説明

二振動子ポンプ

【課題】 狭小な空間内においても、より多くの吐出量を確保するために、磁性体によってなる振動子に高い周波数によって生成される磁力を作用させ、高振動で作動する振動子を内蔵する流体ポンプを得る。
【解決手段】吐出口及び吸入口を備えた、非磁性体によってなる管体に同極を対面させた、磁性体からなる振動子を二つ緩挿、密封することによって、それぞれの振動子のストロークの長さが一つであった場合に比較するとほぼ半減し、管体の外周に設けた二つの空芯電磁コイルに、二つの振動子が相反する往復運動を生ずるよう高い周波数の交流電流あるいはパルス電流を通電する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
電磁振動子を利用した流体ポンプに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、電磁振動子を利用した流体ポンプは、単一の管体、すなわちシリンダー内に、一つの振動子、すなわちピストンを挿入したものであって、より多くの流体の吐出量を確保するためには、ストロークを長くするか、あるいはシリンダー径を大きくすることが求められる。従って、形状が大きくならざるを得ず、そのため振動子の振動数を増加させることには限界があり、狭小な空間において作動する流体ポンプとしては不向きである。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
狭小な空間内においても、より多くの吐出量を確保するために、磁性体によってなる振動子に高い周波数によって生成される磁力を作用させ、高振動で作動する振動子を内蔵する流体ポンプを得る。
【課題を解決するための手段】
【0004】
吐出口及び吸入口を備えた、非磁性体によってなる管体に同極を対面させた、磁性体からなる振動子を二つ緩挿、密封することによって、それぞれの振動子のストロークの長さが一つであった場合に比較するとほぼ半減し、管体の外周に設けた二つの空芯電磁コイルに、二つの振動子が相反する往復運動を生ずるよう高い周波数の交流電流あるいはパルス電流を通電する。
【発明の効果】
【0005】
一つの振動子のストロークを、二つの振動子のストロークによって二分する結果、それぞれのストロークが短くて済み、高振動による作動が容易になり、振動数を増加させることによって、流体の吐出量も増加する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0006】
振動子が高速で振動するよう、振動子の圧縮抵抗、あるいは吸引抵抗を軽減するために、振動子、及び管体の内壁との気密性を重視せず、中空漏斗状の振動子の内部に球形逆止弁を緩挿し、さらに、振動子の外周部に覆設したライナーには振動子の摺動方向軸と平行に、単数、または複数の減圧溝を設け、振動子の中空部と外周部を利用して、一部の流体を貫流させる。
【実施例1】
【0007】
図1は本発明装置の縦断面図であって、非磁性体によってなる管体1は、吐出管2、第一の吸入管3、第二の吸入管4を備え、第一の振動子5、及び第二の振動子6を緩挿した後、密封されており、管体1の外周には第一の空芯電磁石7、及び第二の空芯電磁石8を備える。
電磁石は管体の外周部に空芯電磁石を設けず、管端に有芯電磁石を設けてもよい。
【0008】
前記第一の振動子5は図2のごとく、一方は円錐台柱状に、他方は円錐台状に加工された、漏斗状中空断面を有する磁性体9と、円錐台柱状の中空部には、適度に遊動する非磁性体からなる球形逆止弁10が挿入され、該球形逆止弁の脱落を防止するピン状ストッパー12を備え、磁性体9の外周は耐磨耗材によってなるライナー11が覆設されている。
【0009】
また、前記ライナー11には、図3に示すが如く、単数又は複数の減圧溝aを備える。
【0010】
第二の振動子6は、第一の振動子と同一構造であるので図示はしないが、管体1に緩挿する際には、円錐台柱状部が、すなわち同極が対面するよう緩挿する。
【0011】
第一の空芯電磁石7、及び第二の空芯電磁石8には、周期が同期した電流を、磁極が相反するよう加える。周波数によって振動数が、通電する電流の強弱、あるいは振動子を構成する磁性体の磁力の強弱によって、流体の吐出圧力が変動することは言うまでもない。
【0012】
図面には示していないが、吐出管2あるいは、第一の吸入管3及び第二の吸入管4のいずれか、あるいは双方に逆止弁を設けてもよい。
【産業上の利用可能性】
【0013】
1回の吐出容量が同一であっても、単一振動子の場合と比較して、二振動子の場合には、ピストンである振動子のストロークが短くて済み、より多くの振動数によって作動し、より多くの吐出量を確保する流体ポンプが実現する。従って、移動式端末機器の液冷式CPU冷却装置のように、狭小な空間に設置しなければならないようなポンプなどへの応用が考えられる。また、このような用途に使用されるポンプは、電源の制約上、常時作動するものではなく、CPU部の温度が一定の温度に達した時のみ作動するように設計されることが多く、本発明装置は、振動子の構造から、作動時以外においても、熱膨張による自然貫流によって、一定の放熱をおこなう冷却システムへの応用が考えられる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】 本発明装置の縦断面図である。(実施例1)
【図2】 振動子の拡大縦断面図である。(実施例1)
【図3】 振動子の正面図である。(実施例1)
【符号の説明】
【0015】
1 非磁性体からなる管体
2 吐出管
3 第一の吸入管
4 第二の吸入管
5 第一の振動子
6 第二の振動子
7 第一の空芯電磁石
8 第二の空芯電磁石
9 漏斗状中空断面を有する磁性体
10 非磁性体からなる球形逆止弁
11 耐磨耗材からなるライナー
12 ピン状ストッパー
a 減圧溝

【特許請求の範囲】
【請求項1】
中間部に設けられた吐出口と該吐出口に溶着された吐出管と、
両端部に設けられた吸入口と、それぞれの吸入口に溶着された吸入管とを備える非磁性体からなる管体と、
該管体において摺動するよう管体に緩挿された、磁性体からなる二つの振動子と、
該振動子を作動させるため、前記管体の両側の外周部にそれぞれ設けられた、二つの空芯電磁コイルと、
から構成されるものであることを特徴とする電磁振動ポンプ。
【請求項2】
請求項1記載の電磁振動ポンプであって、請求項1記載の磁性体からなる二つの振動子は、同極が対面するよう緩挿されたものであることを特徴とする電磁振動ポンプ。
【請求項3】
請求項1記載の電磁振動ポンプであって、請求項1記載の磁性体からなる二つの振動子は、吐出口方向及び吸入口方向に漏斗状断面を有し、吐出口側には漏斗状断面内において遊動する、非磁性体からなる球形逆止弁を緩挿し、さらに該球形逆止弁の脱落を防止するピン状ストッパーを開口部に設けたものであることを特徴とする電磁振動ポンプ。
【請求項4】
請求項1記載の電磁振動ポンプであって、請求項1記載の二つの空芯電磁コイルは、管体内に緩挿された、二つの振動子が相反する方向に作動するよう交流電流、あるいはパルス電流を通電されるものであることを特徴とする電磁振動ポンプ。
【請求項5】
請求項1記載の電磁振動ポンプであって、請求項1記載の磁性体からなる二つの振動子は、その外周、すなわち管内面との摺動面に耐磨耗材によってなるライナーを覆設したものであることを特徴とする電磁振動ポンプ。
【請求項6】
請求項1記載の電磁振動ポンプであって、請求項5記載のライナーの外周には、振動子の作動を促進するための減圧溝を複数備えるものであることを特徴とする電磁振動ポンプ。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate