説明

二酸化ケイ素ナノ粒子およびワクチン接種のためのその使用

本発明は、その表面に少なくとも1つの抗原が接続している二酸化ケイ素を含む極小の単分散ナノ粒子に関する。ナノ粒子は、癌の免疫予防または免疫療法のために使用することができる。本発明は、抗原提示細胞に抗原をターゲティングするための、および免疫系を活性化するための方法にも関し、ターゲティングおよび/または免疫活性化の効率は、粒子特性を介して設定される。本発明は、哺乳動物を能動免疫化および受動免疫化するための方法にも関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、その表面に少なくとも1つの抗原が接続している二酸化ケイ素を含む極小の単分散ナノ粒子に関する。ナノ粒子は、癌の免疫予防または免疫療法のために使用することができる。本発明は、抗原提示細胞に抗原をターゲティングするための、および免疫系を活性化するための方法にも関し、ターゲティングおよび/または免疫活性化の効率は、粒子特性を介して設定される。本発明は、哺乳動物を能動免疫化および受動免疫化するための方法にも関する。
【背景技術】
【0002】
動物またはヒト生物体の健康は、とりわけ、生物体がその環境からの病原因子から身を守ることができる程度か、生物体が修飾された内因性材料を認識および排除することができる程度にかかっている。ヒトまたは動物身体の免疫系は、これらの機能を行い、2つの機能領域、すなわち先天性免疫系および後天性免疫系に分けることができる。先天性免疫は、感染に対する防御の最前線であり、ほとんど潜在的な病原体は、それらが、例えば検出可能な感染を引き起こすことができる前に無害にされる。後天性免疫系は、抗原として知られている進入する生物体または修飾された内因性材料の表面構造と反応する。
【0003】
2つのタイプの後天性免疫応答、すなわち体液性免疫応答および細胞性免疫応答がある。体液性免疫応答において、体液中に存在する抗体は抗原と結合し、その非活性化を開始する。細胞性免疫応答において、他の細胞を破壊することができるT細胞が活性になる。例えば、疾患に関係するタンパク質が細胞中に存在する場合、それらは、細胞内でタンパク分解性に断片化され、ペプチドを与える。次いで、特異的細胞タンパク質は、得られるタンパク質または抗原の断片と結合し、細胞の表面に後者を輸送し、それらは分子防御機構、特に身体のT細胞に提示される。
【0004】
細胞表面にペプチドを輸送し、そこでそれらを提示する分子は、主要組織適合複合体(MHC)のタンパク質として知られている。MHCタンパク質の重要性は、それらがT細胞が自己抗原と非自己抗原を区別できるようにすることにもある。このタイプの非自己ペプチドの配列の知識は、例えばペプチドワクチンを使用して免疫系を罹患細胞に対して操作できるようにする。
【0005】
ワクチンの領域においてタンパク質性またはペプチド性抗原を提示するための技術は、2つの基本的仕事、すなわち樹状細胞への抗原の効率的輸送と、続く後天性免疫応答をもたらすためのその活性化を行わなければならない。現在のワクチン開発は、ターゲットとして、例えば皮膚または筋肉などにおける末梢樹状細胞に向けた分子戦略に集中している。抗原は、特に、樹状細胞の細胞表面受容体に特異的であり、抗原と融合しているか粒子表面と接続しているかどちらかの抗体により、それらの樹状目的地(dendritic destination)に向けられる。しかしながら、とりわけFifisら(2004年)J Immunol.173巻(5号)、3148頁により示されているように、細胞特異的ターゲティングのそのような高度な設計は不必要である。Fifisらは、樹状細胞への銀コンジュゲートポリスチレンビーズの輸送により免疫応答を引き起こした。
【0006】
