説明

乳頭洗浄システム

【課題】 使用する場所が広範囲になったり使用回数が多くなった場合でも大幅な労力軽減を図るとともに、使用環境に対する柔軟適用性及び洗浄装置の使い勝手(利便性)をより高める。
【解決手段】 乳頭Mを挿入口2iから内部に挿入可能な洗浄ユニットU1と、洗浄ユニットU1に対して洗浄液Lを供給する洗浄液供給手段及び電力を供給する電力供給手段を有する本体部U2とを備えてなる乳頭洗浄システム1を構成するに際して、被着脱部6a,6bを有する一又は二以上の異なる搬送装置Xa,Xbと、各搬送装置Xa,Xbの被着脱部6a,6bに対して着脱可能な着脱部7a,7bを有し、この着脱部7a,7bに対して本体部U2の一部U2p又は全部、及び洗浄ユニットU1を一体に設けた洗浄装置Wと、被着脱部6a,6bと着脱部7a,7bを装着した際に当該被着脱部6a,6bと当該着脱部7a,7bを固定可能な固定部8a…,8b…を備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、乳牛の乳頭を洗浄(清拭)する際に用いて好適な洗浄ユニット及びこの洗浄ユニットに接続する本体部を備える乳頭洗浄システムに関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、搾乳を行う乳牛の乳頭には、汚れや雑菌(病原菌等)が付着しているため、牛乳の衛生的生産や乳質低下防止の観点或いは牛体の乳房炎等を防止する観点から、搾乳前に、乳頭に対する所定の洗浄作業(清拭作業)を行う必要があり、既に、本出願人もこのような洗浄作業に用いて好適な洗浄装置を特許文献1により提案した。
【0003】
同文献1で開示される洗浄装置は、突起状の被洗浄物における起伏のある先端部であっても有効かつ十分な洗浄を行えるようにするとともに、ブラシ機構部におけるブラシへのゴミの付着を回避するようにしたものであり、突起状の被洗浄物を挿入口から内部に挿入可能なハウジング部,このハウジング部に挿入した被洗浄物を洗浄するブラシ機構部,このブラシ機構部を回転させる回転駆動部及びハウジング部の内部に洗浄液を噴射する噴射部を備える洗浄ユニットと、少なくとも、洗浄ユニットに対して洗浄液を供給する洗浄液供給手段及び電力を供給する電力供給手段を備える本体ユニットからなる洗浄装置であって、ハウジング部の挿入口に配してブラシ機構部と一体に回転するとともに、上面に洗浄部を有し、かつ中央に被洗浄物が挿入する挿通孔を有する円盤状の洗浄部材と、この洗浄部材の上方に配した上噴射部及び洗浄部材の下方に配した下噴射部からなる噴射部と、上噴射部及び/又は下噴射部に洗浄液を供給する洗浄液供給手段とを備え、この洗浄装置は手で持って牛舎内の任意の場所まで持ち運ぶことができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2008−206407号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、上述した特許文献1で開示される洗浄装置は、次のような解決すべき課題が存在した。
【0006】
第一に、洗浄装置は手で持って牛舎内の任意の場所まで持ち運び可能な携帯式に構成するが、複数の電動モータやバッテリ等の各種電気部品及び機械部品が含まれるため、相応の重量を有している。したがって、実際の洗浄作業において、使用する場所が広範囲になったり使用回数が多くなった場合、持ち運びに伴う労力が無視できない。
【0007】
第二に、洗浄装置を持ち運ぶに際して、底部に車輪を付設したり車輪を有する台車に搭載するなどの搬送手段も考えられるが、必ずしも万能ではなく、搬送手段を付設しても実際の使用環境によっては、搬送できない場合や他の搬送手段の方がより良い場合もあるなど、柔軟適用性や使い勝手(利便性)において十分とは言えない。
【0008】
本発明は、このような背景技術に存在する課題を解決した乳頭洗浄システムの提供を目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、上述した課題を解決するため、乳頭Mを挿入口2iから内部に挿入可能なブラシカップ部2,このブラシカップ部2に挿入した乳頭Mを洗浄するブラシ機構部3,このブラシ機構部3を回転させる回転駆動部4及びブラシカップ部2の内部に洗浄液Lを噴射する噴射部5を有する洗浄ユニットU1と、少なくとも、洗浄ユニットU1に対して洗浄液Lを供給する洗浄液供給手段及び電力を供給する電力供給手段を有する本体部U2とを備えてなる乳頭洗浄システム1を構成するに際して、被着脱部6a,6bを有する一又は二以上の異なる搬送装置Xa,Xbと、各搬送装置Xa,Xbの被着脱部6a,6bに対して着脱可能な着脱部7a,7bを有し、この着脱部7a,7bに対して本体部U2の一部U2p又は全部、及び洗浄ユニットU1を一体に設けた洗浄装置Wと、被着脱部6a,6bと着脱部7a,7bを装着した際に当該被着脱部6a,6bと当該着脱部7a,7bを固定可能な固定部8a…,8b…を備えてなることを特徴とする。
【発明の効果】
【0010】
このような構成を有する本発明に係る乳頭洗浄システム1によれば、次のような顕著な効果を奏する。
【0011】
