説明

乾燥装置及び記録装置

【課題】記録媒体を効率よく乾燥させることが可能な乾燥装置及び記録装置を提供する。
【解決手段】乾燥装置17は、シートCSを上流側から下流側へ搬送するための搬送経路の一部を構成するとともにシートCSを支持可能な支持面41aを有する搬送経路形成部材41と、支持面41aと対向するように配置され、吸気口52から吸入した空気を加熱して吹出口53から支持面41a上のシートCSに向けて吹き出すことによりシートCSに乾燥処理を施すヒーターユニット17Aとを備える。さらに、乾燥装置17は、搬送経路形成部材41に形成され、支持面41a上のシートCSを搬送経路の下流側へ搬送する搬送ローラー対R3が配置される開口部41bと、ヒーターユニット17Aに対して開口部41bを挟んだ反対側に配置され、開口部41bを含む空間K1を区画形成する空間形成部材50とを備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えばインクジェット式プリンターなどの記録装置及び該記録装置に備えられて画像が記録された用紙などを乾燥させるための乾燥装置に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、記録媒体に画像を記録する記録装置としてインクジェット式プリンターが広く知られている。インクジェット式プリンターでは、記録ヘッド(記録手段)からインクを用紙(記録媒体)に向けて噴射することで印刷がなされる。こうしたプリンターは、通常、印刷後の用紙に温風を吹き付けて加熱乾燥させるための乾燥装置を備えている。そして、このような乾燥装置を備えたプリンターとしては、従来、特許文献1に示すものが知られている。
【0003】
この特許文献1に記載されたプリンターの乾燥装置は、外部から空気を筐体内に取り入れるための吸引ファンと、筐体内に取り入れられた空気を加熱するための加熱ヒーターと、空気が加熱されたことによる乾燥風(温風)を画像記録後の記録媒体に向かって吹き出す吹出口と、吹出口から吹き出された乾燥風を吸引ファンに再び導く流通空間とを備えている。そして、乾燥風を記録媒体に吹き付けつつ循環させることにより、乾燥風を早期に昇温させて、記録媒体に付着したインクを効率よく乾燥させるようにしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2009−45861号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、特許文献1のプリンターでは、乾燥装置の下側に、吹出口から記録媒体の表面に吹き付けられた乾燥風(温風)が、吹出口に対して搬送方向の上流側と下流側に設けられた一対の排出ローラー間に滞留することにより、比較的高温の乾燥領域が形成される。そして、印刷後の記録媒体が乾燥領域を通過する際に、この乾燥領域に滞留する加熱空気の熱によってインクの乾燥が促進される。
【0006】
しかしながら、乾燥領域にある記録媒体を支持する下側区画壁には、各排出ローラーを配置するための開口部を形成する必要があるため、この開口部から乾燥領域の温風が逃げてしまう。この結果、乾燥領域の温度が低下し、記録媒体を効率よく乾燥させることができなくなるという問題がある。
【0007】
本発明は、このような従来技術に存在する問題点に着目してなされたものである。その目的とするところは、記録媒体を効率よく乾燥させることが可能な乾燥装置及び記録装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するために、本発明の乾燥装置は、記録媒体を上流側から下流側へ搬送するための搬送経路の一部を構成するとともに前記記録媒体を支持可能な支持面を有する支持部材と、前記支持面と対向するように配置され、吸気口から吸入した空気を加熱して吹出口から前記支持面上の前記記録媒体に向けて吹き出すことにより該記録媒体に乾燥処理を施す乾燥手段と、前記支持部材に形成され、前記支持面上の前記記録媒体を前記搬送経路の下流側へ搬送する搬送手段が配置される開口部と、前記乾燥手段に対して前記開口部を挟んだ反対側に配置され、該開口部を含む空間を区画形成する空間形成部材とを備えた。
【0009】
この発明によれば、吹出口から支持面上の記録媒体に向けて吹き出された加熱空気が開口部から拡散して逃げることが空間形成部材によって抑制される。このため、支持面上の雰囲気温度の低下が抑制されるため、支持面上の記録媒体を効率よく乾燥させることが可能となる。
【0010】
本発明の乾燥装置において、前記吸気口は、前記搬送手段よりも前記搬送経路の下流側に位置しており、前記搬送手段よりも前記搬送経路の下流側には、前記空間形成部材内の前記空間と、前記支持部材よりも前記吸気口側の空間とを連通する連通部が形成されている。
【0011】
この発明によれば、吹出口から支持面上の記録媒体に向けて吹き出された加熱空気は、開口部から空間形成部材内の空間へ進入した後、連通部から吸気口へ向かって流れる。このため、乾燥手段により周囲の空気よりも温度の高い空気が吸気口から取り込まれて再び吹出口から支持面上の記録媒体に向けて吹き出される。したがって、乾燥手段による空気の加熱に必要なエネルギーを低減することが可能となる。
【0012】
本発明の乾燥装置において、前記空間形成部材は、その内部の前記空間において前記搬送経路に沿って下流側に流れる空気を、前記記録媒体の搬送方向と直交する幅方向において最小幅の前記記録媒体と対応する側に寄せることが可能な気流制御部を備えている。
【0013】
この発明によれば、乾燥させる記録媒体の幅が小さくなっても、空間形成部材内の空間を流れる空気の熱により、記録媒体を効率よく温めることが可能となる。
