説明

二次電池用電極体、二次電池用電極体の製造方法及び二次電池並びに車両

【課題】負極の面積を正極の面積に比べてそれほど大きくせずに、急速充電時における負極でのリチウム析出防止効果を高めることができる二次電池用電極体を提供する。
【解決手段】二次電池用電極体10は、金属製の集電板11に正極活物質層12aが形成された正極12と、金属製の集電板11に粒子状の負極用活物質を含む負極活物質層13aが形成された負極13とがセパレータ14を挟んだ構成である。負極活物質層13aは、一層で構成され、負極活物質層13aの表面の算術平均粗さRaは、セパレータ14の厚さをtμmとすると、t/2μm以下、負極用活物質の平均粒径以上である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、二次電池用電極体、二次電池用電極体の製造方法及び二次電池並びに車両に係り、詳しくは負極に特徴を有する二次電池用電極体、二次電池用電極体の製造方法及び二次電池並びにその二次電池を搭載した車両に関する。
【背景技術】
【0002】
二次電池は再充電が可能であり、繰り返し使用することができるため電源として広く利用されている。近年、化石燃料の使用削減(二酸化炭素排出規制)が求められており、電気自動車やハイブリッド車等の主電源や補助電源に使用される二次電池では、大電流での充電及び放電や二次電池の大容量化が要求されるようになっている。
【0003】
ニッケル水素二次電池やリチウムイオン二次電池などの二次電池では、電極として金属箔製の集電板に活物質を塗布(担持)したものが使用されている。そして、集電板に塗布された活物質の量を多くすることにより、二次電池の出力(放電電流に放電電圧を乗じた値)を高くすることができる。
【0004】
リチウムイオン二次電池では、負極でのリチウム析出防止のため負極と相対する正極は、負極に比べて小さく設計される。しかし、負極の面積を正極の面積に比べてそれほど大きくはできないため、急速充電時には、負極にリチウムが析出する可能性がある。負極の面積を正極の面積に比べてそれほど大きくせずに、急速充電時における負極でのリチウム析出防止効果を高める方法として負極の表面を粗化することが考えられる。
【0005】
従来、充電時の負極の膨れが抑制されて、サイクル性能が向上する非水電解質二次電池が提案されている(特許文献1参照)。この二次電池は、正極、集電板を備えた負極、及び非水電解質を備え、前記負極の集電板上に炭素粒子を含む炭素粒子含有層が形成され、前記炭素粒子含有層上にケイ素含有層が形成され、前記炭素粒子含有層の前記ケイ素含有層側の面の表面粗さRaが0.3μm≦Ra≦9.0μmである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2006−73480号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
特許文献1の二次電池の負極は、結果として負極を構成する活物質層の表面が粗化された状態であるが、活物質層が炭素粒子含有層とケイ素含有層の2層からなり、内層となる炭素粒子含有層の表面粗さを特定の範囲にすることで、充電時の負極の膨れを抑制している。しかし、リチウム析出防止に関することは何ら示唆されていない。
【0008】
本発明は、前記の問題に鑑みてなされたものであって、その目的は、負極の面積を正極の面積に比べてそれほど大きくせずに、急速充電時における負極でのリチウム析出防止効果を高めることができる二次電池用電極体及び二次電池用電極体の製造方法を提供することにある。また、他の目的はその二次電池用電極体を用いた二次電池及びその二次電池を搭載した車両を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
前記の目的を達成するため、請求項1に記載の発明は、金属製の集電板に正極活物質層が形成された正極と、金属製の集電板に粒子状の負極用活物質を含む負極活物質層が形成された負極とがセパレータを挟んだ構成である二次電池用電極体である。そして、前記負極活物質層は、一層あるいは各層が同じ材料で形成された複数層で構成され、前記負極活物質層の表面の算術平均粗さRaは、前記セパレータの厚さをtμmとすると、t/2μm以下、前記負極用活物質の平均粒径以上である。
【0010】
