説明

二次電池の拘束装置

【課題】簡易な構成で二次電池を拘束し、あるいは、開放して略等間隔に整列させることができる二次電池の拘束装置を提供する。
【解決手段】水平方向に積層された複数の二次電池10・10・・・を拘束する拘束装置100であって、積層された複数の二次電池10・10・・・を載置するフレーム20と、二次電池10・10同士を仕切るスペーサ30と、積層された複数の二次電池10・10・・・を積層方向における二次電池10・10・・・が近接する側に押圧するプレート40と、プレート40の押圧位置を固定するネジ50と、プレート40を押圧方向とは逆方向に付勢するバネ60と、スペーサ30間の距離が距離D2以下となるように規制する係合部70A・70Bと、を具備する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、二次電池を拘束する拘束装置の技術に関する。
【背景技術】
【0002】
二次電池は、充放電可能な電池である。二次電池の製造現場では、複数の二次電池がパレット等に水平方向に積層された状態で、各製造工程(充電工程または検査工程等)間を搬送され、あるいは、工場内で保管されている。二次電池の製造段階では、初期充電時に電極に均一な被膜が形成され、被膜形成に伴いガスが発生する。そこで、発生するガスを拡散させるため、積層された二次電池の電極群を加圧しておく必要がある。そのため、パレット等に水平方向に積層された複数の二次電池は、所定の圧力で拘束した状態で各製造工程間を搬送され、あるいは、工場内で保管される必要がある。
【0003】
二次電池の製造現場では、水平方向に積層された複数の二次電池をパレット等に移載する、または、水平方向に積層された複数の二次電池をパレット等から取り出す時には、移載作業の効率化のため、複数の二次電池を同時に掴むことができる移載装置が使用されている。そのため、パレット等に水平方向に積層して載置された複数の二次電池は、拘束した状態で搬送される、あるいは、保管される必要があるものの、パレット等に移載する、または、パレット等から取り出す時には、拘束された状態を開放する必要がある。
【0004】
とりわけ、二次電池における積層方向の幅寸法は、電池機能を満足する範囲で寸法公差を有している。そのため、水平方向に積層された複数の二次電池を拘束した状態、あるいは、水平方向に積層された複数の二次電池の拘束を開放した状態では、寸法公差などにより各二次電池が等間隔に整列されていないことがある。そのため、複数の二次電池を同時に掴むことができる移載装置によって、パレット等に移載する、または、パレット等から取り出す時には、水平方向に積層された複数の二次電池を略等間隔に整列させる必要がある。
【0005】
例えば、特許文献1には、二次電池を検査する時に、積層された二次電池を拘束する治具が開示されている。しかし、特許文献1に開示される治具は、二次電池の検査工程で使用するものとして記載されているのみである。つまり、製造現場にて、パレット等に載置された複数の積層された二次電池を拘束する、または、開放して略等間隔に整列させるような拘束装置については、従来においては開示されていない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2005−339925号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明の解決しようとする課題は、簡易な構成で二次電池を拘束し、あるいは、開放して略等間隔に整列させることができる二次電池の拘束装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の解決しようとする課題は以上の如くであり、次にこの課題を解決するための手段を説明する。
【0009】
即ち、請求項1においては、水平方向に積層された複数の二次電池を拘束する二次電池の拘束装置であって、積層された複数の二次電池を載置するフレームと、隣接する前記二次電池同士を仕切るスペーサと、積層された複数の二次電池を、積層方向における前記各二次電池が近接する側に押圧するプレートと、前記プレートの押圧位置を固定するプレート位置固定機構と、前記プレートを前記押圧方向とは逆方向に付勢する付勢手段と、前記スペーサ間の距離が所定距離以下となるように規制するスペーサ規制機構と、を具備するものである。
【発明の効果】
【0010】
本発明の二次電池の拘束装置によれば、簡易な構成で二次電池を拘束し、あるいは、開放して略等間隔に整列させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】本発明の第一実施形態に係る拘束装置の全体的な構成を示した側面図。
【図2】同じく拘束装置の全体的な構成を示した平面図。
【図3】同じく拘束装置による二次電池の拘束または開放の作用を示した側面図。
【図4】本発明の第二実施形態に係る拘束装置の全体的な構成を示した側面図。
【発明を実施するための形態】
【0012】
