説明

二次元コード読取装置

【課題】高温の被写体に表示された二次元コードの読み取り成功率が高い二次元コード読取装置を得ること。
【解決手段】被写体5を撮像する撮像装置11と、撮像装置11が撮像した画像内の二次元コードを読み取って情報をデコードする読取部12とを備えたコードリーダ1と、コードリーダ1近傍及び被写体5近傍の大気の温度を測定する温度計測器2と、温度計測器2の測定結果を基にコードリーダ1近傍の大気と被写体5近傍の大気との温度差を算出する温度差算出部71と、温度差算出部71が算出した温度差に基づいて、撮像装置11のシャッタスピードを設定する撮像条件設定部72とを備えた計算機7と、を有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、被写体に表示された二次元コードを撮像素子によって撮影し、撮影した画像内の二次元コードを読み取って情報をデコードする二次元コード読取装置に関し、特に、高温の被写体を撮影する際の像ぶれを軽減した二次元コード読取装置に関する。
【背景技術】
【0002】
被写体を撮影する際に生じる像ぶれを軽減する技術として、センサで計測した被写体の移動速度を基に、像ぶれ補正を行う際の諸条件を設定し、像ぶれ補正を実施する装置がある(特許文献1参照。)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2008−047008号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上記従来の技術は、被写体が物理的に移動している場合には有効であるが、高温の被写体を撮影する際に、実際には静止している被写体があたかも不規則に動いているかのように撮影される現象には無効であり、撮像された画像の像ぶれを軽減することができない。したがって、上記従来の技術をバーコード読取装置に適用して二次元コードが表示された高温の被写体を撮影した場合、撮影した画像の像ぶれによって読取精度が低下するという問題があった。
【0005】
本発明は、上記に鑑みてなされたものであって、高温の被写体に表示された二次元コードの読み取り成功率が高い二次元コード読取装置を得ることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上述した課題を解決し、目的を達成するために、本発明は、被写体を撮像する撮像手段と、撮像手段が撮像した画像内の二次元コードを読み取って情報をデコードする読取手段とを備えたコードリーダと、コードリーダ近傍及び被写体近傍の大気の温度を測定する温度測定手段と、温度測定手段の測定結果を基にコードリーダ近傍の大気と被写体近傍の大気との温度差を算出する温度差算出手段と、温度差算出手段が算出した温度差に基づいて、撮像手段のシャッタスピードを設定する撮像条件設定手段とを備えた計算機とを有することを特徴とする。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、高温の被写体を撮影する際に生じる像ぶれを軽減し、二次元コードを高い成功率で読み取ることができるという効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【図1】図1は、本発明の実施の形態にかかる二次元コード読取装置の構成を示す図である。
【図2】図2は、実施の形態にかかる二次元コード読取装置の動作を示すフローチャートである。
【図3】図3は、データテーブルのデータ構造の一例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下に、本発明にかかる二次元コード読取装置の実施の形態を図面に基づいて詳細に説明する。なお、この実施の形態によりこの発明が限定されるものではない。
【0010】
実施の形態.