リチウムイオン二次電池では、負極でのリチウム析出防止のため負極と相対する正極は、負極に比べて小さく設計される。しかし、負極の面積を正極の面積に比べてそれほど大きくはできないため、急速充電時には、負極にリチウムが析出する可能性がある。そのため、急速充電といっても充電速度は負極にリチウムが析出しない程度の速度に抑えざるをえない。この発明では、二次電池用電極体の負極を構成する集電板に形成された負極活物質層の表面の算術平均粗さRaは、セパレータの厚さをtμmとすると、t/2μm以下、負極用活物質の平均粒径以上である。そのため、表面が粗化されていない負極活物質層に比べてその表面積が大幅に大きくなる。したがって、リチウムイオン二次電池を構成した場合、負極の面積を正極の面積に比べてそれほど大きくせずに、急速充電時における負極でのリチウム析出防止効果を高めることができる。
【0011】
請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の発明において、前記負極活物質層は表面の算術平均粗さRaが前記負極用活物質の粒度分布上限以上である。プレス加工で負極活物質層の表面を粗化する場合、表面粗さRaを負極活物質の粒度分布上限より小さくするのは難しい。この発明では、表面粗さRaが負極活物質の粒度分布上限以上であるため、負極活物質層の粗化が容易になる。
【0012】
請求項3に記載の発明は、請求項1又は請求項2に記載の発明において、前記負極活物質層は一層である。したがって、負極活物質層が複数層で構成される場合に比べて、製造が簡単になる。
【0013】
請求項4に記載の発明は、金属製の集電板に正極活物質層が形成された正極と、金属製の集電板に粒子状の負極用活物質を含む負極活物質層が形成された負極とがセパレータを挟んだ構成である二次電池用電極体の製造方法である。そして、前記集電板に対する前記負極用活物質の塗布工程終了後に行われるプレス工程において、前記負極活物質層が形成された集電板を、表面が粗化されたプレスロールを有するロールプレス機でプレスして、前記負極活物質層の表面の粗さを目的の算術平均粗さRaに粗化する。
【0014】
この発明の二次電池用電極体の製造方法では、通常の二次電池用電極体の製造方法において、負極活物質層が形成された集電板をプレスするプレス工程において、使用するプレスロールとして、表面が負極活物質層の表面粗さを目的の算術平均粗さRaにするのに適した表面粗さRaに粗化されたプレスロールを使用する点を変更することで、容易に対応することができる。
【0015】
請求項5に記載の発明は、請求項4に記載の発明において、前記算術平均粗さRaは、前記セパレータの厚さをtμmとすると、t/2μm以下、前記負極用活物質の平均粒径以上である。この発明の製造方法で得られた二次電池用電極体は、リチウムイオン二次電池を構成した場合、負極の面積を正極の面積に比べてそれほど大きくせずに、急速充電時における負極でのリチウム析出防止効果を高めることができる。
【0016】
請求項6に記載の発明は、請求項1〜3のいずれか一項に記載の二次電池用電極体を用いた二次電池である。この発明の二次電池は、請求項1〜3のいずれか一項に記載の二次電池用電極の効果が得られる。
【0017】
請求項7に記載の発明は、請求項6に記載の二次電池を搭載した車両である。したがって、この発明の車両は請求項6に記載の二次電池の効果が得られる。
【発明の効果】
【0018】
請求項1〜請求項3に記載の発明によれば、負極の面積を正極の面積に比べてそれほど大きくせずに、急速充電時における負極でのリチウム析出防止効果を高めることができる二次電池用電極体を提供することができる。請求項4及び請求項5に記載の発明によれば、負極の面積を正極の面積に比べてそれほど大きくせずに、急速充電時における負極でのリチウム析出防止効果を高めることができる二次電池用電極体の製造方法を提供することができる。請求項6に記載の発明によれば、前記二次電池用電極体の効果が得られる二次電池を提供することができる。請求項7に記載の発明によれば、前記二次電池の効果が得られる車両を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】(a)は二次電池用電極体の模式斜視図、(b)は負極の模式平面図。
【図2】(a)は負極活物質層を粗化する工程の模式図、(b)はプレスロールの模式斜視図。
【図3】ロールによる転写可能粗さと加圧力との関係を示すグラフ。
【図4】電解液含浸性を示すグラフ。
【図5】(a),(b)は粗化部分の異なる別の実施形態の負極の模式平面図。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、本発明を具体化した一実施形態を図1〜図4にしたがって説明する。
