説明

乾燥島唐辛子と泡盛を使用した香辛料の製造方法

【課題】従来、沖縄産の島唐辛子を生のまま泡盛に漬け込んで香辛料を製造する方法があるが、唐辛子の色が退色し、辛味も減少してしまう欠点がある。これらを改善した香辛料の製造法の提供。
【解決手段】沖縄県産島唐辛子や柑橘類を冷風にて乾燥した後、これを沖縄産の泡盛に漬け込み、熟成させ、次に別の容器に未使用の乾燥唐辛子を入れ、この容器に先に熟成した泡盛を入れ更に熟成させる香辛料の製造方法。このように乾燥唐辛子を2回に分けて通算して5〜6ヶ月間泡盛に漬け込むことにより、出来た香辛料は、泡盛のまろやかさと唐辛子の辛味が合致し、更に柑橘類の香りも付加された新たな香辛料となる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は冷風等で乾燥した沖縄産島唐辛子と沖縄産の泡盛を一緒に容器に漬け込み熟成させ、熟成した泡盛を未使用の容器に新しい乾燥島唐辛子を入れて漬け込む事によって、辛味の濃い香辛料の製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
沖縄県では、島唐辛子と泡盛を使用して自家製の香辛料を製造している。この製造方法では、生の唐辛子を泡盛と一緒に容器に入れて3〜4週間漬けこんでおく。この香辛料を沖縄では「コーレーグース」と呼び、山葵(わさび)や辛し等の代用に使用している。
【0003】
唐辛子の原産地は中南米と言われており,ナス科の一年草又は多年草の植物で,世界中では2,000〜3,000種類と数が多い。
沖縄県で栽培されている島唐辛子は、熱帯地方で多く栽培されている多年草の一種で、辛味が非常に強い小粒の赤唐辛子である。
【0004】
唐辛子の辛味成分はカプサイシンで、この辛味成分は、果実の中の綿の部分と赤色をした皮の部分にある。
辛味を計る単位は、「スコヴイル単位」と呼ばれているが、世界で一番辛い唐辛子は30万度も有り、平均して4,000度前後で、沖縄産の島唐辛子は小粒ではあるが平均値より高い部類に属すると云われている。
【0005】
沖縄県で香辛料として使用されている島唐辛子は、畑や庭先に植えている島唐辛子10〜15粒を収穫して生のまま容器に入れ、この容器に市販の泡盛を注入して保存する製造方法である。保存しておいた唐辛子入りの泡盛は3〜4週間で香辛料になり、これを自家用として使用し一部は市販されている。
【0006】
生の島唐辛子と泡盛で造られる香辛料の「コーレーグース」は、赤く熟した生の島唐辛子を使用するが、生の島唐辛子を泡盛入りの容器に漬けておき1〜2ヶ月経過すると、容器の中のアルコール分で唐辛子の赤みがかった色が次第に薄れてきて、最後には濁白色に退色する。
【0007】
生の島唐辛子を泡盛に漬け込むと、生の唐辛子は容器の底に沈み濁った白色に変色する。即ち島唐辛子の赤色が3〜4週間後には薄橙色から濁白色に変色し、「コーレーグース」の特徴である唐辛子の赤色が次第に退色する。
【0008】
濁白色に退色した唐辛子を見て、消費者は腐敗した唐辛子と誤解し、香辛料としての商品価値が無くなる。又濁白色に退色した唐辛子は、唐辛子本来の辛味成分が次第に失われてくる。
【0009】
【特許文献1】特開2001‐258499号公報唐辛子を使用して香辛料及びその製造方法
【特許文献2】特開平9‐106308号公報香辛料の製造方法
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
赤く熟した島唐辛子を冷風で乾燥すると、唐辛子の辛味成分の「カプサイシン」
が生唐辛子に比較して3〜5倍に増すと共に、真っ赤に熟したそのままの色で乾燥される。
この島唐辛子を40〜60度と熱温で乾燥すると、島唐辛子の表皮が黄色身を帯びた橙色に乾燥される事が多い。
【0011】
島唐辛子を20〜30度前後の冷風で20〜24時間と時間をかけ、唐辛子の含有水分を80〜90%の水分率まで取り去って乾燥し、更に天日にて乾燥して唐辛子の含有水分を約95%の水分率まで取り去る。
