説明

二方向コンクリートボイドスラブ

【課題】 軽量ボイド型枠40を簡単な構造で位置決めする。
【解決手段】 格子状の上下端筋2、3間の碁盤目状空間S内に発泡樹脂製ボイド型枠40を配置して、コンクリートを打設した二方向コンクリートボイドスラブである。ボイド型枠40は、縦断面楕円球体の上下を平行面で切り取った形状としたのであり、その周りの方向性はない。球体の上下を平行面で切り取れば、軽量ボイド型枠は、その切り取った上下面41、42でもって、上下端筋2、3に固定の支持杆11、12により挟んで支持固定してスラブ用型枠1に安定して載置でき、各碁盤目状空間S内での上下方向の位置決め(方向性)は、スラブ用型枠に置いた時点(載置した時点)でなされる。コンクリート打設時、その載置後の軽量ボイド型枠の各碁盤目状空間S内からの抜け止めは、上端筋2に固定の支持杆11でなされる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、上下端筋間に碁盤目状に軽量ボイド型枠を配置した二方向コンクリートボイドスラブ、その構築方法及びその構築に使用する前記軽量ボイド型枠に関するものである。
【背景技術】
【0002】
この種の二方向コンクリートボイドスラブとして、例えば、図4に示すように、床型枠1に、上端筋2を格子状に配置するとともに、下端筋3を同じく格子状に配置し、その格子状内の各碁盤目状空間S内に発泡樹脂などからなる軽量ボイド型枠4を配置して、コンクリートを打設した構造のものがある(特許文献1参照)。図中、5は、上下端筋2、3に掛け渡されて、各ボイド型枠4の上下面を抑えてその浮き上がりを防止する補助筋である。
【特許文献1】特開2003−321894号公報
【0003】
この二方向コンクリートボイドスラブの構築において、軽量ボイド型枠4は、一般的に、同図に示すように、その形状が方形体状をして前後左右の方向性を有している(特許文献1図13参照)。この各軽量ボイド型枠4の前後左右の方向が揃わないと、二方向コンクリートボイドスラブの強度設計に狂いが生じるため、各軽量ボイド型枠4の配置時には、その方向が揃うように注意をする必要がある。
この注意を軽減したものとして、軽量ボイド型枠4を球体(真円球体)としてその前後左右の方向性をなくした技術がある(特許文献1図4参照)。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
球体状軽量ボイド型枠4は、上下方向に方向性がなく、全周囲において方向性がないため、その配置に全くその方向性を考慮する必要はない。しかし、その全周囲において方向性がないことにより、各碁盤目状空間S内で動き易く、その固定手段が煩雑となる。例えば、従来技術では、軽量ボイド型枠4に上方から押さえ金具を嵌り込ませてその移動を阻止して位置決めするようにしている(特許文献1図4参照)。
【0005】
この発明は、軽量ボイド型枠4を簡単な構造で位置決めし得るようにすることを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を達成するために、この発明は、軽量ボイド型枠を、球体の上下を平行面で切り取った形状としたのである。
球体の上下を平行面で切り取れば、軽量ボイド型枠は、その切り取った下面でもって、スラブ用型枠に安定して載置させることできる。
また、その載置後の軽量ボイド型枠の各碁盤目状空間S内からの抜け止めは、例えば、切り取った上面に、上端筋に固定の支持杆を当てて行うことができる等と容易であり、作業性もよい。なお、軽量ボイド型枠は、その平面視が円状のため、前後左右の方向性はない。
【発明の効果】
【0007】
この発明は、軽量ボイド型枠を、球体の上下を平行面で切り取った形状としたので、各碁盤目状空間S内での方向性がなく、その配置作業が容易となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
この発明の一実施形態としては、格子状の上端筋と同じく格子状下端筋が上下に間隔をもって並行に設けられ、その格子状の上下端筋に囲まれた各空間内に軽量ボイド型枠が配置されて、コンクリートが打設された二方向コンクリートボイドスラブに使用される前記軽量ボイド型枠において、球体の上下を平行面で切り取った形状をなすともに、前記空間の上部からその空間内に装填可能な大きさであり、その装填後には、前記上端筋に固定の支持杆が前記切り取った上面に当たってその抜け出しを防止する構成を採用し得る。
