説明

二次電池用非水系電解液及びそれを用いた非水系電解液二次電池

【課題】放電負荷特性に優れ、高温保存特性、サイクル特性に優れた二次電池用非水系電解液を提供すること。
【解決手段】イオンを吸蔵及び放出し得る負極及び正極と非水系電解液とを備える非水系電解液二次電池に用いられる非水系電解液であって、該非水系電解液が、電解質と非水系溶媒とを有し、該非水系溶媒がハロゲン原子を有するカーボネートを含有し、該ハロゲン原子を有するカーボネートが非水系溶媒全体に対して0.001質量%以上10質量%以下のハロゲン原子を有する環状カーボネート、及び、ハロゲン原子を有する鎖状カーボネートのうち少なくとも一方であると共に、モノフルオロリン酸塩及び/又はジフルオロリン酸塩を含有し、更に非水系溶媒全体に対して0.001質量%以上40質量%以下の不飽和結合を有するカーボネートを含有することを特徴とする非水系電解液電池用非水系電解液。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、二次電池用の非水系電解液及びそれを用いた二次電池に関するものであり、更に詳しくは、特定の成分を含有するリチウム二次電池用の非水系電解液及びそれを用いたリチウム二次電池に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、電子機器の小型化に伴い、二次電池に対する高容量化への要求が高くなっており、ニッケル・カドミウム電池やニッケル・水素電池に比べてエネルギー密度の高いリチウム二次電池が注目されている。
【0003】
リチウム二次電池の電解液としては、LiPF、LiBF、LiClO、LiCFSO、LiAsF、LiN(CFSO、LiCF(CFSO等の電解質を、エチレンカーボネート、プロピレンカーボネート等の環状カーボネート、ジメチルカーボネート、ジエチルカーボネート、エチルメチルカーボネート等の鎖状カーボネート;γ−ブチロラクトン、γ−バレロラクトン等の環状エステル類;酢酸メチル、プロピオン酸メチル等の鎖状エステル類等の非水系溶媒に溶解させた非水系電解液が用いられている。
【0004】
こうしたリチウム二次電池の負荷特性、サイクル特性、保存特性等の電池特性を改良するために、非水系溶媒や電解質について種々の検討がなされている。例えば、特許文献1には、ビニルエチレンカーボネート化合物を含有する電解液を用いることにより、電解液の分解を最小限に抑え、保存特性、サイクル特性の優れた電池を作製することができ、特許文献2には、プロパンスルトンを含有する電解液を用いることにより、保存後の回復容量を増加させることができるとしてある。
【0005】
しかしながら、このような化合物を含有させた場合、保存特性やサイクル特性を向上させる効果はある程度有するが、負極側で抵抗の高い皮膜が形成されるために、特に放電負荷特性が低下するという問題点があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2001−006729号公報
【特許文献2】特開平10−050342号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、かかる背景技術に鑑みてなされたものであり、放電負荷特性に優れ、高温保存特性、サイクル特性に優れた二次電池用非水系電解液を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者は、上記課題に鑑み鋭意研究した結果、非水系電解液にハロゲン原子を有するカーボネートを少なくとも1種以上含有していると共に特定の化合物を加えた場合に、放電負荷特性に優れ、高温保存特性やサイクル特性を良好に保つことができることを見出して、本発明を完成するに至った。
【0009】
すなわち、本発明は、イオンを吸蔵及び放出し得る負極及び正極と非水系電解液とを備える非水系電解液二次電池に用いられる非水系電解液であって、該非水系電解液が、電解質と非水系溶媒とを有し、該非水系溶媒がハロゲン原子を有するカーボネートを含有していると共に、モノフルオロリン酸塩及び/又はジフルオロリン酸塩を含有することを特徴とする非水系電解液に存する。
【0010】
また、本発明は、リチウムイオンを吸蔵・放出可能な負極及び正極、並びに非水系電解液を含む非水系電解液二次電池であって、該非水系電解液が上記の非水系電解液であることを特徴とする非水系電解液二次電池に存する。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、放電負荷特性、高温保存特性やサイクル特性に優れた二次電池用非水系電解液及び非水系電解液二次電池を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明の実施の形態について詳細に説明するが、以下に記載する構成要件の説明は、本発明の実施態様の一例(代表例)であり、本発明は、これらの具体的内容に限定はされず、その要旨の範囲内で種々変形して実施することができる。
【0013】
[1.二次電池用非水系電解液]
本発明の非水系電解液は、常用の非水系電解液と同じく、電解質及びこれを溶解する非水系溶媒を含有する。
【0014】
<1−1.電解質>
本発明の非水系電解液に用いる電解質に制限はなく、目的とする非水系電解液二次電池に電解質として用いられる公知のものを任意に採用して混合することができる。本発明の非水系電解液を非水系電解液二次電池に用いる場合には、電解質はリチウム塩が好ましい。
【0015】
LiCFSO
LiN(CFSO
LiN(CSO
LiN(CFSO)(CSO)、
LiC(CFSO
LiPF(CF
LiPF(C
LiPF(CFSO
LiPF(CSO
LiBF(CF)、
LiBF(C)、
LiBF(CF
LiBF(C
LiBF(CFSO
LiBF(CSO等の含フッ素有機リチウム塩;
【0016】
LiCF3SO3
LiN(CF3SO22
LiN(C25SO22
LiN(CF3SO2)(C49SO2)、
LiC(CF3SO23
LiPF4(CF32
LiPF4(C252
LiPF4(CF3SO22
LiPF4(C25SO22
LiBF2(CF32
LiBF2(C252
LiBF2(CF3SO22
LiBF2(C25SO22等の含フッ素有機リチウム塩;
【0017】
リチウムビス(オキサラト)ボレート、
リチウムトリス(オキサラト)フォスフェート、
リチウムジフルオロオキサラトボレート等の含ジカルボン酸錯体リチウム塩;
【0018】
KPF6
NaPF6
NaBF4
CF3SO3Na等のナトリウム塩又はカリウム塩;
等が挙げられる。
【0019】
これらのうち、LiPF6、LiBF4、LiCF3SO3、LiN(CF3SO22、LiN(C25SO22又はリチウムビス(オキサラト)ボレートが好ましく、LiPF6又はLiBF4が特に好ましい。
【0020】
電解質は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を任意の組み合わせ及び比率で併用してもよい。中でも、特定の無機リチウム塩の2種を併用したり、無機リチウム塩と含フッ素有機リチウム塩とを併用したりすると、連続充電時のガス発生が抑制され、若しくは高温保存後の劣化が抑制されるので好ましい。
【0021】
特に、LiPF6とLiBF4との併用や、LiPF6、LiBF4等の無機リチウム塩と、LiCF3SO3、LiN(CF3SO22、LiN(C25SO22等の含フッ素有機リチウム塩とを併用することが好ましい。
【0022】
更に、LiPFとLiBFとを併用する場合、電解質全体に対してLiBFが通常0.01質量%以上、通常20質量%以下の比率で含有されていることが好ましい。LiBFは解離度が低く、比率が高過ぎると非水系電解液の抵抗を高くする場合がある。
【0023】
一方、LiPF6、LiBF4等の無機リチウム塩と、LiCF3SO3、LiN(CF3SO22、LiN(C25SO22等の含フッ素有機リチウム塩とを併用する場合、リチウム塩全体に占める無機リチウム塩の割合は、通常70質量%以上、通常99質量%以下の範囲であることが望ましい。一般に含フッ素有機リチウム塩は無機リチウム塩と比較して分子量が大きく、比率が高過ぎると非水系電解液全体に占める非水系溶媒の比率が低下し非水系電解液の抵抗を高くする場合がある。
【0024】
また、本発明の非水系電解液の最終的な組成中におけるリチウム塩の濃度は、本発明の効果を著しく損なわない限り任意であるが、通常0.5mol/L以上、好ましくは0.6mol/L以上、より好ましくは0.8mol/L以上、また、通常3mol/L以下、好ましくは2mol/L以下、より好ましくは1.5mol/L以下の範囲である。この濃度が低過ぎると、非水系電解液の電気伝導率が不十分となる場合があり、濃度が高過ぎると、粘度上昇のため電気伝導率が低下し、本発明の非水系電解液を用いた非水系電解液二次電池の性能が低下する場合がある
【0025】
特に、非水系電解液の非水系溶媒がアルキレンカーボネートやジアルキルカーボネートといったカーボネート化合物を主体とする場合には、LiPFを単独で用いてもよいが、LiBFと併用すると連続充電による容量劣化が抑制されるので好ましい。これらを併用する場合のLiPFに対するLiBFのモル比は、通常0.005以上、好ましくは0.01以上、特に好ましくは0.05以上であり、通常0.4以下、好ましくは0.2以下である。このモル比が大きすぎると、高温保存後の電池特性が低下する傾向にあり、逆に小さすぎると、連続充電時のガス発生や容量劣化を抑える効果が得られ難くなる。
【0026】
また、非水系電解液の非水系溶媒が、γ−ブチロラクトン、γ−バレロラクトン等の環状カルボン酸エステル化合物を50容量%以上含むものである場合には、LiBFが電解質全体の50mol%以上を占めることが好ましい。
【0027】
<1−2.ハロゲン原子を有するカーボネート>
本発明における「ハロゲン原子を有するカーボネート」としては、ハロゲン原子を有するものであれば、その他に特に制限はなく、任意のカーボネートを用いることができる。「ハロゲン原子を有するカーボネート」の好ましいものとして、ハロゲン原子を有する環状カーボネート又はハロゲン原子を有する鎖状カーボネートが挙げられる。
【0028】
ハロゲン原子の具体例としては、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子等が挙げられる。この中でも、フッ素原子又は塩素原子がより好ましく、フッ素原子が特に好ましい。また、「ハロゲン原子を有するカーボネート」が1分子中に有するハロゲン原子の数は、1以上であれば特に制限されないが、通常10以下、好ましくは6以下である。「ハロゲン原子を有するカーボネート」が1分子中に複数のハロゲン原子を有する場合、それらは互いに同一でもよく、異なっていてもよい。
【0029】
<1−2−1.環状カーボネート>
本発明における「ハロゲン原子を有するカーボネート」である環状カーボネートについて、以下に説明する。環状カーボネートの、環を構成する原子の数は通常4以上、好ましくは5以上であり、上限は10以下が好ましく、特に好ましくは8以下である。これを逸脱した場合、化合物の化学的な安定性、あるいは工業的な入手性に問題が生じる場合がある。これら環状カーボネートの環を構成する原子の数が5から8である場合の具体的な例としては、エチレンカーボネート、1,3−プロパンジオールカーボネート、1,4−ブタンジオールカーボネート、1,5−ペンタンジオールカーボネートがそれぞれ挙げられる。また、環状カーボネートは環内に炭素−炭素不飽和結合を有していてもよい。具体的な例としては、ビニレンカーボネート、cis−2−ブテン−1,4−ジオールカーボネート等が挙げられる。
【0030】
上記環状カーボネートは炭化水素基からなる置換基を有していてもよい。ここで、炭化水素基の種類に制限はなく、脂肪族炭化水素基であっても芳香族炭化水素基であってもよく、それらの結合した炭化水素基であってもよい。脂肪族炭化水素基の場合は、鎖状であっても環状であってもよく、鎖状及び環状が結合した構造であってもよい。鎖状炭化水素基の場合は、直鎖状であっても分岐鎖状であってもよい。また、飽和炭化水素基であってもよく、不飽和結合を有していてもよい。
【0031】
上記炭化水素基の具体例としては、アルキル基、シクロアルキル基、不飽和結合を有する炭化水素基(以下、適宜「不飽和炭化水素基」と略記する)等が挙げられる。
アルキル基の具体例としては、例えば、
メチル基、
エチル基、
1−プロピル基、
1−メチルエチル基、
1−ブチル基、
1−メチルプロピル基、
2−メチルプロピル基、
1,1−ジメチルエチル基等が挙げられる。
【0032】
中でも、メチル基又はエチル基が好ましい。
【0033】
シクロアルキル基の具体例としては、例えば、
シクロペンチル基、
2−メチルシクロペンチル基、
3−メチルシクロペンチル基、
2,2−ジメチルシクロペンチル基、
2,3−ジメチルシクロペンチル基、
2,4−ジメチルシクロペンチル基、
2,5−ジメチルシクロペンチル基、
3,3−ジメチルシクロペンチル基、
3,4−ジメチルシクロペンチル基、
2−エチルシクロペンチル基、
3−エチルシクロペンチル基、
シクロヘキシル基、
2−メチルシクロヘキシル基、
3−メチルシクロヘキシル基、
4−メチルシクロヘキシル基、
2,2−ジメチルシクロヘキシル基、
2,3−ジメチルシクロヘキシル基、
2,4−ジメチルシクロヘキシル基、
2,5−ジメチルシクロヘキシル基、
2,6−ジメチルシクロヘキシル基、
3,4−ジメチルシクロヘキシル基、
3,5−ジメチルシクロヘキシル基、
2−エチルシクロヘキシル基、
3−エチルシクロヘキシル基、
4−エチルシクロヘキシル基、
ビシクロ[3,2,1]オクタ−1−イル基、
ビシクロ[3,2,1]オクタ−2−イル基等が挙げられる。
【0034】
中でも、シクロペンチル基又はシクロヘキシル基が好ましい。
【0035】
また、不飽和炭化水素基の具体例としては、例えば、
ビニル基、
1−プロペン−1−イル基、
1−プロペン−2−イル基、
アリル基、
クロチル基、
エチニル基、
プロパルギル基、
フェニル基、
2−メチルフェニル基、
3−メチルフェニル基、
4−メチルフェニル基、
2,3−ジメチルフェニル基、
キシリル基、
フェニルメチル基、
1−フェニルエチル基、
2−フェニルエチル基、
ジフェニルメチル基、
トリフェニルメチル基、
シンナミル基等が挙げられる。
【0036】
中でも、ビニル基、アリル基、フェニル基、フェニルメチル基又は2−フェニルエチル基が好ましい。
【0037】
上記炭化水素基は、1又は2以上の置換基により置換されていてもよい。置換基の種類は、本発明における効果を著しく損なうことのない限り制限されないが、例としては、水酸基、アミノ基、ニトロ基、シアノ基、カルボキシル基、エーテル基、アルデヒド基等が挙げられる。また、上記炭化水素基は環状カーボネートと酸素原子を介して結合していてもよい。なお、上記炭化水素基が2以上の置換基を有する場合、これらの置換基は互いに同一でもよく、異なっていてもよい。
【0038】
上記炭化水素基は、任意の2つ以上を比較した場合に、互いに同一であってもよく、異なっていてもよい。上記炭化水素基が置換基を有する場合には、それらの置換基も含めた置換炭化水素基が、互いに同一であってもよく、異なっていてもよい。更には、上記炭化水素基のうち任意の2つ以上が相互に結合して、環状構造を形成していてもよい。
【0039】
上記炭化水素基の炭素数は、通常1以上、また、通常20以下、好ましくは10以下、より好ましくは6以下である。炭化水素基の炭素数が多過ぎると、重量あたりのモル数が減り、種々の効果が低減する場合がある。なお、上記炭化水素基が置換基を有する場合には、それらの置換基も含めた置換炭化水素基の炭素数が、上記範囲を満たすものとする。
【0040】
上記、ハロゲン原子を有する環状カーボネートは、環状構造を形成する炭素原子に直接ハロゲン原子が結合したものでもよく、上述の「炭化水素基からなる置換基」にハロゲン原子が結合したものでもよく、これらの両方にハロゲン原子が結合したものであってもよい。
【0041】
「炭化水素基からなる置換基」にハロゲン原子が結合したものが、ハロゲン化されたアルキル基である場合の具体例としては、例えば、
モノフルオロメチル基、
ジフルオロメチル基、
トリフルオロメチル基、
1−フルオロエチル基、
2−フルオロエチル基、
1,1−ジフルオロエチル基、
1,2−ジフルオロエチル基、
2,2−ジフルオロエチル基、
2,2,2−トリフルオロエチル基、
パーフルオロエチル基、
モノクロロメチル基、
ジクロロメチル基、
トリクロロメチル基、
1−クロロエチル基、
2−クロロエチル基、
1,1−ジクロロエチル基、
1,2−ジクロロエチル基、
2,2−ジクロロエチル基、
2,2,2−トリクロロエチル基、
パークロロエチル基等が挙げられる。
【0042】
中でも、モノフルオロメチル基、ジフルオロメチル基、トリフルオロメチル基、2,2−ジフルオロエチル基、2,2,2−トリフルオロエチル基又はパーフルオロエチル基が好ましい。
【0043】
「炭化水素基からなる置換基」にハロゲン原子が結合したものが、ハロゲン化されたシクロアルキル基である場合の具体例としては、例えば、
1−フルオロシクロペンチル基、
2−フルオロシクロペンチル基、
3−フルオロシクロペンチル基、
ジフルオロシクロペンチル基、
トリフルオロシクロペンチル基、
1−フルオロシクロヘキシル基、
2−フルオロシクロヘキシル基、
3−フルオロシクロヘキシル基、
4−フルオロシクロヘキシル基、
ジフルオロシクロヘキシル基、
トリフルオロシクロヘキシル基、
1−クロロシクロペンチル基、
2−クロロシクロペンチル基、
3−クロロシクロペンチル基、
ジクロロシクロペンチル基、
トリクロロシクロペンチル基、
1−クロロシクロヘキシル基、
2−クロロシクロヘキシル基、
3−クロロシクロヘキシル基、
4−クロロシクロヘキシル基、
ジクロロシクロヘキシル基、
トリクロロシクロヘキシル基等が挙げられる。
【0044】
中でも、1−フルオロシクロペンチル基、2−フルオロシクロペンチル基、3−フルオロシクロペンチル基、1−フルオロシクロヘキシル基、2−フルオロシクロヘキシル基、3−フルオロシクロヘキシル基又は4−フルオロシクロヘキシル基が好ましい。
【0045】
「炭化水素基からなる置換基」にハロゲン原子が結合したものが、ハロゲン化された不飽和炭化水素基である場合の具体例としては、例えば、
1−フルオロビニル基、
2−フルオロビニル基、
1,2−ジフルオロビニル基、
パーフルオロビニル基、
1−フルオロアリル基、
2−フルオロアリル基、
3−フルオロアリル基、
2−フルオロフェニル基、
3−フルオロフェニル基、
4−フルオロフェニル基、
2,3−ジフルオロフェニル基、
2,4−ジフルオロフェニル基、
2,5−ジフルオロフェニル基、
2,6−ジフルオロフェニル基、
3,4−ジフルオロフェニル基、
3,5−ジフルオロフェニル基、
1−フルオロ−1−フェニルメチル基、
1,1−ジフルオロ−1−フェニルメチル基、
(2−フルオロフェニル)メチル基、
(3−フルオロフェニル)メチル基、
(4−フルオロフェニル)メチル基、
(2−フルオロフェニル)フルオロメチル基、
1−フルオロ−2−フェニルエチル基
1,1−ジフルオロ−2−フェニルエチル基
1,2−フルオロ−2−フェニルエチル基
2−(2−フルオロフェニル)エチル基
2−(3−フルオロフェニル)エチル基
2−(4−フルオロフェニル)エチル基
1−フルオロ−2−(2−フルオロフェニル)エチル基
1−フルオロ−2−(2−フルオロフェニル)エチル基
【0046】
1−クロロビニル基、
2−クロロビニル基、
1,2−ジクロロビニル基、
パークロロビニル基、
1−クロロアリル基、
2−クロロアリル基、
3−クロロアリル基、
2−クロロフェニル基、
3−クロロフェニル基、
4−クロロフェニル基、
2,3−ジクロロフェニル基、
2,4−ジクロロフェニル基、
2,5−ジクロロフェニル基、
2,6−ジクロロフェニル基、
3,4−ジクロロフェニル基、
1, 5−ジクロロフェニル基、
1−クロロ−1−フェニルメチル基、
1,1−ジクロロ−1−フェニルメチル基、
(2−クロロフェニル)メチル基、
(3−クロロフェニル)メチル基、
(4−クロロフェニル)メチル基、
(2−クロロフェニル)クロロメチル基、
1−クロロ−2−フェニルエチル基
1,1−ジクロロ−2−フェニルエチル基
1,2−クロロ−2−フェニルエチル基
2−(2−クロロフェニル)エチル基
2−(3−クロロフェニル)エチル基
2−(4−クロロフェニル)エチル基
1−クロロ−2−(2−クロロフェニル)エチル基
1−クロロ−2−(2−クロロフェニル)エチル基等が挙げられる。
【0047】
中でも、2−フルオロフェニル基、3−フルオロフェニル基、4−フルオロフェニル基、2,4−ジフルオロフェニル基、3,5−ジフルオロフェニル基、1−フルオロ−1−フェニルメチル基、(2−フルオロフェニル)メチル基、(4−フルオロフェニル)メチル基、(2−フルオロフェニル)フルオロメチル基、1−フルオロ−2−フェニルエチル基、2−(2−フルオロフェニル)エチル基又は2−(4−フルオロフェニル)エチル基が好ましい。
【0048】
このような、ハロゲン原子を有する環状カーボネートの具体例としては、例えば、
フルオロエチレンカーボネート、
クロロエチレンカーボネート、
4,4−ジフルオロエチレンカーボネート、
4,5−ジフルオロエチレンカーボネート、
4,4−ジクロロエチレンカーボネート、
4,5−ジクロロエチレンカーボネート、
4−フルオロ−4−メチルエチレンカーボネート、
4−クロロ−4−メチルエチレンカーボネート、
4−フルオロ−5−メチルエチレンカーボネート、
4−クロロ−5−メチルエチレンカーボネート、
4,5−ジフルオロ−4−メチルエチレンカーボネート、
4,5−ジクロロ−4−メチルエチレンカーボネート、
4−フルオロ−5−メチルエチレンカーボネート、
4−クロロ−5−メチルエチレンカーボネート、
4,4−ジフルオロ−5−メチルエチレンカーボネート、
4,4−ジクロロ−5−メチルエチレンカーボネート、
4−(フルオロメチル)−エチレンカーボネート、
4−(クロロメチル)−エチレンカーボネート、
4−(ジフルオロメチル)−エチレンカーボネート、
4−(ジクロロメチル)−エチレンカーボネート、
4−(トリフルオロメチル)−エチレンカーボネート、
4−(トリクロロメチル)−エチレンカーボネート、
4−(フルオロメチル)−4−フルオロエチレンカーボネート、
4−(クロロメチル)−4−クロロエチレンカーボネート、
4−(フルオロメチル)−5−フルオロエチレンカーボネート、
4−(クロロメチル)−5−クロロエチレンカーボネート、
4−フルオロ−4,5−ジメチルエチレンカーボネート、
4−クロロ−4,5−ジメチルエチレンカーボネート、
4,5−ジフルオロ−4,5−ジメチルエチレンカーボネート、
4,5−ジクロロ−4,5−ジメチルエチレンカーボネート、
4,4−ジフルオロ−5,5−ジメチルエチレンカーボネート、
4,4−ジクロロ−5,5−ジメチルエチレンカーボネート等が挙げられる。
【0049】
また、環内に炭素−炭素不飽和結合を有する「ハロゲン原子を有する環状カーボネート」の具体例としては、例えば、
フルオロビニレンカーボネート、
4−フルオロ−5−メチルビニレンカーボネート、
4−フルオロ−5−フェニルビニレンカーボネート、
4−(トリフルオロメチル)ビニレンカーボネート、
クロロビニレンカーボネート、
4−クロロ−5−メチルビニレンカーボネート、
4−クロロ−5−フェニルビニレンカーボネート、
4−(トリクロロメチル)ビニレンカーボネート等が挙げられる。
【0050】
また、環外に炭素−炭素不飽和結合を有する炭化水素基で置換された環状カーボネートの具体例としては、例えば、
4−フルオロ−4−ビニルエチレンカーボネート、
4−フルオロ−5−ビニルエチレンカーボネート、
4,4−ジフルオロ−5−ビニルエチレンカーボネート、
4,5−ジフルオロ−4−ビニルエチレンカーボネート、
4−クロロ−5−ビニルエチレンカーボネート、
4,4−ジクロロ−5−ビニルエチレンカーボネート、
4,5−ジクロロ−4−ビニルエチレンカーボネート、
4−フルオロ−4,5−ジビニルエチレンカーボネート、
4,5−ジフルオロ−4,5−ジビニルエチレンカーボネート、
4−クロロ−4,5−ジビニルエチレンカーボネート、
4,5−ジクロロ−4,5−ジビニルエチレンカーボネート、
4−フルオロ−4−フェニルエチレンカーボネート、
4−フルオロ−5−フェニルエチレンカーボネート、
4,4−ジフルオロ−5−フェニルエチレンカーボネート、
4,5−ジフルオロ−4−フェニルエチレンカーボネート、
4−クロロ−4−フェニルエチレンカーボネート、
4−クロロ−5−フェニルエチレンカーボネート、
4,4−ジクロロ−5−フェニルエチレンカーボネート、
4,5−ジクロロ−4−フェニルエチレンカーボネート、
4,5−ジフルオロ−4,5−ジフェニルエチレンカーボネート、
3,5−ジクロロ−4,5−ジフェニルエチレンカーボネート、
4−フルオロ−5−ビニルビニレンカーボネート、
4−クロロ−5−ビニルビニレンカーボネート等が挙げられる。
【0051】
これらのハロゲン原子を有する環状カーボネートの中でも、フッ素原子を有するカーボネートが好ましく、特にフルオロエチレンカーボネート、4,4−ジフルオロエチレンカーボネート、4,5−ジフルオロエチレンカーボネート、4−フルオロ−4−メチルエチレンカーボネート、4−フルオロ−5−メチルエチレンカーボネート、4−(フルオロメチル)−エチレンカーボネート又は4−(トリフルオロメチル)−エチレンカーボネートが、工業的入手のし易さ、化学的な安定性の点から、より好適に用いられる。
