説明

二軸連続混練機、および二軸連続混練機を用いた電池の製造方法

【課題】電池の生産性を向上できるとともに電池の特性を向上できる二軸連続混練機を提供する。
【解決手段】軸部261・461よりも大きな外径を有する大径部262・462が形成されるとともに、大径部262・462の外周面から径方向内側に向かって所定の間隔だけ窪むとともに、搬送方向に貫通する複数の溝262a・462aが形成され、各溝262a・462aに位置する混合体を、各回転軸20・40の回転による遠心力で攪拌し、バレルの内壁12または各軸部261・461に粉体を衝突させるとともに、各クリアランスG1〜G5で粉体を剪断することで、粉体を液体に分散させる各分散板260・460を具備する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、中空の外装の内部に供給される粉体および液体が混合されてなる混合体を混練する二軸連続混練機、および二軸連続混練機を用いた電池の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、電池の製造において、アルミニウム箔や銅箔等の集電体の表面にペースト状の電極合剤を塗工する塗工工程が行われている。電極合剤は、例えば、活物質(正極活物質または負極活物質)および導電助剤等の粉体と、粉体を結着するスラリー状の結着剤や希釈剤等の液体とを混練することにより作成される。
このような電極合剤を作成する二軸連続混練機としては、例えば、特許文献1に開示される二軸式混練機がある。
【0003】
特許文献1に開示される二軸式混練機は、中空のケーシング内で回転可能な二つの回転軸に複数のパドルを固定するとともに、排出口の近傍に段付き円板状のスペーサを固定することで構成される。
各スペーサには、それぞれ大径部および小径部が形成される。各スペーサは、大径部および小径部により形成される段差が互いに嵌まり合った状態であるとともに、当該嵌まりあった部分に小さな間隙を形成するように、各回転軸に支持される。
また、各スペーサの大径部の外周面とケーシングの内周面との間にも、小さな間隙が形成される。
【0004】
このような特許文献1に開示される二軸式混練機は、回転するパドルによって電極合剤の原料となる粉体および液体が混練されてなる混合体を攪拌し、間隙を混合体が通過するときに、粉体をスペーサによって剪断する。
このような二軸式混練機は、単に間隙で粉体を剪断するだけである。この場合、仮に粘度の高い電極合剤を作成する場合、混合体の流動性が不足してしまい、スペーサの大径部の外周面やケーシングの内周面等に粉体が付着するとともに、間隙を液体が流れてしまう。
【0005】
つまり、特許文献1に開示される二軸式混練機では、粘度の高い電極合剤を作成するときに、スペーサが空回りしてしまい、スペーサにおいて粉体に対して剪断力を付与できない。
従って、粉体を液体に充分に分散させることができず、作成した電極合剤中に凝集物が残ってしまう可能性がある。
【0006】
塗工工程において、このような電極合剤を集電体の表面に塗工した場合、集電体の表面に塗面スジ(透け)が発生する、あるいは、電池特性が悪化する可能性がある。仮に塗面スジが発生した場合、当該集電体を廃棄する必要がある。
つまり、特許文献1に開示される二軸式混練機を用いて、粘度の高い電極合剤を作成し、当該電極合剤を用いて電池を製造した場合、電池の生産性および電池の特性が悪化してしまう可能性がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】実公昭63−25127号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は、以上の如き状況を鑑みてなされたものであり、電池の生産性を向上できるとともに電池の特性を向上できる二軸連続混練機および二軸連続混練機を用いた電池の製造方法を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
請求項1においては、中空の外装の内部に供給される粉体および液体が混合されてなる混合体を、搬送手段によって搬送しながら攪拌手段によって攪拌し、前記混合体を混練する二軸連続混練機であって、前記外装の内部にて、互いに所定の間隔を空けた状態であるとともに、互いに軸方向に平行な状態で、前記外装に回転可能に支持され、前記搬送手段および前記攪拌手段を支持する二つの回転軸と、前記各回転軸に支持されて、前記各回転軸の回転により回転することで、前記搬送手段により搬送される前記混合体を遠心力で攪拌し、前記粉体を前記液体に分散させる分散手段と、を具備し、前記各分散手段は、前記各分散手段の前記搬送方向他端側よりも大きな外径を有する大径部が、前記搬送方向一端側に形成されるとともに、前記大径部の外周面から径方向内側に向かって所定の間隔だけ窪むとともに、前記搬送方向に貫通する複数の溝が形成され、一方の前記回転軸に支持される前記分散手段の前記大径部の下流側に、他方の前記回転軸に支持される前記分散手段の前記大径部が位置するように、前記各回転軸の軸方向における位置を合わせた状態で、互いに対向して配置され、前記各分散手段の前記大径部と前記外装の内周面との間、および前記各分散手段同士の間にクリアランスを形成し、前記各溝に位置する前記混合体を、前記各回転軸の回転による遠心力で攪拌し、前記外装の内周面または前記分散手段に前記粉体を衝突させるとともに、前記各クリアランスで前記粉体を剪断することで、前記粉体を前記液体に分散させる、ものである。
【0010】
請求項2においては、前記各分散手段は、前記各大径部の互いに近接する側の端部が、前記搬送方向において部分的に重なり、該部分的に重なる部分の間に、前記搬送方向に沿ってクリアランスを形成する、ものである。
【0011】
請求項3においては、前記各分散手段は、前記搬送方向に隣り合うように、一つの前記回転軸に少なくとも二つ以上支持され、前記一つの回転軸に支持される前記各分散手段の中で、前記搬送方向に隣り合う二つの前記分散手段は、前記搬送方向下流側に位置する前記分散手段の前記各溝に前記混合体が留まるように、互いの位相をずらす、ものである。
【0012】
