説明

事故点標定装置

【課題】特殊な測定装置や継電器を用いることなく、事故点の標定が可能な事故点標定装置を提供する。
【解決手段】事故点標定装置は、第1または第2遮断器が遮断されたときの第1時刻が第1監視装置に記憶され、第1監視装置に記憶された第1時刻を取得する第1取得部と、第3または第4遮断器が遮断されたときの第2時刻が第2監視装置に記憶され、第2監視装置に記憶された第2時刻を取得する第2取得部と、第1及び第2時刻に基づいて、第1または第2事故が発生した事故点を標定する標定部と、を含む。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、事故点標定装置に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、電気所の送電線で発生した事故の事故点を標定する装置であるフォルトロケータが開示されている。また、特許文献2には、フォルトロケータ等の装置を用いずに事故点を標定する技術が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平10−54863号公報
【特許文献2】特開2006−126038号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、一般的にフォルトロケータ等の測定装置は高価であるため、電気所の全ての送電線にフォルトロケータ等の測定装置を設けることは難しい。また、特許文献2に開示された技術では、例えば、限時特性型不足電圧継電器が用いられているが、限時特性型不足電圧継電器が設けられていない電気所では、特許文献2に開示された技術を用いて事故点を標定することはできない。
【0005】
本発明は上記課題を鑑みてなされたものであり、特殊な測定装置や継電器を用いることなく、事故点の標定が可能な事故点標定装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するため、本発明の一つの側面に係る、第1及び第2母線の間に設けられた第1及び第2送電線と、前記第1母線から前記第1送電線に流れる電流と前記第1母線から前記第2送電線に流れる電流とに基づいて、前記第1送電線に短絡または地絡の第1事故が発生した際に、前記第1母線及び前記第1送電線の間に設けられた第1遮断器を遮断し、前記第2送電線に短絡または地絡の第2事故が発生した際に、前記第1母線及び前記第2送電線の間に設けられた第2遮断器を遮断する第1継電器と、前記第2母線から前記第1送電線に流れる電流と前記第2母線から前記第2送電線に流れる電流に基づいて、前記第1送電線に前記第1事故が発生した際に、前記第2母線及び前記第1送電線の間に設けられた第3遮断器を遮断し、前記第2送電線に前記第2事故が発生した際に、前記第2母線及び前記第2送電線の間に設けられた第4遮断器を遮断する第2継電器と、時刻を計時する第1計時装置を含み、前記第1及び第2遮断器の状態を監視して、前記第1及び第2遮断器の状態が変化したときの前記第1計時装置が計時する時刻を記憶する第1監視装置と、時刻を計時する第2計時装置を含み、前記第3及び第4遮断器の状態を監視して、前記第3及び第4遮断器の状態の変化したときの前記第2計時装置が計時する時刻を記憶する第2監視装置と、を備える電気所における事故点標定装置は、前記第1または第2遮断器が遮断されたときの第1時刻が前記第1監視装置に記憶され、前記第1監視装置に記憶された前記第1時刻を取得する第1取得部と、前記第3または第4遮断器が遮断されたときの第2時刻が前記第2監視装置に記憶され、前記第2監視装置に記憶された前記第2時刻を取得する第2取得部と、前記第1及び第2時刻に基づいて、前記第1または第2事故が発生した事故点を標定する標定部と、を含む。
【発明の効果】
【0007】
特殊な測定装置や継電器を用いることなく、事故点の標定が可能な事故点標定装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【図1】本発明の一実施形態である事故点標定装置80が用いられた電力系統10を示した図である。
【図2】テレコン70の構成を示す図である。
【図3】送電線30,31における事故点の発生区間を説明するための図である。
【図4】送電線30の区間Xで事故が発生した際の遮断器40,42の状態の変化を説明するための図である。