本発明の乾燥装置において、前記気流制御部は、前記空間形成部材内の前記空間を流れる空気を、最小幅の前記記録媒体と対応する側に寄せる気流制御位置と、最小幅の前記記録媒体と対応する側に寄せない気流非制御位置との間で変位可能に構成されている。
【0014】
この発明によれば、乾燥させる記録媒体の幅が狭い場合に気流制御部を気流制御位置に変位させる一方、乾燥させる記録媒体の幅が広い場合に気流制御部を気流非制御位置に変位させることで、乾燥させる記録媒体の幅が変わっても、空間形成部材内の空間を流れる空気の熱により、記録媒体を効率よく温めることが可能となる。
【0015】
本発明の記録装置は、上記構成の乾燥装置と、前記搬送経路における前記乾燥手段よりも上流側で前記記録媒体に記録処理を施す記録手段とを備えた。
この発明によれば、上記乾燥装置と同様の作用効果を得ることが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】実施形態のインクジェット式プリンターの側断面模式図。
【図2】ヒーターユニット及びその周辺構成を示す側断面模式図。
【図3】フラップが気流制御位置にあるときの空間形成部材を示す平面模式図。
【図4】フラップが気流非制御位置にあるときの空間形成部材を示す平面模式図。
【図5】(a)は待機位置にあるときのカール矯正機構を示す側面図、(b)は矯正位置にあるときのカール矯正機構を示す側面図。
【図6】待機位置にあるときのカール矯正機構を示す平面図。
【図7】矯正位置にあるときのカール矯正機構を示す平面図。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明の記録装置をインクジェット式プリンターに具体化した一実施形態について、図面に従って説明する。また、以下の説明において、「前後方向」、「左右方向」、「上下方向」をいう場合は各図中に矢印で示す前後方向、左右方向、上下方向をそれぞれ示すものとする。なお、図面中の上方向、右方向及び前方向を示す矢印において、「○」の中に「・」が記載されたもの(矢の先端を前から見た図)は紙面の裏から表に向かう矢印を意味するものとする。
【0018】
図1に示すように、記録装置としてのインクジェット式プリンター11は、略直方体状をなす本体ケース12を備えている。本体ケース12の前壁には、本体ケース12の内外を連通する排紙口12aと、排紙口12aから排出された印刷後のシートCSを載置可能な略水平板状の排紙部12bとが設けられている。本体ケース12内の後端下部には、長尺状のシートST(例えば、連続紙)がロール状に巻回されてなるロール体RSが取着される給紙部13が設けられている。
【0019】
また、本体ケース12内には、給紙部13から排紙部12bに向かって延びる搬送経路に沿ってシートSTを搬送する搬送機構14が備えられている。また、本体ケース12内には、搬送経路の途中でシートSTに対してインク滴を噴射して記録処理を施す記録部15と、記録処理後のシートSTを所定長さのカットシートCS(単票紙)に切断するカッター16とが設けられている。
【0020】
シートSTの搬送経路におけるカッター16の下流側には、カットシートCSの記録面(表面)に乾燥風(温風)を吹き付けてインクを乾燥させる乾燥装置17が設けられている。さらに、シートSTの搬送経路における乾燥装置17の下流側には、カットシートCSのカール(巻きぐせ)を矯正するカール矯正機構18が設けられている。このカール矯正機構18は、カール矯正機能の他に搬送機能も備えるとともに、搬送機構14の一部を構成している。なお、本実施形態では、シートSTとカットシートCSとにより記録媒体が構成されている。
【0021】
給紙部13は、ロール体RSを回転可能に支持する回転軸19と、回転軸19を回転させる給送モーター(図示略)とを備えている。そして、給送モーターの駆動に伴って回転軸19が図1における反時計方向に回転することにより、ロール体RSからシートSTがシートSTの搬送経路の下流側に向かって繰り出される。
【0022】
搬送機構14は、シートST,CSを搬送経路の上流側から下流側に向かって搬送する複数の回転駆動可能な搬送ローラー21〜27と、各搬送ローラー21〜26との間でシートST,CSを挟持可能な従動ローラー31〜36とをそれぞれ備えている。そして、各搬送ローラー21〜26の回転駆動に伴って各従動ローラー31〜36が従動回転することにより、シートST,CSが搬送経路の上流側から下流側に向かって搬送される。
【0023】
搬送機構14の一部を構成するカール矯正機構18は、大径の搬送ローラー27と、搬送ローラー27に対して搬送経路の下流側に配置された小径の搬送ローラー26と従動ローラー36(以下、「デカールローラー36」ともいう。)とからなるデカールローラー対DRとを備えている。
【0024】
カール矯正機構18は、印刷中において、デカールローラー対DRを構成するデカールローラー36を、カールの向きと逆向きに湾曲させる矯正力をシートCSに付与する矯正位置に移動させることにより、シートCSにカール矯正処理を施す。
【0025】
また、搬送機構14は、搬送ローラー21〜27を回転駆動させるための駆動源となる搬送モーター(図示略)と、搬送ローラー25と対応する位置に配置された支持部材としての略平板状の搬送経路形成部材41とを備えている。搬送経路形成部材41の上面は、搬送経路の一部を構成するとともに、シートST,CSを支持可能な支持面41aとされている。
【0026】
