説明

二液硬化型含フッ素ビニル系共重合体組成物

【課題】従来の二液硬化型強溶剤系塗料用組成物と同様の高耐候性の塗膜を形成することが可能で、しかも、有機溶剤として下地の侵食性が低く、環境負荷も低い弱溶剤を主成分として含有してなる二液硬化型の含フッ素ビニル系共重合体組成物を提供すること。
【解決手段】フルオロオレフィン(a1)、炭素数12〜18のアルキル基を有するビニルエーテルモノマー及び/又は炭素数12〜18のアルキル基を有するビニルエステルモノマー(a2)及び水酸基含有ビニルモノマー(a3)を含有するモノマー類から得られる固形分当りの水酸基価が25〜100(mgKOH/g)の含フッ素ビニル系共重合体(A)と、JIS K2201に定義される工業ガソリン4号に該当する溶剤の含有率が80重量%以上の有機溶剤(B)と、水酸基と反応する硬化剤(C)を含有する二液硬化型含フッ素ビニル系共重合体組成物。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、塗料用その他に使用できる、二液硬化型含フッ素ビニル系共重合体組成物に関する。さらに詳しくは、下地に対する侵食性が低く環境負荷も少ない有機溶剤を含有する、二液硬化型含フッ素ビニル系共重合体組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、含フッ素ビニル系共重合体組成物は、その塗膜が高耐候性である事から、塗料用として一般的に使用されてきた。特に水酸基を含有する含フッ素ビニル系共重合体、水酸基と反応性を有する硬化剤及び有機溶剤を含有してなる二液硬化型の塗料用組成物は、優れた塗膜物性を示す事が知られている(例えば、特許文献1参照。)。
【0003】
しかし、前記特許文献1に記載されている二液硬化型の塗料用組成物は、含有する有機溶剤がトルエンやキシレン等の芳香族系溶剤、酢酸エチルや酢酸ブチル等のエステル系溶剤、メチルエチルケトンやメチルイソブチルケトン等のケトン系溶剤、エタノールやプロパノール等のアルコール系溶剤等の有機物溶解性の高い溶剤(強溶剤)、あるいはこれらの強溶剤を必須とする為、下地を侵食する事から塗装の補修等には使用困難である。また、これらの有機溶剤は環境負荷が大きく、特に近年は使用が難しい状況にあった。このため、下地の侵食性が低く、環境負荷も低い、弱溶剤系の含フッ素ビニル系共重合体組成物の開発が求められていた。
【0004】
これらの要求に対し、例えばフッ素含有量、フルオロオレフィン単位の割合及び固有粘度を特定したミネラルスピリット可溶性含フッ素共重合体と、ミネラルスピリットを含有する塗料用組成物を使用する技術が報告されている(例えば、特許文献2参照。)。
【0005】
しかし、前記特許文献2に記載されている塗料用組成物は一液型であるために、従来の硬化剤を併用した二液硬化型強溶剤系塗料用組成物と比較すると、耐候性が低く、実質的に使用困難であった。更に当該含フッ素ビニル系共重合体は官能基含有量が少なく、二液型として使用した場合も同様に、高度な耐候性を有する塗膜を形成する事は困難である。
【0006】
【特許文献1】特公平06−062910号公報
【特許文献2】特公平08−032847号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明が解決しようとする課題は、従来の二液硬化型強溶剤系塗料用組成物と同様の高耐候性の塗膜を形成することが可能で、しかも、有機溶剤として下地の侵食性が低く、環境負荷も低い弱溶剤を主成分として含有してなる二液硬化型の含フッ素ビニル系共重合体組成物を提供する事である。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者らは、前記課題を解決するために鋭意検討を重ねた結果、フルオロオレフィン(a1)、炭素数12〜18のアルキル基を有するビニルエーテルモノマー及び/又は炭素数12〜18のアルキル基を有するビニルエステルモノマー(a2)及び水酸基含有ビニルモノマー(a3)を含有するモノマー類から得られる固形分当りの水酸基価が25〜100(mgKOH/g)の含フッ素ビニル系共重合体(A)は、環境負荷の低い弱溶剤であるJIS K2201に定義される工業ガソリン4号に該当する溶剤中に溶解して安定に存在しうる事、及び、前記含フッ素ビニル系共重合体(A)と、JIS K2201に定義される工業ガソリン4号に該当する溶剤の含有率が80重量%以上の有機溶剤(B)と、水酸基と反応する硬化剤(C)を含有する含フッ素ビニル系共重合体組成物は、二液硬化型であって、高耐候性の塗膜を形成することが可能で、しかも、下地の侵食性が低い事を見出し、本発明を完成するに至った。