【図5】送電線30の区間Zで事故が発生した際の遮断器40,42の状態の変化を説明するための図である。
【図6】送電線30の区間Yで事故が発生した際の遮断器40,42の状態の変化を説明するための図である。
【図7】事故点標定装置80の構成を示す図である。
【図8】計時装置91と計時装置96の時刻が同期していない場合の補正時間を説明するための図である。
【図9】マイコン101が実行する処理の一例を示すフローチャートである。
【図10】補正部112が実行する処理の一例を示すフローチャートである。
【図11】範囲Xで事故が発生した際のSOEデータの一例である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
本明細書および添付図面の記載により、少なくとも以下の事項が明らかとなる。
【0010】
図1は、本発明の一実施形態である事故点標定装置80が設けられた電力系統10の構成例を示す図である。
電力系統10には、電気所A,B、中継所C、制御所D、及び送電線30,31が設けられている。なお、送電線30,31は、電気所Aと電気所Bとの間を接続するいわゆる平行2回線送電線である。
【0011】
電気所Aには、母線20、遮断器(CB:Circuit Breaker)40,41、変流器50,51、母線側計器用変圧器(VT:Voltage Transformer)55、回線選択継電器60、母線側不足電圧継電器65、テレコン70、線路側計器用変圧器120,121、線路側不足電圧継電器130,131、及び自動復旧装置(ARE:Automatic Restoration Equipment)140,141が設けられている。
【0012】
母線20(第1母線)と送電線30(第1送電線)との間には遮断器40(第1遮断器)が設けられている。また、母線20と送電線31(第2送電線)との間には遮断器41(第2遮断器)が設けられている。なお、母線20から遮断器40,41までの距離は、送電線30,31の長さと比べると十分短いこととする。
【0013】
遮断器40,41は、例えば回線選択継電器60からの指示に基づいて遮断され、自動復旧装置140,141、またはテレコン70からの指示に基づいて投入される。
【0014】
変流器50は、母線20から送電線30に流れる電流を測定し、変流器51は、母線20から送電線31に流れる電流を測定する。母線側計器用変圧器55は、母線20の電圧を所定の比率で降圧する変圧器である。また、線路側計器用変圧器120,121の夫々は、送電線30,31の電圧を所定の比率で降圧する変圧器である。
【0015】
回線選択継電器60(第1継電器)は、変流器50,51の測定結果に基づいて、送電線30または送電線31に事故(地絡、または短絡)が発生したことを検出し、事故を除去すべく遮断器40、または遮断器41を遮断する。
【0016】
母線側不足電圧継電器65は、母線側計器用変圧器55で降圧された電圧が所定値以下であるか否かを検出する。また、線路側不足電圧継電器130(第3継電器)は、線路側計器用変圧器120で降圧された電圧が所定値以下であるか否かを検出し、線路側不足電圧継電器131は、線路側計器用変圧器121で降圧された電圧が所定値以下であるか否かを検出する。
【0017】
自動復旧装置140は、事故で遮断された遮断器40を一定時間経過後に投入し、自動復旧装置141は、事故で遮断された遮断器41を一定時間経過後に投入する。
【0018】
テレコン70(第1監視装置)は、電気所Aに設けられた遮断器40,41や回線選択継電器60、母線側不足電圧継電器65、線路側不足電圧継電器130,131の状態を監視するとともに、前述の各種機器を制御するいわゆる遠隔監視制御装置である。テレコン70は、図2に示すように、IF(Interface)装置90、計時装置91、記憶装置92、及び監視制御装置93を含んで構成される。
【0019】
IF装置90は、例えば、遮断器40等の機器を制御するため制御データや、遮断器40等の機器の状態が変化した際のいわゆるイベント情報を示すSOEデータ(SOE:Sequence of Events)を情報集配信装置(DX:Data Exchanger)75とやりとりする。なお、詳細は後述するが、SOEデータには、機器の状態が変化した際の“時刻”、“状態が変化した機器”、“動作状態”等の情報が含まれる。
【0020】