図1及び図2を用いて、拘束装置100について説明する。
なお、図1の右上には、プレート40、ネジ50および壁23の断面図が示されている。また、以下では、図1及び図2に記載される積層方向、左右方向または上下方向を、拘束装置100の各方向として説明するものとする。なお、図1及び図2における積層方向は、拘束装置100に拘束された二次電池10・10・・・の積層方向を示し、左右方向は、前記積層方向と直交する水平な方向を示し、上下方向は、前記積層方向と直交する垂直な方向を示す。
【0013】
拘束装置100は、本発明に係る二次電池の拘束装置の第一実施形態である。拘束装置100は、二次電池10の製造工程において、複数の二次電池10・10・・・を搬送または保管する際に、複数の二次電池10・10・・・を積層方向に積層された状態で拘束する装置である。
【0014】
拘束装置100の構成について説明する。
拘束装置100は、フレーム20と、スペーサ30・30・・・と、プレート40と、プレート位置固定機構としてのネジ50と、付勢手段としてのバネ60と、スペーサ規制機構としての係合部70A・70Bと、を具備している。
【0015】
フレーム20は、積層された複数の二次電池10・10・・・を載置するものである。フレーム20は、ベース21と、壁22と、壁23と、レール24・24と、から構成されている。ベース21は、積層方向を長手方向とする長板形状に構成されており、積層状態の複数の二次電池10・10・・・が載置されるものである。壁22は、ベース21における積層方向の一端側である押圧側に立設されている。壁23は、ベース21における積層方向の他端側である開放側に立設されている。壁23の左右方向及び上下方向の略中央部分には、壁23を積層方向に貫通する貫通孔23Aが形成されている。貫通孔23Aの内周には、雌ネジが形成されている。レール24は、フレーム20の右側側面及び左側面にて積層方向と平行に配置されている。なお、ベース21は、積層方向の断面視において、略コの字形状に構成し、レール24・24を被装する構成であっても良い。
【0016】
スペーサ30は、積層方向に隣接する二次電池10同士を仕切るものである。スペーサ30は、積層された二次電池10・10・・・のそれぞれの間に配置されるものである。スペーサ30は、積層方向に隣接する二次電池10・10同士を電気的及び熱的に絶縁する機能を有している。それぞれのスペーサ30は、レール24・24に係合して、積層方向へ移動可能に構成されている。
【0017】
壁22が当接する拘束設備側には、荷重センサ31が設置されている。荷重センサ31は、所定以上の荷重を検知すると、その旨を検知したことを示す電気信号をコントローラ(図示略)に送信する構成とされている。コントローラは、荷重センサ31が所定以上の荷重を検知したことを音声またはランプ等で作業者に知らせるように構成されている。
【0018】
プレート40は、積層方向において最も開放側に配置されたスペーサ30を押圧側に向けて押圧するものである。プレート40の開放側には、後述するネジ50がプレート40に離接可能に配置されている。また、プレート40の開放側面には、後述するバネ60の押圧側端が接続されている。
【0019】
ネジ50は、プレート40を支持して、プレート40の押圧位置を固定するものである。ネジ50は、円筒形状に構成されている。ネジ50の外周には雄ネジが形成されている。ネジ50の内部の開放側端部は閉塞されている。閉塞された開放側端部には、バネ60の開放側端が接続されている。
【0020】
バネ60は、プレート40をネジ50に対して近接する側へ付勢するものである。プレート40は、自然状態においてバネ60の付勢力によりネジ50に当接しており、プレート40がネジ50に当接している状態において、バネ60はネジ50の内部に収容されている。
【0021】
係合部70A・70Bは、スペーサ30とスペーサ30との間の距離が所定距離D2以下となるように規制するものである。係合部70Aは、スペーサ30の開放側面における左側端部および右側端部に設けられている。係合部70Bは、スペーサ30の押圧側面における左側端部および右側端部に設けられている。係合部70Aは、スペーサ30の開放側面から開放側へ突出し、係合部70Bは、スペーサ30の押圧側面から押圧側へ突出している。
【0022】
係合部70A・70Bは、それぞれ側面視にてL字形状に形成されている。係合部70Aは、スペーサ30の開放側面から開放側へ延出するとともに、その開放側端部が下方に屈曲している。係合部70Bは、スペーサ30の押圧側面から押圧側へ延出するとともに、その押圧側端部が上方へ屈曲している。係合部70Aの下方への屈曲部と係合部70Bの上方への屈曲部とは、隣接するスペーサ30・30が互いに離間する方向へ移動した際に係合するように構成されている。また、係合部70Aの開放側への延出寸法は、係合部70Bの押圧側への延出寸法と同様に構成されている。
【0023】