なお、以下の説明において、互いに対をなす搬送ローラー23と従動ローラー33を搬送ローラー対R1、搬送ローラー24と従動ローラー34を搬送ローラー対R2、搬送ローラー25と従動ローラー35を搬送ローラー対R3という。そして、本実施形態では、搬送ローラー対R3によって、支持面41a上のシートST,CSを搬送経路の下流側へ搬送する搬送手段が構成されている。
【0027】
また、本実施形態では、搬送ローラー対R1,R2,R3を構成するローラーのうち少なくとも従動ローラー33,34,35には、シートST,CSの表面に付着した未乾燥のインクが転写されないように撥液性(例えば撥水性)を有するローラー(例えばスポンジ製ローラー)が採用されている。
【0028】
記録部15は、本体ケース12内における搬送経路の上側に、搬送方向(前方向)と直交する幅方向(左右方向)に沿って水平に延びる状態で架設されたガイド軸45と、ガイド軸45の長手方向(幅方向)に沿って移動可能な状態でガイド軸45に支持されたキャリッジ46とを備えている。
【0029】
キャリッジ46には、搬送経路に対向する状態で記録手段としての記録ヘッド47が取り付けられている。記録ヘッド47には、液体の一例であるインクを噴射する複数のノズル47aが設けられている。したがって、キャリッジ46がガイド軸45に案内されつつ幅方向(走査方向)に沿って往復移動することにより、キャリッジ46とともに記録ヘッド47が走査方向に往復移動する。
【0030】
また、記録部15は、記録ヘッド47と搬送経路を挟んで対向する位置に配置された支持台48を備えている。支持台48は、その上面に開口する複数の吸引孔(図示略)を通じてシートSTを吸着する吸引機構49を内蔵している。そして、支持台48に支持されたシートSTの表面(図1では上面)に、記録ヘッド47のノズル47aからインクが噴射されることで、シートSTにインクを付着させる記録処理が施される。
【0031】
詳しくは、インクジェット式プリンター11は、ホスト装置(図示略)から印刷ジョブデータを受信する。そして、インクジェット式プリンター11が備える制御装置100は、印刷ジョブデータを入力すると、その中に含まれる印刷データを、記録ヘッド47の1走査分に相当する記録データごとに分割する。キャリッジ46が1走査する途中において記録ヘッド47は記録データに基づき選択されたノズル47aからインクを噴射する記録処理を行う。そして、1走査毎の記録処理の合間に、シートSTが次の記録位置まで搬送される。
【0032】
すなわち、記録部15では、幅方向が長手方向となる帯状の画像の形成と、シートSTの間欠的な搬送とが交互に繰り返されることにより、シートST上に印刷ジョブに基づく画像が形成される。なお、記録部15からカール矯正機構18に至る搬送経路において、支持台48の上面と搬送経路形成部材41の上面(支持面41a)とを含む仮想平面が、印刷中のシートST,CSを搬送する搬送面となる。
【0033】
また、カッター16によるシートSTの切断は、搬送機構14によるシートSTの搬送を停止させた状態で行われる。カッター16は、搬送ローラー対R1,R2に両側を挟持されたシート部分の略中央を幅方向に作動して切断し、シートSTからカットシートCSを切り離す。なお、本実施形態では、印刷過程でシートSTの搬送を停止したタイミングで、シートSTの切断を行う。
【0034】
さらに、カッター16よりも搬送経路の下流側となる位置には、記録処理によるインクが付着したカットシートCS(以下、単に「シートCS」ともいう。)に乾燥処理を施す乾燥装置17が設けられている。
【0035】
次に、乾燥装置17の構成について詳述する。
図2に示すように、乾燥装置17は、搬送経路形成部材41と、乾燥手段としてのヒーターユニット17Aと、搬送ローラー対R3を配置するべく搬送経路形成部材41に形成された開口部41bと、ヒーターユニット17Aに対して開口部41bを挟んだ反対側に配置され、開口部41bを含む空間K1を区画形成する空間形成部材50とを備えている。
【0036】
ヒーターユニット17Aは、搬送方向において搬送ローラー対R2,R3の間に挟まれた領域の上方位置に配置されている。ヒーターユニット17Aは、搬送経路形成部材41の支持面41aに支持されたシートCSの表面(記録面)に温風(乾燥風)を吹き付けることで、シートCSに対してインクを乾燥する乾燥処理を施す。
【0037】
この場合、ヒーターユニット17Aは、幅方向(左右方向)にシートCSの最大幅に対応する長さを有し、シートCSの幅方向の全域に温風を吹き付けることが可能となっている。そして、ヒーターユニット17Aは、制御装置100(図1参照)によって温度制御及び送風制御が行われる。
【0038】
図2に示すように、ヒーターユニット17Aは、略直方体形状をなすカバー51を有している。カバー51は、上面部51a、前側面部51b、下面部51c、後側面部51d、及び幅方向に対向する左右の側面部(図示せず)を有している。カバー51における搬送経路下流側の前側面部51bには、外部の空気を吸入するための複数(図2では5つ図示)の吸気口52が鉛直方向に所定間隔をおいて規則的に形成されている。
【0039】
カバー51の下面部51cにおける搬送経路上流側寄り(図2では右寄り)の位置には、シートCSの表面に向かって温風を吹き出す吹出口53が形成されている。吹出口53は、カバー51の長手方向(幅方向)に沿ってシートCSの幅方向全域にわたる長さで延びる略矩形状に開口し、搬送経路の下流側へ向かう斜め下方へ温風を吹き出す。
【0040】
また、カバー51の内部において吸気口52と対向する位置には、複数(図2では1つのみ図示)のファンユニット54が配設されている。ファンユニット54は、前後が一部開口する四角箱状のファンケース54aと、ファンケース54a内に配設されたファンモーター55と、ファンモーター55の出力軸に固定されたファン56とを備えている。さらに、カバー51の内部には、ファンユニット54が吸気口52からカバー51内へ取り込んだ空気を吹出口53まで導くための空気流路部57が設けられている。
