説明

乳酸発酵竹粉密封体の製造方法

【課題】真空包装後の密封容器の損傷による歩留りの低下、乳酸発酵竹粉の品質の低下、雑菌による黴びの発生等を防止でき、低コストでの乳酸発酵竹粉密封体の製造を可能にする。
【解決手段】生竹11を竹粉化する竹粉化工程5と、発酵時の発生ガスを抜きながら竹粉12を乳酸発酵させる乳酸発酵工程7と、乳酸発酵済みの乳酸発酵竹粉2を篩17にかけて夾雑物を除去する夾雑物除去工程8と、乳酸発酵済みの乳酸発酵竹粉2を密封容器3により真空包装する真空包装工程9と、乳酸発酵竹粉2が密封容器3により真空包装された乳酸発酵竹粉密封体1を所定期間置いて雑菌を死滅させる雑菌死滅工程10とを経て、乳酸発酵竹粉2を密封容器3により密封した乳酸発酵竹粉密封体1を製造する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、乳酸発酵竹粉が密封容器に密封された乳酸発酵竹粉密封体を製造する乳酸発酵竹粉密封体の製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
宗竹等の生竹を切削により竹粉化して乳酸発酵させた乳酸発酵竹粉があり、この乳酸発酵竹粉は家畜等の飼料又は飼料用添加物として、また野菜、果樹その他の農作物等の肥料として普及しつつある。例えば乳酸発酵竹粉は牧草を乳酸発酵させたサイレージと同様に、家畜の有用な栄養成分である乳酸と酢酸とを含んでいる。
【0003】
従来、この乳酸発酵竹粉を製造する場合には、先ず孟宗竹等の生竹を横方向に切削して500μm程度の竹粉となるように竹粉化し、その後、1時間以内の短時間で遮光性、密封性を有するアルミ蒸着フィルム製の密封袋に収納して真空包装し、嫌気条件下で2〜3週間静置して乳酸発酵させる方法を採っている(特許文献1)。
【特許文献1】特開2006−180832号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
乳酸発酵竹粉は嫌気性を有するため、遮光性、密封性を有する密封袋により真空包装する必要がある。一方、竹粉の乳酸発酵は竹粉に含まれる乳酸菌、取り分けラクトコッカスラクティス菌により行われ、その発酵時に炭酸ガス(発生ガス)を発生する。
【0005】
しかし、従来は竹粉化後の竹粉を1時間以内という短時間で直ちに密封袋により真空包装し、その密封袋内で竹粉を乳酸発酵させているため、竹粉の乳酸発酵が進行するに伴って炭酸ガスの発生により密封袋が膨張して破れることがある。
【0006】
そして、乳酸発酵竹粉は密封袋に密封した状態で流通するため、密封袋が破損すれば最早それは商品としての価値がなく、それだけ歩留りが低下する。また保管中に密封袋が破れた場合には、密封袋の破損を知らずに長期間放置することになるため、空気との接触により乳酸発酵竹粉の品質が著しく低下する。しかも乳酸発酵中の竹粉、又は乳酸発酵直後の乳酸発酵竹粉は黴び等の発生原因となる好気性雑菌を含有していることが多く、また密封袋の破れた箇所から外部の好気性雑菌が進入する等によって、乳酸発酵竹粉に黴び等が発生する等の問題もある。
【0007】
このような防止対策として、密封袋の材料に炭酸ガスの発生程度では破れないだけの強度を有する厚手のものを使用することも可能である。しかし、その場合には包装資材が高くなり、それが原因で乳酸発酵竹粉の製造コストがアップすると云う問題がある。
【0008】
また密封袋に厚手の材料を使用した場合でも、竹粉を密封した密封袋を倉庫等に静置して保管する際に多段に積み重ねると、下側の密封袋には大きな荷重が加わるため、炭酸ガスの発生によって密封袋が破れる惧れがあり、積み重ねるにも限度があって保管その他で広いスペースを確保する必要がある。
【0009】
