説明

二次電池と、その負極の検査方法と検査装置および製造方法と製造装置

【課題】負極活物質を集電体上に塊状(柱状)に形成する際に活物質塊である柱状体同士の間の隙間を管理し、高エネルギー密度とともに、サイクル特性に優れた二次電池を安定して製造する。
【解決手段】本発明の負極の検査方法では少なくとも片面に複数の凸部を有する集電体21上に形成され、その凸部から斜立する活物質の第1柱状体を含む活物質層に光を照射し、活物質層からの反射光と、集電体21の厚み方向に平行な法線との角度を測定する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、二次電池に用いる負極の製造方法と製造装置およびそれらによって製造した負極を用いた二次電池に関し、より詳しくはケイ素(Si)やSi化合物などの高容量密度を有する活物質を用いた非水電解質二次電池用負極の検査方法と検査装置および製造方法と製造装置に関する。
【背景技術】
【0002】
リチウムイオン二次電池に代表される非水電解質二次電池は、ポータブル機器を中心に高容量電源として注目されている。近年、この電池のさらなる高容量化を目的に、電極材料の開発(高容量密度活物質の活用および副材料の減量)や機構部品の改良(薄型化など)が活発化している。
【0003】
中でも負極活物質としてのSiおよびSi化合物は、理論容量が黒鉛を遥かに凌ぐ高容量密度材料であり、その活用に向けた改良研究が試みられている。しかしながら高容量密度の負極活物質は一般に、充放電に伴い膨張・収縮する。粒子状の活物質を導電剤やバインダーと混練して活物質層を集電体上に形成した負極にこのような高容量密度材料を適用すると、この膨張・収縮により、活物質層内あるいは活物質層と集電体との導電ネットワークが崩れる。あるいは膨張時の圧縮応力などにより活物質粒子自体が微粉化する。その結果、活物質粒子間の導電性が低下する。これらの理由により、充分な充放電サイクル特性(以下、「サイクル特性」という)が得られない。
【0004】
これに対し、Siを銅箔などの集電体上にスパッタ法により薄膜形成して負極に用いた非水電解質二次電池(例えば特許文献1)や、Siを含む傾斜した柱状の活物質を気相法により集電体上に形成した負極を用いた非水電解質二次電池(例えば特許文献2)が報告されている。
【0005】
特許文献1では集電体上に設けられた活物質薄膜がその厚み方向に形成された切れ目によって柱状に分離されており、この柱状部分の周囲の隙間によって充放電に伴う活物質の膨張・収縮による応力を緩和している。特許文献2では傾斜した柱状の活物質を集電体上に形成することにより、活物質の膨張による応力を集電体の主面に対して平行な方向と垂直な方向に分散することによってサイクル特性を改善している。
【特許文献1】特開2002−83594号公報
【特許文献2】特開2005−196970号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら特許文献1、2のように、充放電に伴う膨張・収縮の大きい高容量密度材料からなる活物質を集電体上に形成する場合には、塊状の活物質同士の間に隙間を適切に設ける必要がある。しかしながら特許文献1における隙間は、充放電による膨張・収縮により活物質薄膜の厚み方向に切れ目が形成されることで設けられる。そのため、隙間の大きさの制御は困難である。特許文献2は塊状の活物質同士の間の隙間について言及していない。
【0007】
本発明はこの課題を解決するものであり、高容量密度を有する負極活物質を集電体上に塊状(柱状)に形成する際に活物質塊である柱状体同士の間の隙間を管理することを目的とする。そしてそれによって高エネルギー密度とともに、サイクル特性に優れた二次電池とそれに用いる負極の検査方法と検査装置、それを用いた製造方法、製造装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するために、本発明の二次電池用負極の検査方法では、少なくとも片面に複数の凸部を有する集電体上に形成され、凸部から斜立する活物質の第1柱状体を含む活物質層に光を照射し、この活物質層からの反射光と、集電体の厚み方向に平行な法線との角度を測定する。この検査方法では活物質の第1柱状体の成長角度を管理することができる。そして本発明の二次電池用負極の製造方法では測定した角度を用いて第1柱状体の成長角度を制御する。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、高容量密度を有する負極活物質を集電体上に柱状に形成する際に活物質の柱状体の成長角度を管理することができ、柱状体同士の間の隙間の大きさを管理することができる。そのため、サイクル特性に優れた二次電池用負極とそれを用いた二次電池を安定して製造することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
本発明の第1の発明は、少なくとも片面に複数の凸部を有する集電体上に形成され、凸部から斜立する活物質の第1柱状体を含む活物質層に光を照射し、活物質層からの反射光と、集電体の厚み方向に平行な法線との角度を測定する二次電池用負極の検査方法である。この検査方法では活物質の第1柱状体の成長角度に依存する法線と反射光との角度が適正か判断できる。これにより、例えば適切な組成の活物質層が形成された負極を選択することができる。
【0011】
本発明の第2の発明は、第1の発明においてさらに測定した角度から法線に対する第1柱状体の成長角度を推定する二次電池用負極の検査方法である。この検査方法では活物質の第1柱状体の成長角度を推定することができる。そのためサイクル特性に優れた二次電池用負極とそれを用いた二次電池を安定して製造することができる。
【0012】
本発明の第3の発明は、第1の発明において角度を測定する際に、反射光を受ける位置を移動しながら反射光の強度を計測することで、強度の最も大きくなる位置を決定して反射光と法線との角度を測定する二次電池用負極の検査方法である。このようにすることで強度が最も大きくなる反射光の到達方向を確実に決定することができ、反射光と法線との角度を測定することができる。
【0013】
本発明の第4の発明は、第1の発明における角度を測定する際に、反射光を受ける位置を複数設け、各位置で反射光の強度を計測することで、強度の最も大きくなる位置を決定して反射光と法線との角度を測定する二次電池用負極の検査方法である。このようにすることでも強度が最も大きくなる反射光の到達方向を確実に決定することができ、反射光と法線との角度を測定することができる。
【0014】
