説明

二次電池製造方法

【課題】セパレータの潰れや折れ曲がりを抑制する二次電池製造方法の提供。
【解決手段】巻回可能に支持された巻芯220でセパレータ113を挟んで固定し、巻芯220を回転させながらセパレータ113の間に正極板111と負極板112を挟んで巻回して巻回電極体110を形成し、巻回電極体110から巻芯220を取り除いて二次電池100を形成する二次電池製造方法において、巻芯220にセパレータ113の端部を挟む際に、セパレータ113の張力を第1設定張力T1とし、その状態で、巻芯220でセパレータ113の端部を挟んで、巻芯220に対してセパレータ113を固定する保持工程と、セパレータ113の張力を第2設定張力T2とし、巻芯220を回転させて正極板111と負極板112を挟み、巻回電極体110を形成する巻回工程を有し、第1設定張力T1は第2設定張力T2より張力が高く設定されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、巻芯を用いて二次電池に用いる正極及び負極をセパレータに挟んで巻回する技術に関し、詳しくは巻芯にセパレータを挟む際のセパレータの潰れや折れ曲がりの発生を抑制する技術に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、自動車の駆動力としてモータを用いるケースが増えてきている。これに伴い、車載用の電池もニッケル水素二次電池よりもエネルギー密度の高いリチウムイオン二次電池に代表される非水系二次電池を用いることが検討されている。そしてリチウムイオン二次電池も、高入出力化や大容量化の要求から様々な検討がなされている。
【0003】
特許文献1には、巻回型電極の製造装置に関する技術が開示されている。これは、回転可能に軸支された巻芯と、巻芯を回転させる回転駆動機構と巻芯の回転で積層、捲装されるセパレートシート及び正極シート及び負極シートをそれぞれガイド走向させるガイドブロックと、巻芯へガイド供給するシートに張力を与える加圧ローラと、巻芯への積層、捲装によって形成された巻回体外周を圧着的に保持する保持ブロックとを有する巻回型電極の製造装置であって、ガイドブロックの少なくとも電極シートが走向摺動する面には、供給側が直線的平坦とし、巻回体に近接する領域を曲面とし、それぞれ形成している。これによって、積層を高緊縛とし高品質とできる巻回型電極を歩留まり良く製造できる製造装置が実現できる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2001―332289号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1に開示される技術で二次電池を製造する場合には、以下に説明する課題があると考えられる。
【0006】
特許文献1に開示される技術において、巻芯は2つ割りの構造で、巻芯にセパレータを挟んで固定していると推測される。しかしながら、先端を2分割し隙間を設けた巻芯でセパレータを挟む構造である場合、巻芯の先端に設けられた隙間が少ないと、巻芯でセパレータを挟む際に巻芯でセパレータを潰してしまう問題が生じる。巻芯の先端の隙間は、巻芯を回転させる必要がある他、回りの機器との関係で構造的にあまり大きくすることが出来ないという事情がある。
【0007】
また、セパレータは樹脂性でかつ微細な穴が沢山設けられた多孔質膜であり、強い張力をかけると伸びたり皺になったりするなどの弊害がある他、巻回する際に一定以上の張力をかけると巻きズレを生じるなどの事情もあって、巻芯の先端に設けられた隙間にセパレータを挿入することを難しくしている。更に、非水系二次電池の製造において、高入出力化や大容量化の要求は高く、セパレータの薄膜化、高多孔化されることが望ましい。この方策の1つとしてセパレータにセラミックスを塗布する方法が提案されている。しかしながら、セラミックス等の材料をポリオレフィン等からなるセパレータの片面に塗布すると、熱膨張係数の違いから製造工程においてカールが発生し易くなる。このため、巻芯に設けられた隙間への挿入はより困難となる。これらの問題について、特許文献1には言及されていない。
【0008】
そこで、本発明はこのような課題を解決するために、セパレータを巻芯に挿入する際に発生するセパレータの潰れや折れ曲がりによる不良を抑制する二次電池製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
前記目的を達成するために、本発明の一態様による二次電池製造方法は以下のような特徴を有する。
【0010】
