説明

二枚貝の異臭除去方法

【課題】二枚貝の異臭を除去する方法を提供する。
【解決手段】この発明は、採取後の二枚貝を浸漬槽1a〜1dに収容した水に浸漬して料理前に前処理する方法であって、上記浸漬水を臭気物質を吸着する濾過材を収容した濾過槽4を通過させて浸漬槽1a〜1dとの間で循環させ、前記浸漬水に木質材を炭化させて微粉砕した炭化物のパウダーと、ゼオライトを微粉砕したゼオライトパウダーのいずれか一方又は両方を添加して分散させる方法である。上記浸漬水には木酢液と竹酢液のいずれか一方又は両方を添加する。濾過材として粒状のゼオライトが使用される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は主としてしじみ(蜆),あさり,赤貝,はまぐり(蛤)等のように水質その他の生息環境によって食用の妨げとなる異臭を放つ可能性の高い二枚貝の異臭除去方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年例えば我が国で最も大きい生産量を誇る宍道湖産大和しじみの一部にドロ臭い,カビ臭い,薬品臭い等の異臭の発生が産地の生産者や市場にとっても大きな問題となっている。
これに対し地元の自治体(島根県農林水産部水産課)や民間の専門分析機関(イカリ消毒株式会社LC環境検査センター・・・千葉県習志野市)が異臭の原因を究明したところ、その原因物質がジェオスミンである可能性が極めて高く、概ね原因物質が特定されたと考えられている。
ジェオスミンは、水温上昇時期に富栄養化した水域で発生する放線菌Streptomyces属、藍藻Phormidium属、Oscillatoria属によって産出される代謝物質で、いわゆるカビ臭物質として確認されていて、水の場合は濃度が「0.00001mg/L以上」(10ng/L以上)あると、臭覚の個人差はあるが臭気を感じるといわれており、しじみの場合は500ng/kg位から臭気を感じる事が確認された。
しじみについてジェオスミンの基準は設けられていないが、水道水の水質基準では「0.00001mg/L以下」(10ng/L以下)であり、後述する検出例2000ng/kgではこの基準の200倍が検出されたことになる。
【0003】
しかし河川や湖沼、沿岸海域等の環境悪化を生じ易い水域に生息するしじみをはじめとする食用二枚貝全般について、上記のような異臭発生が知られていなかったため、その異臭の全部又は一部を除去する方法は従来提案された例が見当たらない。これに対し鑑賞魚の水質浄化に関して特許文献1が、水生動物の長期保存に関して特許文献2等が知られている程度である。
【0004】
特許文献1の発明は金魚等の鑑賞魚の水槽内にアンモニア等の吸着材として木炭を収容しておき、さらに藻類の発生を防止するために木酢液を添加するものである。
特許文献2の発明は水と共に貝類等の水生動物を収容する容器内に不純物を吸着除去する木炭等の吸着材を収容するものである。
【特許文献1】実開平7−36644号公報
【非特許文献1】実開昭55−69967号公報(実願昭53−154891号)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし上記の方法は臭い物質の吸着除去はある程度期待できるとしても、元来容器内の水質を浄化又は改善することにより水中の水生動物のより長期の生息を図るもので、例えば二枚貝自体の異臭の除去や低減(一部除去)が期待できる訳ではない。
この発明は、前記の二枚貝の異臭の原因物質に対応し、その除去を実現する方法を提供せんとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するための本発明の方法は、第1に採取後の二枚貝を浸漬槽1a〜1dに収容した水に浸漬して料理前に前処理する方法において、上記浸漬水を臭気物質を吸着する濾過材を収容した濾過槽4を通過させて浸漬槽1a〜1dの間で循環させ、前記浸漬水に木質材を炭化させて微粉砕した炭化物のパウダーと、ゼオライトを微粉砕したゼオライトパウダーのいずれか一方又は両方を添加して分散させることを特徴としている。
【0007】
第2に、浸漬水に木酢液と竹酢液のいずれか一方又は両方を添加してなることを特徴としている。
【0008】
第3に、濾過材が粒状のゼオライトであることを特徴としている。
【0009】
第4に、濾過材として活性炭を加えたことを特徴としている。
【0010】
第5に、ゼオライトの粒径を3〜50mmとし、多数の粒状体を袋状のネットに封入したものを濾過槽4に収容したことを特徴としている。
【0011】
第6に、所定量の活性炭を袋状のネットに封入したものを濾過槽4に収容したことを特徴としている。
【0012】
第7に、浸漬槽1a〜1dにオゾン又はオゾン水を供給して浸漬水及び二枚貝の殺菌及び脱臭を行うことを特徴としている。
【0013】
第8に、浸漬槽1a〜1d内にエアを供給して二枚貝の生存に必要な酸素を供給することを特徴としている。
【0014】
第9に、浸漬水の水温を処理対象となる二枚貝の採取時期及び生息場所の水温に適合させるように温度調節することを特徴としている。
【発明の効果】
【0015】
この発明は以上のように構成されるので、二枚貝を水で浸漬処理することにより、水中の異臭原因物質を濾過槽内の濾過材で吸着し、また臭気除去効果や殺菌効果があると考えられる木酢液や竹酢液により浸漬槽内の水の脱臭・殺菌処理をするだけでなく、水中に分散された木質炭化物の微粉末とゼオライト微粉末の一方又は両方を貝が体内に取り込んで排泄することにより、二枚貝の身自体の異臭物質の除去をより確実に行う効果がある。
【0016】
これらの処理は砂抜きを行う必要のある二枚貝では砂抜き処理と同時又は砂抜き処理に伴って行うことができる利点がある。また濾過槽内に活性炭を収容しておくことにより、異臭物質の吸着のほか貝自体の砂出しが良くなる。
【0017】
また浸漬水にオゾン供給することにより脱臭や殺菌が、酸素(エア)供給することにより二枚貝の生息や活性化,砂抜き等を促すほか、浸漬水を二枚貝の採取時期や採取場所の生息環境に合わせて調節することによって異臭発生物質の排出や砂抜き効果を促進する効果がある。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
以下図面を参照して本発明の実施形態につき説明する。
図1は本発明を実施するための装置を示す概念図である。この例では二枚貝(以下単に「貝」と称す)を浸漬する浸漬槽(以下単に「槽」と称す)1a〜1dは第1〜第4槽まで4槽設置され、このうち第1〜2槽は例えば室温が3〜5℃に制御され、活貝の保管庫を兼ねた冷蔵庫(処理室)2内に、それ以外は外部の室内にそれぞれ設置されている。各槽の容量は第3槽が1000Lである以外はいずれも500Lである。
【0019】
また各槽は内部底面が略同一高さに揃うように配置され、槽1a,1b,1c,1d間は順次連通管3によって低位置で連結されており、各槽の水位と水温が共通になるように連通している。そして冷蔵庫2以外の槽1c,1d上には濾過槽4(容量約240L)が設置され、該濾過槽4から落差により又は図示しないポンプにより給水管6,7を介して第3槽1c,第4槽1dに濾過処理済の浸漬水(以下単に「水」と称す)がそれぞれ継続的に供給される。
【0020】
他方、第1槽1a,第2層1bには冷蔵庫2側に設置された給水(循環)ポンプP1(35L/min)により、濾過槽4から給水管(循環路)8及びその分岐端を介して濾過処理済の水が供給される。
【0021】
これに対し、各槽1a〜1bの水は返水(循環)ポンプP2(35L/min),P3(55L/min)により、返水管(循環路)9,11を介してそれぞれ濾過槽4に返送され、濾過槽4で再度濾過処理されて各槽1a〜1dとの間で循環使用される。
【0022】
上記返水管9は槽1a〜1b間の連通管3に上流端が接続されているが、返水管11はその上流端は分岐して槽1c,1d内の底面付近に挿入開口しているが、これらの循環用の配管は特に上記形態に限定されるものではない。
【0023】
また各槽の水は貝の浸漬処理を繰り返されることにより減少するので、上記循環経路中のいずれかの場所で減少分が必要に応じて補給される。図示する例では補給管12により濾過槽4に補給される。
【0024】
上記水の循環過程で冷蔵庫2内の第1槽,第2層の水が冷却されることにより、各槽の水は概ね均一な冷水状態を保ち、連通管3もこれを助長するが、水温調節は冷蔵庫2内の温度調節(制御)によって行われる。
【0025】
水温設定は貝の種類や採取の時期及び場所等によって異なり、採取時の採取場所の水温に最も近い水温にすることが、貝の砂出しや食物代謝の状態を自然に近い状態で保つ上で望ましい。
【0026】
さらに上記処理施設には機器ボックス13が設置されており、機器ボックス13内には2種類のエアポンプ14,16とオゾンを発生させるオゾンナイザー17及び一方のオゾン発生用のエアポンプ14からエアの供給を受けてエア中の水分を除去するエアドライヤ18とが設置されている。オゾンナイザー17はエアドライヤ18より乾燥したエアの供給を受けて、各槽1a〜1dと濾過槽4にオゾンを供給して濾過槽4の水をオゾン水にして各槽に供給する。このオゾンの供給は主として水中及び貝内の殺菌と臭気成分の除去を行うためのもので、全体をオゾン水の供給に代えることもできる。
【0027】
またエアポンプ16は各槽1a〜1dの水中にエア(酸素)を曝気させながら供給するためのポンプで、このエア供給は水中の貝に酸素を十分に供給し酸素不足による死滅を防止するとともに貝の活性を保つために行われる。
【0028】
給気用のエアポンプ16,オゾンナイザー17,エアドライヤ18は便宜上それぞれ単一のものとして図示したが、これらは各供給箇所の数(槽数等)に対応してそれぞれ個別に設けてもよく、その場合は各供給配管19,21も各別に配管される。
【0029】
上述した各槽1a〜1dへの給排水及び循環水量,補給水量,エアやオゾンの供給量,水温の調節等はそれぞれ必要箇所にセンサー類(図示しない)を設けて、設定値又は計測値に基き又は自動的に制御されることが望ましく、22はこれらの制御を行うための制御装置である。
【0030】
前記濾過槽4には通水性と濾過性能を考慮して3〜50mm程度の粒径で、600℃前後で焼成した天然ゼオライト類が、袋状のネット(メッシュ)材に小分けされた状態で100〜150kg程度積層されて収容されている。さらにその上部には(上下逆でも混在していても良い)100〜300kg程度の活性炭が上記同様袋状のネットに小分けされて収容されている。後述する実施例では活性炭として味の素株式会社製Y4−Rを用いた。
【0031】
次に上記装置を用いた本発明の方法について説明する。
以下の例では主として宍道湖産大和しじみの砂抜き処理と同時に行う場合を想定しており、全工程を通じ、あさりその他の二枚貝の処理にも概ね適用できるものである。
【0032】
しじみの採取から販売のための出荷までの工程は産地や取扱業者により多少の違いがあるが、一般に採取後水揚げされた後、選別機に掛けられてサイズ毎に選別され、取扱業者の下への出荷、冷蔵保存後の砂抜きが行われる。
【0033】
その後死貝やドロ貝、石等の異物や臭い検査等で確認した鮮度低下品の除去、オゾンによる洗浄・殺菌及び空貝やドロ貝を開口させて除去、規格別の計量、オゾン水の充填、金属検出機等による金属や砂噛み量の多い貝の除去、最終検査等の工程を経て出荷される。
【0034】
この実施形態では上記工程中の砂抜き工程と同時に貝の異臭の除去を行うもので、砂抜き前に異臭を伴わない貝は別処理にすることも可能である。異臭除去作業の概要は準備作業を含めて以下の通りである。
【0035】
(1)水の供給・循環開始
貝の砂抜き及び異臭・除去のための浸漬に先立ち、図1に示す装置の条件を整えるため、濾過槽4には前述の要領で濾過材として袋詰めされたゼオライト粒100〜150kg(実施例では130kg)と同様に袋詰めされた活性炭100〜300kg(実施例では280kg)を収容し、各ポンプP1〜P3を作動させて濾過槽4と各槽1a〜1dに水を循環させ各槽に所定量の水を貯留する。
【0036】
(2)水温及び塩分濃度調整
この時冷蔵庫2内の温度は3〜5℃の範囲で設定し、循環する水の温度は10〜18℃(実施例では14℃)になるようにしておく。この水温調節は貝の採取の時期や場所に合わせて行われ、同様に浸漬水の塩分濃度も0.2〜0.5%(実施例では0.3%)に調整する。これらの水温や塩分濃度は貝が生息していた環境条件(この例では宍道湖の環境に基いて決定した)に合わせることにより、砂出しや水等の吸排出を自然に近い条件で活発に行わせ且つ環境変化による貝のストレス発生を抑制するためである。
【0037】
(3)エア及びオゾン供給
また上記水の循環と共にエアポンプ14,16,エアドライヤ18,オゾンナイザー17を作動させ、槽1a〜1dと濾過槽4へのエア及びオゾン供給を行い、水及び貝の体内の殺菌、異臭除去、水への酸素補給を行う。この時のオゾンは水2500Lに対し160mg(0.64mg/L)前後の濃度で供給する。
【0038】
(4)木酢液の添加
次に上記浸漬水に対し、250〜350CC(実施例では300CC)程度の木酢液を添加し、水及び貝の体内の殺菌及び異臭の除去作用を行わせる。木酢液の添加は水が循環しているので濾過槽4等いずれの位置でもよいが、早期に均一濃度にするには各槽1a〜1dに収容している水量に応じて分配することが望ましく、水の木酢液濃度を検出しながら自動的に添加することもできる。また木酢液に代えて成分が一定している竹酢液を添加してもよい。
【0039】
(5)浸漬(漬け込み)
上記のように準備された処理装置に対し、各槽1a〜1dに袋詰めされた適量の貝を順次収容して漬け込み、漬け込みの時間は10〜15時間(実施例では14時間)程度浸漬して処理を継続する。この浸漬時間は貝が含む砂の量にもよるが、砂抜き,殺菌,身質の維持・向上に必要な時間である。必要時間は季節により異なるが長過ぎると鮮度低下を招き、短過ぎると目的とする処理結果が得られない。また水温が高い時は短時間で低温時には長時間になる。
【0040】
(6)竹炭パウダーの投入
上記漬け込み終了後、各槽には5μm程度に微粉砕された国内産の竹炭パウダーを投入して水中に分散させる。この目的は貝の入出管内に取り入れさせて活性菌の除去及び異臭成分を吸着させて排出除去を行うためである。投入量は総量100〜400g(実施例では350g)程度である。また竹炭の代わりに木炭,もみ殻炭その他木質材を炭化させたものでもよい。
尚上記木質材の炭化物パウダーの代りに、同程度に微粉砕された天然ゼオライトのパウダーを略同量添加して分散させることもでき、概ね同様の効果が期待できるほか、炭化物パウダー6に対し、ゼオライトパウダー4の配分にした別の実験では、前記異臭成分の除去率が約15%前後向上した。いずれか一方にする場合は異臭原因物質除去効果と生体への親和性の面で木質炭パウダーの方が望ましいと考えられる。
【0041】
(7)その他
上記木酢液や竹炭等の消耗品は処理の都度新たに供給することが望ましいが、貝が持つ異臭の度合や砂を含む量等によっては繰り返し使用もでき、濾過材についても同様であり、一定時間使用後は交換される。
【0042】
(8)処理後作業
上記砂抜き・異臭除去処理後は、在来の方法に従い貝の砂抜き・異臭除去処理が十分に行われているかの検査(鮮度,臭い,砂噛み等)を行い、必要に応じて処理を継続し、十分な処理が実現できるまで行う。その後は一般に行われる選別,洗浄,計量,金属検査,検品等を経て所定温度での保存、出荷等通常の作業が行われる。
【実施例1】
【0043】
次に図1に示す装置を用いて宍道湖産大和しじみを上記の方法により処理した処理物の分析試験結果をその試験条件と共に示す。
【0044】
1.しじみ中のジェオスミンの分析
(1)試験期間 平成20年5月〜10月
(2)試験機関 イカリ消毒(株)LC環境検査センター(千葉県習志野市)
但し、除去処理は(株)イトハラ水産
(3)試験試料 島根県宍道湖産大和しじみ
(4)分析対象 ジェオスミン(その他の代表的なカビ臭の原因物質である
2−メチルイソボルネオールについては分析したが不検出)
【0045】
(5)分析方法
カビ臭の代表的な原因物質である2−メチルイソボルネオール及びジェオスミンについての定量分析として実施。
(なお、食品中の2−メチルイソボルネオール及びジェオスミンについては公定法が示されていないため、本分析は「厚生労働省告示第261号(平成15年7月22日)水質基準に関する省令の規定に基き厚生労働大臣が定める方法 別表27」に準拠し実施した。ただし、この厚生労働省告示法は上水試験法であるため、食品試料からの抽出方法については、対象物質が水可溶であることから純水を抽出溶媒とした超音波抽出法を採用した。)
1)分析手順
・試料は殻を取り除き、剥き身とする。
・これを乳鉢にて混合・磨砕後、20g採取し、純水500mLにて超音波抽出する。
・この抽出液を濾過後、固相抽出カラム(SUPELCLEAN ENVI-18)に通し、目的物質を吸着させる。
・固相抽出カラムを遠心分離機で脱水後、吸着されている物質をジクロロメタンで溶出する。
・溶出液に窒素ガスを吹付け濃縮した後、ジクロロメタンで1.0mLに定容し試験溶液とする。
2)分析条件
使用機器 ・ガスクロマトグラフ Agilent製 6890N
・質量分析計 日本電子製 JMS−K9
・オートサンプラー Agilent製 7683b
測定条件 ・使用カラム(DB−5相当)
カラム長 30m
カラム内径 250μm(膜厚0.25μm)
・カラムオーブン昇温条件
40℃・1min保持→10℃/min→
230℃・5min保持
・注入条件
スプリット方式(スプリット比1:20)
注入口温度 200℃
注入量 5μm
・質量分析
SIMモード
モニターイオン
2−メチルイソボルネオール
定量イオン 95 対照イオン108
ジェオスミン
定量イオン112 対照イオン111
【0046】
(6)分析結果
【表1】

【0047】
2.しじみ処理前後の旨味成分の変化
上記同様の方法で処理したしじみの味(旨味成分)の低下があるか否かについて分析試験を行ったので以下その方法と結果について示す。
(1)試験時期 平成16年9月21日
(2)試験機関 (財)日本食品分析センター
(3)試験試料 島根県宍道湖産大和しじみ
(4)分析対象
コハク酸、アミノ酸(アルギニン、リジン、ヒスチジン、フェニルアラニン、チロシン、ロイシン、イソロイシン、メチオニン、バリン、アラニン、グリシン、プロリン、グルタミン酸、セリン、スレオニン、アスパラギン酸、トリプトファン、シスチン)
【0048】
(5)分析方法
しじみの摺り身を過ギ酸酸化処理後、塩酸加水分解して測定したもので、コハク酸とシスチンを高速液体クロマトグラフ法によった以外はすべてアミノ酸自動分析法によった。
【0049】
(6)分析結果(処理前後の旨味成分の変化)