【0052】
なお、ハロゲン原子を有する環状カーボネートの分子量に特に制限はなく、本発明の効果を著しく損なわない限り任意であるが、通常50以上、好ましくは80以上、また、通常250以下、好ましくは150以下である。分子量が大き過ぎると、非水系電解液に対するハロゲン原子を有する環状カーボネートの溶解性が低下し、本発明の効果を十分に発現し難くなる場合がある。
【0053】
また、ハロゲン原子を有する環状カーボネートの製造方法にも特に制限はなく、公知の方法を任意に選択して製造することが可能である。
【0054】
以上説明したハロゲン原子を有する環状カーボネートは、本発明の非水系電解液中に、何れか1種を単独で含有させてもよく、2種以上を任意の組み合わせ及び比率で併有させてもよい。ハロゲン原子を有する環状カーボネートの含有量は特に制限されないが、通常0.001質量%以上、100質量%以下で用いられる。
【0055】
ここで、ハロゲン原子を有する環状カーボネートは、含有量によって発現する機能が異なると考えられる。この要因については、詳細は明らかではなく、また、本発明の範囲が要因により限定されるものではないが、以下のように考えられる。すなわち、非水系溶媒全体に対して、0.001質量%以上、10質量%以下で添加剤として用いる場合、ハロゲン原子を有する環状カーボネートは負極表面で分解して負極表面保護膜を形成すると考えられる。一方で、10質量%以上、100質量%以下で非水系溶媒として用いる場合、ハロゲン原子を有する環状カーボネートは、前記の添加剤としての機能を発現するとともに、非水系電解液の耐酸化性向上という機能をも発現すると考えられる。
【0056】
ハロゲン原子を有する環状カーボネートを添加剤として用いる場合の含有量は、非水系溶媒全体に対して、通常0.001質量%以上、好ましくは0.01質量%以上、また、通常10質量%以下、好ましくは5質量%以下である。含有割合が少な過ぎると、これらの還元分解に基づく負極皮膜が充分に形成されず、電池特性を充分に発現することができなくなる場合がある。
【0057】
ハロゲン原子を有する環状カーボネートを非水系溶媒として用いる場合の含有量は、非水系溶媒全体に対して、通常10質量%以上、好ましくは12質量%以上、最も好ましくは15質量%以上、通常100質量%以下、好ましくは80質量%以下、最も好ましくは50質量%以下である。上記下限を下回ると、正極表面上で進行する他の非水系電解液構成成分の酸化分解に対する抑制が望ましい程度に進行されなくなり、本発明の効果を発現することができなくなる場合がある。また、上限を上回ると、電解液の粘度が高くなってしまうため、それにより電池における種々の特性を低下させてしまう場合がある。
【0058】
また、ハロゲン原子を有する環状カーボネートは、後述のハロゲン原子を有する鎖状カーボネート及び/又は「ハロゲン原子を有するカーボネート以外の非水系溶媒」と、任意の割合で混合して用いることも可能である。混合して用いる場合の組合せの例としては、例えば、
ハロゲン原子を有する環状カーボネートとハロゲン原子を有さない環状カーボネート、
ハロゲン原子を有する環状カーボネートとハロゲン原子を有さない鎖状カーボネート、
ハロゲン原子を有する環状カーボネートとハロゲン原子を有する鎖状カーボネート、
ハロゲン原子を有する環状カーボネートと環状カルボン酸エステル
ハロゲン原子を有する環状カーボネートと鎖状カルボン酸エステル
ハロゲン原子を有する環状カーボネートと環状エーテル、
ハロゲン原子を有する環状カーボネートと鎖状エーテル、
ハロゲン原子を有する環状カーボネートと含リン有機溶媒、
ハロゲン原子を有する環状カーボネートとハロゲン原子を有さない環状カーボネートとハロゲン原子を有さない鎖状カーボネート、
ハロゲン原子を有する環状カーボネートとハロゲン原子を有さない環状カーボネートとハロゲン原子を有する鎖状カーボネート、
ハロゲン原子を有する環状カーボネートとハロゲン原子を有さない環状カーボネートと環状カルボン酸エステル、
ハロゲン原子を有する環状カーボネートとハロゲン原子を有さない環状カーボネートと鎖状カルボン酸エステル、
ハロゲン原子を有する環状カーボネートとハロゲン原子を有さない環状カーボネートと環状エーテル、
ハロゲン原子を有する環状カーボネートとハロゲン原子を有さない環状カーボネートと鎖状エーテル、
ハロゲン原子を有する環状カーボネートとハロゲン原子を有さない環状カーボネートとハロゲン原子を有さない鎖状カーボネートとハロゲン原子を有する鎖状カーボネート、
ハロゲン原子を有する環状カーボネートとハロゲン原子を有さない環状カーボネートと環状カルボン酸エステルとハロゲン原子を有さない鎖状カーボネート、
ハロゲン原子を有する環状カーボネートとハロゲン原子を有さない環状カーボネートと鎖状カルボン酸エステルとハロゲン原子を有さない鎖状カーボネート、
ハロゲン原子を有する環状カーボネートとハロゲン原子を有さない環状カーボネートと環状エーテルとハロゲン原子を有さない鎖状カーボネート、
ハロゲン原子を有する環状カーボネートとハロゲン原子を有さない環状カーボネートと鎖状エーテルとハロゲン原子を有さない鎖状カーボネート、
ハロゲン原子を有する環状カーボネートとハロゲン原子を有さない環状カーボネートと含リン有機溶媒とハロゲン原子を有さない鎖状カーボネート、
【0059】
ハロゲン原子を有する環状カーボネートとハロゲン原子を有さない環状カーボネートと環状カルボン酸エステルとハロゲン原子を有する鎖状カーボネート、
ハロゲン原子を有する環状カーボネートとハロゲン原子を有さない環状カーボネートと環状カルボン酸エステルとハロゲン原子を有さない鎖状カーボネート、
ハロゲン原子を有する環状カーボネートとハロゲン原子を有さない環状カーボネートと環状カルボン酸エステルと鎖状カルボン酸エステル、
ハロゲン原子を有する環状カーボネートとハロゲン原子を有さない環状カーボネートと環状カルボン酸エステルと環状エーテル、
ハロゲン原子を有する環状カーボネートとハロゲン原子を有さない環状カーボネートと環状カルボン酸エステルと含リン有機溶媒、
【0060】
ハロゲン原子を有する環状カーボネートとハロゲン原子を有さない環状カーボネートと環状カルボン酸エステルとハロゲン原子を有する鎖状カーボネートとハロゲン原子を有さない鎖状カーボネート、
ハロゲン原子を有する環状カーボネートとハロゲン原子を有さない環状カーボネートと環状エーテルとハロゲン原子を有する鎖状カーボネートとハロゲン原子を有さない鎖状カーボネート、
ハロゲン原子を有する環状カーボネートとハロゲン原子を有さない環状カーボネートと含リン有機溶媒とハロゲン原子を有する鎖状カーボネートとハロゲン原子を有さない鎖状カーボネート、
等が挙げられる。
【0061】
<1−2−2.鎖状カーボネート>
本発明における「ハロゲン原子を有するカーボネート」である鎖状カーボネートについて、以下に説明する。鎖状カーボネートは通常、2個の炭化水素基を有しているがこれらは同一であってもよく、異なっていてもよい。これら炭化水素基の炭素数は、それぞれ1以上ならば好ましく、上限は、10以下が好ましく、6以下が特に好ましい。これを逸脱した場合、化合物の化学的な安定性、あるいは工業的な入手性に問題が生じる場合がある。
【0062】
このような鎖状カーボネートを構成する炭化水素基の例としては、上記、環状カーボネートに置換された置換基と同等であり、ハロゲン化された置換基も同等である。
【0063】
鎖状カーボネートの具体例としては、例えば、
ジメチルカーボネート、
ジエチルカーボネート、
ジプロピルカーボネート、
ジブチルカーボネート、
ジビニルカーボネート、
ジアリルカーボネート、
ジフェニルカーボネート
エチルメチルカーボネート
メチルプロピルカーボネート
ブチルメチルカーボネート
メチルビニルカーボネート
アリルメチルカーボネート
メチルフェニルカーボネート、
エチルプロピルカーボネート
ブチルエチルカーボネート
エチルビニルカーボネート
アリルエチルカーボネート
エチルフェニルカーボネート等が挙げられる。
【0064】
中でも、ジメチルカーボネート、ジエチルカーボネート、ジフェニルカーボネート、エチルメチルカーボネート、メチルビニルカーボネート、エチルビニルカーボネート、アリルメチルカーボネート、アリルエチルカーボネート、メチルフェニルカーボネート、エチルフェニルカーボネート等が工業的な入手のし易さ等の理由から好ましい。
【0065】
これら鎖状カーボネートがハロゲン化されたものの具体的な例としては、例えば、
フルオロメチルメチルカーボネート、
ジフルオロメチルメチルカーボネート、
トリフルオロメチルメチルカーボネート、
ビス(フルオロメチル)カーボネート、
ビス(ジフルオロ)メチルカーボネート、
ビス(トリフルオロ)メチルカーボネート、
クロロメチルメチルカーボネート、
ジクロロメチルメチルカーボネート、
トリクロロメチルメチルカーボネート、
ビス(クロロメチル)カーボネート、
ビス(ジクロロ)メチルカーボネート、
ビス(トリクロロ)メチルカーボネート、
【0066】
2−フルオロエチルメチルカーボネート、
エチルフルオロメチルカーボネート、
2,2−ジフルオロエチルメチルカーボネート、
2−フルオロエチルフルオロメチルカーボネート、
エチルジフルオロメチルカーボネート、
2,2,2−トリフルオロエチルメチルカーボネート、
2,2−ジフルオロエチルフルオロメチルカーボネート、
2−フルオロエチルジフルオロメチルカーボネート、
エチルトリフルオロメチルカーボネート、
2−クロロエチルメチルカーボネート、
エチルクロロメチルカーボネート、
2,2−ジクロロエチルメチルカーボネート、
2−クロロエチルクロロメチルカーボネート、
エチルジクロロメチルカーボネート、
2,2,2−トリクロロエチルメチルカーボネート、
2,2−ジクロロエチルクロロメチルカーボネート、
2−クロロエチルジクロロメチルカーボネート、
エチルトリクロロメチルカーボネート、
【0067】
エチル−(2−フルオロエチル)カーボネート、
エチル−(2,2−ジフルオロエチル)カーボネート、
ビス(2−フルオロエチル)カーボネート、
エチル−(2,2,2−トリフルオロエチル)カーボネート、
2,2−ジフルオロエチル−2’−フルオロエチルカーボネート、
ビス(2,2−ジフルオロエチル)カーボネート、
2,2,2−トリフルオロエチル−2’−フルオロエチルカーボネート、
2,2,2−トリフルオロエチル−2’,2’−ジフルオロエチルカーボネート、
ビス(2,2,2−トリフルオロエチル)カーボネート、
エチル−(2−クロロエチル)カーボネート、
エチル−(2,2−ジクロロエチル)カーボネート、
ビス(2−クロロエチル)カーボネート、
エチル−(2,2,2−トリクロロエチル)カーボネート、
2,2−ジクロロエチル−2’−クロロエチルカーボネート、
ビス(2,2−ジクロロエチル)カーボネート、
2,2,2−トリクロロエチル−2’−クロロエチルカーボネート、
2,2,2−トリクロロエチル−2’,2’−ジクロロエチルカーボネート、
ビス(2,2,2−トリクロロエチル)カーボネート、
【0068】
フルオロメチルビニルカーボネート、
2−フルオロエチルビニルカーボネート、
2,2−ジフルオロエチルビニルカーボネート、
2,2,2−トリフルオロエチルビニルカーボネート、
クロロメチルビニルカーボネート、
2−クロロエチルビニルカーボネート、
2,2−ジクロロエチルビニルカーボネート、
2,2,2−トリクロロエチルビニルカーボネート、
【0069】
フルオロメチルアリルカーボネート、
2−フルオロエチルアリルカーボネート、
2,2−ジフルオロエチルアリルカーボネート、
2,2,2−トリフルオロエチルアリルカーボネート、
クロロメチルアリルカーボネート、
2−クロロエチルアリルカーボネート、
2,2−ジクロロエチルアリルカーボネート、
2,2,2−トリクロロエチルアリルカーボネート、
【0070】
フルオロメチルフェニルカーボネート、
2−フルオロエチルフェニルカーボネート、
2,2−ジフルオロエチルフェニルカーボネート、
2,2,2−トリフルオロエチルフェニルカーボネート、
クロロメチルフェニルカーボネート、
2−クロロエチルフェニルカーボネート、
2,2−ジクロロエチルフェニルカーボネート、
2,2,2−トリクロロエチルフェニルカーボネート等が挙げられる。
【0071】
これらのハロゲン原子を有する鎖状カーボネートの中でも、フッ素原子を有するカーボネートが好ましく、特にフルオロメチルメチルカーボネート、ビス(フルオロメチル)カーボネート、ジフルオロメチルメチルカーボネート、2,2−ジフルオロエチルメチルカーボネート、エチル−(2,2−ジフルオロエチル)カーボネート、ビス(2,2−ジフルオロエチル)カーボネート、2,2,2−トリフルオロエチルメチルカーボネート、エチル−(2,2,2−トリフルオロエチル)カーボネート、ビス(2
,2,2−トリフルオロエチル)カーボネートが、工業的入手のし易さ、化学的な安定性の点から、より好適に用いられる。
【0072】
なお、ハロゲン原子を有する鎖状カーボネートの分子量に特に制限はなく、本発明の効果を著しく損なわない限り任意であるが、通常50以上、好ましくは80以上、また、通常250以下、好ましくは150以下である。分子量が大き過ぎると、非水系電解液に対するハロゲン原子を有する鎖状カーボネートの溶解性が低下し、本発明の効果を十分に発現し難くなる場合がある。
【0073】
また、ハロゲン原子を有する鎖状カーボネートの製造方法にも特に制限はなく、公知の方法を任意に選択して製造することが可能である。
【0074】
以上説明したハロゲン原子を有する鎖状カーボネートは、本発明の非水系電解液中に、何れか1種を単独で含有させてもよく、2種以上を任意の組み合わせ及び比率で併有させてもよい。
【0075】
ここで、ハロゲン原子を有する鎖状カーボネートは、含有量によって発現する機能が異なると考えられる。この要因については、詳細は明らかではなく、また、本発明の範囲が要因により限定されるものではないが、以下のように考えられる。すなわち、非水系溶媒全体に対して、0.001質量%以上、10質量%以下で添加剤として用いる場合、ハロゲン原子を有する鎖状カーボネートは負極表面で分解して負極表面保護膜を形成すると考えられる。一方で、10質量%以上、100質量%以下で非水系溶媒として用いる場合、ハロゲン原子を有する鎖状カーボネートは、前記の添加剤としての機能を発現するとともに、非水系電解液の耐酸化性向上という機能をも発現すると考えられる。
【0076】
ハロゲン原子を有する鎖状カーボネートを添加剤として用いる場合の含有量は、非水系溶媒全体に対して、通常0.001質量%以上、好ましくは0.01質量%以上、また、通常10質量%以下、好ましくは5質量%以下である。含有割合が少な過ぎると、これらの還元分解に基づく負極皮膜が充分に形成されず、電池特性を充分に発現することができなくなる場合がある。
【0077】
ハロゲン原子を有する鎖状カーボネートを非水系溶媒として用いる場合の含有量は、非水系溶媒全体に対して、通常10質量%以上、好ましくは12質量%以上、最も好ましくは15質量%以上、通常100質量%以下、好ましくは80質量%以下、最も好ましくは50質量%以下である。上記下限を下回ると、正極表面上で進行する他の非水系電解液構成成分の酸化分解に対する抑制が望ましい程度に進行されなくなり、本発明の効果を発現することができなくなる場合がある。また、上限を上回ると、電解液の粘度が高くなってしまうため、それにより電池における種々の特性を低下させてしまう場合がある。
【0078】
また、ハロゲン原子を有する鎖状カーボネートは、前述のハロゲン原子を有する環状カーボネート及び/又は後述の「ハロゲン原子を有するカーボネート以外の非水系溶媒」と、任意の割合で混合して用いることも可能である。混合して用いる場合の組合せの例としては
ハロゲン原子を有する鎖状カーボネートとハロゲン原子を有さない環状カーボネート、
ハロゲン原子を有する鎖状カーボネートとハロゲン原子を有する環状カーボネート、
ハロゲン原子を有する鎖状カーボネートと環状カルボン酸エステル、
ハロゲン原子を有する鎖状カーボネートと含リン有機溶媒
【0079】
ハロゲン原子を有する鎖状カーボネートとハロゲン原子を有さない環状カーボネートと鎖状カーボネート、
ハロゲン原子を有する鎖状カーボネートとハロゲン原子を有さない環状カーボネートとハロゲン原子を有する環状カーボネート、
ハロゲン原子を有する鎖状カーボネートとハロゲン原子を有さない環状カーボネートと環状カルボン酸エステル、
ハロゲン原子を有する鎖状カーボネートとハロゲン原子を有さない環状カーボネートと含リン有機溶媒、
ハロゲン原子を有する鎖状カーボネートとハロゲン原子を有する環状カーボネートと鎖状カーボネート、
ハロゲン原子を有する鎖状カーボネートとハロゲン原子を有する環状カーボネートと環状カルボン酸エステル、
ハロゲン原子を有する鎖状カーボネートとハロゲン原子を有する環状カーボネートと含リン有機溶媒、
ハロゲン原子を有する鎖状カーボネートとハロゲン原子を有さない環状カーボネートと鎖状カーボネートと環状カルボン酸エステル、
【0080】
ハロゲン原子を有する鎖状カーボネートとハロゲン原子を有さない環状カーボネートとハロゲン原子を有する環状カーボネートと環状カルボン酸エステル、
ハロゲン原子を有する鎖状カーボネートとハロゲン原子を有さない環状カーボネートと含リン有機溶媒と環状カルボン酸エステル、
ハロゲン原子を有する鎖状カーボネートとハロゲン原子を有さない環状カーボネートと環状カルボン酸エステルとハロゲン原子を有さない鎖状カーボネート、
ハロゲン原子を有する鎖状カーボネートとハロゲン原子を有さない環状カーボネートと環状エーテルとハロゲン原子を有さない鎖状カーボネート、
ハロゲン原子を有する鎖状カーボネートとハロゲン原子を有さない環状カーボネートと含リン有機溶媒とハロゲン原子を有さない鎖状カーボネート、
【0081】
ハロゲン原子を有する鎖状カーボネートとハロゲン原子を有さない環状カーボネートとハロゲン原子を有する環状カーボネートとハロゲン原子を有さない鎖状カーボネート、
ハロゲン原子を有する鎖状カーボネートとハロゲン原子を有さない環状カーボネートとハロゲン原子を有する環状カーボネートと環状カルボン酸エステル、
ハロゲン原子を有する鎖状カーボネートとハロゲン原子を有さない環状カーボネートとハロゲン原子を有する環状カーボネートと環状カルボン酸エステルとハロゲン原子を有さない鎖状カーボネート、
ハロゲン原子を有する鎖状カーボネートとハロゲン原子を有さない環状カーボネートとハロゲン原子を有する環状カーボネートと環状エーテルとハロゲン原子を有さない鎖状カーボネート、
ハロゲン原子を有する鎖状カーボネートとハロゲン原子を有さない環状カーボネートとハロゲン原子を有する環状カーボネートと含リン有機溶媒とハロゲン原子を有さない鎖状カーボネート、
等が挙げられる。
【0082】
<1−3.ハロゲン原子を有するカーボネート以外の非水系溶媒>
本発明の非水系電解液が含有する「ハロゲン原子を有するカーボネート以外の非水系溶媒」は、電池とした時に電池特性に対して悪影響を及ぼさない溶媒であれば特に制限されないが、以下に掲げる「ハロゲン原子を有するカーボネート以外の非水系溶媒」の内の1種以上であることが好ましい。
【0083】
「ハロゲン原子を有するカーボネート以外の非水系溶媒」の例としては、例えば、
鎖状若しくは環状カーボネート、
鎖状若しくは環状カルボン酸エステル、
鎖状若しくは環状エーテル、
含リン有機溶媒、
含イオウ有機溶媒等が挙げられる。
【0084】
また、鎖状カーボネートの種類も制限はないが、ジアルキルカーボネートが好ましく、構成するアルキル基の炭素数は、それぞれ1〜5が好ましく、特に好ましくは1〜4である。具体例としては、例えば、
ジメチルカーボネート、
エチルメチルカーボネート、
ジエチルカーボネート、
メチル−n−プロピルカーボネート、
エチル−n−プロピルカーボネート、
ジ−n−プロピルカーボネート等が挙げられる。
【0085】
これらの中でも、ジメチルカーボネート、エチルメチルカーボネート又はジエチルカーボネートが、工業的な入手性や非水系電解液二次電池における種々の特性が良い点で好ましい。
【0086】
環状カーボネートの種類に制限はないが、環状カーボネートを構成するアルキレン基の炭素数は2〜6が好ましく、特に好ましくは2〜4である。具体的には、例えば、
エチレンカーボネート、
プロピレンカーボネート、
ブチレンカーボネート(2−エチルエチレンカーボネート、シス又はトランス2,3−ジメチルエチレンカーボネート)等が挙げられる。
【0087】
これらの中でも、エチレンカーボネート又はプロピレンカーボネートが、非水系電解液二次電池における種々の特性が良い点で好ましい。
【0088】
更に、鎖状カルボン酸エステルの種類も制限はないが、具体例としては、例えば、
酢酸メチル、
酢酸エチル、
酢酸−n−プロピル、
酢酸−iso−プロピル、
酢酸−n−ブチル、
酢酸−iso−ブチル、
酢酸−tert−ブチル、
プロピオン酸メチル、
プロピオン酸エチル、
プロピオン酸−n−プロピル、
プロピオン酸−iso−プロピル、
プロピオン酸−n−ブチル、
プロピオン酸−iso−ブチル、
プロピオン酸−tert−ブチル等が挙げられる。
【0089】
これらの中でも、酢酸エチル、プロピオン酸メチル又はプロピオン酸エチルが、工業的な入手性や非水系電解液二次電池における種々の特性が良い点で好ましい。
【0090】
また、環状カルボン酸エステルの種類も制限はないが、通常使用されるものの例としては、γ−ブチロラクトン、γ−バレロラクトン、δ−バレロラクトン等が挙げられる。
【0091】
これらの中でも、γ−ブチロラクトンが、工業的な入手性や非水系電解液二次電池における種々の特性が良い点で好ましい。
【0092】
更に、鎖状エーテルの種類も制限はないが、具体例としては、例えば、
ジメトキシメタン、
ジメトキシエタン、
ジエトキシメタン、
ジエトキシエタン、
エトキシメトキシメタン、
エトキシメトキシエタン等が挙げられる。
【0093】
これらの中でも、ジメトキシエタン又はジエトキシエタンが、工業的な入手性や非水系電解液二次電池における種々の特性が良い点で好ましい。
【0094】
また、環状エーテルの種類も制限はないが、通常使用されるものの例としては、テトラヒドロフラン、2−メチルテトラヒドロフラン、テトラヒドロピラン等が挙げられる。
【0095】
更に、含リン有機溶媒の種類にも特に制限はないが、具体例としては、例えば、
リン酸トリメチル、
リン酸トリエチル、
リン酸トリフェニル等のリン酸エステル類;
亜リン酸トリメチル、
亜リン酸トリエチル、
亜リン酸トリフェニル等の亜リン酸エステル類;
トリメチルホスフィンオキシド、
トリエチルホスフィンオキシド、
トリフェニルホスフィンオキシド等のホスフィンオキシド類;
等が挙げられる。
【0096】
また、含イオウ有機溶媒の種類にも特に制限はないが、具体例としては、例えば、
エチレンサルファイト、
1,3−プロパンスルトン、
1,4−ブタンスルトン、
メタンスルホン酸メチル、
ブスルファン、
スルホラン、
スルホレン、
ジメチルスルホン、
ジフェニルスルホン、
メチルフェニルスルホン、
ジブチルジスルフィド、
ジシクロヘキシルジスルフィド、
テトラメチルチウラムモノスルフイド、
N,N−ジメチルメタンスルホンアミド、
N,N−ジエチルメタンスルホンアミド等が挙げられる。
【0097】
これらの中でも、鎖状若しくは環状カーボネート又は鎖状若しくは環状カルボン酸エステルが、非水系電解液二次電池における種々の特性が良い点で好ましく、それらのなかでも、エチレンカーボネート、プロピレンカーボネート、ジメチルカーボネート、エチルメチルカーボネート、ジエチルカーボネート、酢酸エチル、プロピオン酸メチル、プロピオン酸エチル又はγ−ブチロラクトンがより好ましく、ジメチルカーボネート、エチルメチルカーボネート、ジエチルカーボネート、酢酸エチル、プロピオン酸メチル又はプロピオン酸エチルが特に好ましい。
【0098】
これらは単独で用いても、2種類以上を併用してもよいが、2種以上の化合物を併用することが好ましい。例えば、環状カーボネート類の高誘電率溶媒と、鎖状カーボネート類や鎖状エステル類等の低粘度溶媒とを併用することが特に好ましい。
【0099】
「ハロゲン原子を有するカーボネート以外の非水系溶媒」の好ましい組合せの一つは、環状カーボネート類と鎖状カーボネート類を主体とする組合せである。なかでも、非水系溶媒全体に占める環状カーボネート類と鎖状カーボネート類との合計が、通常80容量%以上、好ましくは85容量%以上、より好ましくは90容量%以上である。また、環状カーボネート類と鎖状カーボネート類との合計に対する環状カーボネート類の容量は、5%以上が好ましく、より好ましくは10容量%以上、特に好ましくは15%以上であり、通常50%以下、好ましくは35%以下、より好ましくは30%以下である。これらの「ハロゲン原子を有するカーボネート以外の非水系溶媒」の組み合わせを用いると、これを用いて作製された電池のサイクル特性と高温保存特性(特に、高温保存後の残存容量及び高負荷放電容量)のバランスが良くなるので好ましい。
【0100】
なお、上記環状カーボネート類と鎖状カーボネート類の好ましい組み合わせの具体例としては、例えば、エチレンカーボネートとジメチルカーボネート、エチレンカーボネートとジエチルカーボネート、エチレンカーボネートとエチルメチルカーボネート、エチレンカーボネートとジメチルカーボネートとジエチルカーボネート、エチレンカーボネートとジメチルカーボネートとエチルメチルカーボネート、エチレンカーボネートとジエチルカーボネートとエチルメチルカーボネート、エチレンカーボネートとジメチルカーボネートとジエチルカーボネートとエチルメチルカーボネート等が挙げられる。