(1) 被着脱部6a,6bを有する搬送装置Xa,Xbと、各搬送装置Xa,Xbの被着脱部6a,6bに対して着脱可能な着脱部7a,7bを有し、この着脱部7a,7bに対して本体部U2の一部U2p又は全部、及び洗浄ユニットU1を一体に設けた洗浄装置Wと、被着脱部6a,6bと着脱部7a,7bを固定可能な固定部8a…,8b…を備えるため、実際の洗浄作業において、使用する場所が広範囲になったり使用回数が多くなった場合であっても搬送装置Xa,Xbにより容易に移動させることができ、大幅な労力軽減を図ることができる。
【0012】
(2) 一又は二以上の異なる搬送装置Xa,Xbを選択して、本体部U2の一部U2p又は全部、及び洗浄ユニットU1を一体に設けた洗浄装置Wを着脱できるようにしたため、実際の使用環境に対応した最適な搬送装置Xa…を使用することができる。したがって、使用環境に対する柔軟適用性を高めることができるとともに、洗浄装置Wの使い勝手(利便性)をより高めることができる。
【0013】
(3) 発明の好適な態様により、搬送装置として、搬送レール部11と、この搬送レール部11に装填することにより当該搬送レール部11に沿って移動可能な走行部12と、この走行部12から吊下げた吊下部13と、この吊下部13の一部に設けた被着脱部6aを備える搬送レール装置Xaを適用すれば、地面(床面)に凹凸が多いなどによって車輪走行が適さない環境や既に搾乳装置搬送用の搬送レール機構が設置されている環境等に対応した最適な搬送装置として使用できる。
【0014】
(4) 発明の好適な態様により、搬送装置として、台車部14の上面14u上に起立させた支持部15と、この支持部15の一部に設けた被着脱部6bを備える搬送台車装置Xbを適用すれば、地面(床面)が平坦な環境や既設の搬送レール機構が無い環境等に対応した最適な搬送装置として使用できる。
【0015】
(5) 発明の好適な態様により、搬送装置Xa,Xbに、本体部U2の残部U2rを設けるようにすれば、搬送装置Xa,Xbと洗浄装置Wに対する本体部U2の搭載分担を任意に設定できるとともに、搬送装置Xa,Xbの仕様等に対応してより望ましい形態に設定できる。
【0016】
(6) 発明の好適な態様により、被着脱部6a,6bをパイプ部材(又はロッド部材)Pra,Prbにより構成し、かつ着脱部7a,7bを被着脱部6a,6bが挿入(又は被着脱部6a,6bに挿入)するパイプ部材(又はロッド部材)Prcにより構成するとともに、固定部8a…,8b…を被着脱部6a,6bと着脱部7a,7bに貫通する貫通部材により構成すれば、少ない部品点数により容易かつ低コストに実施できる。
【0017】
(7) 発明の好適な態様により、洗浄装置Wに、洗浄ユニットU1を着脱可能に保持するユニットホルダ部17と、このユニットホルダ部17に洗浄ユニットU1が保持されたことを検出するユニット検出部18と、このユニット検出部18により洗浄ユニットU1が保持されたことが検出されたなら予め設定した所定の洗浄条件に従って洗浄液Lを噴射部5から噴射させる動作を行う自己洗浄機能部19を設ければ、使用後、作業者は洗浄ユニットU1をユニットホルダ部17にセットするのみで、ブラシ機構部3におけるブラシ自身を自動で洗浄する自己洗浄を行うことができ、作業工数の削減による全体の作業能率を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】本発明の最良の実施形態に係る乳頭洗浄システムの全体構成図、
【図2】同乳頭洗浄システムにおける搬送レール装置を使用する場合の構成図、
【図3】同搬送レール装置を使用する場合の全体構成図、
【図4】同乳頭洗浄システムにおける搬送台車装置を使用する場合の構成図、
【図5】同乳頭洗浄システムにおけるユニットホルダ部の拡大側面図、
【図6】同ユニットホルダ部の拡大平面図、
【図7】同乳頭洗浄システムにおける洗浄ユニットの洗浄部材を除いた平面図、
【図8】同洗浄ユニットの断面側面図、
【図9】同乳頭洗浄システムのブロック系統図、
【図10】同乳頭洗浄システムにおける洗浄ユニットの使用説明図、
【発明を実施するための形態】
【0019】
次に、本発明に係る好適実施形態を挙げ、図面に基づき詳細に説明する。
【0020】
まず、本実施形態に係る乳頭洗浄システム1の概要について、図1〜図4を参照して説明する。
【0021】
例示の乳頭洗浄システム1は、基本的な要部構成として、被着脱部6a,6bを有する二つの異なる搬送装置Xa,Xb、即ち、被着脱部6aを有する搬送レール装置Xaと被着脱部6bを有する搬送台車装置Xbを備えるとともに、搬送レール装置Xaの被着脱部6aと搬送台車装置Xbの被着脱部6bに対して着脱可能な着脱部7a,7bを有し、この着脱部7a,7bに、本体部U2の一部U2pとなる本体ユニットUm、及び乳頭Mを挿入口2iから内部に挿入可能なブラシカップ部2を有する洗浄ユニットU1を一体に設けた洗浄装置Wを備える。また、被着脱部6aと着脱部7aを装着した際に当該被着脱部6aと当該着脱部7aを固定可能な固定部8a…を備えるとともに、被着脱部6bと着脱部7bを装着した際に当該被着脱部6bと当該着脱部7bを固定可能な固定部8b…を備える。この場合、本体部U2は、洗浄ユニットU1に対して洗浄液Lを供給する洗浄液供給手段及び電力を供給する電力供給手段を備え、搬送レール装置Xaと搬送台車装置Xbは、本体部U2の残部U2rを備える。
【0022】
次に、乳頭洗浄システム1における各部の構成について、図1〜図9を参照して具体的に説明する。
【0023】
