基準で判定される。
○:安定性改善効果有り(基準より沈殿・分離が少ない)
×:安定性改善効果無し(基準より沈殿・分離が多い、または基準と同等)
【0053】
また必要に応じて、参考として再散回数を数え、乳安定剤を配合しない乳成分含有組成物を基準として、基準より再分散回数が少ない場合に、乳安定剤が安定性改善に寄与していると判断した。
【0054】
本発明の乳成分含有組成物が、液状物である場合の増粘率とは、セロオリゴ糖や増粘多糖類など、乳安定剤の配合による増粘性の指標であり、次式により表される。口あたりや、のど越しへの影響を考えると、増粘率が250%以下であることが好ましく、特に好ましくは200%以下である。
増粘率(%)={(β−α)/α}×100
ここで、α:乳安定剤を配合しない乳成分含有組成物の粘度(mPa・s)、β:乳安定剤を配合した乳含有組成物の粘度(mPa・s)
増粘性は上述の増粘率をもとに、以下の判定基準で評価される。
○:増粘率が250%以下
×:増粘率が250%より大きい
【0055】
本発明の乳成分含有組成物が、固形物である場合の安定性改善効果は、離水改善率を指標に表され、次式により算出される。なお、ゲル状組成物は、ここで言う固形物に含まれるものとする。
離水改善率(%)={(γ−δ)/γ}×100
ここで、γ:乳安定剤を配合しない乳成分含有組成物の離水率(%)、δ:乳安定剤を配合した乳成分含有組成物の離水率(%)である。
安定性改善効果は、上記の離水改善率をもとに、以下の判定基準で評価される。
○:離水改善率が50%以上
×:離水改善率が50%未満
【0056】
本発明の乳成分含有組成物の食感は、20人のパネラーによる食感評価によって評価され、乳安定剤を配合しない乳成分含有組成物を基準として、以下の基準で判定される。
○:基準と同等以上
×:基準より劣る
【0057】
次に実施例によって本発明をさらに詳細に説明する。なお本願発明にかかる物質の諸物性の評価は以下の手法に拠った。
<糖組成>
以下の条件で、糖組成分析を行った。
装置:高速液体クロマトグラフ「LC−20A型」(株式会社島津製作所製)
検出器:示差屈折率検出器(RI検出器)
カラム:「Asahipak NH2P−50」(昭和電工株式会社製)
カラム温度:40℃
移動相:アセトニトリル/水=75/25(容積比)
流量:1mL/min
【0058】
<pH>
pH計(東亜ディーケーケー株式会社製、「HM−50G形」)で測定した。
【0059】
<乳飲料の粘度および増粘率>
製造後、10℃で24時間保存した乳飲料を、上下に良く振って均一にしたものを、ビーカーあるいはアダプターに充填した。さらに、回転粘度計(B形粘度計、東機産業株式会社製、「TV−10形」)にセットし、60秒後の粘度を読みとり、粘度を測定した。なお、ローター回転数は100rpmとし、ローターおよびアダプターは粘度によって適宜変更した。
【0060】
上記で測定した粘度の値を用いて、次式に従って増粘率を算出した。増粘率とは、セロオリゴ糖や増粘多糖類など、乳安定剤の配合による増粘性の指標であり、次式により表される。口あたりや、のど越しへの影響を考えると、増粘率が250%以下であることが好ましく、特に好ましくは200%以下である。
増粘率(%)={(β−α)/α}×100
ここで、α:乳安定剤を配合しない乳飲料の粘度(mPa・s)、β:乳安定剤を配合した乳飲料の粘度(mPa・s)である。
【0061】
増粘性は上述の増粘率をもとに、以下の判定基準で評価した。
○:増粘率が250%以下
×:増粘率が250%より大きい
【0062】
<乳飲料の安定性(外観)と安定性改善効果>
製造後、10℃で7日間保存した後に、沈殿・分離等の外観を評価した。本発明の安定性改善効果は、沈殿・分離等の外観で評価され、乳安定剤を配合しない乳飲料を基準として、以下の基準で判定した。
○:安定性改善効果有り(基準より沈殿・分離が少ない)
×:安定性改善効果無し(基準より沈殿・分離が多い、または基準と同等)
【0063】
<乳飲料の安定性(参考:再分散性)>