(1)巻回可能に支持された巻芯でセパレータを挟んで固定し、前記巻芯を回転させながら前記セパレータの間に正極体と負極体を挟んで巻回して巻回電極体を形成し、前記巻回電極体から前記巻芯を取り除いて二次電池を形成する二次電池製造方法において、前記巻芯に前記セパレータの端部を挟む際に、前記セパレータの張力を第1設定値とし、その状態で、前記巻芯で前記セパレータの端部を挟んで、前記巻芯に対して前記セパレータを固定する保持工程と、前記セパレータの張力を第2設定値とし、前記巻芯を回転させて正極体と負極体を挟み、前記巻回電極体を形成する巻回工程を有し、前記第1設定値は前記第2設定値より張力が高く設定されていることを特徴とする。
【0011】
(2)(1)に記載される二次電池製造方法において、前記第1設定値が前記セパレータの幅100mmに対して、200gf〜450gfの間の値に設定されることが好ましい。
【0012】
(3)(1)又は(2)に記載される二次電池製造方法において、前記セパレータは多層構造となっていることが好ましい。
【0013】
(4)(3)に記載される二次電池製造方法において、前記セパレータは表面にセラミックス粉末を用いた耐熱層を有し、該耐熱層が前記多層構造のうち前記セパレータの片面に塗布された1層を構成していることが好ましい。
【発明の効果】
【0014】
本発明の二次電池製造方法の態様がこのような特徴を有することで、以下に説明するような作用、効果が得られる。
【0015】
上記(1)に記載の態様は、巻回可能に支持された巻芯でセパレータを挟んで固定し、巻芯を回転させながらセパレータの間に正極体と負極体を挟んで巻回して巻回電極体を形成し、巻回電極体から巻芯を取り除いて二次電池を形成する二次電池製造方法において、巻芯にセパレータの端部を挟む際に、セパレータの張力を第1設定値とし、その状態で、巻芯でセパレータの端部を挟んで、巻芯に対してセパレータを固定する保持工程と、セパレータの張力を第2設定値とし、巻芯を回転させて正極体と負極体を挟み、巻回電極体を形成する巻回工程を有し、第1設定値は第2設定値より張力が高く設定されているものである。
【0016】
二次電池の巻回電極体を製造するにあたり、巻芯でセパレータを挟む際に、セパレータの張力を第2設定値よりも張力が高く設定されている第1設定値となるように調整することで、セパレータと巻芯との干渉を防ぎ、セパレータの潰れや折れ曲がりによる不良を抑制することができる。課題に示したように、巻芯の先端に設けられた隙間はセパレータ2枚を挿入するには狭く、セパレータの特性上の問題や巻回する際にセパレータや電極板に張力をかけておくとズレや皺などの原因になりやすいなどの問題がある。しかし、巻芯の先端に設けられた隙間にセパレータを挿入する際には、セパレータのみの張力が問題となるため、張力を付与しても巻回時のズレに繋がらない。また、張力を付与することで、セパレータの弛みが少なくなり、巻芯の先端の隙間に挿入し易くなる。こうして、セパレータを巻芯に挿入する際に発生するセパレータの潰れや折れ曲がりによる不良を抑制することが可能となる。
【0017】
また、上記(2)に記載の態様は、(1)に記載される二次電池製造方法において、第1設定値がセパレータの幅100mmに対して、200gf〜450gfの間の値に設定されるものである。セパレータにかける張力は、あまり高すぎると多孔質膜であるために皺が寄ったり伸びたりといった問題が生じるため、200gf〜450gfの間の値に設定し、セパレータが弛まずかつ伸びたり皺が寄ったりしない張力を付与して、巻芯の先端の隙間にセパレータを挿入することで、セパレータを巻芯に挿入する際に発生するセパレータの潰れや折れ曲がりによる不良を抑制することが可能となる。
【0018】
また、上記(3)に記載の態様は、(1)又は(2)に記載される二次電池製造方法において、セパレータは多層構造となっているものである。例えば課題にも示したが、セパレータにセラミックス粉末などを塗布して多孔体層を形成することで耐熱層を有していることで、短絡に強くなる機能を備えることが出来る。しかし、セパレータは樹脂材料であるのに対し、多孔体層を形成するのはセラミックスであるので、両者で熱膨張係数が異なり、この熱膨張係数の異なる2つの層があることで、巻回電極体を製造している最中に熱膨張係数の小さい側にカールしてしまうという問題が発生する。このように、セパレータに異種の材料を用いて多層構造とすることで、セパレータの高機能化を図ることができ、かつ、セパレータが弛まずかつ伸びたり皺が寄ったりしない張力を付与して、巻芯の先端の隙間にセパレータを挿入することで、セパレータを巻芯に挿入する際に発生するセパレータの潰れや折れ曲がりによる不良を抑制することが可能となる。この結果、セパレータを巻芯に挿入する際に発生するセパレータの潰れや折れ曲がりによる不良を抑制することが可能となる。
