乳房用放射線装置
【課題】正確に針生検を行うことができる乳房用放射線装置を提供する。
【解決手段】
本発明の構成によれば、被検体の乳房を挟み込む第1プレート11にコイン状線源を有している。被検体の乳房内部の放射線強度はマップ生成部21により空間的にマッピングされることになるが、マップ生成部21が被検体の乳房内で発した放射線強度をイメージングする際、第1プレート11が有するコイン状線源もマッピングする。コイン状線源は、針を移動させる際の位置的な基準となるので、正確に針の先端を目的位置に移動させることができる。
【解決手段】
本発明の構成によれば、被検体の乳房を挟み込む第1プレート11にコイン状線源を有している。被検体の乳房内部の放射線強度はマップ生成部21により空間的にマッピングされることになるが、マップ生成部21が被検体の乳房内で発した放射線強度をイメージングする際、第1プレート11が有するコイン状線源もマッピングする。コイン状線源は、針を移動させる際の位置的な基準となるので、正確に針の先端を目的位置に移動させることができる。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、乳房用放射線装置に係り、特に、生検用の針を有する乳房用放射線装置に関する。
【背景技術】
【0002】
医療機関には乳房検診用の放射線診断装置が備えられている。この様な乳房用放射線装置は、被検体に投与された陽電子放出型の放射性薬剤の分布をイメージングすることで乳房内の腫瘍を発見することができる(例えば、特許文献1,特許文献2参照)。
【0003】
従来の乳房用放射線装置の構成について説明する。従来の乳房用放射線装置50は、図15に示すように、上部検出パネル51と、下部検出パネル52を有し、この2つの検出パネル51,52で被検体の乳房Bを挟み込む。これにより、乳房Bは一時的に可撓性を失い、変形が禁止されるので、腫瘍の正確な位置を知ろうとする場合に好都合となる。この状態で被検体の乳房Bから放射される放射線の検出が行われる。
【0004】
被検体に投与された放射性薬剤が乳房内部の腫瘍に集合すると、そこからより多くの消滅放射線が発生する。この消滅放射線対の一方が上部検出パネル51,もう一方が下部検出パネル52に入射する。こうして消滅放射線対が検出されるのである。
【0005】
消滅放射線対の検出により得られた放射性薬剤の分布画像には、乳房内部の放射性薬剤の濃度が高い部分が現れることがある。この部分には、腫瘍があるものと思われるが、画像だけでこれが腫瘍であるかどうか判断することはできない。
【0006】
そこで、この放射性薬剤の濃度の高い部分について針生検を行って、より詳細な検査を行う必要がある。具体的には、放射性薬剤の濃度が高い部分にまで針を突き刺し、その部分の組織の一部を切り取って、これをサンプルとする。このサンプルを顕微鏡観察することで、放射性薬剤の分布画像で腫瘍と疑わしい部分が本当に腫瘍であるかどうかを判別するのである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2002−119502号公報
【特許文献2】特開2008−175775号広報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、従来構成の乳房用放射線装置には次の様な問題点がある。
すなわち、従来構成の乳房用放射線装置は、針の先端を正確に分布画像が示す位置に誘導することが難しい。すなわち、放射性薬剤の濃度の高い部分の組織を採取しようとすると、針の先端をその場所に位置させる必要がある。しかし、この採取目的の部分は1cm未満の場合もあり、針の誘導にかなりの正確性が要求される。つまり、放射性薬剤の濃度の高い部分の組織を採取しようとして、誤ってその部分の近くの組織の採取をしてしまう可能性がある。このように針の先端を正確に放射性薬剤の濃度の高い部分に誘導させることができなければ、乳房の腫瘍を見逃してしまうことにもつながるのである。
【0009】
本発明は、この様な事情に鑑みてなされたものであって、その目的は、正確に針生検を行うことができる乳房用放射線装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明は、上述の課題を解決するために次のような構成をとる。
すなわち、請求項1に係る乳房用放射線装置は、被検体の乳房を所定方向から挟み込む第1プレート、および第2プレートと、プレートの距離を変更させるプレート移動手段と、プレート移動手段を制御するプレート移動制御手段と、被検体の乳房から見て、第1プレートの裏側、および第2プレートの裏側には、放射線を検出する第1検出パネル、第2検出パネルのそれぞれが設けられており、第1検出パネル、および第2検出パネルが出力する放射線の検出データを基に、被検体の乳房内で発した放射線強度をイメージングするマッピング手段と、生検用の針と、針を所定方向、および所定方向と直交する2方向に移動させる針移動手段と、針移動手段を制御する針移動制御手段とを備え、プレートの少なくとも一方には、放射線を照射する放射線源を有し、マッピング手段が被検体の乳房内で発した放射線強度をイメージングする際、プレートが有する放射線源も含めてマッピングし、針移動制御手段は、マッピングされた放射線源を位置の基準として針の移動を制御することを特徴とするものである。
【0011】
[作用・効果]上述の構成によれば、被検体の乳房を挟み込むプレートに放射線源を有している。被検体の乳房内部の放射線強度はマッピング手段により空間的にマッピングされることになるが、マッピング手段が被検体の乳房内で発した放射線強度をイメージングする際、プレートが有する放射線源もマッピングする。こうして、乳房内部の放射線強度の分布と、プレートが有する放射線源とが単一のイメージの中にマッピングされる。生検用の針は、マッピングされた放射線源を位置の基準として移動される。針生検において、生検用の針の先端が乳房における放射線強度が特徴的な部分に正確に誘導される必要がある。本発明によれば、被検体の関心部位と位置の基準となる放射線源とが単一のイメージの中にマッピングされているので、針を移動させる際に、目的位置が基準からどの程度離れているかを認識することにより、正確に針の先端を目的位置に移動させることができる。
【0012】
また、上述の放射線源がプレートの3箇所以上配置され、各放射線源が直列に配列していなければより望ましい。
【0013】
[作用・効果]上述は、本発明に係る放射線源の具体的な構成について説明するものである。すなわち、放射線源がプレートの3箇所以上に配置され、各放射線源が直列に配列していない。放射線源のうちの1つを原点とすれば、原点から残りの2つの放射線源に向かう方向は互いに異なることになる。このようにすれば、イメージの中の空間がより把握されやすくなる。すなわち、乳房の関心部位の位置を原点を始点として方向の異なる2つのベクトル成分に分解して表すことができる。
【0014】
また、上述の針は、基台に移動可能に支持され、針移動手段は、基台と針との位置関係を変化させることで針を移動させ、第1検出パネルは第1プレートから着脱可能となっており、乳房に針が導入される時点においては第1検出パネルが第1プレートから脱離され、その代わりに、基台が第1プレートに取り付けられ、第1プレートには、生検用の針を所定方向から挿通させる貫通孔を有しており、針は、貫通孔を通過して被検体の乳房に導入されればより望ましい。
【0015】
[作用・効果]上述の構成は、本発明に係る第1プレートの構成をより具体的に示している。すなわち、針は基台に移動可能に支持されている。そして、第1検出パネルは第1プレートから着脱可能となっており、針生検時には第1プレートから脱離されるのである。針生検を行うには基台が第1プレートに取り付けられ、針が被検体の乳房に向けて進行する。第1プレートには、生検用の針を挿通させる貫通孔を有しているので、針の先端は第1プレートに干渉しないで、被検体の乳房に導入されるのである。これにより、確実に針生検を行うことができる乳房用放射線装置が提供できる。
【0016】
また、上述の第1プレートおよび基台には、それぞれの位置関係を決定する位置決め手段が設けられていればより望ましい。
【0017】
[作用・効果]上述の構成によれば、針の先端をより正確に乳房の関心部位に向かわせることができる。すなわち、針を移動可能に指示する基台および第1プレートには、それぞれの位置関係を決定する位置決め手段が設けられている。このようにすれば、針の先端の位置は第1プレートの位置を基準に決定されるので、針の先端をより正確に乳房の関心部位に向かわせることができる。
【0018】
また、上述の第1プレートは、交換可能となっており、第2プレートと、貫通孔の位置の異なる複数の第1プレートのうちの1つとにより被検体の乳房が挟み込まれればより望ましい。
【0019】
[作用・効果]上述の構成は、針生検の実情に沿ったものとなっている。すなわち、針生検は、事前の乳房検査で腫瘍と思われる部分が発見された被検体に対して、より詳細な診断の目的で行うのが通常である。したがって、針生検を行う前に腫瘍と思われる部分が乳房のどの辺りに位置しているのかが分かっている場合が多い。貫通孔の位置の異なる第1プレートを複数用意し、腫瘍の位置に応じて選択させるようにすれば、針生検を行う場合において、針が貫通孔を確実に通過し、安全性の高い乳房用放射線装置が提供できる。
【0020】
