説明

二輪車用路車間通信装置

【課題】取り付けに係わる作業が簡便とできると共に、雨水や結露といった水分の悪影響を受ける恐れを小さくできる二輪車用路車間通信装置を提供する。
【解決手段】ケース1に設けられた取付手段によりケース1ごと着脱自在となされていることで取り付けに係わる作業が簡便となると共に、通信機器2がケース内の中空部4に水密されて設けられることで、雨水や結露といった水分により通信機器2に悪影響が及ぼされる恐れを小さくすることができ、更には電波を遮へいする要因を少なくできるガソリンタンク上又はステアリング上に取付可能となされていることで、通信障害の発生を未然に防止することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、自動料金収受システムや狭域通信等の路車間通信に係わり、二輪車に取り付け可能となされた通信装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、自動料金収受(ETC(Electronic
Toll Collection)とも呼ばれる)システムや、走行支援道路(AHS(Advanced Cruise-Assist Highway System)とも呼ばれる)等の車両運行支援システムが発展してきている。これらのシステムでは、道路に設置された路側機と車両に搭載された車載器との間で電波を利用して通信(路車間通信とも呼ばれる)を行う狭域通信(DSRC(Dedicated
Short-Range Communication)とも呼ばれる)が用いられている。
【0003】
これらの路車間通信を行う車両側の通信装置は当然のことながら通信時にアンテナと通信機器との間で通信障害を起こる恐れを小さくできる状態とする必要があるが、屋根付きの四輪車に取り付けられる場合にはフロントガラスの直下に通信装置を取り付ける等で、容易に雨水や結露等の悪影響や、通信障害を受ける恐れを少なくして通信装置を設けることができる。しかし二輪車に通信障害が起こる恐れを少なくして通信装置を設けようとすると、雨水や結露等に曝されることで通信装置に悪影響が及ぼされる恐れがある。
【0004】
かかる悪影響を防止するために、例えば道路料金を無線通信にて自動的に徴収し決済するシステムにおいて、ICカード、料金収受車載器および保持具にて構成された料金収受車載器を、ICカードと共に収納し、二輪ライダーの上腕、上肩等に保持するようにした料金収受車載機携帯具が開示されている(例えば特許文献1)。
【0005】
また、車両のドライバの頭部を保護するように装着される頭部装着部と、前記頭部装着具に搭載され、有料施設のゲートに設けられたゲート装置との間で料金収受に関する情報の無線交信を行う通信手段とを具備する無線通信装置が開示されている(例えば特許文献2)。
【0006】
【特許文献1】特開平8−297760号公報
【特許文献2】特開2001−256527号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、特許文献1に記載の如き従来の通信装置では、通信装置の重量が大きくなると二輪車の運転者の上腕、上肩等への負荷が大きくなり、運転時の疲労の増大に繋がる恐れがある。また運転者の上腕、上肩等への取り付けでは、風雨や振動等の外部環境の影響を避け難く通信装置への悪影響の恐れは高いものとして残る。
【0008】
また特許文献2に記載の如き従来の通信装置では、頭部装着部に通信手段を備えると共に、別途通信に係わる機器を他の箇所に取り付ける必要があり、取り付けが繁雑なものとなり、更には二輪車に前記の通信機器を取り付けた場合には、運転者の乗り降りに伴い接続部の付け外しが必要となり、付け外しの作業が繁雑であると共に、接続部に水分による悪影響を受ける恐れが生じ、別の外部環境による悪影響の恐れが残るものであった。
【0009】
本発明は上記の如き課題に鑑みてなされたものであり、取り付けに係わる作業が簡便とできると共に、雨水や結露といった水分の悪影響を受ける恐れを小さくできる二輪車用路車間通信装置を提供せんとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記目的を達成するため、本発明は以下のような構成としている。すなわち、本発明に係わる二輪車用路車間通信装置は、二輪車に取り付けられ、電波を用いて道路に設置された路側機と通信を行う路車間通信装置であって、水密性のケース内に形成された中空部にアンテナ等の通信機器が収納され、前記ケースは少なくとも上面が電波透過性の材料を用いて形成されると共に下面に取付手段が設けられ、該取付手段を用いて前記ケースが前記二輪車の上方が開放されているガソリンタンク上又はステアリング上に着脱自在に取付可能となされていることを特徴とするものである。
【0011】
また請求項1に記載の発明において、更にICカードによる料金収受車載器が前記中空部に収納され、前記通信機器と前記料金収受車載器とにより走行中に料金収受が可能となされていれば、悪天候時にも料金収受車載器を取り出すことなく料金収受が可能となり、本発明に係わる二輪車用路車間通信装置の構成により得られる効果を更に高めることができ好ましい。