【0101】
これらのエチレンカーボネートと鎖状カーボネート類との組み合わせに、更にプロピレンカーボネートを加えた組み合わせも、好ましい組み合わせとして挙げられる。プロピレンカーボネートを含有する場合には、エチレンカーボネートとプロピレンカーボネートの容量比は、99:1〜40:60が好ましく、特に好ましくは95:5〜50:50である。更に、非水系溶媒全体に占めるプロピレンカーボネートの量を、0.1容量%以上、好ましくは1容量%、より好ましくは2容量%以上、通常10容量%以下、好ましくは8容量%以下、より好ましくは5容量%以下とすると、エチレンカーボネートと鎖状カーボネート類との組み合わせの特性を維持したまま、更に放電負荷特性が優れるので好ましい。
【0102】
これらの中で、非対称鎖状カーボネート類を含有するものが更に好ましく、特に、エチレンカーボネートとジメチルカーボネートとエチルメチルカーボネート、エチレンカーボネートとジエチルカーボネートとエチルメチルカーボネート、エチレンカーボネートとジメチルカーボネートとジエチルカーボネートとエチルメチルカーボネートといったエチレンカーボネートと対称鎖状カーボネート類と非対称鎖状カーボネート類を含有するもの、あるいは更にプロピレンカーボネートを含有するものが、サイクル特性と放電負荷特性のバランスが良いので好ましい。中でも、非対称鎖状カーボネート類がエチルメチルカーボネートであるものが好ましく、また、ジアルキルカーボネートを構成するアルキル基の炭素数は1〜2が好ましい。
【0103】
好ましい混合溶媒の他の例は、鎖状エステルを含有するものである。特に、上記、環状カーボネート類と鎖状カーボネート類の混合溶媒に、鎖状エステルを含有するものが、電池の低温特性向上の観点から好ましく、鎖状エステルとしては、酢酸エチル、プロピオン酸メチルが特に好ましい。非水系溶媒全体に占める鎖状エステルの容量は、通常5%以上、好ましくは8%以上、より好ましくは15%以上であり、通常50%以下、好ましくは35%以下、より好ましくは30%以下、更に好ましくは25%以下である。
【0104】
他の好ましい「ハロゲン原子を有するカーボネート以外の非水系溶媒」の例は、エチレンカーボネート、プロピレンカーボネート、ブチレンカーボネート、γ−ブチロラクトン及びγ−バレロラクトンよりなる群から選ばれた1種の有機溶媒、又は該群から選ばれた2以上の有機溶媒からなる混合溶媒を全体の60容量%以上を占めるものである。こうした混合溶媒は引火点が50℃以上となることが好ましく、中でも70℃以上となることが特に好ましい。この溶媒を用いた非水系電解液は、高温で使用しても溶媒の蒸発や液漏れが少なくなる。中でも、非水系溶媒全体に占めるエチレンカーボネートとγ−ブチロラクトンとの合計が、80容量%以上、好ましくは90容量%以上であり、かつエチレンカーボネートとγ−ブチロラクトンとの容量比が5:95〜45:55であるもの、又はエチレンカーボネートとプロピレンカーボネートとの合計が、80容量%以上、好ましくは90容量%以上であり、かつエチレンカーボネートとプロピレンカーボネートの容量比が30:70〜80:20であるものを用いると、一般にサイクル特性と放電負荷特性等のバランスがよくなる。
【0105】
<1−3.モノフルオロリン酸塩、ジフルオロリン酸塩>
本発明の非水系電解液は、モノフルオロリン酸塩及び/又はジフルオロリン酸塩を必須成分として含有する。本発明において用いる「モノフルオロリン酸塩及び/又はジフルオロリン酸塩」は、1以上のモノフルオロリン酸イオン及び/又はジフルオロリン酸イオン、並びにカチオンから形成されるものであれば、その種類には特に制限はないが、最終的に製造される非水系電解液が、用いる非水系電解液二次電池の電解液として使用可能となる必要があることから、これに鑑みて選択される必要がある。
【0106】
その為、本発明におけるモノフルオロリン酸塩、ジフルオロリン酸塩は、1以上のモノフルオロリン酸イオン、ジフルオロリン酸イオンと、周期表の第1族、第2族及び第13族から選択される1以上の金属イオン(以下、適宜「特定金属」と略記する)との塩、又は、4級オニウムとの塩であることが好ましい。モノフルオロリン酸塩及び/又はジフルオロリン酸塩は、1種を用いても2種以上の任意の併用でもよい。
【0107】
<1−3−1.モノフルオロリン酸金属塩、ジフルオロリン酸金属塩>
まず、本発明におけるモノフルオロリン酸塩、ジフルオロリン酸塩が、モノフルオロリン酸イオン、ジフルオロリン酸イオンと、特定金属イオンとの塩(以下、それぞれ「モノフルオロリン酸金属塩」、「ジフルオロリン酸金属塩」と略記する場合がある)である場合について説明する。
【0108】
本発明におけるモノフルオロリン酸金属塩、ジフルオロリン酸金属塩に用いられる特定金属のうち、周期表の第1族の金属の具体例としては、リチウム、ナトリウム、カリウム、セシウム等が挙げられる。中でも、リチウム又はナトリウムが好ましく、リチウムが特に好ましい。
【0109】
周期表の第2族の金属の具体例としては、マグネシウム、カルシウム、ストロンチウム、バリウム等が挙げられる。中でも、マグネシウム又はカルシウムが好ましく、マグネシウムが特に好ましい。
【0110】
周期表の第13族の金属の具体例としては、アルミニウム、ガリウム、インジウム、タリウム等が挙げられる。中でもアルミニウム又はガリウムが好ましく、アルミニウムが特に好ましい。
【0111】
本発明におけるモノフルオロリン酸金属塩、ジフルオロリン酸金属塩が、1分子内に有するこれらの特定金属の原子の数は制限されず、1原子のみであってもよく、2原子以上であってもよい。
【0112】
本発明におけるモノフルオロリン酸金属塩、ジフルオロリン酸金属塩が、1分子内に2原子以上の特定金属を含有する場合、これらの特定金属原子の種類は互いに同一であってもよく、異なっていてもよい。また、特定金属の他に特定金属以外の金属原子を1又は2以上有していてもよい。
【0113】
モノフルオロリン酸金属塩、ジフルオロリン酸金属塩の具体例としては、LiPOF、NaPOF、MgPOF、CaPOF、Al(POF)、Ga(POF)、LiPO、NaPO、Mg(PO、Ca(PO、Al(PO、Ga(PO等が挙げられる。中でもLiPOF、LiPO、NaPO、Mg(PO等が好ましい。
【0114】
<1−3−2.モノフルオロリン酸4級オニウム塩、ジフルオロリン酸4級オニウム塩>
次いで、本発明におけるモノフルオロリン酸塩、ジフルオロリン酸塩が、モノフルオロリン酸イオン、ジフルオロリン酸イオンと、4級オニウムとの塩(以下、それぞれ「モノフルオロリン酸4級オニウム塩」、「ジフルオロリン酸4級オニウム塩」と略記する場合がある)である場合について説明する。
【0115】
本発明におけるモノフルオロリン酸4級オニウム塩、ジフルオロリン酸4級オニウム塩に用いられる4級オニウムは、通常はカチオンであり、具体的には、下記一般式(1)で表わされるカチオンが挙げられる。
【0116】
【化1】

【0117】
上記一般式(1)中、R〜Rは各々独立に、炭化水素基を表わす。炭化水素基の種類は制限されない。すなわち、脂肪族炭化水素基であっても芳香族炭化水素基であってもよく、それらの結合した炭化水素基であってもよい。脂肪族炭化水素基の場合は、鎖状であっても環状であってもよく、鎖状及び環状が結合した構造であってもよい。鎖状炭化水素基の場合は、直鎖状であっても分岐鎖状であってもよい。また、飽和炭化水素基であってもよく、不飽和結合を有していてもよい。
【0118】
〜Rの炭化水素基の具体例としては、アルキル基、シクロアルキル基、アリール基、アラルキル基等が挙げられる。
【0119】
アルキル基の具体例としては、例えば、
メチル基、
エチル基、
1−プロピル基、
1−メチルエチル基、
1−ブチル基、
1−メチルプロピル基、
2−メチルプロピル基、
1,1−ジメチルエチル基等が挙げられる。
中でも、メチル基、エチル基、1−プロピル基、1−ブチル基等が好ましい。
【0120】
シクロアルキル基の具体例としては、例えば、
シクロペンチル基、
2−メチルシクロペンチル基、
3−メチルシクロペンチル基、
2,2−ジメチルシクロペンチル基、
2,3−ジメチルシクロペンチル基、
2,4−ジメチルシクロペンチル基、
2,5−ジメチルシクロペンチル基、
3,3−ジメチルシクロペンチル基、
3,4−ジメチルシクロペンチル基、
2−エチルシクロペンチル基、
3−エチルシクロペンチル基、
シクロヘキシル基、
2−メチルシクロヘキシル基、
3−メチルシクロヘキシル基、
4−メチルシクロヘキシル基、
2,2−ジメチルシクロヘキシル基、
2,3−ジメチルシクロヘキシル基、
2,4−ジメチルシクロヘキシル基、
2,5−ジメチルシクロヘキシル基、
2,6−ジメチルシクロヘキシル基、
3,4−ジメチルシクロヘキシル基、
3,5−ジメチルシクロヘキシル基、
2−エチルシクロヘキシル基、
3−エチルシクロヘキシル基、
4−エチルシクロヘキシル基、
ビシクロ[3,2,1]オクタ−1−イル基、
ビシクロ[3,2,1]オクタ−2−イル基等が挙げられる。
【0121】
中でも、シクロペンチル基、2−メチルシクロペンチル基、3−メチルシクロペンチル基、シクロヘキシル基、2−メチルシクロヘキシル基、3−メチルシクロヘキシル基、4−メチルシクロヘキシル基等が好ましい。
【0122】
アリール基の具体例としては、例えば、
フェニル基、
2−メチルフェニル基、
3−メチルフェニル基、
4−メチルフェニル基、
2,3−ジメチルフェニル基等が挙げられる。
中でも、フェニル基が好ましい。
【0123】
アラルキル基の具体例としては、例えば、
フェニルメチル基、
1−フェニルエチル基、
2−フェニルエチル基、
ジフェニルメチル基、
トリフェニルメチル基等が挙げられる。
中でも、フェニルメチル基、2−フェニルエチル基が好ましい。
【0124】
〜Rの炭化水素基は、1又は2以上の置換基により置換されていてもよい。置換基の種類は、本発明における効果を著しく損なうことのない限り制限されないが、例としては、ハロゲン原子、水酸基、アミノ基、ニトロ基、シアノ基、カルボキシル基、エーテル基、アルデヒド基等が挙げられる。なお、R〜Rの炭化水素基が2以上の置換基を有する場合、これらの置換基は互いに同一でもよく、異なっていてもよい。
【0125】
〜Rの炭化水素基は、任意の2つ以上を比較した場合に、互いに同一であってもよく、異なっていてもよい。R〜Rの炭化水素基が置換基を有する場合には、それらの置換基も含めた置換炭化水素基が、互いに同一であってもよく、異なっていてもよい。更には、R〜Rの炭化水素基のうち任意の2つ以上が相互に結合して、環状構造を形成していてもよい。
【0126】
〜Rの炭化水素基の炭素数は、通常1以上、また上限は、通常20以下、好ましくは10以下、より好ましくは5以下である。多過ぎると質量あたりのモル数が減り、種々の効果が低減する傾向がある。なお、R〜Rの炭化水素基が置換基を有する場合には、それらの置換基も含めた置換炭化水素基の炭素数が、上記範囲を満たすものとする。
【0127】
また、上記一般式(1)中、Qは、周期表の第15族に属する原子を表わす。中でも、窒素原子又はリン原子が好ましい。
【0128】
以上のことから、上記一般式(1)で表わされる4級オニウムの好ましい例としては、脂肪族鎖状4級塩類、脂肪族環状アンモニウム、脂肪族環状ホスホニウム、含窒素ヘテロ環芳香族カチオン等が挙げられる。
【0129】
脂肪族鎖状4級塩類としては、テトラアルキルアンモニウム、テトラアルキルホスホニウム等が特に好ましい。
【0130】
テトラアルキルアンモニウムの具体例としては、例えば、
テトラメチルアンモニウム、
エチルトリメチルアンモニウム、
ジエチルジメチルアンモニウム、
トリエチルメチルアンモニウム、
テトラエチルアンモニウム、
テトラ−n−ブチルアンモニウム等が挙げられる。
【0131】
テトラアルキルホスホニウムの具体例としては、例えば、
テトラメチルホスホニウム、
エチルトリメチルホスホニウム、
ジエチルジメチルホスホニウム、
トリエチルメチルホスホニウム、
テトラエチルホスホニウム、
テトラ−n−ブチルホスホニウム等が挙げられる。
【0132】
脂肪族環状アンモニウムとしては、ピロリジニウム類、モルホリニウム類、イミダゾリニウム類、テトラヒドロピリミジニウム類、ピペラジニウム類、ピペリジニウム類等が特に好ましい。
【0133】
ピロリジニウム類の具体例としては、例えば、
N,N−ジメチルピロリジウム、
N−エチル−N−メチルピロリジウム、
N,N−ジエチルピロリジウム等が挙げられる。
【0134】
モルホリニウム類の具体例としては、例えば、
N,N−ジメチルモルホリニウム、
N−エチル−N−メチルモルホリニウム、
N,N−ジエチルモルホリニウム等が挙げられる。
【0135】
イミダゾリニウム類の具体例としては、例えば、
N,N’−ジメチルイミダゾリニウム、
N−エチル−N’−メチルイミダゾリニウム、
N,N’−ジエチルイミダゾリニウム、
1,2,3−トリメチルイミダゾリニウム等が挙げられる。
【0136】
テトラヒドロピリミジニウム類の具体例としては、例えば、
N,N’−ジメチルテトラヒドロピリミジニウム、
N−エチル−N’−メチルテトラヒドロピリミジニウム、
N,N’−ジエチルテトラヒドロピリミジニウム、
1,2,3−トリメチルテトラヒドロピリミジニウム等が挙げられる。
【0137】
ピペラジニウム類の具体例としては、例えば、
N,N,N’,N’−テトラメチルピペラジニウム、
N−エチル−N,N’,N’−トリメチルピペラジニウム、
N,N−ジエチル−N’,N’−ジメチルピペラジニウム、
N,N,N’−トリエチル−N’−メチルピペラジニウム、
N,N,N’,N’−テトラエチルピペラジニウム等が挙げられる。
【0138】
ピペリジニウム類の具体例としては、例えば、
N,N−ジメチルピペリジニウム、
N−エチル−N−メチルピペリジニウム、
N,N−ジエチルピペリジニウム等が挙げられる。
【0139】
含窒素ヘテロ環芳香族カチオンとしては、ピリジニウム類、イミダゾリウム類等が特に好ましい。
【0140】
ピリジニウム類の具体例としては、例えば、
N−メチルピリジニウム、
N−エチルピリジニウム、
1,2−ジメチルピリミジニウム、
1,3−ジメチルピリミジニウム、
1,4−ジメチルピリミジニウム、
1−エチル−2−メチルピリミジニウム等が挙げられる。
【0141】
イミダゾリウム類の具体例としては、例えば、
N,N’−ジメチルイミダゾリウム、
N−エチル−N’−メチルイミダゾリウム、
N,N’−ジエチルイミダゾリウム、
1,2,3−トリメチルイミダゾリウム等が挙げられる。
【0142】
すなわち、以上例示した4級オニウムと、モノフルオロリン酸イオン及び/又はジフルオロリン酸イオンとの塩が、本発明におけるモノフルオロリン酸4級オニウム塩、ジフルオロリン酸4級オニウム塩の好ましい具体例になる。
【0143】
<1−3−3.含有量、検出(含有の由来)、技術範囲等>
本発明の非水系電解液においては、1種類のモノフルオロリン酸塩又はジフルオロリン酸塩のみを用いてもよく、2種類以上のモノフルオロリン酸塩及び/又はジフルオロリン酸塩を任意の組み合わせ及び比率で併用してもよいが、非水系電解液二次電池を効率的に動作させるという観点から、1種類のモノフルオロリン酸塩又はジフルオロリン酸塩を用いることが好ましい。
【0144】
また、モノフルオロリン酸塩、ジフルオロリン酸塩の分子量に制限はなく、本発明の効果を著しく損なわない限り任意であるが、通常100以上である。また、上限に特に制限はないが、本反応の反応性を鑑み、通常1000以下、好ましくは500以下が実用的で好ましい。
【0145】
モノフルオロリン酸の塩、ジフルオロリン酸の塩は、通常1種類を用いるが、非水系電解液としたときに、塩を2種以上混合して用いた方が好ましい場合には、モノフルオロリン酸の塩、ジフルオロリン酸の塩を2種以上混合して用いてもよい。
【0146】
また、モノフルオロリン酸塩、ジフルオロリン酸塩の分子量に制限はなく、本発明の効果を著しく損なわない限り任意であるが、通常150以上である。また、上限に特に制限はないが、本反応の反応性を鑑み、通常1000以下、好ましくは500以下が実用的で好ましい。
【0147】
非水系電解液中の、モノフルオロリン酸塩やジフルオロリン酸塩の割合は、非水系電解液全体に対して、それらの合計で10ppm以上(0.001質量%以上)が好ましく、より好ましくは0.01質量%以上、特に好ましくは0.05質量%以上、更に好ましくは0.1質量%以上である。また、上限はそれらの合計で、好ましくは5質量%以下、より好ましくは4質量%以下、更に好ましくは3質量%以下である。モノフルオロリン酸塩やジフルオロリン酸塩の濃度が低すぎると放電負荷特性の改善効果が得られ難い場合があり、一方、濃度が高すぎると充放電効率の低下を招く場合がある。
【0148】
モノフルオロリン酸塩及びジフルオロリン酸塩は、非水系電解液として実際に非水系電解液二次電池作製に供すると、その電池を解体して再び非水系電解液を抜き出しても、その中の含有量が著しく低下している場合が多い。従って、電池から抜き出した非水系電解液から、少なくとも1種のモノフルオロリン酸塩及び/又はジフルオロリン酸塩が少量でも検出できるものは本発明に含まれるとみなされる。また、モノフルオロリン酸塩及びジフルオロリン酸塩は、非水系電解液として実際に非水系電解液二次電池作製に供すると、その電池を解体して再び抜き出した非水系電解液にはモノフルオロリン酸塩及び/又はジフルオロリン酸塩が含有されていなかった場合であっても、非水系電解液二次電池の他の構成部材である正極、負極若しくはセパレータ上で検出される場合も多い。従って、正極、負極、セパレータの少なくとも一構成部材から、少なくとも1種のモノフルオロリン酸塩及び/又はジフルオロリン酸塩が検出された場合も本発明に含まれるとみなされる。
【0149】
また、モノフルオロリン酸塩及び/又はジフルオロリン酸塩を非水系電解液に含ませると共に、正極、負極、セパレータの少なくとも一構成部材に含ませて用いた場合も本発明に含まれるとみなされる。
【0150】
一方、モノフルオロリン酸塩及び/又はジフルオロリン酸塩は、作成される非水系電解液二次電池の正極内、又は正極の表面に予め含有させていてもよい。この場合、予め含有させたモノフルオロリン酸塩及び/又はジフルオロリン酸塩の一部若しくは全てが非水系電解液中に溶解し、機能を発現することが期待され、その場合も本発明に含まれるものとみなされる。
【0151】
予め正極内又は正極の表面に含有させる手段に関しては、特に限定されないが、具体的な例としては、後述する正極作成時に調合するスラリーにモノフルオロリン酸塩及び/又はジフルオロリン酸塩を溶解させておく、あるいは既に作成した正極に対し、モノフルオロリン酸塩及び/又はジフルオロリン酸塩を任意の非水系溶媒に予め溶解させて作成した溶液を塗布あるいは含浸させた後、用いた溶媒を乾燥、除去することで含有させる、等の方法が挙げられる。
【0152】
また、実際に非水系電解液二次電池を作成した時に、少なくとも1種のモノフルオロリン酸塩及び/又はジフルオロリン酸塩を含む非水系電解液から正極内又は正極表面に含ませてもよい。非水系電解液二次電池を作成する場合、非水系電解液は正極に含浸させるため、モノフルオロリン酸塩及びジフルオロリン酸塩が正極内あるいは正極表面に含まれる場合が多い。その為、電池を解体した時に回収される正極から、少なくともモノフルオロリン酸塩及び/又はジフルオロリン酸塩が検出できるものは本発明に含まれるとみなされる。
【0153】
また、モノフルオロリン酸塩及びジフルオロリン酸塩は、作成される非水系電解液二次電池の負極内又は負極の表面に予め含有させていてもよい。この場合、予め含有させたモノフルオロリン酸塩及び/又はジフルオロリン酸塩の一部若しくは全てが非水系電解液中に溶解し、機能を発現することが期待され、本発明に含まれるものとみなされる。予め負極内、又は負極の表面に含有させる手段に関しては、特に限定されないが、具体的な例としては、後述する負極作成時に調合するスラリーにモノフルオロリン酸塩及びジフルオロリン酸塩を溶解させておく、あるいは既に作成した負極に対し、モノフルオロリン酸塩及びジフルオロリン酸塩を任意の非水系溶媒に予め溶解させて作成した溶液を塗布あるいは含浸させた後、用いた溶媒を乾燥、除去することで含有させる等の方法が挙げられる。
【0154】
また、実際に非水系電解液二次電池を作成した時に、少なくとも1種のモノフルオロリン酸塩及びジフルオロリン酸塩を含む非水系電解液から負極内又は負極表面に含ませてもよい。二次電池を作成する場合、非水系電解液は負極に含浸させるため、モノフルオロリン酸塩及びジフルオロリン酸塩が負極内あるいは負極表面に含まれる場合が多い。その為、電池を解体した時に回収される負極から、少なくともモノフルオロリン酸塩及びジフルオロリン酸塩が検出できるものは本発明に含まれるとみなされる。
【0155】
更に、モノフルオロリン酸塩及び/又はジフルオロリン酸塩は、作成される非水系電解液二次電池のセパレータ内又はセパレータの表面に予め含有させていてもよい。この場合、予め含有させたモノフルオロリン酸塩及びジフルオロリン酸塩の一部若しくは全てが非水系電解液中に溶解し、機能を発現することが期待され、本発明に含まれるものとみなされる。予めセパレータ内又はセパレータの表面に含有させる手段に関しては、特に限定されないが、具体的な例としては、セパレータ作成時にモノフルオロリン酸塩及びジフルオロリン酸塩を混合させておく、あるいは非水系電解液二次電池を作成する前のセパレータに、モノフルオロリン酸塩及びジフルオロリン酸塩を任意の非水系溶媒に予め溶解させて作成した溶液を塗布あるいは含浸させた後、用いた溶媒を乾燥、除去することで含有させる等の方法が挙げられる。
【0156】
また、実際に非水系電解液二次電池を作成した時に、モノフルオロリン酸塩及び/又はジフルオロリン酸塩を含む非水系電解液からセパレータ内又はセパレータ表面に含ませてもよい。非水系電解液二次電池を作成する場合、非水系電解液はセパレータに含浸させるため、モノフルオロリン酸塩及びジフルオロリン酸塩がセパレータ内あるいはセパレータ表面に含まれる場合が多い。その為、電池を解体した時に回収されるセパレータから、少なくともモノフルオロリン酸塩及びジフルオロリン酸塩が検出できるものは本発明に含まれるとみなされる。
【0157】
上記のモノフルオロリン酸塩及びジフルオロリン酸塩と「ハロゲン原子を有するカーボネート」とを非水系電解液に含有させると、その非水系電解液を用いた非水系電解液二次電池の高温保存特性を向上させることが可能となると考えられる。この要因については、詳細は明らかではなく、また、本発明の範囲が要因により限定されるものではないが、以下のように考えられる。すなわち、非水系電解液中に含まれるモノフルオロリン酸塩及び/又はジフルオロリン酸塩と、「ハロゲン原子を有するカーボネート」とが、反応することによって、負極活物質の表面に良好な保護被膜層を形成し、これにより副反応が抑えられ、高温保存による劣化が抑制されるものと考えられる。また、モノフルオロリン酸塩及び/又はジフルオロリン酸塩と、「ハロゲン原子を有するカーボネート」とが同時に電解液中に存在することで、何らかの形で保護被膜の特性を向上させることに寄与しているものと考えられる。
【0158】
<1−4.添加剤>
本発明の非水系電解液は、本発明の効果を著しく損なわない範囲において、各種の添加剤を含有していてもよい。添加剤を追加して調製処理を行う場合は、従来公知のものを任意に用いることができる。なお、添加剤は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を任意の組み合わせ及び比率で併用してもよい。
【0159】
添加剤の例としては、過充電防止剤や、高温保存後の容量維持特性やサイクル特性を改善するための助剤等が挙げられる。これらの中でも、高温保存後の容量維持特性やサイクル特性を改善するための助剤として、不飽和結合を有するカーボネート(以下、「特定カーボネート」と略記する場合がある)を加えることが好ましい。以下、特定カーボネートとその他添加剤に分けて説明する。
【0160】
<1−4−1.特定カーボネート>
特定カーボネートは、不飽和結合を有するカーボネートである。特定カーボネートは、ハロゲン原子を有していてもよい。
【0161】
特定カーボネートの分子量に特に制限はなく、本発明の効果を著しく損なわない限り任意であるが、通常50以上、好ましくは80以上、また、通常250以下、好ましくは150以下である。分子量が大き過ぎると、非水系電解液に対する特定カーボネートの溶解性が低下し、効果を十分に発現し難くなる場合がある。
【0162】
また、特定カーボネートの製造方法にも特に制限はなく、公知の方法を任意に選択して製造することが可能である。
【0163】
また、特定カーボネートは、本発明の非水系電解液中に、何れか1種を単独で含有させてもよく、2種以上を任意の組み合わせ及び比率で併有させてもよい。
【0164】
また、本発明の非水系電解液に対する特定カーボネートの配合量に制限はなく、本発明の効果を著しく損なわない限り任意であるが、本発明の非水系電解液に対して、通常0.01質量%以上、好ましくは0.1質量%以上、より好ましくは0.3質量%以上、また、通常70質量%以下、好ましくは50質量%以下、より好ましくは40質量%以下の濃度で含有させることが望ましい。
【0165】
この範囲の下限を下回ると、本発明の非水系電解液を非水系電解液二次電池に用いた場合に、その非水系電解液二次電池が十分なサイクル特性向上効果を発現し難くなる場合がある。また、特定カーボネートの比率が大き過ぎると、本発明の非水系電解液を非水系電解液二次電池に用いた場合に、その非水系電解液二次電池の高温保存特性及び連続充電特性が低下する傾向があり、特に、ガス発生量が多くなり、容量維持率が低下する場合がある。