また、上述の放射線を光に変換するシンチレータと、シンチレータから発した光を検出する光検出器と、シンチレータと光検出器との間に設けられ、両者を光学的に結合させるライトガイドとを備えた放射線検出器が2次元的に配列されることで、第1検出パネル、および第2検出パネルが構成されていればより望ましい。
【0021】
[作用・効果]上述の構成は、検出パネルの具体的構成を示している。上述のように構成すれば、より確実に放射線を検出することができる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】実施例1に係る乳房用放射線装置の構成を説明する機能ブロック図である。
【図2】実施例1に係る第1プレートの構成を説明する平面図である。
【図3】実施例1に係るコイン状線源の構成を説明する斜視図である。
【図4】実施例1に係る第1プレートの構成を説明する斜視図である。
【図5】実施例1に係る放射線検出器の構成を説明する斜視図である。
【図6】実施例1に係る検出パネルの構成を説明する斜視図である。
【図7】実施例1に係る乳房用放射線装置の動作を説明するフローチャートである。
【図8】実施例1に係る乳房用放射線装置の動作を説明する断面図である。
【図9】実施例1に係る乳房用放射線装置の動作を説明する模式図である。
【図10】実施例1に係る生検用ユニットの構成を説明する機能ブロック図である。
【図11】実施例1に係る乳房用放射線装置の動作を説明する断面図である。
【図12】実施例1に係る乳房用放射線装置の動作を説明する断面図である。
【図13】実施例1に係る乳房用放射線装置の動作を説明する断面図である。
【図14】本発明の1変形例を説明する平面図である。
【図15】従来構成の乳房用放射線装置の構成を説明する模式図である。
【実施例1】
【0023】
次に、実施例1に係る乳房用放射線装置の具体的な構成について説明する。なお、実施例1における消滅γ線対は、本発明の放射線の一例である。
【0024】
<乳房用放射線装置の構成>
図1は、実施例1に係る乳房用放射線装置の構成を説明する機能ブロック図である。実施例1に係る乳房用放射線装置10は、図1に示すように、乳房を上下から挟みこむ第1プレート11,第2プレート12を備えている。第1プレート11は、第2プレート12の上側に設けられている。第1プレート11の上側には、γ線を検出するための第1検出パネル13が設けられている。第1検出パネル13は、乳房から発し、第1プレート11を貫通してきたγ線を検出する。一方、第2プレート12の下側には、γ線を検出するための第2検出パネル14が設けられている。第2検出パネル14は、乳房から発し、第2プレート12を貫通してきたγ線を検出する。
【0025】
第1プレート11,および第2プレート12には、プレート移動機構25が設けられており、第1プレート11,および第2プレート12は上下方向に移動することができる。これにより、両プレート11,12は、互いに独立に上下移動することが可能であり、被検体の身長や乳房の大きさに合わせて両プレート11,12の距離を調節できるようになっている。第1検出パネル13は、第1プレート11の移動に追従して上下に移動し、第2検出パネル14は、第2プレート12の移動に追従して上下に移動する。プレート移動制御部26は、プレート移動機構25を制御する目的で設けられている。
【0026】
なお、第1検出パネル13は、第1プレート11から着脱可能となっている。一方、第2検出パネル14は、必ずしも第2プレート12から着脱可能となっている必要はない。
【0027】
クロック19は、両検出パネル13,14にシリアルナンバーとなっている時刻情報を送出する。両検出パネル13,14から出力される検出データには、γ線がどの時点で検出されたかを示す時刻情報が付与され、後述の同時計数部20に入力される。
【0028】
同時計数部20には、両検出パネル13,14から出力された検出データが送られてきている。両検出パネル13,14の各々に同時に入射した2つのγ線は、被検体内の放射性薬剤に起因する消滅γ線対である。同時計数部20は、両検出パネル13,14を構成するシンチレータ結晶のうちの2つの組み合わせ毎に消滅γ線対が検出された回数をカウントし、この結果をマップ生成部21に送出する。なお、同時計数部20による検出データの同時性の判断は、クロック19によって検出データに付与された時刻情報により行われる。マップ生成部21は、本発明のマッピング手段に相当する。
【0029】
マップ生成部21には、同時計数部20の出力を基に消滅γ線対の発生位置が空間的にマッピングされた3次元マップを取得する。これにより消滅放射線対の発生が空間的にイメージングされることになる。同時計数部20は、消滅γ線対を検出した2つのシンチレータ結晶の位置関係と、2つのシンチレータ結晶の組合せ毎に記憶される消滅放射線対検出の回数およびの消滅放射線対エネルギー強度をマップ生成部21に出力している。マップ生成部21は、これらの情報から被検体の内部における消滅γ線対の発生強度をマッピングして3次元マップを生成するのである。位置特定部22の具体的な構成については、後述のものとする。
【0030】
なお、乳房用放射線装置10は、各部を統括的に制御する主制御部38と、3次元マップを表示する表示部36とを備えている。この主制御部38は、CPUによって構成され、各種のプログラムを実行することにより、各部19,20,21,22,26を実現している。なお、上述の各部はそれらを担当する制御装置に分割されて実現されてもよい。操作卓37は、術者の指示を入力させる目的で設けられている。
【0031】
第1プレート11の詳細な構成について説明する。図2に示すように、第1プレート11には、3つのコイン状線源11aが埋め込まれている。図2(a)は、第1プレート11の移動方向(上下方向)から第1プレート11を眺めたときの平面図である。3つのコイン状線源11aは、4角形の板状となっている第1プレート11が有する4隅のうちの3隅のそれぞれに配置されている。図2(b)は、第1プレート11の移動方向(第1プレート11の厚み方向、または上下方向)に直交する方向から第1プレート11を眺めたときの平面図である。3つのコイン状線源11aは、第1プレート11の厚み方向(上下方向)における中央に来るように第1プレート11に埋め込まれている。コイン状線源11aは、本発明の放射線源に相当する。
【0032】
コイン状線源11aは、図3に示すように、陽電子放出型放射性物質(以下、単に放射性物質11bと呼ぶ)が封入されている。放射性物質11bは、円形となっているコイン状線源11aの中心に位置しており、点状である。また、放射性物質11bは、コイン状線源11aの厚み方向における中央に来るようにコイン状線源11aに埋め込まれている。
【0033】
このコイン状線源11aは、厚み方向が第1プレート11の厚み方向と一致する方向で第1プレート11に埋め込まれている。したがって、放射性物質11bは、第1プレート11において、その厚み方向の中間部に位置し、第1プレート11の上面から放射性物質11bまでの距離は、第1プレート11の下面から放射性物質11bまでの距離と等しくなっている。コイン状線源11aの第1プレート11における位置は、放射性物質11bを基準に決められる。
【0034】
また、図4に示すように、第1プレート11の上面には、後述の生検用ユニットをはめ込むためのダボ穴11cが設けられている。ダボ穴11cは、第1プレート11の厚み方向に伸びるとともに、4角形の板状となっている第1プレート11が有する4隅のうち、対角線上の2隅に1つずつ設けられている。この、ダボ穴11cは、コイン状線源11aを避けるようにして設けられている。ダボ穴11cは、本発明の位置決め手段に相当する。
【0035】
また、板状となっている第1プレート11の中央には、後述の針を導入させるための第1プレート11の厚み方向に伸びて第1プレート11を貫通している貫通孔11dが設けられている。
【0036】
両検出パネル13,14の構成について説明する。両検出パネル13,14は、複数の放射線検出器1から構成されている。この放射線検出器1の構成について簡単に説明する。図5は、実施例1に係る放射線検出器の構成を説明する斜視図である。放射線検出器1は、図5に示すように放射線を蛍光に変換するシンチレータ2と、蛍光を検出する光検出器3とを備えている。そして、シンチレータ2と光検出器3との介在する位置には、蛍光を授受するライトガイド4が備えられている。
【0037】
シンチレータ2は、シンチレータ結晶Cが3次元的に配列されて構成されている。シンチレータ結晶Cは、Ceが拡散したLu2(1−X)Y2XSiO5(以下、LYSOとよぶ)によって構成されている。そして、光検出器3は、どのシンチレータ結晶が蛍光を発したかという蛍光発生位置を特定することができるようになっているとともに、蛍光の強度や、蛍光の発生した時刻をも特定することができる。また、実施例1の構成のシンチレータ2は、採用しうる態様の例示にすぎない。したがって、本発明の構成は、これに限られるものではない。
【0038】
第2検出パネル14は、図6に示すように、この放射線検出器1が2次元的に配列されて構成されている。すなわち、放射線検出器1はシンチレータ2の有する5面のうち、光検出器3に遠い側の一面が露出されるように配列し、各放射線検出器1のシンチレータ2の光検出器3に遠い側の一面(露出面)がタイルのように2次元的に配列されて単一の面を構成する。この単一の面は、被検体の内部から放射される消滅γ線対を検出する検出面となっている。γ線は、この検出面の内部から第2検出パネル14に入射するのである。第1検出パネル13も同様の構成となっている。
【0039】