図1(a)に示すように、二次電池用電極体10は、金属製の集電板11に正極活物質層12aが形成された正極12と、金属製の集電板11に粒子状の負極用活物質を含む負極活物質層13aが形成された負極13とがセパレータ14を挟んで複数層に積層された構成、即ち正極12と負極13とがセパレータ14を挟んだ構成である。この実施形態では、正極12、負極13及びセパレータ14はいずれも帯状に形成され、二次電池用電極体10は、正極12及び負極13がセパレータ14を挟んで複数層に巻回されて長円柱状に形成された構成の巻回型電極体である。二次電池用電極体10は、その軸方向の一端側に同方向に突出する正極タブ15及び負極タブ16を有する。正極タブ15は正極12に複数形成された凸部12bが重なる状態で構成され、負極タブ16は負極13に複数形成された凸部13bが重なる状態で構成されている。なお、図1(b)は負極13の部分模式図であるが、凸部13bの図示を省略している。
【0021】
集電板11は、例えば帯状の銅箔で形成され、正極活物質層12a及び負極活物質層13aは集電板11の両面にそれぞれ形成され、集電板11の幅方向の両側に存在する一定幅の活物質非塗布部17を除いた部分全面に形成されている。
【0022】
負極活物質層13aは一層で構成され、かつ表面が機械的に粗化されている。負極活物質層13aの粗さの上限は、負極13及び正極12を、セパレータ14を挟んで積層する時あるいは、巻回する時に負極活物質層13aがセパレータ14を損傷しない値に設定されており、下限は負極用活物質の平均粒径以上となるように設定されている。具体的には、負極活物質層13aの算術平均粗さRaは、セパレータ14の厚さをtμmとすると、1/2μm以下、負極用活物質の平均粒径以上である。例えば、セパレータ14の厚さが20±2μmであれば、負極活物質層13aの算術平均粗さRaは、バラツキを考慮して9μm以下が望ましい。
【0023】
また、負極用活物質として平均粒径が2μmのものを使用する場合、負極活物質層13aの算術平均粗さRaは2μm以上になる。また、負極活物質層13aは表面の算術平均粗さRaが負極用活物質の粒度分布上限以上が望ましく、例えば、負極用活物質として粒度分布上限が5μm以上のものを使用する場合は、負極活物質層13aの表面粗さRaの下限は5μmになる。なお、算術平均粗さRaの測定方法はJIS規格に記載された算出方法である。
【0024】
次に前記のように構成された二次電池用電極体10の製造方法のうち、負極13の製造方法を説明する。負極13の製造方法は、負極用活物質の塗布工程終了後に、集電板11と集電板11に塗布された負極用活物質の粒子との密着を良好にするために行われるプレス工程が従来と異なり、その他の工程は基本的に同じため、説明を省略する。なお、以下、表面の算術平均粗さRaを単に表面粗さRaと記載する場合もある。
【0025】
負極用活物質の塗布工程で負極用活物質が塗布されて両面に負極活物質層13aが形成された集電板11は、負極活物質層13aが乾燥された後、集電板11に対する負極活物質層13aの負極用活物質の粒子との密着を良好にするため、プレス工程でプレスされる。プレス工程では、図2に示すように、一対のプレスロール21,22を有するロールプレス機23でプレスを行う。図3に示すように、プレスロール21,22はその表面が、負極活物質層13aの表面の粗さを目的の表面粗さRa(この実施形態では5μm以上9μm以下)に粗化するのに適した粗さに粗化されている。プレスロール21,22の表面の粗化は、例えば、ショットピーニングやショットブラストで行われる。
【0026】
図2に示すように、ロールプレス機23のアンコイラー24に、負極活物質層13aが塗布された帯状の集電板11がコイル状に巻かれた負極用フープ材25がセットされる。そして、繰り出し側ガイドロール26にガイドされながらアンコイラー24から繰り出された負極用フープ材25はプレスロール21,22でプレスされ、巻き取り側ガイドロール27を経てコイラー28に巻き取られる。なお、負極用フープ材25の移動経路には繰り出し側ガイドロール26及び巻き取り側ガイドロール27の他に図示しない張力調整機構やガイドロールが設けられている。
【0027】
アンコイラー24から繰り出された負極用フープ材25は、プレスロール21,22の間を通過する間にプレスロール21,22の表面の状態が負極活物質層13a上に転写される。その結果、負極活物質層13aは幅及び長さが変わらずに表面積が大きくなる。
【0028】
