予熱機
【課題】原料充填層内に滞留する小粒原料や粉状原料の割合を少なくし、熱ガスの圧力損失の増加と偏流を防止して原料の予熱度合いを均一にする。
【解決手段】予熱機100は、ケーシング1、内筒1a、原料投入部2、原料通路3における原料充填層4の上方に設けられたブリッジ状の構造物5、熱ガスが原料充填層4内に導入される熱ガス入口部6、導入された熱ガスが外部に排出される熱ガス出口部7、原料充填層4内における構造物5の近傍に、原料充填層4内から原料の粒子間に存在する小粒物および粉状物を熱ガス入口部6から導入された熱ガスとともに外部に抽出する抽気管8、および降下した原料を排出する原料排出機9を備える。抽気管8は、風量調整弁10に接続され、原料充填層4内の熱ガスの一部はこの風量調整弁10を経由して熱ガス出口部7から排出される熱ガスと合流する。
【解決手段】予熱機100は、ケーシング1、内筒1a、原料投入部2、原料通路3における原料充填層4の上方に設けられたブリッジ状の構造物5、熱ガスが原料充填層4内に導入される熱ガス入口部6、導入された熱ガスが外部に排出される熱ガス出口部7、原料充填層4内における構造物5の近傍に、原料充填層4内から原料の粒子間に存在する小粒物および粉状物を熱ガス入口部6から導入された熱ガスとともに外部に抽出する抽気管8、および降下した原料を排出する原料排出機9を備える。抽気管8は、風量調整弁10に接続され、原料充填層4内の熱ガスの一部はこの風量調整弁10を経由して熱ガス出口部7から排出される熱ガスと合流する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、窯業などにおいてケーシング内に粒状物原料を充填してケーシングに導入される熱ガスにより粒状物原料を加熱する予熱機に関する。
【背景技術】
【0002】
竪型予熱装置として知られたいわゆる原料充填層式の予熱装置においては、原料は予熱装置の上方から内部に投入され、この予熱装置の下部(底部)に設けられた原料排出機により装置外へ排出されるように構成されている。このため、予熱装置内に上方から投入される原料は、重力の法則にしたがって予熱装置内を上方から下方に向かい移動する。
【0003】
一方、投入された原料を加熱するための加熱用の熱ガスは、予熱装置の下方や原料充填層の中間部辺りから原料充填層内に導入され、上方に向かって移動して原料充填層の上端を経由し、この原料充填層の上部に形成される空間を経て予熱装置外に排出される。
【0004】
この熱ガスは、予熱装置の原料充填層内における原料粒子間の空隙を通過して流れるため、この原料粒子間に存在する小さな原料や粉状の原料は、この熱ガスに同伴して上方に搬送される(特許文献1)。
【特許文献1】特開2003−252660号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
従来の予熱機では、投入される原料の粒度が大きく粒度範囲が狭い場合や、予定した原料粒度よりも小さな小粒原料が少ない場合には、操業上の問題は起こりにくいとされているが、投入される原料として小粒原料や粉状原料が多く含まれている場合には、熱ガスによってこれらの原料が搬送されて原料充填層内を上昇し、熱ガスの温度が低下すると共に搬送可能な粒子径が小さくなり、それまで搬送されてきた大きな粒子の原料の搬送がなされず、原料粒子間の空隙を小さくしてしまう。
【0006】
また、予熱装置の上部の空間で熱ガス速度が急激に低下するため、原料充填層の上端まで達した被搬送粒子の一部は原料充填層上端部に落下する。落下した小粒子は原料に巻き込まれて下方に移動するが、下方から来る熱ガスによって再度搬送され上方に移動する。このように、原料充填層式の予熱装置内では、上記のような現象を繰り返しているため、予熱装置の原料充填層内には小粒物が循環することとなる。
【0007】
したがって、原料充填層内の原料粒度は、予熱装置に投入前の粒度よりも、投入後の粒度の方が小径側にずれるという傾向があるが、原料粒度が小径側にずれると、原料充填層を通過する熱ガスの圧力損失が増加するという問題が発生する。また、予熱装置内において、原料粒度が局所的に小径側にずれて小粒物の偏積が起こると熱ガスの偏流を助長して原料の予熱の度合いが不均一になる傾向があるなど、予熱装置の予熱機能を低下させてしまう問題が発生する可能性がある。
【0008】
この発明は、上述した従来技術による問題点を解消するため、原料充填層内に滞留する小粒原料や粉状原料の割合を少なくすることによって、熱ガスの圧力損失が過度に増加することを防止するとともに、熱ガスの偏流を防止して原料充填層下端の排出部の原料の予熱度合いを均一にすることができる予熱機を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上述した課題を解決し、目的を達成するため、本発明に係る予熱機は、ケーシング内に粒状物原料を充填して前記粒状物原料の充填層を形成し、前記ケーシングの熱ガス入口部から前記ケーシング内に導入され前記充填層を下方から上方へと移動し前記ケーシングの上端の熱ガス出口部から排出される熱ガスによって前記粒状物原料を加熱する予熱機であって、前記熱ガス入口部から熱ガス出口部の間の前記充填層内に連通し、前記充填層内から前記粒状物原料の粒子間に存在する小粒状物および粉状物を前記熱ガスとともに抽出する抽気部を設けたことを特徴とする。
【0010】
本発明に係る予熱機は、上記のように構成したことにより、原料充填層内に滞留する小粒原料や粉状原料の割合を少なくし、熱ガスの圧力損失が過度に増加することを防止することができるとともに、熱ガスの偏流を防止して原料充填層下端の排出部の原料の予熱度合いを均一にすることができる。
【0011】
また、例えば前記原料層内に少なくとも一部が埋没する構造物を設け、前記構造物の下方の自由息角面により形成される空間部に前記抽気部を配してもよい。
【0012】
さらに、例えば前記構造物の下方の自由息角面よりも下方に気体を供給する給気管を設け、前記給気管から前記気体を前記原料充填層内に供給可能に構成してもよい。
【0013】
また、例えば前記構造物の下方の自由息角面よりも上方に気体を供給する給気管を設け、前記給気管から分岐する複数の枝管をその先端が前記原料充填層内に埋没するように設置して、前記給気管から前記気体を前記原料充填層内に供給可能に構成してもよい。
【0014】
また、例えば前記給気管を前記自由息角面により形成される空間部を形成可能な形状としてもよい。