第2検出パネル14は、その検出面が第2プレート12側に向くように第2プレート12に配備されている。同様に、第1検出パネル13は、その検出面が第1プレート11側に向くように第1プレート11に配備されている。したがって、両プレート11,12に挟まれた空間から第1プレート11を見たとき、第1プレート11の裏面には、2次元的に配列されたシンチレータ2が面しており、両プレート11,12に挟まれた空間から第2プレート12を見たとき、第2プレート12の裏面には、2次元的に配列されたシンチレータ2が面しているのである。
【0040】
この様な乳房用放射線装置10の動作について説明する。実施例1に係る乳房用放射線装置で検査を行うには、まず、図7に示すように、被検体の乳房を両プレート11,12で挟み(挟み込みステップS1)、この状態で消滅γ線を検出して腫瘍と疑われる部分の位置を特定する(位置特定ステップS2)。そして、腫瘍と思われる部分に針を差し込んで、一部を取り出す(針生検ステップS3)。以降、各ステップの詳細について順を追って説明する。なお、以下の説明において、被検体は、事前に乳房検査を受診しており、その時点で腫瘍と思われる部分が発見されているものとし、実施例1に係る乳房用放射線装置10を用いて、この腫瘍と思われる部分について針生検を行うものとする。
【0041】
<挟み込みステップS1>
まず、被検体に陽電子放出型の放射性薬剤が注射される。注射から所定の時点が経過した時点で、被検体の乳房Bを両プレート11,12の隙間に導入する。術者が操作卓37を通じて被検体の乳房Bを挟みこむ旨の指示を行うと、両プレート11,12が乳房に接近し、乳房Bに当接して、乳房Bを押圧する。すると、図8に示すように、乳房Bが両プレート11,12により挟み込まれることになる。両プレート11,12に圧接されることにより、乳房Bは、一時的に可撓性を失い、形状の変形が禁止されるので、針生検に適したものとなる。
【0042】
<位置特定ステップS2>
術者が操作卓37を通じて消滅γ線対の検出の開始を指示すると、両検出パネル13,14から消滅γ線の検出データが同時計数部20に向けて出力される。同時計数部20,およびマップ生成部21は、乳房内の放射性薬剤の分布をイメージングして、3次元マップを生成する。この3次元マップが表示部36に表示される。
【0043】
図8において符号Fで示す部分が、事前の乳房検査において、腫瘍ではないかと疑われる部分である。部分Fには、放射性薬剤が高濃度に分布しており、部分Fからは、周辺より多くの陽電子が発生している。陽電子は近傍の電子と衝突し、消滅するが、そのときに進行方向が180°反対方向となっている1対のγ線(消滅γ線対)が発生する。この消滅γ線対のうちの1つが第1検出パネル13に入射し、もう1つが第2検出パネル14に入射する。消滅放射線対が入射した時刻は、同時となっている。同時計数部20は、この様にして両検出パネル13,14に同時に入射した消滅γ線を計数するのである。これにより、乳房Bにおける放射性薬剤の空間的な分布を知ることができる。
【0044】
マップ生成部21は、乳房内部から発生する消滅γ線の分布をイメージングする際に、第1プレート11に埋め込まれた放射性物質11bをも含めて画像を生成する。つまり、乳房内部のみならず、両プレート11,12も乳房用放射線装置10の撮影視野の内部に位置しているのである。取得された3次元マップには、図9に示すように、3つの放射性物質11b1,11b2,11b3の位置と、部分Fの位置とが単一の3次元マップの中でマッピングされている。放射性物質11b1,11b2,11b3は、陽電子放出型なので、乳房内部から発生する消滅γ線と同様の物理的特性を有している。従って、部分Fのイメージングを行おうとすると、自ずと放射性物質11b1,11b2,11b3も画像に含まれることになる。
【0045】
放射性物質11b1,11b2,11b3は、次のような位置関係を有している。すなわち、放射性物質11b1,11b2を結ぶ線分と、放射性物質11b1,11b3を結ぶ線分とが直交するようになっているのである。放射性物質11b1,11b2を結ぶ線分が伸びる方向をX方向とし、放射性物質11b1,11b3を結ぶ線分が伸びる方向をY方向とする。X方向、Y方向に直交する方向は、Z方向であり、これは上下方向に一致する。
【0046】
位置特定部22は、放射性物質11b1,11b2,11b3と、部分Fとの位置関係を基に、放射性物質11b1を原点として、部分FがX方向、Y方向、Z方向にどの程度離間しているかを特定する。位置特定部22は、この様にして、部分Fの空間的な位置を高精度に特定するのである。このようにして、放射性物質11b1を原点としたときの部分Fの位置を、原点を始点として放射性物質11b2に向かうベクトル成分と、原点を始点として放射性物質11b3に向かうベクトル成分と、深さ方向のベクトル成分に分離して正確に表すことができる。
【0047】
<針生検ステップS3>
部分Fの位置が特定できたところで、この部分に対して針生検を行う。針生検の操作説明に先立って、針生検に用いられる生検用ユニットについて説明する。生検用ユニット30は、図10に示すように、額縁状の基台31を有している。この基台31のZ方向の上側には、基台31に対してY方向に摺動自在に設けられているY方向に伸びた角柱状の第1アーム32aが付設されている。そして、第1アーム32aのZ方向の上側には、第1アーム32aに対してX方向に摺動自在に設けられているX方向に伸びた角柱状の第2アーム32bが付設されている。第2アーム32bのX方向の一端には、Z方向に向けて伸びたナット32cが設けられている。
【0048】
プローブ33は、Z方向に伸びた基端部33aと、基端部33aからZ方向下向きに伸びた生検用の針33bとを有している。針33bは、第2アーム32bに設けられているナット32cに挿通されている。このナット32cが針33bを支持することになる。ナット32cが回転すると、針33bはZ方向に進退移動するようになっている。
【0049】
基台31には、z方向下向きに伸びたダボ31aが設けられている。ダボ31aは、4角形の額縁状となっている第1プレート11が有する4隅のうち、対角線上の2隅に1つずつ設けられている。ダボ31aは、本発明の位置決め手段に相当する。
【0050】
針先端制御部42は、針33bを制御する目的で設けられている。そして、Y方向移動機構43は、第1アーム32aをY方向に移動させる目的で設けられており、Y方向移動制御部44の制御に従う。同様に、X方向移動機構45は、第2アーム32bをX方向に移動させる目的で設けられており、X方向移動制御部46の制御に従う。そして、Z方向移動機構47は、ナット32cを回転させる目的で設けられており、Z方向移動制御部48の制御に従う。Y方向移動制御部44,X方向移動制御部46,Z方向移動制御部48は、主制御部38によって統括的に制御される。この主制御部38は、CPUによって構成され、各種のプログラムを実行することにより、各部42,44,46,48を実現している。なお、上述の各部はそれらを担当する制御装置に分割されて実現されてもよい。このY方向移動制御部44,X方向移動制御部46,Z方向移動制御部48が協同して動作することにより、針33bの先端がXYZの三方向に自在に移動する。Y方向移動機構43,X方向移動機構45,Z方向移動機構47は、本発明の針移動手段に相当し、Y方向移動制御部44,X方向移動制御部46,Z方向移動制御部48は、本発明の針移動制御手段に相当する。
【0051】
次に、実際の針生検の動作について説明する。針生検に当たっては、第1検出パネル13を第1プレート11から離反させる。第1検出パネル13と第1プレート11とは着脱自在となっているので、第1検出パネル13を上側に持ち上げると、第1プレート11から外れる。この状態で、図11に示すように、生検用ユニット30をZ方向下向きに第1プレート11に近づけて、第1プレート11に載置する。このとき基台31に設けられているダボ31aが第1プレート11に設けられているダボ穴11cにはめ込まれる。このようにすることで、第1プレート11と生検用ユニット30との位置関係が所定のものとなる。
【0052】
第1プレート11には、貫通孔11dが開けられており、第1プレート11をZ方向の上側から眺めると、貫通孔11dから被検体の乳房Bが露出している。生検用ユニット30が第1プレート11に載置された状態においては、生検用ユニット30の有する針33bの先端が貫通孔11dを通過して被検体の乳房Bに向かうことができるようになっている。
【0053】
第1プレート11に生検用ユニット30が載置された状態で術者が操作卓37を通じて部分Fについての針生検を行う旨の指示を行うと、Y方向移動制御部44,X方向移動制御部46,Z方向移動制御部48は、位置特定部22が出力した部分Fの位置情報を基に、針33bの先端を部分Fに移動させる。このとき、針33bは、まず、XY方向に移動することにより、部分Fの直上に移動し、その後、Z方向に移動されることにより、貫通孔11dを通過して、被検体の乳房Bに突き刺さる。そして、針33bは、そのままZ方向に進行し、先端が部分Fに向かうまで乳房Bの内部を突き進む。
【0054】
図12は、針33bの先端が部分Fに位置している状態を説明している。針33bは、説明のため太さを強調して描いているが、実際は、より細いものである。術者が操作卓37を通じて、組織の採取を指示すると、針33bの先端で部分Fの一部の採取が行われる。図13は、針33bの先端を説明する断面図である。針33bは、図13(a)に示すように、円筒形の鞘34の内部に軸心35が挿通された構造となっている。軸心35には、軸心35の一部が切り欠かれることにより構成されている肉薄部35aが設けられており、肉薄部35aは、軸心35のZ方向下側に位置する先端部とZ方向上側に位置する基端部とを架橋している。このようにして、軸心35には、切り欠きが設けられている。