さらに、免疫学では、所与の物質に対する免疫応答を非特異的に高めるためにアジュバントを用いることが知られている。すなわち、抗原は特異的免疫応答を引き起こすが、アジュバントはこの応答の強度を本質的に担っている。後天性免疫応答を引き起こすために、アジュバントの使用は、樹状細胞成熟の誘導にとって極めて重要である。ここで、樹状細胞は、分子の危険シグナルの結果として成熟し、例えばトール様受容体(TLR)または炎症性サイトカイン受容体などの先天性免疫のシグナル伝達経路を介して作用する。例えば、WO2004/108072A2は、例えば、TLRアゴニストなどの免疫応答を修飾する化合物が金属粒子支持体と結合しており、さらに少なくとも1つの活性化合物を含むコンジュゲートについて記載している。ここで、免疫応答を修飾する化合物は、ワクチンのためのアジュバントとして見なされるべきであり、細胞傷害性リンパ球の強力な活性化を引き起こすが、粒子の構築およびその経済的生産を困難にし、毒性リスクおよび生理学的輸送制限の増加に関係する。
【0007】
WO2001/12221A1(特許文献1)は、二酸化ケイ素について、細胞膜の透過および表面タンパク質の修飾が容易になる結果として、粗い縁部および不規則な形状に基づき、タンパク質性抗原、細胞または細胞断片と組み合わせた内因性のアジュバント効果について記載している。対照的に、WO2007/030901A1(特許文献2)およびVallhovら(2007年)Nano Lett.7巻(12号)、3576頁(非特許文献1)は、アジュバント効果をシリカ粒子のメソポロシティーと関連付けている。根本にある原因に関係なく、EP0465081B1は、金属、セラミック(例えば二酸化ケイ素)またはポリマーのコア粒子、塩基性の糖、修飾された糖またはオリゴヌクレオチドを含む、このコア粒子の表面を少なくとも部分的に覆うコーティング、およびコーティングされたコア粒子と接触している少なくとも1つのウイルス性のタンパク質またはペプチドを含む調製物をすでに教示している。コア粒子は10〜200nmの直径を有するが、凝集し、デポー効果が確立することから望ましくさえあるより大きな粒子を形成する。このタイプの凝集は、薬学的に安定な懸濁液を製造することも無菌濾過性を達成することもできないことを意味することが欠点である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】国際公開第2001/12221号パンフレット
【特許文献2】国際公開第2007/030901号パンフレット
【非特許文献】
【0009】
【非特許文献1】Vallhovら(2007年)Nano Lett.7巻(12号)、3576頁
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明は、従来技術で示されている欠点を克服し、単分散粒子サイズを有し、免疫予防または免疫療法における、特にワクチンとしての有効適用を可能にし、副作用を軽減すると同時に治療有効性を改善するナノ粒子を開発するという目的に基づいている。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】SEM顕微鏡写真によって粒子サイズおよび形態を示している。
【図2a】全PBL集団に関してPBL亜集団CD4の百分率比率がプロットされたグラフである。
【図2b】全PBL集団に関してPBL亜集団CD8エフェクターの百分率比率がプロットされたグラフである。
【図2c】全PBL集団に関してPBL亜集団CD11b+およびCD11c+(DC)の百分率比率がプロットされたグラフである。
【図3】放射性標識粒子の様々な時間における動物の下半身における蓄積を示す写真である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
本発明の目的は、独立請求項に従って達成される。下位請求項は好ましい実施形態を含有する。本発明によれば、50%を超える二酸化ケイ素を含むマトリクスを含むナノ粒子が提供され、二酸化ケイ素は、少なくとも1つの抗原が接続している少なくとも1つの表面官能基を有し、ナノ粒子は5〜50nmのサイズを有する。ここで、粒子サイズは、5〜50nmの全範囲にわたるランダムな分布が存在しない代わりに、上述の範囲内の規定粒子サイズが選択され、その標準偏差が最大で15%、好ましくは最大で10%であるように解釈されるべきである。本発明の実施形態において、粒子は、10〜30nm、好ましくは20〜30nm、特に好ましくは13〜29nm、特に好ましくは25nm±10%のサイズを有する。