【0015】
なお、前記構造物は、例えばブリッジ状またはフード状の形状からなる。
【発明の効果】
【0016】
本発明に係る予熱機によれば、原料充填層内に滞留する小粒原料や粉状原料の割合を少なくし、熱ガスの圧力損失が過度に増加することを防止することができるとともに、熱ガスの偏流を防止して原料充填層下端の排出部の原料の予熱度合いを均一にすることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
以下に、添付の図面を参照して、この発明に係る予熱機の好適な実施の形態を詳細に説明する。
【0018】
図1は、本発明の第1の実施形態に係る予熱機の一部を示す縦断面図である。また、図2は、図1のA−A’断面を簡易的に説明するための説明図である。
【0019】
図1および図2に示すように、第1の実施形態に係る予熱機100は、図中一点鎖線を中心軸とする筒状のケーシング1と、このケーシング1と同軸配置されて環状の原料通路3を形成する内筒1aと、エアシール機構などを経由した粒状物原料(以下、「原料」と略記する。)が図中実線矢印D方向に投入される原料投入部2と、この原料投入部2から続く原料通路3の周方向の複数箇所における原料充填層4の上方に設けられたブリッジ状の構造物5とを備える。
【0020】
また、予熱機100は、ケーシング1の下端側に、図示しないバーナなどで加熱された図1中実線矢印Gで示す熱ガスが原料充填層4内に導入される熱ガス入口部6を備えるとともに、ケーシング1の上端側に、この熱ガス入口部6から原料充填層4内に導入された熱ガスが外部に排出される熱ガス出口部7を備える。
【0021】
また、予熱機100は、熱ガス入口部6と熱ガス出口部7の間であって、原料充填層4内における構造物5の近傍に、原料充填層4内から原料の粒子間に存在する小粒物および粉状物を熱ガス入口部6から導入された熱ガスとともに外部に抽出する抽気部としての抽気管8と、ケーシング1の下端側に、加熱され図中実線矢印F方向に降下した原料を排出するプッシャ式などの原料排出機9とを備える。なお、抽気管8は、風量調整弁10に接続され、原料充填層4内の熱ガスの一部はこの風量調整弁10を経由して熱ガス出口部7から排出される熱ガスと合流する。
【0022】
なお、原料の加熱に関する技術は公知のものであるため、ここでは説明を省略するが、このように構成された予熱機100では、抽気管8を原料充填層4内に設け、熱ガスの一部を熱ガス入口部6と熱ガス出口部7の間で抽気するようにしたため、原料充填層4内を滞留する原料よりも小径な小粒原料(小粒物)や粉状原料(粉状物)の原料充填層4内での割合を少なくし、熱ガスの圧力損失が過度に増加することを防止することができる。また、熱ガスの偏流を防止して原料充填層4の下端における原料排出機9での原料の予熱度合いを均一にすることが可能となる。この場合、例えば構造物5は設けられていなくてもよい。
【0023】
しかし、上記のように構造物5を設けることによって、上記の効果をより顕著なものにすることができるようになる。すなわち、原料充填層4内に少なくとも一部が埋没するように構造物5を設置し、その構造物5の下方に自由息角面5aにより形成される空間Sから熱ガスの一部を風量調節弁10を具備した抽気管8を経由して抽気し、原料充填層4内の粒子間に存在する小粒物および粉状物を抜き出すことで、熱ガスの圧力損失の増加や偏流を防止することができる。この効果についての詳細は後述する。
【0024】
なお、図2に示すように、構造物5は、例えば耐火煉瓦により構成され、円周方向に所定の幅を有し、その断面形状は頂部が尖って上部に二等辺三角形の斜面に相当する面が形成されている。また、構造物5の下部には凹み部5bが形成されている。そして、自由息角面5aと構造物5の下部との間に空間Sが形成されている。また、熱ガス入口部6の近傍には、熱ガス入口部6の下方から落下する原料の動きと熱ガスの動きを規制するための原料規制構造物11が設けられている。
【0025】
なお、前述の実施形態においては、構造物5を耐火煉瓦で構成したが、構造物5を構成する材質がこれに限るものでないことは勿論であって、温度条件や強度等、予熱機100内での使用条件を満足させるものであれば、金属やセラミック等、その他の材質で構成してもよい。
【0026】
また、前述の実施形態においては、構造物5の好ましい形態の一例として、上方から流れてくる原料の流れを阻害しないように、構造物5の上部に二等辺三角形の斜面に相当する面を形成した。しかし、構造物5の上部の形状はこれに限るものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で、例えば上部の断面形状が円弧状、流線型、矩形、あるいはその他の形状であってもよい。
【0027】
さらに、前述の実施形態においては、構造物5の好ましい一例として、構造物5の下を流れるガスの流路面積を大きくするため、下部の形状に凹み部5bを形成した。特に、構造物5を耐火煉瓦で構成しようとした場合には、図3に示すように、複数個の耐火煉瓦ブロック5cをアーチ型に組んでブリッジ状に構成した構造物5としなければならないことがあるが、そのような場合には部分的にガス流路が狭くなる可能性があるため、凹み部5bを形成してガス流路を大きくする上記構造の効果は大きいといえる。
【0028】
しかし、本発明においては、構造物5の下部の形状はこれに限るものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で、例えば凹み部5bを設けずに平坦な形状としてもよく、円弧状に湾曲させた形状としてもよく、あるいはその他の形状であってもよい。
【0029】
図4は、本発明の第2の実施形態に係る予熱機の一部を示す縦断面図である。また、図5は、図4のB−B’断面を簡易的に説明するための説明図である。なお、以降において、既に説明した部分と重複する箇所には同一の符号を付して説明を省略し、本発明に特に関係しない部分については明記しないことがあるとする。
【0030】
図4および図5に示すように、第2の実施形態に係る予熱機101は、熱ガス入口部6cが内筒1aの中間部(すなわち、原料充填層4の中間部)に設けられ、この熱ガス入口部6cの上方に構造物5と同様の形状の熱ガス入口部構造物6aが設けられている点が、先の第1の実施形態に係る予熱機100と相違している。
【0031】