【0012】
また請求項2に記載の発明において、前記通信機器及び料金収受車載器は、ケースに着脱自在となされ、四輪車にも搭載可能となされていれば、ユーザーが二輪車と四輪車の双方を利用する場合でも料金収受車載器を複数保有する必要がなくなり、またICカードの抜き差しの手間や、ICカードの紛失の恐れを低減することができ好ましい。
【発明の効果】
【0013】
本発明に係わる二輪車用路車間通信装置によれば、ケースに設けられた取付手段によりケースごと着脱自在となされていることで取り付けに係わる作業が簡便となると共に、通信機器がケース内の中空部に水密されて設けられることで、雨水や結露といった水分により通信機器に悪影響が及ぼされる恐れを小さくすることができ、更には電波を遮へいする要因を少なくできるガソリンタンク上又はステアリング上に取付可能となされていることで、通信障害の発生を未然に防止することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
本発明に係わる最良の実施の形態について、図面に基づき以下に具体的に説明する。
【0015】
図1は、本発明に係わる二輪車用路車間通信装置の、実施の一形態を示す説明図である。二輪車用路車間通信装置10は、イ)に示す如く下方に凹まされて形成された下側トレイ11と情報に凹まされて形成された上側蓋体12とが合わせられた際に形成される中空部4に、アンテナ、送受信機等の通信機器2と、高速道路の自動料金収受システム(ETC)用の料金収受車載器3が収納されて形成される。ケース1は、ABS樹脂からなる下側トレイ11に対して、同じくABS樹脂からなる上側蓋体12が蝶番(図示せず)により回動可能に接続されて形成され、下側トレイ11の上端縁部111及び上側蓋体12の下端縁部121には全周に亘ってウレタン樹脂からなるパッキン13A、13Bが取り付けられている。パッキン13A及び13Bは下側トレイ11及び上側蓋体12の外縁から突設されるように設けられていることで、外部からの衝撃を吸収できるようになされている。
【0016】
ロ)に示す如く、蝶番(図示せず)により上側蓋体12が回動されて下端縁部121が下側トレイ11の上端縁部111と合わせられ、パッキン13Aとパッキン13Bとが上端縁部111及び下端縁部121の全周に亘って当接させられると共に、下側トレイ11に取り付けられた挟み蓋112が上側蓋体12を下方に締め付けることで、下側トレイ11、上側蓋体12、パッキン13A及びパッキン13Bにより中空部4が水密構造となされる。本実施形態において、通信機器2及び料金収受車載器3を動作させるための電源は、上側蓋体12に取り付けられた外部ケーブルCにより供給され、その電力の充足度は上側蓋体12の上面に取り付けられたランプ部Lにより示されるようになされており、例えば電力が十分であればランプ部Lが緑に点灯し、電力が不足している状態であればランプ部Lが赤色に点灯し、路車間通信を行う際に二輪車用路車間通信装置10が通信可能な状態であるか、運転者が判別できるようになされている。尚、ケース1と通信機器2及び料金収受車載器3との間に、適宜発泡合成樹脂等の緩衝材を取り付けておくのが好ましい。
【0017】
ここでケース1は二輪車に取り付けるものであるから、中空部4に通信機器2及び料金収受車載器3が収納可能な程度に小型とするのが好ましく、例えば通信機器2はL:約40mm×W:約40mm×H:約25mm程度、料金収受車載器3はL:約120mm×W:約80mm×H:約20mm程度のものが一般的であり、緩衝材の厚み等を勘案した場合、通信機器2及び料金収受車載器3を収納する中空部4を、L:約155mm×W:約90mm×H:約35mm程度としてケース1を形成するのが好ましい。
【0018】
図2は、本発明に係わる二輪車用路車間通信装置の、他の実施形態を示すもので、上側蓋体12が開放された状態を示す斜視図である。図1の実施形態と同様に、下側トレイ11、上側蓋体12、パッキン13A及びパッキン13Bにより中空部4が水密構造となされるが、中空部4には通信機器2と料金収受車載器3に加え、鉛蓄電池である蓄電手段5が共に収納され、外部電力に頼ることなく二輪車用路車間通信装置10のみで路車間通信が可能となされ、取り付けが更に簡便となされると共に、外部の電源を供給する際にケース1に挿通用の貫通孔を形成する必要がなくなり、水密性をより一層高めることに繋がる。
【0019】
図3は、二輪車用路車間通信装置10を二輪車に取り付ける取付手段の一例を示す説明図である。取付手段20は、軸部203と軸部203の水平方向の両側に突設された係止爪204とを備えた取付部材201と、係止爪204が挿通可能となされたリップ溝205とリップ溝205の下側に設けられ挿通された係止爪が水平方向に回転可能となされた回動溝206とを備えた受け部材202とからなり、取付部材201はケース1の下側トレイ11の下面113に両面テープ、接着剤、ビス、リベット等適宜の固着手段を用いて強固に固着される。
【0020】