本発明の第5の発明は、第1の発明における角度を測定する際に、内面が活物質層に向けて配置された半球状のドーム体を設け、活物質層からの反射光の分布をドーム体の内面を介して検出することで、反射光の強度が最も大きくなる角度を決定して反射光と法線との角度を測定する二次電池用負極の検査方法である。このようにすることでも強度が最も大きくなる反射光の到達方向を確実に決定することができ、反射光と法線との角度を測定することができる。
【0015】
本発明の第6の発明は、第1の発明における角度を測定する際に、反射光を受ける固定位置における光の強度を計測することで、強度の最も大きくなる位置と固定位置とのずれ角度を推定して反射光と法線との角度を測定する二次電池用負極の検査方法である。このようにすることでも強度が最も大きくなる反射光の到達方向を確実に決定することができ、反射光と法線との角度を測定することができる。
【0016】
本発明の第7の発明は、第1の発明において測定した角度を、活物質層の形成にフィードバックして活物質層における第1柱状体の成長角度を所定範囲内に調整する二次電池用負極の製造方法である。具体的にはこのように第1柱状体の成長角度を、活物質層を形成するステップにフィードバックすることで活物質の第1柱状体の成長角度を管理することができ、それを用いて第1柱状体同士の間の隙間を制御することができる。
【0017】
本発明の第8の発明は、第7の発明における活物質層を形成する際に、蒸気を用いた気相法で活物質層を形成するとともに、成長角度を所定範囲内に調整する際に、蒸気の移動方向と集電体との角度を変更する二次電池用負極の製造方法である。具体的にはこのようにすることで第1柱状体の成長角度を所定範囲内に調整することができる。
【0018】
本発明の第9の発明は、第8の発明における活物質層を形成する際に集電体を移動させ、成長角度を所定範囲内に調整する際に固定された蒸気の発生源に対する集電体の角度を変更する二次電池用負極の製造方法である。このように蒸気の発生源を固定して蒸気の発生源に対する集電体の角度を変更することで蒸気の移動方向と集電体との角度を変更することができる。
【0019】
本発明の第10の発明は、第8の発明における成長角度を所定範囲内に調整する際に、蒸気の移動方向を変更する二次電池用負極の製造方法である。このように蒸気の移動方向を変更することで蒸気の移動方向と集電体との角度を変更することができる。
【0020】
本発明の第11の発明は、第7の発明において、蒸気とこの蒸気と反応する気体とを用いた反応性気相法で活物質層を形成するとともに、成長角度を所定範囲内に調整する際に、気体の流量を変更する二次電池用負極の製造方法である。活物質層を化合物で構成する場合、その組成によって成長角度が変化する場合がある。そこで組成を調整するために気体の流量を変更することで、組成に加え成長角度も適正にすることができる。
【0021】
本発明の第12の発明は、第7の発明において、第1柱状体から斜立する、活物質の第2柱状体を形成して活物質層の層厚を増し、活物質層に光を照射し、第2柱状体からの反射光と集電体の厚み方向に平行な法線との角度を測定し、測定した角度から法線に対する第2柱状体の成長角度を推定し、推定した第2柱状体の成長角度を、第2柱状体の形成にフィードバックして活物質層における第2柱状体の成長角度を所定範囲内に調整する二次電池用負極の製造方法である。このように第1柱状体から斜立する第2柱状体を設けた場合も同様にして法線に対する第2柱状体の成長角度を推定し、第2柱状体を形成するステップにフィードバックすることができる。したがって屈曲点を持つ形状の柱状活物質塊を形成する場合にもその屈曲点を柱状体ごとに管理することができる。
【0022】
本発明の第13の発明は、第7から第12のいずれか一項の製造方法で作製した負極と、負極に対向して設けられた正極と、負極と正極とに介在する電解質と、を有する二次電池である。このように柱状体同士の間の隙間を制御した負極を用いて作製した二次電池はサイクル特性に優れるとともに安定して製造することができる。
【0023】
本発明の第14から第26の発明は第1から第12の発明を実施するための検査装置、製造装置である。具体的には、本発明の第14の発明は、照射部と、受光部と、演算部とを有する二次電池用負極の検査装置である。照射部は少なくとも片面に複数の凸部を有する集電体上に形成されて、その凸部から斜立する活物質の第1柱状体を含む活物質層に光を照射する。受光部は活物質層からの反射光を受ける。演算部は、集電体の厚み方向に平行な法線と反射光との角度を演算する。
【0024】
本発明の第15の発明は、演算部で演算した角度から法線に対する第1柱状体の成長角度を推定する第1算出部をさらに有する。
【0025】
本発明の第16の発明は、第14の発明における受光部が可動であり、演算部は、受光部が受ける反射光の強度の最も大きくなる位置を検出する二次電池用負極の検査装置である。このように受光部を動かして反射光の強度の最も大きくなる位置を検出することで反射光の到達方向を確実に決定することができ、反射光と法線との角度を測定することができる。
【0026】
本発明の第17の発明は、第14の発明における受光部が反射光を受ける位置を複数有し、演算部は、受光部の各位置で反射光の強度を比較し強度の最も大きくなる位置を決定する二次電池用負極の検査装置である。このような構成でも反射光の到達方向を確実に決定することができ、反射光と法線との角度を測定することができる。
【0027】
本発明の第18の発明は、第14の発明において内面が活物質層に向けて配置され、底部に開口部を有し、照射部と受光部とが固定された半球状のドーム体をさらに備え、受光部は、活物質層からの反射光の分布をドーム体の内面を介して検出し、演算部は、反射光の強度が最も大きくなる角度を決定する二次電池用負極の検査装置である。このような構成でも反射光の到達方向を確実に決定することができ、反射光と法線との角度を測定することができる。
【0028】
本発明の第19の発明は、第14の発明における受光部が固定状態または半固定状態であり、演算部は、反射光の強度を計測することで、強度の最も大きくなる位置と受光部の固定位置とのずれ角度を推定する二次電池用負極の検査装置である。このような構成でも反射光の到達方向を確実に決定することができ、反射光と法線との角度を測定することができる。
【0029】