製造後、10℃で7日間保存した後に、再分散回数を数えた。再分散回数とは乳飲料が入った200mLガラス製容器を倒立して元に戻す操作を1回と数え、この倒立と元に戻す操作の繰り返しによって容器底部に沈積した不溶性成分の沈殿が解消されるまでに要した回数のことである。
【0064】
<乳飲料の食感評価(糊状感)>
製造後、10℃で2時間保存後、健常男女各10名(計20名)による食感評価を実施し、「3点/人」を持ち点として、以下の基準で点数化して合算し、評価を行った。
3点:基準と同等以上(基準と同等、または基準より糊状感が少ない)
2点:基準より劣る(基準より糊状感を強く感じる)
1点:基準より顕著に劣る(基準より糊状感を顕著に強く感じる)
得られた合算値を、以下の基準にあてはめて評価を行った。
○:基準と同等以上(51点≦合算値)
×:基準より劣る(合算値<51点)
【0065】
<乳飲料の食感評価(のど越し)>
製造後、10℃で2時間保存後、健常男女各10名(計20名)による食感評価を実施し、「3点/人」を持ち点として、以下の基準で点数化して合算し、評価を行った。
3点:基準と同等以上(基準と同等、または基準よりのど越しが良好)
2点:基準より劣る(基準よりのど越しが悪い)
1点:基準より顕著に劣る(基準より糊状感を顕著にのど越しが悪い)
得られた合算値を、以下の基準にあてはめて評価を行った。
○:基準と同等以上(51点≦合算値)
×:基準より劣る(合算値<51点)
【0066】
<ハードヨーグルトの離水率と安定性改善効果>
発酵後、10℃で3日間保存したハードヨーグルト(発酵乳)を使用して、発酵乳の質量(g)をあらかじめ測定し、記録しておく。
押し込み治具を、以下の条件で深度10mmまで押し込んだのち、押し込み治具を引き上げる。
装置:RHEO METER「NRM−2002J型」(不動工業株式会社製)
押し込み治具:10mmφ球状治具
押し込み速度:60mm/min
温度:10℃
さらに発酵乳を、30℃の雰囲気下に1時間静置し、離水を綿棒で吸い取って質量をはかり、離水量(g)とする。次式に従って、離水率を算出した。
離水率(%)=〔離水量(g)/発酵乳の質量(g)〕×100
【0067】
安定性改善効果は、離水改善率を指標に表され、次式により算出される。
離水改善率(%)={(γ−δ)/γ}×100
ここで、γ:乳安定剤を配合しないハードヨーグルトの離水率(%)、δ:乳安定剤を配合したハードヨーグルトの離水率(%)である。
安定性改善効果は、上述の離水改善率をもとに、以下の判定基準で評価した。
○:離水改善率が50%以上
×:離水改善率が50%未満
【0068】
<ハードヨーグルトの食感評価(フレーバーリリース)>
発酵後、10℃で3日間保存ののち、健常男女各10名(計20名)による食感評価を実施し、「3点/人」を持ち点として、以下の基準で点数化して合算し、評価を行った。
3点:基準と同等以上(基準と同等、または基準よりフレーバーリリースが良好)
2点:基準より劣る(基準よりフレーバーリリースが劣る)
1点:基準より顕著に劣る(基準よりフレーバーリリースが顕著に劣る)
得られた合算値を、以下の基準にあてはめて評価を行った。
○:基準と同等以上(51点≦合算値)
×:基準より劣る(合算値<51点)
【実施例】
【0069】
以下、本発明を実施例と比較例を示して、具体的に説明するが、本発明はこれらに何ら限定されるものではない。
実施例で使用する原材料について、次の(1)〜(17)に示す。
(1)セロオリゴ糖の製造:普通寒天培地にTricoderma reesei、GL−1株(独立行政法人産業技術総合研究所 特許生物寄託センター、受領番号FERM BP−10323)を接種し、37℃で7日間培養後、その培地表面から胞子を1白金耳取り、ポリペプトン1g、酵母エキス0.5g、リン酸1カリウム2g、硫酸アンモニウム1.5g、硫酸マグネシウム0.3g、塩化カルシウム0.3g、トレースエレメント1mL(硼酸6mg、モリブデン酸アンモニウム4水和物26mg、塩化鉄(3)6水和物100mg、硫酸銅5水和物40mg、硫酸マンガン4水和物8mg、硫酸亜鉛7水和物200mgを全量100mLの精製水に溶解させたもの)、アデカノール1mL、結晶セルロース(旭化成ケミカルズ株式会社製「セオラスPH−101」)10gを全量1Lの精製水に懸濁および溶解させた培地に植菌し、28℃で5日間通気攪拌培養した。