プレスロール21,22はプレス荷重が調整可能に構成され、同じ表面粗さのプレスロール21,22を使用した場合でもプレス荷重とプレス温度によって、負極活物質層13aに転写される表面粗さRaが異なる状態になる。図3にプレスロール21,22によるプレス荷重と負極活物質層13aに転写される表面粗さRaの関係を示す。図3において、縦軸は転写された表面粗さRaを示し、表面粗さRaが大きな位置に図示されている横線は、プレスに使ったプレスロール21,22の表面粗さRaを表している。横軸はプレス荷重を示す。また、三角印は室温でプレスを行った場合を表し、丸印は高温(100°以上)でプレスを行った場合を表す。プレス荷重が小さな場合は、プレスにより負極活物質層13aの表面に転写される表面粗さRaは、プレスロール21,22の表面粗さRaより小さく、プレス荷重がある程度以上になると、プレスロール21,22の表面粗さRaが負極活物質層13aにそのまま転写される。プレス荷重が小さな場合は、プレスにより負極活物質層13aの表面に転写される表面粗さRaは、高温の方が同じプレス荷重において負極活物質層13aに転写される表面粗さRaが大きくなる。しかし、プレス荷重が大きな場合は室温と高温とで転写される表面粗さRaは同じになる。
【0029】
次に前記のように構成された二次電池用電極体10及び負極13の作用を説明する。二次電池用電極体10は、リチウムイオン二次電池の電極体として使用される。リチウムイオン電池の基本的な構成は、金属製の集電板に活物質を塗布(担持)した正極と負極との間に帯状のセパレータを挟んだ積層状態で発電要素(電極体)が構成され、その発電要素が電解液と共に電池ケースに収容されている。リチウムイオン二次電池では、負極でのリチウム析出防止のため負極と相対する正極は、負極に比べて小さく設計される。しかし、負極の面積を正極の面積に比べてそれほど大きくはできないため、急速充電時には、負極にリチウムが析出する可能性がある。そのため、急速充電といっても充電速度は負極にリチウムが析出しない程度の速度に抑えざるをえない。
【0030】
この実施形態の負極13は、集電板11に形成された負極活物質層13aは表面粗さRaの上限が負極13及び正極12を、セパレータ14を挟んで積層する時あるいは、巻回する時に負極活物質層13aがセパレータ14を損傷しない値に設定されており、下限が負極用活物質の平均粒径以上となるように粗化されている。具体的には、負極活物質層13aの表面の算術平均粗さRaは、セパレータ14の厚さをtμmとすると、t/2μm以下、負極用活物質の平均粒径以上である。そのため、表面が粗化されていない負極活物質層13aに比べてその表面積が大幅に大きくなる。したがって、リチウムイオン二次電池を構成した場合、負極13の面積を正極12の面積に比べてそれほど大きくせずに、急速充電時における負極13でのリチウム析出防止効果を高めることができる。その結果、急速充電の際の充電速度を高めることができる。
【0031】
また、集電板11に塗布された負極用活物質の量を多くすることにより、二次電池の出力(放電電流に放電電圧を乗じた値)を高くすることができる。しかし、負極用活物質の量が多くなると、二次電池の製造工程の一工程である、電池ケース内に収容された発電要素を構成する集電板11に塗布された負極用活物質に電解液を含浸させる工程において、含浸に時間がかかり生産性が悪くなる。この実施形態の負極13は、集電板11の両面に塗布された負極活物質層13aの表面が粗化されているため、負極活物質層13aの表面積が広くなり、広い面積から電解液が含浸するようになるため、電解液の含浸が早くなる。
【0032】
負極13を構成する負極活物質層13aへの電解液の含浸性に対する表面粗化の効果を確認するため、負極活物質層13aが粗化された負極13(実施例)と、比較例として負極活物質層13aが粗化されていない負極を形成した。実施例と比較例の負極について、電解液含浸時間と電極抵抗の関係を調べた。結果を図4に示す。図4において縦軸は電極抵抗を表し、横軸は浸漬時間を表す。
【0033】
負極に電解液の含浸を開始した時点では電極抵抗はkΩ(キロオーム)のオーダーであるが、含浸の進行に伴って電極抵抗は低下し、mΩ(ミリオーム)のオーダーまで低下して安定化状態(即ちほぼ一定の値)になる。電解液が負極活物質層13a全体に含浸されたことの確認は、電極抵抗がmΩのオーダーで安定化することで行われる。図4に示すように、実施例の負極は比較例の負極に比べて電極抵抗の低下速度が大きく、安定化に要する時間が短くなった。比較例に比べて実施例では1/4程度の時間で安定化した。
【0034】
前記の構成の二次電池用電極体10を用いた二次電池は種々の用途に使用されるが、例えば車両に搭載した状態でも使用される。
この実施形態によれば、以下に示す効果を得ることができる。
【0035】