本発明の第20の発明は、第14の発明と、集電体上に活物質層を形成する第1形成部と、測定した角度を第1形成部にフィードバックして活物質層における第1柱状体の成長角度を所定範囲内に調整する制御部と、をさらに備えた二次電池用負極の製造装置である。具体的にはこのように第1柱状体の成長角度を、活物質層を形成する第1形成部にフィードバックすることで活物質の第1柱状体の成長角度を管理することができ、それを用いて第1柱状体同士の間の隙間を制御することができる。
【0030】
本発明の第21の発明は、第20の発明における第1形成部が蒸気を用いた気相法で活物質層を形成するとともに、制御部が蒸気の移動方向と集電体との角度を変更する二次電池用負極の製造装置である。具体的にはこのようにすることで第1柱状体の成長角度を所定範囲内に調整することができる。
【0031】
本発明の第22の発明は、第21の発明における第1形成部が、集電体を送り出す側に設けられた第1支点部と、活物質層を形成した集電体を収容する側に設けられ、第1支点部とともに集電体を支える第2支点部とを有し、制御部が、第1支点部と第2支点部との少なくとも一方を移動することで固定された蒸気の発生源に対する集電体の角度を変更する二次電池用負極の製造装置である。このような構成により第1柱状体の成長角度を所定範囲内に調整することができる。
【0032】
本発明の第23の発明は、第21の発明における制御部が、蒸気の発生源を移動することで蒸気の移動方向を変更する二次電池用負極の製造装置である。このような構成により第1柱状体の成長角度を所定範囲内に調整することができる。
【0033】
本発明の第24の発明は、第21の発明における第1形成部が、蒸気の移動方向を制御するためのマスクを有し、制御部がマスクを移動することで蒸気の移動方向を変更する二次電池用負極の製造装置である。このような構成でも第1柱状体の成長角度を所定範囲内に調整することができる。
【0034】
本発明の第25の発明は、第20の発明において第1形成部が、蒸気とこの蒸気と反応する気体とを用いた反応性気相法で活物質層を形成するとともに、その成長角度を所定範囲内に調整する際に、気体の流量を変更する流量調節部をさらに有する二次電池用負極の製造装置である。
【0035】
本発明の第26の発明は、第20の発明において第2形成部と、第2計測部と、第2算出部と、をさらに有する二次電池用負極の製造装置である。第2形成部は第1柱状体から斜立する、活物質の第2柱状体を形成して活物質層の層厚を増す。第2計測部は、活物質層に光を照射し、第2柱状体からの反射光と、集電体の厚み方向に平行な法線との角度を測定する。第2算出部は第2計測部で測定した角度から法線に対する第2柱状体の成長角度を推定する。そして制御部は、推定した第2柱状体の成長角度を第2形成部にフィードバックして活物質層における第2柱状体の成長角度を所定範囲内に調整する。このように第1柱状体から斜立する第2柱状体を設けた場合も同様にして法線に対する第2柱状体の成長角度を推定し、第2形成部にフィードバックすることができる。したがって屈曲点を有する形状の柱状活物質塊を形成する場合にも、その成長角度を柱状体ごとに管理することができる。
【0036】
以下、本発明の実施の形態について、図面を参照しながら、説明する。なお、本発明は、本明細書に記載された基本的な特徴に基づく限り、以下に記載の内容に限定されるものではない。なお以下の説明では、活物質としてリチウムイオンを電気化学的に吸蔵・放出可能な酸化ケイ素(SiO)を用い、銅製の集電体上に活物質層を形成して負極として用いる場合を中心に説明する。なおSiOはケイ素と酸素とを含む化合物であるが、不純物を含んでいてもよい。
【0037】
(実施の形態1)
図1は本発明の実施の形態1による二次電池用負極の製造装置の構成を示す概略図である。図2はその要部の詳細を示すブロック図である。図3は図1に示す製造装置で作製した二次電池用負極の概略断面図である。なお、簡略化のため図3は負極の片面のみ示している。すなわち集電体21の両面に凸部21Aが設けられているが、図3では片面のみを示している。図4は図3に示す集電体の厚み方向に平行な法線に対する第1柱状体の成長角度を推定する方法を説明するための図である。
【0038】
製造装置30では巻き出しロール1から成膜ロール7A、7Bを経て巻取ロール6へと集電体21が送られる。これらのロールと蒸着ユニット4A、4Bは真空容器20の中に設けられている。真空容器20内は真空ポンプ2により減圧される。蒸着ユニット4A、4Bでは蒸着ソース、るつぼ、電子ビーム発生装置がユニット化されている。この装置を用いて図3に示すように集電体21の上に片側の負極の活物質層である活物質層23を形成する手順を説明する。
【0039】
集電体21は、表面に多数の凸部21Aを有する。例えば、パターン電解めっきにより、集電体の厚み方向に高さ10μm、幅10μm、奥行き10μmの凸部を複数設けた厚さ30μmの電解銅箔を集電体21として用いる。あるいは、粗化した電解銅箔(粗化銅箔)を集電体21として用いてもよい。
【0040】
真空容器20の内部は、真空に近い不活性雰囲気になっている。例えば圧力10−3Paのアルゴン雰囲気とする。蒸着時には、電子ビーム発生装置により発生させた電子ビームを偏向ヨークにより偏光させ、蒸着ソースに照射する。この蒸着ソースには、例えば半導体ウェハを形成する際に生じるSiの端材(スクラップシリコン:純度99.999%)を用いる。なおマスク3Aの開口部の形状を調整するとともに、第1支点部である支点ロール5Aから第2支点部である成膜ロール7Aとの間の位置で集電体21にSi蒸気が入射するように配置することで、蒸着ユニット4Aから発生したSi蒸気が集電体21の面に垂直に入射しないようにしている。さらにマスク3Aを開閉させることによって活物質層23を形成せず集電体21が露出した部分を形成する。
【0041】
このようにして集電体21の面にSi蒸気を供給しつつ集電体21を巻き出しロール1から巻取ロール6へと送る。このときノズル9Aから真空容器20内に高純度(例えば99.7%)の酸素を導入すると蒸着ユニット4Aから発生したケイ素蒸気とノズル9Aから導入された酸素とが反応して集電体21上に凸部21Aを基点としてSiOからなる第1柱状体22が生成する。このようにして活物質層23を形成することができる。
【0042】
すなわち、蒸着ユニット4A、ノズル9A、支点ロール5A、成膜ロール7Aは酸素を含む雰囲気中でケイ素を用いて気相法により、少なくとも片面に複数の凸部21Aを有する集電体21の表面に凸部21Aから斜立する活物質であるSiOからなる第1柱状体22を含む活物質層23を形成する第1形成部を構成している。
【0043】
なお成膜ロール7Aにて片面に第1柱状体22を形成した後、第3支点部である支点ロール8A、第4支点部である支点ロール5Bを経て集電体21を成膜ロール7Bに送り、同様の方法により集電体21のもう一方の面にも第1柱状体22を形成することができる。