【0166】
本発明に係る特定カーボネートとしては、炭素−炭素二重結合や炭素−炭素三重結合等の炭素−炭素不飽和結合を有するカーボネートであればその他に制限は無く、任意の不飽和カーボネートを用いることができる。なお、芳香環を有するカーボネートも、不飽和結合を有するカーボネートに含まれるものとする。
【0167】
不飽和カーボネートの例としては、ビニレンカーボネート誘導体類、芳香環又は炭素−炭素不飽和結合を有する置換基で置換されたエチレンカーボネート誘導体類、フェニルカーボネート類、ビニルカーボネート類、アリルカーボネート類等が挙げられる。
【0168】
ビニレンカーボネート誘導体類の具体例としては、ビニレンカーボネート、メチルビニレンカーボネート、4,5−ジメチルビニレンカーボネート、フェニルビニレンカーボネート、4,5−ジフェニルビニレンカーボネート、カテコールカーボネート等が挙げられる。
【0169】
芳香環又は炭素−炭素不飽和結合を有する置換基で置換されたエチレンカーボネート誘導体類の具体例としては、ビニルエチレンカーボネート、4,5−ジビニルエチレンカーボネート、フェニルエチレンカーボネート、4,5−ジフェニルエチレンカーボネート等が挙げられる。
【0170】
フェニルカーボネート類の具体例としては、ジフェニルカーボネート、エチルフェニルカーボネート、メチルフェニルカーボネート、t−ブチルフェニルカーボネート、等が挙げられる。
【0171】
ビニルカーボネート類の具体例としては、ジビニルカーボネート、メチルビニルカーボネート等が挙げられる。
【0172】
アリルカーボネート類の具体例としては、ジアリルカーボネート、アリルメチルカーボネート等が挙げられる。
【0173】
これらの特定カーボネートの中でも、ビニレンカーボネート誘導体類、芳香環又は炭素−炭素不飽和結合を有する置換基で置換されたエチレン誘導体類が好ましく、特に、ビニレンカーボネート、4,5−ジフェニルビニレンカーボネート、4,5−ジメチルビニレンカーボネート、ビニルエチレンカーボネートは、安定な界面保護被膜を形成するので、より好適に用いられる。
【0174】
<1−4−2.その他添加剤>
以下、特定カーボネート以外の添加剤について説明する。特定カーボネート以外の添加剤としては、過充電防止剤、高温保存後の容量維持特性やサイクル特性を改善するための助剤等が挙げられる。
【0175】
<1−4−2−1.過充電防止剤>
過充電防止剤の具体例としては、例えば、
トルエン、キシレン、等のトルエン誘導体;
ビフェニル、2−メチルビフェニル、3−メチルビフェニル4−メチルビフェニル等の無置換あるいはアルキル基で置換されたビフェニル誘導体;
o−ターフェニル、m−ターフェニル、p−ターフェニル等の無置換あるいはアルキル基で置換されたターフェニル誘導体;
無置換あるいはアルキル基で置換されたターフェニル誘導体の部分水素化物;
シクロペンチルベンゼン、シクロヘキシルベンゼン等のシクロアルキルベンゼン誘導体;
クメン、1,3−ジイソプロピルベンゼン、1,4−ジイソプロピルベンゼン等のベンゼン環に直接結合する第3級炭素を有するアルキルベンゼン誘導体;
t−ブチルベンゼン、t−アミルベンゼン、t−ヘキシルベンゼン等のベンゼン環に直接結合する第4級炭素を有するアルキルベンゼン誘導体;
ジフェニルエーテル、ジベンゾフラン等の酸素原子を有する芳香族化合物;
等の芳香族化合物が挙げられる。
【0176】
更に、他の過充電防止剤の具体例としては、例えば、
フルオロベンゼン、フルオロトルエン、ベンゾトリフルオリド、2−フルオロビフェニル、o−シクロヘキシルフルオロベンゼン、p−シクロヘキシルフルオロベンゼン等の前記芳香族化合物の部分フッ素化物;
2,4−ジフルオロアニソール、2,5−ジフルオロアニソール、1,6−ジフルオロアニオール、等の含フッ素アニソール化合物;
等も挙げられる。
【0177】
なお、これらの過充電防止剤は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を任意の組み合わせで併用してもよい。また、任意の組合せで併用する場合にも上記に例示し同一の分類の化合物でも併用してもよく、異なる分類の化合物で併用してもよい。
【0178】
異なる分類の化合物を併用する場合の具体的な例としては
トルエン誘導体とビフェニル誘導体;
トルエン誘導体とターフェニル誘導体;
トルエン誘導体とターフェニル誘導体の部分水素化物;
トルエン誘導体とシクロアルキルベンゼン誘導体;
トルエン誘導体とベンゼン環に直接結合する第3級炭素を有するアルキルベンゼン誘導体;
トルエン誘導体とベンゼン環に直接結合する第4級炭素を有するアルキルベンゼン誘導体;
トルエン誘導体と酸素原子を有する芳香族化合物;
トルエン誘導体と芳香族化合物の部分フッ素化物;
トルエン誘導体と含フッ素アニソール化合物;
ビフェニル誘導体とターフェニル誘導体;
ビフェニル誘導体とターフェニル誘導体の部分水素化物;
ビフェニル誘導体とシクロアルキルベンゼン誘導体;
ビフェニル誘導体とベンゼン環に直接結合する第3級炭素を有するアルキルベンゼン誘導体;
ビフェニル誘導体とベンゼン環に直接結合する第4級炭素を有するアルキルベンゼン誘導体;
ビフェニル誘導体と酸素原子を有する芳香族化合物;
ビフェニル誘導体と芳香族化合物の部分フッ素化物;
ビフェニル誘導体と含フッ素アニソール化合物;
ターフェニル誘導体とターフェニル誘導体の部分水素化物;
ターフェニル誘導体とシクロアルキルベンゼン誘導体;
ターフェニル誘導体とベンゼン環に直接結合する第3級炭素を有するアルキルベンゼン誘導体;
ターフェニル誘導体とベンゼン環に直接結合する第4級炭素を有するアルキルベンゼン誘導体;
ターフェニル誘導体と酸素原子を有する芳香族化合物;
ターフェニル誘導体と芳香族化合物の部分フッ素化物;
ターフェニル誘導体と含フッ素アニソール化合物;
ターフェニル誘導体の部分水素化物とシクロアルキルベンゼン誘導体;
ターフェニル誘導体の部分水素化物とベンゼン環に直接結合する第3級炭素を有するアルキルベンゼン誘導体;
ターフェニル誘導体の部分水素化物とベンゼン環に直接結合する第4級炭素を有するアルキルベンゼン誘導体;
ターフェニル誘導体の部分水素化物と酸素原子を有する芳香族化合物;
ターフェニル誘導体の部分水素化物と芳香族化合物の部分フッ素化物;
ターフェニル誘導体の部分水素化物と含フッ素アニソール化合物;
シクロアルキルベンゼン誘導体とベンゼン環に直接結合する第3級炭素を有するアルキルベンゼン誘導体;
シクロアルキルベンゼン誘導体とベンゼン環に直接結合する第4級炭素を有するアルキルベンゼン誘導体;
シクロアルキルベンゼン誘導体と酸素原子を有する芳香族化合物;
シクロアルキルベンゼン誘導体と芳香族化合物の部分フッ素化物;
シクロアルキルベンゼン誘導体と含フッ素アニソール化合物;
ベンゼン環に直接結合する第3級炭素を有するアルキルベンゼン誘導体とベンゼン環に直接結合する第4級炭素を有するアルキルベンゼン誘導体;
ベンゼン環に直接結合する第3級炭素を有するアルキルベンゼン誘導体と酸素原子を有する芳香族化合物;
ベンゼン環に直接結合する第3級炭素を有するアルキルベンゼン誘導体と芳香族化合物の部分フッ素化物;
ベンゼン環に直接結合する第3級炭素を有するアルキルベンゼン誘導体と含フッ素アニソール化合物;
ベンゼン環に直接結合する第4級炭素を有するアルキルベンゼン誘導体と酸素原子を有する芳香族化合物;
ベンゼン環に直接結合する第4級炭素を有するアルキルベンゼン誘導体と芳香族化合物の部分フッ素化物;
ベンゼン環に直接結合する第4級炭素を有するアルキルベンゼン誘導体と含フッ素アニソール化合物;
酸素原子を有する芳香族化合物と芳香族化合物の部分フッ素化物;
酸素原子を有する芳香族化合物と含フッ素アニソール化合物;
芳香族化合物の部分フッ素化物と含フッ素アニソール化合物;
が挙げられる。
【0179】
これらの具体的な例としては
ビフェニルとo−ターフェニルとの組合せ、
ビフェニルとm−ターフェニルとの組合せ、
ビフェニルとターフェニル誘導体の部分水素化物との組合せ、
ビフェニルとクメンとの組合せ、
ビフェニルとシクロペンチルベンゼンとの組合せ、
ビフェニルとシクロヘキシルベンゼンとの組合せ、
ビフェニルとt−ブチルベンゼンとの組合せ、
ビフェニルとt−アミルベンゼンとの組合せ、
ビフェニルとジフェニルエーテルとの組合せ、
ビフェニルとジベンゾフランとの組合せ、
ビフェニルとフルオロベンゼンとの組合せ、
ビフェニルとベンゾトリフルオリドとの組合せ、
ビフェニルと2−フルオロビフェニルとの組合せ、
ビフェニルとo−フルオロシクロヘキシルベンゼンとの組合せ、
ビフェニルとp−フルオロシクロヘキシルベンゼンとの組合せ、
ビフェニルと2,4−ジフルオロアニソールとの組合せ、
【0180】
o−ターフェニルとターフェニル誘導体の部分水素化物との組合せ、
o−ターフェニルとクメンとの組合せ、
o−ターフェニルとシクロペンチルベンゼンとの組合せ、
o−ターフェニルとシクロヘキシルベンゼンとの組合せ、
o−ターフェニルとt−ブチルベンゼンとの組合せ、
o−ターフェニルとt−アミルベンゼンとの組合せ、
o−ターフェニルとジフェニルエーテルとの組合せ、
o−ターフェニルとジベンゾフランとの組合せ、
o−ターフェニルとフルオロベンゼンとの組合せ、
o−ターフェニルとベンゾトリフルオリドとの組合せ、
o−ターフェニルと2−フルオロビフェニルとの組合せ、
o−ターフェニルとo−フルオロシクロヘキシルベンゼンとの組合せ、
o−ターフェニルとp−フルオロシクロヘキシルベンゼンとの組合せ、
o−ターフェニルと2,4−ジフルオロアニソールとの組合せ、
【0181】
m−ターフェニルとターフェニル誘導体の部分水素化物との組合せ、
m−ターフェニルとクメンとの組合せ、
m−ターフェニルとシクロペンチルベンゼンとの組合せ、
m−ターフェニルとシクロヘキシルベンゼンとの組合せ、
m−ターフェニルとt−ブチルベンゼンとの組合せ、
m−ターフェニルとt−アミルベンゼンとの組合せ、
m−ターフェニルとジフェニルエーテルとの組合せ、
m−ターフェニルとジベンゾフランとの組合せ、
m−ターフェニルとフルオロベンゼンとの組合せ、
m−ターフェニルとベンゾトリフルオリドとの組合せ、
m−ターフェニルと2−フルオロビフェニルとの組合せ、
m−ターフェニルとo−フルオロシクロヘキシルベンゼンとの組合せ、
m−ターフェニルとp−フルオロシクロヘキシルベンゼンとの組合せ、
m−ターフェニルと2,4−ジフルオロアニソールとの組合せ、
【0182】
ターフェニル誘導体の部分水素化物とクメンとの組合せ、
ターフェニル誘導体の部分水素化物とシクロペンチルベンゼンとの組合せ、
ターフェニル誘導体の部分水素化物とシクロヘキシルベンゼンとの組合せ、
ターフェニル誘導体の部分水素化物とt−ブチルベンゼンとの組合せ、
ターフェニル誘導体の部分水素化物とt−アミルベンゼンとの組合せ、
ターフェニル誘導体の部分水素化物とジフェニルエーテルとの組合せ、
ターフェニル誘導体の部分水素化物とジベンゾフランとの組合せ、
ターフェニル誘導体の部分水素化物とフルオロベンゼンとの組合せ、
ターフェニル誘導体の部分水素化物とベンゾトリフルオリドとの組合せ、
ターフェニル誘導体の部分水素化物と2−フルオロビフェニルとの組合せ、
ターフェニル誘導体の部分水素化物とo−フルオロシクロヘキシルベンゼンとの組合せ、
ターフェニル誘導体の部分水素化物とp−フルオロシクロヘキシルベンゼンとの組合せ、
ターフェニル誘導体の部分水素化物と2,4−ジフルオロアニソールとの組合せ、
【0183】
クメンとシクロペンチルベンゼンとの組合せ、
クメンとシクロヘキシルベンゼンとの組合せ、
クメンとt−ブチルベンゼンとの組合せ、
クメンとt−アミルベンゼンとの組合せ、
クメンとジフェニルエーテルとの組合せ、
クメンとジベンゾフランとの組合せ、
クメンとフルオロベンゼンとの組合せ、
クメンとベンゾトリフルオリドとの組合せ、
クメンと2−フルオロビフェニルとの組合せ、
クメンとo−フルオロシクロヘキシルベンゼンとの組合せ、
クメンとp−フルオロシクロヘキシルベンゼンとの組合せ、
クメンと2,4−ジフルオロアニソールとの組合せ、
【0184】
シクロヘキシルベンゼンとt−ブチルベンゼンとの組合せ、
シクロヘキシルベンゼンとt−アミルベンゼンとの組合せ、
シクロヘキシルベンゼンとジフェニルエーテルとの組合せ、
シクロヘキシルベンゼンとジベンゾフランとの組合せ、
シクロヘキシルベンゼンとフルオロベンゼンとの組合せ、
シクロヘキシルベンゼンとベンゾトリフルオリドとの組合せ、
シクロヘキシルベンゼンと2−フルオロビフェニルとの組合せ、
シクロヘキシルベンゼンとo−フルオロシクロヘキシルベンゼンとの組合せ、
シクロヘキシルベンゼンとp−フルオロシクロヘキシルベンゼンとの組合せ、
シクロヘキシルベンゼンと2,4−ジフルオロアニソールとの組合せ、
【0185】
t−ブチルベンゼンとt−アミルベンゼンとの組合せ、
t−ブチルベンゼンとジフェニルエーテルとの組合せ、
t−ブチルベンゼンとジベンゾフランとの組合せ、
t−ブチルベンゼンとフルオロベンゼンとの組合せ、
t−ブチルベンゼンとベンゾトリフルオリドとの組合せ、
t−ブチルベンゼンと2−フルオロビフェニルとの組合せ、
t−ブチルベンゼンとo−フルオロシクロヘキシルベンゼンとの組合せ、
t−ブチルベンゼンとp−フルオロシクロヘキシルベンゼンとの組合せ、
t−ブチルベンゼンと2,4−ジフルオロアニソールとの組合せ、
【0186】
t−アミルベンゼンとジフェニルエーテルとの組合せ、
t−アミルベンゼンとジベンゾフランとの組合せ、
t−アミルベンゼンとフルオロベンゼンとの組合せ、
t−アミルベンゼンとベンゾトリフルオリドとの組合せ、
t−アミルベンゼンと2−フルオロビフェニルとの組合せ、
t−アミルベンゼンとo−フルオロシクロヘキシルベンゼンとの組合せ、
t−アミルベンゼンとp−フルオロシクロヘキシルベンゼンとの組合せ、
t−アミルベンゼンと2,4−ジフルオロアニソールとの組合せ、
【0187】
ジフェニルエーテルとジベンゾフランとの組合せ、
ジフェニルエーテルとフルオロベンゼンとの組合せ、
ジフェニルエーテルとベンゾトリフルオリドとの組合せ、
ジフェニルエーテルと2−フルオロビフェニルとの組合せ、
ジフェニルエーテルとo−フルオロシクロヘキシルベンゼンとの組合せ、
ジフェニルエーテルとp−フルオロシクロヘキシルベンゼンとの組合せ、
ジフェニルエーテルと2,4−ジフルオロアニソールとの組合せ、
【0188】
ジベンゾフランとフルオロベンゼンとの組合せ、
ジベンゾフランとベンゾトリフルオリドとの組合せ、
ジベンゾフランと2−フルオロビフェニルとの組合せ、
ジベンゾフランとo−フルオロシクロヘキシルベンゼンとの組合せ、
ジベンゾフランとp−フルオロシクロヘキシルベンゼンとの組合せ、
ジベンゾフランと2,4−ジフルオロアニソールとの組合せ、
【0189】
フルオロベンゼンとベンゾトリフルオリドとの組合せ、
フルオロベンゼンと2−フルオロビフェニルとの組合せ、
フルオロベンゼンとo−フルオロシクロヘキシルベンゼンとの組合せ、
フルオロベンゼンとp−フルオロシクロヘキシルベンゼンとの組合せ、
フルオロベンゼンと2,4−ジフルオロアニソールとの組合せ、
【0190】
ベンゾトリフルオリドと2−フルオロビフェニルとの組合せ、
ベンゾトリフルオリドとo−フルオロシクロヘキシルベンゼンとの組合せ、
ベンゾトリフルオリドとp−フルオロシクロヘキシルベンゼンとの組合せ、
ベンゾトリフルオリドと2,4−ジフルオロアニソールとの組合せ、
【0191】
2−フルオロビフェニルとo−フルオロシクロヘキシルベンゼンとの組合せ、
2−フルオロビフェニルとp−フルオロシクロヘキシルベンゼンとの組合せ、
2−フルオロビフェニルと2,4−ジフルオロアニソールとの組合せ、
【0192】
o−フルオロシクロヘキシルベンゼンとp−フルオロシクロヘキシルベンゼンとの組合せ、
o−フルオロシクロヘキシルベンゼンと2,4−ジフルオロアニソールとの組合せ、
p−フルオロシクロヘキシルベンゼンと2,4−ジフルオロアニソールとの組合せ、
等が挙げられる。
【0193】
本発明の非水系電解液が過充電防止剤を含有する場合、その濃度は本発明の効果を著しく損なわない限り任意であるが、非水系電解液全体に対して、通常0.1質量%以上、5質量%以下の範囲とすることが望ましい。
【0194】
本発明の非水系電解液に過充電防止剤を、本発明の効果を著しく損なわない範囲で含有させることは、万が一、誤った使用法や充電装置の異常等の過充電保護回路が正常に動作しない状況になり過充電されたとしても、非水系電解液二次電池の安全性が向上するので好ましい。
【0195】
<1−4−2−2.高温保存後の容量維持特性やサイクル特性を改善するための助剤>
高温保存後の容量維持特性やサイクル特性を改善するための助剤の具体例としては、例えば、
コハク酸、マレイン酸、フタル酸等のジカルボン酸の無水物;
エリスリタンカーボネート、スピロービスージメチレンカーボネート等の特定カーボネートに該当するもの以外のカーボネート化合物;
エチレンサルファイト、1,3−プロパンスルトン、1,4−ブタンスルトン、メタンスルホン酸メチル、ブスルファン、スルホラン、スルホレン、ジメチルスルホン、ジフェニルスルホン、メチルフェニルスルホン、ジブチルジスルフィド、ジシクロヘキシルジスルフィド、テトラメチルチウラムモノスルフイド、N,N−ジメチルメタンスルホンアミド、N,N−ジエチルメタンスルホンアミド、等の含イオウ化合物;
1−メチル−2−ピロリジノン、1−メチル−2−ピペリドン、3−メチル−2−オキサゾリジノン、1,3−ジメチル−2−イミダゾリジノン、N−メチルスクシイミド等の含窒素化合物;
ヘプタン、オクタン、シクロヘプタン等の炭化水素化合物;
フルオロベンゼン、ジフルオロベンゼン、ベンゾトリフルオライド等の含フッ素芳香族化合物等が挙げられる。
【0196】
[2.非水系電解液二次電池]
本発明の非水系電解液二次電池は、前記の本発明非水系電解液とイオンの吸蔵及び放出が可能な正極及び負極とを備えて構成される。また、本発明の非水系電解液二次電池はその他の構成を備えていてもよい。
【0197】
<2−1.電池構成>
本発明の非水系電解液二次電池は、負極及び非水系電解液以外の構成については、従来公知の非水系電解液二次電池と同様であり、通常は、本発明の非水系電解液が含浸されている多孔膜(セパレータ)を介して正極と負極とが積層され、これらがケース(外装体)に収納された形態を有する。従って、本発明の非水系電解液二次電池の形状は特に制限されるものではなく、円筒型、角形、ラミネート型、コイン型、大型等の何れであってもよい。
【0198】
<2−2.非水系電解液>
非水系電解液としては、上述の本発明の非水系電解液を用いる。なお、本発明の趣旨を逸脱しない範囲において、本発明の非水系電解液に対し、その他の非水系電解液を配合して用いることも可能である。
【0199】
<2−3.負極>
以下に負極に使用される負極活物質について述べる。
負極活物質としては、電気化学的にリチウムイオンを吸蔵・放出可能なものであれば、特に制限はない。その具体例としては、炭素質材料、合金系材料、リチウム含有金属複合酸化物材料等が挙げられる。
【0200】
<2−3−1.炭素質材料>
負極活物質として用いられる炭素質材料としては、
(1)天然黒鉛、
(2)人造炭素質物質並びに人造黒鉛質物質を400から3200℃の範囲で一回以上熱処理した炭素質材料、
(3)負極活物質層が少なくとも2種類以上の異なる結晶性を有する炭素質から成り立ちかつ/又はその異なる結晶性の炭素質が接する界面を有している炭素質材料、
(4)負極活物質層が少なくとも2種類以上の異なる配向性を有する炭素質から成り立ちかつ/又はその異なる配向性の炭素質が接する界面を有している炭素質材料、
から選ばれるものが初期不可逆容量、高電流密度充放電特性のバランスが良く好ましい。また、(1)〜(4)の炭素質材料は1種を単独で用いてもよく、2種以上を任意の組み合わせ及び比率で併用してもよい。
【0201】
上記(2)の人造炭素質物質並びに人造黒鉛質物質の具体的な例としては、天然黒鉛、石炭系コークス、石油系コークス、石炭系ピッチ、石油系ピッチ、あるいはこれらピッチを酸化処理したもの、ニードルコークス、ピッチコークス及びこれらを一部黒鉛化した炭素材、ファーネスブラック、アセチレンブラック、ピッチ系炭素繊維等の有機物の熱分解物、炭化可能な有機物、及びこれらの炭化物、又は炭化可能な有機物をベンゼン、トルエン、キシレン、キノリン、n−へキサン等の低分子有機溶媒に溶解させた溶液及びこれらの炭化物等が挙げられる。
【0202】
なお、上記の炭化可能な有機物の、具体的な例としては、軟ピッチから硬ピッチまでのコールタールピッチ、あるいは乾留液化油等の石炭系重質油、常圧残油、減圧残油の直流系重質油、原油、ナフサ等の熱分解時に副生するエチレンタール等分解系石油重質油、更にアセナフチレン、デカシクレン、アントラセン、フェナントレン等の芳香族炭化水素、フェナジンやアクリジン等の窒素原子含有複素環式化合物、チオフェン、ビチオフェン等のイオウ原子含有複素環式化合物、ビフェニル、テルフェニル等のポリフェニレン、ポリ塩化ビニル、ポリビニルアルコール、ポリビニルブチラール、これらのものの不溶化処理品、含窒素性のポリアクニロニトリル、ポリピロール等の有機高分子、含イオウ性のポリチオフェン、ポリスチレン等の有機高分子、セルロース、リグニン、マンナン、ポリガラクトウロン酸、キトサン、サッカロースに代表される多糖類等の天然高分子、ポリフェニレンサルファイド、ポリフェニレンオキシド等の熱可塑性樹脂、フルフリルアルコール樹脂、フェノール−ホルムアルデヒド樹脂、イミド樹脂等の熱硬化性樹脂等が挙げられる。
【0203】
<2−3−2.炭素質負極の構成、物性、調製方法>
炭素質材料についての性質や炭素質材料を含有する負極電極及び電極化手法、集電体、非水系電解液二次電池については、次に示す(1)〜(21)の何れか1項又は複数項を同時に満たしていることが望ましい。
【0204】
(1)X線パラメータ
炭素質材料の学振法によるX線回折で求めた格子面(002面)のd値(層間距離)が、通常0.335〜0.340nmであり、特に0.335〜0.338nm、とりわけ0.335〜0.337nmであるものが好ましい。また、学振法によるX線回折で求めた結晶子サイズ(Lc)は、通常1.0nm以上、好ましくは1.5nm以上、特に好ましくは2nm以上である。
黒鉛の表面を非晶質の炭素で被覆したものとして好ましいのは、X線回折における格子面(002面)のd値が0.335〜0.338nmである黒鉛を核材とし、その表面に該核材よりもX線回折における格子面(002面)のd値が大きい炭素質材料が付着しており、かつ核材と核材よりもX線回折における格子面(002面)のd値が大きい炭素質材料との割合が重量比で99/1〜80/20であるものである。これを用いると、高い容量で、かつ電解液と反応しにくい負極を製造することができる。
【0205】
(2)灰分
炭素質材料中に含まれる灰分は、炭素質材料の全質量に対して、1質量%以下、中でも0.5質量%以下、特に0.1質量%以下が好ましく、下限としては1ppm以上であることが好ましい。灰分の重量割合が上記の範囲を上回ると、充放電時の非水系電解液との反応による電池性能の劣化が無視できなくなる場合がある。また、上記範囲を下回ると、製造に多大な時間とエネルギーと汚染防止のための設備とを必要とし、コストが上昇する場合がある。
【0206】
(3)体積基準平均粒径
炭素質材料の体積基準平均粒径は、レーザー回折・散乱法により求めた体積基準の平均粒径(メジアン径)が、通常1μm以上であり、3μm以上が好ましく、5μm以上が更に好ましく、7μm以上が特に好ましく、また、通常100μm以下であり、50μm以下が好ましく、40μm以下がより好ましく、30μm以下が更に好ましく、25μm以下が特に好ましい。体積基準平均粒径が上記範囲を下回ると、不可逆容量が増大して、初期の電池容量の損失を招くことになる場合がある。また、上記範囲を上回ると、塗布により電極を作製する際に、不均一な塗面になりやすく、電池製作工程上望ましくない場合がある。
【0207】
体積基準平均粒径の測定は、界面活性剤であるポリオキシエチレン(20)ソルビタンモノラウレートの0.2質量%水溶液(約10mL)に炭素粉末を分散させて、レーザー回折・散乱式粒度分布計(堀場製作所社製LA−700)を用いて行なう。該測定で求められるメジアン径を、本発明の炭素質材料の体積基準平均粒径と定義する。
【0208】
(4)ラマンR値、ラマン半値幅
炭素質材料のラマンR値は、アルゴンイオンレーザーラマンスペクトル法を用いて測定した値が、通常0.01以上であり、0.03以上が好ましく、0.1以上が更に好ましく、また、通常1.5以下であり、1.2以下が好ましく、1以下が更に好ましく、0.5以下が特に好ましい。
【0209】
ラマンR値が上記範囲を下回ると、粒子表面の結晶性が高くなり過ぎて、充放電に伴ってLiが層間に入るサイトが少なくなる場合がある。すなわち、充電受入性が低下する場合がある。また、集電体に塗布した後、プレスすることによって負極を高密度化した場合に電極板と平行方向に結晶が配向しやすくなり、負荷特性の低下を招く場合がある。一方、上記範囲を上回ると、粒子表面の結晶性が低下し、非水系電解液との反応性が増し、効率の低下やガス発生の増加を招く場合がある。
【0210】
