説明

乾麺類の製造法

【課題】乾燥後の麺線を熟成させることにより、機械製麺法により、弾力性、歯切れ感などの食感、茹で伸びの遅さ、麺ほぐれなどの点において、手延べ麺類と同等以上の品質を有する乾麺類を製造することができ、かつ、熟成による麺の褐変などの問題もなく、比較的短時間で乾麺を熟成させることができる、乾麺類の製造法を提供すること。
【解決手段】麺帯を麺線に切り出し、該麺線を乾燥して乾麺類を製造する方法において、麺線を水分15質量%以下に乾燥後、得られた乾麺類を、マイクロ波により加熱して熟成させる。好ましくは、上記マイクロ波による熟成を、マイクロ波の出力が乾麺類1kgに対して0.01〜0.2kWで、乾麺類の品温が70〜95℃で、1〜10時間行う。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、乾麺類の製造法、詳しくは、乾燥後の麺線を熟成させることにより、機械製麺法により手延べ麺類と同等以上の品質を有する乾麺類を製造しうる乾麺類の製造法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、麺帯機、複合機、圧延ロールなどを用いた機械製麺法が広く採用されている。また、押出機を用いて麺帯を製造する押出製麺法も知られている。
しかし、一般に、これらの機械製麺法では、手延べ麺類と比較して、弾力性、歯切れ感などの食感、茹で伸びの遅さ、麺ほぐれなどの点において十分に満足しうる麺類が得られていない。
【0003】
このような従来の機械製麺法の欠点を解消するために、例えば、小麦粉、澱粉の選択、原料配合の調整、麺質改良剤の使用、工程の改良、製麺機械の改良など、種々の方法が提案されている。
また、乾麺を熟成させることにより食感などを向上させることが知られている。例えば、特許文献1には、手延べ素麺に匹敵するような良好な食感及び食味を有する乾麺を得るために、乾麺を60〜100℃の温度で1〜20時間熟成させることが記載されている。
また、特許文献2には、乾麺類を40〜60℃の温度範囲で1〜40日間保持する、乾麺類の品質向上方法が記載されている。
しかし、これらの改良方法によって得られる麺類は、従来の機械製麺法により得られる麺類に比較して品質が向上しているものの、十分に満足しうるものではなく、さらなる改良が求められている。
また、一般に乾麺の熟成には長時間を必要とする。乾麺を短時間で熟成させるために、高温加熱下で熟成させると、麺が褐変するなどの問題が生じる。
【0004】
また、麺類をマイクロ波加熱処理する技術も知られている。例えば、従来より、蒸し麺をマイクロ波加熱処理することにより乾燥膨化し、ノンフライ即席麺を製造する方法などがある(特許文献3参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2004−222546号公報
【特許文献2】特開平7−115926号公報
【特許文献3】特開昭60−141246号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明の目的は、乾燥後の麺線を熟成させることにより、機械製麺法により、弾力性、歯切れ感などの食感、茹で伸びの遅さ、麺ほぐれなどの点において、手延べ麺類と同等以上の品質を有する乾麺類を製造することができ、かつ、熟成による麺の褐変などの問題もなく、比較的短時間で乾麺を熟成させることができる、乾麺類の製造法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らは、種々検討した結果、製麺・乾燥した乾麺類をマイクロ波加熱下に熟成させることにより、上記目的を達成する乾麺類が得られることを知見し、斯かる知見に基づいて本発明を完成した。
【0008】
即ち、本発明は、麺帯を麺線に切り出し、該麺線を乾燥して乾麺類を製造する方法において、麺線を水分15質量%以下に乾燥後、得られた乾麺類を、マイクロ波により加熱して熟成させることを特徴とする乾麺類の製造法を提供するものである。
【発明の効果】
【0009】
本発明の乾麺類の製造法によれば、機械製麺法により、弾力性、歯切れ感などの食感、茹で伸びの遅さ、麺ほぐれなどの点において、手延べ麺類と同等以上の品質を有する乾麺類を製造することができ、かつ、熟成による麺の褐変などの問題もなく、比較的短時間で乾麺を熟成させることができる。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明の乾麺類の製造法について詳細に説明する。
本発明における乾麺類の熟成は、乾麺類を、マイクロ波加熱下において、乾麺の品温が好ましくは70〜95℃、より好ましくは75〜85℃で、好ましくは1〜10時間、より好ましくは5〜8時間行われる。
熟成させる乾麺類は、麺線を水分15質量%以下、好ましくは水分10〜15質量%に乾燥したものである。この乾麺類は、如何なる製麺方法により得られたものでもよく、また包装されたものでも、未包装の状態のものでもよい。
【0011】
熟成の際の乾麺の品温が70℃未満であると、熟成温度が低すぎて熟成の効果が十分に得られない、また熟成の際の乾麺の品温が95℃超であると、熟成効果のバラツキが生じやすく、また麺線の褐変化が進行し、外観が劣化する惧れがある。
熟成時間が1時間未満であると、食感の改良や、茹で伸びの遅さ、麺ほぐれの点において十分な効果が得られず、また熟成時間が10時間超であると、熟成時間が長くなりすぎ熟成時間短縮の効果が無くなる。また麺線の褐変化が進行し、外観が劣化する惧れがある。
【0012】
マイクロ波の出力は、乾麺類1kgに対して、好ましくは0.01〜0.2kW、より好ましくは0.05〜0.15kWである。
マイクロ波の出力が乾麺類1kgに対して0.01kW未満であると、温度上昇が十分に行われず、熟成効果が弱く、また0.2kW超であると、麺線での熟成効果のバラツキが生じやすく、また麺線の褐変化が進行し、外観が劣化する惧れがある。
【0013】
乾麺類の熟成を行う環境温湿度は、包装された乾麺類の場合には特に限定されない。また、未包装の乾麺類の場合においても密閉型のコンテナ等にいれて処理を行うことにより特に限定されないが、通常の室内環境(温度;15〜25℃、相対湿度40〜70%)で処理することが好ましい。
【0014】
上記熟成後の乾麺類の水分は、10〜15質量%であるのが好ましく、12〜14質量%であるのがより好ましい。
【0015】
本発明において、麺帯の調製、麺線への切り出し、麺線の乾燥は、麺類の種類に応じて常法により行うことができる。
例えば、麺帯の調製は、圧延ロールを用いるロール圧延製麺法、押出機を用いる押出製麺法などにより行うことができる。
また、麺線の乾燥は、麺類の種類により異なるが、クラック、短麺、縦割れの発生につながる急激な乾燥を避け、乾燥後水分を15質量%以下、特に10〜15質量%まで低下させるのが好ましい。
【0016】
本発明により得られる乾麺類は、特に制限されず、例えば、素麺、うどん、きしめん、冷麦、中華麺、日本そばなどのいずれであってもよい。
【実施例】
【0017】
以下、実施例および比較例を挙げて本発明をさらに具体的に説明するが、本発明は以下の実施例によって何ら制限されるものではない。
【0018】
実施例1〜3(素麺)
〔素麺の製造〕
準強力小麦粉100質量部に対し、10%食塩水36質量部を加え、ピンミキサーにて10分間ミキシングを行い、得られた麺生地を、常法に従い、ロールにて最終麺線厚みが1.0mmになるように圧延比30〜50%で圧延し、切刃(#28丸刃)を用いて麺線とした。
この麺線を常法に従い、穏やかな温湿条件下で乾燥し、素麺(水分13.5質量%)を得た。
〔素麺の熟成〕
得られた素麺を包装後、表1に示す条件下でマイクロ波により加熱して熟成させた。熟成後の各乾麺類の水分を表1に示す。なお、使用したマイクロ波は、周波数が2450MHzのものである。