【0044】
次に第1柱状体22の成長方向を所定の範囲内に保つための構成について説明する。なお、以下の説明では一方の活物質層である活物質層23に関して主に説明する。図1に示すように、第1計測部10Aは第1柱状体22を含む活物質層23を形成した集電体21に対して光を照射し、反射光を受ける。そして図2に示すように第1計測部10Aは活物質層23に光を照射する照射部11と、活物質層23からの反射光を受ける受光部12と、集電体21の厚み方向に平行な法線と反射光との角度を演算する演算部13とを有する。照射部11と受光部12と演算部13とは、二次電池用負極の検査装置を構成している。
【0045】
第1算出部14は第1計測部10Aの演算部13で測定した角度から集電体21の厚み方向に平行な法線に対する第1柱状体22の成長角度を推定する。制御部15は推定した第1柱状体22の成長角度を第1形成部にフィードバックする。具体的には、例えば制御部15は位置調整部16を制御し、支点ロール5Aを移動させる。これによりSi蒸気の移動方向に対する集電体21の角度が変更される。すなわち、制御部15はSi蒸気の移動方向と集電体21との角度を変更する。これにより制御部15は第1柱状体22の成長角度を所定範囲内に調整する。
【0046】
次に、図4、図5を用いて演算部13での演算方法と第1算出部14での第1柱状体22の成長角度推定方法を説明する。図5は本発明の実施の形態1による二次電池用負極の製造装置の第1計測部10Aによる反射光の検出角度と反射光の強度との関係を示す概念図である。
【0047】
照射部11からの入射光31は、第1柱状体22の表面で反射し、反射光32が射出されている。直線33は第1柱状体22の表面を表し、直線35は直線33に対する法線を示している。また直線34は集電体21の厚み方向に平行な、集電体21に対する法線を示している。
【0048】
図5に示すように、反射光32の強度は検出角度が角度aのときに最大となる。ここで検出角度は、直線34を基準としている。角度bは直線34に対する入射光31の角度である。角度cは直線34に対する直線35のなす角であり、角度dは直線34に対する第1柱状体の成長方向の角度を示している。すなわち、演算部13は、受光部12が受けた反射光32の強度が最大になる位置から直線34と反射光32との角度aを演算する。
【0049】
角度cは式(1)により算出でき、これにより角度dは式(2)により算出できる。
【0050】
【数1】

【0051】
【数2】

【0052】
このように、第1算出部14は演算部13で得られた角度aと、予め設定された角度bを用いて式(1)、(2)により角度dを算出する。すなわち、直線34に対する第1柱状体22の成長角度を推定する。
【0053】
なお、制御部15は必ずしも第1算出部14で第1柱状体22の成長角度を推定した結果を用いなくても、演算部13で得られた角度aを用いて第1柱状体22の成長角度を制御してもよい。
【0054】
なお、図2の構成では制御部15は、支点ロール5Aを移動させてSi蒸気の移動方向と集電体21との角度を変更するが、他の方法でSi蒸気の移動方向と集電体21との角度を変更してもよい。例えば、成膜ロール7Aを移動してもSi蒸気の移動方向に対する集電体21の角度を変更することができる。また支点ロール5A、成膜ロール7Aの両方を移動してもよく、その移動方向も上下や左右のいずれでもよい。ただし、成膜ロール7Aを移動させると集電体21と第1計測部10Aとの位置関係も変わってしまう。そのため成膜ロール7Aを移動させる場合には第1計測部10Aの取り付け角度もそれに合せて修正する。このようにSi蒸気の発生源である蒸着ユニット4Aを固定して蒸着ユニット4Aに対する集電体21の角度を変更することでSi蒸気の移動方向と集電体21との角度を変更することができる。
【0055】
またSi蒸気の移動方向を変更することでSi蒸気の移動方向と集電体21との角度を変更してもよい。この場合、例えば蒸着ユニット4Aを図1における横方向に移動することによってSi蒸気の移動方向を変えることができる。あるいは、マスク3Aを図1における横方向に移動することでSi蒸気の移動方向を変更することができる。いずれの方法でも直線34に対する第1柱状体22の成長角度を所定範囲内に調整することができる。
【0056】
またSi蒸気と、Si蒸気と反応する気体である酸素とを用いた反応性気相法で活物質層23を形成する場合、その組成によって第1柱状体22の成長角度が変化する。すなわちSiOにおけるx値に応じて第1柱状体22の成長角度が変化する。そこで組成を調整するために流量調節部を設けて酸素の流量を変更することで、組成に加え成長角度も適正にすることができる。
【0057】
上述のような蒸着ユニット4Aに対する集電体21の角度を変更する調整方法は、主として、活物質層23を形成する作業を開始する際の初期調整として活用できる。一方、酸素流量を変更する方法は活物質層23を形成する作業を行っている間の条件再設定に活用できる。
【0058】
以上のように製造装置30は第1計測部10Aと、第1算出部14とを有する。第1計測部10Aは、照射部11と、受光部12と、演算部13とを有する。照射部11は少なくとも片面に複数の凸部21Aを有する集電体21上に形成されて、凸部21Aから斜立する活物質の第1柱状体22を含む活物質層23に入射光31を照射する。受光部12は活物質層23からの反射光32を受ける。演算部13は、集電体21の厚み方向に平行な法線である直線34と反射光32との角度を演算する。第1算出部14は第1計測部10Aで測定した角度から直線34に対する第1柱状体22の成長角度を推定する。このように製造装置30では第1柱状体22の成長角度を管理することができ、それを用いて第1柱状体22同士の間の隙間を制御することができる。
【0059】
次に、受光部12の種々の構成について説明する。図6は本発明の実施の形態1による二次電池用負極の製造装置の受光部の構成を説明するための概念図である。受光部12はCdSやフォトダイオード、フォトトランジスタなどの受光素子で構成されており、例えばレーザ照射器などの光源からなる照射部11と同一円周上に、レール41に保持されている。受光部12はレール41上を移動可能に取り付けられている。レール41は集電体21の移動方向と集電体21の厚み方向とに平行な面内に設けられている。そして受光部12はレール41上を移動しながらその位置と、反射光32の強度とを演算部13に送る。これにより演算部13は反射光32の強度が最大となる受光部12の位置を検出する。すなわち、演算部13は図5に示す情報を検出する。その情報を基に演算部13は角度aを算出することができる。