【0041】
カバー51の内部では、略J字状に形成された内壁面58a,58bの前端部(図2では左端部)がそれぞれファンケース54aの上面部及び下面部に連結される一方、その後下側の端部(図2では右下端部)が下面部51cに対して吹出口53を挟む前後両側の箇所に連結されている。そして、空気流路部57は、各内壁面58a,58bとカバー51の左右側面部(図示略)とにより区画形成されている。
【0042】
空気流路部57の内部には、空気が流れる方向においてファン56と吹出口53との間の位置にヒーター59が設けられている。また、空気流路部57における吹出口53側の先端部分は、吹出口53側ほど搬送経路の下流側へ向かうように傾斜している。したがって、ヒーターユニット17Aは、ヒーター59を発熱させた状態でファン56を回転することで、吸気口52から取り込まれてヒーター59によって加熱された空気(温風)を、吹出口53から搬送経路の下流側へ向かう斜め下方へ吹き出す。
【0043】
空気流路部57内においてヒーター59よりも空気が流れる方向の下流側の位置には、空気の温度を検出する温度センサー61が設けられている。ヒーター59は、制御装置100(図1参照)によって、温度センサー61の検出温度が設定温度になるように加熱制御される。
【0044】
また、図2に示すように、ヒーターユニット17Aのカバー51の下面部51cは、搬送経路形成部材41の支持面41a(搬送面)と、所定の間隔をおいて上下に対向する略水平面となっている。そして、吹出口53からシートCSの表面(記録面)に吹き付けられた温風(乾燥風)が、シートCSの表面、カバー51の下面部51c及び従動ローラー34,35により囲まれた領域に滞留することにより乾燥領域Dが形成される。
【0045】
すなわち、シートCS(又は搬送経路形成部材41)によって乾燥領域Dの底面が形成され、カバー51の下面部51cによって乾燥領域Dの天井面が形成される。さらに従動ローラー34,35によって、乾燥領域Dの搬送経路における上流端面と下流端面とがそれぞれ形成される。
【0046】
また、ヒーターユニット17Aのカバー51の内部には、空気流路部57と下面部51cとの間に蓄熱空間部60が区画形成されている。蓄熱空間部60内の空気が一旦温まると、蓄熱空間部60に隣接する空気流路部57内の空気、及び乾燥領域Dに滞留した空気は、比較的放熱が抑えられる。
【0047】
図2に示すように、搬送ローラー対R3よりも搬送経路の下流側へ少し離れた位置には、シートCSの搬送方向における前端(先端)と後端を検知するセンサー62が設けられている。センサー62は、例えば、搬送経路形成部材41の支持面41aよりも下方に配置され、シートCSの下側からその前端及び後端を検知する。本実施形態のセンサー62は、制御装置100(図1参照)と電気的に接続された反射型の光学式センサーであり、図示しない光源部(発光素子)と受光部(受光素子)とを有している。
【0048】
センサー62は、光源部が支持面41aと直交する上方に向けて出射した光(検出光)の反射光を受光部が受光することにより、反射光の強さに応じた電気信号を制御装置100(図1参照)に出力する。
【0049】
例えば、センサー62は、シートCSが反射対象となったときに所定の閾値よりも大きいON値を出力する一方、シートCSが反射対象となっていないときに前記閾値以下となるOFF値を出力する。したがって、センサー62の出力値がOFF値からON値に変化することでシートCSの前端が検知され、センサー62の出力値がON値からOFF値に変化することでシートCSの後端が検知される。
【0050】
また、センサー62よりも搬送経路の下流側の位置には、カール矯正機構18が設けられている。カール矯正機構18は、相対的に大径の搬送ローラー27と、搬送ローラー27よりも搬送経路の少し下流側に位置するデカールローラー対DRとを有している。カール矯正機構18は、シートCSの前端部(先端部)をデカールローラー対DRの隙間に案内するデカール板72を備えている。
【0051】
本実施形態のデカール板72は、上端部が下端部よりも搬送経路の上流側に位置するように傾斜した姿勢で配置されている。そして、デカール板72は幅方向にシートCSの幅よりも少し長い幅を有している。また、カール矯正機構18は、デカールローラー36が図2に示す矯正位置に移動することで、シートCSをデカールローラー対DRで挟持しつつ、その挟持位置と搬送ローラー27との間のシート部分に、カールと反対向きに所定の曲率で湾曲させた湾曲部を形成する。
【0052】
制御装置100(図1参照)は、センサー62がシートCSの前端を検知した検知信号に基づき、その検知された前端がデカールローラー対DRの隙間に挿入したタイミングで、カール矯正機構18を矯正位置に作動させる。一方、制御装置100(図1参照)は、センサー62がシートCSの後端を検知した検知信号に基づき、その検知された後端がデカールローラー対DRを通過し終わった直後のタイミングで、カール矯正機構18を待機位置に復帰させる。
【0053】
図2及び図3に示すように、空間形成部材50は、上端及び前端が開口した有底矩形箱状をなしている。空間形成部材50は、後端部における上端が搬送経路形成部材41の下面に当接するとともに、前端が本体ケース12の前壁の内面に当接するように配置されている。空間形成部材50によって区画形成された空間K1には、搬送ローラー25〜27及びセンサー62が位置している。
【0054】