【0009】
即ち、本発明は、フルオロオレフィン(a1)、炭素数12〜18のアルキル基を有するビニルエーテルモノマー及び/又は炭素数12〜18のアルキル基を有するビニルエステルモノマー(a2)及び水酸基含有ビニルモノマー(a3)を含有するモノマー類から得られる固形分当りの水酸基価が25〜100(mgKOH/g)の含フッ素ビニル系共重合体(A)と、JIS K2201に定義される工業ガソリン4号に該当する溶剤の含有率が80重量%以上の有機溶剤(B)と、水酸基と反応する硬化剤(C)を含有することを特徴とする二液硬化型含フッ素ビニル系共重合体組成物に関する。
【発明の効果】
【0010】
本発明の二液硬化型含フッ素ビニル系共重合体組成物は、高耐候性の塗膜を形成することが可能で、しかも、環境負荷の低い弱溶剤であるJIS K2201に定義される工業ガソリン4号に該当する溶剤中(以下、「工業ガソリン4号該当溶剤」と略記する。)に溶解して安定に存在しうる含フッ素ビニル系共重合体(A)を用いているため、工業ガソリン4号該当溶剤による希釈性に優れ、下地の侵食性が低い。
【0011】
前記含フッ素ビニル系共重合体(A)の製造に用いるモノマー類としては、フルオロオレフィン(a1)、炭素数12〜18のアルキル基を有するビニルエーテルモノマー及び/又は炭素数12〜18のアルキル基を有するビニルエステルモノマー(a2)及び水酸基含有ビニルモノマー(a3)を含有し、更に必要に応じてその他のビニルモノマー(a4)を含有していてもよいものが挙げられる。
【0012】
前記フルオロオレフィン(a1)としては、例えば、フッ化ビニル、フッ化ビニリデン、トリフルオロエチレン、テトラフルオロエチレン、ブロモトリフルオロエチレン、クロロトリフルオロエチレン、ペンタフルオロプロピレン、ヘキサフルオロプロピレン、フルオロアルキルトリフルオロビニルエーテル、等が挙げられ、なかでも、耐候性、常温での可使性、顔料との親和性等において塗料材料としてのバランスに優れる塗料が得られることから、テトラフルオロエチレン、クロロトリフルオロエチレン、ヘキサフルオロプロピレンが好ましい。これらは単独で使用しても複数を併用しても構わない。
【0013】
また、炭素数12〜18のアルキル基を有するビニルエーテルモノマー及び/又は炭素数12〜18のアルキル基を有するビニルエステルモノマー(a2)としては、例えば、ドデシルビニルエーテル、トリデシルビニルエーテル、ヘキサデシルビニルエーテル、オクタデシルビニルエーテル等のビニルエーテルモノマー、ラウリン酸ビニル、ミリスチン酸ビニル、パルミチン酸ビニル、ステアリン酸ビニル等のビニルエステルモノマーが挙げられ、なかでも、工業ガソリン4号該当溶剤に対する溶解性に特に優れる含フッ素ビニル系共重合体が得られることから、炭素数16〜18のアルキル基を有するビニルエーテルモノマー及び/又は炭素数16〜18のアルキル基を有するビニルエステルモノマーが好ましい。これらは単独で使用しても複数を併用しても問題なく、またこれらの混合物として供給される物を使用しても構わない。
【0014】
さらに、水酸基含有ビニルモノマー(a3)としては、例えば、2−ヒドロキシエチルビニルエーテル、3−ヒドロキシプロピルビニルエーテル、2−ヒドロキシプロピルビニルエーテル、4−ヒドロキシブチルビニルエーテル、2−ヒドロキシ−2−メチルプロピルビニルエーテル、6−ヒドロキシヘキシルビニルエーテル、シクロヘキサンジメタノールモノビニルエーテル等のヒドロキシアルキルビニルエーテル類、エチレングリコールアリルエーテル、ジエチレングリコールアリルエーテル等のヒドロキシアリルエーテル類、2−ヒドロキシエチルメタクリレート、4−ヒドロキシブチルアクリレート等のヒドロキシアルキル(メタ)アクリレート類、等が挙げられ、なかでも、共重合性に優れ、工業的に供給の問題がないことから、2−ヒドロキシエチルビニルエーテル、4−ヒドロキシブチルビニルエーテルが好ましい。