すなわち、第1の実施形態に係る予熱機100では、原料加熱用の熱ガスがケーシング1の下端側に設けられた熱ガス入口部6から原料充填層4内に導入されたが、第2の実施形態に係る予熱機101は、ケーシング1の中間部に設けられた熱ガス入口部6cから熱ガスが導入され、熱ガス入口部構造物6aの下方の安息角面6bで形成された空間Saに熱ガスが一旦導入された上で、さらに原料充填層4内に熱ガスが分散導入されて原料を加熱するものである。
【0032】
この第2の実施形態に係る予熱機101においても、原料充填層4内を滞留する小粒物や粉状物の原料充填層4内での割合を少なくし、熱ガスの圧力損失が過度に増加することを防止することができるとともに、熱ガスの偏流を防止して原料充填層4の下端における原料排出機9での原料の予熱度合いを均一にすることができる。
【0033】
ここで、上記第1および第2の実施形態のいずれの場合も、予熱機100,101の原料充填層4を通過する熱ガスの温度は導入時点で最も高く、原料充填層4内を上昇するにしたがい、その熱が原料の加熱により消費されるため、熱ガスの温度は降下する。すなわち、例えば第1の実施形態に係る予熱機100において構造物5を具備しない場合は、原料規制構造物11を通過後、熱ガスが通過する空塔断面積は変化しないにもかかわらず、実質的ガス流速は次のように低下する。
【0034】
【数1】
【0035】
【数2】
【0036】
ここで、予熱機100,101を例に挙げて式1および式2を用いて、その一例を計算する。
入口ガス温度:1100℃
排ガス温度:300℃
入口ガス圧力:−20mmAq
排ガス圧力:−500mmAq
【0037】
これらを式1にそれぞれ代入すると、
入口:Vti=Vo×{(273+1100)/273}×{10330/(10330−20)}=5.039Vo
出口:Vto=Vo×{(273+300)/273}×{10330/(10330−500)}=2.227Vo
【0038】
したがって、式2より、空塔断面積が変化しない場合には出口ガス速度/入口ガス速度=2.227/5.039=0.442であり、ガス流速は44.2%に低下する。
【0039】
一方、原料の球状の粒子1個がガス中にある場合、ガス速度と粒子径の関係は次のように表される。
【0040】
【数3】
【0041】
上記の詳細な計算は省略するが、取り扱う原料の性状、加熱用の熱ガスの性状により前記の数字は異なり、例えばDpo/Dpi=0.3〜0.5の範囲にある予熱機100,101において、熱ガス入口部6,6cでは粒子径Dpiの原料が熱ガスにより上方に向かい搬送され得るが、真新しい原料充填層4の上端部ではDpiの30〜50%の径の粒子しか搬送されないこととなる。
【0042】
したがって、熱ガス入口部6,6cで上方に向かい原料充填層4の粒子間空間を搬送された原料粒子は、途中で搬送が中止され、他の原料に随伴して原料充填層4を下降するが、下降した量に相当する量が新たに搬送されてきて補充されるという現象を繰り返し、最終的には上述したように新しく投入される原料の粒度に比べ、小粒径側が増加した粒度を示すようになる。
【0043】
原料充填層4を形成する原料の粒子間に比較的小さい粒子径の原料が存在することによって空隙率を低下させ、熱ガスの圧力損失を増大させる結果となる。したがって、第1および第2の実施形態の予熱機100,101の構造物5を原料充填層4の途中(中間部)または上端近傍に設置し、構造物5の直下に空間Sを形成し、熱ガスの一部をこの空間Sを経由して抽気管8により予熱機100,101外に取り出せるようにすることによって、原料充填層4内を上昇してくる熱ガスを構造物5の下方の空間Sに集めることが可能となる。
【0044】
そして、このように熱ガスを集中させることにより、構造物5がない場合に比べて、構造物5の下方の原料充填層4内の実質上のガス流速は増加する。こうしてガス流速が増加することにより、構造物5の下方の空間S近傍の原料充填層4内に存在する小粒物または粉状物を構造物5の下方の空間S内に抜き出すことが可能となる。また、この空間Sの寸法を最適化することにより、熱ガス中に浮遊している原料を熱ガスに同伴させてスムーズに予熱機100,101外に搬出することが可能である。
【0045】
さらに、この空間Sに引き込まれず、そのまま原料充填層4内を上昇する熱ガスの量は、この空間Sから抜き出すガス量を風量調整弁10によって最適化することにより、ガス流速を低下させることが可能になるため、原料充填層4の上端に到達する小粒原料の径はさらに小さくなるとともに、その量も低減され、新しく投入される原料に随伴して降下し易くなる。こうして降下した小粒物や粉状物の一部は、構造物5の下方の空間Sに熱ガスによって移動し、予熱機100,101外に搬出される。
【0046】
このようにして、原料粒子間に滞留する小粒物や粉状物の予熱機100,101外への搬出量が多くなる結果として、粒子間空間の空隙が確保され圧力損失の経時的上昇が防止されるとともに、熱ガスの偏流を防止する効果があるため、原料排出機9における横断面での原料の加熱度をより均一にすることができる。
【0047】
なお、第2の実施形態に係る予熱機101のように、原料充填層4の中間部から熱ガスを導入する方式の場合には、次の機能も付帯される。すなわち、図4に示すように、熱ガスは、熱ガス入口部6cから熱ガス入口部構造物6aの下方の空間Saに向かい流れる間に、原料通路3を横切るように流れる。また、熱ガス入口部構造物6aの下方の空間Saから構造物5の下方の空間Sへの熱ガスの流れは、構造物5の横断面方向で均一になり易く、これにより圧力損失低減効果があるばかりでなく、原料の予熱度合いを横断面上でより均一にすることができる。
【0048】
また、熱ガス入口部構造物6a周辺の原料の流れが促進化され、構造物5の上方の小粒物や粉状物の原料同伴による降下を促進できるため、小粒物や粉状物の滞留がより減少する効果を有する。
【0049】
図6は、本発明の第3の実施形態に係る予熱機の一部を示す縦断面図である。また、図7は、図6のC−C’断面を簡易的に説明するための説明図である。図6および図7に示すように、第3の実施形態に係る予熱機102は、原料充填層4の上方に構造物5を設け、この構造物5の下方の空間Sのさらに下方の原料充填層4にガスを供給するガス体供給管12を設けた点が第1の実施形態に係る予熱機100と相違している。
【0050】