空間形成部材50の内底面上には、左右に対をなす気流制御部としてのフラップ63が前後方向に所定間隔を置いて並ぶように3対設けられている。すなわち、空間形成部材50の内底面上において、左寄りの位置及び右寄りの位置には、3つのフラップ63が前後方向に並ぶようにそれぞれ配置されている。
【0055】
各フラップ63は、空間形成部材50の内底面上に回転可能に立設された回転軸63aと、該回転軸63aに中央部が固着された矩形板状の羽根63bとを備えている。そして、各フラップ63は、それぞれ回転軸63aについて対称な形状になっている。
【0056】
各フラップ63の回転軸63aはモーター(図示略)によって回転駆動可能に構成されるとともに、該モーター(図示略)は制御装置100(図1参照)によって駆動が制御される。そして、各フラップ63は、回転軸63aの正逆両方向の揺動に伴って、シートCSの搬送方向(後から前に向かう方向)に沿って空間K1を流れる空気を、搬送方向と直交するシートCSの幅方向(左右方向)の中央部に寄せる気流制御位置(図3で示す位置)と、該中央部に寄せない気流非制御位置(図4で示す位置)との間でそれぞれ変位する。
【0057】
すなわち、各フラップ63は、図3に示す気流制御位置にある場合、シートCSの搬送方向に対して羽根63bの前端がシートCSの幅方向の中央部に近づくとともに羽根63bの後端が該中央部から離れるようにそれぞれ傾斜する一方、図4に示す気流非制御位置にある場合、シートCSの搬送方向に対してそれぞれ平行になる。
【0058】
そして、本実施形態では、シートCSが最小幅のものである場合、図3に示すように、幅方向(左右方向)の中央部でシートCSの位置を合わせるため、幅方向の中央部が最小幅のシートCSと対応する側になっている。したがって、シートCSの搬送方向に沿って空間K1を流れる空気は、各フラップ63が気流制御位置にある場合、該各フラップ63の作用により主にシートCSの幅方向の中央部に沿って流れる一方、各フラップ63が気流非制御位置にある場合、該各フラップ63による影響をほとんど受けない。
【0059】
次に、カール矯正機構18の詳細な構成について図5〜図7に従って説明する。なお、図5(a)及び図6はカール矯正機構18が待機位置に配置された状態を示し、図5(b)及び図7はカール矯正機構18が矯正位置に配置された状態を示す。
【0060】
図5〜図7に示すように、カール矯正機構18は、左右方向(幅方向)に延びる軸部27aに支持された大径の搬送ローラー27と、左右方向に延びる軸部26a,36aにそれぞれ支持された小径の搬送ローラー26とデカールローラー36とからなるデカールローラー対DRとを備えている。
【0061】
デカールローラー36が待機位置にあるときには、デカールローラー36と搬送ローラー26との離間距離がシートCSの厚さよりも長くなっているため、シートCSは、デカールローラー対DRに挟持されることなく、搬送ローラー26によって図5(a)に示す搬送経路の下流側(同図では左側)へ搬送される。
【0062】
また、カール矯正機構18は、デカールローラー対DRの隙間にシートCSを案内するための下側のガイド板71と上側のデカール板72とを備えている。下側のガイド板71は、支持部74から搬送経路の下流側に向けて複数の搬送ローラー27間の各隙間に配置されるように複数延設された櫛歯状に形成されている。
【0063】
この櫛歯状のガイド板71は、案内位置(図5(a)で示す位置)ではその上面が搬送経路形成部材41の支持面41aと略面一となってシートCSの搬送面を形成し、退避位置(図5(b)で示す位置)ではカール矯正処理の妨げにならないように下方へ退避する構成となっている。そして、ガイド板71は搬送ローラー27によって搬送されるシートCSの裏面側をガイドする一方、デカール板72はシートCSの表面側をガイドしてシートCSの前端部(先端部)をデカールローラー対DRの隙間へ案内する。
【0064】
また、搬送経路形成部材41には、搬送方向において開口部41bと対応する位置であって、幅方向においてほぼ中央となる位置に、センサー62の光を通過させるための通過孔73が形成されている。
【0065】
また、カール矯正機構18は、デカールローラー36とガイド板71を待機位置と矯正位置とに作動させる動力源となるカムモーター(図示略)と、該カムモーターの動力をデカールローラー36とガイド板71に伝達するカム機構80とを備えている。
【0066】
図5〜図7に示すように、カム機構80は、カムモーター(図示略)の動力により回転するカム軸82と、カム軸82の回転に伴って回転するカム部材83,84と、カム部材83,84の回転にそれぞれ従動するレバー85,86とを備えている。そして、ガイド板71は、レバー85の側面に固定された支持部74の先端部(上端部)に支持されている。
【0067】
レバー85は、シートCSの搬送経路においてカム軸82よりも上流側に配置されたレバー軸87を中心に回転可能となっている。また、レバー85は搬送経路の下流側に向けて斜め下方に延びる延出部85aを有し、延出部85aの端面(カムフォロア面;図5では下面)にカム部材83が係合している。レバー85は、図示しない付勢部材(例えば、ねじりコイルばね)によって図5におけるレバー軸87を中心とした反時計方向に付勢されている。そして、常時は、カム部材83及びレバー85が図5(a)に示す待機時の回動位置に配置される。
【0068】
また、レバー86は、搬送経路においてカム軸82よりも下流側に配置されたレバー軸88を中心に回転可能となっている。レバー86は、レバー軸88から下方に延びる延出部86aを有し、カム部材84はこの延出部86aの端面(カムフォロア面)に係合している。レバー86においてレバー軸88から上方に延びる支持部86bの先端部には、デカールローラー36の軸部36aが回転自在に支持されている。