また、炭素質材料の1580cm−1付近のラマン半値幅は特に制限されないが、通常10cm−1以上であり、15cm−1以上が好ましく、また、通常100cm−1以下であり、80cm−1以下が好ましく、60cm−1以下が更に好ましく、40cm−1以下が特に好ましい。ラマン半値幅が上記範囲を下回ると、粒子表面の結晶性が高くなり過ぎて、充放電に伴ってLiが層間に入るサイトが少なくなる場合がある。すなわち、充電受入性が低下する場合がある。また、集電体に塗布した後、プレスすることによって負極を高密度化した場合に電極板と平行方向に結晶が配向しやすくなり、負荷特性の低下を招く場合がある。一方、上記範囲を上回ると、粒子表面の結晶性が低下し、非水系電解液との反応性が増し、効率の低下やガス発生の増加を招く場合がある。
【0211】
ラマンスペクトルの測定は、ラマン分光器(日本分光社製ラマン分光器)を用いて、試料を測定セル内へ自然落下させて充填し、セル内のサンプル表面にアルゴンイオンレーザー光を照射しながら、セルをレーザー光と垂直な面内で回転させることにより行なう。得られるラマンスペクトルについて、1580cm−1付近のピークPの強度Iと、1360cm−1付近のピークPの強度Iとを測定し、その強度比R(R=I/I)を算出する。該測定で算出されるラマンR値を、本発明における炭素質材料のラマンR値と定義する。また、得られるラマンスペクトルの1580cm−1付近のピークPの半値幅を測定し、これを本発明における炭素質材料のラマン半値幅と定義する。
【0212】
また、上記のラマン測定条件は、次の通りである。
・アルゴンイオンレーザー波長 :514.5nm
・試料上のレーザーパワー :15〜25mW
・分解能 :10〜20cm−1
・測定範囲 :1100cm−1〜1730cm−1
・ラマンR値、ラマン半値幅解析:バックグラウンド処理
・スムージング処理 :単純平均、コンボリューション5ポイント
【0213】
(5)BET比表面積
炭素質材料のBET比表面積は、BET法を用いて測定した比表面積の値が、通常0.1m・g−1以上であり、0.7m・g−1以上が好ましく、1.0m・g−1以上が更に好ましく、1.5m・g−1以上が特に好ましく、また、通常100m・g−1以下であり、25m・g−1以下が好ましく、15m・g−1以下が更に好ましく、10m・g−1以下が特に好ましい。BET比表面積の値がこの範囲を下回ると、負極材料として用いた場合の充電時にリチウムの受け入れ性が悪くなりやすく、リチウムが電極表面で析出しやすくなり、安定性が低下する可能性がある。一方、この範囲を上回ると、負極材料として用いた時に非水系電解液との反応性が増加し、ガス発生が多くなりやすく、好ましい電池が得られにくい場合がある。
【0214】
BET法による比表面積の測定は、表面積計(大倉理研製全自動表面積測定装置)を用いて、試料に対して窒素流通下350℃で15分間、予備乾燥を行なった後、大気圧に対する窒素の相対圧の値が0.3となるように正確に調整した窒素ヘリウム混合ガスを用いて、ガス流動法による窒素吸着BET1点法によって行なう。該測定で求められる比表面積を、本発明における炭素質材料のBET比表面積と定義する。
【0215】
(6)細孔径分布
炭素質材料の細孔径分布は、水銀圧入量の測定することによって算出される。水銀ポロシメトリー(水銀圧入法)を用いることで、炭素質材料の粒子内の空隙、粒子表面のステップによる凹凸、及び粒子間の接触面等による細孔が、直径0.01μm以上1μm以下の細孔に相当すると測定される炭素質材料が、通常0.01cm・g−1以上、好ましくは0.05cm・g−1以上、より好ましくは0.1cm・g−1以上、また、通常0.6cm・g−1以下、好ましくは0.4cm・g−1以下、より好ましくは0.3cm・g−1以下の細孔径分布を有することが望ましい。細孔径分布が上記範囲を上回ると、極板化時にバインダーを多量に必要となる場合がある。また、上記範囲を下回ると、高電流密度充放電特性が低下し、かつ充放電時の電極の膨張収縮の緩和効果が得られない場合がある。
【0216】
また、水銀ポロシメトリー(水銀圧入法)により求められる、直径が0.01μm以上100μm以下の細孔に相当する、全細孔容積は、通常0.1cm・g−1以上であり、0.25cm・g−1以上が好ましく、0.4cm・g−1以上が更に好ましく、また、通常10cm・g−1以下であり、5cm・g−1以下が好ましく、2cm・g−1以下が更に好ましい。全細孔容積が上記範囲を上回ると、極板化時にバインダーを多量に必要となる場合がある。また、上記範囲を下回ると、極板化時に増粘剤や結着剤の分散効果が得られない場合がある。
【0217】
また、平均細孔径は、通常0.05μm以上であり、0.1μm以上が好ましく、0.5μm以上が更に好ましく、また、通常50μm以下であり、20μm以下が好ましく、10μm以下が更に好ましい。平均細孔径が上記範囲を上回ると、バインダーを多量に必要となる場合がある。また、上記範囲を下回ると、高電流密度充放電特性が低下する場合がある。
【0218】
水銀圧入量の測定は、水銀ポロシメトリー用の装置として、水銀ポロシメータ(オートポア9520:マイクロメリテックス社製)を用いて行う。前処理として、試料約0.2gを、パウダー用セルに封入し、室温、真空下(50μmHg以下)にて10分間脱気する。引き続き、4psia(約28kPa)に減圧し水銀を導入し、4psia(約28kPa)から40000psia(約280MPa)までステップ状に昇圧させた後、25psia(約170kPa)まで降圧させる。昇圧時のステップ数は80点以上とし、各ステップでは10秒の平衡時間の後、水銀圧入量を測定する。
【0219】
このようにして得られた水銀圧入曲線から、Washburnの式を用い、細孔径分布を算出する。なお、水銀の表面張力(γ)は485dyne・cm−1(1dyne=10μN)、接触角(ψ)は140°とする。平均細孔径には累積細孔体積が50%となるときの細孔径を用いる。
【0220】
(7)円形度
炭素質材料の球形の程度として円形度を測定した場合、以下の範囲に収まることが好ましい。なお、円形度は、「円形度=(粒子投影形状と同じ面積を持つ相当円の周囲長)/(粒子投影形状の実際の周囲長)」で定義され、円形度が1のときに理論的真球となる。
【0221】
炭素質材料の粒径が3〜40μmの範囲にある粒子の円形度は1に近いほど望ましく、また、0.1以上が好ましく、中でも0.5以上が好ましく、0.8以上がより好ましく、0.85以上が更に好ましく、0.9以上が特に好ましい。
【0222】
高電流密度充放電特性は、円形度が大きいほど向上する。従って、円形度が上記範囲を下回ると、負極活物質の充填性が低下し、粒子間の抵抗が増大して、短時間高電流密度充放電特性が低下する場合がある。
【0223】
円形度の測定は、フロー式粒子像分析装置(シスメックス社製FPIA)を用いて行う。試料約0.2gを、界面活性剤であるポリオキシエチレン(20)ソルビタンモノラウレートの0.2質量%水溶液(約50mL)に分散させ、28kHzの超音波を出力60Wで1分間照射した後、検出範囲を0.6〜400μmに指定し、粒径が3〜40μmの範囲の粒子について測定する。該測定で求められる円形度を、本発明における炭素質材料の円形度と定義する。
【0224】
円形度を向上させる方法は、特に限定されないが、球形化処理を施して球形にしたものが、電極体にしたときの粒子間空隙の形状が整うので好ましい。球形化処理の例としては、せん断力、圧縮力を与えることによって機械的に球形に近づける方法、複数の微粒子をバインダー若しくは、粒子自身の有する付着力によって造粒する機械的・物理的処理方法等が挙げられる。
【0225】
(8)真密度
炭素質材料の真密度は、通常1.4g・cm−3以上であり、1.6g・cm−3以上が好ましく、1.8g・cm−3以上が更に好ましく、2.0g・cm−3以上が特に好ましく、また、通常2.26g・cm−3以下である。真密度が、上記範囲を下回ると炭素の結晶性が低すぎて初期不可逆容量が増大する場合がある。なお、上記範囲の上限は、黒鉛の真密度の理論上限値である。
【0226】
炭素質材料の真密度は、ブタノールを使用した液相置換法(ピクノメータ法)によって測定する。該測定で求められる値を、本発明における炭素質材料の真密度と定義する。
【0227】
(9)タップ密度
炭素質材料のタップ密度は、通常0.1g・cm−3以上であり、0.5g・cm−3以上が好ましく、0.7g・cm−3以上が更に好ましく、1g・cm−3以上が特に好ましく、また、2g・cm−3以下が好ましく、1.8g・cm−3以下が更に好ましく、1.6g・cm−3以下が特に好ましい。タップ密度が、上記範囲を下回ると、負極として用いた場合に充填密度が上がり難く、高容量の電池を得ることができない場合がある。また、上記範囲を上回ると、電極中の粒子間の空隙が少なくなり過ぎ、粒子間の導電性が確保され難くなり、好ましい電池特性が得られにくい場合がある。
【0228】
タップ密度の測定は、目開き300μmの篩を通過させて、20cmのタッピングセルに試料を落下させてセルの上端面まで試料を満たした後、粉体密度測定器(例えば、セイシン企業社製タップデンサー)を用いて、ストローク長10mmのタッピングを1000回行なって、その時の体積と試料の重量からタップ密度を算出する。該測定で算出されるタップ密度を、本発明における炭素質材料のタップ密度として定義する。
【0229】
(10)配向比
炭素質材料の配向比は、通常0.005以上であり、0.01以上が好ましく、0.015以上が更に好ましく、また、通常0.67以下である。配向比が、上記範囲を下回ると、高密度充放電特性が低下する場合がある。なお、上記範囲の上限は、炭素質材料の配向比の理論上限値である。
【0230】
配向比は、試料を加圧成型してからX線回折により測定する。試料0.47gを直径17mmの成型機に充填し、58.8MN・m−2で圧縮して得た成型体を、粘土を用いて測定用試料ホルダーの面と同一面になるようにセットしてX線回折を測定する。得られた炭素の(110)回折と(004)回折のピーク強度から、(110)回折ピーク強度/(004)回折ピーク強度で表わされる比を算出する。該測定で算出される配向比を、本発明における炭素質材料の配向比と定義する。
【0231】
X線回折測定条件は次の通りである。なお、「2θ」は回折角を示す。
・ターゲット:Cu(Kα線)グラファイトモノクロメーター
・スリット :
発散スリット=0.5度
受光スリット=0.15mm
散乱スリット=0.5度
・測定範囲及びステップ角度/計測時間:
(110)面:75度≦2θ≦80度 1度/60秒
(004)面:52度≦2θ≦57度 1度/60秒
【0232】
(11)アスペクト比(粉)
炭素質材料のアスペクト比は、通常1以上、また、通常10以下であり、8以下が好ましく、5以下が更に好ましい。アスペクト比が、上記範囲を上回ると、極板化時にスジ引きや、均一な塗布面が得られず、高電流密度充放電特性が低下する場合がある。なお、上記範囲の下限は、炭素質材料のアスペクト比の理論下限値である。
【0233】
アスペクト比の測定は、炭素質材料の粒子を走査型電子顕微鏡で拡大観察して行う。厚さ50ミクロン以下の金属の端面に固定した任意の50個の黒鉛粒子を選択し、それぞれについて試料が固定されているステージを回転、傾斜させて、3次元的に観察した時の炭素質材料粒子の最長となる径Aと、それと直交する最短となる径Bを測定し、A/Bの平均値を求める。該測定で求められるアスペクト比(A/B)を、本発明における炭素質材料のアスペクト比と定義する。
【0234】
(12)副材混合
副材混合とは、負極電極中及び/又は負極活物質中に性質の異なる炭素質材料が2種以上含有していることである。ここでいう性質とは、X線回折パラメータ、メジアン径、アスペクト比、BET比表面積、配向比、ラマンR値、タップ密度、真密度、細孔分布、円形度、灰分量の群から選ばれる一つ以上の特性を示す。
【0235】
これらの副材混合の、特に好ましい例としては、体積基準粒度分布がメジアン径を中心としたときに左右対称とならないこと、ラマンR値が異なる炭素質材料を2種以上含有していること、及びX線パラメータが異なること等が挙げられる。
【0236】
副材混合の効果の1例として、天然黒鉛、人造黒鉛等の黒鉛(グラファイト)、アセチレンブラック等のカーボンブラック、ニードルコークス等の無定形炭素等の炭素質材料が導電材として含有されることにより、電気抵抗を低減させることが挙げられる。
【0237】
副材混合として導電材を混合する場合には、1種を単独で混合してもよく、2種以上を任意の組み合わせ及び比率で混合してもよい。また、導電材の炭素質材料に対する混合比率は、通常0.1質量%以上、0.5質量%以上がこのましく、0.6質量%以上が更に好ましく、また、通常45質量%以下であり、40質量%以下が好ましい。混合比が、上記範囲を下回ると導電性向上の効果が得にくい場合がある。また、上記範囲を上回ると初期不可逆容量の増大を招く場合がある。
【0238】
(13)電極作製
電極の製造は、本発明の効果を著しく制限しない限り、公知の何れの方法を用いることができる。例えば、負極活物質に、バインダー、溶媒、必要に応じて、増粘剤、導電材、充填材等を加えてスラリーとし、これを集電体に塗布、乾燥した後にプレスすることによって形成することができる。
【0239】
電池の非水系電解液注液工程直前の段階での片面あたりの負極活物質層の厚さは、通常15μm以上であり、20μm以上が好ましく、30μm以上が更に好ましく、また、通常150μm以下であり、20μm以下が好ましく、100μm以下が更に好ましい。負極活物質の厚さが、この範囲を上回ると、非水系電解液が集電体界面付近まで浸透しにくいため、高電流密度充放電特性が低下する場合があるためである。またこの範囲を下回ると、負極活物質に対する集電体の体積比が増加し、電池の容量が減少する場合があるためである。また、負極活物質をロール成形してシート電極としてもよく、圧縮成形によりペレット電極としてもよい。
【0240】
(14)集電体
負極活物質を保持させる集電体としては、公知のものを任意に用いることができる。負極の集電体としては、例えば、銅、ニッケル、ステンレス鋼、ニッケルメッキ鋼等の金属材料が挙げられるが、加工し易さとコストの点から特に銅が好ましい。
【0241】
また、集電体の形状は、集電体が金属材料の場合は、例えば、金属箔、金属円柱、金属コイル、金属板、金属薄膜、エキスパンドメタル、パンチメタル、発泡メタル等が挙げられる。中でも、好ましくは金属薄膜、より好ましくは銅箔であり、更に好ましくは圧延法による圧延銅箔と、電解法による電解銅箔があり、どちらも集電体として用いることができる。
【0242】
また、銅箔の厚さが25μmよりも薄い場合、純銅よりも強度の高い銅合金(リン青銅、チタン銅、コルソン合金、Cu−Cr−Zr合金等)を用いることができる。
【0243】
圧延法により作製した銅箔からなる集電体は、銅結晶が圧延方向に並んでいるため、負極を密に丸めても、鋭角に丸めても割れにくく、小型の円筒状電池に好適に用いることができる。
【0244】
電解銅箔は、例えば、銅イオンが溶解された非水系電解液中に金属製のドラムを浸漬し、これを回転させながら電流を流すことにより、ドラムの表面に銅を析出させ、これを剥離して得られるものである。上記の圧延銅箔の表面に、電解法により銅を析出させていてもよい。銅箔の片面又は両面には、粗面化処理や表面処理(例えば、厚さが数nm〜1μm程度までのクロメート処理、Ti等の下地処理等)がなされていてもよい。
【0245】
集電体基板には、更に次のような物性が望まれる。
【0246】
(14−1)平均表面粗さ(Ra)
JISB0601−1994に記載の方法で規定される集電体基板の負極活物質薄膜形成面の平均表面粗さ(Ra)は、特に制限されないが、通常0.05μm以上であり、0.1μm以上が好ましく、0.15μm以上が更に好ましく、また、通常1.5μm以下であり、1.3μm以下が好ましく、1.0μm以下が更に好ましい。集電体基板の平均表面粗さ(Ra)が、上記の範囲内であると、良好な充放電サイクル特性が期待できるためである。また、負極活物質薄膜との界面の面積が大きくなり、負極活物質薄膜との密着性が向上する。なお、平均表面粗さ(Ra)の上限値は特に制限されるものではないが、平均表面粗さ(Ra)が1.5μmを超えるものは電池として実用的な厚みの箔としては一般に入手しにくいため、1.5μm以下のものが通常用いられる。
【0247】
(14−2)引張強度
引張強度とは、試験片が破断に至るまでに要した最大引張力を、試験片の断面積で割ったものである。本発明における引張強度は、JISZ2241(金属材料引張試験方法)に記載と同様な装置及び方法で測定される。
【0248】
集電体基板の引張強度は、特に制限されないが、通常100N・mm−2以上であり、250N・mm−2以上が好ましく、400N・mm−2以上が更に好ましく、500N・mm−2以上が特に好ましい。引張強度は、値が高いほど好ましいが、工業的入手可能性の観点から、通常1000N・mm−2以下である。引張強度が高い集電体基板であれば、充電・放電に伴う負極活物質薄膜の膨張・収縮による集電体基板の亀裂を抑制することができ、良好なサイクル特性を得ることができる。
【0249】
(14−3)0.2%耐力
0.2%耐力とは、0.2%の塑性(永久)歪みを与えるに必要な負荷の大きさであり、この大きさの負荷を加えた後に除荷しても0.2%変形していることを意味している。0.2%耐力は、引張り強度と同様な装置及び方法で測定される。
【0250】
集電体基板の0.2%耐力は、特に制限されないが、通常30N・mm−2以上、好ましくは150N・mm−2以上、特に好ましくは300N・mm−2以上が望ましい。0.2%耐値は値が高いほど好ましいが、工業的入手可能性の観点から、通常900N・mm−2以下が望ましい。0.2%耐力が高い集電体基板であれば、充電・放電に伴う負極活物質薄膜の膨張・収縮による集電体基板の塑性変形を抑制することができ、良好なサイクル特性を得ることができる。
【0251】
(14−4)集電体の厚さ
集電体の厚さは任意であるが、通常1μm以上であり、3μm以上が好ましく、5μm以上が更に好ましく、また、通常1mm以下であり、100μm以下が好ましく、50μm以下が更に好ましい。集電体の厚さが、1μmより薄くなると、強度が低下するため塗布が困難となる場合がある。また、100μmより厚くなると、捲回等の電極の形を変形させる場合がある。なお、集電体は、メッシュ状でもよい。
【0252】
(15)集電体と負極活物質層の厚さの比
集電体と負極活物質層の厚さの比は特には限定されないが、「(非水系電解液注液直前の片面の負極活物質層厚さ)/(集電体の厚さ)」の値が、150以下が好ましく、20以下が更に好ましく、10以下が特に好ましく、また、0.1以上が好ましく、0.4以上が更に好ましく、1以上が特に好ましい。
【0253】
集電体と負極活物質層の厚さの比が、上記範囲を上回ると、高電流密度充放電時に集電体がジュール熱による発熱を生じる場合がある。また、上記範囲を下回ると、負極活物質に対する集電体の体積比が増加し、電池の容量が減少する場合がある。
【0254】
(16)電極密度
負極活物質を電極化した際の電極構造は特には限定されないが、集電体上に存在している負極活物質の密度は、1g・cm−3以上が好ましく、1.2g・cm−3以上が更に好ましく、1.3g・cm−3以上が特に好ましく、また、2g・cm−3以下が好ましく、1.9g・cm−3以下がより好ましく、1.8g・cm−3以下が更に好ましく、1.7g・cm−3以下が特に好ましい。集電体上に存在している負極活物質の密度が、上記範囲を上回ると、負極活物質粒子が破壊され、初期不可逆容量の増加や、集電体/負極活物質界面付近への非水系電解液の浸透性低下による高電流密度充放電特性悪化を招く場合がある。また、上記範囲を下回ると、負極活物質間の導電性が低下し、電池抵抗が増大し、単位容積当たりの容量が低下する場合がある。
【0255】
(17)バインダー
負極活物質を結着するバインダーとしては、非水系電解液や電極製造時に用いる溶媒に対して安定な材料であれば、特に制限されない。
【0256】
具体例としては、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリエチレンテレフタレート、ポリメチルメタクリレート、芳香族ポリアミド、セルロース、ニトロセルロース等の樹脂系高分子;SBR(スチレン・ブタジエンゴム)、イソプレンゴム、ブタジエンゴム、フッ素ゴム、NBR(アクリロニトリル・ブタジエンゴム)、エチレン・プロピレンゴム等のゴム状高分子;スチレン・ブタジエン・スチレンブロック共重合体又はその水素添加物;EPDM(エチレン・プロピレン・ジエン三元共重合体)、スチレン・エチレン・ブタジエン・スチレン共重合体、スチレン・イソプレン・スチレンブロック共重合体又はその水素添加物等の熱可塑性エラストマー状高分子;シンジオタクチック−1,2−ポリブタジエン、ポリ酢酸ビニル、エチレン・酢酸ビニル共重合体、プロピレン・α−オレフィン共重合体等の軟質樹脂状高分子;ポリフッ化ビニリデン、ポリテトラフルオロエチレン、フッ素化ポリフッ化ビニリデン、ポリテトラフルオロエチレン・エチレン共重合体等のフッ素系高分子;アルカリ金属イオン(特にリチウムイオン)のイオン伝導性を有する高分子組成物等が挙げられる。これらは、1種を単独で用いても、2種以上を任意の組み合わせ及び比率で併用してもよい。
【0257】
スラリーを形成するための溶媒としては、負極活物質、バインダー、並びに必要に応じて使用される増粘剤及び導電材を溶解又は分散することが可能な溶媒であれば、その種類に特に制限はなく、水系溶媒と有機系溶媒のどちらを用いてもよい。
【0258】
水系溶媒の例としては水、アルコール等が挙げられ、有機系溶媒の例としてはN−メチルピロリドン(NMP)、ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド、メチルエチルケトン、シクロヘキサノン、酢酸メチル、アクリル酸メチル、ジエチルトリアミン、N,N−ジメチルアミノプロピルアミン、テトラヒドロフラン(THF)、トルエン、アセトン、ジエチルエーテル、ジメチルアセトアミド、ヘキサメチルホスファルアミド、ジメチルスルフォキシド、ベンゼン、キシレン、キノリン、ピリジン、メチルナフタレン、ヘキサン等が挙げられる。
【0259】
特に水系溶媒を用いる場合、増粘剤に併せて分散剤等を含有させ、SBR等のラテックスを用いてスラリー化することが好ましい。なお、これらの溶媒は、1種を単独で用いても、2種以上を任意の組み合わせ及び比率で併用してもよい。
【0260】
負極活物質に対するバインダーの割合は、0.1質量%以上が好ましく、0.5質量%以上が更に好ましく、0.6質量%以上が特に好ましく、また、20質量%以下が好ましく、15質量%以下がより好ましく、10質量%以下が更に好ましく、8質量%以下が特に好ましい。負極活物質に対するバインダーの割合が、上記範囲を上回ると、バインダー量が電池容量に寄与しないバインダー割合が増加して、電池容量の低下を招く場合がある。また、上記範囲を下回ると、負極電極の強度低下を招く場合がある。
【0261】
特に、SBRに代表されるゴム状高分子を主要成分に含有する場合には、負極活物質に対するバインダーの割合は、通常0.1質量%以上であり、0.5質量%以上が好ましく、0.6質量%以上が更に好ましく、また、通常5質量%以下であり、3質量%以下が好ましく、2質量%以下が更に好ましい。
【0262】
また、ポリフッ化ビニリデンに代表されるフッ素系高分子を主要成分に含有する場合には負極活物質に対する割合は、通常1質量%以上であり、2質量%以上が好ましく、3質量%以上が更に好ましく、また、通常15質量%以下であり、10質量%以下が好ましく、8質量%以下が更に好ましい。
【0263】
増粘剤は、通常、スラリーの粘度を調整するために使用される。増粘剤としては、特に制限はないが、具体的には、カルボキシメチルセルロース、メチルセルロース、ヒドロキシメチルセルロース、エチルセルロース、ポリビニルアルコール、酸化スターチ、リン酸化スターチ、カゼイン及びこれらの塩等が挙げられる。これらは、1種を単独で用いても、2種以上を任意の組み合わせ及び比率で併用してもよい。
【0264】
更に増粘剤を用いる場合には、負極活物質に対する増粘剤の割合は、通常0.1質量%以上であり、0.5質量%以上が好ましく、0.6質量%以上が更に好ましく、また、通常5質量%以下であり、3質量%以下が好ましく、2質量%以下が更に好ましい。負極活物質に対する増粘剤の割合が、上記範囲を下回ると、著しく塗布性が低下する場合がある。また、上記範囲を上回ると、負極活物質層に占める負極活物質の割合が低下し、電池の容量が低下する問題や負極活物質間の抵抗が増大する場合がある。
【0265】
(18)極板配向比
極板配向比は、通常0.001以上であり、0.005以上が好ましく、0.01以上が更に好ましく、また、通常0.67以下である。極板配向比が、上記範囲を下回ると、高密度充放電特性が低下する場合がある。なお、上記範囲の上限は、炭素質材料の極板配向比の理論上限値である。
【0266】
極板配向比の測定は、目的密度にプレス後の負極電極について、X線回折により電極の負極活物質配向比を測定することによって行なう。具体的手法は特に制限されないが、標準的な方法としては、X線回折により炭素の(110)回折と(004)回折のピークを、プロファイル関数として非対称ピアソンVIIを用いてフィッティングすることによりピーク分離を行ない、(110)回折と(004)回折のピークの積分強度を各々算出する。得られた積分強度から、(110)回折積分強度/(004)回折積分強度で表わされる比を算出する。該測定で算出される電極の負極活物質配向比を、本発明における炭素質材料による電極の極板配向比と定義する。
【0267】
X線回折測定条件は次の通りである。なお、「2θ」は回折角を示す。
・ターゲット:Cu(Kα線)グラファイトモノクロメーター
