説明

二軸延伸プラスチックチューブの連続製造方法と、この方法を実施する製造ライン

【課題】押出し成形で素材(E)を作り、この素材(E)を分子配向温度まで加熱し、軸線方向に互いに離れた2つの密閉装置(7、11)の間で素材(E)の内部に流体圧力を加えて素材(E)を放射方向に膨張させ、素材(E)に軸線方向引張り力を加えて寸法調整(8)と冷却(9)とを行なう、二軸延伸によってプラスチックチューブを連続的に製造する方法。
【解決手段】放射方向に膨張した少なくとも1つの帯域で素材の壁へ外側から内部の圧力に対抗する圧力を加え(13)、上記の内部の圧力に対抗する圧力は制御下に膨張が続くのを妨げないように内圧よりも低く且つ確実に膨張できるだけの高い圧力で、材料の厚さが同一円周上で実質的に一定となる圧力を選択する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は素材を押出し成形し、分子配向温度まで加熱し、軸線方向に互いに離れた2つの密閉リングの間で流体の内圧を加えて放射方向に膨張させ、出口側でチューブに軸方向に引張力を加えながら寸法決定(calibration、較正、サイジング)と冷却を行なって二軸延伸プラスチックチューブを連続的に製造する方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
上記方法で作ったチューブ材料の最終特性は放射方向への膨張方法に依存するということは知られている。すなわち、外径および素材の厚さが同じ場合、完成チューブ材料の機械特性は放射方向への膨張度が大きければ大きいほど良くなるが、放射方向膨張を大きくすると、同じ円周の所の完成チューブ材料の厚さにバラツキが生じ、チューブ材料に偏心が生じる。さらに、縦方向の伸びのバラツキが生じると製品の仕様に合わなくなる。
【0003】
上記プラスチックチューブの連続製造方法は本出願人の下記特許文献に記載されている。
【特許文献1】フランス国特許第2,806,956号公報
【0004】
また、素材をマンドレルの外側を通過させて放射方向に膨張させ、それによって二軸延伸を行ってプラスチックチューブを連続的に製造する方法は下記文献に記載されている。
【特許文献2】米国特許第5,948,332号明細書(WO95/25627号に対応) この文献ではチューブ断面全体にわたってチューブの厚さを均一にするためにチューブがマンドレルの外側を通過する際に受ける抵抗力を調整する手段を用いている。この手段は素材の周りにセクタ状に配置された加熱板と完成チューブの厚さ測定値に応答する自動制御システムとを備えており、各加熱板の温度はセクタ毎に制御される。しかし、この設備は複雑で、しかも、外側から加熱板を用いて熱を作用させるため壁の厚さ全体にわたって材料の特性を均一にすることができない。また、熱交換操作に時間がかかるため、変更の指令が出たときの応答時間が遅くなる。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明の目的は、放射方向膨張度をかなり大きくした時でも完成チューブの偏心と縦方向伸びのバラツキを無くすことができるか、少なくとも大幅に減らすことができるプラスチックチューブの連続製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明では、上記定義の二軸延伸プラスチックチューブの連続製造方法において、放射方向に膨張した少なくとも1つの帯域で素材の壁へ外側から内部の圧力に対抗する圧力を加え、上記の内部の圧力に対抗する圧力は制御下に膨張が続くのを妨げないように内圧よりも低く且つ確実に膨張できるだけの高い圧力であり、材料の厚さが同一円周上で実質的に一定となる圧力であることを特徴とする。
【発明を実施するための最良の形態】
【0007】
上記の内部の圧力に対抗する圧力は、この圧力が存在しない場合に制御下に膨張を続けることができない帯域のみに局部的に加えることができる。
上記の内部の圧力に対抗する圧力は機械的に加えることができる。
上記の内部の圧力に対抗する圧力はサイジング装置の入口に加えるのが有利である。
【0008】
本発明はさらに、素材を成形するための押出機と、素材を分子配向温度に加熱するための少なくとも1つの加熱槽と、素材を放射方向に膨張させる装置と、寸法調整装置と、チューブの冷却装置と、チューブ出口に設けた少なくとも1つの下流の引張り機とを有する上記方法を実施するための製造ラインにおいて、放射方向に膨張する帯域に、素材の内部の圧力に対抗する圧力を素材の外壁に加える手段を有することを特徴とする製造ラインを提供する。
【0009】
上記の素材の内部の圧力に対抗する圧力を素材の外壁に加える手段は機械的手段であるのが有利である。