本発明は、このような従来の問題点に鑑み、真空包装後の密封容器の損傷による歩留りの低下、乳酸発酵竹粉の品質の低下、雑菌による黴びの発生等を防止でき、低コストでの乳酸発酵竹粉密封体の製造が可能となり、しかも物流コスト等も低減できる乳酸発酵竹粉密封体の製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明は、乳酸発酵竹粉2が密封容器3により密封された乳酸発酵竹粉密封体1を製造するに際し、発酵時の発生ガスを抜きながら生竹11の竹粉12を乳酸発酵させる乳酸発酵工程7と、乳酸発酵済みの乳酸発酵竹粉2を密封容器3により真空包装する真空包装工程9とを経て行う。
【0011】
また真空包装工程9の後に、乳酸発酵竹粉2が密封容器3により真空包装された乳酸発酵竹粉密封体1を所定期間置いて雑菌を死滅させる雑菌死滅工程10を設けてもよい。更に生竹11を竹粉化する竹粉化工程5と、その竹粉12を発酵容器15に入れて発生ガスを抜きながら乳酸発酵させる乳酸発酵工程7と、乳酸発酵済みの乳酸発酵竹粉2を篩17にかけて夾雑物を除去する夾雑物除去工程8と、夾雑物除去後の乳酸発酵竹粉2を遮光性、密封性を有する密封袋3により真空包装する真空包装工程9とを経てもよい。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、発酵時の発生ガスを抜きながら生竹11の竹粉12を乳酸発酵させる乳酸発酵工程7と、乳酸発酵済みの乳酸発酵竹粉2を密封容器3により真空包装する真空包装工程9とを経て乳酸発酵竹粉密封体1を製造するため、真空包装後の密封容器3の損傷による歩留りの低下、乳酸発酵竹粉2の品質の低下、雑菌による黴びの発生等を防止でき、低コストでの乳酸発酵竹粉密封体1の製造が可能となり、しかも物流コスト等も低減できる利点がある。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
以下、本発明の一実施例を図面に基づいて詳述する。図1は乳酸発酵竹粉密封体1を示し、この乳酸発酵竹粉密封体1は乳酸発酵竹粉2を密封容器、例えば遮光性、密封性を有するアルミ蒸着フィルム製の密封袋3により真空包装されている。
【0014】
この乳酸発酵竹粉密封体1は、図2に示す清浄化工程4、竹粉化工程5、容器詰め工程6、乳酸発酵工程7、夾雑物除去工程8、真空包装工程9、雑菌死滅工程10を経て、図3に示すような順序で製造する。
【0015】
乳酸発酵竹粉2の原料には1〜2年物の孟宗竹の生竹11を使用するが、伐採後の生竹11の表面には泥、ゴミその他のものが付着しているため、先ず清浄化工程4において泥等の付着物を除去して生竹11を清浄化する。この清浄化はワイヤーブラシ等の除去具を使用して行えばよい。なお、生竹11は1〜2年物の孟宗竹が適当であるが、3年物以上の孟宗竹でもよいし、孟宗竹以外の淡竹等でもよい。
【0016】
次に竹粉化工程5において、清浄化後の生竹11を切削して所定の大きさの竹粉12に竹粉化する。この竹粉化に際しては、例えば生竹11の端面に当接して回転する回転刃13を備えた竹粉化装置14等を利用して、その回転刃13により生竹11を端面側から長手方向と略直角方向に切削することにより所定の大きさの竹粉12にする。竹粉12は略500μm程度の厚さで生竹11を横方向に切削してハニカム状にしたものが適当であるが、約100〜700μm程度でもよい。また竹粉12は生竹11を研削その他で粉砕したものでもよい。
【0017】
容器詰め工程6では、適度な水分を含有する竹粉12を発酵容器、例えば透明ゴム袋等の発酵袋15に所定量ずつ詰めて、発酵袋15の口側を押え付け又は絞る等して内部の空気を出した後、発酵袋15の口部側を紐16で縛る等により封口する。この紐16等による封口は空気の自由な出入りを阻止するが、乳酸発酵時に発生する炭酸ガス(発生ガス)の放出を許容して、炭酸ガスによる発酵袋15内の内圧の上昇を防止できる程度であることが望ましい。
【0018】
発酵袋15に詰める竹粉12の量は発酵袋15の大きさを考慮して決定すればよいが、発酵場所への運搬等の作業性から20Kg程度が適当である。また発酵袋15は適度な弾性又は伸縮性を有するものがよいが、弾性又は伸縮性のないものを使用してもよい。
【0019】