計時装置91(第1計時装置)は、時刻を計時し、記憶装置92は、SOEデータ等の各種データを記憶する。
【0021】
監視制御装置93は、遮断器40等の機器の状態を監視し、機器の状態が変化すると、機器の状態が変化したときの計時装置91の時刻を取得してSOEデータを生成し、記憶装置92に記憶する。また、監視制御装置93は、制御データに基づいて遮断器40等を制御する。
【0022】
電気所Bには、母線21、遮断器42,43、変流器52,53、母線側計器用変圧器56、回線選択継電器61、母線側不足電圧継電器66、テレコン71、線路側計器用変圧器122,123、線路側不足電圧継電器132,133、及び自動復旧装置142,143が設けられている。
【0023】
母線21(第2母線)と送電線30との間には遮断器42(第3遮断器)が設けられ、母線21と送電線31との間には遮断器43(第4遮断器)が設けられている。なお、母線21から遮断器42,43までの距離は、送電線30,31の長さと比べると十分短いこととする。
【0024】
遮断器42,43は、例えば回線選択継電器61からの指示に基づいて遮断され、自動復旧装置142,143、またはテレコン71からの指示に基づいて投入される。
【0025】
変流器52は、母線21から送電線30に流れる電流を測定し、変流器53は、母線21から送電線31に流れる電流を測定する。母線側計器用変圧器56は、母線21の電圧を所定の比率で降圧する変圧器である。また、線路側計器用変圧器122,123の夫々は、送電線30,31の電圧を所定の比率で降圧する変圧器である。
【0026】
回線選択継電器61(第2継電器)は、変流器52,53の測定結果に基づいて、送電線30または送電線31に事故(地絡、または短絡)が発生したことを検出し、事故を除去すべく遮断器42、または遮断器43を遮断する。
【0027】
母線側不足電圧継電器66は、母線側計器用変圧器56で降圧された電圧が所定値以下であるか否かを検出する。また、線路側不足電圧継電器132(第4継電器)は、線路側計器用変圧器122で降圧された電圧が所定値以下であるか否かを検出し、線路側不足電圧継電器133は、線路側計器用変圧器123で降圧された電圧が所定値以下であるか否かを検出する。
【0028】
自動復旧装置142は、事故で遮断された遮断器42を一定時間経過後に投入し、自動復旧装置143は、事故で遮断された遮断器43を一定時間経過後に投入する。
【0029】
テレコン71(第2監視装置)は、電気所Bに設けられた遮断器42,43や回線選択継電器61、母線側不足電圧継電器66、線路側不足電圧継電器132,133の状態を監視するとともに、前述の各種機器を制御するいわゆる遠隔監視制御装置である。テレコン71は、図2の括弧で括られた符号に示すように、IF装置95、計時装置96(第2計時装置)、記憶装置97、及び監視制御装置98を含んで構成される。なお、テレコン装置71は、電気所Bに設けられた各種機器を監視、制御する以外は、テレコン装置70と同様であるため、詳細な説明は省略する。
【0030】
中継所Cには、テレコン70,71の親局に相当する情報集配信装置75が設けられている。情報集配信装置75は、制御所Dからの指示に基づいて、子局に相当するテレコン70,71の夫々のSOEデータを取得して制御所Dに送信する。また、情報集配信装置75は、制御所Dからの制御データを、テレコン70,71に送信する。さらに、情報集配信装置75は、例えば所定時間毎に、テレコン70の計時装置91の時刻と、テレコン71の計時装置96の時刻とを、情報集配信装置75に含まれる計時装置(不図示)の時刻に同期させる。
【0031】
制御所Dには、オペレータからの指示に基づいて、例えば電気所A,Bに設置された遮断器40〜43等の開閉を制御する制御装置76が設けられている。また、制御装置76は、情報集配信装置75からSOEデータを取得し、表示装置(不図示)に遮断器40等の各種機器の状態を示す系統情報を表示する。また、制御装置76には、送電線30,31に事故が発生した後に、SOEデータに基づいて事故点を標定する事故点標定装置80が含まれている。なお、事故点標定装置80の詳細については後述する。
【0032】
==事故点と回線選択継電器60,61の動作==