【0013】
驚いたことに、5〜50nmの狭いサイズ範囲の二酸化ケイ素ナノ粒子の提供は、抗原提示細胞への抗原ターゲティングの効率を著しく高めることがあることが判明した。特に、主にターゲティングされるのは、もはや末梢樹状細胞でない代わりに、リンパ節の樹状細胞である。本発明によるナノ粒子は、樹状細胞の成熟の有効な誘導が起こるような方法でそれらのサイズおよび材料の選択を通じて設計される。この誘導は、特に、補体系の活性化を介して起こる。すなわち、本発明による二酸化ケイ素ナノ粒子は、高い樹状細胞密度を有するリンパ節のターゲティングならびにT細胞増殖および免疫化の必要条件としての樹状細胞成熟の経路に関して完全に新しい機会を切り開く。これらのナノ粒子に基づくワクチンが、別の方法ではワクチン接種において避けることができないアジュバントを必要としないことは注目に値する。
【0014】
今日まで、ワクチン材料は、抗原決定基の確率を高める高分子量を有するべきであることがUS6,086,881から知られているに過ぎない。ワクチン材料がミョウバンまたは他のゲル上に凝集または吸着することが同様に望ましいのは、通常、細胞結合および細胞表面分子の刺激に関してより有効になり、抗原が、遅い脱着速度のためにより長い期間にわたって組織内に保持されるからである。Vallhovら、(2007年)Nano Lett.7巻(12号)、3576頁により、メソ多孔性二酸化ケイ素を含むより大きな粒子は、単球に由来するヒト樹状細胞に対してより大きな影響を有することも裏付けられている。さらに、0.3〜20μmの粒子サイズが食作用にとって必要な必須条件と見なされる抗原提示細胞へのターゲティングのための抗原−シリカ複合体がWO2008/019366A2による従来技術に記載されている。対照的に、本発明は、5〜50nmの規定された狭いサイズ範囲の具体的な二酸化ケイ素ナノ粒子に、抗原提示細胞における受動ターゲティングおよび補体活性化の能力があることを明らかにする。
【0015】
本発明の意味における「抗原提示細胞」は、抗原をT細胞に提示するように仕向けることができる任意の細胞を意味すると解釈され、抗原提示細胞へと分化および活性化されることがある前駆細胞も包含する。抗原提示細胞は、樹状細胞、ランゲルハンス細胞、PBMC、マクロファージ、Bリンパ球または、例えば、それらの細胞表面上にMHC分子を発現する上皮細胞、線維芽細胞および内皮細胞などの他の活性化もしくは修飾された細胞タイプ、好ましくは樹状細胞、特に好ましくはリンパ節の樹状細胞を包含する。抗原提示細胞の前駆体は、CD34+細胞、単球、線維芽細胞および内皮細胞を包含する。
【0016】
本発明によれば、粒子状結合マトリクスは50%を超える二酸化ケイ素を含む。すなわち、結合マトリクスは、さらなる構成成分と混合することもでき、二酸化ケイ素は、多成分系において最高の比率を示す。他の構成成分の例は、金属、金属誘導体、金属酸化物、ポリマー、オルガノシラン、他のセラミックスまたはガラスである。しかしながら、本発明の実施形態において、ポリマーはさらなる構成成分として除外される。マトリクスは、少なくとも80%、特に好ましくは少なくとも90%の二酸化ケイ素を含むことが好ましい。本発明によるナノ粒子の特に好ましい実施形態において、マトリクスは本質的に純粋である、すなわち、調製プロセスの過程で予想される不純物を含むに過ぎない二酸化ケイ素を含む。本発明の極めて好ましい実施形態において、粒子状結合マトリクスは二酸化ケイ素からなる。
【0017】
粒子は、とりわけ、古典的Stober合成を使用して調製することができ、規定サイズの単分散ナノスケール二酸化ケイ素は、水性−アルコール性−アンモニア性媒体におけるテトラエトキシシラン(TEOS)の加水分解により調製することができる(J.Colloid Interface Sci.1968年、26巻、62頁)。驚いたことに、発明者らは、ナノ粒子の安定性が表面官能基化にもかかわらず、凝集する傾向のない単分散粒子が得られる結果として保持されることを示すことができた。したがって、本発明によれば、下記のステップ、すなわち