搬送レール装置Xaは、図1〜図3に示すように、搬送レール部11と、この搬送レール部11に装填することにより当該搬送レール部11に沿って移動可能な走行部12と、この走行部12から吊下げた吊下部13と、この吊下部13の下部(一部)に設けた被着脱部6aを備える。搬送レール部11は、低面部11dの長手方向にスリット21を有する断面矩形の角パイプ状に形成し、天井Hから支持部材23…により吊下げられるとともに、図3に示すように、乳牛が係留される複数のストールA…に沿って配される。走行部12は、搬送レール部11の内部に収容し、低面部11dの上面を走行できるように、走行部12の前後左右に四つのローラ25…を有する。吊下部13は丸パイプ部材Praにより形成し、この吊下部13の上端と走行部12は、スリット21を通る結合部材27を介して連結する。そして、丸パイプ部材Praの下部を被着脱部6aとして用いる。この被着脱部6aは直径方向に貫通する上下一対の離間した挿通孔28,28を有する。
【0024】
また、搬送レール装置Xaには、図3に示すように、搬送レール部11に付随して洗浄液供給装置31と電源装置41を備える。洗浄液供給装置31は、洗浄液Lを貯留する貯液槽32と、この貯液槽32に貯留した洗浄液Lを循環させる循環回路33を備える。循環回路33は、貯液槽32の内部に両端を臨ませた洗浄液循環ライン(配管)34と、洗浄液循環ライン34の上流側に接続した送液ポンプ35と、洗浄液循環ライン34の下流側に接続したリリースバルブ36と、このリリースバルブ36の手前における洗浄液循環ライン34に流入口を接続した開閉バルブ37を備え、この開閉バルブ37の流出口は貯液槽32の外部に臨ませる。そして、洗浄液循環ライン34の中途に、他端を閉塞した主洗浄液ライン38の一端を接続するとともに、主洗浄液ライン38の中途には、一又は二以上の分岐洗浄液ライン39…の一端を接続する。これにより、送液ポンプ35を作動させれば、洗浄液循環ライン34を介して主洗浄液ライン38に洗浄液Lが供給されるため、主洗浄液ライン38に分岐接続した各分岐洗浄液ライン39…から洗浄液Lを供給可能となる。さらに、電源装置41は、電源装置本体42と、この電源装置本体42の出力部に一端を接続した主電源ライン43と、この主電源ライン43の中途に一端を接続した一又は二以上の分岐電源ライン44…を備える。
【0025】
分岐洗浄液ライン39と分岐電源ライン44は、一緒に搬送レール部11に沿って付設し、他端を搬送レール装置Xaにより移動する洗浄装置Wに対して接続可能にする。したがって、分岐洗浄液ライン39と分岐電源ライン44は搬送レール部11に沿って移動する洗浄装置Wに追従できるように余裕のある長さに選定し、図3に示すように、搬送レール部11に装填した複数の補助ローラ12s…により所定間隔おきに吊り下げることが望ましい。なお、分岐洗浄液ライン39と分岐電源ライン44は一又は二以上設けることができるため、一又は二以上の洗浄装置W…に接続可能となる。これにより、洗浄液供給装置31は、後述する洗浄ユニットU1に対して洗浄液Lを供給する洗浄液供給手段を構成するとともに、電源装置41は、洗浄ユニットU1に対して電力を供給する電力供給手段を構成する。また、洗浄液供給装置31及び電源装置41は、本体部U2の残部U2rを構成し、洗浄液供給装置31,電源装置41及び洗浄装置Wに備える本体ユニットUm(本体部U2の一部U2p)が本体部U2を構成する。このように、搬送レール装置Xaに、本体部U2の残部U2rを設けるようにすれば、搬送レール装置Xaと洗浄装置Wに対する本体部U2の搭載分担を任意に設定できるとともに、搬送レール装置Xaの仕様等に対応してより望ましい形態に設定できる。
【0026】
一方、搬送台車装置Xbは、図1及び図4に示すように、台車部14と、この台車部14の底面に設けた複数の移動用の車輪部51…と、台車部14の後端から上方に起立したハンドル部52を備え、ハンドル部52を押引して台車部14を自由に移動させることができる。そして、台車部14の上面14u上における後側には洗浄液Lを収容する洗浄液タンク53を搭載するとともに、上面14u上における前側には支持部15を起設する。支持部15は丸パイプ部材Prbにより形成し、この丸パイプ部材Prbの上部(一部)を被着脱部6bとして用いる。この被着脱部6bは直径方向に貫通する上下一対の離間した挿通孔56,56を有する。したがって、洗浄液タンク53は洗浄液供給手段を構成するとともに、本体部U2の残部U2rを構成し、洗浄液タンク53及び本体ユニットUmが本体部U2を構成する。このように、搬送台車装置Xbに、本体部U2の残部U2rを設けるようにすれば、搬送台車装置Xbと洗浄装置Wに対する本体部U2の搭載分担を任意に設定できるとともに、搬送台車装置Xbの仕様等に対応してより望ましい形態に設定できる。
【0027】