【0069】
レバー86は、図示しない付勢部材(例えば、ねじりコイルばね)の付勢力によって図5におけるレバー軸88を中心とした反時計方向に付勢されている。そして、常時は、カム部材84及びレバー86が図5(a)に示す待機時の回動位置に配置される。なお、カム部材83,84及びレバー85,86は、シートCSの幅より長い軸長を有するカム軸82の軸方向における両端部に1組ずつ設けられている。
【0070】
そして、カム軸82がカムモーター(図示略)の駆動に伴って図5(a)に示す待機位置から約180度回転すると、カム部材83,84の回転に伴って、レバー85が図5(a)における反時計方向に回動するとともに、レバー86が図5(a)における時計方向に回動することにより、図5(b)に示す矯正時の回動位置に配置される。この結果、ガイド板71は、搬送面を形成する案内位置(図5(a)で示す位置)から、搬送面から下方へ退避する退避位置(図5(b)で示す位置)へと変位する。
【0071】
このとき、デカールローラー36は、レバー軸88を中心に時計方向(搬送経路の上流側方向;後方)へ円弧状の経路で変位することで、その変位の途中で搬送ローラー26とでシートCSを挟持する。これにより、デカールローラー36は、シートCSにおける搬送ローラー26とで挟持した挟持位置と搬送ローラー27との間に位置する部分を、カールと逆向きに湾曲させてカールを矯正する図5(b)に示す矯正位置に配置される。
【0072】
一方、カム軸82がカムモーター(図示略)の駆動に伴って図5(b)に示す矯正位置から約180度回転すると、カム部材83,84の回転に伴って、レバー85が図5(b)における時計方向に回動するとともに、レバー86が図5(b)における反時計方向に回動することにより、図5(a)に示す待機時の回動位置に配置される。この結果、ガイド板71は、搬送面から下方へ退避する退避位置(図5(b)で示す位置)から、搬送面を形成する案内位置(図5(a)で示す位置)へと復帰する。このとき、デカールローラー36は、図5(b)に示す矯正位置から図5(a)に示す待機位置に復帰する。
【0073】
図2に示すように、ヒーターユニット17Aの吸気口52は、搬送ローラー対R3よりもシートCSの搬送経路の下流側(前側)に位置している。デカールローラー対DRと搬送ローラー27との間には、連通部としての隙間Sが形成されている。そして、隙間Sは、搬送ローラー対R3よりもシートCSの搬送経路の下流側において、開口部41bを含む空間形成部材50内の空間K1と、搬送経路形成部材41よりも吸気口52側(上側)の空間K2とを連通している。
【0074】
また、本実施形態では、インクジェット式プリンター11の電源投入直後にヒーターユニット17Aを設定温度まで昇温させるために開始される予備加熱運転(ウォームアップ)中は、カール矯正機構18を矯正位置に配置することにより、ヒーターユニット17Aの設定温度まで昇温させるための所要時間(ウォームアップ時間)を短縮させるようにしている。そして、本実施形態では、予備加熱運転も「乾燥」の概念に含まれるものとする。
【0075】
従来、カール矯正が行われることのない予備加熱運転(ウォームアップ)では、カール矯正機構18が待機位置に配置される。また、従来は、予備加熱が終わって印刷が可能な待機状態になっても、印刷が施されたシートCSが乾燥領域Dを通りそのシートCSの前端(先端)がデカールローラー対DRに到達した時点で、はじめてカール矯正機構18が待機位置から矯正位置へ作動される。
【0076】
このようにヒーターユニット17Aの設定温度までの昇温中に、カール矯正機構18が待機位置に配置されていると、乾燥領域Dから搬送ローラー対R3の隙間を通って搬送経路の下流側へ流れた温風が、さらにデカールローラー対DRの隙間を流路として搬送経路の下流側へ流れて本体ケース12の外側へ排出される。このため、予備加熱運転の下で、乾燥領域Dの温度が適切な温度まで上昇するのに時間を要してしまう。
【0077】
そこで、本実施形態では、インクジェット式プリンター11の電源投入後における予備加熱運転中において、図5(b)に示すように、カール矯正機構18を矯正位置に配置するようにしている。そして、カール矯正機構18が矯正位置にある状態では、矯正位置に配置されたデカールローラー36が搬送ローラー26に当接するため、ローラー26,36間の隙間(流路)はほぼ遮断される。
【0078】
このため、乾燥領域Dから温風の一部が搬送経路の下流側へ流れ出しても、その温風はデカールローラー対DRよりも搬送経路の上流側に滞留し易くなる上、インクジェット式プリンター11の外部へ排出される温風の流出量も少なく抑えられる。
【0079】
次に、インクジェット式プリンター11の作用について説明する。
さて、給紙部13のロール体RSから搬送経路の下流側に向かって繰り出されたシートST(連続紙)は、支持台48上で記録ヘッド47により記録処理が施される。記録処理後のシートSTは、搬送ローラー対R1によって搬送経路の下流側に搬送され、カッター16によって順次シートCS(単票紙)に切断される。切断後のシートCSは、搬送ローラー対R2によって乾燥領域Dへ搬送される。
【0080】
乾燥領域Dへ搬送されたシートCSは、搬送経路形成部材41の支持面41a上でヒーターユニット17Aの吹出口53から吹き出される温風を受けて乾燥される。乾燥されたシートCSは、搬送ローラー対R3によって搬送経路の下流側に搬送され、カール矯正機構18によってカールが矯正された後、排紙口12aから排紙部12b上に排出される。
【0081】