この予熱機102では、ガス供給ファン13によって、熱ガス入口部6から導入される熱ガスとは別のガス体をガス体供給管12を介して原料充填層4内に噴出させ、熱ガス入口部6から導入されて上昇してくる熱ガスと合流させて小粒物や粉状物の分離作用を強化したものである。
【0051】
なお、ガス体供給管12を介して原料充填層4内に供給するガスは、常温空気でもその効果はあるが、構造物5の下の空間Sから抜き出す熱ガスの温度より高い温度のガスの方が予熱機102の機能目的上好ましい。またガスの供給は実際の状況に応じ、連続または断続的に実施される。このガス体供給管12を設ける構成は、第2の実施形態に係る予熱機101にも適用することができる。
【0052】
図8は、このガス体供給管12の別の設置例を示す説明図である。図8に示すように、ガス体供給管12は、例えば構造物5の下方に形成される自由息角面5aよりも上方に設置され、このガス体供給管12から分岐する複数の枝管12aを構造物5の下方の空間Sのさらに下方の原料充填層4内に差し込むようにして構成される。このようにして別のガス体を原料充填層4に供給しても、同様の効果を得ることができる。
【0053】
図9は、このガス体供給管12のさらに別の設置例を示す説明図である。図9に示すように、ガス体供給管12は、例えば構造物5と一体的に構成され、この構造物5の下方の原料充填層4に枝管12aの一部が埋没するように設置されている。このようにして別のガス体を原料充填層に供給しても、同様の効果を得ることができる。また、構造物5を例えば金属で構成した場合には、図10および図11に示すように、構造物5の内側の空間部分をガス体供給管12として利用してガスを供給する構成としてもよい。
【0054】
なお、上述したガス体供給管12は、構造物5の自由息角面5aにより形成される空間Sを形成可能な形状で構成されており、枝管12aとともに、ガスを噴出可能な複数のノズル(図示せず)を備えていてもよく、少なくとも1つ配置されればよい。
【0055】
図12は、本発明の第4の実施形態に係る予熱機の一部を示す縦断面図である。また、図13は、図12のD−D’断面を簡易的に説明するための説明図である。図12および図13に示すように、第4の実施形態に係る予熱機103は、原料充填層4の上方に設けられた構造物50の構成が異なっている点が、第1の実施形態に係る予熱機100と相違している。
【0056】
すなわち、第4の実施形態に係る予熱機103の構造物50は、上述した構造物5のようなブリッジ状の形状ではなく、フード状(円筒状)の形状を有している。そして、下方には金網51が取り付けられており、この金網51の下方に空間Sが形成される構造を備えている。その他の作用や効果は、第1の実施形態に係る予熱機100と同様である。なお、第4の実施形態においては、好ましい一例として、フード状の構造物5の下部に金網51を配して抽気する原料の粒径を調整できる構成とした。しかし、抽気する原料の粒径を金網51で調整する必要がなければ、金網51を使用しなくてもよい。
【0057】
以上述べたように、上述した第1〜第4の実施形態に係る予熱機100〜103によれば、原料の予熱性能の向上や、省エネルギーの達成とともに、同一規模の予熱機に適用した場合には処理能力を向上させることができるようになるとともに、平均粒度のより小さい原料の処理を行うことができるようになる。また、原料を加熱することによって、粉状物や小粒物が増加する特性を有する原料の処理が可能となるとともに、予熱機100〜103の熱源としてダストなどを多く含む熱ガスを利用することが可能になる。
【産業上の利用可能性】
【0058】
以上のように、本発明に係る予熱機は、粒状物原料の加熱に有用であり、特に、窯業分野などに適している。
【図面の簡単な説明】
【0059】
【図1】本発明の第1の実施形態に係る予熱機の一部を示す縦断面図である。
【図2】図1のA−A’断面を簡易的に説明するための説明図である。
【図3】本発明の第1の実施形態に係る予熱機の構造物の他の構成を説明するための縦断面図である。
【図4】本発明の第2の実施形態に係る予熱機の一部を示す縦断面図である。
【図5】図4のB−B’断面を簡易的に説明するための説明図である。
【図6】本発明の第3の実施形態に係る予熱機の一部を示す縦断面図である。
【図7】図6のC−C’断面を簡易的に説明するための説明図である。
【図8】ガス体供給管の別の設置例を示す説明図である。
【図9】ガス体供給管のさらに別の設置例を示す説明図である。
【図10】ガス体供給管の別の構成を示す説明図である。
【図11】ガス体供給管のさらに別の構成を示す説明図である。
【図12】本発明の第4の実施形態に係る予熱機の一部を示す縦断面図である。
【図13】図12のD−D’断面を簡易的に説明するための説明図である。
【符号の説明】
【0060】
1 ケーシング
2 原料投入部
3 原料通路
4 原料充填層
5 構造物
5a 自由息角面
5b 凹み部
6 熱ガス入口部
6a 熱ガス入口構造物
6b 安息角面
6c 熱ガス入口部
7 熱ガス出口部
8 抽気管
9 原料排出機
10 風量調整弁
11 原料規制構造物
12 ガス体供給管
12a 枝管
100 予熱機
【技術分野】
【0001】
この発明は、窯業などにおいてケーシング内に粒状物原料を充填してケーシングに導入される熱ガスにより粒状物原料を加熱する予熱機に関する。
【背景技術】
【0002】
竪型予熱装置として知られたいわゆる原料充填層式の予熱装置においては、原料は予熱装置の上方から内部に投入され、この予熱装置の下部(底部)に設けられた原料排出機により装置外へ排出されるように構成されている。このため、予熱装置内に上方から投入される原料は、重力の法則にしたがって予熱装置内を上方から下方に向かい移動する。
【0003】
一方、投入された原料を加熱するための加熱用の熱ガスは、予熱装置の下方や原料充填層の中間部辺りから原料充填層内に導入され、上方に向かって移動して原料充填層の上端を経由し、この原料充填層の上部に形成される空間を経て予熱装置外に排出される。
【0004】
この熱ガスは、予熱装置の原料充填層内における原料粒子間の空隙を通過して流れるため、この原料粒子間に存在する小さな原料や粉状の原料は、この熱ガスに同伴して上方に搬送される(特許文献1)。
【特許文献1】特開2003−252660号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