図1は、本発明の実施の形態にかかる二次元コード読取装置の構成を示す図である。二次元コード読取装置は、コードリーダ1、温度計測器2、照明3、XYステージ4、計算機7、表示装置8、及び入力装置9を有する。コードリーダ1は、撮像装置11と、撮像装置11で撮影した画像に含まれる二次元コードを読み取って情報をデコードする(二次元コードを読み取る)読取部12と、二次元コードの読み取りの成否を判定する判定部13とを有し、デコードした情報及び読取成否判定結果を計算機7へ出力する機能を備える。撮像装置11は、例えばCCDイメージセンサである。温度計測器2は、大気の温度(気温)を計測する機能と、計測値を計算機7へ出力する機能とを備える。照明3は、計算機7からの指令に基づいて光束を調整する機能を備える。XYステージ4は、表面温度を所定の範囲(例えば0〜200℃)で調整する機能を備える。また、XYステージ4は、被写体5の表面に表示された二次元コードがコードリーダ1の撮像範囲に入るように被写体5もろとも移動可能である。計算機7は、大気の温度差別及びシャッタスピード(露光時間)別の二次元コード読取実績(読取回数、読取成否判定でのOK数及びNG数)と、シャッタスピード別の光束とを示すデータテーブル6を有する。また、計算機7は、温度計測器2の測定結果に基づいて、コードリーダ1の近傍の大気と被写体5の近傍の大気との温度差を算出する温度差算出部71と、コードリーダ1の撮像装置11のシャッタスピードや照明3の光束を設定する撮像条件設定部72と、コードリーダ1から通知された読取成否判定結果に基づいてデータテーブル6を更新するテーブル更新部73とを有する。温度差算出部71、撮像条件設定部72及びテーブル更新部73は、計算機7のCPUがRAMなどをワークスペースとしたソフトウェア処理を行うことによって、計算機7内に実現される。表示装置8は、デコードした情報や問い合わせメッセージなどを表示する装置である。入力装置9は、ユーザが入力操作を行うためのユーザインタフェースである。
【0011】
被写体5は、表面に二次元コードが印字されており、XYステージ4上に載置されている。
【0012】
図2は、本実施の形態にかかる二次元コード読取装置の動作を示すフローチャートである。読取処理開始後、計算機7は、コードリーダ1付近の大気の温度及び被写体5付近の大気の温度を温度計測器2から取得する(ステップS101)。
【0013】
高温の被写体を撮影する際に生じる像ぶれの大きさは、撮像装置と被写体との間での大気の屈折率の変動に依存するものであり、大気の屈折率は大気の温度と大気圧と水蒸気圧との関数で表されることが経験的に知られている。従って、大気圧と水蒸気圧とが一定という条件下では、大気の屈折率変動による像ぶれの大きさは撮像装置と被写体との間での大気の温度差に依存するとみなすことができる。すなわち、本実施の形態においては、像ぶれの大きさはコードリーダ1付近の大気と被写体5付近の空気との温度差に依存するとみなすことができる。
【0014】
既知の事実として、シャッタスピードを小さく(露光時間を短く)するほど撮像した画像の像ぶれを軽減できるが、ノイズの影響が大きくなる。すなわち、像ぶれが小さい場合には、二次元コードの読み取りに失敗する原因としてはノイズの影響が支配的となるため、シャッタスピードを大きくした方が読取率(OK数/読取回数)は高くなる傾向にある。一方、像ぶれが大きい場合には、二次元コードの読み取りに失敗する原因としては像ぶれの影響が支配的となるため、シャッタスピードを小さくした方が読取率は高くなる傾向にある。なお、光束が一定の条件ではシャッタスピードを小さくするほど撮像した画像は暗くなる。したがって、像ぶれの程度に合わせてシャッタスピードを調整し、さらにシャッタスピードに合わせて光束を調整する必要がある。
【0015】
大気温度取得後、温度差算出部71は、コードリーダ1付近の大気の温度と被写体5付近の大気の温度との差を算出する。撮像条件設定部72は、温度差算出部71が算出した大気の温度差に基づいてデータテーブル6を参照して、読取率が最も高いシャッタスピード及び光束を選定し、コードリーダ1のシャッタスピード及び照明3の光束を調整する(ステップS102)。図3は、データテーブル6のデータ構造の一例を示す図である。データテーブル6は、大気の温度差別及びシャッタスピード別の二次元コード読取実績を示すテーブル6aと、シャッタスピード別の光束を示すテーブル6bとを備えている。
【0016】
シャッタスピード及び光束の調整が完了した後、コードリーダ1は被写体5に印字されている二次元コードを撮像装置11で撮像し、撮像した画像内の二次元コードを読取部12で読み取って情報をデコードする(ステップS103)。判定部13は、情報のデコードに成功したか否かを判定する。計算機7は、コードリーダ1から出力された読取成否判定結果及びデコードされた情報(デコード情報)を取得する(ステップS104)。