他方、洗浄装置Wは、図1〜図10に示すように、搬送レール装置Xaの被着脱部6aと搬送台車装置Xbの被着脱部6bに対して着脱可能な着脱部7a,7bを有する取付部61を備える。この場合、取付部61は上述した丸パイプ部材Pra及びPrbよりも大径であって、丸パイプ部材Pra及びPrbが挿入可能な所定長さの丸パイプ部材Prcにより形成し、この丸パイプ部材Prcの上部と下部をそれぞれ着脱部7aと7bとして用いる。着脱部7aには被着脱部6aに設けた挿通孔28,28に対応する挿通孔63,63を有し、着脱部7aに被着脱部6aを挿入した際には、対応する挿通孔63と28…間に貫通する固定ピン又はボルトナット等の貫通部材を用いた固定部8a…により両者を固定できるとともに、固定部8a…を取外すことにより、被着脱部6aから着脱部7aを離脱することができる。同様に、着脱部7bには被着脱部6bに設けた挿通孔56,56に対応する挿通孔64,64を有し、着脱部7bに被着脱部6bを挿入した際には、対応する挿通孔64と56…間に貫通する固定ピン又はボルトナット等の貫通部材を用いた固定部8b…により両者を固定できるとともに、固定部8b…を取外すことにより、被着脱部6aから着脱部7aを離脱することができる。
【0028】
そして、この取付部61には、洗浄ユニットU1と、本体部U2の一部U2pを構成する本体ユニットUmを一体に設ける。本体ユニットUmは、背面を取付部材71により取付部61の中間位置に取付けるとともに、取付部61の上端付近には、洗浄ユニットU1を着脱可能に保持するユニットホルダ部17を取付ける。図5及び図6はユニットホルダ部17を拡大して示す。ユニットホルダ部17は、L形に折曲した取付プレート72を備える。取付プレート72は垂直側の取付プレート本体部72mと、この取付プレート本体部72mの上端から前方へ突出した水平側のカバー部17cからなり、この取付プレート本体部72mの背面を取付部材73により取付部61の上端付近に取付ける。この取付プレート本体部72mには一対の保持ロッド部17f,17fを取付ける。各保持ロッド部17f…は、それぞれ一本の棒材を使用し、後端を取付プレート本体部72mに固定して前方へ突出させる。この際、保持ロッド部17fと17f間の間隔は、後述する洗浄ユニットU1のブラシカップ部2の直径よりも稍大きく設定し、かつ平行に配する。
【0029】
また、カバー部17cには、ユニットホルダ部17に、洗浄ユニットU1が保持されたことを検出するユニット検出部18を付設する。この場合、ユニット検出部18には、カバー部17cの下面に取付けたリミットスイッチ18sを用いる。リミットスイッチ18sの取付位置は、保持ロッド部17f,17fに洗浄ユニットU1を載置した際に、当該洗浄ユニットU1の外面に押されてONする位置を選定する。リミットスイッチ18sはケーブル74を介して本体ユニットUmに接続する。
【0030】
一方、洗浄ユニットU1の構成を図7及び図8に具体的に示す。洗浄ユニットU1は、基本的な構成として、乳牛C(図9)の乳頭Mを挿入口2iから内部に挿入可能なブラシカップ部2,このブラシカップ部2に挿入した乳頭Mを洗浄するブラシ機構部3,このブラシ機構部3を回転させる回転駆動部4及びブラシカップ部2の内部に洗浄液Lを噴射する上噴射部5a及び下噴射部5bからなる噴射部5を備える。ブラシカップ部2は、全体を円筒形に形成し、上端開口が挿入口2iとなる。また、図8に示すように、ブラシカップ部2の上端位置より稍下側の位置となる外周面には、ブラシカップ部2の直径よりも大きいリング盤状の鍔部17sを一体形成する。この鍔部17sは、図6〜図8に示すように、ブラシカップ部2(洗浄ユニットU1)を一対の保持ロッド部17fと17f間に収容した際に、鍔部17sの両側下面が各保持ロッド部17f,17fの上に載置可能な直径を選定する。
【0031】
ブラシカップ部2は、内周面の上部に嵌め入れたリング形の噴射部形成部材81を有し、この噴射部形成部材81は、その外周面に、周方向に沿ったリング状の凹溝による上下一対の液通路82a,82bを有するとともに、各液通路82a,82bと内周面間に形成した複数の上噴射孔83a…及び複数の下噴射孔83b…を有する。この場合、各上噴射孔83a…及び下噴射孔83b…は、それぞれ周方向に沿って一定間隔おきに配する。これにより、ブラシカップ部2の上部には、上噴射部5aと下噴射部5bがそれぞれ上下に離間して設けられ、上噴射部5a(上噴射孔83a…)は、後述する洗浄部材96の上方に配されるとともに、下噴射部5b(下噴射孔83b…)は、洗浄部材96の下方に配される。
【0032】
ブラシ機構部3は、底面部下面を回転駆動部4の回転シャフトに結合し、この回転駆動部4により回転するカップ状(円筒状)をなすブラシホルダ部91と、このブラシホルダ部91の周面に保持され、ブラシカップ部2に挿入した乳頭Mの周面部Mfを洗浄(清拭)する周面部洗浄ブラシ部92と、ブラシホルダ部41により軸方向Fsの所定範囲にわたって変位自在に支持されるとともに、三つのスプリング93…により挿入口2i側に付勢され、乳頭Mにおける少なくとも先端部Msの洗浄(清拭)を行う先端部洗浄ブラシ部94を備える。
【0033】
周面部洗浄ブラシ部92は、図7に示すように、三つの周面ブラシ92x…を備え、図8に示すように、一端(上端)を、剛性の連結リング95の下面に固定するとともに、この連結リング95の上面に洗浄部材96を取付ける。これにより、各周面ブラシ92x…は、この連結リング95に沿って120〔゜〕間隔で配されるとともに、各周面ブラシ92x…におけるブラシ先端は、中心軸側に向けて配される。各周面ブラシ92x…におけるブラシ材質は、乳頭Mを傷付けることのない軟質合成樹脂素材等を利用できる。洗浄部材96は、円盤リング状に形成し、中央に乳頭Mが挿通する挿通孔を有する。洗浄部材96は、上面から上方に突出する複数のフィン状部96f…を有する。この場合、各フィン状部96f…は放射方向に形成するとともに、周方向に沿って一定間隔おきに配する。洗浄部材96はシリコンゴム等により一体成形する。これにより、洗浄部材96は、ブラシカップ部2の挿入口2iに配され、ブラシ機構部3と一体に回転することにより乳頭Mにおける根元部位Mbを洗浄する。