【0019】
また、上記(4)に記載の態様は、(3)に記載される二次電池製造方法において、セパレータは表面にセラミックス粉末を用いた耐熱層を有し、耐熱層がセパレータの片面に塗布された多層構造のうち1層を構成しているものである。セパレータに耐熱層を用いると、二次電池の製造時に異物混入した場合でも短絡事故の防止を期待出来る。そして、耐熱層がセパレータの片面に塗布されているために、前述したように熱膨張係数の違いから片側にカールしてしまうが、セパレータを巻芯に挿入する際に張力を付与することで、パレータを巻芯に挿入する際に発生するセパレータの潰れや折れ曲がりによる不良を抑制することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】本実施形態の、二次電池の斜視図である。
【図2】本実施形態の、二次電池の断面図である。
【図3】本実施形態の、巻回電極体の部分断面図である。
【図4】本実施形態の、巻回装置の模式図である。
【図5】本実施形態の、巻芯でセパレータを挟む様子を示した模式斜視図である。
【図6】本実施形態の、巻芯でセパレータを挟む際の模式斜視図である。
【図7】本実施形態の、巻回電極体の作成手順を示すフローである。
【図8】本実施形態の、セパレータに付与する張力に関するグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0021】
まず、本発明の実施形態について説明する。
【0022】
図1に、本実施形態の二次電池100の斜視図を示す。図2に、二次電池100の断面図を示す。なお、巻回電極体110は模式的に示してあり内周側を省略している。図3に、巻回電極体110の部分断面図を示す。二次電池100は、非水電解質系のリチウムイオン二次電池であり、帯状の正極板111及び負極板112がセパレータ113に挟まれて巻回された巻回電極体110を有し、電池ケース180に納められてなる。
【0023】
正極板111は集電箔111Aとして15μm程度の厚みのアルミニウム箔を用いており、その集電箔111Aの表面に正極活物質111Bが塗布されている。正極活物質111Bはニッケル、コバルト、マンガンを主成分としたものが用いられる。負極板112は集電箔112Aとして10μm程度の厚みの銅箔を用いており、集電箔112Aの表面に負極活物質112Bが塗布されている。負極活物質112Bはグラファイトを主成分としたものが用いられる。
【0024】
セパレータ113は第1セパレータ113aと第2セパレータ113bの2枚が用いられる。セパレータ113はポリオレフィン系の単層セパレータ113Aが用いられ厚みは20μm程度である。多孔質膜であるセパレータ113の表面の一方にはアルミナ等の耐熱性に優れたセラミックス粉末を用いた無機フィラーであり、多孔質層113Bを形成している。したがって、セパレータ113は単層の単層セパレータ113Aと多孔質層113Bとの2層構造となっている。なお、第1セパレータ113aと第2セパレータ113bは便宜上呼び分けるが同じものである。
【0025】
これら、正極板111、負極板112、セパレータ113が巻回されたものが、巻回電極体110であり、巻回電極体110は電池ケース180に納められている。
【0026】
電池ケース180は、共にアルミニウム製の電池ケース本体181及び封口蓋182を有している。このうち電池ケース本体181は有底矩形箱形であり、この電池ケース180と巻回電極体110との間には、図示しない箱状に折り曲げた樹脂製の絶縁フィルムが介在させてある。また、封口蓋182は矩形板状であり、巻回電極体110を挿入した電池ケース本体181の開口を閉塞して、この電池ケース本体181に溶接される。この封口蓋182には、巻回電極体110と接続する正極集電部材191及び負極集電部材192が備えられる。
【0027】
正極集電部材191の先端に位置する正極端子部191A及び負極集電部材192の先端に位置する負極端子部192Aは、封口蓋182を貫通し、蓋表面182aから突出して保持される。正極端子部191A及び負極端子部192Aと封口蓋182との間には、それぞれ絶縁性の樹脂からなる絶縁部材195が介在し、互いを絶縁している。さらに、この封口蓋182には矩形板状の安全弁197も封着されている。
【0028】
巻回電極体110は電池ケース本体181に納められる際に、図2に示すように扁平に潰されて納められる。巻回電極体110の正極板111は正極集電部材191の一端に接続され、負極板112は負極集電部材192の一端に接続される。
【0029】