【0017】
読取成否判定結果及びデコード情報を取得した計算機7は、取得した情報を表示装置8へ出力して表示させる。また、テーブル更新部73は、ステップS102で算出した大気の温度差及びステップS102で選定したシャッタスピードの組み合わせに対応するデータテーブル6中の二次元コード読取実績(読取回数、OK数、NG数)を、ステップS104で取得した読取成否判定結果に基づいて更新する(ステップS105)。
【0018】
読取成否判定結果がNGの場合(ステップS106/no)、計算機7はリトライの要否を問い合わせるメッセージを表示装置8に表示させる。このメッセージに応じて入力装置9を介してリトライを要求する操作がなされた場合(ステップS107/yes)、ステップS101に戻って上記の動作を繰り返す。リトライを要求する操作が入力装置9を介してなされなかった場合には(ステップS107/no)、処理を終了する。
【0019】
読取成否判定結果がOKの場合も(ステップS106/ok)処理を終了する。
【0020】
本実施の形態にかかる二次元コード読取装置は、大気の温度差に基づいてコードリーダ1のシャッタスピードを調整することで、特に、高温の被写体を撮影する際に生じる像ぶれを軽減し、読取精度を向上させることができる。また、二次元コードの読取実績をデータテーブル6に自動的に反映させるため、読取回数の増加につれてステップS102の処理でより適切なシャッタスピードを選択できるようになる。照明3の発光を伴う二次元コードの読み取り回数を低減することにより、省エネルギー化を実現できる。また、二次元コードを読み取れないまま読取処理を終了する可能性が低くなるため、被写体5が不良品として扱われにくく、歩留まりが向上する。
【産業上の利用可能性】
【0021】
以上のように、本発明にかかる二次元コード読取装置は、被写体に表示された二次元コードを高精度に読み取ることのできる点で有用であり、特に、高温の被写体に表示された二次元コードを読み取るのに適している。
【符号の説明】
【0022】
1 コードリーダ
2 温度計測器
3 照明
4 XYステージ
5 被写体
6 データテーブル
6a、6b テーブル
7 計算機
8 表示装置
9 入力装置
11 撮像装置
12 読取部
13 判定部
71 温度差算出部
72 撮像条件設定部
73 テーブル更新部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
被写体を撮像する撮像手段と、該撮像手段が撮像した画像内の二次元コードを読み取って情報をデコードする読取手段とを備えたコードリーダと、
前記コードリーダ近傍及び前記被写体近傍の大気の温度を測定する温度測定手段と、
前記温度測定手段の測定結果を基に前記コードリーダ近傍の大気と前記被写体近傍の大気との温度差を算出する温度差算出手段と、該温度差算出手段が算出した温度差に基づいて、前記撮像手段のシャッタスピードを設定する撮像条件設定手段とを備えた計算機と、を有することを特徴とする二次元コード読取装置。
【請求項2】
前記計算機は、前記コードリーダ近傍の大気と前記被写体近傍の大気との温度差と、前記撮像手段のシャッタスピードと、前記二次元コードの読み取り成功率とが関連付けられて登録されたテーブルを備え、
前記撮像条件設定手段は、前記テーブルに基づいて、前記温度差算出手段が算出した温度差における最も高い前記読み取り成功率に対応するシャッタスピードを選択し、前記撮像手段に設定することを特徴とする請求項1記載の二次元コード読取装置。
【請求項3】
前記コードリーダは、前記読取手段による前記二次元コードの読み取りの成否を判定する判定手段と、該判定手段の判定結果を前記計算機に通知する通知手段とを有し、
前記計算機は、前記コードリーダから通知された前記二次元コードの読み取りの成否結果に基づいて前記テーブルを更新するテーブル更新手段を有することを特徴とする請求項2記載の二次元コード読取装置。
【請求項4】
前記被写体を照明する照明装置を有し、
前記撮像条件設定手段は、前記照明装置が発する光束を前記撮像手段に設定するシャッタスピードに合わせて増減させることを特徴とする請求項1から3のいずれか1項記載の二次元コード読取装置。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate


【公開番号】特開2012−108789(P2012−108789A)
【公開日】平成24年6月7日(2012.6.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−258071(P2010−258071)
【出願日】平成22年11月18日(2010.11.18)
【出願人】(000006013)三菱電機株式会社 (33,312)
【Fターム(参考)】