【0015】
必要に応じて使用することができるその他のビニルモノマー(a4)としては、例えば、メチルビニルエーテル、エチルビニルエーテル、n−プロピルビニルエーテル、i−プロピルビニルエーテル、n−ブチルビニルエーテル、i−ブチルビニルエーテル、t−ブチルビニルエーテル、n−ペンチルビニルエーテル、n−ヘキシルビニルエーテル、n−オクチルビニルエーテル、2−エチルヘキシルビニルエーテル等のアルキルビニルエーテル類、シクロヘキシルビニルエーテル等のシクロアルキルビニルエーテル類、ベンジルビニルエーテル、フェネチルビニルエーテル等のアラルキルビニルエーテル類、2,2,3,3−テトラフルオロプロピルビニルエーテル、2,2,3,3,4,4,5,5−オクタフルオロペンチルビニルエーテル、パーフルオロメチルビニルエーテル、パーフルオロエチルビニルエーテル、パーフルオロプロピルビニルーエテル、パーフルオロオクチルビニルエーテル、パーフルオロシクロヘキシルビニルエーテル等のフルオロアルキルビニルエーテル類、
【0016】
酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル、カプロン酸ビニル、カプリン酸ビニル等の直鎖状カルボン酸ビニルエステル類、ピバリン酸ビニル、2−エチルヘキサン酸ビニル、ネオノナン酸ビニル、ネオデカン酸ビニル等の分岐状カルボン酸ビニルエステル類、シクロヘキサンカルボン酸ビニル等の環状脂肪族カルボン酸ビニルエステル類、安息香酸ビニル、p−t−ブチル安息香酸ビニル等の芳香族カルボン酸ビニルエステル類、
【0017】
エチレン、プロピレン等のオレフィン化合物、塩化ビニル、塩化ビニリデン等のハロゲン化オレフィン化合物、エチルアリルエーテル、ブチルアリルエーテル等のアリルエーテル類、酢酸アリル、プロピオン酸アリル等のアリルエステル類、(メタ)アクリル酸、マレイン酸、フマル酸、イタコン酸、クロトン酸等の不飽和カルボン酸類、メチルメタクリレート、ブチルアクリレート等の(メタ)アクリル酸エステル類、等のラジカル重合性モノマー類が挙げられる。
【0018】
前記含フッ素ビニル系共重合体(A)としては、前記硬化剤(C)と反応させ、塗膜物性を向上させる為に、固形分当りの水酸基価が25〜100(mgKOH/g)である事が必要であり、32〜75(mgKOH/g)である事が好ましい。
【0019】
なお、前記含フッ素ビニル系共重合体(A)の水酸基価は、樹脂試料1.5gに無水酢酸/ピリジン(体積比=1/15)溶液20mlを加えて加熱して100℃で1時間反応を行った後に、フェノールフタレインを指示薬に用い、0.5mol/l濃度の水酸化カリウムエタノール溶液で中和滴定を行って求めた。
【0020】
また、前記含フッ素ビニル系共重合体(A)の分子量としては、工業ガソリン4号該当溶剤に溶解するものであればよく、特に限定されないが、工業ガソリン4号該当溶剤に対する溶解性と硬化塗膜物性のバランスに優れることから、数平均分子量2,000〜35,000であることが好ましく、4,000〜25,000であることがより好ましい。
【0021】
前記含フッ素ビニル系共重合体(A)の製造に用いるモノマー類に含有されるモノマー成分(a1)〜(a4)の含有率としては、耐候性に優れる硬化塗膜を形成できる塗料が得られることから、これら(a1)〜(a4)の合計100重量%に対して、フルオロオレフィン(a1)が30〜65重量%、炭素数12〜18のアルキル基を有するビニルエーテルモノマー及び/又は炭素数12〜18のアルキル基を有するビニルエステルモノマー(a2)が3〜35重量%、及び、水酸基含有ビニルモノマー(a3)が5〜20重量%であって、残余の0〜62重量%がその他のビニルモノマー(a4)であることが好ましく、なかでも、フルオロオレフィン(a1)が45〜62重量%、炭素数12〜18のアルキル基を有するビニルエーテルモノマー及び/又は炭素数12〜18のアルキル基を有するビニルエステルモノマー(a2)が10〜30重量%、及び、水酸基含有ビニルモノマー(a3)が7〜16重量%であって、残余の0〜38重量%がその他のビニルモノマー(a4)であることがより好ましい。