このとき、上記「空間の上部からその空間内に装填可能な大きさ」とは、その空間に、その真上からスムースに入り得る大きさのみならず、例えば、斜めにして入れる等、人が何らかの工夫をしてその空間に入り得る大きさを言う。
【0009】
通常、軽量ボイド型枠の上下面とスラブ上下面の間には一定のスラブ厚が必要であることから、軽量ボイド型枠の高さは一定以下に制限されるのに対し、軽量ボイド型枠の横方向は、スラブ強度の関係から、任意の長さを要求され、一般的には、高さに対して長くなる。このため、上記球体が真円球体の場合は、その要求に応えにくく、その球体を縦断面楕円状とすれば、軽量ボイド型枠の高さに対する横方向の長さが大きくなるため(扁平状となるため)、その要求に応え易い。
【0010】
また、コンクリートスラブにおいて、上階からの振動は、コンクリート部の薄い均一な厚さ部分において共振し易いとされている。このため、軽量ボイド型枠を、その切り取った上面中程に凹部を形成したものとすれば、軽量ボイド型枠上面の薄いコンクリート部が厚さの異なる複数の部分からなるものとなって(全域が均一の厚さでなくなって)、上階からの振動が共振し難くなり、また、凹部の壁面での振動音の拡散により、その音の伝わりが減少し、静かなコンクリートスラブを得ることができる。
【0011】
さらに、その中程凹部の中程に凸部を形成したものとすれば、その凸部の壁面での上階からの振動音の拡散が加わり、その振動音の拡散効果は向上して、より静かなコンクリートスラブを得ることができるとともに、その凸部上面に、上端筋に固定の支持杆を当てることができるため、軽量ボイド型枠のより確実な支持を行うことができる。
【0012】
これらの軽量ボイド型枠は、従来と同様にして、格子状の上端筋と同じく格子状下端筋が上下に間隔をもって並行に設けられ、その格子状の上下端筋に囲まれた各空間内に配置されて、上端筋に固定の支持杆が上記切り取った上面に当たってその軽量ボイド型枠の抜け出しを防止する等の二方向コンクリートボイドスラブを構成し得る。
【0013】
この構成では、軽量ボイド型枠の下面レベルの位置決めをしていないため、軽量ボイド型枠をスラブ用型枠に載置した時、その型枠に直接に置かれる場合が生じ、その場合には、コンクリートの打設による浮力によって上昇し、上端筋に固定の支持杆に上面が当たって位置決めされるようにする。このとき、上昇をスムースかつ確実の位置とするように、軽量ボイド型枠の上昇用ガイドを設けるとよい。
軽量ボイド型枠の下面レベルの位置決めは、例えば、上記下端筋にも支持杆を設けて、この支持杆と上端筋に固定の支持杆とにより軽量ボイド型枠を挟んで支持することにより行うことができる。
【0014】
これらの二方向コンクリートボイドスラブを構築するには、例えば、スラブ用型枠に、格子状の上端筋と同じく格子状下端筋を上下に間隔をもって並行に設けて、その下端筋に支持杆を固定し、格子状の上下端筋に囲まれた各空間内に上記各軽量ボイド型枠を前記支持杆に載せて配置した後、上端筋に支持杆をさらに固定して、その両支持杆により、前記軽量ボイド型枠を挟んで前記空間内からの抜け出しを防止した後、コンクリートを打設する等の方法を採用する。
【実施例】
【0015】
図1乃至図3に一実施例を示し、この実施例のボイド型枠40は、中実の発泡樹脂からなり、図3(a)に示すように、縦断面楕円状の球体の上下を平行面で切り取った形状をしている。その上面41及び下面42の大きさは、後述の支持杆を当てがってボイド型枠40を動くことなく支持し得るにように適宜に設定する。例えば、上面41・下面42の径:231.5mmとする。また、球体の径(ボイド型枠40の大きさ)も、例えば、径:350mm等として、後述の空間S内に、斜めにして嵌め込み得るように適宜に設定する。さらに、ボイド型枠40の高さHはスラブ厚に応じて適宜に決定し、例えば、スラブ厚から100mm引いた値とする。
【0016】
このボイド型枠40は、図1、図2に示すように、床型枠1の上に各上下端筋2、3を配設し、その各下端筋3の左右方向の中程に前後方向の鉄筋製支持杆12を溶接して固定した後、その各上下端筋2、3間の上下に一致した碁盤目状の正方形空間S内にボイド型枠40を嵌め込んで、前記支持杆12上に載置する。その後、各上端筋2の前後方向の中程に左右方向の鉄筋製支持杆11を溶接して固定し、両支持杆11、12により、ボイド型枠40の上下を押さえて支持固定した後、必要に応じて補助筋などを配置し、コンクリートCを打設して、二方向コンクリートボイドスラブを構築する。支持杆11、12の上下端筋2、3への固定は、溶接に代えて番線による等の種々の手段を採用できる。