【0012】
含有水分を約95%まで取り去った島唐辛子を、泡盛と一緒に容器に漬け込むと、乾燥唐辛子は泡盛のアルコール分で、容器の上部に浮き上がったまま沈殿することなく、徐々に辛味成分が分泌される。
又鮮やかな赤色をした唐辛子の色は1年以上経過しても変色する事がない。
【0013】
生の唐辛子を20〜30度前後の冷風で乾燥した後、更に天日で乾燥し含有水分を5%以下にすると、生唐辛子は約5分の1の重量に乾燥される。
【0014】
乾燥した島唐辛子を、アルコールの度数が20〜30度程度の泡盛に漬け込んでおくと、島唐辛子の真っ赤な色あいと辛味成分が次第にアルコールの中に溶解して、黄金色から更に琥珀色に変色し無添加の香辛料になる。
【課題を解決するための手段】
【0015】
唐辛子入りの香辛料を製造するには、15〜20リットル入りの容器に乾燥した島唐辛子150〜200グラムと、泡盛14〜18リットルを入れて密封し、2〜3ヶ月間そのままの状態で保存する。
この容器に保存している間、島唐辛子の辛味成分が泡盛のアルコール分に溶解すると共に、泡盛の液の色あいは黄金色に変色する。
【0016】
更に100〜150CC入りの小さな容器に未使用の乾燥唐辛子5〜8グラムを入れ、この容器にアルコール分の辛味成分が濃くなった
【0017】
に記載の泡盛を注入し、これを密封し2〜3ヶ月間保存する。
乾燥唐辛子を2回に分けて漬けた泡盛を、通算して5〜6ヶ月間保存しておくと、辛味成分が1,5〜1,8倍に増し、琥珀色をした無添加の香辛料になる。
【0018】
5〜6ヶ月保存しておいた唐辛子入りの泡盛は、辛味成分が増し濃度の濃い琥珀色になる。又容器の中の唐辛子は乾燥された時の赤色のままで、1年以上経過しても退色せず、高品質の香辛料に熟成される。
【0019】
請求項1〜3の記述で製造する唐辛子入りの香辛料に、沖縄産の柑橘類である和名「シークヮーサー」やその他の果実の表皮や種、芳香性のある植物等を20〜30度前後の冷風で乾燥した後、更に天日で乾燥して含有水分を95%前後まで取り去った柑橘類を使用して、新しい香辛料を製造する。
この柑橘類のシークワーサーには、成分であるビタミンAの中のカロテンが多く含まれており、又芳香性のある植物等を香料として加えると、更に風味が増すと共に新しい香辛料になる。
【0020】
本発明は沖縄産の乾燥した島唐辛子を、アルコールの度数が20〜30度程度の泡盛と一緒に容器に漬け込み保存する。
更に新たな100〜150CC入りの容器に未使用の乾燥唐辛子を入れ、この容器に(0015)に記載の泡盛を注入して、2回漬け込む事を特徴とする香辛料の製造方法である。
【発明の効果】
【0021】
従来の製法では、生の唐辛子を3〜4週間泡盛と一緒に漬けこんでおくだけの簡単な製法である。この製法で製造された香辛料は、泡盛のアルコール分に唐辛子の辛味成分が溶解せず、熟成していない香辛料を使用している。又この香辛料が市販されている。
泡盛に付け込んだ生の唐辛子は、容器の底に沈み次第に濁白色に退色して、腐敗した唐辛子に誤解される欠点がある。
本発明では、赤く熟した乾燥唐辛子を泡盛に漬け込んでおき、更に未使用の乾燥唐辛子を別の容器に入れ、この容器に1回漬け込んでおいた泡盛を再度注入して、辛味成分を十分に引き出す香辛料の製造方法である。
このように乾燥唐辛子を泡盛に二度漬けすることによって、辛味成分がアルコールに溶け込み1,5〜1,8倍と増すと共に濃度が濃くなり、琥珀色の完熟した香辛料を製造する事が出来る。
【0022】
乾燥唐辛子を泡盛と一緒に漬けた容器に、柑橘類や果実、例えば「シークヮーサー」や「タンカン」、「柚子」、「カボス」、「グワバ」等の乾燥した表皮や、芳香性のある植物類、例えば「ハーブ」や「紫蘇」、「ウコン」、「月桃」等を乾燥させ、これ等を芳香剤として入れることによって、更に風味が増した新しい香辛料を製造する事が出来る。
【0023】
本発明では乾燥唐辛子を泡盛に二回に分けて漬けこむが、乾燥唐辛子と泡盛のアルコール分が十分に熟成するまで通算して5〜6ヶ月を要し、完塾すると琥珀色になり無添加の香辛料になる。
【0024】
この香辛料の製造方法は、乾燥した島唐辛子と県産泡盛を使用して製造する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0025】
図1は、本発明の実施例を製造工程順に説明する為のフローチャートである。
乾燥島唐辛子や柑橘類の表皮、芳香性のある植物等を20〜30度の冷風で乾燥して乾燥唐辛子と一緒に容器に入れ、この容器に泡盛を入れて2〜3ヶ月保存しておく。
次に新たな容器に未使用の乾燥唐辛子を入れて、2〜3ケ月保存しておいた泡盛を注入し、唐辛子に泡盛を2回に分けて漬け、辛味成分を濃くする製法である。
唐辛子と一緒に注入された柑橘類や芳香性のある植物等で、香の良い新たな香辛料を製造する事が出来る。
【実施例1】
【0026】
以下本発明の活用例を図1に基づいて説明する。
【0027】
図1のaは、原料となる島唐辛子等の準備工程を示す。赤く熟した沖縄産の島唐辛子と柑橘類の表皮や芳香性のある植物を収穫する。
【0028】
図1のbは、収穫した島唐辛子と、柑橘類の表皮や芳香性のある植物を20度前後の冷風で乾燥し、唐辛子等の含有水分を70〜80%の水分率まで除去する。
【0029】
図1のcは、唐辛子や柑橘類の表皮、芳香性のある植物等を天日で乾燥して、含有水分を約95%の水分率まで取り去る。
【0030】
図1のdは、乾燥唐辛子入りの容器に、乾燥した柑橘類の表皮や芳香性のある植物等を15〜20グラム入れる。
【0031】
図1のeは、島唐辛子150〜200グラムを15〜20リットル入りの容器にアルコール分が20〜30度程度の沖縄産泡盛、14〜18リットルを入れて密封し、2〜3ヶ月間熟成させる。
【0032】
図1のfは、100〜180Cc入りの新しい容器に、未使用の乾燥島唐辛子を容器の容量に合わせて5〜8グラムを入れ、これに熟成した泡盛を入れ密封する。
【0033】
図1のgは、更に2〜3ヶ月間保存し熟成させる。
【図面の簡単な説明】
【0034】
【図1】本発明の実施例を製造工程順に説明する為の図である。
【符号の説明】
【0035】
a 沖縄県産の島唐辛子、柑橘類の表皮や芳香性のある植物を収穫する。
b 島唐辛子と柑橘類の表皮や芳香性のある植物等を20〜30度の温度で冷風乾燥し、含有水分を70〜80%取り去る。
c 冷風で乾燥した後、更に天日にて乾燥し含有水分を95%前後に取り去
る。
d 乾燥唐辛子と柑橘類や芳香性のある植物等を容器に入れる。
e 泡盛を容器に入れ密封し、2〜3ヶ月間熟成させる。
f 未使用の乾燥唐辛子を新しい容器に入れ、この容器に熟成した泡盛を入れて密封する。
g 更に2〜3ヶ月間保存して熟成させる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
沖縄産の島唐辛子を乾燥後、沖縄産の泡盛と一緒に容器に漬けこむ。この唐辛子と泡盛を使用した香辛料の製造方法。
【請求項2】
請求項1に記述の製造方法で、沖縄産島唐辛子と沖縄産泡盛を使用して香辛料を製造する。この島唐辛子を20~30度の冷風にて80〜90%乾燥した後、更に天日で乾燥し、島唐辛子の含有水分を約95%の水分率まで取り去る。この島唐辛子と泡盛を容器に漬け込み保存する香辛料の製造方法。
【請求項3】
請求項2に記述の製造方法で、未使用の乾燥島唐辛子を新たな容器に入れ、この容器に請求項1に記述で製造した泡盛を再度注入し容器を密封する。この乾燥島唐辛子を同じ泡盛に2回漬け込む香辛料の製造方法。
【請求項4】
請求項1〜3に記述の製造方法で製造した香辛料に、柑橘類の表皮や芳香性のある植物等を20〜30度の冷風で乾燥後、更に天日で乾燥して含有水分を約95%の水分率まで取り去る。容器に唐辛子や柑橘類の表皮等と一緒に泡盛を入れ、風味を整えた香料入り香辛料の製造方法。











【図1】
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