このとき、吹出口53から吹き出される温風の一部は、搬送経路形成部材41の開口部41bから空間形成部材50の空間K1へと流れ込む。この空間K1に流れ込んだ温風は、図2に矢印で示すように、隙間Sから空間K2へと流れて吸気口52から吸い込まれる。そして、吸気口52から吸い込まれた温風は、再び吹出口53から乾燥領域Dへ吹き出される。
【0082】
この場合、吸気口52から吸い込まれる温風は、吹出口53から吹き出される温風の温度よりも低くなっているものの、ある程度の温かさを有しているため、ヒーター59の出力を抑えても吹出口53から吹き出される温風の設定温度まで温度が上昇する。
【0083】
また、吹出口53から吹き出された温風は、空間形成部材50により、開口部41bから本体ケース12内の下方に向かって拡散し難くなる、すなわち開口部41bから逃げ難くなるため、乾燥領域Dの温度低下が抑制される。このため、支持面41a上に支持されたシートCSが効率よく乾燥される。
【0084】
また、吹出口53から吹き出された温風が搬送経路に沿って空間形成部材50内の空間K1を開口部41bから隙間Sへと流れることで、搬送経路における搬送ローラー対R3からカール矯正機構18までの領域が下側(空間K1側)から温められるので、この領域でもシートCSが乾燥される。
【0085】
この場合、図3に示すように、特にシートCSが最小幅のものであるときには、各フラップ63を気流非制御位置(図4で示す位置)から気流制御位置(図3で示す位置)に変位させることで、空間K1を開口部41bから隙間Sへと流れる温風が、空間K1における最小幅のシートCSと対応する領域(幅方向の中央部)に集められる。このため、最小幅のシートCSは、搬送経路における搬送ローラー対R3からカール矯正機構18までの領域において下側(空間K1側)から効果的に温められるので、該領域でも効果的に乾燥される。
【0086】
このように、インクジェット式プリンター11に空間形成部材50を設けることで、吹出口53から吹き出された温風の一部が開口部41bから本体ケース12内の下方に向かって際限なく逃げることがなくなるので、支持面41a上(乾燥領域D)でのシートCSの温風乾燥を効率よく行うことができる。
【0087】
以上、詳述した実施形態によれば以下の効果を得ることができる。
(1)乾燥装置17は、ヒーターユニット17Aに対して開口部41bを挟んだ反対側に配置され、該開口部41bを含む空間K1を区画形成する空間形成部材50を備えている。このため、吹出口53から支持面41a上のシートCSに向けて吹き出された温風(加熱空気)が開口部41bから拡散して逃げることを空間形成部材50によって抑制することができる。この結果、乾燥領域Dの温度(支持面41a上の雰囲気温度)の低下を抑制することができるので、支持面41a上のシートCSを効率よく乾燥させることができる。
【0088】
(2)乾燥装置17において、吸気口52は、搬送ローラー対R3よりも搬送経路の下流側に位置しており、搬送ローラー対R3よりも搬送経路の下流側には、空間形成部材50内の空間K1と、搬送経路形成部材41よりも吸気口52側(上側)の空間K2とを連通する隙間Sが形成されている。このため、吹出口53から支持面41a上のシートCSに向けて吹き出された温風(加熱空気)が、開口部41bから空間形成部材50内の空間K1へ進入した後、隙間Sから空間K2を通って吸気口52へ向かって流れるようになる。したがって、ヒーターユニット17Aにより周囲の空気よりも温度の高い空気が吸気口52から取り込まれて再び吹出口53から支持面41a上のシートCSに向けて吹き出される。この結果、ヒーター59(ヒーターユニット17A)による空気の加熱(温風の生成)に必要なエネルギー(電力量)を低減することができる。すなわち、節電に寄与できる。
【0089】
(3)空間形成部材50の内底面上には、空間K1において搬送経路に沿って下流側に流れる温風を、幅方向において最小幅のシートCSと対応する中央部に寄せることが可能な複数のフラップ63が設けられている。このため、乾燥させるシートCSの幅が小さくなっても(最小幅であっても)、フラップ63を気流制御位置に変位させることで、空間形成部材50内の空間K1を流れる温風により、搬送経路に沿って下流側に搬送されるシートCSを下側(裏側)から効率よく温めることができる。
【0090】
(4)フラップ63は、空間形成部材50内の空間K1を流れる温風(空気)を、最小幅のシートCSと対応する幅方向の中央部に寄せる気流制御位置と、幅方向の中央部に寄せない気流非制御位置との間で変位可能に構成されている。このため、乾燥させるシートCSの幅が狭い場合(最小幅の場合)にフラップ63を気流制御位置に変位させる一方、乾燥させるシートCSの幅が広い場合(最小幅以外の場合)にフラップ63を気流非制御位置に変位させることで、乾燥させるシートCSの幅が変わっても、空間形成部材50内の空間K1を流れる温風により、搬送経路に沿って下流側に搬送されるシートCSを下側(裏側)から効率よく温めることができる。
(変更例)
なお、上記実施形態は以下のような別の実施形態に変更してもよい。
【0091】
・各フラップ63は、必ずしも気流制御位置と気流非制御位置との間で変位可能に構成する必要はない。すなわち、各フラップ63を気流制御位置で固定するようにしてもよい。
【0092】
・各フラップ63は、省略してもよい。
・空間形成部材50に設けるフラップ63の配置や数は、空間K1において搬送経路に沿って下流側に流れる温風を幅方向において最小幅のシートCSと対応する中央部に寄せることが可能であれば、適宜変更してもよい。
【0093】
・空間形成部材50の左右の両側壁を搬送経路の上流側(後側)から下流側(前側)に向かって徐々に幅狭となるように構成し、該両側壁を各フラップ63の代わりに気流制御部として機能させるようにしてもよい。