(a)水、少なくとも1つの可溶化剤および少なくとも1つのアミンまたはアンモニアを含む媒体におけるテトラアルコキシシランおよび/または有機トリアルコキシシランの加水分解重縮合であって、一次粒子のゾルを製造し、続いて、得られるナノ粒子を、さらなる核形成が反応の程度に対応する制御された方法で対応するシランの連続メータリングイン(metering-in)により妨げられるような方法で、5〜50nmの範囲の望ましい粒子サイズにする加水分解重縮合、および
(b)ナノ粒子の表面官能基への抗原の接着、
を有する工程により製造されるナノ粒子が好ましい。
【0018】
アンモニアが媒体の構成要素である場合、使用される可溶化剤は、特に、反応が水性−アルコール性−アンモニア性媒体中で進行し、平均粒子直径からの標準偏差が10%を超えない高度に単分散の粒子を与えるように、アルコールである。驚いたことに、発明者らは、今回、工程が、望ましい単分散特性のある50nm未満の粒子直径を実現することを可能にすることを見いだした。プロセスのステップ(a)は、EP0216278B1およびWO2005/085135A1に詳細に記載されており、したがって、これらの文書は、それらの全体が、参照により本発明の開示内容に組み込まれる。少なくとも1つのアミンが媒体中で使用されることが好ましい。
【0019】
本発明によるナノ粒子の二酸化ケイ素マトリクスは、多孔性か非多孔性のどちらかであってよい。多孔率は製造工程に本質的に左右される。EP0216278B1による合成において、非多孔性粒子が特に得られる。5〜50nmのエントリー範囲内で、非多孔性ナノ粒子の好ましい粒子サイズは10〜30nmであり、一方、多孔性粒子についての好ましい粒子サイズは10〜40nmである。本発明の好ましい粒子は固体である。
【0020】
本発明との関連で、「ナノ粒子」は、最終的に結合または吸着することになる抗原のための認識ポイントとして機能するその表面上の官能基を有する粒子状結合マトリクスを意味すると解釈される。ここで、表面はすべての領域、すなわち外表面の他に粒子中の空洞(細孔)の内表面も包含する。したがって、本発明による実施形態において、抗原は粒子中に取り込まれ、二酸化ケイ素マトリクスの多孔率を必要とする。
【0021】
表面官能基は、同一または異なっていてよい1つまたは複数の化学基からなり、基は、リンカーとしてのそれらの特性においてナノ粒子と抗原の特異的接続を可能にするか、接続のための非特異的ゼータ電位を形成するかのどちらかである。
【0022】
ここで「接続」という用語は、表面官能基と抗原の間の任意のタイプの相互作用、特に、例えば、共有結合、疎水性/親水性相互作用、ファンデルワールス力、イオン結合、水素結合、リガンド−受容体相互作用、ヌクレオチドの塩基対形成またはエピトープと抗体結合部位の間の相互作用などの共有結合または非共有結合に関する。
【0023】
本発明の好ましい実施形態において、抗原はナノ粒子と共有結合している。共有結合は、直接的か間接的のどちらかで生じることがある。直接的変形例において、抗原は、粒子上の化学基上に直接的にコンジュゲートされ、通常、非部位特異的に生じ、抗原提示細胞のファゴソームにおけるその後の遊離をより困難にすることがある。本発明の実施形態において、チオエーテル、炭水化物および/またはオリゴヌクレオチドは、表面官能基として除外されることが好ましい。共有結合性連結の間接的方法は、リンカーまたはタグを使用し、それを介して、抗原は粒子と部位特異的に結合しており、制御された方法で再び遊離される。部位特異的コンジュゲーションのためのタグ、例えば、SNAPタグ、ハロタグ、C末端LPXTGタグ、ビオチンアクセプターペプチド、PCPまたはybbRタグなどが従来技術から知られており、とりわけWO2008/019366A2に記載されており、したがって、この文書は、その全体が参照により本発明の開示内容に組み込まれる。この参考文献は、本明細書の過程におけるこの文書のすべてのさらなる記述に関しても当てはまる。