この機械的手段はローラまたはコロで構成できる。ローラの軸はチューブの縦方向に対して直角な軸に回転に取り付けられたブラケットで支持できる。ローラは弾性手段や位置決めネジを素材の壁に押し付けることができる。
【0010】
平均径のチューブの場合には4つのローラを円周上に配置することができる。それより大きな径の場合には、円周に沿って6つまたはそれ以上のローラを配置することができる。
上記の内部の圧力に対抗する圧力を下流で測定されたチューブの厚さに応じて調節する自動制御装置を設けるのが有利である。
本発明の上記手段およびそれ以外の手段は添付図面を参照した以下の実施例の説明から明らかになるであろう。しかし、本発明が下記実施例に制限されるものではない。
【実施例】
【0011】
[図1]は本発明方法を実施する製造ライン1を示している。この製造ライン1では上流端(図1の左側)から下流端(図1の右側)へ向かって連続的に製造が行われる。この製造ラインは、例えば特許文献1(フランス国特許第2,806,956号公報)で公知のように、供給ホッパから熱可塑性材料が供給される押出機を含む組立体2(概念的に示す)を有している。素材Eは約150℃以上の高温で押出機2から出て、一般に水を入れた一つまたは複数の冷却槽3を通り、その間に素材Eの温度は大幅に下がる。
【0012】
押出機には素材Eと同軸な金属管4が固定され、[図1]の右側1へ向かって延びている。この金属管4は押出機から最も遠いその軸方向密封端に少なくとも1つの開口5を放射方向に有している。
温度調節された最後の冷却槽3、すなわち[図1]で最も右側にある冷却槽は素材Eを分子配向温度範囲内の温度に加熱するように設計されている。PVCの場合、この温度は90〜110℃の範囲にある。
冷却槽3の出口には内部プラグ7上に素材Eを押し付けるリング6が固定されている。内部プラグ7は上記の開口部の上流側でチューブ6の内周と係合している。
【0013】
素材Eは軸線方向でリング6と寸法調整装置(サイジング装置、calibreur)8(概念的に示してある)の入口との間の帯域Aで外気中に出る。このサイジング装置8は冷却槽9(例えば水を真空吸引する冷却槽)の中に配置されている。冷却槽9を出た完成チューブTは引き取り装置10へ送られる。この引き取り装置10は必要な引張り力をライン全体に加えてチューブおよび素材を引張る。
【0014】
連続運転期にはチューブ4の密封端は下流プラグ11で密封される。この下流プラグ11は例えばケーブル12で押出機に固定されている。内部プラグ7および下流プラグ11は密封チャンバCを規定する軸線方向に離れた2つの密閉具を構成している。この密封チャンバCには加圧流体、好ましくは加圧空気がパイプ4および開口5を介して導入される。
定常運転状態が確立したときには[図1]に概念的に示すように、素材Eはリング6の出口で流体の内圧によってサイジング装置8の内径に達するまで放射方向に膨張する。
【0015】
スタートアップ段階での過渡的な手順は上記特許文献1(フランス国特許第2,806,956号公報)に記載されているものと同じである。
チューブ材料Tの最終特性はリング6とサイジング装置8との間での素材Eの放射方向膨張度に依存する。この放射方向膨張度が大きければ大きいほどチューブ材料Tの機械特性は良くなる。
【0016】
しかし、ある放射方向膨張比を超えると、帯域A内にできる「泡、bulle」が変形し、その幾何学軸線に対する回転対称性が失われる。その結果、最終チューブが偏心し、同じ円周上で厚さが異なり、縦方向伸びが異なり、製品の仕様に適合しなくなる。
【0017】
こうした実験の観察結果は内圧(bar)に対する素材Eの外径の変化を示す[図5]で説明できる。この例では素材はゲージ圧がゼロのときに外径が約58mmである。この説明は他の直径でも同じである。
【0018】
[図5]の曲線は最大値Mを通り、その横座標に平行な接線は外径が約92mm、内圧が10barのときである。この最大値M点に対応する外径よりも小さい外径では圧力/変形の関係は増加関数であり、最大値M点を超えると圧力/変形の関係は減少関数になる。この現象は主として降伏点を超えた時の材料の延伸度(etirement)に関連する。その結果、制御できない一種の不安定相となる。降伏点に対応する最大値Mまで素材を膨張させるの必要な内圧は素材を放射方向に連続して伸ばすことができる圧力よりも高くなる。
【0019】
最大値M点に対応する外径を超えた外径では泡(バブル)の増加度を制御することができない。そのため断面が非対称に変形する。