請求項4においては、粉体および液体が供給される中空の外装の内部にて、互いに所定の間隔を空けた状態であるとともに、互いに軸方向に平行な状態で、前記外装に回転可能に支持され、前記粉体および前記液体が混合されてなる混合体を搬送する搬送手段、および前記混合体を混練する攪拌手段を支持する二つの回転軸と、前記各回転軸に支持されて、前記各回転軸の回転により回転することで、前記搬送手段により搬送される前記混合体を遠心力で攪拌し、前記粉体を前記液体に分散させる分散手段と、を具備し、前記各分散手段は、前記各分散手段の前記搬送方向他端側よりも大きな外径を有する大径部が、前記搬送方向一端側に形成されるとともに、前記大径部の外周面から径方向内側に向かって所定の間隔だけ窪むとともに、前記搬送方向に貫通する複数の溝が形成され、一方の前記回転軸に支持される前記分散手段の前記大径部の下流側に、他方の前記回転軸に支持される前記分散手段の前記大径部が位置するように、前記各回転軸の軸方向における位置を合わせた状態で、互いに対向して配置され、前記各分散手段の前記大径部と前記外装の内周面との間、および前記各分散手段同士の間にクリアランスを形成し、前記各溝に位置する前記混合体を、前記各回転軸の回転による遠心力で攪拌し、前記外装の内周面または前記分散手段に前記粉体を衝突させるとともに、前記各クリアランスで前記粉体を剪断することで、前記粉体を前記液体に分散させる二軸連続混練機、を用いて、前記混合体を混練して電極合剤を作成する混練工程を含む、ものである。
【発明の効果】
【0013】
本発明は、分散板により混合体を遠心力で攪拌することで、粉体に対して確実に分散力を付与できるため、電池の生産性を向上できるとともに電池の特性を向上できる、という効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】二軸式連続混練機の全体的な構成を示す一部断面図。
【図2】分散板の形状を示す斜視図。
【図3】分散板を搬送方向から見た図。
【図4】分散板およびバレルにより形成されるクリアランスを示す図。
【図5】一組の分散板が部分的に重なる部分を示す説明図。
【図6】分散板の回転による遠心力が混合体に作用する状態を示す図。
【図7】混合体が分散板を通過するときの流れを示す断面図。
【図8】分散板が凝集物を剪断する状態を示す断面図。
【図9】搬送方向に隣り合う分散板の位相を示す説明図。
【図10】溝の形状の変形例を示す図。(a)略V字状の溝を示す図。(b)分散板の径方向中途部で周方向外側に広がる溝を示す図。
【図11】電池の製造方法を示すフローチャート。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下では、本実施形態の二軸連続混練機1について説明する。
【0016】
図1に示すように、本実施形態の二軸連続混練機1は、ペースト状の電極合剤を作成するためのものである。
電極合剤は、活物質および導電助剤等の粉体と、粉体を結着するスラリー状の結着剤や希釈剤等の液体とが混合されてなる混合体を、搬送しながら攪拌し、混合体を混練することにより作成される。
【0017】
なお、二軸連続混練機1の用途は、本実施形態に限定されるものでなく、例えば、熱可塑性樹脂、熱硬化性樹脂、セラミックス、および磁性材料等の作成に用いることが可能である。
【0018】
以下では、説明の便宜上、図1における紙面左方向から紙面右方向へ向かう方向を「二軸連続混練機1の搬送方向」とする(図1の紙面上側に示す矢印参照)。また、図1における紙面上下方向を「二軸連続混練機1の上下方向」とする。
【0019】
二軸連続混練機1は、バレル10および二つの回転軸20・40を具備する。
【0020】
バレル10は、二軸連続混練機1の外装を成す中空の部材であり、当該中空部分が混練室11となる。バレル10は、各回転軸20・40の軸方向が搬送方向に対して平行となるように、各回転軸20・40を回転可能に支持する。
【0021】
混練室11は、搬送方向から見て、二つの真円が部分的に重なり合った断面形状を有し、当該断面形状を保ったまま搬送方向に沿って延在している(図3参照)。混練室11における各円状部分の曲率中心には、それぞれ各回転軸20・40が位置する。
すなわち、各回転軸20・40は、バレル10の内部にて、上下方向に互いに所定の間隔を空けた状態で、互いに軸方向に平行な状態で、バレル10に回転可能に支持される。
【0022】
各回転軸20・40は、それぞれ所定の駆動装置と接続されており、当該駆動装置が駆動することで、図1の紙面左端部に示す矢印の方向に回転可能に構成される。
【0023】
二軸連続混練機1は、各回転軸20・40にて送りスクリュー21・41やパドル22・42等を支持することにより、第一投入部A、固練り部B、第二投入部C、希釈部D、排出部E、および戻し部Fを混練室11内に形成する。
【0024】
第一投入部Aは、粉体および液体がバレル10の内部に供給される部分である。第一投入部Aは、混練室11の上流側端部に位置する。
【0025】
バレル10の第一投入部Aに対応する部分には、バレルの内壁12より外部に開口する粉体供給口13が形成される。粉体は、粉体供給口13より投入される(図1に示す矢印T1参照)。
【0026】
また、バレル10の第一投入部Aに対応する部分のうち、粉体供給口13よりもやや下流側には、バレルの内壁12より外部に開口する第一液体供給口14が形成される。
本実施形態の二軸連続混練機1は、第一液体供給口14および後述する第二液体供給口15より、二回に分けて液体を投入する構成となっている(図1に示す矢印T2・T3参照)。
【0027】
第一液体供給口14より液体が供給されることで、粉体は、液体と混合され、混合体となる。
【0028】
第一投入部Aは、上側の回転軸20に支持される送りスクリュー21、および下側の回転軸40に支持される送りスクリュー41等によって構成される。
【0029】
搬送手段としての各送りスクリュー21・41は、それぞれ螺旋状の羽根部を有し、各回転軸20・40の外周を覆うように各回転軸20・40に同心的に支持される。
各送りスクリュー21・41は、互いの軸方向(搬送方向)の位置を合わせて対向するように配置されるとともに、各回転軸20・40の回転時に互いに接触しない。
【0030】
各送りスクリュー21・41は、各回転軸20・40の回転に伴って軸心回りに回転し、混合体を混練室11の下流側に向けて搬送する。
【0031】
固練り部Bは、実際に作成する電極合剤の粘度よりも混合体の粘度が高い状態で、混合体を混練することで、粉体を液体に分散させる部分である。固練り部Bは、第一投入部Aの下流側にて第一投入部Aと隣接する。
【0032】
固練り部Bは、上側の回転軸20に支持される複数のパドル22・22・・・および抵抗板23、下側の回転軸40に支持される複数のパドル42・42・・・および抵抗板43等から構成される。
なお、下側のパドル42および下側の抵抗板43は、それぞれ上側のパドル22および上側の抵抗板23と同一の形状であるため、その形状の説明に関しては省略する。
【0033】