【0094】
・空間形成部材50内の空間K1と、搬送経路形成部材41よりも吸気口52側(上側)の空間K2とを連通させないようにしてもよい。すなわち、空間形成部材50を、その内部の空間K1が開口部41b以外で開口しないように構成してもよい。
【0095】
・記録媒体を構成するシートST及びカットシートCSは、プラスチックフィルムや金属箔などであってもよい。
・乾燥装置17は、記録処理前にシートSTを予め加熱する予熱処理を行う装置として用いてもよい。この場合、予熱処理も乾燥処理の概念に含まれるものとする。
【0096】
・上記実施形態では、記録装置をインクジェット式プリンター11に具体化したが、インク以外の他の液体を噴射したり吐出したりする液体噴射装置を採用してもよい。微小量の液滴を吐出させる液体噴射ヘッド等を備える各種の液体噴射装置に流用可能である。なお、液滴とは、上記液体噴射装置から吐出される液体の状態をいい、粒状、涙状、糸状に尾を引くものも含むものとする。また、ここでいう液体とは、液体噴射装置が噴射させることができるような材料であればよい。例えば、物質が液相であるときの状態のものであればよく、粘性の高い又は低い液状体、ゾル、ゲル水、その他の無機溶剤、有機溶剤、溶液、液状樹脂、液状金属(金属融液)のような流状体、また物質の一状態としての液体のみならず、顔料や金属粒子などの固形物からなる機能材料の粒子が溶媒に溶解、分散又は混合されたものなどを含む。また、液体の代表的な例としては上記実施形態で説明したようなインクや液晶等が挙げられる。ここで、インクとは一般的な水性インク及び油性インク並びにジェルインク、ホットメルトインク等の各種液体組成物を包含するものとする。液体噴射装置の具体例としては、例えば液晶ディスプレイ、EL(エレクトロルミネッセンス)ディスプレイ、面発光ディスプレイ、カラーフィルターの製造などに用いられる電極材や色材などの材料を分散又は溶解のかたちで含む液体を噴射する液体噴射装置、バイオチップ製造に用いられる生体有機物を噴射する液体噴射装置、精密ピペットとして用いられ試料となる液体を噴射する液体噴射装置、捺染装置やマイクロディスペンサー等であってもよい。さらに、時計やカメラ等の精密機械にピンポイントで潤滑油を噴射する液体噴射装置、光通信素子等に用いられる微小半球レンズ(光学レンズ)などを形成するために紫外線硬化樹脂等の透明樹脂液を基板上に噴射する液体噴射装置、基板などをエッチングするために酸又はアルカリ等のエッチング液を噴射する液体噴射装置を採用してもよい。そして、これらのうちいずれか一種の液体噴射装置に本発明を適用することができる。
【符号の説明】
【0097】
11…記録装置としてのインクジェット式プリンター、17…乾燥装置、17A…乾燥手段としてのヒーターユニット、41…支持部材としての搬送経路形成部材、41a…支持面、41b…開口部、47…記録手段としての記録ヘッド、50…空間形成部材、52…吸気口、53…吹出口、63…気流制御部としてのフラップ、R3…搬送手段としての搬送ローラー対、K1,K2…空間、ST…記録媒体としてのシート、CS…記録媒体としてのカットシート、S…連通部としての隙間。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
記録媒体を上流側から下流側へ搬送するための搬送経路の一部を構成するとともに前記記録媒体を支持可能な支持面を有する支持部材と、
前記支持面と対向するように配置され、吸気口から吸入した空気を加熱して吹出口から前記支持面上の前記記録媒体に向けて吹き出すことにより該記録媒体に乾燥処理を施す乾燥手段と、
前記支持部材に形成され、前記支持面上の前記記録媒体を前記搬送経路の下流側へ搬送する搬送手段が配置される開口部と、
前記乾燥手段に対して前記開口部を挟んだ反対側に配置され、該開口部を含む空間を区画形成する空間形成部材と
を備えたことを特徴とする乾燥装置。
【請求項2】
前記吸気口は、前記搬送手段よりも前記搬送経路の下流側に位置しており、
前記搬送手段よりも前記搬送経路の下流側には、前記空間形成部材内の前記空間と、前記支持部材よりも前記吸気口側の空間とを連通する連通部が形成されていることを特徴とする請求項1に記載の乾燥装置。
【請求項3】
前記空間形成部材は、その内部の前記空間において前記搬送経路に沿って下流側に流れる空気を、前記記録媒体の搬送方向と直交する幅方向において最小幅の前記記録媒体と対応する側に寄せることが可能な気流制御部を備えていることを特徴とする請求項2に記載の乾燥装置。
【請求項4】
前記気流制御部は、前記空間形成部材内の前記空間を流れる空気を、最小幅の前記記録媒体と対応する側に寄せる気流制御位置と、最小幅の前記記録媒体と対応する側に寄せない気流非制御位置との間で変位可能に構成されていることを特徴とする請求項3に記載の乾燥装置。
【請求項5】
請求項1〜請求項4のうちいずれか一項に記載の乾燥装置と、
前記搬送経路における前記乾燥手段よりも上流側で前記記録媒体に記録処理を施す記録手段と
を備えたことを特徴とする記録装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2013−67081(P2013−67081A)
【公開日】平成25年4月18日(2013.4.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−207190(P2011−207190)
【出願日】平成23年9月22日(2011.9.22)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】