【0060】
図7は本発明の実施の形態1による二次電池用負極の製造装置の受光部の他の構成を説明するための概念図である。図7(a)の構成では受光部が保持部42に固定された複数の受光素子12A、12B、12Cで構成されており、演算部13はどの受光素子が受ける反射光の強度が最も大きいかを比較する。保持部42はレール41と同様、集電体21の移動方向と集電体21の厚み方向とに平行な面内に設けられている。これにより演算部13は受光素子12A、12B、12Cのうち反射光の強度が最大となる受光素子の位置を基に演算部13は角度aを算出することができる。なお図7(a)では、弧状の保持部42を示しているが、直線状でもよい。
【0061】
図7(b)の構成では、受光部が、保持部42に固定された複数の光ファイバ43と、そのそれぞれに接続された伝送用光ファイバ44と、光エンコーダ45と、受光素子12Dとで構成されている。光ファイバ43が受けた反射光は伝送用光ファイバ44と光エンコーダ45とを介して受光素子12Dに送られる。すなわち、複数の光ファイバ43が受けた反射光は受光素子12Dに順次入射される。これにより演算部13は光ファイバ43のうち反射光の強度が最大となる光ファイバの位置を、光エンコーダ45の切り替え状態を基に検出し、角度aを算出することができる。
【0062】
図7(c)の構成では、受光部が、保持部42に固定されたCCDラインセンサなどの受光素子ブロック12Eで構成されている。受光素子ブロック12Eは受けた反射光の位置を演算部13に送る。これにより演算部13は反射光の強度が最大となる位置を、受光素子ブロック12Eの出力を基に検出し、角度aを算出することができる。
【0063】
このように、図7に示す構成では、受光部が反射光を受ける位置を複数有し、演算部13は、受光部の各位置で反射光の強度を比較し強度の最も大きくなる位置を決定する。このような構成でも反射光の到達方向を確実に決定することができる。
【0064】
図8は本発明の実施の形態1による二次電池用負極の製造装置の受光部のさらに他の構成を説明するための概念図である。この構成では照射部11と受光部であるCCDカメラ12Fが半球状のドーム体46に固定されている。スクリーンで構成されたドーム体46の内面は活物質層23に対向して配置され、ドーム体46の底部には開口部47が設けられ、その近傍にはミラー48が配置されている。CCDカメラ12Fは、ミラー48を介してドーム体46の内面のスクリーン全体を映す。なおドーム体46は、その底部が集電体21の厚さ方向に垂直になるように配置されている。
【0065】
照射部11からの入射光31は開口部47から活物質層23に照射される。ここで、活物質層23に入射した入射光31は活物質層23で散乱し、ドーム体46の内面に向かって進む。このとき、第1柱状体22で反射された反射光32の位置が最も光強度が大きくなる。CCDカメラ12Fは、ミラー48を介してドーム体46の内面のスクリーン全体を映す。CCDカメラ12Fの信号を受け、演算部13は最も光強度が大きい位置を検知して角度aを算出する。
【0066】
なお、ドーム体46の内面を鏡面で構成し、この鏡面の焦点に凸状のスクリーンをミラー48の代わりに配置してもよい。このようにしてもCCDカメラ12Fは反射光の分布を検知することができる。以上のように、内面が活物質層23に向けて配置された半球状のドーム体46を設ける。そして受光部であるCCDカメラ12Fが活物質層23からの反射光の分布をドーム体46の内面を介して検出する。このような構成により演算部13は反射光の強度が最も大きくなる角度を決定して反射光と法線との角度を測定することができる。
【0067】
図9は本発明の実施の形態1による二次電池用負極の製造装置の受光部のさらに別の構成を説明するための概念図である。この構成では、受光部12Gが保持部42に固定されており、演算部13は反射光の強度を計測することで、強度の最も大きくなる位置と受光部12Gの固定位置とのずれ角度を推定する。これにより演算部13は反射光の強度が最大となる位置を推定し、角度aを算出することができる。なお、受光部12Gを半固定状態にして保持部42上を微小に動くことができるようにすれば、反射光の強度は受光部12Gの動きにつれて大きくなるか小さくなるかする。これによって反射光の強度が最大となる位置が受光部12Gのどちら側にあるのか確実に検知できるため好ましい。
【0068】
なお、活物質としてSiを用いる場合には、ノズル9Aから酸素を導入しなければよい。あるいは図1においてノズル9Aを設けなければよい。
【0069】
以上のようにして作製された負極は所定の寸法に切断され、必要に応じてマスク3Aを用いて形成した集電体21が露出した部分にリードを接合し、セパレータを介してリチウムイオンを吸蔵・放出可能な正極と捲回し円筒形や角形の非水電解質二次電池を構成する。あるいは集電体21の片側のみに活物質層23を形成した状態で所定の寸法に打ち抜いてコイン型電池の負極として用いてもよい。このように本実施の形態による製造装置で作製した負極を用いる電池の形態は特に限定されない。また上記説明では非水電解質二次電池を例に説明したが水溶液を電解質とする二次電池に適用してもよい。これは以下の実施の形態2においても同様である。
【0070】
(実施の形態2)
図10は本発明の実施の形態2による二次電池用負極の製造装置の構成を示す概略図である。図11は図10に示す製造装置で作製した二次電池用負極の概略断面図である。なお、簡略化のため図11は負極の片面のみ示している。これらの図面に示す集電体21は実施の形態1の集電体21と同様である。
【0071】
製造装置50では、巻き出しロール51から第1支点部である支点ロール54A、第2支点部である支点ロール54B、第3支点部である支点ロール54Cを経て巻取ロール55へと集電体21が送られる。これらのロールと蒸着ユニット53A、53Bは真空容器56の中に設けられている。真空容器56内は真空ポンプ57により減圧される。蒸着ユニット53A、53Bでは蒸着ソース、るつぼ、電子ビーム発生装置がユニット化されている。この装置を用いて図11に示すように集電体21の上に片側の負極の活物質層である活物質層62を形成する手順を説明する。
【0072】
真空容器56の内部は、真空に近い不活性雰囲気になっている。例えば圧力10−3Paのアルゴン雰囲気とする。蒸着時には、電子ビーム発生装置により発生させた電子ビームを偏向ヨークにより偏光させ、蒸着ソースに照射する。この蒸着ソースには、例えばSiの端材を用いる。