攪拌手段としての各パドル22・22・・・は、それぞれ搬送方向から見たときに略三角形の断面形状を有し、その中心部が回転軸20に支持される。
各パドル22・22・・・は、その位相を互いにずらした状態であり、上流側に位置するパドル22から順にその位相が徐々に変化する。
【0034】
上側の各パドル22・22・・・および下側の各パドル42・42・・・は、互いの軸方向の位置を合わせて対向するように配置され、対向するもの同士が同位相となる。
また、上側の各パドル22・22・・・および下側の各パドル42・42・・・は、それぞれ各回転軸20・40の回転時に互いに接触しない。
【0035】
上側の各パドル22・22・・・および下側の各パドル42・42・・・は、それぞれ各回転軸20・40の回転に伴って軸心回りに回転し、その回転によって混合体を攪拌する。
【0036】
抵抗板23は、その中心部が回転軸20に支持され、最も下流側に位置するパドル22の下流側に位置する。抵抗板23には、小円板部23aおよび大円板部23bが形成される。
【0037】
小円板部23aは、大円板部23bよりも小さな外径を有する円板状に形成される。小円板部23aの厚み(軸方向における長さ)は、大円板部23bの厚みよりもやや大きい。
【0038】
大円板部23bは、小円板部23aと同心的に連続するような円板状に形成される。
すなわち、抵抗板23の形状は、その搬送方向一端側が、抵抗板23の径方向外側に突出するような段付きの略円板形状である。
【0039】
下側の抵抗板43は、搬送方向における小円板部43aおよび大円板部43bの位置関係が、上側の抵抗板23の小円板部23aおよび大円板部23bに対して反対となる。
【0040】
各抵抗板23・43は、互いの軸方向の位置を合わせて対向するように配置される。
このとき、各大円板部23b・43bとバレルの内壁12との間、および各抵抗板23・43同士の間には、粉体を圧縮できる程度のクリアランスが形成される。
【0041】
各抵抗板23・43同士の間とは、上側の小円板部23aの下端部と下側の大円板部43bの上端部との間、上側の大円板部23bの上流側端面と下側の大円板部43bの下流側端面との間、上側の大円板部23bの下端部と下側の小円板部43aの上端部との間のことである。
すなわち、各抵抗板23・43は、各回転軸20・40の回転時に互いに接触しない。
【0042】
各抵抗板23・43は、それぞれ各回転軸20・40の回転に伴って軸心回りに回転し、前記各クリアランスを混合体が通過するときに、粉体を剪断するとともに圧縮する。
【0043】
第二投入部Cは、液体がバレル10の内部に供給される部分である。第二投入部Cは、固練り部Bの下流側にて固練り部Bと隣接する。
【0044】
バレル10の第二投入部Cに対応する部分には、バレルの内壁12より外部に開口する第二液体供給口15が形成される。電極合剤の作成に必要な残りの液体(第一液体供給口14より供給された液体以外の液体)は、第二液体供給口15より投入される(図1に示す矢印T3参照)。
【0045】
第二投入部Cは、上側の回転軸20に支持される送りスクリュー24、および下側の回転軸40に支持される送りスクリュー44等から構成される。
【0046】
搬送手段としての各送りスクリュー24・44は、それぞれ各抵抗板23・43の下流側に位置する点を除いて、第一投入部Aの各送りスクリュー21・41と同様に構成される。
【0047】
各送りスクリュー24・44は、それぞれ各回転軸20・40の回転に伴って軸心回りに回転することにより、第二投入部Cより投入される液体と、固練り部Bより搬送される混合体とを、混練室11の下流側に向けて搬送する。
【0048】
希釈部Dは、固練り部Bより搬送される混合体を、第二投入部Cより投入される液体で希釈する部分である。希釈部Dは、第二投入部Cの下流側にて第二投入部Cと隣接する。
【0049】
希釈部Dは、上側の回転軸20に支持される複数のパドル25・25・・・、複数の分散板260〜280、および抵抗板29、下側の回転軸40に支持される複数のパドル45・45・・・、複数の分散板460〜480、および抵抗板49等から構成される。
なお、分散板270・280・460・470・480は、それぞれ分散板260と同一の形状であるため、その形状の説明に関しては省略する。
【0050】
攪拌手段としての各パドル25・45は、それぞれ各送りスクリュー24・44の下流側に位置する点を除いて、固練り部Bの各パドル22・42と同様に構成される。
【0051】
上側の各パドル25・25・・・および下側の各パドル45・45・・・は、それぞれ各回転軸20・40の回転に伴って軸心回りに回転し、その回転によって固練り部Bからの混合体と、第二投入部Cからの液体とを攪拌する。
【0052】
図1および図2に示すように、分散手段としての分散板260は、最も下流側に位置するパドル25の下流側に位置する。分散板260には、軸部261および大径部262が形成される。
【0053】
軸部261は、抵抗板23の小円板部23aと略同一の外径を有し、その中心部が回転軸20に支持される。
【0054】
大径部262は、軸部261の上流側より分散板260の径方向外側に向かって突出する。大径部262の外径は、抵抗板23の大円板部23bと略同一の外径となる。大径部262の厚みは、軸部261の半分程度の長さ寸法が設定されている。
すなわち、大径部262は、分散板260の上流側に形成され、軸部261(分散板260の下流側)よりも大きな外径を有する略円板状に形成される。
【0055】
このように、分散板260の形状は、搬送方向一端側(大径部262が位置する側、すなわち上流側)が搬送方向他端側(大径部262と対向する側、すなわち下流側)よりも大きな外径を有する段付きの略円板形状である。
【0056】
大径部262の外周面には、複数箇所(本実施形態では二十四箇所)に溝262a・262a・・・が形成される。
【0057】
各溝262a・262a・・・は、それぞれ所定の間隔だけ径方向内側に向かって真っ直ぐに窪み、図2において紙面上側に位置したときに、その形状が略U字状となる。各溝262a・262a・・・の周方向の長さは、それぞれ大径部262の溝262aが形成されない部分の周方向の長さと略同一の長さとなる。
【0058】
各溝262a・262a・・・は、大径部262の断面形状が変わらないように、それぞれ大径部262の上流側端部から下流側端部まで連続して形成される。すなわち、各溝262a・262a・・・は、それぞれ大径部262を搬送方向に貫通する。
【0059】
このような各溝262a・262a・・・は、分散板260の軸心を基準として、互いに等間隔(本実施形態では約15°)に位相をずらしたような位置関係となる。