なお、発酵容器は発酵袋15以外の比較的固い容器等を使用してもよい。その場合にはガス抜き機能又は内圧調整機能を備えていることが望ましい。竹粉12の乳酸発酵状態を外部から目視により確認する場合には、透明な発酵容器又は発酵袋15が適当である。
【0020】
竹粉12を発酵袋15に詰めた後、次の乳酸発酵工程7ではその発酵袋15を発酵室等の暗部に静置して、ラクトコッカスラクティス菌等の乳酸菌により乳酸発酵させる。この乳酸発酵は発酵袋15内の竹粉12が適度な水分を有し、また発酵袋15内に適度の空気があればよい。
【0021】
そして、適度な水分を含む竹粉12を適度の空気がある半嫌気条件の下に、夏期で2週間、冬期で3週間程度暗部にて静置することにより、ラクトコッカスラクティス菌等の乳酸菌により乳酸発酵して、乳酸と酢酸とを含有し嫌気性を有する乳酸発酵竹粉2を得ることができる。
【0022】
なお、竹粉12の乳酸発酵に要する期間は、外気温の高低によって違いがあるので、発酵場所の温度を略一定に制御するようにしてもよい。複数の発酵袋15を覆うように遮光性シートを掛けて暗くしてもよい。
【0023】
乳酸発酵時には炭酸ガスが発生する。しかし、発酵袋15は口部を紐16等で縛る程度であって、僅かとは云えども気体の流通が可能であるため、乳酸発酵時に発酵袋15内で発生した炭酸ガスは口部から外部へと僅かずつ逃がすことができる。従って、炭酸ガスを抜きながら乳酸発酵させるので、発酵袋15が炭酸ガスによって膨張し、また破れるような問題はない。
【0024】
竹粉12の乳酸発酵の状況は発酵袋15の外側から目視により行う。なお、竹粉12の乳酸発酵の状況は色の変化、臭いの変化等により、センサーを使用して自動的に判定するようにしてもよい。
【0025】
そして、乳酸発酵が完了すれば、その乳酸発酵竹粉2を発酵袋15から取り出して、夾雑物除去工程8でその乳酸発酵竹粉2を篩17に掛けて竹節のかけら等の夾雑物を除去する。このため乳酸発酵竹粉2を飼料として使用する場合にも、竹節のかけら等によって家畜が怪我をするような惧れはない。なお、乳酸発酵竹粉2を取り出した後の発酵袋15は、次の竹粉12の乳酸発酵用として使用する。
【0026】
乳酸発酵済みの乳酸発酵竹粉2は所定量ずつ計量して密封容器、例えば密封袋3により密封して商品とする。この乳酸発酵竹粉2は乳酸と酢酸とを含むが、嫌気性を有し、また滅菌処理等を行っていないため、黴び、腐敗の原因となるバクテリア等の雑菌を含んでいる。
【0027】
そこで、次の真空包装工程9において、乳酸発酵竹粉2を遮光性、密封性を有するアルミ蒸着フィルム製の密封袋3に入れて真空包装により密封して乳酸発酵竹粉密封体1とし、更に次の雑菌死滅工程10において、その乳酸発酵竹粉密封体1を所定期間静置して乳酸発酵竹粉2内のバクテリア等の雑菌を死滅させた後、その乳酸発酵竹粉密封体1を最終の商品として出荷する。
【0028】
真空包装工程9では例えば1Kg又は5Kg程度の乳酸発酵竹粉2を単位量とし、その乳酸発酵竹粉2を密封袋3に入れて真空包装する。この時点ではラクトコッカスラクティス菌等の乳酸菌は既に死滅して死菌体末となっており、その後に二次発酵して炭酸ガスを発生するようなことはない。
【0029】
従って、乳酸発酵時の炭酸ガスの発生による密封袋3の膨張、それに伴う密封袋3の破れその他の損傷を確実に防止でき、乳酸発酵竹粉密封体1の製造に際しての歩留りが著しく向上すると共に、密封袋3内の乳酸発酵竹粉2の品質の低下、黴びの発生等を未然に防止できる。
【0030】
しかも密封袋3に薄手の材料を使用することが可能であり、歩留りの向上と相俟って製造コストを低減できる。また密封袋3が内部の乳酸発酵竹粉2に密着しており、その後の物流段階での保管、取り扱い等も容易になる利点がある。
【0031】
雑菌死滅工程10では乳酸発酵竹粉密封体1を保管庫18等の適当な保管場所に移し、日光を遮断した状態で15〜25℃、好ましくは20℃程度の略一定温度に温度管理しながら約1カ月程度静置する。このようにすれば乳酸発酵竹粉2は乳酸と酢酸とを含む強酸性であることから、その酸によって黴び、腐敗等の原因となるバクテリア等の雑菌を死滅させることができる。