・スリット :発散スリット=1度、受光スリット=0.1mm、散乱スリット=1度
・測定範囲、及び、ステップ角度/計測時間:
(110)面:76.5度≦2θ≦78.5度 0.01度/3秒
(004)面:53.5度≦2θ≦56.0度 0.01度/3秒
・試料調製 :硝子板に0.1mm厚さの両面テープで電極を固定
【0268】
<2−3−3.金属化合物系材料、及び金属化合物系材料を用いた負極の構成、物性、調製方法>
負極活物質として用いられる金属化合物系材料としては、リチウムを吸蔵・放出可能であれば、リチウム合金を形成する単体金属若しくは合金、又はそれらの酸化物、炭化物、窒化物、珪化物、硫化物、燐化物等の化合物の何れであっても特に限定はされない。このような金属化合物としては、Ag、Al、Ba、Bi、Cu、Ga、Ge、In、Ni、P、Pb、Sb、Si、Sn、Sr、Zn等の金属を含有する化合物挙げられる。なかでもリチウム合金を形成する単体金属若しくは合金であることが好ましく、13族及び14族の金属・半金属元素(即ち炭素を除く)を含む材料あることが好ましく、更にはケイ素(Si)、スズ(Sn)、鉛(Pb)(以下、これらを「特定金属元素」という場合がある)の単体金属若しくはこれら原子を含む合金・化合物であることが好ましい。これらは、1種を単独で用いてもよく、また2種以上を任意の組み合わせ及び比率で併用してもよい。
【0269】
特定金属元素から選ばれる少なくとも1種の原子を有する負極活物質の例としては、何れか1種の特定金属元素の金属単体、2種以上の特定金属元素からなる合金、1種又は2種以上の特定金属元素とその他の1種又は2種以上の金属元素とからなる合金、並びに、1種又は2種以上の特定金属元素を含有する化合物、又は、その化合物の酸化物・炭化物・窒化物・ケイ化物・硫化物・リン化物等の複合化合物が挙げられる。負極活物質としてこれらの金属単体、合金又は金属化合物を用いることで、電池の高容量化が可能である。
【0270】
また、これらの複合化合物が、金属単体、合金、又は非金属元素等の数種の元素と複雑に結合した化合物も例として挙げることができる。より具体的には、例えばケイ素やスズでは、これらの元素と負極として動作しない金属との合金を用いることができる。また例えばスズでは、スズとケイ素以外で負極として作用する金属と、更に負極として動作しない金属と、非金属元素との組み合わせで5〜6種の元素を含むような複雑な化合物も用いることができる。
【0271】
これらの負極活物質の中でも、電池にしたときに単位重量当りの容量が大きいことから、何れか1種の特定金属元素の金属単体、2種以上の特定金属元素の合金、特定金属元素の酸化物や炭化物、窒化物等が好ましく、特に、ケイ素及び/又はスズの金属単体、合金、酸化物や炭化物、窒化物等が、単位重量当りの容量及び環境負荷の観点から好ましい。
【0272】
また、金属単体又は合金を用いるよりは、単位質量当りの容量には劣るものの、サイクル特性に優れることから、ケイ素及び/又はスズを含有する以下の化合物も好ましい。
・ケイ素及び/又はスズと酸素との元素比が、通常0.5以上であり、好ましくは0.7以上、更に好ましくは0.9以上、また、通常1.5以下であり、好ましくは1.3以下、更に好ましくは1.1以下のケイ素及び/又はスズの酸化物。
・ケイ素及び/又はスズと窒素との元素比が、通常0.5以上であり、好ましくは0.7以上、更に好ましくは0.9以上、また、通常1.5以下であり、好ましくは1.3以下、更に好ましくは1.1以下のケイ素及び/又はスズの窒化物。
・ケイ素及び/又はスズと炭素との元素比が、通常0.5以上であり、好ましくは0.7以上、更に好ましくは0.9以上、また、通常1.5以下であり、好ましくは1.3以下、更に好ましくは1.1以下のケイ素及び/又はスズの炭化物。
【0273】
なお、上述の負極活物質は、何れか1種を単独で用いてもよく、2種以上を任意の組み合わせ及び比率で併用してもよい。
【0274】
本発明の非水系電解液二次電池における負極は、公知の何れの方法を用いて製造することが可能である。具体的に、負極の製造方法としては、例えば、上述の負極活物質に結着剤や導電材等を加えたものをそのままロール成型してシート電極とする方法や、圧縮成形してペレット電極とする方法も挙げられるが、通常は負極用の集電体(以下「負極集電体」という場合がある。)上に塗布法、蒸着法、スパッタ法、メッキ法等の手法により、上述の負極活物質を含有する薄膜層(負極活物質層)を形成する方法が用いられる。この場合、上述の負極活物質に結着剤、増粘剤、導電材、溶媒等を加えてスラリー状とし、これを負極集電体に塗布、乾燥した後にプレスして高密度化することにより、負極集電体上に負極活物質層を形成する。
【0275】
負極集電体の材質としては、鋼、銅合金、ニッケル、ニッケル合金、ステンレス等が挙げられる。これらのうち、薄膜に加工し易いという点及びコストの点から、銅箔が好ましい。
【0276】
負極集電体の厚さは、通常1μm以上、好ましくは5μm以上であり、通常100μm以下、好ましくは50μm以下である。負極集電体の厚さが厚過ぎると、電池全体の容量が低下し過ぎることがあり、逆に薄過ぎると取り扱いが困難になることがあるためである。
【0277】
なお、表面に形成される負極活物質層との結着効果を向上させるため、これら負極集電体の表面は、予め粗面化処理しておくことが好ましい。表面の粗面化方法としては、ブラスト処理、粗面ロールによる圧延、研磨剤粒子を固着した研磨布紙、砥石、エメリバフ、鋼線等を備えたワイヤーブラシ等で集電体表面を研磨する機械的研磨法、電解研磨法、化学研磨法等が挙げられる。
【0278】
また、負極集電体の重量を低減させて電池の重量当たりのエネルギー密度を向上させるために、エキスパンドメタルやパンチングメタルのような穴あきタイプの負極集電体を使用することもできる。このタイプの負極集電体は、その開口率を変更することで、重量も白在に変更可能である。また、このタイプの負極集電体の両面に負極活物質層を形成させた場合、この穴を通してのリベット効果により、負極活物質層の剥離が更に起こり難くなる。しかし、開口率があまりに高くなった場合には、負極活物質層と負極集電体との接触面積が小さくなるため、かえって接着強度は低くなることがある。
【0279】
負極活物質層を形成するためのスラリーは、通常は負極材に対して結着剤、増粘剤等を加えて作製される。なお、本明細書における「負極材」とは、負極活物質と導電材とを合わせた材料を指すものとする。
【0280】
負極材中における負極活物質の含有量は、通常70質量%以上、特に75質量%以上、また、通常97質量%以下、特に95質量%以下であることが好ましい。負極活物質の含有量が少な過ぎると、得られる負極を用いた二次電池の容量が不足する傾向があり、多過ぎると相対的に結着剤等の含有量が不足することにより、得られる負極の強度が不足する傾向にあるためである。なお、2以上の負極活物質を併用する場合には、負極活物質の合計量が上記範囲を満たすようにすればよい。
【0281】
負極に用いられる導電材としては、銅やニッケル等の金属材料;黒鉛、カーボンブラック等の炭素材料等が挙げられる。これらは1種を単独で用いてもよく、2種以上を任意の組み合わせ及び比率で併用してもよい。特に、導電材として炭素材料を用いると、炭素材料が活物質としても作用するため好ましい。負極材中における導電材の含有量は、通常3質量%以上、特に5質量%以上、また、通常30質量%以下、特に25質量%以下であることが好ましい。導電材の含有量が少な過ぎると導電性が不足する傾向があり、多過ぎると相対的に負極活物質等の含有量が不足することにより、電池容量や強度が低下する傾向となるためである。なお、2以上の導電材を併用する場合には、導電材の合計量が上記範囲を満たすようにすればよい。
【0282】
負極に用いられる結着剤としては、電極製造時に使用する溶媒や電解液に対して安全な材料であれば、任意のものを使用することができる。例えば、ポリフッ化ビニリデン、ポリテトラフルオロエチレン、ポリエチレン、ポリプロピレン、スチレン・ブタジエンゴム・イソプレンゴム、ブタジエンゴム、エチレン−アクリル酸共重合体、エチレン−メタクリル酸共重合体等が挙げられる。これらは1種を単独で用いてもよく、2種以上を任意の組み合わせ及び比率で併用してもよい。結着剤の含有量は、負極材100重量部に対して通常0.5重量部以上、特に1重量部以上、また、通常10重量部以下、特に8重量部以下であることが好ましい。結着剤の含有量が少な過ぎると得られる負極の強度が不足する傾向があり、多過ぎると相対的に負極活物質等の含有量が不足することにより、電池容量や導電性が不足する傾向となるためである。なお、2以上の結着剤を併用する場合には、結着剤の合計量が上記範囲を満たすようにすればよい。
【0283】
負極に用いられる増粘剤としては、カルボキシメチルセルロース、メチルセルロース、ヒドロキシメチルセルロース、エチルセルロース、ポリビニルアルコール、酸化スターチ、リン酸化スターチ、カゼイン等が挙げられる。これらは1種を単独で用いてもよく、2種以上を任意の組み合わせ及び比率で併用してもよい。増粘剤は必要に応じて使用すればよいが、使用する場合には、負極活物質層中における増粘剤の含有量が通常0.5質量%以上、5質量%以下の範囲で用いることが好ましい。
【0284】
負極活物質層を形成するためのスラリーは、上記負極活物質に、必要に応じて導電材や結着剤、増粘剤を混合し、水系溶媒又は有機溶媒を分散媒として用いて調製される。水系溶媒としては、通常は水が用いられるが、エタノール等のアルコール類やN−メチルピロリドン等の環状アミド類等の水以外の溶媒を、水に対して30質量%以下程度の割合で併用することもできる。また、有機溶媒としては、通常、N−メチルピロリドン等の環状アミド類、N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド等の直鎖状アミド類、アニソール、トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素類、ブタノール、シクロヘキサノール等のアルコール類が挙げられ、中でも、N−メチルピロリドン等の環状アミド類、N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド等の直鎖状アミド類等が好ましい。なお、これらは何れか1種を単独で使用してもよく、2種以上を任意の組み合わせ及び比率で併用してもよい。
【0285】
スラリーの粘度は、集電体上に塗布することが可能な粘度であれば、特に制限されない。塗布が可能な粘度となるように、スラリーの調製時に溶媒の使用量等を変えて、適宜調整すればよい。
【0286】
得られたスラリーを上述の負極集電体上に塗布し、乾燥した後、プレスすることにより、負極活物質層が形成される。塗布の手法は特に制限されず、それ自体既知の方法を用いることができる。乾燥の手法も特に制限されず、自然乾燥、加熱乾燥、減圧乾燥等の公知の手法を用いることができる。
【0287】
上記手法により負極活物質を電極化した際の電極構造は特には限定されないが、集電体上に存在している活物質の密度は、1g・cm−3以上が好ましく、1.2g・cm−3以上が更に好ましく、1.3g・cm−3以上が特に好ましく、また、2g・cm−3以下が好ましく、1.9g・cm−3以下がより好ましく、1.8g・cm−3以下が更に好ましく、1.7g・cm−3以下が特に好ましい。集電体上に存在している活物質の密度が、上記範囲を上回ると、活物質粒子が破壊され、初期不可逆容量の増加や、集電体/活物質界面付近への非水系電解液の浸透性低下による高電流密度充放電特性悪化を招く場合がある。また、上記範囲を下回ると、活物質間の導電性が低下し、電池抵抗が増大し、単位容積当たりの容量が低下する場合がある。
【0288】
<2−3−4.リチウム含有金属複合酸化物材料、及びリチウム含有金属複合酸化物材料を用いた負極の構成、物性、調製方法>
負極活物質として用いられるリチウム含有金属複合酸化物材料としては、リチウムを吸蔵・放出可能であれば、特に限定はされないが、好ましくはチタンを含むリチウム含有複合金属酸化物材料が好ましく、更にリチウムとチタンの複合酸化物(以下、「リチウムチタン複合酸化物」と略記する)が好ましい。すなわちスピネル構造を有するリチウムチタン複合酸化物を、非水系電解液二次電池用負極活物質に含有させて用いると、出力抵抗が大きく低減するので特に好ましい。
【0289】
また、リチウムチタン複合酸化物のリチウムやチタンが、他の金属元素、例えば、Na、K、Co、Al、Fe、Ti、Mg、Cr、Ga、Cu、Zn及びNbからなる群より選ばれる少なくとも1種の元素で置換されているものも好ましい。
【0290】
上記金属酸化物が、一般式(2)で表されるリチウムチタン複合酸化物であり、一般式(2)中、0.7≦x≦1.5、1.5≦y≦2.3、0≦z≦1.6であることが、リチウムイオンのドープ・脱ドープの際の構造が安定であることから好ましい。
【0291】
LiTi (2)
[一般式(2)中、Mは、Na、K、Co、Al、Fe、Ti、Mg、Cr、Ga、Cu、Zn及びNbからなる群より選ばれる少なくとも1種の元素を表わす。]
【0292】
上記の一般式(2)で表される組成の中でも、
(a)1.2≦x≦1.4、1.5≦y≦1.7、z=0
(b)0.9≦x≦1.1、1.9≦y≦2.1、z=0
(c)0.7≦x≦0.9、2.1≦y≦2.3、z=0
の構造が、電池性能のバランスが良好なため特に好ましい。
【0293】
上記化合物の特に好ましい代表的な組成は、(a)ではLi4/3Ti5/3、(b)ではLiTi、(c)ではLi4/5Ti11/5である。また、Z≠0の構造については、例えば、Li4/3Ti4/3Al1/3が好ましいものとして挙げられる。
【0294】
本発明における負極活物質としてのリチウムチタン複合酸化物は、上記した要件に加えて、更に、下記の(1)〜(13)に示した物性及び形状等の特徴の内、少なくとも1種を満たしていることが好ましく、2種以上を同時に満たすことが特に好ましい。
【0295】
(1)BET比表面積
負極活物質として用いられるリチウムチタン複合酸化物のBET比表面積は、BET法を用いて測定した比表面積の値が、0.5m・g−1以上が好ましく、0.7m・g−1以上がより好ましく、1.0m・g−1以上が更に好ましく、1.5m・g−1以上が特に好ましく、また、200m・g−1以下が好ましく、100m・g−1以下がより好ましく、50m・g−1以下が更に好ましく、25m・g−1以下が特に好ましい。BET比表面積が、上記範囲を下回ると、負極材料として用いた場合の非水系電解液と接する反応面積が減少し、出力抵抗が増加する場合がある。一方、上記範囲を上回ると、チタンを含有する金属酸化物の結晶の表面や端面の部分が増加し、また、これに起因して、結晶の歪も生じるため、不可逆容量が無視できなくなり、好ましい電池が得られにくい場合がある。
【0296】
BET法による比表面積の測定は、表面積計(大倉理研製全自動表面積測定装置)を用いて、試料に対して窒素流通下350℃で15分間、予備乾燥を行なった後、大気圧に対する窒素の相対圧の値が0.3となるように正確に調整した窒素ヘリウム混合ガスを用いて、ガス流動法による窒素吸着BET1点法によって行なう。該測定で求められる比表面積を、本発明におけるリチウムチタン複合酸化物のBET比表面積と定義する。
【0297】
(2)体積基準平均粒径
リチウムチタン複合酸化物の体積基準平均粒径(一次粒子が凝集して二次粒子を形成している場合には二次粒子径)は、レーザー回折・散乱法により求めた体積基準の平均粒径(メジアン径)で定義される。
【0298】
リチウムチタン複合酸化物の体積基準平均粒径は、通常0.1μm以上であり、0.5μm以上が好ましく、0.7μm以上が更に好ましく、また、通常50μm以下であり、40μm以下が好ましく、30μm以下が更に好ましく、25μm以下が特に好ましい。
【0299】
体積基準平均粒径の測定は、界面活性剤であるポリオキシエチレン(20)ソルビタンモノラウレートの0.2質量%水溶液(10mL)に炭素粉末を分散させて、レーザー回折・散乱式粒度分布計(堀場製作所社製LA−700)を用いて行なう。該測定で求められるメジアン径を、本発明における炭素質材料の体積基準平均粒径と定義する。
【0300】
リチウムチタン複合酸化物の体積平均粒径が、上記範囲を下回ると、電極作製時に多量の結着剤が必要となり、結果的に電池容量が低下する場合がある。また、上記範囲を上回ると、電極極板化時に、不均一な塗面になりやすく、電池製作工程上望ましくない場合がある。
【0301】
(3)平均一次粒子径
一次粒子が凝集して二次粒子を形成している場合においては、リチウムチタン複合酸化物の平均一次粒子径が、通常0.01μm以上であり、0.05μm以上が好ましく、0.1μm以上が更に好ましく、0.2μm以上が特に好ましく、また、通常2μm以下であり、1.6μm以下が好ましく、1.3μm以下が更に好ましく、1μm以下が特に好ましい。体積基準平均一次粒子径が、上記範囲を上回ると、球状の二次粒子を形成し難く、粉体充填性に悪影響を及ぼしたり、比表面積が大きく低下したりするために、出力特性等の電池性能が低下する可能性が高くなる場合がある。また、上記範囲を下回ると、通常、結晶が未発達になるために充放電の可逆性が劣る等、二次電池の性能を低下させる場合がある。
【0302】
なお、一次粒子径は、走査型電子顕微鏡(SEM)を用いた観察により測定される。具体的には、粒子が確認できる倍率、例えば10000〜100000倍の倍率の写真で、水平方向の直線に対する一次粒子の左右の境界線による切片の最長の値を、任意の50個の一次粒子について求め、平均値をとることにより求められる。
【0303】
(4)形状
リチウムチタン複合酸化物の粒子の形状は、従来用いられるような、塊状、多面体状、球状、楕円球状、板状、針状、柱状等が用いられるが、中でも一次粒子が凝集して、二次粒子を形成して成り、その二次粒子の形状が球状ないし楕円球状であるものが好ましい。
【0304】
通常、電気化学素子はその充放電に伴い、電極中の活物質が膨張収縮をするため、そのストレスによる活物質の破壊や導電パス切れ等の劣化がおきやすい。そのため一次粒子のみの単一粒子活物質であるよりも、一次粒子が凝集して、二次粒子を形成したものである方が膨張収縮のストレスを緩和して、劣化を防ぐためである。
【0305】
また、板状等軸配向性の粒子であるよりも、球状又は楕円球状の粒子の方が、電極の成形時の配向が少ないため、充放電時の電極の膨張収縮も少なく、また電極を作製する際の導電材との混合においても、均一に混合されやすいため好ましい。
【0306】
(5)タップ密度
リチウムチタン複合酸化物のタップ密度は、0.05g・cm−3以上が好ましく、0.1g・cm−3以上がより好ましく、0.2g・cm−3以上が更に好ましく、0.4g・cm−3以上が特に好ましく、また、2.8g・cm−3以下が好ましく、2.4g・cm−3以下が更に好ましく、2g・cm−3以下が特に好ましい。タップ密度が、上記範囲を下回ると、負極として用いた場合に充填密度が上がり難く、また粒子間の接触面積が減少するため、粒子間の抵抗が増加し、出力抵抗が増加する場合がある。また、上記範囲を上回ると、電極中の粒子間の空隙が少なくなり過ぎ、非水系電解液の流路が減少することで、出力抵抗が増加する場合がある。
【0307】
タップ密度の測定は、目開き300μmの篩を通過させて、20cmのタッピングセルに試料を落下させてセルの上端面まで試料を満たした後、粉体密度測定器(例えば、セイシン企業社製タップデンサー)を用いて、ストローク長10mmのタッピングを1000回行なって、その時の体積と試料の重量から密度を算出する。該測定で算出されるタップ密度を、本発明におけるリチウムチタン複合酸化物のタップ密度として定義する。
【0308】
(6)円形度
リチウムチタン複合酸化物の球形の程度として、円形度を測定した場合、以下の範囲に収まることが好ましい。円形度は、「円形度=(粒子投影形状と同じ面積を持つ相当円の周囲長)/(粒子投影形状の実際の周囲長)」で定義され、円形度が1のときに理論的真球となる。
【0309】
リチウムチタン複合酸化物の円形度は、1に近いほど好ましく、通常0.10以上であり、0.80以上が好ましく、0.85以上が更に好ましく、0.90以上が特に好ましい。高電流密度充放電特性は、円形度が大きいほどが向上する。従って、円形度が上記範囲を下回ると、負極活物質の充填性が低下し、粒子間の抵抗が増大して、短時間高電流密度充放電特性が低下する場合がある。
【0310】
円形度の測定は、フロー式粒子像分析装置(シスメックス社製FPIA)を用いて行なう。試料約0.2gを、界面活性剤であるポリオキシエチレン(20)ソルビタンモノラウレートの0.2質量%水溶液(約50mL)に分散させ、28kHzの超音波を出力60Wで1分間照射した後、検出範囲を0.6〜400μmに指定し、粒径が3〜40μmの範囲の粒子について測定する。該測定で求められる円形度を、本発明におけるリチウムチタン複合酸化物の円形度と定義する。
【0311】
(7)アスペクト比
リチウムチタン複合酸化物のアスペクト比は、通常1以上、また、通常5以下であり、4以下が好ましく、3以下が更に好ましく、2以下が特に好ましい。アスペクト比が、上記範囲を上回ると、極板化時にスジ引きや、均一な塗布面が得られず、短時間高電流密度充放電特性が低下する場合がある。なお、上記範囲の下限は、リチウムチタン複合酸化物のアスペクト比の理論下限値である。
【0312】
アスペクト比の測定は、リチウムチタン複合酸化物の粒子を走査型電子顕微鏡で拡大観察して行なう。厚さ50μm以下の金属の端面に固定した任意の50個の粒子を選択し、それぞれについて試料が固定されているステージを回転、傾斜させて、3次元的に観察した時の粒子の最長となる径Aと、それと直交する最短となる径Bを測定し、A/Bの平均値を求める。該測定で求められるアスペクト比(A/B)を、本発明におけるリチウムチタン複合酸化物のアスペクト比と定義する。
【0313】
(8)負極活物質の製造法
リチウムチタン複合酸化物の製造法としては、本発明の要旨を超えない範囲で特には制限されないが、いくつかの方法が挙げられ、無機化合物の製造法として一般的な方法が用いられる。
【0314】
例えば、酸化チタン等のチタン原料物質と、必要に応じ他の元素の原料物質とLiOH、LiCO、LiNO等のLi源を均一に混合し、高温で焼成して活物質を得る方法が挙げられる。
【0315】
特に球状又は楕円球状の活物質を作成するには種々の方法が考えられる。一例として、酸化チタン等のチタン原料物質と、必要に応じ他の元素の原料物質を水等の溶媒中に溶解ないし粉砕分散して、攪拌をしながらpHを調節して球状の前駆体を作成回収し、これを必要に応じて乾燥した後、LiOH、LiCO、LiNO等のLi源を加えて高温で焼成して活物質を得る方法が挙げられる。
【0316】
また、別の例として、酸化チタン等のチタン原料物質と、必要に応じ他の元素の原料物質を水等の溶媒中に溶解ないし粉砕分散して、それをスプレードライヤー等で乾燥成型して球状ないし楕円球状の前駆体とし、これにLiOH、LiCO、LiNO等のLi源を加えて高温で焼成して活物質を得る方法が挙げられる。
【0317】
更に別の方法として、酸化チタン等のチタン原料物質と、LiOH、LiCO、LiNO等のLi源と、必要に応じ他の元素の原料物質とを水等の溶媒中に溶解ないし粉砕分散して、それをスプレードライヤー等で乾燥成型して球状ないし楕円球状の前駆体とし、これを高温で焼成して活物質を得る方法が挙げられる。
【0318】
また、これらの工程中に、Ti以外の元素、例えば、Al、Mn、Ti、V、Cr、Mn、Fe、Co、Li、Ni、Cu、Zn、Mg、Ga、Zr、C、Si、Sn、Agを、チタンを含有する金属酸化物構造中及び/又はチタンを含有する酸化物に接する形で存在していることも可能である。これらの元素を含有することで、電池の作動電圧、容量を制御することが可能となる。
【0319】
(9)電極作製
電極の製造は、公知の何れの方法を用いることができる。例えば、負極活物質に、バインダー、溶媒、必要に応じて、増粘剤、導電材、充填材等を加えてスラリーとし、これを集電体に塗布、乾燥した後にプレスすることによって形成することができる。
【0320】
電池の非水系電解液注液工程直前の段階での片面あたりの負極活物質層の厚さは通常15μm以上、好ましくは20μm以上、より好ましくは30μm以上であり、上限は150μm以下、好ましくは120μm以下、より好ましくは100μm以下が望ましい。この範囲を上回ると、非水系電解液が集電体界面付近まで浸透しにくいため、高電流密度充放電特性が低下する場合がある。またこの範囲を下回ると、負極活物質に対する集電体の体積比が増加し、電池の容量が減少する場合がある。また、負極活物質をロール成形してシート電極としてもよく、圧縮成形によりペレット電極としてもよい。
【0321】
(10)集電体
負極活物質を保持させる集電体としては、公知のものを任意に用いることができる。負極の集電体としては、銅、ニッケル、ステンレス鋼、ニッケルメッキ鋼等の金属材料が挙げられ、中でも加工し易さとコストの点から特に銅が好ましい。
【0322】
また、集電体の形状は、集電体が金属材料の場合は、例えば金属箔、金属円柱、金属コイル、金属板、金属薄膜、エキスパンドメタル、パンチメタル、発泡メタル等が挙げられる。中でも好ましくは銅(Cu)及び/又はアルミニウム(Al)を含有する金属箔膜であり、より好ましくは銅箔、アルミニウム箔であり、更に好ましくは圧延法による圧延銅箔と、電解法による電解銅箔があり、どちらも集電体として用いることができる。
【0323】