【0060】
なお、分散板260の構成は、本実施形態に限定されるものでない。例えば、分散板260は、抵抗板23にあるような小円板部と、外周面に各溝262a・262a・・・が形成される大円板部とにより構成しても構わない。
【0061】
図1および図3に示すように、各分散板260・460は、互いの軸方向の位置を合わせた状態で、互いに対向するように配置される。このとき、下側の分散板460は、搬送方向における大径部462の位置関係が、上側の分散板260に対して反対となる。
【0062】
従って、各分散板260・460は、一方の回転軸20に支持される上側の分散板260の大径部262の下流側に、他方の回転軸40に支持される下側の分散板460の大径部462が位置することとなる。
【0063】
各分散板260・460は、搬送方向において各大径部262・462の互いに近接する側の端部(すなわち、上側の大径部262の下端部と下側の大径部462の上端部)が部分的に重なる。
【0064】
当該部分的に重なる部分において、各溝262a・462aが互いに搬送方向上に重ならないように、各分散板260・460の位相の関係が調整されている。
言い換えれば、上側の分散板260の溝262aの下流側に、下側の分散板460の大径部462のうち、溝462aが形成されない部分が位置するように、各分散板260・460の位相の関係が調整されている。
【0065】
本実施形態では、各分散板260・460が互いに同じ位相である場合、前記部分的に重なる部分において、各溝262a・462aが搬送方向上に重なるため、下側の分散板460の位相を、溝262a一つ分の角度だけ、上側の分散板260の位相に対してずらしている。
【0066】
二軸連続混練機1では、このような上下両側の分散板260・460を一組として、複数組の分散板を、搬送方向に沿って連続して配置するような多段構成としている。
【0067】
一組の分散板260・460を配置したとき、図4および図5に示すように、各大径部262・462(より詳細には、各溝262a・462aが形成されない部分)とバレルの内壁12との間には、クリアランスG1・G5が形成される。また、各分散板260・460同士の間には、クリアランスG2〜G4が形成される。
【0068】
各分散板260・460同士の間に形成されるクリアランスG2とは、上側の大径部262の溝262aが形成されない部分が、下側の分散板460に最も接近する位置(下端部)まで回転したときに、上側の大径部262の下端部と下側の軸部461の上端部との間に形成される隙間である。
以下では、このような各分散板260・460同士の間に形成されるクリアランスG2を、「上側の大径部262と下側の軸部461とのクリアランスG2」と表記する。
【0069】
また、各分散板260・460同士の間に形成されるクリアランスG3とは、上側の大径部262の下流側側面と下側の大径部462の上流側側面との間に、搬送方向に沿って形成される隙間である。
このような各大径部262・462のクリアランスG3は、各大径部262・462が部分的に重なる部分の間に形成される。
以下では、このような各分散板260・460同士の間に形成されるクリアランスG3を、「各大径部262・462のクリアランスG3」と表記する。
【0070】
そして、各分散板260・460同士の間に形成されるクリアランスG4とは、下側の大径部462の溝462aが形成されない部分が、上側の分散板260に最も接近する位置(上端部)まで回転したときに、上側の軸部261の下端部と下側の大径部462の上端部との間に形成される隙間である。
以下では、各分散板260・460同士の間に形成されるクリアランスG4を、「上側の軸部261と下側の大径部462とのクリアランスG4」と表記する。
【0071】
すなわち、各分散板260・460は、各回転軸20・40の回転時に互いに接触しない。
【0072】
図6に示すように、このような各溝262a・462aに混合体が位置する状態で、各回転軸20・40が回転した場合、各分散板260・460は、それぞれ混合体を掻き取りながら回転することとなる。
従って、各分散板260・460は、それぞれ混合体に対して遠心力を作用させ、その径方向外側に向かって混合体を押し出す。(図6に示す矢印A1〜A5参照)。
【0073】
すなわち、各分散板260・460は、それぞれ各送りスクリュー24・44により搬送される混合体を、各回転軸20・40の回転による遠心力で攪拌することとなる。言い換えれば、各分散板260・460は、それぞれ混合体に対して攪拌力を付与することとなる。
【0074】
そして、各分散板260・460は、それぞれ粉体に対して剪断力を付与し、粉体を液体に分散させる。
このような攪拌力を付与してから粉体を液体に分散させるまでの流れは、各溝262a・462aの位相毎に異なる。このため、以下では、位相毎に分けて説明する。
【0075】
まず、上側の大径部262とバレルの内壁12とのクリアランスG1に対応する位相の溝262aにおける、分散までの流れについて説明する。
クリアランスG1に対応する位相の溝262aとは、分散板260の回転による遠心力で、バレルの内壁12に向かって混合体を押し出すような溝262aである(図6に示す矢印A1・A1・・・参照)。
【0076】
このようにクリアランスG1に対応する位相の溝262aに位置する混合体を押し出すことで、分散板260は、バレルの内壁12に粉体を衝突させる。
これにより、分散板260は、粉体を剪断する。つまり、分散板260は、粉体に対して衝突による剪断力を付与する。
【0077】
バレルの内壁12に衝突させた後で、図4および図6に示すように、分散板260は、大径部262とバレルの内壁12とのクリアランスG1で、粉体をさらに剪断する。
つまり、分散板260は、大径部262とバレルの内壁12とのクリアランスG1を混合体が通過するときに、粉体に対してさらに剪断力を付与する。
【0078】
このように、分散板260は、二つの剪断力を粉体に対して付与することで、粉体を液体に分散させる。つまり、分散板260は、粉体に対して分散力を付与する。
【0079】
図7に示すように、大径部262とバレルの内壁12とのクリアランスG1で剪断される粉体は、上流側および下流側に押し出される(図7に示す矢印A1参照)。
なお、図7および図8においては、図6に示す状態から溝262a一つ分の角度だけ、各分散板260〜480が回転している状態を示している。
【0080】
仮に、粘度の高い電極合剤を作成する場合、混合体の流動性が不足して各抵抗板23・43が空回りしてしまい、各抵抗板23・43において粉体に対して剪断力を付与できない。