(1)二次電池用電極体10は、金属製の集電板11に正極活物質層12aが形成された正極12と、金属製の集電板11に粒子状の負極用活物質を含む負極活物質層13aが形成された負極13とがセパレータ14を挟んだ構成である。負極活物質層13aは、一層で構成され、かつ負極活物質層13aの表面の算術平均粗さRaは、セパレータ14の厚さをtμmとすると、t/2μm以下、負極用活物質の平均粒径以上である。したがって、リチウムイオン二次電池を構成した場合、負極13の面積を正極12の面積に比べてそれほど大きくせずに、急速充電時における負極13でのリチウム析出防止効果を高めることができる。また、負極活物質層13aの表面積が大きくなるため、二次電池を製造する際に負極活物質層13aへの電解液の含浸に要する時間の短縮を図ることができる。また、セパレータ14の最も薄い部分に負極活物質層13aの粗さの粗い部分が対応する状態で二次電池用電極体10が形成されても、セパレータ14の損傷が防止される。
【0036】
(2)負極活物質層13aは表面の算術平均粗さRaが負極用活物質の粒度分布上限以上である。プレス加工で負極活物質層13aの表面を粗化する場合、表面の算術平均粗さRaを活物質の粒度分布上限より小さくするのは難しい。しかし、負極活物質層13aの表面の算術平均粗さRaが活物質の粒度分布上限以上であるため、負極活物質層13aの粗化が容易になる。
【0037】
(3)負極活物質層13aは一層である。したがって、負極活物質層13aが複数層で構成される場合に比べて、製造が簡単になる。
(4)負極活物質層13aは表面が機械的に粗化されている。したがって、負極活物質層13aを構成する活物質の粒度を調整して粗化する場合に比べて粗化を簡単に行うことができる。
【0038】
(5)負極活物質層13aは表面が粗化されたプレスロール21,22によるロールプレスにより粗化されている。したがって、負極活物質層13aの表面を目的の表面粗さRaに粗化することが、他の方法で粗化する場合に比べて簡単に行うことができる。
【0039】
(6)負極13の製造方法は、集電板11に対する負極用活物質の塗布工程終了後に行われるプレス工程において、負極活物質層13aが形成された集電板11を、表面が粗化されたプレスロール21,22を有するロールプレス機でプレスして、負極活物質層13aの表面粗さを目的の表面粗さRaに粗化する。したがって、通常の負極13の製造方法において、負極活物質層13aが形成された集電板11をプレスするプレス工程において、使用するプレスロールとして、表面が負極活物質層13aの表面粗さを目的の表面粗さRa(算術平均粗さRa)にするのに適した表面粗さRaに粗化されたプレスロールを使用する点を変更することで、容易に対応することができる。
【0040】
(7)表面が粗化されたプレスロール21,22による粗化は、プレスロール21,22の表面の粗化状態が同じであっても、プレス条件としてのプレス荷重及びプレス温度の調整により、負極活物質層13aの表面粗さRaを異なる値にすることができる。したがって、プレスロール21,22の表面粗さRaを変更せずに、目的とする表面粗さRaが異なる負極活物質層13aの粗化に対応することができる。
【0041】
(8)プレス工程において、負極活物質層13aの目的とする表面粗さRa(算術平均粗さRa)を、セパレータ14の厚さをtμmとした場合に、t/2μm以下、かつ負極用活物質の平均粒径以上にすると、セパレータ14の損傷を防止した状態で二次電池用電極体10を製造することができる。
【0042】
(9)前記のように構成された二次電池用電極体10を用いた二次電池は、二次電池用電極体10が有する効果を得ることができる。
(10)前記の二次電池を車両に搭載して使用すると、その車両はその二次電池が有する効果を得ることができる。
【0043】
実施形態は前記に限定されるものではなく、例えば、次のように具体化してもよい。
○ 負極活物質層13aの表面の粗化は、負極活物質層13aの全面を行うのではなく、例えば、図5(a)に示すように、集電板11の長手方向に間欠的に粗化部分13cが存在する状態で行われてもよい。その際、粗化部分13cの間に存在する非粗化部分13dは集電板11の長手方向と直交する方向に延びる状態でも、図5(a)に示すように、集電板11の長手方向と傾斜する方向に延びる状態のいずれであってもよい。
【0044】
○ 粗化部分13cは、負極活物質層13aの幅と同じ幅で形成される代わりに、負極活物質層13aの幅より狭い幅で形成されてもよい。また、図5(b)に示すように、粗化部分13cが間欠的に形成される場合においても、粗化部分13cが負極活物質層13aの幅より狭い幅で形成されてもよい。
【0045】