従来の予熱機では、投入される原料の粒度が大きく粒度範囲が狭い場合や、予定した原料粒度よりも小さな小粒原料が少ない場合には、操業上の問題は起こりにくいとされているが、投入される原料として小粒原料や粉状原料が多く含まれている場合には、熱ガスによってこれらの原料が搬送されて原料充填層内を上昇し、熱ガスの温度が低下すると共に搬送可能な粒子径が小さくなり、それまで搬送されてきた大きな粒子の原料の搬送がなされず、原料粒子間の空隙を小さくしてしまう。
【0006】
また、予熱装置の上部の空間で熱ガス速度が急激に低下するため、原料充填層の上端まで達した被搬送粒子の一部は原料充填層上端部に落下する。落下した小粒子は原料に巻き込まれて下方に移動するが、下方から来る熱ガスによって再度搬送され上方に移動する。このように、原料充填層式の予熱装置内では、上記のような現象を繰り返しているため、予熱装置の原料充填層内には小粒物が循環することとなる。
【0007】
したがって、原料充填層内の原料粒度は、予熱装置に投入前の粒度よりも、投入後の粒度の方が小径側にずれるという傾向があるが、原料粒度が小径側にずれると、原料充填層を通過する熱ガスの圧力損失が増加するという問題が発生する。また、予熱装置内において、原料粒度が局所的に小径側にずれて小粒物の偏積が起こると熱ガスの偏流を助長して原料の予熱の度合いが不均一になる傾向があるなど、予熱装置の予熱機能を低下させてしまう問題が発生する可能性がある。
【0008】
この発明は、上述した従来技術による問題点を解消するため、原料充填層内に滞留する小粒原料や粉状原料の割合を少なくすることによって、熱ガスの圧力損失が過度に増加することを防止するとともに、熱ガスの偏流を防止して原料充填層下端の排出部の原料の予熱度合いを均一にすることができる予熱機を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上述した課題を解決し、目的を達成するため、本発明に係る予熱機は、ケーシング内に粒状物原料を充填して前記粒状物原料の充填層を形成し、前記ケーシングの熱ガス入口部から前記ケーシング内に導入され前記充填層を下方から上方へと移動し前記ケーシングの上端の熱ガス出口部から排出される熱ガスによって前記粒状物原料を加熱する予熱機であって、前記熱ガス入口部から熱ガス出口部の間の前記充填層内に連通し、前記充填層内から前記粒状物原料の粒子間に存在する小粒状物および粉状物を前記熱ガスとともに抽出する抽気部を設けたことを特徴とする。
【0010】
本発明に係る予熱機は、上記のように構成したことにより、原料充填層内に滞留する小粒原料や粉状原料の割合を少なくし、熱ガスの圧力損失が過度に増加することを防止することができるとともに、熱ガスの偏流を防止して原料充填層下端の排出部の原料の予熱度合いを均一にすることができる。
【0011】
また、例えば前記原料層内に少なくとも一部が埋没する構造物を設け、前記構造物の下方の自由息角面により形成される空間部に前記抽気部を配してもよい。
【0012】
さらに、例えば前記構造物の下方の自由息角面よりも下方に気体を供給する給気管を設け、前記給気管から前記気体を前記原料充填層内に供給可能に構成してもよい。
【0013】
また、例えば前記構造物の下方の自由息角面よりも上方に気体を供給する給気管を設け、前記給気管から分岐する複数の枝管をその先端が前記原料充填層内に埋没するように設置して、前記給気管から前記気体を前記原料充填層内に供給可能に構成してもよい。
【0014】
また、例えば前記給気管を前記自由息角面により形成される空間部を形成可能な形状としてもよい。
【0015】
なお、前記構造物は、例えばブリッジ状またはフード状の形状からなる。
【発明の効果】
【0016】
本発明に係る予熱機によれば、原料充填層内に滞留する小粒原料や粉状原料の割合を少なくし、熱ガスの圧力損失が過度に増加することを防止することができるとともに、熱ガスの偏流を防止して原料充填層下端の排出部の原料の予熱度合いを均一にすることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
以下に、添付の図面を参照して、この発明に係る予熱機の好適な実施の形態を詳細に説明する。
【0018】
図1は、本発明の第1の実施形態に係る予熱機の一部を示す縦断面図である。また、図2は、図1のA−A’断面を簡易的に説明するための説明図である。
【0019】
図1および図2に示すように、第1の実施形態に係る予熱機100は、図中一点鎖線を中心軸とする筒状のケーシング1と、このケーシング1と同軸配置されて環状の原料通路3を形成する内筒1aと、エアシール機構などを経由した粒状物原料(以下、「原料」と略記する。)が図中実線矢印D方向に投入される原料投入部2と、この原料投入部2から続く原料通路3の周方向の複数箇所における原料充填層4の上方に設けられたブリッジ状の構造物5とを備える。
【0020】
また、予熱機100は、ケーシング1の下端側に、図示しないバーナなどで加熱された図1中実線矢印Gで示す熱ガスが原料充填層4内に導入される熱ガス入口部6を備えるとともに、ケーシング1の上端側に、この熱ガス入口部6から原料充填層4内に導入された熱ガスが外部に排出される熱ガス出口部7を備える。
【0021】
また、予熱機100は、熱ガス入口部6と熱ガス出口部7の間であって、原料充填層4内における構造物5の近傍に、原料充填層4内から原料の粒子間に存在する小粒物および粉状物を熱ガス入口部6から導入された熱ガスとともに外部に抽出する抽気部としての抽気管8と、ケーシング1の下端側に、加熱され図中実線矢印F方向に降下した原料を排出するプッシャ式などの原料排出機9とを備える。なお、抽気管8は、風量調整弁10に接続され、原料充填層4内の熱ガスの一部はこの風量調整弁10を経由して熱ガス出口部7から排出される熱ガスと合流する。
【0022】
なお、原料の加熱に関する技術は公知のものであるため、ここでは説明を省略するが、このように構成された予熱機100では、抽気管8を原料充填層4内に設け、熱ガスの一部を熱ガス入口部6と熱ガス出口部7の間で抽気するようにしたため、原料充填層4内を滞留する原料よりも小径な小粒原料(小粒物)や粉状原料(粉状物)の原料充填層4内での割合を少なくし、熱ガスの圧力損失が過度に増加することを防止することができる。また、熱ガスの偏流を防止して原料充填層4の下端における原料排出機9での原料の予熱度合いを均一にすることが可能となる。この場合、例えば構造物5は設けられていなくてもよい。