【0034】
先端部洗浄ブラシ部94は、図7に示すように、先端面ブラシ94sと三つの境曲面ブラシ94r…を備える。先端面ブラシ94sは、乳頭Mの先端部Msにおける先端面Mssに当接して当該先端面Mssの洗浄を行うものであり、硬度の低いシリコンゴム等を用いて全体を、中心から120〔゜〕間隔で放射三方向に延出した形状に形成し、上面には多数の円柱突起部96…を設ける。円柱突起部96…は、上端にエッジ部が形成され、乳頭M上の汚れを掻き取ることができる。境曲面ブラシ94r…は、先端面Mssから周面Mfに至る境曲面Msrに当接して当該境曲面Msrの洗浄を行うものであり、先端面ブラシ94sと同様に硬度の低いシリコンゴム等により形成し、図8に示すように、複数の切り溝を入れた二枚のシートを組み合わせた形態に形成する。このようなブラシ機構部3の構成により、各周面ブラシ92x…と各境曲面ブラシ94r…は、図7に示すように、周方向に沿って60〔゜〕間隔で交互に配され、異なる長さの乳頭Mに対しても先端部Msの洗浄を常にムラ無く良好に行うことができる。
【0035】
回転駆動部4は、ケーシング97にブラシモータ98を内蔵して構成し、ケーシング97の上端面からブラシモータ98の回転シャフトが上方に突出する。そして、ケーシング97の上端はブラシカップ部2の下端開口に取付けるとともに、ケーシング97の下面にはコネクタ99を取付ける。また、ケーシング97には、ブラシカップ部2の内部に連通する排液口部100を一体に形成する。なお、ブラシカップ部2の外周面には手で持った状態で操作できる運転スイッチ101(図9)を付設する。
【0036】
他方、本体ユニットUmは、全体が本体ハウジング110により覆われ、下側に配した洗浄液処理ユニットUpと上側に配した制御ユニットUcを内蔵する。以下、本体ユニットUmの構成を含む全体の接続系統の概要について、図9を参照して説明する。制御ユニットUcは、制御部112を備える。制御部112は各種制御を実行するマイクロコンピュータを用いたコントローラ112c及びメモリ112mを含むコンピューティング機能を備え、設定した所定の洗浄条件に従って洗浄液Lを噴射部5から噴射させる動作を行わせるための機能を備える。したがって、制御部112は、少なくとも、所定の洗浄条件を設定する機能を備えるとともに、メモリ112mには設定された所定の洗浄条件に従って洗浄液Lを噴射部5から噴射させるシーケンス制御を実行するための制御プログラムを格納する。また、自己洗浄を実行するための自己洗浄機能部19を構成する。また、本体ハウジング110には電源端子113を備えるため、洗浄装置Wを搬送レール装置Xaに使用する際には、前述した分岐電源ライン44をこの電源端子113に接続して使用するとともに、バッテリ収容部を備えるため、洗浄装置Wを搬送台車装置Xbに使用する際には、バッテリ収容部に収容したバッテリ114を使用する。
【0037】
一方、洗浄ユニットU1に備えるコネクタ99の内側接続端子には、ブラシモータ98と運転スイッチ101を接続する。そして、コネクタ99は、接続ケーブル102を介して本体ハウジング110側のコネクタに接続することにより、ブラシモータ98と運転スイッチ101をコントローラ112cに接続する。また、コントローラ112cには、前述したリミットスイッチ18s(ケーブル74)を接続する。さらに、洗浄ユニットU1におけるケーシング97に設けた排液口部100は、廃液チューブ103を介して洗浄液処理ユニットUpの廃液回収タンク120に接続する。洗浄液チューブ104a,104bは廃液チューブ103の内部に挿通させ、一端となる流出端を、洗浄ユニットU1におけるブラシカップ部2の内部に設けた接続口部105b…にそれぞれ接続する。各接続口部105b…はブラシカップ部2の内部流路を介して、上噴射部5a,下噴射部5bにそれぞれ接続する。各洗浄液チューブ104a,104bの他端となる流入端は、廃液回収タンク120を貫通させて当該廃液回収タンク120の外部に導出し、一方の洗浄液チューブ104aは第一電磁バルブ121aを介して送液ポンプ122の吐出口に接続するとともに、他方の洗浄液チューブ104bは第二電磁バルブ121bを介して送液ポンプ122の吐出口に接続する。したがって、本体ユニットUmと洗浄ユニットU1は、洗浄液チューブ104a,104bを含む廃液チューブ103と接続ケーブル102を有する接続ラインUsにより接続される。また、洗浄液処理ユニットUpに備える廃液回収タンク120には吸気ファン123を臨ませ、吸気ファン123,第一電磁バルブ121a及び第二電磁バルブ121bは、コントローラ112cに接続する。他方、送液ポンプ122の吸入口は本体ハウジング110に設けた洗浄液接続口124に接続する。この洗浄液接続口124には、前述した分岐洗浄液ライン39又は洗浄液タンク53を選択的に接続することができ、洗浄装置Wを搬送レール装置Xaに使用する際には、分岐洗浄液ライン39を接続するとともに、洗浄装置Wを搬送台車装置Xbに使用する際には、洗浄液タンク53を接続する。なお、廃液回収タンク120において、125は自動排出を行うオートドレインであり、回収された洗浄液(廃液)Lrはオートドレイン125及び排水管126を通して外部に排出される。