【0073】
蒸着ユニット53Aは、支点ロール54Aから支点ロール54Bとの間の位置で集電体21にSi蒸気が斜めに入射するように配置されている。これにより蒸着ユニット53Aから発生したSi蒸気は集電体21の面に垂直に入射しない。同様に蒸着ユニット53Bは、支点ロール54Bから支点ロール54Cとの間の位置で集電体21にSi蒸気が斜めに入射するように配置されている。
【0074】
マスク52A、52B、52C、52Dはそれぞれノズル58A、58B、58C、58Dを覆っている。第1計測部10Cは蒸着ユニット53Aから発生したSi蒸気が集電体21の面に入射する位置より巻取ロール55側に設けられ、第2計測部10Dは蒸着ユニット53Bから発生したSi蒸気が集電体21の面に入射する位置より巻取ロール55側に設けられている。
【0075】
このようにして集電体21の面に蒸着ユニット53AからSi蒸気を供給しつつ集電体21を巻き出しロール51から巻取ロール55へと送る。このときノズル58A、58Bから、集電体21に向けて高純度の酸素を導入すると蒸着ユニット53Aから発生したSi蒸気と導入された酸素とが反応して集電体21上に凸部21Aを基点としてSiOからなる第1柱状体61Aが生成する。
【0076】
次に、第1柱状体61Aが形成された集電体21は蒸着ユニット53BからSi蒸気を供給される位置に移動する。このときノズル58C、58Dから、集電体21に向けて高純度の酸素を導入すると蒸着ユニット53Bから発生したSi蒸気と導入された酸素とが反応して第1柱状体61Aを基点としてSiOからなる第2柱状体61Bが生成する。このとき、集電体21に対する蒸着ユニット53Bの位置から、図11に示すように第2柱状体61Bは第1柱状体61Aとは反対の方向に成長する。
【0077】
すなわち、蒸着ユニット53A、ノズル58A、58B、支点ロール54A、54Bは少なくとも片面に複数の凸部21Aを有する集電体21の表面に、凸部21Aから斜立するSiOからなる第1柱状体61Aを形成する第1形成部を構成している。一方、蒸着ユニット53B、ノズル58C、58D、支点ロール54B、54Cは第1柱状体61Aから斜立するSiOからなる第2柱状体61Bを形成して活物質層62の層厚を増す第2形成部を構成している。
【0078】
この状態で巻き出しロール51、巻取ロール55の回転方向を反転させると、蒸着ユニット53Aから発生したSi蒸気と導入された酸素とが反応して第2柱状体61Bを基点としてSiOからなる第3柱状体61Cが生成する。この場合も図11に示すように第3柱状体61Cは第2柱状体61Bとは反対の方向に成長する。このようにして屈曲点を持つ柱状構造を有する活物質塊61からなる活物質層62を形成することができる。さらに巻き出しロール51、巻取ロール55の回転方向を反転させて第3柱状体61Cの上に第4柱状体を作製することもできる。すなわち屈曲点の数は自由にコントロールすることができる。
【0079】
このように屈曲点を有する柱状構造を有する活物質塊61からなる活物質層62を形成する場合にも第1計測部10Cと、第1計測部10Cと同様の構成の第2計測部10D、第3計測部10Eをそれぞれ第1柱状体61A、第2柱状体61B、第3柱状体61Cを形成する位置の下流側に設け、それぞれに対し実施の形態1における第1算出部14と同様の第1算出部、第2算出部、第3算出部(いずれも図示せず)と、制御部15と同様の制御部を設ければ第1柱状体61A、第2柱状体61B、第3柱状体61Cのそれぞれの成長角度を管理することができる。このように折れ曲がった形状の柱状の活物質塊61を形成する場合にもその成長角度を柱状体ごとに管理することができる。
【0080】
なおこの場合の制御部は蒸着ユニット53A、53Bの位置、支点ロール54A、54B、54Cの位置を制御することで第1柱状体61A、第2柱状体61B、第3柱状体61Cのそれぞれの成長角度を制御することができる。ただし、支点ロール54A、54B、54Cを移動させると集電体21と第1計測部10C、第2計測部10D、第3計測部10Eとの位置関係も変わってしまう。そのためこの場合には第1計測部10C、第2計測部10D、第3計測部10Eの取り付け角度もそれに合せて修正する。
【0081】
以上のように、製造装置50は、第1形成部と第1計測部10Cと第1算出部、第2形成部と第2計測部10Dと第2算出部と、制御部とを有する。第1計測部10C、第2計測部10Dは、それぞれ照射部と、受光部と、演算部とを有する。第1形成部は少なくとも片面に複数の凸部21Aを有する集電体21の表面に凸部21Aから斜立する活物質の第1柱状体61Aを含む活物質層62を形成する。第2形成部は第1柱状体61Aから斜立する、活物質の第2柱状体61Bを形成して活物質層62の層厚を増す。第1計測部10Cは、活物質層62の第1柱状体61Aに光を照射し、第1柱状体61Aからの反射光を受け、集電体21の厚み方向に平行な法線と反射光との角度を演算する。第2計測部10Dは、活物質層62の第2柱状体61Bに光を照射し、第2柱状体61Bからの反射光を受け、集電体21の厚み方向に平行な法線と反射光との角度を演算する。第1算出部は第1計測部10Cで測定した角度から法線に対する第1柱状体61Aの成長角度を推定し、第2算出部は第2計測部10Dで測定した角度から法線に対する第2柱状体61Bの成長角度を推定する。制御部は推定した第1柱状体61Aの成長角度を第1形成部にフィードバックして第1柱状体61Aの成長角度を所定範囲内に調整するとともに、推定した第2柱状体61Bの成長角度を第2形成部にフィードバックして第2柱状体61Bの成長角度を所定範囲内に調整する。このように第1柱状体から斜立する第2柱状体を設けた場合も同様にして法線に対する第2柱状体の成長角度を推定し、第2形成部にフィードバックすることができる。したがって屈曲点を有する形状の柱状活物質塊を形成する場合にも、その成長角度を柱状体ごとに管理することができる。
【0082】
(実施例)
以下、実施の形態1における図6に示す構成の検査装置で、図3に示す第1柱状体22を集電体21上に形成した際の成長角度を測定し、その測定値と走査型電子顕微鏡(SEM)で断面を観察した成長角度との比較を行った結果を説明する。なお集電体21として平均表面粗さ1.8μm、厚さ43μmの粗化銅箔を用いた。
【0083】