巻回電極体110は、図3に示すように外周側から第1セパレータ113a、負極板112、第2セパレータ113b、正極板111と順番に配置されるように複数周巻回されている。正極板111及び負極板112の短手方向には未塗工部が設けられており、未塗工部側が正極集電部材191及び負極集電部材192側に配置されるように巻回されている。そして、セパレータ113は正極板111及び負極板112を切り分けるように配置された上で、巻回電極体110の最外周にセパレータ113が複数周巻回されて形成されている。
【0030】
次に、巻回電極体110を製造する巻回装置200の説明を行う。図4に、巻回装置200の模式図を示す。巻回装置200は、正極供給リール241、負極供給リール243、第1セパレータ供給リール242、第2セパレータ供給リール244を備え、巻芯220が回転することで巻回電極体110を形成する装置である。正極供給リール241には帯状正極211が、正極活物質111Bが塗工された状態で巻かれている。負極供給リール243には帯状負極213が、負極活物質112Bが塗工された状態で巻かれている。なお帯状正極211と正極板111、帯状負極213と負極板112はそれぞれ同一のものであるが、帯状正極211及び帯状負極213は、正極板111及び負極板112の長さよりも長いので、便宜上呼び分けることとしている。
【0031】
また、第1セパレータ供給リール242及び第2セパレータ供給リール244には第1帯状セパレータ212及び第2帯状セパレータ214が、それぞれ多孔質層113Bが塗工された状態で巻かれている。そして、第1帯状セパレータ212は、第1セパレータ113aに、第2帯状セパレータ214は第2セパレータ113bに対応する。第1帯状セパレータ212及び第2帯状セパレータ214も、帯状正極211及び帯状負極213と同様に、巻かれる長さが違っているので便宜的に呼び分けている。
【0032】
巻回装置200には、張力調整機構250、エッジ検出部252、補正機構254、押付部材230が、制御部260と電気的に接続されて備えられている。張力調整機構250はテンションローラ247と、ダンサーローラ248が備えられ、制御部260に接続される揺動検出部264と付勢手段248bによって、揺動軸248a、揺動支持点248c、第1ローラ248d、第2ローラ248e及びテンションローラ247を連携させて、帯状正極211の張力を調整している。なお、図4では省略して示しているが、この張力調整機構250と同様のものが第1帯状セパレータ212、帯状負極213及び第2帯状セパレータ214を調整するためにそれぞれ備えられている。
【0033】
エッジ検出部252は巻芯220に巻き取られる帯状正極211の縁部の位置を検出する装置である。補正機構254は巻芯220に巻き取られる帯状正極211の幅方向の位置を補正する機構である。帯状正極211の位置を制御する機構と同様の機構によって、第1帯状セパレータ212、帯状負極213、第2帯状セパレータ214の位置も制御される。この他に、制御部260に接続される外径検出部262、張力検出部266、設定部281、282、283等や、押付部材230に備えられたローラ232やアクチュエータ234によって、巻回電極体110の巻回が制御される。詳しくは特開2010−55962号公報などを参照されたい。
【0034】
図5に、巻芯を前進させてセパレータを挟む様子を模式図に示す。図6に、巻芯220でセパレータ113を挟む際の模式斜視図を示す。巻芯220は接続されるアクチュエータ222によって回転されるが、この巻芯220は、図5及び図6に示すように中央で2分割でき、その隙間Sに第1帯状セパレータ212及び第2帯状セパレータ214を挟み込める構造となっている。巻芯220は進退機能が備えられて、図5及び図6に示すように第1帯状セパレータ212及び第2帯状セパレータ214に対して、前進し隙間Sに第1帯状セパレータ212及び第2帯状セパレータ214を挿入した後に隙間Sを閉じて第1帯状セパレータ212及び第2帯状セパレータ214を挟み込み保持する。
【0035】
第1帯状セパレータ212及び第2帯状セパレータ214は、巻芯220が退避状態にある段階で、グリッパー240によって保持される。この状態で、第1帯状セパレータ212の張力を調整する張力調整機構250と、第2帯状セパレータ214の張力を調整する張力調整機構250によって、所定の張力を付与する。
【0036】
図7に、巻回電極体を作成する際のフローを示す。フローは簡易なものであり、説明が不要だと思われる手順は省略して示している。
【0037】