【0038】
次に、本実施形態に係る乳頭洗浄システム1の使用方法及び動作(機能)について、図1〜図10を参照して説明する。
【0039】
まず、搬送レール装置Xaを使用する場合について説明する。図1に示すように、洗浄装置Wの取付部61の上部に設けた着脱部7aに、搬送レール装置Xaに備える吊下部13の下部に設けた被着脱部6aを挿入する。そして、着脱部7aにおける挿通孔28,28と被着脱部6aにおける挿通孔63,63の位置を合わせた状態にし、挿通孔28…及び63…を貫通するボルトナット等の固定部8a.8aにより着脱部7aと被着脱部6aを固定する。この状態を図2に示す。さらに、図9に示すように、分岐洗浄液ライン39の先端口を洗浄液接続口124に接続するとともに、分岐電源ライン44の先端を電源端子113に接続する。分岐電源ライン44からは直流電力を供給してもよいし、交流電力を供給し、本体ユニットUmに設けた直流電源回路により直流電力に変換してもよい。なお、バッテリ114は使用しないため、本体ユニットUmから取出しておく。これにより、洗浄装置Wは搬送レール装置Xaの搬送レール部11に沿って自由に移動させて使用することができる。したがって、地面(床面)に凹凸が多いなどによって車輪走行が適さない環境や既に搾乳装置搬送用の搬送レール機構が設置されている環境等に対応した最適な搬送装置として使用することができる。
【0040】
次に、搬送台車装置Xbを使用する場合について説明する。図1に示すように、洗浄装置Wの取付部61の下部に設けた着脱部7bに、搬送台車装置Xbに備える支持部15の上部に設けた被着脱部6bを挿入する。そして、着脱部7bにおける挿通孔56,56と被着脱部6bにおける挿通孔64,64の位置を合わせた状態にし、挿通孔56…及び64…を貫通するボルトナット等の固定部8b.8bにより着脱部7bと被着脱部6bを固定する。この状態を図4に示す。さらに、図9に示すように、洗浄液接続口124には分岐洗浄液ライン39の代わりに洗浄液タンク53を接続するするとともに、電源端子113には分岐電源ライン44の代わりにバッテリ114を接続する。これにより、洗浄装置Wは搬送台車装置Xbにより自由に移動させて使用することができる。したがって、地面(床面)が平坦な環境や既設の搬送レール機構が無い環境等に対応した最適な搬送装置として使用することができる。
【0041】
このように、搬送レール装置Xa及び搬送台車装置Xbに洗浄装置Wを着脱するに際し、被着脱部6a,6bをパイプ部材(又はロッド部材)Pra,Prbにより構成し、かつ着脱部7a,7bを被着脱部6a,6bが挿入(又は被着脱部6a,6bに挿入)するパイプ部材(又はロッド部材)Prcにより構成するとともに、固定部8a…,8b…を被着脱部6a,6bと着脱部7a,7bに貫通する貫通部材により構成すれば、少ない部品点数により容易かつ低コストに実施できる利点がある。
【0042】
一方、乳頭Mに対する洗浄(清拭)処理は次のように行うことができる。図2及び図4は、いずれも非使用時における状態を示している。乳頭洗浄システム1を使用する際には、作業者は、洗浄ユニットU1を手で持ち、ユニットホルダ部17から離脱するとともに、図10に示すように、ブラシカップ部2の挿入口2iに乳牛Cの乳頭Mを挿入すれば、一連の洗浄(清拭)処理を行うことができる。なお、洗浄ユニットU1における先端部洗浄ブラシ部94は、スプリング93…により上方に付勢されるため、乳頭Mが未挿入のときは、図8に示す最上昇位置にあるが、乳頭Mが挿入されれば、下降変位する。
【0043】
洗浄は、予備洗浄と主洗浄からなり、最初に予備洗浄を行う。予備洗浄は、主洗浄を行う前に各乳頭M…を洗浄液Lで濡らすことにより主洗浄において汚れをより落とし易くする目的で行う。この際、作業者は、洗浄ユニットU1を手で持った状態で運転スイッチ101を押してONにする。これにより、送液ポンプ122,第一電磁バルブ121a,第二電磁バルブ121b,ブラシモータ98及び吸気ファン123がONになり、洗浄液タンク53又は分岐洗浄液ライン39の洗浄液Lは、洗浄液チューブ104a及び104bを介して上噴射部5a及び下噴射部5bにそれぞれ供給される。そして、洗浄液Lは、上噴射孔83a…から洗浄部材96の上方に噴射されるとともに、下噴射孔83b…から洗浄部材96の下方に噴射される。また、ブラシモータ98が正転と逆転を交互に繰り返す。ブラシモータ98の回転により、先端面ブラシ94s,三つの境曲面ブラシ94r…,周面ブラシ92x…及び洗浄部材96が一体に回転し、乳頭Mに対する予備洗浄が行われる。さらに、吸気ファン123のONにより、廃液チューブ103内が吸気されるため、ブラシカップ部2の内部における使用済の洗浄液(廃液)Lrは、廃液チューブ103を介して本体ユニットUmの廃液回収タンク120内に回収される。廃液回収タンク120に回収された廃液Lrは、オートドレイン125から自動排出される。予備洗浄の時間Taとしては、数〔秒〕程度の僅かな時間で足りる。
【0044】