まず集電体21上に第1柱状体22を形成する条件を説明する。まずSi(純度99.999%)を蒸着ユニット4A,4Bの黒鉛製坩堝の中に入れた。そして集電体21を巻き出しロール1から成膜ロール7A、7Bを経て巻取ロール6へと送るようにセットした。そして真空容器20の内部を圧力10−3Paのアルゴン雰囲気にし、集電体21を送りながら電子ビーム発生装置により発生させた電子ビームを偏向ヨークにより偏光させ、蒸着ソースであるSiに照射した。このときノズル9A、9Bから酸素を導入した。蒸着条件は、加速電圧−8kV、電流30mAとした。真空度は5×10−3Paとした。このようにして集電体21の両面に活物質層23を形成した。そしてノズル9A、9Bから導入する酸素流量を0sccm,30sccm,60sccm,80sccmとしてそれぞれサンプルA、B、C、Dの負極を作製した。一例としてサンプルA、Dの負極の断面SEM写真をそれぞれ図12(a)、(b)に示す。倍率は2000倍である。
【0084】
このようにして作製した第1柱状体22の成長角度を図6に示す構成の検査装置で測定した。照射部11としてハロゲンランプを用い、受光部12としてシリコンフォトダイオードを用いた。また図4に示す入射角bを−75°とした。このようにして測定したサンプルA、Dの反射光強度の検出角度による変化を図13(a)、(b)に示す。また同様にしてサンプルB、Cを評価し、断面SEM観察による成長角度と本発明の実施の形態1による方法で測定した成長角度とを求めた。
【0085】
図14は断面SEM観察による成長角度と本発明の実施の形態1による検査方法で測定した成長角度との関係を示す。図14より明らかなように、両者はよく一致している。このように、本発明の実施の形態1による検査方法を適用することにより第1柱状体22の成長角度を精度よく評価できる。
【0086】
図15はサンプルA〜Dにおける活物質層23を構成するSiOのx値と第1柱状体22の成長角度との関係を示している。図15から明らかなように両者はよく相関している。このように気相法で第1柱状体22を形成する際に導入する酸素流量が変化するとその組成が変化するとともに成長角度も変化する。したがってこの情報をフィードバックして酸素流量を制御することにより、組成も成長角度も制御することができる。
【産業上の利用可能性】
【0087】
本発明の二次電池用負極の製造方法によれば、負極活物質を集電体上に斜立させて形成する際に負極活物質の成長角度を安定化することができる。そのため、サイクル特性の優れた電池を安定して製造することができる。本発明の製造方法によって作製された負極を用いた非水電解質二次電池は、移動体通信機器、携帯電子機器などの主電源に有用である。
【図面の簡単な説明】
【0088】
【図1】本発明の実施の形態1による二次電池用負極の製造装置の構成を示す概略図
【図2】同要部の詳細を示すブロック図
【図3】同製造装置を用いて作製した二次電池用負極の概略断面図
【図4】図3に示す集電体の厚み方向に平行な法線に対する第1柱状体の成長角度を推定する方法を説明するための図
【図5】同製造装置の第1計測部による反射光の検出角度と反射光の強度との関係を示す概念図
【図6】同製造装置の受光部の構成を説明するための概念図
【図7】同製造装置の受光部の他の構成を説明するための概念図
【図8】同製造装置の受光部のさらに他の構成を説明するための概念図
【図9】同製造装置の受光部のさらに別の構成を説明するための概念図
【図10】本発明の実施の形態2による二次電池用負極の製造装置の構成を示す概略図
【図11】同製造装置を用いて作製した二次電池用負極の概略断面図
【図12】本発明の実施の形態1による製造装置を用いて作製した負極の断面SEM写真
【図13】図12に示す負極を対象に、本発明の実施の形態1による検査装置で検出した反射光強度の検出角度による変化を示す図
【図14】断面SEM観察による成長角度と実施の形態1による検査方法で測定した成長角度との関係を示す図
【図15】本発明の実施の形態1による製造装置を用いて作製した負極の活物質層を構成するSiOのx値と成長角度との関係を示す図
【符号の説明】
【0089】
1,51 巻き出しロール
2,57 真空ポンプ
3A,52A,52B,52C,52D マスク
4A,4B,53A,53B 蒸着ユニット
5A,5B,8A,54A,54B,54C 支点ロール
6,55 巻取ロール
7A,7B 成膜ロール
9A,9B,58A,58B,58C,58D ノズル
10A,10C 第1計測部
10D 第2計測部
10E 第3計測部
11 照射部
12,12G 受光部
12A,12B,12C,12D 受光素子
12E 受光素子ブロック
12F CCDカメラ
13 演算部
14 第1算出部
15 制御部
16 位置調整部
20,56 真空容器
21 集電体
21A 凸部
22,61A 第1柱状体
23,62 活物質層
30,50 製造装置
31 入射光
32 反射光
33 直線
34,35 直線(法線)
41 レール
42 保持部
43 光ファイバ
44 伝送用光ファイバ
45 光エンコーダ
46 ドーム体
47 開口部
48 ミラー
61 活物質塊
61B 第2柱状体
61C 第3柱状体

【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも片面に複数の凸部を有する集電体上に形成され、前記凸部から斜立する活物質の第1柱状体を含む活物質層に光を照射し、前記活物質層からの反射光と、前記集電体の厚み方向に平行な法線との角度を測定する二次電池用負極の検査方法。
【請求項2】
測定した角度から前記法線に対する前記第1柱状体の成長角度を推定する請求項1記載の二次電池用負極の検査方法。
【請求項3】
前記角度を測定する際に、前記反射光を受ける位置を移動しながら前記反射光の強度を計測することで、強度の最も大きくなる位置を決定して前記反射光と前記法線との角度を測定する請求項1記載の二次電池用負極の検査方法。
【請求項4】
前記角度を測定する際に、前記反射光を受ける位置を複数設け、各位置で前記反射光の強度を計測することで、強度の最も大きくなる位置を決定して前記反射光と前記法線との角度を測定する請求項1記載の二次電池用負極の検査方法。
【請求項5】
前記角度を測定する際に、内面が前記活物質層に向けて配置された半球状のドーム体を設け、前記活物質層からの前記反射光の分布を前記ドーム体の内面を介して検出することで、前記反射光の強度が最も大きくなる角度を決定して前記反射光と前記法線との角度を測定する請求項1記載の二次電池用負極の検査方法。
【請求項6】
前記角度を測定する際に、前記反射光を受ける固定位置における光の強度を計測することで、強度の最も大きくなる位置と前記固定位置とのずれ角度を推定して前記反射光と前記法線との角度を測定する請求項1記載の二次電池用負極の検査方法。