【0023】
しかし、上記のように構造物5を設けることによって、上記の効果をより顕著なものにすることができるようになる。すなわち、原料充填層4内に少なくとも一部が埋没するように構造物5を設置し、その構造物5の下方に自由息角面5aにより形成される空間Sから熱ガスの一部を風量調節弁10を具備した抽気管8を経由して抽気し、原料充填層4内の粒子間に存在する小粒物および粉状物を抜き出すことで、熱ガスの圧力損失の増加や偏流を防止することができる。この効果についての詳細は後述する。
【0024】
なお、図2に示すように、構造物5は、例えば耐火煉瓦により構成され、円周方向に所定の幅を有し、その断面形状は頂部が尖って上部に二等辺三角形の斜面に相当する面が形成されている。また、構造物5の下部には凹み部5bが形成されている。そして、自由息角面5aと構造物5の下部との間に空間Sが形成されている。また、熱ガス入口部6の近傍には、熱ガス入口部6の下方から落下する原料の動きと熱ガスの動きを規制するための原料規制構造物11が設けられている。
【0025】
なお、前述の実施形態においては、構造物5を耐火煉瓦で構成したが、構造物5を構成する材質がこれに限るものでないことは勿論であって、温度条件や強度等、予熱機100内での使用条件を満足させるものであれば、金属やセラミック等、その他の材質で構成してもよい。
【0026】
また、前述の実施形態においては、構造物5の好ましい形態の一例として、上方から流れてくる原料の流れを阻害しないように、構造物5の上部に二等辺三角形の斜面に相当する面を形成した。しかし、構造物5の上部の形状はこれに限るものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で、例えば上部の断面形状が円弧状、流線型、矩形、あるいはその他の形状であってもよい。
【0027】
さらに、前述の実施形態においては、構造物5の好ましい一例として、構造物5の下を流れるガスの流路面積を大きくするため、下部の形状に凹み部5bを形成した。特に、構造物5を耐火煉瓦で構成しようとした場合には、図3に示すように、複数個の耐火煉瓦ブロック5cをアーチ型に組んでブリッジ状に構成した構造物5としなければならないことがあるが、そのような場合には部分的にガス流路が狭くなる可能性があるため、凹み部5bを形成してガス流路を大きくする上記構造の効果は大きいといえる。
【0028】
しかし、本発明においては、構造物5の下部の形状はこれに限るものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で、例えば凹み部5bを設けずに平坦な形状としてもよく、円弧状に湾曲させた形状としてもよく、あるいはその他の形状であってもよい。
【0029】
図4は、本発明の第2の実施形態に係る予熱機の一部を示す縦断面図である。また、図5は、図4のB−B’断面を簡易的に説明するための説明図である。なお、以降において、既に説明した部分と重複する箇所には同一の符号を付して説明を省略し、本発明に特に関係しない部分については明記しないことがあるとする。
【0030】
図4および図5に示すように、第2の実施形態に係る予熱機101は、熱ガス入口部6cが内筒1aの中間部(すなわち、原料充填層4の中間部)に設けられ、この熱ガス入口部6cの上方に構造物5と同様の形状の熱ガス入口部構造物6aが設けられている点が、先の第1の実施形態に係る予熱機100と相違している。
【0031】
すなわち、第1の実施形態に係る予熱機100では、原料加熱用の熱ガスがケーシング1の下端側に設けられた熱ガス入口部6から原料充填層4内に導入されたが、第2の実施形態に係る予熱機101は、ケーシング1の中間部に設けられた熱ガス入口部6cから熱ガスが導入され、熱ガス入口部構造物6aの下方の安息角面6bで形成された空間Saに熱ガスが一旦導入された上で、さらに原料充填層4内に熱ガスが分散導入されて原料を加熱するものである。
【0032】
この第2の実施形態に係る予熱機101においても、原料充填層4内を滞留する小粒物や粉状物の原料充填層4内での割合を少なくし、熱ガスの圧力損失が過度に増加することを防止することができるとともに、熱ガスの偏流を防止して原料充填層4の下端における原料排出機9での原料の予熱度合いを均一にすることができる。
【0033】
ここで、上記第1および第2の実施形態のいずれの場合も、予熱機100,101の原料充填層4を通過する熱ガスの温度は導入時点で最も高く、原料充填層4内を上昇するにしたがい、その熱が原料の加熱により消費されるため、熱ガスの温度は降下する。すなわち、例えば第1の実施形態に係る予熱機100において構造物5を具備しない場合は、原料規制構造物11を通過後、熱ガスが通過する空塔断面積は変化しないにもかかわらず、実質的ガス流速は次のように低下する。
【0034】
【数1】
【0035】
【数2】
【0036】
ここで、予熱機100,101を例に挙げて式1および式2を用いて、その一例を計算する。
入口ガス温度:1100℃
排ガス温度:300℃
入口ガス圧力:−20mmAq
排ガス圧力:−500mmAq
【0037】
これらを式1にそれぞれ代入すると、
入口:Vti=Vo×{(273+1100)/273}×{10330/(10330−20)}=5.039Vo
出口:Vto=Vo×{(273+300)/273}×{10330/(10330−500)}=2.227Vo
【0038】
したがって、式2より、空塔断面積が変化しない場合には出口ガス速度/入口ガス速度=2.227/5.039=0.442であり、ガス流速は44.2%に低下する。
【0039】
一方、原料の球状の粒子1個がガス中にある場合、ガス速度と粒子径の関係は次のように表される。
【0040】
【数3】
【0041】
上記の詳細な計算は省略するが、取り扱う原料の性状、加熱用の熱ガスの性状により前記の数字は異なり、例えばDpo/Dpi=0.3〜0.5の範囲にある予熱機100,101において、熱ガス入口部6,6cでは粒子径Dpiの原料が熱ガスにより上方に向かい搬送され得るが、真新しい原料充填層4の上端部ではDpiの30〜50%の径の粒子しか搬送されないこととなる。
【0042】
したがって、熱ガス入口部6,6cで上方に向かい原料充填層4の粒子間空間を搬送された原料粒子は、途中で搬送が中止され、他の原料に随伴して原料充填層4を下降するが、下降した量に相当する量が新たに搬送されてきて補充されるという現象を繰り返し、最終的には上述したように新しく投入される原料の粒度に比べ、小粒径側が増加した粒度を示すようになる。