ここで、図3〜図6を参照しつつ、例えば送電線30に事故が発生した際の回線選択継電器60,61の動作について説明する。なお、送電線30,31の長さは、例えばともにLであることとする。また、図3において、例えば、母線20から遮断器40及び送電線30が接続されたノードまでの距離や母線21から遮断器42及び送電線30が接続されたノードまでの距離は、送電線30の長さと比べ無視できる程度短いこととする。このため、図3において図示した区間Xは、母線20から長さLの例えば15%以内の区間であり、区間Zは、母線21から長さLの例えば15%以内の区間である。また、区間Yは、母線20から長さLの15%の区間と、母線21から長さLの15%の区間を除いた送電線30,31の中間の区間である。このため、区間Yの距離は、長さLの例えば70%となる。
【0033】
まず、送電線30の区間Xで地絡事故が発生すると、母線20から送電線30を介して事故点に流れる電流が急増する。一方、送電線31を介して事故点に流れる電流は小さい。このような場合、回線選択継電器60は、図4に示すように、遮断器40を先ず遮断する。そして、遮断器40が遮断されると、母線20、送電線31、母線21、送電線30を経由して事故点へ大きな電流が流れる。このため、回線選択継電器61は遮断器42を遮断する。つまり、遮断器40が遮断された後に遮断器42が遮断されるいわゆる直列遮断が行われる。なお、遮断器40が遮断されてから遮断器42が遮断されるまでの時間は、例えば回線選択継電器62や遮断器42等の動作に基づいて定まる所定時間αである。
【0034】
つぎに、送電線30の区間Zで地絡事故が発生すると、図5に示すように、区間Xの場合とは逆に、まず回線選択継電器61は遮断器42を遮断する。そして、遮断器42が遮断されてから所定時間α経過すると、回線選択継電器60は、遮断器40を遮断する。
【0035】
また、送電線30の区間Yで地絡事故が発生すると、図6に示すように、回線選択継電器60,61は、遮断器40,42をほぼ同時に遮断する。
【0036】
なお、ここでは、送電線30の地絡事故について説明したが、例えば短絡事故でも同様である。また、送電線31に事故(地絡、または短絡)が発生した際も同様である。このように、平行2回線送電線に発生する事故を回線選択継電器60,61で検出する場合、事故の発生区間によって、遮断器40〜43が遮断される順序が変化する。
【0037】
==事故点標定装置80の詳細==
ここで、図7を参照しつつ、事故点標定装置80の詳細について説明する。事故点標定装置80は、SOEデータに基づいて、事故点を標定する装置であり、記憶装置100、及びマイコン101を含んで構成される。
【0038】
記憶装置100は、テレコン70の計時装置91の時刻と、テレコン71の計時装置96の時刻との同期がとれているか否かを示す同期データ、マイコン101が実行するプログラム、SOEデータ等を記憶する。なお、本実施形態では、例えば、計時装置91の時刻と計時装置96の時刻との誤差が所定時間αより十分短い場合には、同期がとれていることを示す同期データ(同期有り)が記憶装置100に記憶される。一方、前述の誤差が所定時間αと比較して無視できない程度である場合、同期がとれていないことを示す同期データ(同期無し)が記憶装置100に記憶される。
【0039】
マイコン101は、記憶装置100に記憶されるプログラムを実行することにより、取得部110、算出部111、補正部112、及び標定部113を実現する。
【0040】
取得部110は、事故点の標定を開始するための指示が入力されると、テレコン70,71に記憶されたSOEデータを取得する。そして、取得部110は、同期データが“同期有り”の場合、取得したSOEデータから“事故除去時”に遮断器40または遮断器41が遮断されたときの時刻T1(第1時刻)と、遮断器42または遮断器43が遮断されたときの時刻T2(第2時刻)とを取得する。
【0041】