【0017】
ボイド型枠40の形状としては、図3(b)に示すように、その切り取った上面41中程に同心の円状凹部43を形成したものとすれば、上階からの振動が共振し難くなり、その凹部43の壁面での振動音の拡散により、静かなコンクリートスラブを得ることができる。さらに、同図(c)に示すように、その凹部43の中程に同じく同心の円状凸部44を形成したものとすることもできる。この凸部44を形成したものとすれば、その凸部44の壁面での上階からの振動音の拡散が加わってその拡散効果が向上して、より静かなコンクリートスラブを得ることができるとともに、その凸部44上面に、上端筋2に固定の支持杆11を当てることができるため、軽量ボイド型枠40のより確実な支持を行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】一実施例の概略斜視図
【図2】同実施例の切断正面図
【図3】同実施例のボイド型枠の各例の斜視図
【図4】従来例の概略斜視図
【符号の説明】
【0019】
1 床型枠
2 上端筋
3 下端筋
11、12 支持杆
40 ボイド型枠
41 ボイド型枠の切り取り上面
42 ボイド型枠の切り取り下面
43 凹部
44 凸部
S 碁盤目状空間

【特許請求の範囲】
【請求項1】
格子状の上端筋2と同じく格子状下端筋3が上下に間隔をもって並行に設けられ、その格子状の上下端筋2、3に囲まれた各空間S内に軽量ボイド型枠40が配置されて、コンクリートCが打設された二方向コンクリートボイドスラブに使用される前記軽量ボイド型枠40であって、
球体の上下を平行面で切り取った形状をなすともに、上記空間Sの上部からその空間S内に装填可能な大きさであり、その装填後には、上記上端筋2に固定の支持杆11が前記切り取った上面41に当たってその抜け出しを防止する二方向コンクリートボイドスラブ用軽量ボイド型枠。
【請求項2】
上記球体が縦断面楕円状であることを特徴とする請求項1に記載の二方向コンクリートボイドスラブ用軽量ボイド型枠。
【請求項3】
上記切り取った上面41中程に凹部43を形成したことを特徴とする請求項1又は2に記載の二方向コンクリートボイドスラブ用軽量ボイド型枠。
【請求項4】
上記切り取った上面中程に形成した凹部43の中程に凸部44を形成したことを特徴とする請求項3に記載の二方向コンクリートボイドスラブ用軽量ボイド型枠。
【請求項5】
格子状の上端筋2と同じく格子状下端筋3が上下に間隔をもって並行に設けられ、その格子状の上下端筋2、3に囲まれた各空間S内に請求項1乃至4のいずれかに記載の軽量ボイド型枠40が配置されて、その軽量ボイド型枠40は前記上端筋2に固定の支持杆11が前記切り取った上面に当たってその抜け出しを防止している二方向コンクリートボイドスラブ。
【請求項6】
上記下端筋3にも支持杆12を設けて、この支持杆12と上記上端筋2に固定の支持杆11とにより上記軽量ボイド型枠40を挟んで支持したことを特徴とする請求項5に記載の二方向コンクリートボイドスラブ。
【請求項7】
請求項6に記載の二方向コンクリートボイドスラブを構築する方法であって、
スラブ用型枠1に、格子状の上端筋2と同じく格子状下端筋3を上下に間隔をもって並行に設けて、その下端筋3に上記支持杆12を固定し、格子状の上下端筋2、3に囲まれた各空間S内に軽量ボイド型枠40を前記支持杆12に載せて配置した後、上記支持杆11を前記上端筋2に固定して、その両支持杆11、12により、前記軽量ボイド型枠40を挟んで前記空間S内からの抜け出しを防止した後、コンクリートCを打設することを特徴とする二方向コンクリートボイドスラブの構築方法。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate


【公開番号】特開2006−9363(P2006−9363A)
【公開日】平成18年1月12日(2006.1.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−186688(P2004−186688)
【出願日】平成16年6月24日(2004.6.24)
【出願人】(000142595)株式会社栗本鐵工所 (566)
【出願人】(598054348)有限会社構造プラン (1)