【0055】
図13(b)は、組織を採取する前の針33bの先端を示している。肉薄部35aは、鞘34から露出しており、肉薄部35aの周りの組織は、軸心35の切り欠きに入り込むように膨出する。この状態で、術者が操作卓37を通じて採取の指示を行うと、鞘34がZ方向下向きに移動して、肉薄部35aを被覆する。すると、図13(c)に示すように、切り欠きに存していた組織の一部が鞘34によって切断されて切り欠きに取り残される。このときの切り欠きは、開口が鞘34によって覆われており、切り欠きに取り残された組織の一部は、その場で捕獲された状態となる。この状態で針33bを被検体の乳房Bから引き抜けば、針33bの先端には、部分Fの組織の一部が採取されていることになる。採取された組織の一部は、顕微鏡観察検査用として保存されて、検査は終了となる。
【0056】
以上のように、実施例1の構成によれば、被検体の乳房Bを挟み込む第1プレート11にコイン状線源11aを有している。被検体の乳房内部の消滅γ線対の強度はマップ生成部21により空間的にマッピングされることになるが、マップ生成部21が被検体の乳房内で発した消滅γ線対の強度をイメージングする際、第1プレート11が有するコイン状線源11aもマッピングする。こうして、乳房内部の消滅γ線対の強度の分布と、第1プレート11が有するコイン状線源11aとが単一のイメージの中にマッピングされる。生検用の針33bは、マッピングされたコイン状線源11aを位置の基準として移動される。針生検において、針33bの先端が乳房Bにおける消滅γ線対の強度が特徴的な部分に正確に誘導される必要がある。実施例1の構成によれば、被検体の関心部位と位置の基準となるコイン状線源11aとが単一のイメージの中にマッピングされているので、針33bを移動させる際に、目的位置が基準からどの程度離れているかを認識することにより、正確に針33bの先端を目的位置に移動させることができる。
【0057】
上述の構成によれば、コイン状線源11aがプレートの3箇所以上に配置され、各コイン状線源11aが直列に配列していない。コイン状線源11aのうちの1つを原点とすれば、原点から残りの2つのコイン状線源11aに向かう方向は互いに異なることになる。このようにすれば、マップ生成部21が生成するマップ(イメージ)の中の空間がより把握されやすくなる。すなわち、乳房Bの関心部位の位置を原点を始点として方向の異なる2つのベクトル成分に分解して表すことができる。
【0058】
また、上述の針33bは基台31に移動可能に支持されている。そして、第1検出パネル13は第1プレート11から着脱可能となっており、針生検時には第1プレート11から脱離される。針生検を行うには基台31が第1プレート11に取り付けられ、針33bが被検体の乳房Bに向けて進行する。第1プレート11には、生検用の針33bを挿通させる貫通孔11dを有しているので、針33bの先端は第1プレート11に干渉しないで、被検体の乳房Bに導入されるのである。これにより、確実に針生検を行うことができる乳房用放射線装置が提供できる。
【0059】
また、上述の構成によれば、針33bの先端をより正確に乳房Bの関心部位に向かわせることができる。すなわち、針33bを移動可能に指示する基台31および第1プレート11には、それぞれの位置関係を決定するダボ31a,ダボ穴11cが設けられている。このようにすれば、針33bの先端の位置は第1プレート11の位置を基準に決定されるので、針33bの先端をより正確に乳房Bの関心部位に向かわせることができる。
【0060】
本発明は上述の構成に限られず、下記のような変形実施が可能である。
【0061】
(1)上述の構成について、第1プレート11が交換可能な構成については言及がなかったが、第1プレート11を交換可能とすることもできる。すなわち、このような変形例においては、図14(a)〜(c)に示すように、貫通孔11dの位置が異なる複数の第1プレート11が用意されており、被検体の体格と検査の目的に合わせて第1プレート11が選択可能となっている。図14(a)においては、貫通孔11dが第1プレート11の中央にあるものであり、図14(b)においては、貫通孔11dが第1プレート11の一辺側にシフトしたものである。そして、図14(c)においては、貫通孔11dが第1プレート11の4隅のうちの1つ側にシフトしたものである。
【0062】
上述の構成は、針生検の実情に沿ったものとなっている。すなわち、針生検は、事前の乳房検査で腫瘍と思われる部分が発見された被検体に対して、より詳細な診断の目的で行うのが通常である。したがって、針生検を行う前に腫瘍と思われる部分が乳房Bのどの辺りに位置しているのかが分かっている場合が多い。貫通孔11dの位置の異なる第1プレート11を複数用意し、腫瘍の位置に応じて選択させるようにすれば、針生検を行う場合において、針33bが貫通孔11dを確実に通過し、安全性の高い乳房用放射線装置が提供できる。
【0063】
また、いずれの第1プレート11においても、貫通孔11dは十分に小さいので、被検体の乳房Bを確実に挟み込むことができる。
【0064】
(2)上述した各実施例のいうシンチレータ結晶は、LYSOで構成されていたが、本発明においては、その代わりに、GSO(Gd2SiO5)などのほかの材料でシンチレータ結晶を構成してもよい。本変形例によれば、より安価な放射線検出器が提供できる放射線検出器の製造方法が提供できる。
【0065】
(3)上述した各実施例において、光検出器は、光電子増倍管で構成されていたが、本発明はこれに限らない。光電子増倍管に代わって、フォトダイオードやアバランシェフォトダイオードや半導体検出器などを用いていもよい。
【符号の説明】
【0066】
1 放射線検出器
2 シンチレータ
3 光検出器
4 ライトガイド
11 第1プレート
11a コイン状線源(放射線源)
11c ダボ穴(位置決め手段)
11d 貫通孔
12 第2プレート
13 第1検出パネル
14 第2検出パネル
21 マップ生成部(マッピング手段)
31 基台
31a ダボ(位置決め手段)
33b 針
43 Y方向移動機構(針移動手段)
44 Y方向移動制御部(針移動制御手段)
45 X方向移動機構(針移動手段)
46 X方向移動制御部(針移動制御手段)
47 Z方向移動機構(針移動手段)
48 Z方向移動制御部(針移動制御手段)
【技術分野】
【0001】
本発明は、乳房用放射線装置に係り、特に、生検用の針を有する乳房用放射線装置に関する。
【背景技術】
【0002】
医療機関には乳房検診用の放射線診断装置が備えられている。この様な乳房用放射線装置は、被検体に投与された陽電子放出型の放射性薬剤の分布をイメージングすることで乳房内の腫瘍を発見することができる(例えば、特許文献1,特許文献2参照)。
【0003】
従来の乳房用放射線装置の構成について説明する。従来の乳房用放射線装置50は、図15に示すように、上部検出パネル51と、下部検出パネル52を有し、この2つの検出パネル51,52で被検体の乳房Bを挟み込む。これにより、乳房Bは一時的に可撓性を失い、変形が禁止されるので、腫瘍の正確な位置を知ろうとする場合に好都合となる。この状態で被検体の乳房Bから放射される放射線の検出が行われる。
【0004】
被検体に投与された放射性薬剤が乳房内部の腫瘍に集合すると、そこからより多くの消滅放射線が発生する。この消滅放射線対の一方が上部検出パネル51,もう一方が下部検出パネル52に入射する。こうして消滅放射線対が検出されるのである。
【0005】
消滅放射線対の検出により得られた放射性薬剤の分布画像には、乳房内部の放射性薬剤の濃度が高い部分が現れることがある。この部分には、腫瘍があるものと思われるが、画像だけでこれが腫瘍であるかどうか判断することはできない。
【0006】
そこで、この放射性薬剤の濃度の高い部分について針生検を行って、より詳細な検査を行う必要がある。具体的には、放射性薬剤の濃度が高い部分にまで針を突き刺し、その部分の組織の一部を切り取って、これをサンプルとする。このサンプルを顕微鏡観察することで、放射性薬剤の分布画像で腫瘍と疑わしい部分が本当に腫瘍であるかどうかを判別するのである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2002−119502号公報
【特許文献2】特開2008−175775号広報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、従来構成の乳房用放射線装置には次の様な問題点がある。
すなわち、従来構成の乳房用放射線装置は、針の先端を正確に分布画像が示す位置に誘導することが難しい。すなわち、放射性薬剤の濃度の高い部分の組織を採取しようとすると、針の先端をその場所に位置させる必要がある。しかし、この採取目的の部分は1cm未満の場合もあり、針の誘導にかなりの正確性が要求される。つまり、放射性薬剤の濃度の高い部分の組織を採取しようとして、誤ってその部分の近くの組織の採取をしてしまう可能性がある。このように針の先端を正確に放射性薬剤の濃度の高い部分に誘導させることができなければ、乳房の腫瘍を見逃してしまうことにもつながるのである。
【0009】
本発明は、この様な事情に鑑みてなされたものであって、その目的は、正確に針生検を行うことができる乳房用放射線装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明は、上述の課題を解決するために次のような構成をとる。
すなわち、請求項1に係る乳房用放射線装置は、被検体の乳房を所定方向から挟み込む第1プレート、および第2プレートと、プレートの距離を変更させるプレート移動手段と、プレート移動手段を制御するプレート移動制御手段と、被検体の乳房から見て、第1プレートの裏側、および第2プレートの裏側には、放射線を検出する第1検出パネル、第2検出パネルのそれぞれが設けられており、第1検出パネル、および第2検出パネルが出力する放射線の検出データを基に、被検体の乳房内で発した放射線強度をイメージングするマッピング手段と、生検用の針と、針を所定方向、および所定方向と直交する2方向に移動させる針移動手段と、針移動手段を制御する針移動制御手段とを備え、プレートの少なくとも一方には、放射線を照射する放射線源を有し、マッピング手段が被検体の乳房内で発した放射線強度をイメージングする際、プレートが有する放射線源も含めてマッピングし、針移動制御手段は、マッピングされた放射線源を位置の基準として針の移動を制御することを特徴とするものである。
【0011】
[作用・効果]上述の構成によれば、被検体の乳房を挟み込むプレートに放射線源を有している。被検体の乳房内部の放射線強度はマッピング手段により空間的にマッピングされることになるが、マッピング手段が被検体の乳房内で発した放射線強度をイメージングする際、プレートが有する放射線源もマッピングする。こうして、乳房内部の放射線強度の分布と、プレートが有する放射線源とが単一のイメージの中にマッピングされる。生検用の針は、マッピングされた放射線源を位置の基準として移動される。針生検において、生検用の針の先端が乳房における放射線強度が特徴的な部分に正確に誘導される必要がある。本発明によれば、被検体の関心部位と位置の基準となる放射線源とが単一のイメージの中にマッピングされているので、針を移動させる際に、目的位置が基準からどの程度離れているかを認識することにより、正確に針の先端を目的位置に移動させることができる。
【0012】
また、上述の放射線源がプレートの3箇所以上配置され、各放射線源が直列に配列していなければより望ましい。
【0013】
[作用・効果]上述は、本発明に係る放射線源の具体的な構成について説明するものである。すなわち、放射線源がプレートの3箇所以上に配置され、各放射線源が直列に配列していない。放射線源のうちの1つを原点とすれば、原点から残りの2つの放射線源に向かう方向は互いに異なることになる。このようにすれば、イメージの中の空間がより把握されやすくなる。すなわち、乳房の関心部位の位置を原点を始点として方向の異なる2つのベクトル成分に分解して表すことができる。
【0014】
また、上述の針は、基台に移動可能に支持され、針移動手段は、基台と針との位置関係を変化させることで針を移動させ、第1検出パネルは第1プレートから着脱可能となっており、乳房に針が導入される時点においては第1検出パネルが第1プレートから脱離され、その代わりに、基台が第1プレートに取り付けられ、第1プレートには、生検用の針を所定方向から挿通させる貫通孔を有しており、針は、貫通孔を通過して被検体の乳房に導入されればより望ましい。
【0015】
[作用・効果]上述の構成は、本発明に係る第1プレートの構成をより具体的に示している。すなわち、針は基台に移動可能に支持されている。そして、第1検出パネルは第1プレートから着脱可能となっており、針生検時には第1プレートから脱離されるのである。針生検を行うには基台が第1プレートに取り付けられ、針が被検体の乳房に向けて進行する。第1プレートには、生検用の針を挿通させる貫通孔を有しているので、針の先端は第1プレートに干渉しないで、被検体の乳房に導入されるのである。これにより、確実に針生検を行うことができる乳房用放射線装置が提供できる。
【0016】
また、上述の第1プレートおよび基台には、それぞれの位置関係を決定する位置決め手段が設けられていればより望ましい。
【0017】
[作用・効果]上述の構成によれば、針の先端をより正確に乳房の関心部位に向かわせることができる。すなわち、針を移動可能に指示する基台および第1プレートには、それぞれの位置関係を決定する位置決め手段が設けられている。このようにすれば、針の先端の位置は第1プレートの位置を基準に決定されるので、針の先端をより正確に乳房の関心部位に向かわせることができる。
【0018】
また、上述の第1プレートは、交換可能となっており、第2プレートと、貫通孔の位置の異なる複数の第1プレートのうちの1つとにより被検体の乳房が挟み込まれればより望ましい。
【0019】
[作用・効果]上述の構成は、針生検の実情に沿ったものとなっている。すなわち、針生検は、事前の乳房検査で腫瘍と思われる部分が発見された被検体に対して、より詳細な診断の目的で行うのが通常である。したがって、針生検を行う前に腫瘍と思われる部分が乳房のどの辺りに位置しているのかが分かっている場合が多い。貫通孔の位置の異なる第1プレートを複数用意し、腫瘍の位置に応じて選択させるようにすれば、針生検を行う場合において、針が貫通孔を確実に通過し、安全性の高い乳房用放射線装置が提供できる。
【0020】
また、上述の放射線を光に変換するシンチレータと、シンチレータから発した光を検出する光検出器と、シンチレータと光検出器との間に設けられ、両者を光学的に結合させるライトガイドとを備えた放射線検出器が2次元的に配列されることで、第1検出パネル、および第2検出パネルが構成されていればより望ましい。
【0021】
[作用・効果]上述の構成は、検出パネルの具体的構成を示している。上述のように構成すれば、より確実に放射線を検出することができる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】実施例1に係る乳房用放射線装置の構成を説明する機能ブロック図である。
【図2】実施例1に係る第1プレートの構成を説明する平面図である。
【図3】実施例1に係るコイン状線源の構成を説明する斜視図である。
【図4】実施例1に係る第1プレートの構成を説明する斜視図である。
【図5】実施例1に係る放射線検出器の構成を説明する斜視図である。
【図6】実施例1に係る検出パネルの構成を説明する斜視図である。
【図7】実施例1に係る乳房用放射線装置の動作を説明するフローチャートである。
【図8】実施例1に係る乳房用放射線装置の動作を説明する断面図である。
【図9】実施例1に係る乳房用放射線装置の動作を説明する模式図である。
【図10】実施例1に係る生検用ユニットの構成を説明する機能ブロック図である。
【図11】実施例1に係る乳房用放射線装置の動作を説明する断面図である。
【図12】実施例1に係る乳房用放射線装置の動作を説明する断面図である。
【図13】実施例1に係る乳房用放射線装置の動作を説明する断面図である。
【図14】本発明の1変形例を説明する平面図である。
【図15】従来構成の乳房用放射線装置の構成を説明する模式図である。
【実施例1】
【0023】
次に、実施例1に係る乳房用放射線装置の具体的な構成について説明する。なお、実施例1における消滅γ線対は、本発明の放射線の一例である。
【0024】
<乳房用放射線装置の構成>
図1は、実施例1に係る乳房用放射線装置の構成を説明する機能ブロック図である。実施例1に係る乳房用放射線装置10は、図1に示すように、乳房を上下から挟みこむ第1プレート11,第2プレート12を備えている。第1プレート11は、第2プレート12の上側に設けられている。第1プレート11の上側には、γ線を検出するための第1検出パネル13が設けられている。第1検出パネル13は、乳房から発し、第1プレート11を貫通してきたγ線を検出する。一方、第2プレート12の下側には、γ線を検出するための第2検出パネル14が設けられている。第2検出パネル14は、乳房から発し、第2プレート12を貫通してきたγ線を検出する。
【0025】
第1プレート11,および第2プレート12には、プレート移動機構25が設けられており、第1プレート11,および第2プレート12は上下方向に移動することができる。これにより、両プレート11,12は、互いに独立に上下移動することが可能であり、被検体の身長や乳房の大きさに合わせて両プレート11,12の距離を調節できるようになっている。第1検出パネル13は、第1プレート11の移動に追従して上下に移動し、第2検出パネル14は、第2プレート12の移動に追従して上下に移動する。プレート移動制御部26は、プレート移動機構25を制御する目的で設けられている。
【0026】
なお、第1検出パネル13は、第1プレート11から着脱可能となっている。一方、第2検出パネル14は、必ずしも第2プレート12から着脱可能となっている必要はない。
【0027】
クロック19は、両検出パネル13,14にシリアルナンバーとなっている時刻情報を送出する。両検出パネル13,14から出力される検出データには、γ線がどの時点で検出されたかを示す時刻情報が付与され、後述の同時計数部20に入力される。
【0028】
同時計数部20には、両検出パネル13,14から出力された検出データが送られてきている。両検出パネル13,14の各々に同時に入射した2つのγ線は、被検体内の放射性薬剤に起因する消滅γ線対である。同時計数部20は、両検出パネル13,14を構成するシンチレータ結晶のうちの2つの組み合わせ毎に消滅γ線対が検出された回数をカウントし、この結果をマップ生成部21に送出する。なお、同時計数部20による検出データの同時性の判断は、クロック19によって検出データに付与された時刻情報により行われる。マップ生成部21は、本発明のマッピング手段に相当する。