【0022】
前記含フッ素ビニル系共重合体(A)を得るには、フルオロオレフィン(a1)、炭素数12〜18のアルキル基を有するビニルエーテルモノマー及び/又は炭素数12〜18のアルキル基を有するビニルエステルモノマー(a2)及び水酸基含有ビニルモノマー(a3)を含有し、更に必要に応じてその他のビニルモノマー(a4)を含有していてもよいモノマー類を、ラジカル重合すれば良いが、有機溶剤中でラジカル重合を行う方法が最も簡便である。
【0023】
前記ラジカル重合の方法としては、前記モノマー類、ラジカル発生剤類、有機溶剤を一括仕込みしてのラジカル重合、または、これらの一部または全部を分割仕込みしてのラジカル重合等、各種のラジカル重合方法を採用することができる。
【0024】
前記ラジカル発生剤としては、各種のラジカル重合開始剤が使用可能で、例えば、アゾビスイソブチロニトリル、アゾビスジメチルバレロニトリル等のアゾ化合物、t−ブチルパーオキシピバレート、t−ブチルパーオキシベンゾエート、t−ブチルパーオキシ−2−エチルヘキサノエート、ベンゾイルパーオキサイド、ラウロイルパーオキサイド、アセチルパーオキサイド、ジ−t−ブチルパーオキサイド、ジクミルパーオキサイド、t−ブチルハイドロパーオキサイド、クメンハイドロパーオキサイド、メチルエチルケトンパーオキサイド、ジイソプロピルパーオキシカーボネート等の過酸化物、等が挙げられるが、工業ガソリン4号該当溶剤に対する溶解性が良好なことから、過酸化物が好ましい。これらラジカル発生剤は単独で使用しても良いし、2種以上を同時に使用しても構わない。
【0025】
前記ラジカル発生剤の使用量としては、ラジカル発生剤の種類、重合温度、共重合体の分子量等に応じて適宜決定されるが、概ね共重合させるモノマー総量100重量部に対して0.01〜10重量部程度で良い。
【0026】
また、前記ラジカル重合で用いる有機溶剤としては、各種のものが使用可能であるが、本発明の目的である二液硬化型含フッ素ビニル系共重合体組成物を得る為には、工業ガソリン4号該当溶剤を使用する事が好ましい。
【0027】
しかし、一般的な強溶剤を使用して上記ラジカル重合を行い、その後共重合体固形分を抽出し、或いは工業ガソリン4号該当溶剤を投入して脱溶剤を行い、共重合体組成物中の強溶剤を工業ガソリン4号該当溶剤へ置換する事も可能である。
【0028】
前記ラジカル重合で用いる有機溶剤は、単独で使用しても良いし、2種以上の混合物として使用しても構わない。
【0029】
また、前記ラジカル重合で用いる有機溶剤の使用量としては、使用するモノマー総量100重量部に対して、10〜1000重量部程度で良い。
【0030】
本発明の含フッ素ビニル系共重合体の製造方法には、各種の連鎖移動剤も適宜使用可能である。
【0031】
また、前記含フッ素ビニル系共重合体の製造方法におけるラジカル重合温度としては、通常のラジカル重合反応温度を選択できるが、0〜150℃が好ましく、40〜100℃が特に好ましい。ラジカル重合時間としては、特に制限は無いが、1〜50時間が好ましく、3〜30時間が特に好ましい。
【0032】
本発明の含フッ素ビニル系共重合体組成物が含有する有機溶剤(B)としては、工業ガソリン4号該当溶剤(引火点30℃以上、50%留出温度180℃以下、蒸留終点205℃以下)の含有率が80重量%以上の有機溶剤であることが必要であり、なかでも、前記含フッ素ビニル系共重合体(A)の溶解性が良好で、下地の侵食性と環境負荷がより低いことから、工業ガソリン4号該当溶剤の含有率が95重量%以上の有機溶剤であることが好ましく、100重量%であることが最も好ましい。
【0033】
前記工業ガソリン4号該当溶剤としては、例えば、エクソンモービル社製「エクソンナフサNo.5」、「エクソンナフサNo.6」、「ソルベッソ100」、「ペガソール3040」、「ペガソールAN45」、シェルケミカルズ社製「シェルゾールD−40」、「LAWS」、ジャパンエナジー社製「カクタスソルベントP20」、コスモ松山石油社製「スワゾール1000」、等が挙げられ、なかでも含フッ素ビニル系共重合体(A)の溶解性と下地の侵食性のバランスに優れることから、「LAWS」、「ソルベッソ100」が好ましい。
【0034】
本発明の含フッ素ビニル系共重合体組成物に用いる有機溶剤(B)は、前記したように工業ガソリン4号該当溶剤の含有率が80重量%以上となる範囲であれば、工業ガソリン4号該当溶剤以外の一般の強溶剤を含有する事ももちろん可能である。しかし、本発明の目的である下地の侵食性、環境負荷等を考慮すると、これら強溶剤の含有量は低くすべきであり、多くとも有機溶剤(B)中の20重量%に留めるべきで、5重量%以下であることが好ましく、含有しないことが最も好ましい。
【0035】
本発明の含フッ素ビニル系共重合体組成物が含有する硬化剤(C)とは、前記含フッ素ビニル系共重合体中の水酸基と硬化反応をし得る化合物であれば制限無く使用可能であるが、その代表的なものを例示すると、ポリイソシアネート化合物、ブロックポリイソシアネート化合物、ポリエポキシ化合物、ポリシクロカーボネート化合物、アミノ樹脂、ポリカルボキシ化合物、ポリヒドロキシ化合物、ポリオキサゾリン化合物、ポリカルボジイミド化合物等が挙げられる。これらはそれぞれ単独で、又は2種以上を併用して使用することができる。
【0036】
前記硬化剤(C)としては、前記含フッ素ビニル系共重合体(A)が有する水酸基と反応する化合物であればよく、例えば、現場施工用途ではポリイソシアネート化合物、加熱乾燥工程を経る用途ではブロックポリイソシアネート化合物やアミノ樹脂が、使用方法の簡便さや得られる塗膜物性から好ましい。
【0037】
前記硬化剤(C)として、現場施工用途でポリイソシアネート化合物を用いる場合の使用量としては、含フッ素ビニル系共重合体(A)中の水酸基とポリイソシアネート化合物中のイソシアネート基の当量比(OH/NCO)が0.7〜1.3となる範囲が好ましく、0.9〜1.1となる範囲がより好ましい。また、加熱乾燥工程を経る用途でブロックポリイソシアネート化合物やアミノ樹脂を用いる場合の使用量としては、含フッ素ビニル系共重合体(A)100重量部に対して、ブロックポリイソシアネート化合物やアミノ樹脂が10〜30重量部となる範囲が好ましく、15〜25重量部となる範囲がより好ましい。
【0038】
本発明の二液型含フッ素ビニル系共重合体組成物には、必要に応じて無機顔料、有機顔料、体質顔料、染料、ワックス、界面活性剤、安定剤、流動調整剤、消泡剤、レベリング剤、レオロジーコントロール剤、紫外線吸収剤、光安定剤、酸化防止剤、可塑剤等の添加剤等を使用することができる。
【実施例】
【0039】
次に、本発明を実施例及び比較例により具体的に説明する。なお、例中の部及び%は全て重量基準である。
【0040】
合成例1〜4
窒素で内部を置換した2リットルのステンレス製オートクレーブに、下記第1表に示す、ビニルエーテルモノマー及び/又はビニルエステルモノマー、その他のビニルモノマー、工業ガソリン4号該当溶剤、及び、ラジカル発生剤を仕込み、同表に示すフルオロオレフィンを圧入し、系内を攪拌しながら60℃で15時間反応させ、更に80℃で10時間反応させた後、未反応のモノマーを留去し、夫々の合成で使用した溶剤にて固形分濃度を60%に調整し、無色透明の含フッ素ビニル系共重合体溶液(A−1)〜(A−4)を得た。得られた溶液(A−1)〜(A−4)中の含フッ素ビニル系共重合体の固形分水酸基価と数平均分子量を、溶液(A−1)〜(A−4)の不揮発分濃度と共に第1表に示す。
【0041】
【表1】

【0042】
比較合成例5〜8
合成例1〜4と同様に、窒素で内部を置換した2リットルのステンレス製オートクレーブに、第2表に示す水酸基含有ビニルモノマー、その他のビニルモノマー、工業ガソリン4号該当溶剤、及び、ラジカル発生剤を仕込み、同表に示すフルオロオレフィンを圧入、系内を攪拌しながら60℃で15時間反応させ、更に80℃で10時間反応させた後、未反応のモノマーを留去し、夫々の合成で使用した溶剤にて固形分濃度を60%に調整し、含フッ素ビニル系共重合体溶液を得ようとしたが、無色透明の溶液として得られたのは比較合成例1の含フッ素ビニル系共重合体溶液(R−1)のみであり、比較合成例2〜4では、いずれも合成された含フッ素ビニル系共重合体が工業ガソリン4号該当溶剤に溶解せずに白濁・沈降し、溶液は得られなかった。得られた溶液(R−1)中の含フッ素ビニル系共重合体の固形分水酸基価と数平均分子量を、溶液(R−1)の不揮発分濃度と共に第2表に示す。