予備洗浄が終了したなら、主洗浄を行う。主洗浄でも基本的な操作は予備洗浄と同じであるが、作業者は、乳頭Mの汚れ度合等を考慮して、運転スイッチ101を押す時間(ON時間)を任意に変えることができる。まず、洗浄ユニットU1に乳頭Mを挿入する。そして、運転スイッチ101を押してONにする。運転スイッチ101のONにより、予備洗浄の場合と同様、洗浄液Lは、上噴射孔83a…から洗浄部材96の上方に噴射されるとともに、下噴射孔83b…から洗浄部材96の下方に噴射される。また、ブラシモータ98は、正転と逆転を交互に繰り返し、乳頭Mに対する主洗浄が行われる。この場合、周面ブラシ92x…は、乳頭Mの周面部Mfに対する洗浄を行う。さらに、境曲面ブラシ94r…は、乳頭Mの先端部Msにおける境曲面部位の洗浄を行うとともに、先端面ブラシ94sは、乳頭Mの先端部Msにおける先端面部位の洗浄を行う。この際、境曲面ブラシ94r…は、シート状のため、ゴミが付着しにくい利点があるとともに、先端面ブラシ94sは、円柱突起部96…を用いるため、上端のエッジ部により乳頭M上の汚れを掻き取ることができ、突起状の乳頭Mにおける起伏のある先端部Msであっても有効かつ十分な洗浄を行うことができる。したがって、牛乳の衛生的生産の確保及び乳質低下防止や乳房炎等の防止に貢献できるとともに、乳頭Mmにおける汚れの残存を解消できるため、洗浄後の確認作業や手作業による追加洗浄などが不要或いは軽減され、作業性の向上及び作業能率の向上を図ることができる。また、洗浄部材96の回転により、フィン状部96f…による乳頭Mにおける根元部位Mbの洗浄が行われ、この洗浄には洗浄部材96の上方に配した上噴射部5aから噴射される洗浄液Lが用いられる。主洗浄は正規の洗浄を行うため、時間Tdは、予備洗浄時の時間Taよりも例えば2倍程度長くする。そして、設定した最大時間Tamが経過した以降は、乳頭Mの根元部位Mbに対する実質的な洗浄が終了し、洗浄部材96は回転するフィン状部96f…により液切り及び乾燥を開始する。運転スイッチ101がOFFになることにより、ブラシモータ98の回転は、正転方向にのみ回転する。また、送液ポンプ122はそのままONを継続し、予め設定したTe時間経過後に、送液ポンプ122及びブラシモータ98がOFFになる。したがって、運転スイッチ101をOFFにした後、このTe時間内に、洗浄ユニットU1を乳頭Mから離脱すればよい。
【0045】
そして、離脱した洗浄ユニットU1は、そのままユニットホルダ部17にセットする。即ち、ユニットホルダ部17の一対の保持ロッド部17f,17f間に洗浄ユニットU1を収容し、洗浄ユニットU1の鍔部17sの両側を保持ロッド部17f,17fの上に載置してそのまま押し込めばよい。また、洗浄ユニットU1をユニットホルダ部17にセットすることにより、図6に示すように、洗浄ユニットU1のブラシカップ部2の外面がリミットスイッチ18sを押してONにする。リミットスイッチ18sのONにより、制御部112は、設定された洗浄条件に基づく自己洗浄処理を自動で開始する。この場合、少なくとも、洗浄条件としては、噴射部5における全部の噴射孔83a…,83b…から洗浄液Lを噴射させるとともに、噴射部5から噴射させる時間Tsを設定する。したがって、自己洗浄処理は、予め設定された所定の洗浄条件により、先端面ブラシ94s,三つの境曲面ブラシ94r…,周面ブラシ92x…及び洗浄部材96自身の洗浄(自己洗浄)が行われる。この際、ユニットホルダ部17には、洗浄ユニットU1の上方を覆うカバー部17cを備えるため、汚れた洗浄液Lが挿入口2iから周囲に飛び散る不具合を回避できる。そして、設定した時間Tsが経過すれば、自己洗浄処理は自動的に終了する。
【0046】
このように、使用後、作業者は洗浄ユニットU1をユニットホルダ部17にセットするのみで、ブラシ機構部3におけるブラシ自身を自動で洗浄する自己洗浄を行うことができ、作業工数の削減による全体の作業能率を向上させることができる。特に、洗浄ユニットU1をユニットホルダ部17にセットする行為は、使用後、自己洗浄を行うか否かに拘わらず、通常の作業行為となるため、自己洗浄のための作業は実質的にゼロにすることができる。しかも、一回の自己洗浄毎における洗浄時間のバラつきを解消し、自己洗浄が不十分になる不具合を回避できるとともに、自己洗浄に適した任意の洗浄条件を設定することができるため、常に一定水準以上の良好な自己洗浄処理を実現することができる。また、自己洗浄の洗浄条件として、上述した予備洗浄や主洗浄とは異なる洗浄条件を設定することにより、洗浄効果の高い最適な自己洗浄処理を行うことができる。さらに、自己洗浄処理は、洗浄ユニットU1をユニットホルダ部17にセットするのみで自動的に開始し、かつ自動的に終了するため、次の乳牛C(乳頭M)に対する洗浄(清拭)がある場合には、洗浄装置Wの移動中に行うことができる。したがって、次に洗浄(清拭)を行う乳牛Cに到着したなら、作業者は、洗浄ユニットU1を手で持ち、ユニットホルダ部17から離脱するとともに、ブラシカップ部2の挿入口2iに乳牛Cの乳頭Mを挿入すれば、一連の洗浄(清拭)処理を行うことができる。
【0047】
よって、このような本実施形態に係る乳頭洗浄システム1によれば、被着脱部6a,6bを有する搬送装置Xa,Xbと、各搬送装置Xa,Xbの被着脱部6a,6bに対して着脱可能な着脱部7a,7bを有し、この着脱部7a,7bに対して本体部U2の一部U2p又は全部、及び洗浄ユニットU1を一体に設けた洗浄装置Wと、被着脱部6a,6bと着脱部7a,7bを固定可能な固定部8a…,8b…を備えるため、実際の洗浄作業において、使用する場所が広範囲になったり使用回数が多くなった場合であっても搬送装置Xa,Xbにより容易に移動させることができ、大幅な労力軽減を図ることができる。また、一又は二以上の異なる搬送装置Xa,Xbを選択して、本体部U2の一部U2p又は全部、及び洗浄ユニットU1を一体に設けた洗浄装置Wを着脱できるようにしたため、実際の使用環境に対応した最適な搬送装置Xa…を使用することができる。したがって、使用環境に対する柔軟適用性を高めることができるとともに、洗浄装置Wの使い勝手(利便性)をより高めることができる。