【0043】
原料充填層4を形成する原料の粒子間に比較的小さい粒子径の原料が存在することによって空隙率を低下させ、熱ガスの圧力損失を増大させる結果となる。したがって、第1および第2の実施形態の予熱機100,101の構造物5を原料充填層4の途中(中間部)または上端近傍に設置し、構造物5の直下に空間Sを形成し、熱ガスの一部をこの空間Sを経由して抽気管8により予熱機100,101外に取り出せるようにすることによって、原料充填層4内を上昇してくる熱ガスを構造物5の下方の空間Sに集めることが可能となる。
【0044】
そして、このように熱ガスを集中させることにより、構造物5がない場合に比べて、構造物5の下方の原料充填層4内の実質上のガス流速は増加する。こうしてガス流速が増加することにより、構造物5の下方の空間S近傍の原料充填層4内に存在する小粒物または粉状物を構造物5の下方の空間S内に抜き出すことが可能となる。また、この空間Sの寸法を最適化することにより、熱ガス中に浮遊している原料を熱ガスに同伴させてスムーズに予熱機100,101外に搬出することが可能である。
【0045】
さらに、この空間Sに引き込まれず、そのまま原料充填層4内を上昇する熱ガスの量は、この空間Sから抜き出すガス量を風量調整弁10によって最適化することにより、ガス流速を低下させることが可能になるため、原料充填層4の上端に到達する小粒原料の径はさらに小さくなるとともに、その量も低減され、新しく投入される原料に随伴して降下し易くなる。こうして降下した小粒物や粉状物の一部は、構造物5の下方の空間Sに熱ガスによって移動し、予熱機100,101外に搬出される。
【0046】
このようにして、原料粒子間に滞留する小粒物や粉状物の予熱機100,101外への搬出量が多くなる結果として、粒子間空間の空隙が確保され圧力損失の経時的上昇が防止されるとともに、熱ガスの偏流を防止する効果があるため、原料排出機9における横断面での原料の加熱度をより均一にすることができる。
【0047】
なお、第2の実施形態に係る予熱機101のように、原料充填層4の中間部から熱ガスを導入する方式の場合には、次の機能も付帯される。すなわち、図4に示すように、熱ガスは、熱ガス入口部6cから熱ガス入口部構造物6aの下方の空間Saに向かい流れる間に、原料通路3を横切るように流れる。また、熱ガス入口部構造物6aの下方の空間Saから構造物5の下方の空間Sへの熱ガスの流れは、構造物5の横断面方向で均一になり易く、これにより圧力損失低減効果があるばかりでなく、原料の予熱度合いを横断面上でより均一にすることができる。
【0048】
また、熱ガス入口部構造物6a周辺の原料の流れが促進化され、構造物5の上方の小粒物や粉状物の原料同伴による降下を促進できるため、小粒物や粉状物の滞留がより減少する効果を有する。
【0049】
図6は、本発明の第3の実施形態に係る予熱機の一部を示す縦断面図である。また、図7は、図6のC−C’断面を簡易的に説明するための説明図である。図6および図7に示すように、第3の実施形態に係る予熱機102は、原料充填層4の上方に構造物5を設け、この構造物5の下方の空間Sのさらに下方の原料充填層4にガスを供給するガス体供給管12を設けた点が第1の実施形態に係る予熱機100と相違している。
【0050】
この予熱機102では、ガス供給ファン13によって、熱ガス入口部6から導入される熱ガスとは別のガス体をガス体供給管12を介して原料充填層4内に噴出させ、熱ガス入口部6から導入されて上昇してくる熱ガスと合流させて小粒物や粉状物の分離作用を強化したものである。
【0051】
なお、ガス体供給管12を介して原料充填層4内に供給するガスは、常温空気でもその効果はあるが、構造物5の下の空間Sから抜き出す熱ガスの温度より高い温度のガスの方が予熱機102の機能目的上好ましい。またガスの供給は実際の状況に応じ、連続または断続的に実施される。このガス体供給管12を設ける構成は、第2の実施形態に係る予熱機101にも適用することができる。
【0052】
図8は、このガス体供給管12の別の設置例を示す説明図である。図8に示すように、ガス体供給管12は、例えば構造物5の下方に形成される自由息角面5aよりも上方に設置され、このガス体供給管12から分岐する複数の枝管12aを構造物5の下方の空間Sのさらに下方の原料充填層4内に差し込むようにして構成される。このようにして別のガス体を原料充填層4に供給しても、同様の効果を得ることができる。
【0053】
図9は、このガス体供給管12のさらに別の設置例を示す説明図である。図9に示すように、ガス体供給管12は、例えば構造物5と一体的に構成され、この構造物5の下方の原料充填層4に枝管12aの一部が埋没するように設置されている。このようにして別のガス体を原料充填層に供給しても、同様の効果を得ることができる。また、構造物5を例えば金属で構成した場合には、図10および図11に示すように、構造物5の内側の空間部分をガス体供給管12として利用してガスを供給する構成としてもよい。
【0054】
なお、上述したガス体供給管12は、構造物5の自由息角面5aにより形成される空間Sを形成可能な形状で構成されており、枝管12aとともに、ガスを噴出可能な複数のノズル(図示せず)を備えていてもよく、少なくとも1つ配置されればよい。
【0055】
図12は、本発明の第4の実施形態に係る予熱機の一部を示す縦断面図である。また、図13は、図12のD−D’断面を簡易的に説明するための説明図である。図12および図13に示すように、第4の実施形態に係る予熱機103は、原料充填層4の上方に設けられた構造物50の構成が異なっている点が、第1の実施形態に係る予熱機100と相違している。
【0056】
すなわち、第4の実施形態に係る予熱機103の構造物50は、上述した構造物5のようなブリッジ状の形状ではなく、フード状(円筒状)の形状を有している。そして、下方には金網51が取り付けられており、この金網51の下方に空間Sが形成される構造を備えている。その他の作用や効果は、第1の実施形態に係る予熱機100と同様である。なお、第4の実施形態においては、好ましい一例として、フード状の構造物5の下部に金網51を配して抽気する原料の粒径を調整できる構成とした。しかし、抽気する原料の粒径を金網51で調整する必要がなければ、金網51を使用しなくてもよい。