【0032】
また乳酸発酵竹粉2を密封袋3により真空包装しており、密封袋3内が真空状態であるため、仮に耐酸性の強い他の好気性雑菌が混入していても、1カ月程度静置する間にその好気性雑菌を死滅させることができる。
【0033】
因みに、この方法により製造された乳酸発酵竹粉密封体1は、その後、常温下でも半年以上の保存が可能であった。なお、乳酸発酵竹粉2を飼料等として使用する場合には、密封袋3を一旦開封すれば品質が変化するため、一回の使い切りとすることが望ましい。
【0034】
以上、本発明の一実施例について詳述したが、本発明はこの実施例に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で種々の変更が可能である。例えば、実施例では、原料の生竹11から乳酸発酵竹粉密封体1を製造するまでの清浄化工程4、竹粉化工程5、容器詰め工程6、乳酸発酵工程7、夾雑物除去工程8、真空包装工程9、雑菌死滅工程10の各工程を例示しているが、各工程での作業を自動機器により自動的に行い、各工程相互をコンベヤライン等で接続してもよい。
【0035】
乳酸発酵竹粉2の用途によっては、清浄化工程4、夾雑物除去工程8は省略してもよい。また乳酸発酵竹粉2を短期間で消費する場合には、雑菌死滅工程10も省略してもよい。発酵容器は半嫌気状態を確保できるものであれば、固定式の発酵タンク、発酵室等でもよい。また密封容器は密封性、遮光性を有する容器が望ましいが、密封性(ガスバリアー性)を有するものであれば、紫外線等を完全に遮光し得ないものでもよい。
【図面の簡単な説明】
【0036】
【図1】本発明の一実施例を例示する乳酸発酵竹粉密封体の一部破断斜視図である。
【図2】同乳酸発酵竹粉密封体の製造工程を示すブロック図である。
【図3】同乳酸発酵竹粉密封体の製造課程を示す説明図である。
【符号の説明】
【0037】
1 乳酸発酵竹粉密封体
2 乳酸発酵竹粉
3 密封袋(密封容器)
7 乳酸発酵工程
8 夾雑物除去工程
9 真空包装工程
10 雑菌死滅工程
11 生竹
12 竹粉
15 発酵袋(発酵容器)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
乳酸発酵竹粉(2)が密封容器(3)により密封された乳酸発酵竹粉密封体(1)を製造するに際し、発酵時の発生ガスを抜きながら生竹(11)の竹粉(12)を乳酸発酵させる乳酸発酵工程(7)と、乳酸発酵済みの乳酸発酵竹粉(2)を密封容器(3)により真空包装する真空包装工程(9)とを経て行うことを特徴とする乳酸発酵竹粉密封体の製造方法。
【請求項2】
乳酸発酵竹粉(2)が密封容器(3)により真空包装された乳酸発酵竹粉密封体(1)を所定期間置いて雑菌を死滅させる雑菌死滅工程(10)を含むことを特徴とする請求項1の乳酸発酵竹粉密封体の製造方法。
【請求項3】
生竹(11)を竹粉化する竹粉化工程(5)と、その竹粉(12)を発酵容器(15)に入れて発生ガスを抜きながら乳酸発酵させる乳酸発酵工程(7)と、乳酸発酵済みの乳酸発酵竹粉(2)を篩(17)にかけて夾雑物を除去する夾雑物除去工程(8)と、夾雑物除去後の乳酸発酵竹粉(2)を遮光性、密封性を有する密封袋(3)により真空包装する真空包装工程(9)とを含むことを特徴とする請求項1又は2に記載の乳酸発酵竹粉密封体の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2009−189294(P2009−189294A)
【公開日】平成21年8月27日(2009.8.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−32981(P2008−32981)
【出願日】平成20年2月14日(2008.2.14)
【出願人】(594034636)四国機器株式会社 (1)
【出願人】(508047093)株式会社さぬきテクノ (2)
【Fターム(参考)】