【0048】
以上、好適実施形態について詳細に説明したが、本発明は、このような実施形態に限定されるものではなく、細部の構成,形状,素材,数量等において、本発明の要旨を逸脱しない範囲で、任意に変更,追加,削除することができる。例えば、被着脱部6a,6b及び着脱部7a,7bはパイプ部材Pra,Prb,Prcを用いた場合を例示したが、挿入する側はロッド部材であってもよいし、或いは例示した挿入形態以外の形態であって、同様の機能を有する任意の形態により実施可能である。また、固定部8a…,8b…は、着脱部7a,7bに取付けられた状態にし、レバー操作等により固定又は固定解除する形態であってもよい。
【産業上の利用可能性】
【0049】
本発明に係る乳頭洗浄システム1は、乳牛の乳頭を洗浄又は清拭する際に利用できるとともに、特に、搬送装置として、例示した搬送レール装置Xaと搬送台車装置Xbをはじめ、床面に付設したレール上を走行させる搬送装置など、各種搬送装置に適用できる。なお、乳頭洗浄システム1とは乳頭清拭システムを含む概念である。
【符号の説明】
【0050】
1:乳頭洗浄システム,2:ブラシカップ部,2i:挿入口,3:ブラシ機構部,4:回転駆動部,5:噴射部,6a:被着脱部,6b:被着脱部,7a:着脱部,7b:着脱部,8a…:固定部,8b…:固定部,11:搬送レール部,12:走行部,13:吊下部,14:台車部,14u:台車部の上面,15:支持部,17:ユニットホルダ部,18:ユニット検出部,19:自己洗浄機能部,M:乳頭,L:洗浄液,U1:洗浄ユニット,U2:本体部,U2p:本体部の一部,U2r:本体部の残部,Xa:搬送装置(搬送レール装置),Xb:搬送装置(搬送台車装置),W:洗浄装置,Pra:パイプ部材(又はロッド部材),Prb:パイプ部材(又はロッド部材),Prc:パイプ部材(又はロッド部材)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
乳頭を挿入口から内部に挿入可能なブラシカップ部,このブラシカップ部に挿入した乳頭を洗浄するブラシ機構部,このブラシ機構部を回転させる回転駆動部及び前記ブラシカップ部の内部に洗浄液を噴射する噴射部を有する洗浄ユニットと、少なくとも、前記洗浄ユニットに対して洗浄液を供給する洗浄液供給手段及び電力を供給する電力供給手段を有する本体部とを備えてなる乳頭洗浄システムにおいて、被着脱部を有する一又は二以上の異なる搬送装置と、各搬送装置の被着脱部に対して着脱可能な着脱部を有し、この着脱部に対して前記本体部の一部又は全部、及び前記洗浄ユニットを一体に設けた洗浄装置と、前記被着脱部と前記着脱部を装着した際に当該被着脱部と当該着脱部を固定可能な固定部を備えてなることを特徴とする乳頭洗浄システム。
【請求項2】
前記搬送装置は、搬送レール部と、この搬送レール部に装填することにより当該搬送レール部に沿って移動可能な走行部と、この走行部から吊下げた吊下部と、この吊下部の一部に設けた前記被着脱部を備える搬送レール装置であることを特徴とする請求項1記載の乳頭洗浄システム。
【請求項3】
前記搬送装置は、台車部の上面上に起立させた支持部と、この支持部の一部に設けた前記被着脱部を備える搬送台車装置であることを特徴とする請求項1記載の乳頭洗浄システム。
【請求項4】
前記搬送装置は、前記本体部の残部を備えることを特徴とする請求項1,2又は3記載の乳頭洗浄システム。
【請求項5】
前記被着脱部はパイプ部材又はロッド部材により構成し、かつ前記着脱部は前記被着脱部が挿入し又は前記被着脱部に挿入するパイプ部材又はロッド部材により構成するとともに、前記固定部は前記被着脱部と前記着脱部に貫通する貫通部材により構成することを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載の乳頭洗浄システム。
【請求項6】
前記洗浄装置は、前記洗浄ユニットを着脱可能に保持するユニットホルダ部と、このユニットホルダ部に前記洗浄ユニットが保持されたことを検出するユニット検出部と、このユニット検出部により前記洗浄ユニットが保持されたことが検出されたなら予め設定した所定の洗浄条件に従って前記洗浄液を前記噴射部から噴射させる動作を行う自己洗浄機能部を備えることを特徴とする請求項1記載の乳頭洗浄システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2010−207141(P2010−207141A)
【公開日】平成22年9月24日(2010.9.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−56573(P2009−56573)
【出願日】平成21年3月10日(2009.3.10)
【出願人】(000103921)オリオン機械株式会社 (450)
【出願人】(501203344)独立行政法人農業・食品産業技術総合研究機構 (827)
【Fターム(参考)】