【0019】
【表1】

【0020】
比較例1
素麺の熟成を、熱風により加熱して乾麺の品温85℃で8時間行った以外は、実施例1と同様にして素麺を製造した。
【0021】
試験例1
実施例1〜3で得られた素麺および比較例1で得られた素麺の外観について、褐変の有無などを下記の評価基準に従って評価した。その結果を表2に示す。
また、実施例1〜3で得られた素麺および比較例1で得られた素麺を2分30秒茹で、冷水にさらした後、食感(滑らかさ、弾力性、歯切れ感)、外観(光沢、透明感)、茹で伸び、麺ほぐれの点について、下記の評価基準に従ってパネラー5名で評価を行った。その結果(平均点)を表2に示す。
【0022】
素麺の外観(表面の色)の評価基準
5:明るく冴えた色で良い。
4:やや明るく良い。
3:やや明るさが弱く、くすみが見られる。
2:やや褐変が見られ悪い。
1:かなり褐変が見られ非常に悪い。
【0023】
茹で素麺の食感(滑らかさ、弾力性、歯切れ感)の評価基準
5:非常に良い。
4:良い。
3:普通。
2:悪い。
1:非常に悪い。
【0024】
茹で素麺の外観(光沢、透明感)の評価基準
5:光沢、透明感が非常に強い。
4:光沢、透明感が強い。
3:光沢、透明感あり。
2:光沢、透明感が乏しい。
1:光沢、透明感が非常に乏しい。
【0025】
茹で伸び
5:非常に遅い。
4:遅い。
3:普通。
2:早い。
1:非常に早い。
【0026】
麺ほぐれ
5:非常に良い。
4:良い。
3:普通。
2:悪い。
1:非常に悪い。
【0027】
【表2】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
麺帯を麺線に切り出し、該麺線を乾燥して乾麺類を製造する方法において、麺線を水分15質量%以下に乾燥後、得られた乾麺類を、マイクロ波により加熱して熟成させることを特徴とする乾麺類の製造法。
【請求項2】
マイクロ波の出力が、乾麺類1kgに対して0.01〜0.2kWである請求項1記載の乾麺類の製造法。
【請求項3】
マイクロ波による加熱を、乾麺類の品温が70〜95℃で1〜10時間行う請求項1又は2記載の乾麺類の製造法。