【0029】
マップ生成部21には、同時計数部20の出力を基に消滅γ線対の発生位置が空間的にマッピングされた3次元マップを取得する。これにより消滅放射線対の発生が空間的にイメージングされることになる。同時計数部20は、消滅γ線対を検出した2つのシンチレータ結晶の位置関係と、2つのシンチレータ結晶の組合せ毎に記憶される消滅放射線対検出の回数およびの消滅放射線対エネルギー強度をマップ生成部21に出力している。マップ生成部21は、これらの情報から被検体の内部における消滅γ線対の発生強度をマッピングして3次元マップを生成するのである。位置特定部22の具体的な構成については、後述のものとする。
【0030】
なお、乳房用放射線装置10は、各部を統括的に制御する主制御部38と、3次元マップを表示する表示部36とを備えている。この主制御部38は、CPUによって構成され、各種のプログラムを実行することにより、各部19,20,21,22,26を実現している。なお、上述の各部はそれらを担当する制御装置に分割されて実現されてもよい。操作卓37は、術者の指示を入力させる目的で設けられている。
【0031】
第1プレート11の詳細な構成について説明する。図2に示すように、第1プレート11には、3つのコイン状線源11aが埋め込まれている。図2(a)は、第1プレート11の移動方向(上下方向)から第1プレート11を眺めたときの平面図である。3つのコイン状線源11aは、4角形の板状となっている第1プレート11が有する4隅のうちの3隅のそれぞれに配置されている。図2(b)は、第1プレート11の移動方向(第1プレート11の厚み方向、または上下方向)に直交する方向から第1プレート11を眺めたときの平面図である。3つのコイン状線源11aは、第1プレート11の厚み方向(上下方向)における中央に来るように第1プレート11に埋め込まれている。コイン状線源11aは、本発明の放射線源に相当する。
【0032】
コイン状線源11aは、図3に示すように、陽電子放出型放射性物質(以下、単に放射性物質11bと呼ぶ)が封入されている。放射性物質11bは、円形となっているコイン状線源11aの中心に位置しており、点状である。また、放射性物質11bは、コイン状線源11aの厚み方向における中央に来るようにコイン状線源11aに埋め込まれている。
【0033】
このコイン状線源11aは、厚み方向が第1プレート11の厚み方向と一致する方向で第1プレート11に埋め込まれている。したがって、放射性物質11bは、第1プレート11において、その厚み方向の中間部に位置し、第1プレート11の上面から放射性物質11bまでの距離は、第1プレート11の下面から放射性物質11bまでの距離と等しくなっている。コイン状線源11aの第1プレート11における位置は、放射性物質11bを基準に決められる。
【0034】
また、図4に示すように、第1プレート11の上面には、後述の生検用ユニットをはめ込むためのダボ穴11cが設けられている。ダボ穴11cは、第1プレート11の厚み方向に伸びるとともに、4角形の板状となっている第1プレート11が有する4隅のうち、対角線上の2隅に1つずつ設けられている。この、ダボ穴11cは、コイン状線源11aを避けるようにして設けられている。ダボ穴11cは、本発明の位置決め手段に相当する。
【0035】
また、板状となっている第1プレート11の中央には、後述の針を導入させるための第1プレート11の厚み方向に伸びて第1プレート11を貫通している貫通孔11dが設けられている。
【0036】
両検出パネル13,14の構成について説明する。両検出パネル13,14は、複数の放射線検出器1から構成されている。この放射線検出器1の構成について簡単に説明する。図5は、実施例1に係る放射線検出器の構成を説明する斜視図である。放射線検出器1は、図5に示すように放射線を蛍光に変換するシンチレータ2と、蛍光を検出する光検出器3とを備えている。そして、シンチレータ2と光検出器3との介在する位置には、蛍光を授受するライトガイド4が備えられている。
【0037】
シンチレータ2は、シンチレータ結晶Cが3次元的に配列されて構成されている。シンチレータ結晶Cは、Ceが拡散したLu2(1−X)Y2XSiO5(以下、LYSOとよぶ)によって構成されている。そして、光検出器3は、どのシンチレータ結晶が蛍光を発したかという蛍光発生位置を特定することができるようになっているとともに、蛍光の強度や、蛍光の発生した時刻をも特定することができる。また、実施例1の構成のシンチレータ2は、採用しうる態様の例示にすぎない。したがって、本発明の構成は、これに限られるものではない。
【0038】
第2検出パネル14は、図6に示すように、この放射線検出器1が2次元的に配列されて構成されている。すなわち、放射線検出器1はシンチレータ2の有する5面のうち、光検出器3に遠い側の一面が露出されるように配列し、各放射線検出器1のシンチレータ2の光検出器3に遠い側の一面(露出面)がタイルのように2次元的に配列されて単一の面を構成する。この単一の面は、被検体の内部から放射される消滅γ線対を検出する検出面となっている。γ線は、この検出面の内部から第2検出パネル14に入射するのである。第1検出パネル13も同様の構成となっている。
【0039】
第2検出パネル14は、その検出面が第2プレート12側に向くように第2プレート12に配備されている。同様に、第1検出パネル13は、その検出面が第1プレート11側に向くように第1プレート11に配備されている。したがって、両プレート11,12に挟まれた空間から第1プレート11を見たとき、第1プレート11の裏面には、2次元的に配列されたシンチレータ2が面しており、両プレート11,12に挟まれた空間から第2プレート12を見たとき、第2プレート12の裏面には、2次元的に配列されたシンチレータ2が面しているのである。
【0040】
この様な乳房用放射線装置10の動作について説明する。実施例1に係る乳房用放射線装置で検査を行うには、まず、図7に示すように、被検体の乳房を両プレート11,12で挟み(挟み込みステップS1)、この状態で消滅γ線を検出して腫瘍と疑われる部分の位置を特定する(位置特定ステップS2)。そして、腫瘍と思われる部分に針を差し込んで、一部を取り出す(針生検ステップS3)。以降、各ステップの詳細について順を追って説明する。なお、以下の説明において、被検体は、事前に乳房検査を受診しており、その時点で腫瘍と思われる部分が発見されているものとし、実施例1に係る乳房用放射線装置10を用いて、この腫瘍と思われる部分について針生検を行うものとする。
【0041】
<挟み込みステップS1>
まず、被検体に陽電子放出型の放射性薬剤が注射される。注射から所定の時点が経過した時点で、被検体の乳房Bを両プレート11,12の隙間に導入する。術者が操作卓37を通じて被検体の乳房Bを挟みこむ旨の指示を行うと、両プレート11,12が乳房に接近し、乳房Bに当接して、乳房Bを押圧する。すると、図8に示すように、乳房Bが両プレート11,12により挟み込まれることになる。両プレート11,12に圧接されることにより、乳房Bは、一時的に可撓性を失い、形状の変形が禁止されるので、針生検に適したものとなる。
【0042】
<位置特定ステップS2>
術者が操作卓37を通じて消滅γ線対の検出の開始を指示すると、両検出パネル13,14から消滅γ線の検出データが同時計数部20に向けて出力される。同時計数部20,およびマップ生成部21は、乳房内の放射性薬剤の分布をイメージングして、3次元マップを生成する。この3次元マップが表示部36に表示される。
【0043】
図8において符号Fで示す部分が、事前の乳房検査において、腫瘍ではないかと疑われる部分である。部分Fには、放射性薬剤が高濃度に分布しており、部分Fからは、周辺より多くの陽電子が発生している。陽電子は近傍の電子と衝突し、消滅するが、そのときに進行方向が180°反対方向となっている1対のγ線(消滅γ線対)が発生する。この消滅γ線対のうちの1つが第1検出パネル13に入射し、もう1つが第2検出パネル14に入射する。消滅放射線対が入射した時刻は、同時となっている。同時計数部20は、この様にして両検出パネル13,14に同時に入射した消滅γ線を計数するのである。これにより、乳房Bにおける放射性薬剤の空間的な分布を知ることができる。
【0044】
マップ生成部21は、乳房内部から発生する消滅γ線の分布をイメージングする際に、第1プレート11に埋め込まれた放射性物質11bをも含めて画像を生成する。つまり、乳房内部のみならず、両プレート11,12も乳房用放射線装置10の撮影視野の内部に位置しているのである。取得された3次元マップには、図9に示すように、3つの放射性物質11b1,11b2,11b3の位置と、部分Fの位置とが単一の3次元マップの中でマッピングされている。放射性物質11b1,11b2,11b3は、陽電子放出型なので、乳房内部から発生する消滅γ線と同様の物理的特性を有している。従って、部分Fのイメージングを行おうとすると、自ずと放射性物質11b1,11b2,11b3も画像に含まれることになる。
【0045】
放射性物質11b1,11b2,11b3は、次のような位置関係を有している。すなわち、放射性物質11b1,11b2を結ぶ線分と、放射性物質11b1,11b3を結ぶ線分とが直交するようになっているのである。放射性物質11b1,11b2を結ぶ線分が伸びる方向をX方向とし、放射性物質11b1,11b3を結ぶ線分が伸びる方向をY方向とする。X方向、Y方向に直交する方向は、Z方向であり、これは上下方向に一致する。