【0024】
表面官能基の好ましい実施形態において、表面官能基は、不安定なリンカー、特に好ましくは、ヒドラゾンリンカー、ジスルフィドリンカーまたは酵素的に容易に接近可能なペプチド配列により代表される。最初の臨床候補において、ドキソルビシンは、名目上の破壊点としての酸に不安定なヒドラゾン結合を介してポリマーと結合している(Angew.Chem.2006年、118巻、1218頁)。巨大分子は、飲食作用により細胞中に取り込まれ、細胞外空間における生理学的値(pH7.2〜7.4)からエンドソームにおけるpH6.5〜6ならびに一次および二次リソソームにおけるpH4までのpHの著しい低下が起こる。細胞取込の結果としてpHが6未満に下がる場合、ヒドラゾン結合は破壊し、活性化合物はポリマー支持体により放出される。本発明の目的に適しており、本明細書のさらなる過程において記載されるさらなる切断可能なリンカーが当業者に知られている。
【0025】
表面官能基のさらなる好ましい実施形態において、表面官能基はアルコキシシランの群から選択される。ここで、表面官能基は末端の反応性チオール基であることが特に好ましい。アルコキシシランは、抗原そしてまた他の機能のさらなるリガンドの両方の接続のために用いることができ、この安定なリンカーを用いる後者の接続が好ましい。本発明によるナノ粒子の目的に適しているアルコキシシランは、当業者によりルーチンに選択することができる。
【0026】
本発明の別の実施形態において、抗原はナノ粒子に吸着される。吸着は、例えば規定タイムスパン内に抗原と混ぜた後、ナノ粒子を例えば遠心分離または濾過などによって混合物から分離することにより行うことができる。チャージングは粒子合成中であっても起こることがある。本発明の目的にとって、吸着が、マトリクスの固有の構成要素であってよいか、別の方法で導入しなければならないかのどちらかである適当な表面官能基(ゼータ電位)も必要とすることは言うまでもない。
【0027】
表面が、まだ官能基化されていない場合、選択される合成経路にもよるが、官能基化は抗原の接続前に導入される。ナノ粒子が、上に述べられているプロセスステップ(a)による加水分解重縮合により製造される場合、表面の官能基化は、ステップ(a)の後およびステップ(b)の前に行われる。粒子シェル上のケイ素原子の多くは、標準的方法により非常に多くの市販トリアルコキシシランまたはトリクロロシランと反応することができるヒドロキシル機能を保有しており、粒子を簡単に様々な方法で官能基化することができることを意味している(J.Liq.Chrom & rel.Technol.1996年、19巻、2723頁)。ナノスケール二酸化ケイ素粒子のターゲット適用または望ましい特性がより大きな化学的複雑性を必要とする場合、考え抜かれた多段階合成が使用される。
【0028】
最後に、抗原を表面官能基との相互作用によりナノ粒子と接続させる。
【0029】
ここで、「抗原」は、細胞または動物の免疫応答を発生させることができる構造体を意味すると解釈される。動物における免疫応答が、すべての哺乳動物、特にヒトを包含することは言うまでもない。抗原はタンパク質性であることが好ましく、すなわち、抗原は、タンパク質、ポリペプチド、ペプチドまたはそれらの断片であり、任意の望ましいサイズ、起源および分子量であってよく、グリコシル化されていてもよいが、少なくとも1つの抗原決定基または抗原エピトープを含有する。免疫系による認識は、特に、最短で3個のアミノ酸から起こる。タンパク質またはペプチドは、サイトカイン、受容体、レクチン、アビジン、リポタンパク質、糖タンパク質、オリゴペプチド、ペプチドリガンドおよびペプチドホルモンの群から選択されることが好ましい。抗原は、核酸それ自体であるか、核酸によりコードされていてもよく、抗原提示細胞の核内への輸送後、MHC分子に提示されるタンパク質性抗原に翻訳される。核酸は、一本鎖および二本鎖のDNAまたはRNAおよびオリゴヌクレオチドである。核酸は、脂質、炭水化物、タンパク質またはペプチドからなる複合体または製剤の構成要素であってもよい。さらなる抗原は、多糖、ポリマー、50〜1000Daの分子量を有する低分子量物質、ウイルス、インタクトな原核もしくは真核細胞または細胞断片である。