○ 二次電池用電極体10は、正極12と負極13とがセパレータ14を挟んだ構成であればよく、帯状に形成された正極12と、帯状に形成された負極13とがセパレータ14を挟んだ積層状態で略長円柱状に巻かれて電極体(発電要素)が構成される巻回型の二次電池に適したものに限らない。例えば、帯状に形成された正極12と、帯状に形成された負極13とがセパレータ14を挟んで円柱状に巻かれて電極体(発電要素)が構成される円筒状の二次電池に適用したり、長方形状の正極、長方形状の負極及びセパレータが複数層に積層されて構成された直方体状の電極体が使用される二次電池に適用したりしてもよい。
【0046】
○ 負極13が、長方形状の正極、長方形状の負極及びセパレータが複数層に積層されて構成された直方体状の電極体に使用される場合、負極活物質層13aは集電板11の両面ではなく片面のみに形成されたものであってもよい。
【0047】
○ 直方体状の電極体に使用される負極13を製造する場合、帯状の集電板11の長手方向に間欠的に負極活物質層13aを形成したものを、プレス工程で負極活物質層13aの表面を粗化した後、帯状の集電板11を切断して所望の大きさの矩形状の負極13を製造してもよい。
【0048】
○ 負極13は活物質非塗布部17が集電板11の幅方向の両側に設けられた構成に限らず、幅方向の片側に設けられた構成であってもよい。
○ 負極活物質層13aの粗化はロールプレスに限らず、例えば、表面が粗化されたプレス金型でプレスしてもよい。
【0049】
○ 負極活物質層13aは、一層で構成されたものに限らず、各層が同じ材料で形成された複数層で構成されていてもよい。
○ 正極タブ15及び負極タブ16を正極12あるいは負極13に複数の凸部12bあるいは凸部13bとして一体形成せずに、別体に形成したタブ用部材を活物質非塗布部17に接合してもよい。
【0050】
以下の技術的思想(発明)は前記実施形態から把握できる。
(1)請求項1〜請求項3のいずれか一項に記載の発明において、前記負極活物質層は表面が機械的に粗化されている。
【符号の説明】
【0051】
10…二次電池用電極体、11…集電板、12…正極、12a…正極活物質層、13…負極、13a…負極活物質層、14…セパレータ、21,22…プレスロール、23…ロールプレス機。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
金属製の集電板に正極活物質層が形成された正極と、金属製の集電板に粒子状の負極用活物質を含む負極活物質層が形成された負極とがセパレータを挟んだ構成である二次電池用電極体であって、
前記負極活物質層は、一層あるいは各層が同じ材料で形成された複数層で構成され、前記負極活物質層の表面の算術平均粗さRaは、前記セパレータの厚さをtμmとすると、t/2μm以下、前記負極用活物質の平均粒径以上であることを特徴とする二次電池用電極体。
【請求項2】
前記負極活物質層は表面の算術平均粗さRaが前記負極用活物質の粒度分布上限以上である請求項1に記載の二次電池用電極体。
【請求項3】
前記負極活物質層は一層である請求項1又は請求項2に記載の二次電池用電極体。
【請求項4】
金属製の集電板に正極活物質層が形成された正極と、金属製の集電板に粒子状の負極用活物質を含む負極活物質層が形成された負極とがセパレータを挟んだ構成である二次電池用電極体の製造方法であって、
前記集電板に対する前記負極用活物質の塗布工程終了後に行われるプレス工程において、前記負極活物質層が形成された集電板を、表面が粗化されたプレスロールを有するロールプレス機でプレスして、前記負極活物質層の表面の粗さを目的の算術平均粗さRaに粗化することを特徴とする二次電池用電極体の製造方法。
【請求項5】
前記算術平均粗さRaは、前記セパレータの厚さをtμmとすると、t/2μm以下、前記負極用活物質の平均粒径以上である請求項4に記載の二次電池用電極体の製造方法。
【請求項6】
請求項1〜3のいずれか一項に記載の二次電池用電極体を用いた二次電池。
【請求項7】
請求項6に記載の二次電池を搭載した車両。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2013−105585(P2013−105585A)
【公開日】平成25年5月30日(2013.5.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−247665(P2011−247665)
【出願日】平成23年11月11日(2011.11.11)
【出願人】(000003218)株式会社豊田自動織機 (4,162)
【Fターム(参考)】