【0046】
位置特定部22は、放射性物質11b1,11b2,11b3と、部分Fとの位置関係を基に、放射性物質11b1を原点として、部分FがX方向、Y方向、Z方向にどの程度離間しているかを特定する。位置特定部22は、この様にして、部分Fの空間的な位置を高精度に特定するのである。このようにして、放射性物質11b1を原点としたときの部分Fの位置を、原点を始点として放射性物質11b2に向かうベクトル成分と、原点を始点として放射性物質11b3に向かうベクトル成分と、深さ方向のベクトル成分に分離して正確に表すことができる。
【0047】
<針生検ステップS3>
部分Fの位置が特定できたところで、この部分に対して針生検を行う。針生検の操作説明に先立って、針生検に用いられる生検用ユニットについて説明する。生検用ユニット30は、図10に示すように、額縁状の基台31を有している。この基台31のZ方向の上側には、基台31に対してY方向に摺動自在に設けられているY方向に伸びた角柱状の第1アーム32aが付設されている。そして、第1アーム32aのZ方向の上側には、第1アーム32aに対してX方向に摺動自在に設けられているX方向に伸びた角柱状の第2アーム32bが付設されている。第2アーム32bのX方向の一端には、Z方向に向けて伸びたナット32cが設けられている。
【0048】
プローブ33は、Z方向に伸びた基端部33aと、基端部33aからZ方向下向きに伸びた生検用の針33bとを有している。針33bは、第2アーム32bに設けられているナット32cに挿通されている。このナット32cが針33bを支持することになる。ナット32cが回転すると、針33bはZ方向に進退移動するようになっている。
【0049】
基台31には、z方向下向きに伸びたダボ31aが設けられている。ダボ31aは、4角形の額縁状となっている第1プレート11が有する4隅のうち、対角線上の2隅に1つずつ設けられている。ダボ31aは、本発明の位置決め手段に相当する。
【0050】
針先端制御部42は、針33bを制御する目的で設けられている。そして、Y方向移動機構43は、第1アーム32aをY方向に移動させる目的で設けられており、Y方向移動制御部44の制御に従う。同様に、X方向移動機構45は、第2アーム32bをX方向に移動させる目的で設けられており、X方向移動制御部46の制御に従う。そして、Z方向移動機構47は、ナット32cを回転させる目的で設けられており、Z方向移動制御部48の制御に従う。Y方向移動制御部44,X方向移動制御部46,Z方向移動制御部48は、主制御部38によって統括的に制御される。この主制御部38は、CPUによって構成され、各種のプログラムを実行することにより、各部42,44,46,48を実現している。なお、上述の各部はそれらを担当する制御装置に分割されて実現されてもよい。このY方向移動制御部44,X方向移動制御部46,Z方向移動制御部48が協同して動作することにより、針33bの先端がXYZの三方向に自在に移動する。Y方向移動機構43,X方向移動機構45,Z方向移動機構47は、本発明の針移動手段に相当し、Y方向移動制御部44,X方向移動制御部46,Z方向移動制御部48は、本発明の針移動制御手段に相当する。
【0051】
次に、実際の針生検の動作について説明する。針生検に当たっては、第1検出パネル13を第1プレート11から離反させる。第1検出パネル13と第1プレート11とは着脱自在となっているので、第1検出パネル13を上側に持ち上げると、第1プレート11から外れる。この状態で、図11に示すように、生検用ユニット30をZ方向下向きに第1プレート11に近づけて、第1プレート11に載置する。このとき基台31に設けられているダボ31aが第1プレート11に設けられているダボ穴11cにはめ込まれる。このようにすることで、第1プレート11と生検用ユニット30との位置関係が所定のものとなる。
【0052】
第1プレート11には、貫通孔11dが開けられており、第1プレート11をZ方向の上側から眺めると、貫通孔11dから被検体の乳房Bが露出している。生検用ユニット30が第1プレート11に載置された状態においては、生検用ユニット30の有する針33bの先端が貫通孔11dを通過して被検体の乳房Bに向かうことができるようになっている。
【0053】
第1プレート11に生検用ユニット30が載置された状態で術者が操作卓37を通じて部分Fについての針生検を行う旨の指示を行うと、Y方向移動制御部44,X方向移動制御部46,Z方向移動制御部48は、位置特定部22が出力した部分Fの位置情報を基に、針33bの先端を部分Fに移動させる。このとき、針33bは、まず、XY方向に移動することにより、部分Fの直上に移動し、その後、Z方向に移動されることにより、貫通孔11dを通過して、被検体の乳房Bに突き刺さる。そして、針33bは、そのままZ方向に進行し、先端が部分Fに向かうまで乳房Bの内部を突き進む。
【0054】
図12は、針33bの先端が部分Fに位置している状態を説明している。針33bは、説明のため太さを強調して描いているが、実際は、より細いものである。術者が操作卓37を通じて、組織の採取を指示すると、針33bの先端で部分Fの一部の採取が行われる。図13は、針33bの先端を説明する断面図である。針33bは、図13(a)に示すように、円筒形の鞘34の内部に軸心35が挿通された構造となっている。軸心35には、軸心35の一部が切り欠かれることにより構成されている肉薄部35aが設けられており、肉薄部35aは、軸心35のZ方向下側に位置する先端部とZ方向上側に位置する基端部とを架橋している。このようにして、軸心35には、切り欠きが設けられている。
【0055】
図13(b)は、組織を採取する前の針33bの先端を示している。肉薄部35aは、鞘34から露出しており、肉薄部35aの周りの組織は、軸心35の切り欠きに入り込むように膨出する。この状態で、術者が操作卓37を通じて採取の指示を行うと、鞘34がZ方向下向きに移動して、肉薄部35aを被覆する。すると、図13(c)に示すように、切り欠きに存していた組織の一部が鞘34によって切断されて切り欠きに取り残される。このときの切り欠きは、開口が鞘34によって覆われており、切り欠きに取り残された組織の一部は、その場で捕獲された状態となる。この状態で針33bを被検体の乳房Bから引き抜けば、針33bの先端には、部分Fの組織の一部が採取されていることになる。採取された組織の一部は、顕微鏡観察検査用として保存されて、検査は終了となる。
【0056】
以上のように、実施例1の構成によれば、被検体の乳房Bを挟み込む第1プレート11にコイン状線源11aを有している。被検体の乳房内部の消滅γ線対の強度はマップ生成部21により空間的にマッピングされることになるが、マップ生成部21が被検体の乳房内で発した消滅γ線対の強度をイメージングする際、第1プレート11が有するコイン状線源11aもマッピングする。こうして、乳房内部の消滅γ線対の強度の分布と、第1プレート11が有するコイン状線源11aとが単一のイメージの中にマッピングされる。生検用の針33bは、マッピングされたコイン状線源11aを位置の基準として移動される。針生検において、針33bの先端が乳房Bにおける消滅γ線対の強度が特徴的な部分に正確に誘導される必要がある。実施例1の構成によれば、被検体の関心部位と位置の基準となるコイン状線源11aとが単一のイメージの中にマッピングされているので、針33bを移動させる際に、目的位置が基準からどの程度離れているかを認識することにより、正確に針33bの先端を目的位置に移動させることができる。
【0057】
上述の構成によれば、コイン状線源11aがプレートの3箇所以上に配置され、各コイン状線源11aが直列に配列していない。コイン状線源11aのうちの1つを原点とすれば、原点から残りの2つのコイン状線源11aに向かう方向は互いに異なることになる。このようにすれば、マップ生成部21が生成するマップ(イメージ)の中の空間がより把握されやすくなる。すなわち、乳房Bの関心部位の位置を原点を始点として方向の異なる2つのベクトル成分に分解して表すことができる。
【0058】
また、上述の針33bは基台31に移動可能に支持されている。そして、第1検出パネル13は第1プレート11から着脱可能となっており、針生検時には第1プレート11から脱離される。針生検を行うには基台31が第1プレート11に取り付けられ、針33bが被検体の乳房Bに向けて進行する。第1プレート11には、生検用の針33bを挿通させる貫通孔11dを有しているので、針33bの先端は第1プレート11に干渉しないで、被検体の乳房Bに導入されるのである。これにより、確実に針生検を行うことができる乳房用放射線装置が提供できる。
【0059】
また、上述の構成によれば、針33bの先端をより正確に乳房Bの関心部位に向かわせることができる。すなわち、針33bを移動可能に指示する基台31および第1プレート11には、それぞれの位置関係を決定するダボ31a,ダボ穴11cが設けられている。このようにすれば、針33bの先端の位置は第1プレート11の位置を基準に決定されるので、針33bの先端をより正確に乳房Bの関心部位に向かわせることができる。
【0060】
本発明は上述の構成に限られず、下記のような変形実施が可能である。
【0061】