係合部70A・70Bは、係合部70Aの下方への屈曲部と係合部70Bの上方への屈曲部とが係合したとき、スペーサ30とスペーサ30との間の距離が距離D2となるように構成されている。そして、距離D2は、二次電池10の積層方向の距離(幅)Dよりも大きいものとされている。
【0024】
係合部70A・70Bは、係合部70Aの下方への屈曲部と係合部70Bの上方への屈曲部とが、それぞれ隣接するスペーサ30に当接したとき、スペーサ30とスペーサ30との間の距離が距離D1(<D2)となるように構成されている。スペーサ30とスペーサ30との間の距離が距離D1になるときは、スペーサ30とスペーサ30とは、係合部70A・70Bによって、それ以上狭まらないものとする。
【0025】
積層方向における最も押圧側に配置されるスペーサ30の係合部70Bは、壁22に設けられる係合部と係合している。壁22と係合部70Bとの係合により、最も押圧側に配置されるスペーサ30の壁22に対する積層方向における位置が固定されている。
【0026】
積層方向における最も開放側に配置されるスペーサ30の係合部70Aは、壁23に設けられる係合部と係合している。壁23と係合部70Aとの係合により、最も開放側に配置されるスペーサ30の壁23に対する積層方向における位置が固定されている。
【0027】
図3を用いて、拘束装置100の作用について説明する。
なお、図3(A)は、拘束装置100に二次電池10・10・・・が載置されていない状態(空状態)を示し、図3(B)は、拘束装置100に二次電池10・10・・・が載置され、二次電池10・10・・・の拘束が解除されている状態(開放状態)を示し、図3(C)は、拘束装置100に二次電池10・10・・・が載置され、二次電池10・10・・・が拘束されている状態(拘束状態)を示している。
【0028】
図3(A)に示すように、「空状態」では、拘束装置100には、二次電池10・10・・・が載置されていない。この状態では、壁23の貫通孔23Aの雌ネジにネジ50の押圧側端部が螺合しており、プレート40は、ネジ50の壁23に対する螺合位置およびバネ60の付勢力によって積層方向の開放側、即ちネジ50に近接する側に移動している。これにより、プレート40は、積層方向において壁23に近接する位置に移動している。
【0029】
プレート40の壁23に対する近接位置への移動により、最も開放側に位置するスペーサ30がプレート40とともに開放側へ移動する。最も開放側に位置するスペーサ30が開放側へ移動することにより、各スペーサ30は互いに離間し、隣接するスペーサ30・30の係合部70A・70Bが係合状態となる。隣接するスペーサ30・30の係合部70A・70Bが互いに係合している状態では、隣接するスペーサ30・30間は距離D2となるように規制されている。
【0030】
移載装置によって、二次電池10・10・・・が拘束装置100に載置され、拘束装置100が「空状態」から「開放状態」となる。このとき、スペーサ30とスペーサ30との間の距離D2が、二次電池10の積層方向の距離Dよりも大きいため、複数の二次電池10・10・・・を同時に掴むことができる移載装置によって、二次電池10・10・・・を拘束装置100に同時に載置することができる。このとき、二次電池10・10・・・は、それぞれスペーサ30とスペーサ30との間に配置される。
【0031】
図3(B)に示すように、「開放状態」では、拘束装置100に二次電池10・10・・・が載置され、二次電池10・10・・・の拘束が開放されている。
【0032】
二次電池10の製造段階では、初期充電時に電極に均一な被膜を形成し、被膜形成に伴い発生するガスを拡散させるため、積層された二次電池の電極群を加圧しておく必要がある。そのため、水平方向に積層された複数の二次電池10・10・・・は、拘束した状態で各製造工程間を搬送され、あるいは、工場内で保管される必要がある。すなわち、二次電池10・10・・・が搬送される、あるいは、保管される状態にするためには、拘束装置100を「開放状態」から「拘束状態」にする必要がある。
【0033】
具体的には、油圧シリンダ等の押圧装置によってプレート40を積層方向の押圧側、すなわちプレート40が壁23から離間する側へ向けて押圧する。プレート40の押圧装置による押圧は、プレート40が積層方向における所定の押圧位置まで押圧されるように行われる。
【0034】
そして、ネジ50を壁23に対して回転させて積層方向における押圧側へ移動させ、ネジ50の押圧側端を、所定の押圧位置に位置するプレート40の開放側面に当接させる。このように、ネジ50をプレート40に当接させることで、ネジ50によりプレート40を所定の押圧位置にて支持し、プレート40の積層方向における位置を固定する。所定の押圧位置は、荷重センサ31が所定の荷重を検出するまで押圧される位置として決定される。
【0035】