この場合、図8に示すように、分散板260に搬送される混合体に凝集物W10(粒子の塊)が含まれる場合がある。
【0081】
分散板260は、クリアランスG1に対応する位相の溝262aに、このような粘度の高い混合体が位置した場合でも、混合体を掻き取りながら回転し、混合体に対して遠心力を作用させる。
つまり、粘度の高い電極合剤を作成する場合でも、分散板260は、各抵抗板23・43のように空回りするようなことはなく、確実に混合体を攪拌する。
【0082】
これによれば、分散板260は、凝集物W10に対して、衝突による剪断力、および大径部262とバレルの内壁12とのクリアランスG1による剪断力を付与できる。
【0083】
これにより、分散板260は、凝集物W10を解砕して微粒化する。解砕された凝集物W10は、大径部262とバレルの内壁12とのクリアランスG1より、上流側および下流側に押し出される(図8に示す解砕された凝集物W11・W11参照)。
【0084】
このように、分散板260は、電極合剤の粘度に関わらず、粉体に対して分散力を付与できる。
【0085】
次に、上側の大径部262と下側の軸部461とのクリアランスG2に対応する位相の溝262aにおける、分散までの流れについて説明する。
図5および図6に示すように、クリアランスG2に対応する位相の溝262aとは、上側の分散板260の回転による遠心力で、下側の軸部461の上端部に向かって混合体を押し出すような溝262aである(図6に示す矢印A2参照)。
【0086】
このようにクリアランスG2に対応する位相の溝262aに位置する混合体を押し出すことで、上側の分散板260は、下側の軸部461の上端部に粉体を衝突させ、粉体を剪断する。
【0087】
下側の軸部461の上端部に衝突させた後で、上側の分散板260は、上側の大径部262と下側の軸部461とのクリアランスG2で、粉体をさらに剪断する。
【0088】
これにより、分散板260は、粉体を液体に分散させる。つまり、粉体に対して分散力を付与する。
【0089】
図5および図7に示すように、上側の大径部262と下側の軸部461とのクリアランスG2で剪断される粉体は、上流側および下流側に押し出される(図7に示す矢印A2参照)。
【0090】
このような粉体を剪断して液体に分散させる動作は、粘度の高い電極合剤を作成する場合も同様に行われる。また、混合体に凝集物W10が含まれる場合でも同様に行われ、凝集物W10を解砕して微粒化する。
【0091】
ここで、上側の大径部262と下側の軸部461とのクリアランスG2で剪断されて下流側に押し出される粉体は、各大径部262・462のクリアランスG3に搬送され、当該クリアランスG3でさらに剪断される。
【0092】
各分散板260・460は、互いに同一方向に回転している。このため、各大径部262・462のクリアランスG3においては、各分散板260・460が互いに反対方向に向かって回転することとなる。
【0093】
従って、粉体に作用する剪断力が、一つの分散板による剪断力(例えば、大径部262とバレルの内壁12とのクリアランスG1による剪断力)と比較して約二倍になる。
【0094】
このように、各大径部262・462のクリアランスG3を形成することで、当該クリアランスG3を混合体が通過するときに、一つの分散板による分散力と比較して約二倍の大きさの分散力を、粉体に対して付与できる。
【0095】
これによれば、二軸連続混練機1は、各大径部262・462のクリアランスG3を混合体が通過するときに、粉体に対してより大きな分散力を付与できる。
【0096】
次に、大径部462とバレルの内壁12とのクリアランスG5に対応する位相の溝262aにおける、分散までの流れについて説明する。
図6に示すように、クリアランスG5に対応する位相の溝262aとは、上側の分散板260の回転による遠心力で、下側の軸部461の上端部よりも、下側の分散板460の回転方向上流側または回転方向下流側に向かって混合体を押し出すような溝262aである(図6に示す矢印A3・A3参照)。
【0097】
このようなクリアランスG5に対応する位相の溝262aに位置する混合体は、上側の大径部262と下側の軸部461とのクリアランスG2を通過せずに、下流側へ搬送される。つまり、粉体は、分散板260では剪断されずに、下流側へ搬送される。
下流側へ搬送される混合体は、大径部462とバレルの内壁12とのクリアランスG5に対応する位相の溝462aまで搬送される(図6に示す矢印A5参照)。
【0098】
このようなクリアランスG5に対応する位相の溝462aに位置する混合体に対して、分散板460は、前述したようなクリアランスG1に対応する位相の溝262aに位置する混合体の場合と同様に、遠心力を作用させる。
すなわち、図4および図6に示すように、分散板460は、その回転による遠心力で粉体をバレルの内壁12に衝突させ、大径部462とバレルの内壁12とのクリアランスG5にて粉体を剪断する。
【0099】
つまり、二軸連続混練機1は、クリアランスG5に対応する位相の溝262aに位置する混合体に対して、分散板460によって遠心力を作用させ、粉体に対して分散力を付与する。
【0100】
次に、上側の軸部261と下側の大径部462とのクリアランスG4に対応する位相の溝262aにおける、分散までの流れについて説明する。
クリアランスG4に対応する位相の溝262aとは、上側の分散板260の回転による遠心力で、下側の軸部461の上端部よりも、下側の分散板460の回転方向のやや上流側に向かって混合体を押し出すような溝262aである(図6に示す矢印A4参照)。
【0101】
このようにクリアランスG4に対応する位相の溝262aに位置する混合体は、上側の大径部262と下側の軸部461とのクリアランスG2を通過せずに、下流側へ搬送される。つまり、粉体は、分散板260では剪断されずに、下流側へ搬送される。
下流側へ搬送される混合体は、上側の軸部261と下側の大径部462とのクリアランスG4に対応する位相の溝462aまで搬送される。
【0102】
このようなクリアランスG4に対応する位相の溝462aに位置する混合体に対して、分散板460は、前述したようなクリアランスG2に対応する位相の溝262aに位置する混合体の場合と同様に、遠心力を作用させる。
すなわち、図5および図6に示すように、下側の分散板460は、その回転による遠心力で粉体を上側の軸部261に衝突させ、上側の軸部261と下側の大径部462とのクリアランスG4にて粉体を剪断する。
【0103】