【請求項7】
請求項1記載の検査方法で測定した前記角度を、前記活物質層の形成にフィードバックして前記活物質層における前記第1柱状体の成長角度を所定範囲内に調整する二次電池用負極の製造方法。
【請求項8】
前記活物質層を形成する際に、蒸気を用いた気相法で前記活物質層を形成するとともに、前記成長角度を所定範囲内に調整する際に、前記蒸気の移動方向と前記集電体との角度を変更する請求項7記載の二次電池用負極の製造方法。
【請求項9】
前記活物質層を形成する際に前記集電体を移動させ、前記成長角度を所定範囲内に調整する際に固定された前記蒸気の発生源に対する前記集電体の角度を変更する請求項8記載の二次電池用負極の製造方法。
【請求項10】
前記成長角度を所定範囲内に調整する際に、前記蒸気の移動方向を変更する請求項8記載の二次電池用負極の製造方法。
【請求項11】
蒸気と、前記蒸気と反応する気体とを用いた反応性気相法で前記活物質層を形成するとともに、前記成長角度を所定範囲内に調整する際に、前記気体の流量を変更する請求項7記載の二次電池用負極の製造方法。
【請求項12】
前記第1柱状体から斜立する、活物質の第2柱状体を形成して前記活物質層の層厚を増し、
前記活物質層に光を照射し、前記第2柱状体からの反射光と、前記集電体の厚み方向に平行な法線との角度を測定し、
測定した角度から前記法線に対する前記第2柱状体の成長角度を推定し、
推定した前記第2柱状体の前記成長角度を、前記第2柱状体の形成にフィードバックして前記活物質層における前記第2柱状体の前記成長角度を所定範囲内に調整する請求項7記載の二次電池用負極の製造方法。
【請求項13】
請求項7から12のいずれか一項の二次電池用負極の製造方法で作製した負極と、前記負極に対向して設けられた正極と、前記負極と前記正極とに介在する電解質と、を備えた二次電池。
【請求項14】
少なくとも片面に複数の凸部を有する集電体上に形成され、前記凸部から斜立する活物質の第1柱状体を含む活物質層に光を照射する照射部と、前記活物質層からの反射光を受ける受光部と、前記集電体の厚み方向に平行な法線と前記反射光との角度を演算する演算部と、を備えた二次電池用負極の検査装置。
【請求項15】
前記演算部で演算した角度から前記法線に対する前記第1柱状体の成長角度を推定する第1算出部と、を備えた請求項14記載の二次電池用負極の検査装置。
【請求項16】
前記受光部は可動であり、前記演算部は前記受光部が受ける前記反射光の強度の最も大きくなる位置を検出する請求項14記載の二次電池用負極の検査装置。
【請求項17】
前記受光部は前記反射光を受ける位置を複数有し、前記演算部は、前記受光部の各位置で前記反射光の強度を比較し強度の最も大きくなる位置を決定する請求項14記載の二次電池用負極の検査装置。
【請求項18】
内面が前記活物質層に向けて配置され、底部に開口部を有し、前記照射部と前記受光部とが固定された半球状のドーム体をさらに備え、前記受光部は、前記活物質層からの前記反射光の分布を前記ドーム体の内面を介して検出し、前記演算部は、前記反射光の強度が最も大きくなる角度を決定する請求項14記載の二次電池用負極の検査装置。
【請求項19】
前記受光部は固定状態または半固定状態であり、前記演算部は、前記反射光の強度を計測することで、強度の最も大きくなる位置と前記受光部の固定位置とのずれ角度を推定する請求項14記載の二次電池用負極の検査装置。
【請求項20】
請求項14記載の二次電池用負極の検査装置と、
前記集電体上に、前記活物質層を形成する第1形成部と、前記検査装置で測定した前記角度を前記第1形成部にフィードバックして前記活物質層における前記第1柱状体の成長角度を所定範囲内に調整する制御部と、を備えた二次電池用負極の製造装置。
【請求項21】
前記第1形成部は、蒸気を用いた気相法で前記活物質層を形成するとともに、前記制御部は前記蒸気の移動方向と前記集電体との角度を変更する請求項20記載の二次電池用負極の製造装置。
【請求項22】
前記第1形成部は、前記集電体を送り出す側に設けられた第1支点部と、前記活物質層を形成した前記集電体を収容する側に設けられ、前記第1支点部とともに前記集電体を支える第2支点部とを有し、
前記制御部は、前記第1支点部と前記第2支点部との少なくとも一方を移動することで固定された前記蒸気の発生源に対する前記集電体の角度を変更する請求項21記載の二次電池用負極の製造装置。
【請求項23】
前記制御部は、前記蒸気の発生源を移動することで前記蒸気の移動方向を変更する請求項21記載の二次電池用負極の製造装置。
【請求項24】
前記第1形成部は、前記蒸気の移動方向を制御するためのマスクを有し、前記制御部は、前記マスクを移動することで前記蒸気の移動方向を変更する請求項21記載の二次電池用負極の製造装置。
【請求項25】
前記第1形成部は、蒸気と前記蒸気と反応する気体とを用いた反応性気相法で前記活物質層を形成するとともに、前記成長角度を所定範囲内に調整する際に、前記気体の流量を変更する流量調節部をさらに備えた請求項20記載の二次電池用負極の製造装置。
【請求項26】
前記第1柱状体から斜立する、活物質の第2柱状体を形成して前記活物質層の層厚を増す第2形成部と、
前記活物質層に光を照射し、前記第2柱状体からの反射光と、前記集電体の厚み方向に平行な前記法線との角度を測定する第2計測部と、
前記第2計測部で測定した角度から前記法線に対する前記第2柱状体の成長角度を推定する第2算出部と、をさらに備え、
前記制御部は、推定した前記第2柱状体の前記成長角度を前記第2形成部にフィードバックして前記活物質層における前記第2柱状体の前記成長角度を所定範囲内に調整する請求項20記載の二次電池用負極の製造装置。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate

【図10】
image rotate

【図11】
image rotate

【図13】
image rotate

【図14】
image rotate

【図15】
image rotate

【図12】
image rotate


【公開番号】特開2008−210787(P2008−210787A)
【公開日】平成20年9月11日(2008.9.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−1920(P2008−1920)
【出願日】平成20年1月9日(2008.1.9)
【出願人】(000005821)松下電器産業株式会社 (73,050)
【Fターム(参考)】