また、銅箔の厚さが25μmよりも薄い場合、純銅よりも強度の高い銅合金(リン青銅、チタン銅、コルソン合金、Cu−Cr−Zr合金等)を用いることができる。またアルミニウム箔は、その比重が軽いことから、集電体として用いた場合に、電池の重量を減少させることが可能となり、好ましく用いることができる。
【0324】
圧延法により作製した銅箔からなる集電体は、銅結晶が圧延方向に並んでいるため、負極を密に丸めても、鋭角に丸めても割れにくく、小型の円筒状電池に好適に用いることができる。
【0325】
電解銅箔は、例えば、銅イオンが溶解された非水系電解液中に金属製のドラムを浸漬し、これを回転させながら電流を流すことにより、ドラムの表面に銅を析出させ、これを剥離して得られるものである。上記の圧延銅箔の表面に、電解法により銅を析出させていてもよい。銅箔の片面又は両面には、粗面化処理や表面処理(例えば、厚さが数nm〜1μm程度までのクロメート処理、Ti等の下地処理等)がなされていてもよい。
【0326】
また、集電体基板には、更に次のような物性が望まれる。
(10−1)平均表面粗さ(Ra)
JISB0601−1994に記載の方法で規定される集電体基板の活物質薄膜形成面の平均表面粗さ(Ra)は、特に制限されないが、通常0.01μm以上であり、0.03μm以上が好ましく、また、通常1.5μm以下であり、1.3μm以下が好ましく、1.0μm以下が更に好ましい。
【0327】
集電体基板の平均表面粗さ(Ra)が、上記の範囲内であると、良好な充放電サイクル特性が期待できるためである。また、活物質薄膜との界面の面積が大きくなり、負極活物質薄膜との密着性が向上するためである。なお、平均表面粗さ(Ra)の上限値は特に制限されるものではないが、平均表面粗さ(Ra)が1.5μmを超えるものは電池として実用的な厚みの箔としては一般に入手しにくいため、1.5μm以下のものが通常用いられる。
【0328】
(10−2)引張強度
引張強度とは、試験片が破断に至るまでに要した最大引張力を、試験片の断面積で割ったものである。本発明における引張強度は、JISZ2241(金属材料引張試験方法)に記載と同様な装置及び方法で測定される。
【0329】
集電体基板の引張強度は、特に制限されないが、通常50N・mm−2以上であり、100N・mm−2以上が好ましく、150N・mm−2以上が更に好ましい。引張強度は、値が高いほど好ましいが、工業的入手可能性の観点から、通常1000N・mm−2以下が望ましい。引張強度が高い集電体基板であれば、充電・放電に伴う活物質薄膜の膨張・収縮による集電体基板の亀裂を抑制することができ、良好なサイクル特性を得ることができる。
【0330】
(10−3)0.2%耐力
0.2%耐力とは、0.2%の塑性(永久)歪みを与えるに必要な負荷の大きさであり、この大きさの負荷を加えた後に除荷しても0.2%変形していることを意味している。0.2%耐力は、引張強度と同様な装置及び方法で測定される。
【0331】
集電体基板の0.2%耐力は、特に制限されないが、通常30N・mm−2以上、好ましくは100N・mm−2以上、特に好ましくは150N・mm−2以上である。0.2%耐力は、値が高いほど好ましいが、工業的入手可能性の観点から、通常900N・mm−2以下が望ましい。0.2%耐力が高い集電体基板であれば、充電・放電に伴う活物質薄膜の膨張・収縮による集電体基板の塑性変形を抑制することができ、良好なサイクル特性を得ることができるためである。
【0332】
(10−4)集電体の厚さ
集電体の厚さは任意であるが、通常1μm以上であり、3μm以上が好ましく、5μm以上が更に好ましく、また、通常1mm以下であり、100μm以下が好ましく、50μm以下が更に好ましい。集電体の厚さが、1μmより薄くなると、強度が低下するため塗布が困難となる場合がある。また、100μmより厚くなると、捲回等の電極の形を変形させる場合がある。なお、集電体は、メッシュ状でもよい。
【0333】
(11)集電体と活物質層の厚さの比
集電体と活物質層の厚さの比は特には限定されないが、「(非水系電解液注液直前の片面の活物質層の厚さ)/(集電体の厚さ)」の値が、通常150以下であり、20以下が好ましく、10以下が更に好ましく、また、通常0.1以上であり、0.4以上が好ましく、1以上が更に好ましい。集電体と負極活性物質層の厚さの比が、上記範囲を上回ると、高電流密度充放電時に集電体がジュール熱による発熱を生じる場合がある。また、上記範囲を下回ると、負極活物質に対する集電体の体積比が増加し、電池の容量が減少する場合がある。
【0334】
(12)電極密度
負極活物質の電極化した際の電極構造は特には限定されないが、集電体上に存在している活物質の密度は、1g・cm−3以上が好ましく、1.2g・cm−3以上がより好ましく、1.3g・cm−3以上が更に好ましく、1.5g・cm−3以上が特に好ましく、また、3g・cm−3以下が好ましく、2.5g・cm−3以下がより好ましく、2.2g・cm−3以下が更に好ましく、2g・cm−3以下が特に好ましい。集電体上に存在している活物質の密度が、上記範囲を上回ると、集電体と負極活物質の結着が弱くなり、電極と活物質が乖離する場合がある。また、上記範囲を下回ると、負極活物質間の導電性が低下し、電池抵抗が増大する場合がある。
【0335】
(13)バインダー
負極活物質を結着するバインダーとしては、非水系電解液や電極製造時に用いる溶媒に対して安定な材料であれば、特に制限されない。
【0336】
具体例としては、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリエチレンテレフタレート、ポリメチルメタクリレート、ポリイミド、芳香族ポリアミド、セルロース、ニトロセルロース等の樹脂系高分子;SBR(スチレン・ブタジエンゴム)、イソプレンゴム、ブタジエンゴム、フッ素ゴム、NBR(アクリロニトリル・ブタジエンゴム)、エチレン・プロピレンゴム等のゴム状高分子;スチレン・ブタジエン・スチレンブロック共重合体及びその水素添加物;EPDM(エチレン・プロピレン・ジエン三元共重合体)、スチレン・エチレン・ブタジエン・スチレン共重合体、スチレン・イソプレン・スチレンブロック共重合体及びその水素添加物等の熱可塑性エラストマー状高分子;シンジオタクチック−1,2−ポリブタジエン、ポリ酢酸ビニル、エチレン・酢酸ビニル共重合体、プロピレン・α−オレフィン共重合体等の軟質樹脂状高分子;ポリフッ化ビニリデン、ポリテトラフルオロエチレン、フッ素化ポリフッ化ビニリデン、ポリテトラフルオロエチレン・エチレン共重合体等のフッ素系高分子;アルカリ金属イオン(特にリチウムイオン)のイオン伝導性を有する高分子組成物等が挙げられる。これらは、1種を単独で用いても、2種以上を任意の組み合わせ及び比率で併用してもよい。
【0337】
スラリーを形成するための溶媒としては、負極活物質、バインダー、必要に応じて使用される増粘剤及び導電材を、溶解又は分散することが可能な溶媒であれば、その種類に特に制限はなく、水系溶媒と有機系溶媒のどちらを用いてもよい。
【0338】
水系溶媒の例としては水、アルコール等が挙げられ、有機系溶媒の例としてはN−メチルピロリドン(NMP)、ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド、メチルエチルケトン、シクロヘキサノン、酢酸メチル、アクリル酸メチル、ジエチルトリアミン、N,N−ジメチルアミノプロピルアミン、テトラヒドロフラン(THF)、トルエン、アセトン、ジメチルエーテル、ジメチルアセトアミド、ヘキサメリルホスファルアミド、ジメチルスルフォキシド、ベンゼン、キシレン、キノリン、ピリジン、メチルナフタレン、ヘキサン等が挙げられる。特に水系溶媒を用いる場合、上述の増粘剤に併せて分散剤等を加え、SBR等のラテックスを用いてスラリー化する。なお、これらは、1種を単独で用いても、2種以上を任意の組み合わせ及び比率で併用してもよい。
【0339】
負極活物質に対するバインダーの割合は、通常0.1質量%以上であり、0.5質量%以上が好ましく、0.6質量%以上が更に好ましく、また、通常20質量%以下であり、15質量%以下が好ましく、10質量%以下が更に好ましく、8質量%以下が特に好ましい。負極活物質に対するバインダーの割合が、上記範囲を上回ると、バインダー量が電池容量に寄与しないバインダー割合が増加して、電池容量が低下する場合がある。また、上記範囲を下回ると、負極電極の強度低下を招き、電池作製工程上好ましくない場合がある。
【0340】
特に、SBRに代表されるゴム状高分子を主要成分に含有する場合には、活物質に対するバインダーの割合は、通常0.1質量%以上であり、0.5質量%以上が好ましく、0.6質量%以上が更に好ましく、また、通常5質量%以下であり、3質量%以下が好ましく、2質量%以下が更に好ましい。
【0341】
また、ポリフッ化ビニリデンに代表されるフッ素系高分子を主要成分に含有する場合には活物質に対する割合は、1質量%以上であり、2質量%以上が好ましく、3質量%以上が更に好ましく、通常15質量%以下であり、10質量%以下が好ましく、8質量%以下が更に好ましい。
【0342】
増粘剤は、通常、スラリーの粘度を調整するために使用される。増粘剤としては、特に制限はないが、具体的には、カルボキシメチルセルロース、メチルセルロース、ヒドロキシメチルセルロース、エチルセルロース、ポリビニルアルコール、酸化スターチ、リン酸化スターチ、カゼイン及びこれらの塩等が挙げられる。これらは、1種を単独で用いても、2種以上を任意の組み合わせ及び比率で併用してもよい。
【0343】
更に増粘剤を用いる場合には、負極活物質に対する増粘剤の割合は、通常0.1質量%以上であり、0.5質量%以上が好ましく、0.6質量%以上が更に好ましく、また、通常5質量%以下であり、3質量%以下が好ましく、2質量%以下が更に好ましい。負極活物質に対する増粘剤の割合が、上記範囲を下回ると、著しく塗布性が低下する場合がある。また、上記範囲を上回ると、負極活物質層に占める活物質の割合が低下し、電池の容量が低下する問題や負極活物質間の抵抗が増大する場合がある。
【0344】
<2−4.正極>
以下に本発明の非水系電解液二次電池に使用される正極について説明する。
【0345】
<2−4−1.正極活物質>
以下に正極に使用される正極活物質について説明する。
【0346】
(1)組成
正極活物質としては、電気化学的にリチウムイオンを吸蔵・放出可能なものであれば特に制限はないが、例えば、リチウムと少なくとも1種の遷移金属を含有する物質が好ましい。具体例としては、リチウム遷移金属複合酸化物、リチウム含有遷移金属リン酸化合物が挙げられる。
【0347】
リチウム遷移金属複合酸化物の遷移金属としてはV、Ti、Cr、Mn、Fe、Co、Ni、Cu等が好ましく、具体例としては、LiCoO等のリチウム・コバルト複合酸化物、LiNiO等のリチウム・ニッケル複合酸化物、LiMnO、LiMn、LiMnO等のリチウム・マンガン複合酸化物、これらのリチウム遷移金属複合酸化物の主体となる遷移金属原子の一部をAl、Ti、V、Cr、Mn、Fe、Co、Li、Ni、Cu、Zn、Mg、Ga、Zr、Si等の他の金属で置換したもの等が挙げられる。
【0348】
置換されたものの具体例としては、例えば、LiNi0.5Mn0.5、LiNi0.85Co0.10Al0.05、LiNi0.33Co0.33Mn0.33、LiMn1.8Al0.2、LiMn1.5Ni0.5等が挙げられる。
【0349】
リチウム含有遷移金属リン酸化合物の遷移金属としては、V、Ti、Cr、Mn、Fe、Co、Ni、Cu等が好ましく、具体例としては、例えば、LiFePO、LiFe(PO、LiFeP等のリン酸鉄類、LiCoPO等のリン酸コバルト類、これらのリチウム遷移金属リン酸化合物の主体となる遷移金属原子の一部をAl、Ti、V、Cr、Mn、Fe、Co、Li、Ni、Cu、Zn、Mg、Ga、Zr、Nb、Si等の他の金属で置換したもの等が挙げられる。
【0350】
(2)表面被覆
上記の正極活物質の表面に、主体となる正極活物質を構成する物質とは異なる組成の物質(以後、適宜「表面付着物質」と略記する)が付着したものを用いることもできる。表面付着物質の例としては酸化アルミニウム、酸化ケイ素、酸化チタン、酸化ジルコニウム、酸化マグネシウム、酸化カルシウム、酸化ホウ素、酸化アンチモン、酸化ビスマス等の酸化物、硫酸リチウム、硫酸ナトリウム、硫酸カリウム、硫酸マグネシウム、硫酸カルシウム、硫酸アルミニウム等の硫酸塩、炭酸リチウム、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム等の炭酸塩等が挙げられる。
【0351】
これら表面付着物質は、例えば、溶媒に溶解又は懸濁させて正極活物質に含浸添加させた後に乾燥する方法、表面付着物質前駆体を溶媒に溶解又は懸濁させて正極活物質に含浸添加させた後に加熱等により反応させる方法、正極活物質前駆体に添加して同時に焼成する方法等により、正極活物質表面に付着させることができる。
【0352】
正極活物質の表面に付着している表面付着物質の質量は、正極活物質の質量に対して、通常0.1ppm以上であり、1ppm以上が好ましく、10ppm以上が更に好ましく、また、通常20%以下であり、10%以下が好ましく、5%以下が更に好ましい。
【0353】
表面付着物質により、正極活物質表面での非水系電解液の酸化反応を抑制することができ、電池寿命を向上させることができる。しかし、付着量が上記範囲を下回ると、その効果は十分に発現せず、また上記範囲を上回ると、リチウムイオンの出入りを阻害するために抵抗が増加する場合があるため、上記範囲が好ましい。
【0354】
(3)形状
正極活物質粒子の形状は、従来用いられるような、塊状、多面体状、球状、楕円球状、板状、針状、柱状等が用いられるが、中でも一次粒子が凝集して、二次粒子を形成して成り、その二次粒子の形状が球状又は楕円球状であるものが好ましい。
【0355】
通常、電気化学素子はその充放電に伴い、電極中の活物質が膨張収縮をするため、そのストレスによる活物質の破壊や導電パス切れ等の劣化がおきやすい。従って、一次粒子のみの単一粒子活物質であるよりも、一次粒子が凝集して、二次粒子を形成したものである方が膨張収縮のストレスを緩和して、劣化を防ぐためである。
【0356】
また、板状等軸配向性の粒子よりも、球状又は楕円球状の粒子の方が、電極の成形時の配向が少ないため、充放電時の電極の膨張収縮も少なく、また電極を作成する際の導電材との混合においても、均一に混合されやすいため好ましい。
【0357】
(4)タップ密度
正極活物質のタップ密度は、通常1.3g・cm−3以上であり、1.5g・cm−3以上が好ましく、1.6g・cm−3以上が更に好ましく、1.7g・cm−3以上が特に好ましく、また、通常2.5g・cm−3以下であり、2.4g・cm−3以下が好ましい。
【0358】
タップ密度の高い金属複合酸化物粉体を用いることにより、高密度の正極活物質層を形成することができる。従って、正極活物質のタップ密度が上記範囲を下回ると、正極活物質層形成時に必要な分散媒量が増加すると共に、導電材や結着剤の必要量が増加し、正極活物質層への正極活物質の充填率が制約され、電池容量が制約される場合がある。また、タップ密度は一般に大きいほど好ましく特に上限はないが、上記範囲を下回ると、正極活物質層内における非水系電解液を媒体としたリチウムイオンの拡散が律速となり、負荷特性が低下しやすくなる場合がある。
【0359】
タップ密度の測定は、目開き300μmの篩を通過させて、20cmのタッピングセルに試料を落下させてセル容積を満たした後、粉体密度測定器(例えば、セイシン企業社製タップデンサー)を用いて、ストローク長10mmのタッピングを1000回行なって、その時の体積と試料の重量から密度を算出する。該測定で算出されるタップ密度を、本発明における正極活物質のタップ密度として定義する。
【0360】
(5)メジアン径d50
正極活物質の粒子のメジアン径d50(一次粒子が凝集して二次粒子を形成している場合には二次粒子径)は、レーザー回折/散乱式粒度分布測定装置を用いても測定することができる。
【0361】
メジアン径d50は、通常0.1μm以上であり、0.5μm以上が好ましく、1μm以上が更に好ましく、3μm以上が特に好ましく、また、通常20μm以下であり、18μm以下が好ましく、16μm以下が更に好ましく、15μm以下が特に好ましい。メジアン径d50が、上記範囲を下回ると、高嵩密度品が得られなくなる場合があり、上記範囲を上回ると粒子内のリチウムの拡散に時間がかかるため、電池特性の低下や、電池の正極作成すなわち活物質と導電材やバインダー等を溶媒でスラリー化し、薄膜状に塗布する際に、スジを引く等が生じる場合がある。
【0362】
なお、異なるメジアン径d50をもつ正極活物質を2種類以上、任意の比率で混合することで、正極作成時の充填性を更に向上させることもできる。
【0363】
メジアン径d50の測定は、0.1質量%ヘキサメタリン酸ナトリウム水溶液を分散媒にして、粒度分布計として堀場製作所社製LA−920用いて、5分間の超音波分散後に測定屈折率1.24に設定して測定する。
【0364】
(6)平均一次粒子径
一次粒子が凝集して二次粒子を形成している場合、正極活物質の平均一次粒子径は、通常0.01μm以上であり、0.05μm以上が好ましく、0.08μm以上が更に好ましく、0.1μm以上が特に好ましく、また、通常3μm以下であり、2μm以下が好ましく、1μm以下更に好ましく、0.6μm以下が特に好ましい。上記範囲を上回ると球状の二次粒子を形成し難く、粉体充填性に悪影響を及ぼしたり、比表面積が大きく低下するために、出力特性等の電池性能が低下する可能性が高くなる場合があるためである。また、上記範囲を下回ると、通常、結晶が未発達であるために充放電の可逆性が劣る等、二次電池の性能を低下させる場合があるためである。
【0365】
なお、平均一次粒子径は、走査型電子顕微鏡(SEM)を用いた観察により測定される。具体的には、10000倍の倍率の写真で、水平方向の直線に対する一次粒子の左右の境界線による切片の最長の値を、任意の50個の一次粒子について求め、平均値をとることにより求められる。
【0366】
(7)BET比表面積
正極活物質のBET比表面積は、BET法を用いて測定した比表面積の値が、通常0.2m・g−1以上であり、0.3m・g−1以上が好ましく、0.4m・g−1以上が更に好ましく、また、通常4.0m・g−1以下であり、2.5m・g−1以下が好ましく、1.5m・g−1以下が更に好ましい。BET比表面積の値が、上記範囲を下回ると、電池性能が低下しやすくなる。また、上記範囲を上回ると、タップ密度が上がりにくくなり、正極活物質形成時の塗布性が低下する場合がある。
【0367】
BET比表面積は、表面積計(大倉理研製全自動表面積測定装置)を用いて測定する。試料に対して窒素流通下150℃で30分間、予備乾燥を行なった後、大気圧に対する窒素の相対圧の値が0.3となるように正確に調整した窒素ヘリウム混合ガスを用いて、ガス流動法による窒素吸着BET1点法によって測定する。該測定で求められる比表面積を、本発明における陽極活物質のBET比表面積と定義する。
【0368】
(8)正極活物質の製造法
正極活物質の製造法としては、本発明の要旨を超えない範囲で特には制限されないが、いくつかの方法が挙げられ、無機化合物の製造法として一般的な方法が用いられる。
【0369】
特に球状ないし楕円球状の活物質を作製するには種々の方法が考えられるが、例えばその1つとして、遷移金属硝酸塩、硫酸塩等の遷移金属原料物質と、必要に応じ他の元素の原料物質を水等の溶媒中に溶解ないし粉砕分散して、攪拌をしながらpHを調節して球状の前駆体を作製回収し、これを必要に応じて乾燥した後、LiOH、LiCO、LiNO等のLi源を加えて高温で焼成して活物質を得る方法が挙げられる。
【0370】
また、別の方法の例として、遷移金属硝酸塩、硫酸塩、水酸化物、酸化物等の遷移金属原料物質と、必要に応じ他の元素の原料物質を水等の溶媒中に溶解又は粉砕分散して、それをスプレードライヤー等で乾燥成型して球状ないし楕円球状の前駆体とし、これにLiOH、LiCO、LiNO等のLi源を加えて高温で焼成して活物質を得る方法が挙げられる。
【0371】
更に別の方法の例として、遷移金属硝酸塩、硫酸塩、水酸化物、酸化物等の遷移金属原料物質と、LiOH、LiCO、LiNO等のLi源と、必要に応じ他の元素の原料物質とを水等の溶媒中に溶解ないし粉砕分散して、それをスプレードライヤー等で乾燥成型して球状ないし楕円球状の前駆体とし、これを高温で焼成して活物質を得る方法が挙げられる。
【0372】
<2−4−2.電極構造と作製法>
以下に、本発明に使用される正極の構成及びその作製法について説明する。
【0373】
(1)正極の作製法
正極は、正極活物質粒子と結着剤とを含有する正極活物質層を、集電体上に形成して作製される。正極活物質を用いる正極の製造は、公知の何れの方法で作製することができる。すなわち、正極活物質と結着剤、並びに必要に応じて導電材及び増粘剤等を乾式で混合してシート状にしたものを正極集電体に圧着するか、又はこれらの材料を液体媒体に溶解又は分散させてスラリーとして、これを正極集電体に塗布し、乾燥することにより、正極活物質層を集電体上に形成させることにより正極を得ることができる。
【0374】
正極活物質の正極活物質層中の含有量は、通常10質量%以上、好ましくは30質量%以上、特に好ましくは50質量%以上、また、通常99.9質量%以下、好ましくは99質量%以下である。正極活物質層中の正極活物質の含有量が、上記範囲を下回ると、電気容量が不十分となる場合があるためである。また、上記範囲を上回ると、正極の強度が不足する場合があるためである。なお、本発明における正極活物質粉体は1種を単独で用いてもよく、異なる組成又は異なる粉体物性の2種以上を任意の組み合わせ及び比率で併用してもよい。
【0375】
(2)導電材
導電材としては、公知の導電材を任意に用いることができる。具体例としては、例えば、銅、ニッケル等の金属材料;天然黒鉛、人造黒鉛等の黒鉛(グラファイト);アセチレンブラック等のカーボンブラック;ニードルコークス等の無定形炭素等の炭素質材料等が挙げられる。なお、これらは、1種を単独で用いてもよく、2種以上を任意の組み合わせ及び比率で併用してもよい。
【0376】
導電材は、正極活物質層中に、通常0.01質量%以上、好ましくは0.1質量%以上、より好ましくは1質量%以上、また、通常50質量%以下、好ましくは30質量%以下、より好ましくは15質量%以下含有するように用いられる。含有量が上記範囲よりも下回ると、導電性が不十分となる場合がある。また、上記範囲よりも上回ると、電池容量が低下する場合がある。
【0377】
(3)結着剤
正極活物質層の製造に用いる結着剤は、非水系電解液や電極製造時用いる溶媒に対して安定な材料であれば、特に限定されない。
【0378】
塗布法の場合は、電極製造時に用いる液体媒体に対して溶解又は分散される材料であればよいが、具体例としては、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリエチレンテレフタレート、ポリメチルメタクリレート、芳香族ポリアミド、セルロース、ニトロセルロース等の樹脂系高分子;SBR(スチレン・ブタジエンゴム)、NBR(アクリロニトリル・ブタジエンゴム)、フッ素ゴム、イソプレンゴム、ブタジエンゴム、エチレン・プロピレンゴム等のゴム状高分子;スチレン・ブタジエン・スチレンブロック共重合体又はその水素添加物、EPDM(エチレン・プロピレン・ジエン三元共重合体)、スチレン・エチレン・ブタジエン・エチレン共重合体、スチレン・イソプレン・スチレンブロック共重合体又はその水素添加物等の熱可塑性エラストマー状高分子;シンジオタクチック−1,2−ポリブタジエン、ポリ酢酸ビニル、エチレン・酢酸ビニル共重合体、プロピレン・α−オレフィン共重合体等の軟質樹脂状高分子;ポリフッ化ビニリデン(PVdF)、ポリテトラフルオロエチレン、フッ素化ポリフッ化ビニリデン、ポリテトラフルオロエチレン・エチレン共重合体等のフッ素系高分子;アルカリ金属イオン(特にリチウムイオン)のイオン伝導性を有する高分子組成物等が挙げられる。これらの物質は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を任意の組み合わせ及び比率で併用してもよい。
【0379】
正極活物質層中の結着剤の割合は、通常0.1質量%以上であり、1質量%以上が好ましく、3質量%以上が更に好ましく、また、通常80質量%以下であり、60質量%以下が好ましく、40質量%以下が更に好ましく、10質量%以下が特に好ましい。結着剤の割合が、上記範囲を下回ると、正極活物質を十分保持できずに正極の機械的強度が不足し、サイクル特性等の電池性能を悪化させてしまう場合がある。また、上記範囲を上回ると、電池容量や導電性の低下につながる場合がある。
【0380】
(4)液体媒体
スラリーを形成するための液体媒体としては、正極活物質、導電材、結着剤、並びに必要に応じて使用される増粘剤を溶解又は分散することが可能な溶媒であれば、その種類に特に制限はなく、水系溶媒と有機系溶媒のどちらを用いてもよい。
【0381】
水系媒体の例としては、例えば、水、アルコールと水との混合媒等が挙げられる。有機系媒体の例としては、ヘキサン等の脂肪族炭化水素類;ベンゼン、トルエン、キシレン、メチルナフタレン等の芳香族炭化水素類;キノリン、ピリジン等の複素環化合物;アセトン、メチルエチルケトン、シクロヘキサノン等のケトン類;酢酸メチル、アクリル酸メチル等のエステル類;ジエチレントリアミン、N,N−ジメチルアミノプロピルアミン等のアミン類;ジエチルエーテル、テトラヒドロフラン(THF)等のエーテル類;N−メチルピロリドン(NMP)、ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド等のアミド類;ヘキサメチルホスファルアミド、ジメチルスルフォキシド等の非プロトン性極性溶媒等を挙げることができる。なお、これらは、1種を単独で用いてもよく、また2種以上を任意の組み合わせ及び比率で併用してもよい。