つまり、二軸連続混練機1は、クリアランスG4に対応する位相の溝262aに位置する混合体に対して、分散板460によって遠心力を作用させ、粉体に対して分散力を付与する。
【0104】
このように、各分散板260・460は、それぞれ各溝262a・462aに位置する混合体を、遠心力で攪拌し、バレルの内壁12または各軸部261・461に粉体を衝突させて剪断するとともに、各クリアランスG1〜G5で粉体を剪断する。
これにより、各分散板260・460は、粉体を液体に分散させる。また、各分散板260・460は、混合体に凝集物W10が含まれている場合には、当該凝集物W10を解砕して微粒化する。
【0105】
これによれば、作成する電極合剤の粘度に関わらず、粉体に対して分散力を付与できる。
従って、粘度の高い電極合剤を作成するときに、凝集物W10を確実に解砕して微粒化し、粉体を液体に充分に分散させることができる。つまり、粘度の高い電極合剤を作成した場合でも、当該電極合剤中に凝集物W10が含まれることを防止できる。
すなわち、従来技術にあるような二軸式混練機よりも、電極合剤の粘度適用範囲を拡大することが可能となる。
【0106】
各分散板270・280は、それぞれ各大径部272・282が各軸部271・281の上流側より、その径方向外側に突出する。また、各分散板470・480は、それぞれ各大径部472・482が各軸部471・481の下流側より、その径方向外側に突出する。
このような上側の各分散板270・280および下側の各分散板470・480は、それぞれ上述したような上側の分散板260および下側の分散板460と同様に動作する。
【0107】
従って、図7に示すように、二軸連続混練機1は、一組の分散板260・460を混合体が通過したとき、その下流側に位置する二組の分散板270・280・470・480によって、粉体に対してさらに分散力を付与する(図7に示す矢印A1・A2・A5参照)。
【0108】
各組の分散板において部分的に重なる部分(上側の大径部272と下側の大径部462との間、および上側の大径部282と下側の大径部472との間)には、各大径部262・462のクリアランスG3と同様のクリアランスが形成されている。
【0109】
従って、二軸連続混練機1は、仮に各分散板260〜480の部分的に重なる部分(混練室11の上下中央部分)だけを混合体が通過した場合、各大径部262〜482のクリアランスで、粉体に対して二倍の分散力を付与する(図7に示す矢印A2・A2・・・参照)。
【0110】
なお、混合体は、実際には、各回転軸20・40の回転方向に沿って回転しながら各分散板260〜480を通過する。
すなわち、二軸連続混練機1は、混合体がどの時点で(例えば、互いに異なる組である上側の分散板270と下側の分散板460とが部分的に重複する部分で)混練室11の上下中央部に位置した場合でも、粉体に対して二倍の分散力を付与できる構成である。
【0111】
ここで、混合体の搬送速度が比較的速い場合、各溝262a・262a・・・に位置する混合体に対して遠心力を作用させる前に、混合体が各溝262a・262a・・・を通過してしまう可能性がある。
【0112】
図7および図9に示すように、一つの回転軸に支持される各分散板の中で、搬送方向に隣り合う二つの分散板は、搬送方向から見たときに、一方の分散板の各溝に他方の分散板の各溝が重ならないように、溝一つ分の角度だけ互いに位相をずらした状態で配置されている。
例えば、分散板270は、分散板260の位相と比較して、溝262a一つ分の角度だけ、分散板260に対してその位相がずれている。
【0113】
つまり、本実施形態では、上側の分散板270と下側の分散板460と下側の分散板480とは、互いに同じ位相となっている。また、上側の分散板260と上側の分散板280と下側の分散板470とは、互いに同じ位相となっている。
【0114】
これによれば、二軸連続混練機1は、遠心力を作用させる前に上側の分散板260の各溝262a・262a・・・を混合体が通過した場合、その下流側に位置する上側の分散板270の大径部272、または下側の分散板460の大径部462で塞き止めることができる。
【0115】
つまり、遠心力を作用させる前に上側の分散板260の各溝262a・262a・・・を通過した混合体を、上側の分散板270の各溝272a・272a・・・、または下側の分散板460の各溝462a・462a・・・に留めることができる。
各溝272a・462aに留まった混合体に対して、上側の分散板270または下側の分散板460は、遠心力を作用させ、粉体に対して前述したような分散力を付与する。
【0116】
このように各分散板260〜480は、搬送方向に隣り合うように、一つの回転軸20・40に少なくとも二つ以上支持される。
一つの回転軸20・40に支持される各分散板260〜460の中で、搬送方向に隣り合う二つの分散板は、下流側に位置する分散板の各溝に、混合体が留まるように、互いの位相をずらす。
【0117】
これによれば、比較的速い速度で混合体が搬送された場合でも、混合体を各溝262a〜462aに留めて、混合体に対して確実に遠心力を作用させることができる。従って、粉体に対して確実に分散力を付与できる。
これによれば、粘度の高い電極合剤を比較的速い搬送速度で作成した場合でも、粉体を液体に充分に分散させることができる。
【0118】
図1に示すように、希釈部Dの各抵抗板29・49は、それぞれ各分散板280・480の下流側に位置する点を除いて、固練り部Bの各抵抗板23・43と同様に構成される。
【0119】
下側の抵抗板49は、搬送方向における小円板部49aおよび大円板部49bの位置関係が、上側の抵抗板29の小円板部29aおよび大円板部29bに対して反対となる。
【0120】
各抵抗板29・49は、それぞれ各回転軸20・40の回転に伴って軸心回りに回転し、各大円板部29b・49bとバレルの内壁12との間、および各抵抗板29・49同士の間に形成されるクリアランスを混合体が通過するときに、粉体を剪断するとともに圧縮する。
【0121】
排出部Eは、混合体を排出する部分である。排出部Eは、希釈部Dの下流側にて希釈部Dと隣接する。
【0122】
バレル10の排出部Eに対応する部分には、バレルの内壁12より外部に開口する電極合剤排出口16が形成される。
【0123】
排出部Eは、上側の回転軸20に支持される複数のパドル30・30・・・および、下側の回転軸40に支持される複数のパドル50・50・・・等から構成される。
【0124】
攪拌手段としての各パドル30・50は、それぞれ各抵抗板29・49の下流側に位置する点を除いて、固練り部Bの各パドル25・45と同様に構成される。
【0125】