この欠点を無くすため、特に、最大値M点に対応する放射方向膨張比を超える放射方向膨張比で、円形断面に厚さに差を生じさせずに、放射方向へさらに膨張させるために、本発明では対抗圧力(pression antagoniste)すなわち内圧から減算される逆の圧力を外側から加えて素材の壁のストレスを減する。
【0020】
その一つの簡単な解決策はサイジング装置8の入口にローラ13を配置して上記の対抗圧力を機械的に加えることである。ローラ13のトレッド帯はプラスチックで作るのが好ましい。ローラ13の回転軸14は素材Eの幾何学軸線X−Xに対して直角である。この回転軸14([図2])の両端は、素材とは反対側でローラ13を被ったカバー16の側面部15に設けられた軸受に支持されている。カバー16は素材Eの幾何学軸線X−Xに対してほぼ平行な取付板17に固定されている。この取付板17のローラ13から最も遠い端部(サイジング装置8に近い端部)は素材の幾何学軸線X−Xに対して直角な横方向軸18に関節接合されている。この横方向軸18は軸線X−Xに対して直角な板19に支持され、この板19はサイジング装置8または槽9の入口面に、例えばネジによって押されたリング部材20([図2])によって締め付けられている。リング部材20を緩めることによって、幾何学軸線X−Xを中心とする板19の角度位置を調節できる。
【0021】
ローラ13および取付板17には圧縮バネ21の押圧力を幾何学軸線X−Xの方向に加えるのが有利である。このバネ21の一端は取付板17のローラ13とは反対面に当接され、その他端は板19に固定されたブレード22に当接されている。
[図3]に示す変形例では上記バネ21の代わりに、ブレード22に螺合し且つ取付板17に当接した位置決めネジ23を用いている。ローラ13によって加わる圧力はネジ23を締め付けたり、緩めることで調節する。
【0022】
[図4]に示す変形例ではバネ21の代わりに、チューブTの厚さに合うように流体圧力が自動制御される空気圧式または液圧式のラムを用いる。厚さは例えば冷却槽9の出口に配置されたセンサ25、特に超音波センサで検出する。ラム24は上記バネ21と同様にブレード22と取付板17との間に配置される。ラム24は出口厚さに応じた圧力でローラ13を泡(バブル)の壁に押し付けて厚さを所望値に維持する。この変形例を用いると、チューブの連続製造を最小限の偏心で自動的に調整できる。
【0023】
別の変形例(図示せず)では、ローラ13の代わりに、摩擦係数が低い材料で作られた、端部が丸い単純なフィンガを素材Eの外壁に押圧して用いることができる。さらに別の可能性としては、素材Eの外壁領域に作用する流体を用いて上記の対抗圧力を加えることができる。
【0024】
この対抗圧力すなわち内部の圧力に対抗する圧力は制御できない泡(バブル)の成長領域に局限することができる。材料がコンシステンシーおよび剛性を有するので、上記圧力を介入させる領域の数は、チューブの径に応じて、少なくすることができる。
[図2]に示す実施例では、ローラ13が互いにほぼ直角な4つの領域に設けられている。このような解決策は泡(バブル)の径(サイジング装置8の入口での径)が約100mmの素材に適用できる。[図2]では4つのローラ13が素材の母線の上下左右にそれぞれ設置されている。これらのローラ13は泡(バブル)が膨張したときに材料と接触して位置決めされる。ローラ13に対応する4つの母線における二軸延伸チューブの厚さを下流で測定し、仕様書の目標値と比較する。例えば手動で圧力を調整し、ローラと接触する一つまたは複数の母線上でこのシステムを用いて泡(バブル)の壁に加える。
【0025】
直径が約200mmの場合にはローラを用いて対抗圧力を6つの領域に加えるのが好ましい。
外側からの上記対抗圧力はチューブの壁の表面層の摩擦および局部冷却が事実上生じないように加える必要がある。
各ローラを軸線X−Xを中心に回転自在に取付けられた一つのリング部材で支持し、軸線X−Xを中心とした各ローラの角度位置をチューブTの周りに配置したセンサ25で検出した厚さのバチツキの角度位置を関数にして自動制御することができる。
【0026】
製造ラインの運転、特にローラ13から成る対抗圧力手段は上記説明から明らかである。
本発明では最大値M([図5])を超えて放射方向に膨張をした場合でもチューブの全円形断面において事実上均一な厚さが保証できる。従って、所定外径の素材から得られる最終外径の範囲を広げることができる。特に、優れた機械特性を有するハイクラスのチューブを得ることができる(クラスのレベルは素材外径の相対増加度に依存する)。
径が約100mmのチューブの場合、従来方法で得られる円形断面のチューブの厚さは0.3〜0.5mmであるが、本発明では0.1mm以下(これに限定されるものではない)にすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0027】