【0070】
培養中は、水酸化ナトリウム水溶液を用いて、培地のpHを2.8〜4.7となるように調節した。培養後の液を遠心分離し、上清を目開き0.46μmの精密ろ過膜で除菌し、ろ液を分画分子量13000の限外ろ過膜(旭化成ケミカルズ株式会社製 「マイクローザペンシル型モジュール ACP−0013」)を使用して、容積比で10倍濃縮し粗酵素を得た。
次に、市販針葉樹由来の溶解パルプを使用し、加水分解条件を塩酸濃度0.4%塩酸水溶液、120℃、1時間として、加水分解し、酸不溶性残渣を洗浄、ろ過し、ウェットケークを得た。このウェットケークをセルロース10%濃度の水分散体とし、超高性能分散機・湿式微粉砕機(アシザワ株式会社製、「パールミルRL」、φ1mmジルコニアビーズ使用 充填率80%)を使用し、圧密・磨砕処理を施し、セルロース微粒子分散体を得た。
【0071】
この磨砕セルロースが2質量%、粗酵素をタンパク質濃度0.25%になるように50mM酢酸−酢酸ナトリウム緩衝液(pH4.5)に懸濁溶解させ、全量1000mLとし、ガラス製フラスコに仕込んだ。
このガラス製フラスコを、55℃の水槽に仕込み、内部を攪拌しながら4時間反応させた。反応終了後、反応液を懸濁状態で300μL分注し、限外ろ過モジュール(分画分子量10000)を使用し、酵素、未分解セルロースを取り除いた後、高速液体クロマトグラフィーで糖濃度を分析した。該反応液の糖濃度は、グルコース0.3質量%、セロビオース1.5質量%であった。
【0072】
該反応液を、分画分子量13000の限外ろ過膜(旭化成ケミカルズ株式会社製、「マイクローザペンシル型モジュール ACP−0013」)でろ過し、得られたろ液を陽・陰イオン交換樹脂で脱イオン処理し、70℃、減圧下で蒸留し、20倍の糖濃度の水溶液を得た。
上記で得られたセロオリゴ糖水溶液100mLを、200mLのガラス製フラスコに導入し、攪拌しながら、毎時10℃の速度で、70℃から5℃まで冷却した後、エタノールを水に加え晶析した。水溶液中に晶出したセロオリゴ糖を、減圧ろ過、乾燥、粉砕、篩下し、セロオリゴ糖粉末を得た。得たれたセロオリゴ糖粉末の糖組成は、グルコース0.9質量%、セロビオース98.2質量%、セロトリオース0.4質量%、セロテトラオース0.2質量%であった。
【0073】
(2)グラニュー糖(第一糖業株式会社製)
(3)スクラロース(三栄源エフ・エフ・アイ株式会社製)
(4)ペクチン(ユニテックフーズ株式会社製、HMペクチン)
(5)CMC−Na(第一工業製薬株式会社製)
(6)カラギーナン(三栄源エフ・エフ・アイ株式会社製、κ−カラギーナン)
(7)結晶セルロース製剤(旭化成ケミカルズ株式会社製、「RC−N81」)
(8)ゼラチン(新田ゼラチン株式会社製)
【0074】
(9)乳安定剤a
セロオリゴ糖:ペクチン:スクラロース=4:(5.998):(0.002)の質量比で混合したもの
(10)乳安定剤b
セロオリゴ糖:カラギーナン:結晶セルロース製剤=(1.99):(0.01):8の質量比で混合したもの
(11)乳安定剤c
セロオリゴ糖:ゼラチン=5:5の質量比で混合したもの
(12)牛乳(南日本酪農協同株式会社製、乳脂肪分3.5%以上、無脂乳固形分8.3%)
(13)脱脂粉乳(雪印乳業株式会社製)
(14)大豆タンパク質(フジプロテインテクノロジー株式会社製、大豆タンパク質含量86%以上)
(15)ココア粉末(バンホーテン社製)
(16)ヨーグルトフレーバー(富士香料化工株式会社製)
(17)スターター(ダニスコ カルター社製、「MSK−Mix AB N 1−45 Visbybac DIP」)
【0075】
[実施例1]
表1の配合に従って、無脂乳固形分3%、pH3.8の、酸性乳飲料Aを製造した。