一方、同期データが“同期無し”の場合、取得部110は、前述の時刻T1,T2に加え、事故後に遮断された遮断器40または遮断器41が投入され、線路側不足電圧継電器130、または線路側不足電圧継電器131が復帰したときの時刻T3(第3時刻)を取得する。なお、例えば線路側不足電圧継電器130が復帰したときの時刻とは、線路側計器用変圧器120からの電圧が所定値より高くなったときの時刻である。さらに、取得部110は、事故後に遮断された遮断器40または遮断器41が投入され、線路側不足電圧継電器132、または線路側不足電圧継電器133が復帰したときの時刻T4(第4時刻)を取得する。なお、例えば、事故後に、遮断器40が投入されたときの線路側不足電圧継電器130が復帰するタイミングと、線路側不足電圧継電器132が復帰するタイミングはほぼ同時となる。同様に、遮断器41が投入されたときの線路側不足電圧継電器131が復帰するタイミングと、線路側不足電圧継電器133が復帰するタイミングはほぼ同時となる。このため、例えば、時刻T3,T4を比較することにより、計時装置91の時刻と計時装置96の時刻とのずれを把握することが可能となる。例えば、テレコン70の計時装置91の時刻が、テレコン71の計時装置96の時刻に対して遅れている場合、図8に示すように、線路側不足電圧継電器132が復帰する時刻T4は、線路側不足電圧継電器130が復帰する時刻T3より遅くなる。なお、計時装置91の時刻と、計時装置96の時刻とが同期がとれている場合は、時刻T3,T4の差はほぼゼロとなる。また、事故後に、遮断器40が投入され線路側不足電圧継電器130,132が復帰するタイミングは、送電線30に母線20の電圧が印加されたときのいわゆる“線路電圧有”となるタイミングである。また、遮断器41が投入され線路側不足電圧継電器131,133が復帰するタイミングは、送電線31に母線20の電圧が印加されたときの“線路電圧有”となるタイミングである。
【0042】
算出部111は、記憶装置100に“同期無し”の同期データが記憶されている場合、時刻T3,T4に基づいて、計時装置91の時刻と計時装置96の時刻との差を算出する。
【0043】
補正部112は、算出部111で算出された差を用いて、遮断器が遮断された時刻T1または時刻T2の何れかを補正する。
【0044】
標定部113は、 “同期有り”の場合の時刻T1,T2の夫々を、事故点を標定する際の時刻情報である時刻TA,TBとして処理する。一方、標定部113は、“同期無し”の場合、補正部112での補正結果を、事故点を標定する際の時刻情報である時刻TA,TBとして処理する。
【0045】
==マイコン101が実行する処理の一例==
ここで、図9、及び図10を参照しつつ、事故点標定装置80のマイコン101が実行する処理の一例を説明する。なお、ここでは、電力系統10に発生する事故が除去され、さらに、送電線30,31には、母線20の電圧が印加されている状態であることとする。
【0046】
まず、オペレータから事故点標定のための指示があると、取得部110は記憶装置100の同期データを参照する(S100)。そして、同期データが“同期有り”の場合(S100:YES)、取得部110は、時刻T1,T2を取得する(S101)。
【0047】
そして、標定部112は、時刻T1,T2を、事故点を標定する際の時刻TA(TA=T1),TB(TB=T2)として処理する。具体的には、まず標定部112は、時刻TAが時刻TBより早いか否かを判定する(S102)。
【0048】
そして、標定部112は、時刻TAが時刻TBより早い場合(S102:YES)、時刻TBと時刻TAとの差(TB−TA)が所定時間αより大きいか否かを判定する(S103)。時刻TBと時刻TAとの差が所定時間αより大きい場合(S103:YES)、すなわち、遮断器40または遮断器41が遮断されてから、少なくとも所定時間α経過した後に、遮断器42または遮断器43が遮断される場合、標定部112は、事故点は範囲Xで発生したと標定する(S104)。一方、時刻TBと時刻TAとの差が所定時間αより小さい場合(S103:NO)、標定部112は、事故点は範囲Yで発生したと標定する(S105)。
【0049】
また、処理S102において、時刻TAが時刻TBより遅い場合(S102:NO)、時刻TAと時刻TBとの差(TA−TB)が所定時間αより大きいか否かを判定する(S106)。時刻TAと時刻TBとの差が所定時間αより大きい場合(S106:YES)、すなわち、遮断器42または遮断器43が遮断されてから、少なくとも所定時間α経過した後に、遮断器40または遮断器41が遮断される場合、標定部112は、事故点は範囲Zで発生したと標定する(S104)。一方、時刻TBと時刻TAとの差が所定時間αより小さい場合(S106:NO)、標定部112は、事故点は範囲Yで発生したと標定する(S105)。
【0050】