【0043】
【表2】

【0044】
実施例1〜4及び比較例1
第3表(1)〜(2)に示す含フッ素ビニル系共重合体溶液、硬化剤(バーノックDN−992:大日本インキ化学工業株式会社製イソシアネート基の含有率が10%のポリイソシアネート、不揮発分濃度75%)、LAWSを、含フッ素ビニル系共重合体中の水酸基と硬化剤中のイソシアネート基の当量比が1/1で、不揮発分濃度が40.0%となるように混合して二液硬化型含フッ素ビニル系共重合体組成物を作成し、得られた組成物の外観を観察すると共に、JIS H4000 A5052P AM713クロメート処理アルミニウム板上に、0.152mmアプリケーターを使用して塗布し、25℃にて7日間放置して、二液硬化型含フッ素ビニル系共重合体組成物の硬化塗膜を得た。得られた硬化塗膜の耐汚染性、促進耐候性を評価した。結果を第3表に示す。
【0045】
【表3】

【0046】
【表4】

【0047】
*1)耐汚染性 :赤色と黒色のマーキングペンを用いて、JIS2001 K5400 8.10耐汚染性におけるマーキングペン試験を実施し、以下の基準で評価した。
○:痕跡なし。
△:若干痕跡あり。
×:痕跡あり。
【0048】
*2)促進耐候性: サンシャインウェザーメーターを使用し、3000時間試験後の塗膜表面状態を観察し、以下の基準で評価した。
○:変化なし。
△:若干表面劣化あり。
×:表面劣化あり。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
フルオロオレフィン(a1)、炭素数12〜18のアルキル基を有するビニルエーテルモノマー及び/又は炭素数12〜18のアルキル基を有するビニルエステルモノマー(a2)及び水酸基含有ビニルモノマー(a3)を含有するモノマー類から得られる固形分当りの水酸基価が25〜100(mgKOH/g)の含フッ素ビニル系共重合体(A)と、JIS K2201に定義される工業ガソリン4号に該当する溶剤の含有率が80重量%以上の有機溶剤(B)と、水酸基と反応する硬化剤(C)を含有することを特徴とする二液硬化型含フッ素ビニル系共重合体組成物。
【請求項2】
含フッ素ビニル系共重合体(A)が、フルオロオレフィン(a1)30〜65重量%、炭素数12〜18のアルキル基を有するビニルエーテルモノマー及び/又は炭素数12〜18のアルキル基を有するビニルエステルモノマー(a2)3〜35重量%、水酸基含有ビニルモノマー(a3)5〜20重量%及びその他のビニルモノマー(a4)0〜62重量%を含有するモノマー類から得られるビニル系共重合体である請求項1記載の二液硬化型含フッ素ビニル系共重合体組成物。
【請求項3】
含フッ素ビニル系共重合体(A)の固形分当りの水酸基価が、32〜75(mgKOH/g)である請求項2記載の二液硬化型含フッ素ビニル系共重合体組成物。
【請求項4】
炭素数12〜18のアルキル基を有するビニルエーテルモノマー及び/又は炭素数12〜18のアルキル基を有するビニルエステルモノマー(a2)が、炭素数16〜18のアルキル基を有するビニルエーテルモノマー及び/又は炭素数16〜18のアルキル基を有するビニルエステルモノマーである請求項3記載の二液硬化型含フッ素ビニル系共重合体組成物。
【請求項5】
有機溶剤(B)が、JIS K2201に定義される工業ガソリン4号の含有率が95重量%以上の有機溶剤(B)である請求項4記載の二液硬化型含フッ素共重合体組成物。

【公開番号】特開2009−126990(P2009−126990A)
【公開日】平成21年6月11日(2009.6.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−305622(P2007−305622)
【出願日】平成19年11月27日(2007.11.27)
【出願人】(000002886)DIC株式会社 (2,597)
【Fターム(参考)】