80℃の水に、乳安定剤aとグラニュー糖を添加し、回転型ホモジナイザー(プライミクス株式会社製、「T.K.ホモミクサー」)で、6000rpmで10分間、攪拌溶解する。この溶液を40℃まで冷却し、脱脂粉乳を加え、プロペラ攪拌翼で、400rpmで8分間攪拌して溶解させた。
【0076】
さらに攪拌を続けながら、25℃まで冷却し、50%乳酸とDL−リンゴ酸を少量の水に溶解したものを加える。さらにクエン酸Naを外割で添加してpH調整し、ヨーグルトフレーバーを加え、5分間攪拌した。
上記溶液を、高圧ホモジナイザー(APV Gaulin社製、「15MR−8TA」)を使用して、15MPaの圧力で均質化処理し、85℃で殺菌処理の後、容器に充填して酸性乳飲料Aとした。
得られた酸性乳飲料Aの増粘率、安定性、食感評価(糊状感、のど越し)の結果を、表2に示した。比較例1に示す基準と比較して、顕著な増粘傾向は見られず、安定性改善効果が見られ、食感も良好であった。
【0077】
[実施例2]
表3の配合に従い、以下の手順で、無脂乳固形分2.6%以上の、ココア大豆飲料Bを製造した。
乳安定剤b、大豆タンパク質、グラニュー糖、ココア粉末を混合したものを、80℃の水に添加し、実施例1の回転型ホモジナイザーで、6000rpmで15分間攪拌した。次にこの溶液を、実施例1の高圧ホモジナイザーを使用して、1回目に15MPaで、さらに2回目に20MPaで、2回、均質化処理を行った。
次にHTST殺菌装置(株式会社日阪製作所製)で、140℃で10秒間、殺菌処理し、クリーンベンチ内で、容器に充填して密栓した。さらに流水で10℃まで冷却し、上下に10回振とうしたものを、ココア大豆飲料Bとした。pHは7.1であった。
【0078】
ココア大豆飲料Bの評価結果を表4に示す。
比較例5に示す基準と比較して、顕著な増粘の兆候は見られず、安定性が改善され、食感も良好であった。
【0079】
[実施例3]
表5の配合に従い、以下の手順で、無脂乳固形分9.4%以上の、ハードヨーグルトCを製造した。
70℃の水に、乳安定剤cとグラニュー糖を加え、プロペラ攪拌翼で、300rpmで10分間、攪拌溶解した。さらに、牛乳と脱脂粉乳を加えて25℃まで急冷し、300rpmで10分間、攪拌を続けた。
【0080】
この溶液を、実施例1の高圧ホモジナイザーを使用して、15MPaで均質化処理した。次いで、この溶液をクリーンベンチ内に移し、プロペラ攪拌翼を使用して200rpmで攪拌しながら、80℃で30分間殺菌処理した後、さらに200rpmで攪拌しながら、20分で30℃まで冷却した。
この溶液に0.01%質量%水溶液としたスターターを、外割で0.32質量%になるように加え、スパチュラで攪拌し、容器に充填した。
これをインキュベーターに移し、42℃で12時間発酵させた。発酵後10℃の冷蔵庫に移し、3日間経過したものをハードヨーグルトCとした。pHは4.0であった。
ハードヨーグルトCの評価結果を表6に示す。
比較例7に示す基準と比較して、安定性が改善され、食感も良好であった。
【0081】
[比較例1]
実施例1の乳安定剤aを使用せずに、表1の配合に従って、実施例1と同様の方法で、無脂乳固形分3%、pH3.8の、酸性乳飲料Rを製造し、評価した結果を表2に示す。
得られた酸性乳飲料Rの安定性は、実施例1と比較して、顕著に劣っていた。
【0082】
[比較例2]
実施例1の乳安定剤aの代わりに、セロオリゴ糖を使用して、表1の配合に従って、実施例1と同様の方法で、無脂乳固形分3%、pH3.8の、酸性乳飲料Sを製造し、評価した結果を表2に示す。
得られた酸性乳飲料Sの安定性は、実施例1と比較して、顕著に劣っていた。
【0083】
[比較例3]
実施例1の乳安定剤aの代わりに、ペクチンを使用して、表1の配合に従って、実施例1と同様の方法で、無脂乳固形分3%、pH3.8の、酸性乳飲料Tを製造し、評価した結果を表2に示す。
得られた酸性乳飲料Tは、比較例1に示す基準と比較して、安定性は改善されたものの、増粘が激しく、食感(糊状感、のど越し)が顕著に悪化した。
【0084】
[比較例4]
実施例1の乳安定剤aの代わりに、CMC−Naを使用して、表1の配合に従って、実施例1と同様の方法で、無脂乳固形分3%、pH3.8の、酸性乳飲料Uを製造し、評価した結果を表2に示す。