取付手段20を用いて二輪車用路車間通信装置10を二輪車に取り付けるには、予めガソリンタンク上やステアリング上に受け部材202を取り付けておき、受け部材202のリップ溝205から係止爪204を回動溝206内に挿入し、軸部203を中心に二輪車用路車間通信装置10ごと取付部材201を水平方向に回動させ、係止爪204とリップ溝205とが平面視略垂直の位置関係となるようにすることで、係止爪204により取付部材201が受け部材202から外れないようになされて二輪車用路車間通信装置10は二輪車に取り付けられる。取り外しも、取り付け時と逆方向に軸部203を中心に二輪車用路車間通信装置10ごと取付部材201を水平方向に回動させることで容易に行うことができ、二輪車用路車間通信装置10は簡便な方法にて着脱自在となされる。尚、ガソリンタンク上やステアリング上は振動が多く伝達される部位であることから、取り付け後に係止爪204が回転しないように係止爪204及び/又は回動溝206内に回動防止手段を適宜設けておくのが好ましい。
【0021】
図4は、受け部材202のガソリンタンク上又はステアリング上への取り付けの例を示す説明図である。イ)はステーSを用いて取り付けを行うもので、ステーSの受け部材202が取り付けられた他端には平面上の取付部S1が設けられ、取付部S1を用いて上述の如き固着手段を用いてガソリンタンク上やステアリング上に強固に固着するものであるが、ステーSの中途に角度調整手段S2が設けられていることで、取り付け後であっても二輪車用路車間通信装置10を路車間通信に適切な配置とすることができるようになされている。ロ)はガソリンタンクG上に直接上述の如き固着手段を用いて固着するものである。ハ)はマグネットシートMに受け部材202が固着一体化されたもので、誘磁体であれば固着可能となされたものである。マグネットシートMにより取り付けることで、ガソリンタンクGなどの対象物に傷や汚れを付けることなく二輪車用路車間通信装置10を取り付け可能とでき、また必要のない場合には取り外すことで、二輪車の美観の維持に繋げることができる。また、図示はしていないが、ガソリンタンクGのガソリン注入口のキャップと受け部材202を一体に形成したり、前記キャップ上に受け部材202を固着したりして、円盤状の形状のもの同士を一体化して取り付け時の違和感を軽減するようにしてもよい。
【0022】
図5は、本発明に係わる二輪車用路車間通信装置10を二輪車に取り付けた状態を示す側面図である。二輪車AのガソリンタンクG上に二輪車用路車間通信装置10が取り付けられていることで、二輪車用路車間通信装置10は運転者Rの運転操作の邪魔になることがなく、また上方に障害物のない場所であるから、上方からの自動料金収受システム等に係わる路車間通信用の電波が妨げられることがなく、通信障害が発生する恐れをほとんどなくすることができる。尚、ガソリンタンクGが、上方が開放されていない箇所に設けられている二輪車については、ステアリングTの進行方向左右の中央付近に取付手段を用いて二輪車用路車間通信装置10を取り付けることで、上述のガソリンタンクG上に取り付けた場合と同様の効果を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【図1】本発明に係わる二輪車用路車間通信装置の、実施の一形態を示す説明図である。
【図2】本発明に係わる二輪車用路車間通信装置の、他の実施形態を示す説明図である。
【図3】本発明に係わる二輪車用路車間通信装置の、取付手段の一例を示す説明図である。
【図4】図4に示した取付手段を用いた取付方法を説明する説明図である。
【図5】本発明に係わる二輪車用路車間通信装置を二輪車に取り付けた状態を示す側面図である。
【符号の説明】
【0024】
1 ケース
2 通信機器
3 料金収受車載器
4 中空部
10 二輪車用路車間通信装置
20 取付手段
A 二輪車
G ガソリンタンク
T ステアリング

【特許請求の範囲】
【請求項1】
二輪車に取り付けられ、電波を用いて道路に設置された路側機と通信を行う路車間通信装置であって、水密性のケース内に形成された中空部にアンテナ等の通信機器が収納され、前記ケースは少なくとも上面が電波透過性の材料を用いて形成されると共に下面に取付手段が設けられ、該取付手段を用いて前記ケースが前記二輪車の上方が開放されているガソリンタンク上又はステアリング上に着脱自在に取付可能となされていることを特徴とする二輪車用路車間通信装置。
【請求項2】
更にICカードによる料金収受車載器が前記中空部に収納され、前記通信機器と前記料金収受車載器とにより走行中に料金収受が可能となされていることを特徴とする請求項1に記載の二輪車用路車間通信装置。
【請求項3】
前記通信機器及び料金収受車載器は、ケースに着脱自在となされ、四輪車にも搭載可能となされていることを特徴とする請求項2に記載の二輪車用路車間通信装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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