図3(C)に示すように、「拘束状態」では、拘束装置100に二次電池10・10・・・が載置され、二次電池10・10・・・が拘束されている。つまり、「拘束状態」では、プレート40が押圧側へ移動することにより、各スペーサ30間の距離がD2よりも小さくなり、隣接するスペーサ30・30の係合部70A・70Bの係合状態は解除される。さらには、各スペーサ30間の距離は、二次電池10の積層方向の距離Dよりも小さくなり、各二次電池10は積層方向に加圧される。
【0036】
移載装置によって、二次電池10・10・・・を拘束装置100から取り出すためには、拘束装置100を「拘束状態」から「開放状態」にする必要がある。このとき、複数の二次電池10・10・・・を同時に掴むことができる移載装置によって、二次電池10・10・・・を拘束装置100から取り出すためには、二次電池10・10・・・を開放し、略等間隔に整列させる必要がある。
【0037】
具体的には、プレート40を積層方向の開放側に押圧し、ネジ50を壁23に対して回転させて積層方向における開放側へ移動させることによって、プレート40がバネ60の付勢力により積層方向の開放側に移動する。プレート40が積層方向の開放側に移動することによって、スペーサ30・・・30がプレート40に追従して積層方向の開放側に移動する。このとき、二次電池10・10・・・は、隣接する積層方向の押圧側のスペーサ30の移動に伴って、積層方向の開放側に移動する。
【0038】
そして、スペーサ30・30・・・が開放側へ移動することにより、隣接するスペーサ30・30は互いに離間する。隣接するスペーサ30・30は互いに離間する場合、係合部70Aと係合部70Bとが係合し、スペーサ30とスペーサ30との間の距離が距離D2となるように規制される。このとき、各二次電池10は、スペーサ30とスペーサ30との間の距離が距離D2となるように規制されることによって、距離D2の間隔で整列する。
【0039】
拘束装置100の効果について説明する。
拘束装置100によれば、簡易な構成で積層状態の二次電池10・10・・・を拘束し、あるいは、開放して略等間隔に整列させることができる。
【0040】
図4を用いて、本発明に係る二次電池の拘束装置の第二実施形態である拘束装置200について説明する。
拘束装置200の構成について説明する。
拘束装置200は、フレーム20と、スペーサ30と、プレート40と、プレート位置固定機構としてのネジ50と、スペーサ規制機構としての係合部70と、を具備している。ここで、フレーム20、スペーサ30、プレート40、ネジ50及び係合部70については、拘束装置100と同様の構成であるため説明を省略する。なお、拘束装置200には、バネ60の構成が省略されている。
【0041】
拘束装置200は、「開放状態」とするときは、開放装置90に載置されるものとする。開放装置90は、油圧シリンダ91を内蔵している。拘束装置200が開放装置90に載置されたときには、油圧シリンダ91によって、プレート40の下端部40Aを積層方向の開放側に向けて押圧可能な構成としている。つまり、拘束装置100においては、「開放状態」とするときにプレート40をバネ60の付勢力により開放側へ移動させていたが、拘束装置200では、「開放状態」とするときに、プレート40を油圧シリンダ91によって開放側へ移動させるものである。
【0042】
拘束装置200の作用については、拘束装置100と同様であるため説明を省略する。
【0043】
拘束装置200の効果について説明する。
拘束装置200によれば、簡易な構成で二次電池10・10・・・を拘束し、あるいは、開放して略等間隔に整列させることができる。また、拘束装置100と比較して、バネ60を省略できるので、部品コストが低減できる。
【符号の説明】
【0044】
10 二次電池
20 フレーム
30 スペーサ
40 プレート
50 ネジ
60 バネ
70B 係合部
70A 係合部
100 拘束装置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
水平方向に積層された複数の二次電池を拘束する二次電池の拘束装置であって、
積層された複数の二次電池を載置するフレームと、
隣接する前記二次電池同士を仕切るスペーサと、
積層された複数の二次電池を、積層方向における前記各二次電池が近接する側に押圧するプレートと、
前記プレートの押圧位置を固定するプレート位置固定機構と、
前記プレートを前記押圧方向とは逆方向に付勢する付勢手段と、
前記スペーサ間の距離が所定距離以下となるように規制するスペーサ規制機構と、
を具備する、
二次電池の拘束装置。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate


【公開番号】特開2013−55017(P2013−55017A)
【公開日】平成25年3月21日(2013.3.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−194248(P2011−194248)
【出願日】平成23年9月6日(2011.9.6)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【Fターム(参考)】