S1では、セパレータ113を搬送する。セパレータ113は第1帯状セパレータ212と第2帯状セパレータ214の2枚が用意されており、この第1帯状セパレータ212及び第2帯状セパレータ214を所定の位置まで搬送する。そしてS2に移行する。
【0038】
S2では、セパレータ113を保持する。第1帯状セパレータ212及び第2帯状セパレータ214を所定の位置まで搬送した後にグリッパー240によって保持する。この状態で、張力調整機構250によって第1帯状セパレータ212及び第2帯状セパレータ214に所定の張力が付与される。第1帯状セパレータ212及び第2帯状セパレータ214の幅は約100mmであり、それぞれ400gfの張力が付与されている。そしてS3に移行する。
【0039】
S3では、巻芯220を突出させる。巻芯220を第1帯状セパレータ212及び第2帯状セパレータ214に対して巻芯220に突出させる。この際に巻芯220の先端には図5に示すように隙間Sが設けられており、巻芯220を突出させることで第1帯状セパレータ212及び第2帯状セパレータ214をこの隙間Sの間に挿入されることになる。そしてS4に移行する。
【0040】
S4では、巻芯220でセパレータ113を挟む。図6に示すように巻芯220によって、第1帯状セパレータ212及び第2帯状セパレータ214を挟み込む。その後、第1帯状セパレータ212及び第2帯状セパレータ214をグリッパー240側の適切な位置で図示しないカッターでカットする。カットする位置はカット位置Clとして示している。カット位置Clは巻芯220に近い位置に設けられることが望ましい。そしてS5に移行する。
【0041】
S5では、負極板112を挿入する。負極板112となる帯状負極213は第1帯状セパレータ212と第2帯状セパレータ214との間に挿入される。図示しないグリッパーによって帯状負極213は保持されており、第1帯状セパレータ212及び第2帯状セパレータ214の間に配置される。そしてS6に移行する。
【0042】
S6では、半ターン巻き取る。巻芯220を回転させて第1帯状セパレータ212、第2帯状セパレータ214及び帯状負極213を半ターン巻き取る。そしてS7に移行する。
【0043】
S7では、正極板111を挿入する。正極板111となる帯状正極211は第2帯状セパレータ214と第1帯状セパレータ212の間に挿入される。帯状負極213と同様に図示しないグリッパーによって保持されており、第2帯状セパレータ214と第1帯状セパレータ212の間に配置される。そしてS8に移行する。
【0044】
S8では、帯状正極211、第1帯状セパレータ212、帯状負極213、及び第2帯状セパレータ214を巻き取る。帯状正極211、第1帯状セパレータ212、帯状負極213、及び第2帯状セパレータ214を、巻芯220を回転させることで巻き取り、最終的には帯状正極211及び帯状負極213を所定の位置で切断し、第1帯状セパレータ212及び第2帯状セパレータ214を更に数周巻いて切断し、テープなどを用いて第1帯状セパレータ212又は第2帯状セパレータ214を固定することで、巻回電極体110を形成する。この巻回電極体110を電池ケース180に封入することで、二次電池100が形成される。掻い摘んで説明したが、巻回電極体110はこのような手順を経て巻回される。
【0045】
図8に、張力調整に関するグラフを示す。縦軸は250によって調整される第1帯状セパレータ212及び第2帯状セパレータ214の張力である。横軸は作業工程毎に区切った経過時間を示す。巻回電極体110は上述したように巻回されるのだが、張力調整機構250による張力の調整に関しては、図8に示すような状況である。すなわち、図7に示すフローのうちS1からS2までは第1帯状セパレータ212及び第2帯状セパレータ214の張力は特に調整される必要がないため張力調整機構250による調整は行われていないが、S2からグリッパー240に第1帯状セパレータ212及び第2帯状セパレータ214が保持された状態で、張力調整機構250によってそれぞれ張力が付与される。この際に領域Tzの範囲内で張力調整機構250の張力が設定されていれば、巻芯220と第1帯状セパレータ212及び第2帯状セパレータ214との干渉が避けられることが実験で確認されている。領域Tzは200gfから450gf程度である。
【0046】
S2からS4までの、巻芯220の隙間Sに第1帯状セパレータ212及び第2帯状セパレータ214を挿入する間に設定される張力を第1設定張力T1とする。そしてS4からS8で巻回電極体110の巻回が終了するまでは、張力調整機構250によって第1帯状セパレータ212及び第2帯状セパレータ214はそれぞれ第2設定張力T2に設定されて巻回される。第2設定張力T2は本実施形態では100gf程度に設定されているが、実験によってもう少し高い値でも巻回可能であることが確認されている。