【図1】本発明方法を用いた製造ラインの一部の断面図。
【図2】内部の圧力に対抗する圧力を加えるためのローラを備えたサイジング装置の入口の概念図。
【図3】内部の圧力に対抗する押圧力を加える手段の変形例の図。
【図4】内部の圧力に対抗する押圧を加える手段の別の変形例の図。
【図5】チューブ直径(横座標)(mm表記)の増加度を内圧(縦座標)(bar表記)の関数で表した曲線。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
押出し成形で素材(E)を作り、この素材(E)を分子配向温度まで加熱し、軸線方向に互いに離れた2つの密閉装置(7、11)の間で素材(E)の内部に流体圧力を加えて素材(E)を放射方向に膨張させ、素材(E)に軸線方向引張り力を加えて寸法調整(8)と冷却(9)とを行なう、二軸延伸によってプラスチックチューブを連続的に製造する方法において、
放射方向に膨張した少なくとも1つの帯域で素材の壁へ外側から内部の圧力に対抗する圧力を加え(13)、上記の内部の圧力に対抗する圧力は制御下に膨張が続くのを妨げないように内圧よりも低く且つ確実に膨張できるだけの高い圧力であり、材料の厚さが同一円周上で実質的に一定となる圧力であることを特徴とする方法。
【請求項2】
上記の内部の圧力に対抗する圧力を、この圧力が存在しない場合に制御下に膨張を続けることができない帯域のみに局部的に加える請求項1に記載の方法。
【請求項3】
上記の内部の圧力に対抗する圧力を寸法調整装置(8)の入口で加える請求項1または2に記載の方法。
【請求項4】
上記の内部の圧力に対抗する圧力を機械的に加える請求項1〜3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項5】
素材を成形するための押出機(2)と、素材を分子配向温度に加熱するための少なくとも1つの加熱槽(3)と、素材を放射方向に膨張させる装置(4、5、7、11)と、寸法調整装置(8)と、チューブの冷却装置(9)と、チューブ出口に設けた少なくとも1つの下流の引張り機(10)とを有する請求項1〜4のいずれか一項に記載の方法を実施するための製造ラインにおいて、
放射方向に膨張する帯域(A)に、素材(E)の内部の圧力に対抗する圧力を素材(E)の外壁に加える手段(13、21;13、23;13、24)を有することを特徴とする製造ライン。
【請求項6】
上記の内部の圧力に対抗する圧力を素材の外壁に加える手段が機械的手段(13)である請求項5に記載の製造ライン。
【請求項7】
上記の機械的手段がローラ(13)から成る請求項6に記載の製造ライン。
【請求項8】
ローラの軸(14)がブラケット(16)に支持され、このブラケット(16)がチューブの縦方向(X−X)に対して直角な軸(18)に回動自在に取り付けられている請求項7に記載の製造ライン。
【請求項9】
ローラ(13)が弾性手段(21)によって素材の壁上に押圧されている請求項8に記載の製造ライン。
【請求項10】
ローラ(13)が流体ラム(24)によって押圧され、さらに、上記の内部の圧力に対抗する圧力を下流で測定された(25)チューブの厚さに応じて調節する自動制御装置を有する請求項8に記載の製造ライン。
【請求項11】
平均径のチューブの場合に4つのローラ(13)を円周上に配置する請求項7に記載の製造ライン。

【図1】
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【図3】
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【図4】
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【図2】
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【図5】
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【公表番号】特表2006−519715(P2006−519715A)
【公表日】平成18年8月31日(2006.8.31)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−505689(P2006−505689)
【出願日】平成16年3月3日(2004.3.3)
【国際出願番号】PCT/FR2004/000501
【国際公開番号】WO2004/080682
【国際公開日】平成16年9月23日(2004.9.23)
【出願人】(502349818)
【Fターム(参考)】