【0382】
(5)増粘剤
スラリーを形成するための液体媒体として水系媒体を用いる場合、増粘剤と、スチレンブタジエンゴム(SBR)等のラテックスを用いてスラリー化するのが好ましい。増粘剤は、通常、スラリーの粘度を調整するために使用される。
【0383】
増粘剤としては、本発明の効果を著しく制限しない限り制限はないが、具体的には、カルボキシメチルセルロース、メチルセルロース、ヒドロキシメチルセルロース、エチルセルロース、ポリビニルアルコール、酸化スターチ、リン酸化スターチ、カゼイン及びこれらの塩等が挙げられる。これらは、1種を単独で用いても、2種以上を任意の組み合わせ及び比率で併用してもよい。
【0384】
更に増粘剤を使用する場合には、活物質に対する増粘剤の割合は、通常0.1質量%以上、好ましくは0.5質量%以上、より好ましくは0.6質量%以上、また、通常5質量%以下、好ましくは3質量%以下、より好ましくは2質量%以下が望ましい。上記範囲を下回ると著しく塗布性が低下する場合があり、また上記範囲を上回ると、正極活物質層に占める活物質の割合が低下し、電池の容量が低下する問題や正極活物質間の抵抗が増大する場合がある。
【0385】
(6)圧密化
塗布、乾燥によって得られた正極活物質層は、正極活物質の充填密度を上げるために、ハンドプレス、ローラープレス等により圧密化することが好ましい。正極活物質層の密度は、1g・cm−3以上が好ましく、1.5g・cm−3以上がより好ましく、2g・cm−3以上が特に好ましい。また上限は、4g・cm−3以下が好ましく、3.5g・cm−3以下がより好ましく、3g・cm−3以下が特に好ましい。正極活物質層の密度が、上記範囲を上回ると、集電体/活物質界面付近への非水系電解液の浸透性が低下し、特に高電流密度での充放電特性が低下する場合がある。また上記範囲を下回ると、活物質間の導電性が低下し、電池抵抗が増大する場合がある。
【0386】
(7)集電体
正極集電体の材質としては特に制限はなく、公知のものを任意に用いることができる。具体例としては、アルミニウム、ステンレス鋼、ニッケルメッキ、チタン、タンタル等の金属材料;カーボンクロス、カーボンペーパー等の炭素質材料が挙げられる。中でも金属材料、特にアルミニウムが好ましい。
【0387】
集電体の形状としては、金属材料の場合、金属箔、金属円柱、金属コイル、金属板、金属薄膜、エキスパンドメタル、パンチメタル、発泡メタル等が挙げられ、炭素質材料の場合、炭素板、炭素薄膜、炭素円柱等が挙げられる。これらのうち、金属薄膜が好ましい。なお、薄膜は適宜メッシュ状に形成してもよい。
【0388】
集電体の厚さは任意であるが、通常1μm以上であり、3μm以上が好ましく、5μm以上が更に好ましく、また、通常1mm以下であり、100μm以下が好ましく、50μm以下が更に好ましい。薄膜が、上記範囲よりも薄いと、集電体として必要な強度が不足する場合がある。また、薄膜が上記範囲よりも厚いと、取り扱い性が損なわれる場合がある。
【0389】
<2−5.セパレータ>
正極と負極との間には、短絡を防止するために、通常はセパレータを介在させる。この場合、本発明の非水系電解液は、通常はこのセパレータに含浸させて用いる。
【0390】
セパレータの材料や形状については特に制限はなく、本発明の効果を著しく損なわない限り、公知のものを任意に採用することができる。中でも、本発明の非水系電解液に対し安定な材料で形成された、樹脂、ガラス繊維、無機物等が用いられ、保液性に優れた多孔性シート又は不織布状の形態の物等を用いるのが好ましい。
【0391】
樹脂、ガラス繊維セパレータの材料としては、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン等のポリオレフィン、ポリテトラフルオロエチレン、ポリエーテルスルホン、ガラスフィルター等を用いることができる。中でも好ましくはガラスフィルター、ポリオレフィンであり、更に好ましくはポリオレフィンである。これらの材料は1種を単独で用いてもよく、2種以上を任意の組み合わせ及び比率で併用してもよい。
【0392】
上記セパレータの厚さは任意であるが、通常1μm以上であり、5μm以上が好ましく、10μm以上が更に好ましく、また、通常50μm以下であり、40μm以下が好ましく、30μm以下が更に好ましい。セパレータが、上記範囲より薄過ぎると、絶縁性や機械的強度が低下する場合がある。また、上記範囲より厚過ぎると、レート特性等の電池性能が低下する場合があるばかりでなく、非水系電解液二次電池全体としてのエネルギー密度が低下する場合がある。
【0393】
更に、セパレータとして多孔性シートや不織布等の多孔質のものを用いる場合、セパレータの空孔率は任意であるが、通常20%以上であり、35%以上が好ましく、45%以上が更に好ましく、また、通常90%以下であり、85%以下が好ましく、75%以下が更に好ましい。空孔率が、上記範囲より小さ過ぎると、膜抵抗が大きくなってレート特性が悪化する傾向がある。また、上記範囲より大き過ぎると、セパレータの機械的強度が低下し、絶縁性が低下する傾向にある。
【0394】
また、セパレータの平均孔径も任意であるが、通常0.5μm以下であり、0.2μm以下が好ましく、また、通常0.05μm以上である。平均孔径が、上記範囲を上回ると、短絡が生じ易くなる。また、上記範囲を下回ると、膜抵抗が大きくなりレート特性が低下する場合がある。
【0395】
一方、無機物の材料としては、例えば、アルミナや二酸化ケイ素等の酸化物類、窒化アルミや窒化ケイ素等の窒化物類、硫酸バリウムや硫酸カルシウム等の硫酸塩類が用いられ、粒子形状若しくは繊維形状のものが用いられる。
【0396】
形態としては、不織布、織布、微多孔性フィルム等の薄膜形状のものが用いられる。薄膜形状では、孔径が0.01〜1μm、厚さが5〜50μmのものが好適に用いられる。前記の独立した薄膜形状以外に、樹脂製の結着剤を用いて前記無機物の粒子を含有する複合多孔層を正極及び/又は負極の表層に形成させてなるセパレータを用いることができる。例えば、正極の両面に90%粒径が1μm未満のアルミナ粒子を、フッ素樹脂を結着剤として多孔層を形成させることが挙げられる。
【0397】
<2−6.電池設計>
[電極群]
電極群は、前述の正極板と負極板とを前述のセパレータを介してなる積層構造のもの、及び前述の正極板と負極板とを前述のセパレータを介して渦巻き状に捲回した構造のものの何れでもよい。電極群の体積が電池内容積に占める割合(以下、電極群占有率と称する)は、通常40%以上であり、50%以上が好ましく、また、通常90%以下であり、80%以下が好ましい。電極群占有率が、上記範囲を下回ると、電池容量が小さくなる。また、上記範囲を上回ると空隙スペースが少なく、電池が高温になることによって部材が膨張したり電解質の液成分の蒸気圧が高くなったりして内部圧力が上昇し、電池としての充放電繰り返し性能や高温保存等の諸特性を低下させたり、更には、内部圧力を外に逃がすガス放出弁が作動する場合がある。
【0398】
[集電構造]
集電構造は特に限定されるものではないが、本発明の非水系電解液による放電特性の向上をより効果的に実現するには、配線部分や接合部分の抵抗を低減する構造にすることが好ましい。この様に内部抵抗を低減させた場合、本発明の非水系電解液を使用した効果は特に良好に発揮される。
【0399】
電極群が前述の積層構造のものでは、各電極層の金属芯部分を束ねて端子に溶接して形成される構造が好適に用いられる。1枚の電極面積が大きくなる場合には、内部抵抗が大きくなるので、電極内に複数の端子を設けて抵抗を低減することも好適に用いられる。電極群が前述の捲回構造のものでは、正極及び負極にそれぞれ複数のリード構造を設け、端子に束ねることにより、内部抵抗を低くすることができる。
【0400】
[外装ケース]
外装ケースの材質は用いられる非水電解質に対して安定な物質であれば特に限定されるものではない。具体的には、ニッケルめっき鋼板、ステンレス、アルミニウム又はアルミニウム合金、マグネシウム合金等の金属類、又は、樹脂とアルミ箔との積層フィルム(ラミネートフィルム)が用いられる。軽量化の観点から、アルミニウム又はアルミニウム合金の金属、ラミネートフィルムが好適に用いられる。
【0401】
前記金属類を用いる外装ケースでは、レーザー溶接、抵抗溶接、超音波溶接により金属同士を溶着して封止密閉構造とするもの、若しくは、樹脂製ガスケットを介して前記金属類を用いてかしめ構造とするものが挙げられる。前記ラミネートフィルムを用いる外装ケースでは、樹脂層同士を熱融着することにより封止密閉構造とするもの等が挙げられる。シール性を上げるために、前記樹脂層の間にラミネートフィルムに用いられる樹脂と異なる樹脂を介在させてもよい。特に、集電端子を介して樹脂層を熱融着して密閉構造とする場合には、金属と樹脂との接合になるので、介在する樹脂として極性基を有する樹脂や極性基を導入した変成樹脂が好適に用いられる。
【0402】
[保護素子]
前述の保護素子として、異常発熱や過大電流が流れた時に抵抗が増大するPTC(Positive Temperature Coefficient)、温度ヒューズ、サーミスター、異常発熱時に電池内部圧力や内部温度の急激な上昇により回路に流れる電流を遮断する弁(電流遮断弁)等が挙げられる。前記保護素子は高電流の通常使用で作動しない条件のものを選択することが好ましく、高出力の観点から、保護素子がなくても異常発熱や熱暴走に至らない設計にすることがより好ましい。
【0403】
[外装体]
本発明の非水系電解液二次電池は、通常、上記の非水系電解液、負極、正極、セパレータ等を外装体内に収納して構成される。この外装体に制限はなく、本発明の効果を著しく損なわない限り公知のものを任意に採用することができる。
【0404】
具体的に、外装体の材質は任意であるが、通常は、例えばニッケルメッキを施した鉄、ステンレス、アルミニウム又はその合金、ニッケル、チタン等が用いられる。
【0405】
また、外装体の形状も任意であり、例えば円筒型、角形、ラミネート型、コイン型、大型等の何れであってもよい。
【0406】
ハロゲン原子を有するカーボネートと「モノフルオロリン酸塩及び/又はジフルオロリン酸塩」とを非水系電解液に含有させると、その非水系電解液を用いた非水系電解液二次電池の高温環境下における保存特性を向上させることが可能となる。この理由の詳細は明らかではないが、ハロゲン原子を有するカーボネートと「モノフルオロリン酸塩及び/又はジフルオロリン酸塩」とが同時に電解液中に存在することで、何らかの形で保護被膜の特性を向上させることに寄与しているものと推察される。また、ハロゲン原子を有するカーボネートを溶媒として用いることで、非水系電解液の耐酸化性が向上するため、正極活物質との反応も抑制され、保存特性の向上に寄与しているものと推察される。
【実施例】
【0407】
以下、実施例及び比較例を挙げて本発明を更に具体的に説明するが、本発明は、その要旨を超えない限り、これらの実施例に限定されるものではない。
【0408】
実施例1
<非水系電解液二次電池の作製−1>
[正極の作製]
正極活物質としてLiCoO(日本化学工業社製「C5」)85重量部を用い、カーボンブラック6重量部とポリフッ化ビニリデン(呉羽化学社製、商品名「KF−1000」)9重量部を混合し、N−メチル−2−ピロリドンを加えスラリー化し、これを厚さ15μmのアルミニウム箔の両面に均一に塗布、乾燥した後、正極活物質層の密度が3.0g/cmになるようにプレスして正極とした。
【0409】
[負極の作製]
人造黒鉛粉末KS−44(ティムカル社製、商品名)98重量部に、増粘剤、バインダーとしてそれぞれ、カルボキシメチルセルロースナトリウムの水性ディスパージョン(カルボキシメチルセルロースナトリウムの濃度1質量%)100重量部、及び、スチレン−ブタジエンゴムの水性ディスパージョン(スチレン−ブタジエンゴムの濃度50質量%)2重量部を加え、ディスパーザーで混合してスラリー化した。得られたスラリーを厚さ12μmの銅箔の片面に均一に塗布して乾燥し、その後、負極活物質層の密度が1.5g/cmになるようにプレスして負極とした。
【0410】
[非水系電解液]
乾燥アルゴン雰囲気下、表1に記載の割合で混合した非水系溶媒に、それぞれ十分に乾燥したLiPFを1mol/Lを溶解させて非水電解液を調製し、更にモノフルオロリン酸塩及び/又はジフルオロリン酸塩を、それぞれ表1に記載の濃度になるように溶解させて、所望する非水系電解液とした。
【0411】
[非水系電解液二次電池の組立]
上記の正極、負極、及びポリエチレン製のセパレータを、負極、セパレータ、正極、セパレータ、負極の順に積層して電池要素を作製した。この電池要素をアルミニウム(厚さ40μm)の両面を樹脂層で被覆したラミネートフィルムからなる袋内に正極負極の端子を突設させながら挿入した後、非水系電解液を袋内に0.5mL注入し、真空封止を行ない、シート状電池を作製した。
【0412】
<非水系電解液二次電池の高温保存特性の評価>
上記シート状の電池を、電極間の密着性を高めるためにガラス板で挟んだ状態で、25℃において0.2Cに相当する定電流で充電終止電圧4.2V、放電終止電圧3Vで充放電を3サイクル行って安定させ、4サイクル目を0.5Cに相当する電流で充電終止電圧4.4Vまで充電し、充電電流値が0.05Cに相当する電流値になるまで充電を行う4.4V−定電流定電圧充電(CCCV充電)(0.05Cカット)後、0.2Cに相当する定電流値で3V放電を行い高温保存前の放電容量を測定した。再度、4.4V−CCCV(0.05Cカット)充電を行った後、85℃、24時間の条件で高温保存を行った。
【0413】
この高温保存の前後で、シート状電池をエタノール浴中に浸して、体積の変化から発生したガス量を求めた。保存後の電池を25℃において0.2Cの定電流で放電終始電圧3Vまで放電させ、保存試験後の残存容量を得た。再度、4.4V−CCCV(0.05Cカット)充電を行い、0.2Cに相当する電流値で3Vまで放電させ0.2C容量を測定し保存試験後の0.2C容量を得て、これを回復容量とした。ここで、1Cとは1時間で満充電できる電流値を表す。
【0414】
高温保存前の放電容量を100とした場合の残存容量及び回復容量(%)を表1に示した。
【0415】
実施例2〜実施例55、比較例1〜比較例12
表1〜表5に記載した非水系溶媒、モノフルオロリン酸塩及び/又はジフルオロリン酸塩を、表1〜表5に記載した含有量で用いた以外は、実施例1と同様にして所望の水系電解液を調製し、非水系電解液二次電池の作成後、実施例1と同様に、高温保存特性の評価を行った。結果を表1〜表5に示す。
【0416】
【表1】

【0417】
【表2】

【0418】
【表3】

【0419】
【表4】

【0420】
【表5】

【0421】
表1〜表5より明らかなように、非水系電解液が、少なくとも1種のハロゲン原子を有するカーボネートを含んでいると共に、モノフルオロリン酸塩及び/又はジフルオロリン酸塩を含有する本発明の非水系電解液を用いて作成した非水系電解液二次電池では、これら化合物の一方を含有する非水系電解液(比較例2、比較例3、比較例5〜12)、又は、これら化合物の両方を含有しない非水系電解液(比較例1、比較例4)を用いて作成した非水系電解液二次電池と比較すると、高温保存時の膨れが抑制されると共に残存容量及び回復容量で示される電池特性の劣化が抑制されている。
【0422】
具体的には、実施例1ないし実施例55で作成した電解液は、比較例1及び比較例4と比べて高温保存時の膨れが抑制され、電池特性の劣化も抑制されている。また、ハロゲン原子を有するカーボネート、あるいは、モノフルオロリン酸塩及び/又はジフルオロリン酸塩の何れか一方のみが含有されている比較例と比べても、その化合物の両方を含む実施例では、高温保存時の膨れの抑制並びに電池特性の劣化の抑制の双方に改善が認められる(例えば、実施例1と比較例2、実施例1ないし実施例8と比較例3、実施例13と比較例5)。また、非水系電解液に特定カーボネートの1種であるビニレンカーボネートを含む場合にも同様な効果が認められた。
【0423】
実施例56〜実施例74、比較例13〜比較例24
<非水系電解液二次電池の作製−2>
次に、上記実施例1で用いた負極を、以下に記載のケイ素合金負極に代え、非水系電解液を、表6〜表8の各実施例及び比較例の列における、非水系溶媒、「モノフルオロリン酸塩及び/又はジフルオロリン酸塩」の欄に記載の化合物を、同欄に記載の割合で混合し、更に、電解質塩として、LiPFを1mol/Lの濃度となるように溶解して、所望の非水系電解液(実施例56〜実施例74及び比較例13〜比較例24の非水系電解液)を調製して用いた以外は。上記実施例1と同様にして非水系電解液二次電池を作成した。
【0424】
[ケイ素合金負極の作製]
負極活物質として、非炭素材料であるケイ素73.2重量部及び銅8.1重量部と、人造黒鉛粉末(ティムカル社製商品名「KS−6」)12.2重量部とを用い、これらにポリフッ化ビニリデン(poly vinylidene fluoride)(以下、「PVDF」と略記する)を12重量部含有するN−メチルピロリドン溶液54.2重量部、及び、N−メチルピロリドン50重量部を加え、ディスパーザーで混合してスラリー状とした。得られたスラリーを、負極集電体である厚さ18μmの銅箔上に均一に塗布し、一旦自然乾燥した後、最終的には85℃で一昼夜減圧乾燥した。その後、電極密度が1.5g/cm程度となるようにプレスして負極とした。
【0425】
<非水系電解液二次電池の高温保存特性の評価>
上記シート状の電池を、電極間の密着性を高めるためにガラス板で挟んだ状態で、25℃において、0.2Cに相当する定電流で充電終止電圧4.2V、放電終止電圧3Vで充放電を3サイクル行って安定させ、4サイクル目を0.5Cに相当する電流で充電終止電圧4.2Vまで充電し、充電電流値が0.05Cに相当する電流値になるまで充電を行う4.2V−定電流定電圧充電(CCCV充電)(0.05Cカット)後、0.2Cに相当する定電流値で3V放電を行い、高温保存前の放電容量を測定した。再度、4.2V−CCCV(0.05Cカット)充電を行った後、85℃、3日間の条件で高温保存を行った。
【0426】
この高温保存の前後で、シート状電池をエタノール浴中に浸して、体積の変化から発生したガス量を求めた。保存後の電池を25℃において、0.2Cの定電流で放電終始電圧3Vまで放電させ、保存試験後の残存容量を得た。再度、4.2V−CCCV(0.05Cカット)充電を行い、0.2Cに相当する電流値で3Vまで放電させ、0.2C容量を測定し保存試験後の0.2C容量を得て、これを回復容量とした。ここで、1Cとは1時間で満充電できる電流値を表す。
【0427】
高温保存前の放電容量を100とした場合の残存容量及び回復容量(%)を表6〜表8に示した。
【0428】
【表6】

【0429】
【表7】

【0430】
【表8】

【0431】
表6〜表8より明らかなように、負極活物質に非炭素材料であるケイ素を含有する場合においても、炭素材料を活物質としても用いた場合同様、少なくとも1種のハロゲン原子を有するカーボネートを含んでいると共に、モノフルオロリン酸塩及び/又はジフルオロリン酸塩を含有する本発明の非水系電解液(実施例56ないし実施例74)を用いて作成した非水系電解液二次電池では、これら化合物の一方を含有する非水系電解液(比較例14、比較例15、比較例17〜24)、又は、これら化合物の両方を含有しない非水系電解液(比較例13、16)を用いて作成した非水系電解液二次電池と比較すると、高温保存時の膨れが抑制されると共に、残存容量及び回復容量で示される電池特性の劣化が抑制されていることが認められた。また、非水系電解液に特定カーボネートの1種であるビニレンカーボネートを含む場合にも同様な効果が認められた。
【産業上の利用可能性】
【0432】
本発明の非水系電解液によれば、非水系電解液二次電池の電解液の分解を抑制し、電池を高温環境下で使用した際に電池の劣化を抑制すると共に高容量で、保存特性、サイクル特性に優れた高エネルギー密度の非水系電解液二次電池を製造することができる。従って、非水系電解液二次電池が用いられる電子機器等の各種の分野において好適に利用できる。
【0433】
本発明の二次電池用非水系電解液や非水系電解液二次電池の用途は特に限定されず、公知の各種の用途に用いることが可能である。具体例としては、ノートパソコン、ペン入力パソコン、モバイルパソコン、電子ブックプレーヤー、携帯電話、携帯ファックス、携帯コピー、携帯プリンター、ヘッドフォンステレオ、ビデオムービー、液晶テレビ、ハンディークリーナー、ポータブルCD、ミニディスク、トランシーバー、電子手帳、電卓、メモリーカード、携帯テープレコーダー、ラジオ、バックアップ電源、モーター、自動車、バイク、原動機付自転車、自転車、照明器具、玩具、ゲーム機器、時計、電動工具、ストロボ、カメラ等を挙げることができる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
イオンを吸蔵及び放出し得る負極及び正極と非水系電解液とを備える非水系電解液二次電池に用いられる非水系電解液であって、該非水系電解液が、電解質と非水系溶媒とを有し、該非水系溶媒がハロゲン原子を有するカーボネートを含有し、該ハロゲン原子を有するカーボネートが非水系溶媒全体に対して0.001質量%以上10質量%以下のハロゲン原子を有する環状カーボネート、及び、ハロゲン原子を有する鎖状カーボネートのうち少なくとも一方であると共に、モノフルオロリン酸塩及び/又はジフルオロリン酸塩を含有し、更に非水系溶媒全体に対して0.001質量%以上40質量%以下の不飽和結合を有するカーボネートを含有することを特徴とする非水系電解液電池用非水系電解液。
【請求項2】
ハロゲン原子を有するカーボネートが、環状カーボネートであることを特徴とする請求項1に記載の非水系電解液二次電池用非水系電解液。
【請求項3】
ハロゲン原子を有する環状カーボネートが、フルオロエチレンカーボネート、4,4−ジフルオロエチレンカーボネート、4,5−ジフルオロエチレンカーボネート、4−フルオロ−4−メチルエチレンカーボネート、4−フルオロ−5−メチルエチレンカーボネート、4−(フルオロメチル)−エチレンカーボネート、4−(トリフルオロメチル)−エチレンカーボネートよりなる群から選ばれる少なくとも1種の化合物であることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の非水系電解液二次電池用非水系電解液。
【請求項4】
ハロゲン原子を有するカーボネートが、鎖状カーボネートであることを特徴とする請求項1に記載の非水系電解液二次電池用非水系電解液。
【請求項5】
ハロゲン原子を有する鎖状カーボネートが、フルオロメチルメチルカーボネート、ビス(フルオロメチル)カーボネート、ジフルオロメチルメチルカーボネート、2,2−ジフルオロエチルメチルカーボネート、エチル−(2,2−ジフルオロエチル)カーボネート、ビス(2,2−ジフルオロエチル)カーボネート、2,2,2−トリフルオロエチルメチルカーボネート、エチル−(2,2,2−トリフルオロエチル)カーボネート、ビス(2,2,2−トリフルオロエチル)カーボネートよりなる群から選ばれる少なくとも1種の化合物であることを特徴とする請求項1又は請求項4に記載の非水系電解液二次電池用非水系電解液。
【請求項6】
ハロゲン原子を有する鎖状カーボネートが、非水系溶媒全体に対して0.001質量%〜100質量%の割合で含まれていることを特徴とする請求項4又は請求項5に記載の非水系電解液二次電池用非水系電解液。
【請求項7】
ハロゲン原子を有する鎖状カーボネートが、非水系溶媒全体に対して0.001質量%〜10質量%の割合で含まれていることを特徴とする請求項4ないし請求項6の何れかの請求項に記載の非水系電解液二次電池用非水系電解液。
【請求項8】
モノフルオロリン酸塩及び/又はジフルオロリン酸塩が、非水系電解液全体に対して、合計量で、0.001質量%〜5質量%含まれていることを特徴とする請求項1ないし請求項7の何れかの請求項に記載の非水系電解液二次電池用非水系電解液。
【請求項9】
炭素質材料を含む活物質からなる負極を有する非水系電解液二次電池に用いられること特徴とする請求項1ないし請求項8の何れかの請求項に記載の非水系電解液二次電池用非水系電解液。
【請求項10】
Si原子、Sn原子及びPb原子よりなる群から選ばれる少なくとも1種の原子を有する活物質からなる負極を有する非水系電解液二次電池に用いられることを特徴とする請求項1ないし請求項8の何れかの請求項に記載の非水系電解液二次電池用非水系電解液。
【請求項11】
リチウムイオンを吸蔵・放出可能な負極及び正極、並びに非水系電解液を含む非水系電解液二次電池であって、該非水系電解液が請求項1ないし請求項10の何れかの請求項に記載の非水系電解液二次電池用非水系電解液であることを特徴とする非水系電解液二次電池。

【公開番号】特開2013−55074(P2013−55074A)
【公開日】平成25年3月21日(2013.3.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−279596(P2012−279596)
【出願日】平成24年12月21日(2012.12.21)
【分割の表示】特願2007−116442(P2007−116442)の分割
【原出願日】平成19年4月26日(2007.4.26)
【出願人】(000005968)三菱化学株式会社 (4,356)
【Fターム(参考)】