【0047】
第1設定張力T1の値が領域Tzより高くなると、張力が高くなりすぎて第1帯状セパレータ212及び第2帯状セパレータ214が伸びてしまい、セパレータ113の幅が狭くなるなどの問題が確認されている。又、領域Tzより低くなると、巻芯220と第1帯状セパレータ212及び第2帯状セパレータ214との干渉の発生確率が大幅に高くなることが確認されている。
【0048】
本実施形態の二次電池100の製造方法は上記構成であるので、以下に説明するような作用及び効果を奏する。
【0049】
本実施形態の二次電池100の製造方法の態様は、巻回可能に支持された巻芯220でセパレータ113を挟んで固定し、巻芯220を回転させながらセパレータ113の間に正極板111と負極板112を挟んで巻回して巻回電極体110を形成し、巻回電極体110から巻芯220を取り除いて二次電池100を形成する二次電池製造方法において、巻芯220にセパレータ113の端部を挟む際に、セパレータ113にかける張力を第1設定張力T1とし、その状態で、巻芯220でセパレータ113の端部を挟んで、巻芯220に対してセパレータ113を固定する保持工程と、セパレータ113の張力を第2設定張力T2とし、巻芯220を回転させて正極板111と負極板112を挟み、巻回電極体110を形成する巻回工程を有し、第1設定張力T1は第2設定張力T2より張力が高く設定されているものである。
【0050】
その効果としては、まず、セパレータ113の潰れや折れ曲がりを抑えることが可能である点が挙げられる。セパレータ113となる第1帯状セパレータ212及び第2帯状セパレータ214に張力調整機構250によってそれぞれ第1設定張力T1=200〜400gf程度の張力を付与することで、巻芯220の先端に設けられる隙間Sに第1帯状セパレータ212及び第2帯状セパレータ214を挿入するのを容易にすることが可能である。第1帯状セパレータ212及び第2帯状セパレータ214に第1設定張力T1の張力を張力調整機構250によって付与することで、第1帯状セパレータ212及び第2帯状セパレータ214の直進性を確保することが可能となるためである。
【0051】
これは課題に示したようにセパレータ113にセラミックス粉末などを塗布して多孔質層113Bを形成することでセパレータ113の表面に耐熱層を有しているため、セパレータ113とセラミックスという熱膨張係数の違う二つの層ができあがる。このことで、巻回電極体110を製造している最中に熱膨張係数の小さい側にカールしてしまうという問題が生じる虞がある。また、第1帯状セパレータ212及び第2帯状セパレータ214に高い張力を付与して巻回すると巻ズレ、蛇行などを生じる虞があるため、第1帯状セパレータ212及び第2帯状セパレータ214に対して常に高い張力を与えておくことは好ましくない。このために、通常は第1帯状セパレータ212及び第2帯状セパレータ214に対しては弛まない程度の張力が与えられている。
【0052】
このように、第1帯状セパレータ212及び第2帯状セパレータ214の直進性が確保しにくい状況にあるため、巻芯220の先端に設けられる隙間Sに第1帯状セパレータ212及び第2帯状セパレータ214を挿入する際には、潰れや折れ曲がりと言った不具合が生じることがある。しかし、張力調整機構250によってS2からS4までの間だけ第1設定張力T1が付与されることで、第1帯状セパレータ212及び第2帯状セパレータ214の直進性を改善し、結果的に潰れや折れ曲がりの発生を抑えることが出来る。
【0053】
巻回電極体110は、電池ケース180に収められる際に扁平に潰して収める必要があるため、第1帯状セパレータ212及び第2帯状セパレータ214の先端で潰れや折れ曲がりが発生していると、巻回電極体110を扁平に潰しきれずに電池ケース180の開口部から巻回電極体110が挿入できないというような事態が起きてしまう。あるいは、巻回電極体110を電池ケース180に挿入できた場合であっても、電池ケース180内では巻回電極体110のカール部120を押し潰している部分とそうでない部分で巻回電極体110にかかる力に差が出来てしまう。
【0054】
潰れや折れ曲がりが発生しこれを押し潰している部分では設計より厚くなるため電池ケース180との間に強い力がかかり、圧し潰していない部分では設計通りかそれより薄いために力がかからない。このような差がでると、巻回電極体110に添加されている電解液に偏りが生じてしまい、内部でリチウムが析出してしまう虞がある。また、圧力が高いと正極板111と負極板112との距離を適切に保てなくなる虞もある。その結果、圧力がかかっている部分から巻回電極体110の劣化が生じたり、二次電池100の性能を十分に発揮できない状態となったりする。