すなわち、上側の各パドル30・30・・・および下側の各パドル50・50・・・は、それぞれ各回転軸20・40の回転に伴って軸心回りに回転し、その回転によって希釈部Dより搬送される混合体を攪拌する。
上側の各パドル30・30・・・および下側の各パドル50・50・・・により攪拌される混合体は、ペースト状の電極合剤となり、電極合剤排出口16より排出される(図1に示す矢印T4参照)。
【0126】
戻し部Fは、電極合剤を電極合剤排出口16に戻す部分である。戻し部Fは、排出部Eの下流側にて排出部Eと隣接し、混練室11の下流側端部に位置する。
【0127】
戻し部Fは、上側の回転軸20に支持される戻しスクリュー31、および下側の回転軸40に支持される戻しスクリュー51等から構成される。
【0128】
各戻しスクリュー31・51は、それぞれ各送りスクリュー21・41とは、混合体(電極合剤)の送り方向が逆向きとなる。
各戻しスクリュー31・51は、それぞれ電極合剤を、搬送方向とは逆方向(上流側)に押し戻し、電極合剤排出口16からバレル10の外部に排出する。
【0129】
ここで、特許文献1に開示される二軸式混練機では、搬送経路の中途部に戻しスクリューを配置して、混合体を積極的に上流側に押し戻している。
【0130】
このような構成では、液体が戻しスクリューにより押し戻されることなく通過する一方で、粉体だけが戻しスクリューによって押し戻されてしまう場合がある。
この場合、電極合剤に対して予め設定されている組成比と、実際に作成した電極合剤の組成比とが合わなくなる可能性がある。
【0131】
また、混合体を積極的に上流側に押し戻すことで、粉体および液体が投入した分だけ電極合剤として排出されなくなり、その結果、粉体および液体が各供給口で詰まってしまう可能性がある。
【0132】
一方、本実施形態の二軸連続混練機1では、このような積極的な押し戻しを行わない。従って、二軸連続混練機1は、電極合剤に対して予め設定されている組成比に合うような電極合剤を作成できるとともに、各供給口13〜15での詰まりの発生を防止できる。
【0133】
なお、各溝262a〜482aの形状は、本実施形態に限定されるものでない。例えば、図10(a)に示すように、溝262aの形状は、図10(a)において紙面上側に位置したときに略V字状となるような形状であっても構わない。
【0134】
ただし、各溝262a〜482aは、より多くの混合体に対して遠心力を付与できるという観点から、その体積(各溝262a〜482aにより形成される各大径部262〜462の空間部分の体積)が大きくなるような形状であることが好ましい。
【0135】
そこで、図10(b)に示すように、溝262aの形状を、分散板260の径方向中途部において、分散板260の周方向外側に広がるような形状とすることが考えられる。
しかし、この場合、溝262aに位置する混合体に対して遠心力を作用させたときに、前記周方向外側に広がる部分に位置する混合体が、溝262aの内側に留まってしまう可能性がある。つまり、バレルの内壁12等に粉体を衝突させることができない可能性がある。
【0136】
以上より、各溝262a〜482aの形状は、それぞれ各大径部262〜482の外周面から各分散板260〜480の径方向内側に向かって真っ直ぐに窪んだ形状であることが好ましい。
【0137】
二軸連続混練機1により作成される電極合剤は、電池の製造工程において用いられる。
【0138】
以下では、図11を参照して、二軸連続混練機1を用いた電池を製造する工程である製造工程S1について説明する。
なお、電池は、容器に電解液を充填して、電極体に電解液を含浸させて充放電可能に構成されたリチウムイオン二次電池やニッケル・水素蓄電池等の電池であるものとする。
【0139】
製造工程S1では、混練工程S10、塗工工程S20、およびプレス工程S30を行う。
【0140】
混練工程S10は、電極合剤を作成する工程である。
混練工程S10では、二軸連続混練機1を用いて、バレル10の内部に供給される粉体および液体が混合されてなる混合体を混練して電極合剤を作成する。こうして、電極合剤である正極合剤および負極合剤を作成する。
このとき、正極活物質、導電助剤、結着剤、および希釈剤等を混練して正極合剤を作成し、負極活物質、導電助剤、結着剤、および希釈剤等を混練して負極合剤を作成する。
【0141】
塗工工程S20は、電極合剤を集電体に塗工する工程である。
塗工工程S20では、ダイコータ等の既存の塗工装置を用いて、混練工程S10で作成した正極合剤および負極合剤を、それぞれ集電体である正極集電体(例えば、アルミニウム、チタン、およびステンレス鋼等の金属箔)および負極集電体(例えば、銅、ニッケル、およびステンレス鋼等の金属箔)の表面に塗工した後、乾燥させる。
【0142】
ここで、混練工程S10で作成した正極合剤および負極合剤は、それぞれ各分散板260〜480によって凝集物W10が解砕されて、粉体が液体に充分に分散している状態である。
【0143】
このため、凝集物W10が含まれる電極合剤を、集電体に塗工することにより生じる電池特性の悪化を抑制できる。
また、集電体に塗面スジ(透け)が発生することを防止できる。従って、電池の生産に要する時間を短縮できる。つまり、電池の生産性を向上できる。
【0144】
混練工程S10において、粘度の高い電極合剤を作成した場合、電極合剤の乾燥に要する時間を短縮できる。
本実施形態の二軸連続混練機1を用いた場合には、粘度の高い電極合剤を作成した場合でも、粉体を液体に充分に分散させることができる。従って、粘度の高い電極合剤を作成した場合でも、電池の特性の悪化等を抑制できる。
つまり、本実施形態の二軸連続混練機1を用いて粘度の高い電極合剤を作成した場合には、電池の生産性をさらに向上できるとともに、電池の特性の悪化を抑制できる。
【0145】
仮に、凝集物W10が含まれる可能性がある電極合剤、つまり、従来技術にあるような二軸式混練機により作成される電極合剤は、塗工工程S20で集電体に塗工される前に、所定のフィルター処理が行われ、凝集物W10が除去される。
【0146】
一方、本実施形態の二軸連続混練機1により作成される電極合剤は、凝集物W10が含まれていないため、このようなフィルター処理を行う必要がない。
つまり、本実施形態の二軸連続混練機1を用いて粘度の高い電極合剤を作成した場合には、フィルター処理に用いる設備やフィルター処理に要する時間を削減できる。
【0147】
プレス工程S30は、正極合剤および負極合剤をプレス加工する工程である。
プレス工程S30では、塗工工程S20で正極集電体および負極集電体の表面に塗工した正極合剤および負極合剤を、ロールプレス等の既存のプレス装置を用いてプレス加工し、正極および負極を作成する。