【0057】
以上述べたように、上述した第1〜第4の実施形態に係る予熱機100〜103によれば、原料の予熱性能の向上や、省エネルギーの達成とともに、同一規模の予熱機に適用した場合には処理能力を向上させることができるようになるとともに、平均粒度のより小さい原料の処理を行うことができるようになる。また、原料を加熱することによって、粉状物や小粒物が増加する特性を有する原料の処理が可能となるとともに、予熱機100〜103の熱源としてダストなどを多く含む熱ガスを利用することが可能になる。
【産業上の利用可能性】
【0058】
以上のように、本発明に係る予熱機は、粒状物原料の加熱に有用であり、特に、窯業分野などに適している。
【図面の簡単な説明】
【0059】
【図1】本発明の第1の実施形態に係る予熱機の一部を示す縦断面図である。
【図2】図1のA−A’断面を簡易的に説明するための説明図である。
【図3】本発明の第1の実施形態に係る予熱機の構造物の他の構成を説明するための縦断面図である。
【図4】本発明の第2の実施形態に係る予熱機の一部を示す縦断面図である。
【図5】図4のB−B’断面を簡易的に説明するための説明図である。
【図6】本発明の第3の実施形態に係る予熱機の一部を示す縦断面図である。
【図7】図6のC−C’断面を簡易的に説明するための説明図である。
【図8】ガス体供給管の別の設置例を示す説明図である。
【図9】ガス体供給管のさらに別の設置例を示す説明図である。
【図10】ガス体供給管の別の構成を示す説明図である。
【図11】ガス体供給管のさらに別の構成を示す説明図である。
【図12】本発明の第4の実施形態に係る予熱機の一部を示す縦断面図である。
【図13】図12のD−D’断面を簡易的に説明するための説明図である。
【符号の説明】
【0060】
1 ケーシング
2 原料投入部
3 原料通路
4 原料充填層
5 構造物
5a 自由息角面
5b 凹み部
6 熱ガス入口部
6a 熱ガス入口構造物
6b 安息角面
6c 熱ガス入口部
7 熱ガス出口部
8 抽気管
9 原料排出機
10 風量調整弁
11 原料規制構造物
12 ガス体供給管
12a 枝管
100 予熱機
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ケーシング内に粒状物原料を充填して前記粒状物原料の充填層を形成し、前記ケーシングの熱ガス入口部から前記ケーシング内に導入され前記充填層を下方から上方へと移動し前記ケーシングの上端の熱ガス出口部から排出される熱ガスによって前記粒状物原料を加熱する予熱機であって、
前記熱ガス入口部から熱ガス出口部の間の前記充填層内に連通し、前記充填層内から前記粒状物原料の粒子間に存在する小粒状物および粉状物を前記熱ガスとともに抽出する抽気部を設けた
ことを特徴とする予熱機。
【請求項2】
前記原料充填層内に少なくとも一部が埋没する構造物を設け、前記構造物の下方の自由息角面により形成される空間部に前記抽気部を配したことを特徴とする請求項1記載の予熱機。
【請求項3】
前記構造物の下方の自由息角面よりも下方に気体を供給する給気管を設け、前記給気管から前記気体を前記原料充填層内に供給可能に構成したことを特徴とする請求項1または2記載の予熱機。
【請求項4】
前記構造物の下方の自由息角面よりも上方に気体を供給する給気管を設け、前記給気管から分岐する複数の枝管をその先端が前記原料充填層内に埋没するように設置して、前記給気管から前記気体を前記原料充填層内に供給可能に構成したことを特徴とする請求項1または2記載の予熱機。
【請求項5】
前記給気管を前記自由息角面により形成される空間部を形成可能な形状としたことを特徴とする請求項4記載の予熱機。
【請求項6】
前記構造物は、ブリッジ状またはフード状の形状からなることを特徴とする請求項2〜5のいずれか1項記載の予熱機。
【請求項1】
ケーシング内に粒状物原料を充填して前記粒状物原料の充填層を形成し、前記ケーシングの熱ガス入口部から前記ケーシング内に導入され前記充填層を下方から上方へと移動し前記ケーシングの上端の熱ガス出口部から排出される熱ガスによって前記粒状物原料を加熱する予熱機であって、
前記熱ガス入口部から熱ガス出口部の間の前記充填層内に連通し、前記充填層内から前記粒状物原料の粒子間に存在する小粒状物および粉状物を前記熱ガスとともに抽出する抽気部を設けた
ことを特徴とする予熱機。
【請求項2】
前記原料充填層内に少なくとも一部が埋没する構造物を設け、前記構造物の下方の自由息角面により形成される空間部に前記抽気部を配したことを特徴とする請求項1記載の予熱機。
【請求項3】
前記構造物の下方の自由息角面よりも下方に気体を供給する給気管を設け、前記給気管から前記気体を前記原料充填層内に供給可能に構成したことを特徴とする請求項1または2記載の予熱機。
【請求項4】
前記構造物の下方の自由息角面よりも上方に気体を供給する給気管を設け、前記給気管から分岐する複数の枝管をその先端が前記原料充填層内に埋没するように設置して、前記給気管から前記気体を前記原料充填層内に供給可能に構成したことを特徴とする請求項1または2記載の予熱機。
【請求項5】
前記給気管を前記自由息角面により形成される空間部を形成可能な形状としたことを特徴とする請求項4記載の予熱機。
【請求項6】
前記構造物は、ブリッジ状またはフード状の形状からなることを特徴とする請求項2〜5のいずれか1項記載の予熱機。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【公開番号】特開2010−7967(P2010−7967A)
【公開日】平成22年1月14日(2010.1.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−168249(P2008−168249)
【出願日】平成20年6月27日(2008.6.27)
【出願人】(300041192)宇部興産機械株式会社 (268)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成22年1月14日(2010.1.14)
【国際特許分類】
【出願日】平成20年6月27日(2008.6.27)
【出願人】(300041192)宇部興産機械株式会社 (268)
【Fターム(参考)】
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