また、処理S100において、同期データが“同期無し”の場合(S100:NO)、取得部110は、時刻T1〜T4を取得する。そして、取得部110は、算出部111、及び補正部112に図10に示すような補正処理S111を実行させる。
【0051】
まず、算出部111は、時刻T3が時刻T4より早いか否かを判定する(S200)。そして、算出部111は、時刻T3が時刻T4より早い場合(S200:YES)、補正時間τ=T4−T3を算出する(S201)。また、補正部112は、補正時間τを、時刻T1に加算し、補正した時刻T1を時刻TAとし、時刻T2を時刻TBとする(S202)。なお、処理S202が実行されると、標定部113は、処理S202で実行された時刻TA,TBに基づいて前述の処理S102を実行する。
【0052】
また、算出部111は、時刻T3が時刻T4より遅い場合(S200:NO)、補正時間τ=T3−T4を算出する(S203)。そして、補正部112は、補正時間τを、時刻T2に加算し、補正した時刻T2を時刻TBとし、時刻T1を時刻TAとする(S204)。なお、処理S204が実行されると、標定部113は、処理S204で実行された時刻TA,TBに基づいて前述の処理S102を実行する。
【0053】
このように、標定部112は、補正処理S111が実行された後の時刻TA,TBに基づいて事故点を標定する(S104,S105,S107)。
【0054】
==事故点標定装置80が事故点を標定する処理の一例==
ここで、図11に示すようなSOEデータがテレコン70,71から取得された場合において、事故点標定装置80が事故点を標定する処理を説明する。なお、図11のSOEデータは、範囲Xで発生した事故が除去され、さらに“線路電圧有”の状態となったタイミングよりも後に取得されたデータである。
【0055】
一般に、いわゆる直列遮断の間隔は、短絡事故の場合100〜130ms程度であり、地絡事故の場合160〜190ms程度である、このため、本実施形態では、例えば所定時間αを例えば100msとする。また、情報集配信装置75は、例えば30分毎に、計時装置91の時刻と、計時装置96の時刻とを、情報集配信装置75に含まれる計時装置(不図示)の時刻に同期させることとする。ただし、計時装置91,96の時刻は、情報集配信装置75の計時装置の時刻に対し、例えば±300ms以内の誤差を有することとする。このため、本実施形態では、記憶装置100には“同期無し”を示す同期データが予め記憶されている。
【0056】
まず、オペレータから事故点標定のための指示があると、記憶装置100の同期データは“同期無し”であるため(S100:NO)、取得部110は、時刻T1〜T4を取得する(S110)。
【0057】
ここで、時刻T1は、遮断器40が遮断されたとき(“切”)の時刻であるため、“09:27:18.24”となる。なお、“09:27:18.24”のうち、“09:27:18”は、9時27分18秒であり、“0.24”は、240msである。時刻T2は、遮断器42が遮断されたとき(“切”)の時刻であるため、“09:27:18.96”となる。さらに、時刻T3は、遮断器40が投入された後の線路側不足電圧継電器130が復帰したとき(“電圧有り”)の時刻であるため、“09:27:34.53”となる。また、時刻T4は、遮断器40が投入された後の線路側不足電圧継電器132が復帰したとき(“電圧有り”)の時刻であるため、“09:27:35.11”となる。なお、遮断器40が投入された時刻は、“09:27:34.38”である。
【0058】
そして、時刻T3“09:27:34.53”は、時刻T4“09:27:35.11”より早いため(S200:YES)、補正時間τは、580msとなる(S201)。このため、時刻TA=T1+τ=“09:27:18.24”+580msから、時刻TA“09:27:18.82”となり、時刻TB(=T2)“09:27:18.96”となる(S202)。
【0059】
そして、上述した時刻TAは、時刻TBよりも早く(S102:YES)、時刻TB−時刻TAは、“160ms”となる(S103)。前述の“160ms”は、所定時間100msよりも大きいため(S103:YES)、事故点は範囲Xであると標定される(S104)。
【0060】