処理前はコハク酸0.12g/100g、フェニルアラニン0.14g/100gであったものが処理後はそれぞれ0.16g/100g、0.15g/100gに増加している以外はすべての成分が処理の前後で同一であった。
【0050】
3.考察
上記試験結果によれば、表1に示すようにゼオライトを濾過材とした濾過槽による濾過と木酢液の添加のみでは有意な効果が認められないのに対し、本発明の実施品である試料No.2〜4ではいずれも人が異臭を感じない程度に異臭原因物質であるジェオスミン量が低下している。特に予備的な処理実験の過程では竹炭パウダーを浸漬水に添加して分散させ、一旦貝の内臓に取り込ませて排泄させることにより上記効果が高まる事が確認されており、竹炭パウダー(又は他の木質炭パウダー)の添加をしない場合は大きい異臭除去効果が望めない。既述のように他の実験では竹炭パウダーの他にゼオライトパウダーを加えたケースではジェオスミンの除去効果が高いことが認められた。
また処理前後の味の変化についても、上記試験では旨味は僅かに向上しており、低下することはないものと考えられる。
【図面の簡単な説明】
【0051】
【図1】本発明の方法を実施するための処理装置の概念図である。
【符号の説明】
【0052】
1a〜1d 浸漬層
2 冷蔵庫(処理室)
3 連通管
4 濾過槽
6,7,8 給水管(循環路)
9,11 返水管(循環路)
12 補給管
14,16 エアポンプ
17 オゾナイザー
18 エアドライヤ
19,21 供給配管
〜P 循環ポンプ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
採取後の二枚貝を浸漬槽(1a〜1d)に収容した水に浸漬して料理前に前処理する方法において、上記浸漬水を臭気物質を吸着する濾過材を収容した濾過槽(4)を通過させて浸漬槽(1a〜1d)との間で循環させ、前記浸漬水に木質材を炭化させて微粉砕した炭化物のパウダーと、ゼオライトを微粉砕したゼオライトパウダーのいずれか一方又は両方を添加して分散させる二枚貝の異臭除去方法。
【請求項2】
浸漬水に木酢液と竹酢液のいずれか一方又は両方を添加してなる請求項1の二枚貝の異臭除去方法。
【請求項3】
濾過材が粒状のゼオライトである請求項1又は2の二枚貝の異臭除去方法。
【請求項4】
濾過材として活性炭を加えた請求項1,2又は3の二枚貝の異臭除去方法。
【請求項5】
ゼオライトの粒径を3〜50mmとし、多数の粒状体を袋状のネットに封入したものを濾過槽(4)に収容した請求項3又は4の二枚貝の異臭除去方法。
【請求項6】
所定量の活性炭を袋状のネットに封入したものを濾過槽(4)に収容した請求項4又は5の二枚貝の異臭除去方法。
【請求項7】
浸漬槽(1a〜1d)にオゾン又はオゾン水を供給して浸漬水及び二枚貝の殺菌及び脱臭を行う請求項1,2,3,4,5又は6の二枚貝の異臭除去方法。
【請求項8】
浸漬槽(1a〜1d)内にエアを供給して二枚貝の生存に必要な酸素を供給する請求項1,2,3,4,5,6又は7の二枚貝の異臭除去方法。
【請求項9】
浸漬水の水温を処理対象となる二枚貝の採取時期及び生息場所の水温に適合させるように温度調節する請求項1,2,3,4,5,6,7又は8の二枚貝の異臭除去方法。

【図1】
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【公開番号】特開2010−148399(P2010−148399A)
【公開日】平成22年7月8日(2010.7.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−328445(P2008−328445)
【出願日】平成20年12月24日(2008.12.24)
【出願人】(503231941)株式会社イトハラ水産 (1)
【Fターム(参考)】