【0055】
更に、第1帯状セパレータ212及び第2帯状セパレータ214の潰れや折れ曲がりが酷く、隙間Sに入らないような状況が生じると、そもそも巻回電極体110の巻回の開始をすることができないため、第1帯状セパレータ212及び第2帯状セパレータ214の切断及びグリッパー240でグリップし直すなどの手間がかかることになる。つまり、巻回電極体110の歩留まりを悪化させてしまうことになる。よって、第1帯状セパレータ212及び第2帯状セパレータ214に第1設定張力T1の張力を所定の期間だけ与えることで、巻回電極体110及び巻回電極体110の生産性を向上させ、コストダウンにも貢献することが可能となる。
【0056】
以上、本実施形態に則して発明を説明したが、この発明は前記実施形態に限定されるものではなく、発明の趣旨を逸脱することのない範囲で構成の一部を適宜変更することにより実施することもできる。
【0057】
例えば、二次電池100の形状に関して電池ケース180の構成や材質等を例示したが、これに限定される必要は無い。また、巻回装置200の構成についても例示しているが、他のシステムを用いて巻回電極体110を形成することを妨げない。更に、正極板111、負極板112、及びセパレータ113の材質等を示しているが、これも限定されるものではない。例えば、正極活物質111Bや負極活物質112Bを変更することを妨げないし、セパレータ113の材質や単層セパレータを複層のセパレータにすることを妨げない。
【0058】
セパレータ113の複層化については、本実施形態でも単層のセパレータ113の表面にセラミックスの粉末を塗布することで耐熱層を形成して複層化している。しかし本実施例のセパレータ113とは違い、PP、PEを用いた複層のセパレータを使用するケースもある。また、このセパレータの片面に更にセラミックス粉末を塗布すると言うことも考えられる。このように複層のセパレータを用いる場合であって、表面と裏面の2面で材質が異なるようなケースであれば、本発明の巻芯220による加熱によってセパレータ113のカールを抑制する効果が見込める。
【符号の説明】
【0059】
100 二次電池
110 巻回電極体
111 正極板
112 負極板
113 セパレータ
113A 単層セパレータ
113B 多孔質層
180 電池ケース
200 巻回装置
211 帯状正極
212 第1帯状セパレータ
213 帯状負極
214 第2帯状セパレータ
220 巻芯
221 ヒータ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
巻回可能に支持された巻芯でセパレータを挟んで固定し、前記巻芯を回転させながら前記セパレータの間に正極体と負極体を挟んで巻回して巻回電極体を形成し、前記巻回電極体から前記巻芯を取り除いて二次電池を形成する二次電池製造方法において、
前記巻芯に前記セパレータの端部を挟む際に、前記セパレータの張力を第1設定値とし、その状態で、前記巻芯で前記セパレータの端部を挟んで、前記巻芯に対して前記セパレータを固定する保持工程と、
前記セパレータの張力を第2設定値とし、前記巻芯を回転させて正極体と負極体を挟み、前記巻回電極体を形成する巻回工程を有し、
前記第1設定値は前記第2設定値より張力が高く設定されていることを特徴とする二次電池製造方法。
【請求項2】
請求項1に記載される二次電池製造方法において、
前記第1設定値が前記セパレータの幅100mmに対して、200gf〜450gfの間の値に設定されることを特徴とする二次電池製造方法。
【請求項3】
請求項1又は請求項2に記載される二次電池製造方法において、
前記セパレータは多層構造となっていることを特徴とする二次電池製造方法。
【請求項4】
請求項3に記載される二次電池製造方法において、
前記セパレータは表面にセラミックス粉末を用いた耐熱層を有し、該耐熱層が前記多層構造のうち前記セパレータの片面に塗布された1層を構成していることを特徴とする二次電池製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2012−238511(P2012−238511A)
【公開日】平成24年12月6日(2012.12.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−107543(P2011−107543)
【出願日】平成23年5月12日(2011.5.12)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【Fターム(参考)】