【0148】
プレス工程S30の後は、正極、負極、およびセパレータ(例えば、ポリエチレン、ポリプロピレンといったポリオレフィン樹脂等からなる絶縁体)を用いて電極体を作成し、当該電極体を容器(例えば、アルミニウムや、ステンレス鋼等からなる金属缶)に収納する。さらに、既存の所定の工程(注液工程、初期充電工程、およびエージング工程等)を行うことで電池を製造する。
【0149】
なお、各分散板260〜480の配置は、本実施形態に限定されるものでない。すなわち、各分散板260〜480は、粉体および液体を混練室11に投入してから、電極合剤を排出するまでの経路上に、少なくとも一つ配置されていればよい。
本実施形態のように、混合体を固練りした後で液体を加えて希釈する場合、固練り部Bおよび希釈部Dにそれぞれ一つずつ配置することが好ましい。
【0150】
また、一つの回転軸20・40に支持される各分散板260〜480の個数は、本実施形態に限定されるものでない。すなわち、一組の分散板260・460で粉体を液体に充分に分散できる場合には、一組の分散板260・460だけを混合体の搬送経路上に配置するような構成であっても構わない。
この場合、分散時間を短くできる。
【0151】
分散時間が短ければ、より短時間で電極合剤を作成できるため、一つの回転軸20・40に支持される分散板の個数は、粉体を液体に充分に分散できる枚数の中で、ある程度少ない枚数であることが好ましい。
これにより、電池の製造方法における混練工程S10に要する時間を短縮できるため、電池の生産性をより向上できる。
【符号の説明】
【0152】
1 二軸連続混練機
10 バレル(外装)
20・40 回転軸
21・41 送りスクリュー(搬送手段)
22・42 パドル(攪拌手段)
24・44 送りスクリュー(搬送手段)
25・45 パドル(攪拌手段)
30・50 パドル(攪拌手段)
260・460 分散板(分散手段)
262a・462a 溝
270・470 分散板(分散手段)
272a・472a 溝
280・480 分散板(分散手段)
282a・482a 溝

【特許請求の範囲】
【請求項1】
中空の外装の内部に供給される粉体および液体が混合されてなる混合体を、搬送手段によって搬送しながら攪拌手段によって攪拌し、前記混合体を混練する二軸連続混練機であって、
前記外装の内部にて、互いに所定の間隔を空けた状態であるとともに、互いに軸方向に平行な状態で、前記外装に回転可能に支持され、前記搬送手段および前記攪拌手段を支持する二つの回転軸と、
前記各回転軸に支持されて、前記各回転軸の回転により回転することで、前記搬送手段により搬送される前記混合体を遠心力で攪拌し、前記粉体を前記液体に分散させる分散手段と、
を具備し、
前記各分散手段は、
前記各分散手段の前記搬送方向他端側よりも大きな外径を有する大径部が、前記搬送方向一端側に形成されるとともに、前記大径部の外周面から径方向内側に向かって所定の間隔だけ窪むとともに、前記搬送方向に貫通する複数の溝が形成され、
一方の前記回転軸に支持される前記分散手段の前記大径部の下流側に、他方の前記回転軸に支持される前記分散手段の前記大径部が位置するように、前記各回転軸の軸方向における位置を合わせた状態で、互いに対向して配置され、
前記各分散手段の前記大径部と前記外装の内周面との間、および前記各分散手段同士の間にクリアランスを形成し、
前記各溝に位置する前記混合体を、前記各回転軸の回転による遠心力で攪拌し、前記外装の内周面または前記分散手段に前記粉体を衝突させるとともに、前記各クリアランスで前記粉体を剪断することで、前記粉体を前記液体に分散させる、
二軸連続混練機。
【請求項2】
前記各分散手段は、
前記各大径部の互いに近接する側の端部が、前記搬送方向において部分的に重なり、該部分的に重なる部分の間に、前記搬送方向に沿ってクリアランスを形成する、
請求項1に記載の二軸連続混練機。
【請求項3】
前記各分散手段は、
前記搬送方向に隣り合うように、一つの前記回転軸に少なくとも二つ以上支持され、
前記一つの回転軸に支持される前記各分散手段の中で、前記搬送方向に隣り合う二つの前記分散手段は、
前記搬送方向下流側に位置する前記分散手段の前記各溝に前記混合体が留まるように、互いの位相をずらす、
請求項1または請求項2に記載の二軸連続混練機。
【請求項4】
粉体および液体が供給される中空の外装の内部にて、互いに所定の間隔を空けた状態であるとともに、互いに軸方向に平行な状態で、前記外装に回転可能に支持され、前記粉体および前記液体が混合されてなる混合体を搬送する搬送手段、および前記混合体を混練する攪拌手段を支持する二つの回転軸と、
前記各回転軸に支持されて、前記各回転軸の回転により回転することで、前記搬送手段により搬送される前記混合体を遠心力で攪拌し、前記粉体を前記液体に分散させる分散手段と、
を具備し、
前記各分散手段は、
前記各分散手段の前記搬送方向他端側よりも大きな外径を有する大径部が、前記搬送方向一端側に形成されるとともに、前記大径部の外周面から径方向内側に向かって所定の間隔だけ窪むとともに、前記搬送方向に貫通する複数の溝が形成され、
一方の前記回転軸に支持される前記分散手段の前記大径部の下流側に、他方の前記回転軸に支持される前記分散手段の前記大径部が位置するように、前記各回転軸の軸方向における位置を合わせた状態で、互いに対向して配置され、
前記各分散手段の前記大径部と前記外装の内周面との間、および前記各分散手段同士の間にクリアランスを形成し、
前記各溝に位置する前記混合体を、前記各回転軸の回転による遠心力で攪拌し、前記外装の内周面または前記分散手段に前記粉体を衝突させるとともに、前記各クリアランスで前記粉体を剪断することで、前記粉体を前記液体に分散させる二軸連続混練機、
を用いて、前記混合体を混練して電極合剤を作成する混練工程を含む、
電池の製造方法。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate

【図10】
image rotate

【図11】
image rotate


【公開番号】特開2012−236159(P2012−236159A)
【公開日】平成24年12月6日(2012.12.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−107454(P2011−107454)
【出願日】平成23年5月12日(2011.5.12)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【Fターム(参考)】