以上、本発明の一実施形態である事故点標定装置80について説明した。本実施形態では、例えばフォルトロケータ等の高価な測定装置や、特殊な継電器を新たに設けることなく事故点を標定できる。つまり、事故点標定装置80を用いることにより、高価な設備を新たに設けることなく、事故点の範囲を特定することが可能となる。また、作業者が事故点を探索する際の労力を軽減することができる。
【0061】
また、計時装置91,96の時刻に大きなずれがある場合には、例えば遮断器40,42が遮断される時刻T1,T2のみからでは、事故点を精度良く標定できないことがある。ただし、事故点標定装置80は、ほぼ同じタイミングで発生するイベント(“線路電圧有”)に基づいた、時刻T3,T4を取得するため、計時装置91の時刻と計時装置96の時刻とのずれを把握することが可能となる。このため、本実施形態では、計時装置91,96の時刻に大きなずれがある場合であっても、事故点を精度良く標定できる。さらに、“線路電圧有”となる際の時刻T3,T4を取得しているため、例えば、特殊な継電器等が設けられていない電気所においても、事故点を精度良く標定できる。
【0062】
また、計時装置91,96の時刻に大きなずれがある場合には、例えば、図10で示したような補正処理S111を実行することにより、事故点を精度良く標定できる。なお、例えば、時刻T1−T3、時刻T2−T4を夫々算出し、(T1−T3)と(T2−T4)との差が所定時間αより大きいか否かを判定しても同様に精度よく事故点を標定できる。
【0063】
また、前述のように、送電線30に事故(第1事故)が発生した際には、線路側不足電圧継電器130,132の夫々が送電線30の電圧が所定以上であることを検出した時刻を、時刻T3,T4とすることにより、精度良く事故点を標定できる。同様に、送電線31に事故が発生した場合には、線路側不足電圧継電器131,133の夫々が送電線31の電圧が所定以上であることを検出した時刻を、時刻T3,T4とすることにより、精度良く事故点を標定できる。
【0064】
なお、上記実施例は本発明の理解を容易にするためのものであり、本発明を限定して解釈するためのものではない。本発明は、その趣旨を逸脱することなく、変更、改良され得ると共に、本発明にはその等価物も含まれる。
【0065】
例えば、電気所A,Bの夫々に地絡事故が発生した動作する地絡過電圧継電器が設けられている場合、電気所A,Bの夫々の地絡過電圧継電器が動作した時刻を時刻T3,T4としても良い。つまり、ほぼ同じタイミングで発生するイベントに基づいて、時刻T3,T4を取得すれば、本実施形態と同様の効果をえることができる。
【0066】
例えば、計時装置91,96が電波時計等である場合には、“同期有り”の同期データが事前に記憶装置100に記憶される。このような場合いは、補正処理S111が実行されることは無い。
【0067】
また、例えば、送電線30,31に例えば短絡事故が発生すると、母線20,21の電圧は大きく低下する。このような場合、母線側不足電圧継電器65,66はほぼ同じタイミングで母線20,21の電圧が所定以下となったことを検出する。このため、母線側不足電圧継電器65,66が母線20,21の電圧が所定以下となったことを検出した夫々の時刻を、時刻T3,T4としても本実施形態と同様の効果が得られる。
【0068】
また、例えば、区間Xは、母線20から長さLの20%以内の区間であり、区間Zは、母線21から長さLの20%以内の区間であり、区間Yの距離は、長さLの60%である場合もある。
【符号の説明】
【0069】
10 電力系統
20,21 母線
30,31 送電線
40〜43 遮断器(CB)
50〜53 変流器
55,56 母線側計器用変圧器(VT)
60,61 回線選択継電器
65,66 母線側不足電圧継電器
70,71 テレコン
75 情報集配信装置(DX)
76 制御装置
80 事故点標定装置
90,95 IF装置
91,96 計時装置
92,97 記憶装置
93,98 監視制御装置
100 記憶装置
101 マイコン
110 取得部
111 算出部
112 補正部
113 標定部
120〜123 線路側計器用変圧器(VT)
130〜133 線路側不足電圧継電器
140〜143 自動復旧装置(ARE)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1及び第2母線の間に設けられた第1及び第2送電線と、