(1)上述の構成について、第1プレート11が交換可能な構成については言及がなかったが、第1プレート11を交換可能とすることもできる。すなわち、このような変形例においては、図14(a)〜(c)に示すように、貫通孔11dの位置が異なる複数の第1プレート11が用意されており、被検体の体格と検査の目的に合わせて第1プレート11が選択可能となっている。図14(a)においては、貫通孔11dが第1プレート11の中央にあるものであり、図14(b)においては、貫通孔11dが第1プレート11の一辺側にシフトしたものである。そして、図14(c)においては、貫通孔11dが第1プレート11の4隅のうちの1つ側にシフトしたものである。
【0062】
上述の構成は、針生検の実情に沿ったものとなっている。すなわち、針生検は、事前の乳房検査で腫瘍と思われる部分が発見された被検体に対して、より詳細な診断の目的で行うのが通常である。したがって、針生検を行う前に腫瘍と思われる部分が乳房Bのどの辺りに位置しているのかが分かっている場合が多い。貫通孔11dの位置の異なる第1プレート11を複数用意し、腫瘍の位置に応じて選択させるようにすれば、針生検を行う場合において、針33bが貫通孔11dを確実に通過し、安全性の高い乳房用放射線装置が提供できる。
【0063】
また、いずれの第1プレート11においても、貫通孔11dは十分に小さいので、被検体の乳房Bを確実に挟み込むことができる。
【0064】
(2)上述した各実施例のいうシンチレータ結晶は、LYSOで構成されていたが、本発明においては、その代わりに、GSO(Gd2SiO5)などのほかの材料でシンチレータ結晶を構成してもよい。本変形例によれば、より安価な放射線検出器が提供できる放射線検出器の製造方法が提供できる。
【0065】
(3)上述した各実施例において、光検出器は、光電子増倍管で構成されていたが、本発明はこれに限らない。光電子増倍管に代わって、フォトダイオードやアバランシェフォトダイオードや半導体検出器などを用いていもよい。
【符号の説明】
【0066】
1 放射線検出器
2 シンチレータ
3 光検出器
4 ライトガイド
11 第1プレート
11a コイン状線源(放射線源)
11c ダボ穴(位置決め手段)
11d 貫通孔
12 第2プレート
13 第1検出パネル
14 第2検出パネル
21 マップ生成部(マッピング手段)
31 基台
31a ダボ(位置決め手段)
33b 針
43 Y方向移動機構(針移動手段)
44 Y方向移動制御部(針移動制御手段)
45 X方向移動機構(針移動手段)
46 X方向移動制御部(針移動制御手段)
47 Z方向移動機構(針移動手段)
48 Z方向移動制御部(針移動制御手段)
【特許請求の範囲】
【請求項1】
被検体の乳房を所定方向から挟み込む第1プレート、および第2プレートと、
前記プレートの距離を変更させるプレート移動手段と、
前記プレート移動手段を制御するプレート移動制御手段と、
被検体の乳房から見て、前記第1プレートの裏側、および前記第2プレートの裏側には、放射線を検出する第1検出パネル、第2検出パネルのそれぞれが設けられており、
前記第1検出パネル、および前記第2検出パネルが出力する放射線の検出データを基に、被検体の乳房内で発した放射線強度をイメージングするマッピング手段と、
生検用の針と、
前記針を所定方向、および所定方向と直交する2方向に移動させる針移動手段と、
前記針移動手段を制御する針移動制御手段とを備え、
前記プレートの少なくとも一方には、放射線を照射する放射線源を有し、
前記マッピング手段が被検体の乳房内で発した放射線強度をイメージングする際、前記プレートが有する前記放射線源も含めてマッピングし、
前記針移動制御手段は、マッピングされた前記放射線源を位置の基準として前記針の移動を制御することを特徴とする乳房用放射線装置。
【請求項2】
請求項1に記載の乳房用放射線装置において、
前記放射線源が前記プレートの3箇所以上に配置され、各放射線源が直列に配列していないことを特徴とする乳房用放射線装置。
【請求項3】
請求項1または請求項2に記載の乳房用放射線装置において、
前記針は、基台に移動可能に支持され、前記針移動手段は、前記基台と前記針との位置関係を変化させることで前記針を移動させ、
前記第1検出パネルは前記第1プレートから着脱可能となっており、乳房に針が導入される時点においては前記第1検出パネルが前記第1プレートから脱離され、その代わりに、前記基台が前記第1プレートに取り付けられ、
前記第1プレートには、生検用の前記針を所定方向から挿通させる貫通孔を有しており、
前記針は、前記貫通孔を通過して被検体の乳房に導入されることを特徴とする乳房用放射線装置。
【請求項4】
請求項1ないし請求項3のいずれかに記載の乳房用放射線装置において、
前記第1プレートおよび前記基台には、それぞれの位置関係を決定する位置決め手段が設けられていることを特徴とする乳房用放射線装置。
【請求項5】
請求項1ないし請求項4のいずれかに記載の乳房用放射線装置において、
前記第1プレートは、交換可能となっており、
前記第2プレートと、前記貫通孔の位置の異なる複数の前記第1プレートのうちの1つとにより被検体の乳房が挟み込まれることを特徴とする乳房用放射線装置。
【請求項6】
請求項1ないし請求項5のいずれかに記載の乳房用放射線装置において、
放射線を光に変換するシンチレータと、前記シンチレータから発した光を検出する光検出器と、前記シンチレータと前記光検出器との間に設けられ、両者を光学的に結合させるライトガイドとを備えた放射線検出器が2次元的に配列されることで、前記第1検出パネル、および前記第2検出パネルが構成されていることを特徴とする乳房用放射線装置。
【請求項1】
被検体の乳房を所定方向から挟み込む第1プレート、および第2プレートと、
前記プレートの距離を変更させるプレート移動手段と、
前記プレート移動手段を制御するプレート移動制御手段と、
被検体の乳房から見て、前記第1プレートの裏側、および前記第2プレートの裏側には、放射線を検出する第1検出パネル、第2検出パネルのそれぞれが設けられており、
前記第1検出パネル、および前記第2検出パネルが出力する放射線の検出データを基に、被検体の乳房内で発した放射線強度をイメージングするマッピング手段と、
生検用の針と、
前記針を所定方向、および所定方向と直交する2方向に移動させる針移動手段と、
前記針移動手段を制御する針移動制御手段とを備え、
前記プレートの少なくとも一方には、放射線を照射する放射線源を有し、
前記マッピング手段が被検体の乳房内で発した放射線強度をイメージングする際、前記プレートが有する前記放射線源も含めてマッピングし、
前記針移動制御手段は、マッピングされた前記放射線源を位置の基準として前記針の移動を制御することを特徴とする乳房用放射線装置。
【請求項2】
請求項1に記載の乳房用放射線装置において、
前記放射線源が前記プレートの3箇所以上に配置され、各放射線源が直列に配列していないことを特徴とする乳房用放射線装置。
【請求項3】
請求項1または請求項2に記載の乳房用放射線装置において、
前記針は、基台に移動可能に支持され、前記針移動手段は、前記基台と前記針との位置関係を変化させることで前記針を移動させ、
前記第1検出パネルは前記第1プレートから着脱可能となっており、乳房に針が導入される時点においては前記第1検出パネルが前記第1プレートから脱離され、その代わりに、前記基台が前記第1プレートに取り付けられ、
前記第1プレートには、生検用の前記針を所定方向から挿通させる貫通孔を有しており、
前記針は、前記貫通孔を通過して被検体の乳房に導入されることを特徴とする乳房用放射線装置。
【請求項4】
請求項1ないし請求項3のいずれかに記載の乳房用放射線装置において、
前記第1プレートおよび前記基台には、それぞれの位置関係を決定する位置決め手段が設けられていることを特徴とする乳房用放射線装置。
【請求項5】
請求項1ないし請求項4のいずれかに記載の乳房用放射線装置において、
前記第1プレートは、交換可能となっており、
前記第2プレートと、前記貫通孔の位置の異なる複数の前記第1プレートのうちの1つとにより被検体の乳房が挟み込まれることを特徴とする乳房用放射線装置。
【請求項6】
請求項1ないし請求項5のいずれかに記載の乳房用放射線装置において、
放射線を光に変換するシンチレータと、前記シンチレータから発した光を検出する光検出器と、前記シンチレータと前記光検出器との間に設けられ、両者を光学的に結合させるライトガイドとを備えた放射線検出器が2次元的に配列されることで、前記第1検出パネル、および前記第2検出パネルが構成されていることを特徴とする乳房用放射線装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【公開番号】特開2011−98145(P2011−98145A)
【公開日】平成23年5月19日(2011.5.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−255832(P2009−255832)
【出願日】平成21年11月9日(2009.11.9)
【出願人】(000001993)株式会社島津製作所 (3,708)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成23年5月19日(2011.5.19)
【国際特許分類】
【出願日】平成21年11月9日(2009.11.9)
【出願人】(000001993)株式会社島津製作所 (3,708)
【Fターム(参考)】
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