得られた酸性乳飲料Uは、比較例1に示す基準と比較して、安定性は改善されたものの、増粘が激しく、食感(糊状感、のど越し)が顕著に悪化した。
【0085】
[比較例5]
実施例2の乳安定剤bを添加せずに、表3の配合に従って、実施例2と同様の方法で、無脂乳固形分2.6%以上の、ココア大豆飲料Vを製造し、評価した結果を表4に示す。pHは7.4であった。
得られたココア大豆飲料Vの安定性は、実施例2と比較して、顕著に劣っていた。
【0086】
[比較例6]
実施例2の乳安定剤bの代わりに、カラギーナンを使用して、表3の配合に従って、実施例2と同様の方法で、無脂乳固形分2.6%以上の、ココア大豆飲料Wを製造し、評価した結果を表4に示す。pHは7.3であった。
得られたココア大豆飲料Wは、比較例5に示す基準と比較して、増粘が激しく、部分的にゲル化しており、食感(糊状感、のど越し)が顕著に悪化した。
【0087】
[比較例7]
実施例3の乳安定剤cを添加せずに、表5の配合に従って、実施例3と同様の方法で、無脂乳固形分9.4%以上の、ハードヨーグルトXを製造し、評価した結果を表6に示す。pHは4.0であった。
得られたハードヨーグルトXの安定性は、実施例3と比較して、顕著に劣っていた。
【0088】
[比較例8]
実施例3の乳安定剤cの代わりに、セロオリゴ糖を使用して、表5の配合に従って、実施例3と同様の方法で、無脂乳固形分9.4%以上の、ハードヨーグルトYを製造し、評価した結果を表6に示す。pHは4.0であった。
得られたハードヨーグルトYの安定性は、実施例3と比較して劣っていた。
【0089】
[比較例9]
実施例3の乳安定剤cの代わりに、ゼラチンを使用して、表5の配合に従って、実施例3と同様の方法で、無脂乳固形分9.4%以上の、ハードヨーグルトZを製造し、評価した結果を表6に示す。pHは4.0であった。
得られたハードヨーグルトZは、比較例7に示す基準と比較して、安定性は改善されたものの、食感(フレーバーリリース)が悪化した。
【0090】
【表1】

【0091】
【表2】

【0092】
【表3】

【0093】
【表4】

【0094】
【表5】

【0095】
【表6】

【産業上の利用可能性】
【0096】
本発明は、増粘多糖類に加え、セロオリゴ糖が配合された、低カロリーで増粘性が低い乳安定剤と、それが配合された食感の良好な乳成分含有組成物を提供することが可能である。つまり外観に優れ、且つ、食感の良好な商品の提供が可能となる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
セロオリゴ糖と増粘多糖類を含有する乳安定剤。
【請求項2】
増粘多糖類が、ペクチン、大豆多糖類、又はカルボキシメチルセルロースナトリウムのいずれかである、請求項1に記載の乳安定剤。
【請求項3】
増粘多糖類がカラギーナンである、請求項1に記載の乳安定剤。
【請求項4】
増粘多糖類が、ゼラチン、又は寒天のいずれかである、請求項1に記載の乳安定剤。
【請求項5】
さらに1ppm〜10質量%の高甘味度甘味料を含有する、請求項1から4の何れかに記載の乳安定剤。
【請求項6】
セロオリゴ糖と増粘多糖類を1:9〜9:1の質量比で含有する、請求項1から5の何れかに記載の乳安定剤。
【請求項7】
請求項1から6のいずれかに記載の乳安定剤を含有する、乳成分含有組成物。
【請求項8】
pH3〜5.5である、請求項7に記載の乳成分含有組成物。
【請求項9】
増粘率250%以下の乳飲料である、請求項7又は8に記載の乳成分含有組成物。

【公開番号】特開2009−118742(P2009−118742A)
【公開日】平成21年6月4日(2009.6.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−292795(P2007−292795)
【出願日】平成19年11月12日(2007.11.12)
【出願人】(303046314)旭化成ケミカルズ株式会社 (2,513)
【Fターム(参考)】