前記第1母線から前記第1送電線に流れる電流と前記第1母線から前記第2送電線に流れる電流とに基づいて、前記第1送電線に短絡または地絡の第1事故が発生した際に、前記第1母線及び前記第1送電線の間に設けられた第1遮断器を遮断し、前記第2送電線に短絡または地絡の第2事故が発生した際に、前記第1母線及び前記第2送電線の間に設けられた第2遮断器を遮断する第1継電器と、
前記第2母線から前記第1送電線に流れる電流と前記第2母線から前記第2送電線に流れる電流に基づいて、前記第1送電線に前記第1事故が発生した際に、前記第2母線及び前記第1送電線の間に設けられた第3遮断器を遮断し、前記第2送電線に前記第2事故が発生した際に、前記第2母線及び前記第2送電線の間に設けられた第4遮断器を遮断する第2継電器と、
時刻を計時する第1計時装置を含み、前記第1及び第2遮断器の状態を監視して、前記第1及び第2遮断器の状態が変化したときの前記第1計時装置が計時する時刻を記憶する第1監視装置と、
時刻を計時する第2計時装置を含み、前記第3及び第4遮断器の状態を監視して、前記第3及び第4遮断器の状態の変化したときの前記第2計時装置が計時する時刻を記憶する第2監視装置と、
を備える電気所における事故点標定装置であって、
前記第1または第2遮断器が遮断されたときの第1時刻が前記第1監視装置に記憶され、前記第1監視装置に記憶された前記第1時刻を取得する第1取得部と、
前記第3または第4遮断器が遮断されたときの第2時刻が前記第2監視装置に記憶され、前記第2監視装置に記憶された前記第2時刻を取得する第2取得部と、
前記第1及び第2時刻に基づいて、前記第1または第2事故が発生した事故点を標定する標定部と、
を含むことを特徴とする事故点標定装置。
【請求項2】
請求項1に記載の事故点標定装置であって、
前記第1または第2事故が発生し、前記第1または第2遮断器の何れか一方の遮断器が遮断された後に前記何れか一方の遮断器が投入されて、前記第1または第2送電線の何れか一方の送電線に前記第1母線の電圧が印加されたときの第3時刻が前記第1監視装置に記憶され、前記第1監視装置に記憶された前記第3時刻を取得する第3取得部と、
前記第1または第2事故が発生し、前記第3または第4遮断器の何れか一方の遮断器が遮断された後に、遮断された前記第1または第2遮断器の前記何れか一方の遮断器が投入されて、前記何れか一方の送電線に前記第1母線の電圧が印加されたときの第4時刻が前記第2監視装置に記憶され、前記第2監視装置に記憶された前記第4時刻を取得する第4取得部と、
を更に備え、
前記標定部は、
前記第1〜第4時刻に基づいて前記事故点を標定すること、
を特徴とする事故点標定装置。
【請求項3】
請求項2に記載の事故点標定装置であって、
前記第3及び第4時刻に基づいて、前記第1計時装置が計時する時刻と前記第2計時装置が計時する時刻との誤差を算出する算出部と、
前記誤差を用いて、前記第1または第2時刻の何れか一方の時刻を補正する補正部と、
を更に備え、
前記標定部は、
補正された前記何れか一方の時刻と、前記第1または第2時刻の他方の時刻とに基づいて、前記事故点を標定すること、
を特徴とする事故点標定装置。
【請求項4】
請求項1に記載の事故点標定装置であって、
前記第1監視装置は、
前記第1送電線の前記第1母線側の電圧が所定以下であるか否かを検出する第3継電器の状態を監視して、前記第3継電器の状態が変化したときの前記第1計時装置が計時する時刻を記憶し、
前記第2監視装置は、
前記1送電線の前記第2母線側の電圧が所定以下であるか否かを検出する第4継電器の状態を監視して、前記第4継電器の状態が変化したときの前記第2計時装置が計時する時刻を記憶し、
前記第3取得部は、
前記第1事故が発生した後に、前記第3継電器が前記第1送電線の電圧が所定以上であることを検出したときの第3時刻が前記第1監視装置に記憶され、前記第1監視装置に記憶された前記第3時刻を取得し、
前記第4取得部は、
前記第1事故が発生した後に、前記第4継電器が前記第1送電線の電圧が所定以上であることを検出したときの第4時刻が前記第2監視装置に記憶され、前記第2監視装置に記憶された前記第4時刻を取得し、
前記標定部は、
前記第1〜第4時刻に基づいて前記事故点を標定すること、
を特徴とする事故点標定装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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