【0030】
本発明の実施形態において、抗原は500kDa未満の分子量を有する。抗原は癌抗原であることが好ましい。このタイプの癌抗原は、例えばWO2008/019366A2に開示されている。特に好ましい実施形態において、癌抗原は、ニューヨーク食道1抗原(NY−ESO−I)、MAGE−A1、MAGE−A2、MAGE−A3、MAGE−A4、MAGE−A6、MAGE−A8、MAGE−A10、MAGE−B、MAGE−C1、MAGE−C2、L抗原(LAGE)、SSX2、SSX4、SSX5、PRAME、メラン−A、カスパーゼ−8、チロシナーゼ、MAGF、PSA、CEA、HER2/neu、MUC−1、MART1、BCR−abl、p53、ras、myc、RB−1およびスルビビンまたはそのエピトープを含む群から選択される。本発明の特に好ましい実施形態において、癌抗原はスルビビンまたはそのエピトープである。この癌抗原は、WO2007/039192A2に記載されており、したがって、この文書は、その全体が参照により本発明の開示内容に組み込まれる。
【0031】
本発明の別の実施形態において、受容体および/またはMHC分子は表面官能基と抗原の両方として除外される。
【0032】
ナノ粒子は多官能基化されていてよく、本発明の意味において、異なる化学基(表面官能基)および/または異なる結合分子(機能)を意味する。表面官能基および結合機能の両方は、異なっていて、特異的な、機能分子の独立した結合を生じることが好ましい。機能は、抗原、ポリエチレングリコール(PEG)、標識化およびアジュバントの群から選択されることが好ましく、抗原が常に選択されることは言うまでもない。抗原およびPEGおよび/またはアジュバントは、存在することが特に好ましく、特に好ましくは、抗原、PEGおよびアジュバントが存在し、これらの機能は、吸着的および/または共有結合的に結合していてよい。
【0033】
本発明による粒子の実施形態において、標識化は、ルミネセンス、UV/VIS発色により、酵素的に、電気化学的にまたは放射性に検出される。蛍光色素または放射性標識が使用されることが好ましい。光ルミネセンスまたは蛍光の場合、励起は光子の吸収により行われる。好ましいフルオロフォアは、ビスベンゾイミダゾール、フルオレセイン、アクリジンオレンジ、Cy5、Cy3またはヨウ化プロピジウムである。評価は、視覚的にもしくは適切な測定機器を使用し、例えば蛍光顕微鏡下で、もしくはフローサイトメトリーにより、例えばサイトフルオリメーター中で行われる。本発明の特に好ましい実施形態において、蛍光色素は3−アミノプロピルトリエトキシシランと結合しており、フルオレセインイソチオシアナートは特に好ましい蛍光色素である。
【0034】
あるいは、検出は放射性同位元素を使用し、好ましくは、3H、14C、32P、33P、35S、99mTc、111Inまたは125Iを使用し、特に好ましくは、99mTcまたは111Inを使用して放射性に行うこともできる。特に、クリックケミストリーを介してナノ粒子と結合している1,4,7,10−テトラアザシクロドデカン−N,N',N'',N'''−四酢酸(DOTA)またはジエチレントリアミン五酢酸(DTPA)の誘導体は、注射直前に特に好ましい放射性同位元素を提供する。シンチレーションカウンティングの場合、分子カクテルは、例えば放射性γ線により励起される。基底状態への遷移で光として遊離されるエネルギーは、光電子増倍管により増幅され、カウントされる。
【0035】
すなわち、本発明によるナノ粒子は、診断ツール(例えば画像検査法における)および/または研究ツールとしても重要であり、ターゲティングおよび活性化合物取り込みの可視化を可能にする。
【0036】
本発明のさらなる実施形態において、抗原は、抗原の役割が標識を介して粒子分画内で行うことができるような方法で標識と混ぜ合わせられる。このことは、第一の粒子またはその多数は第一の抗原および第一の標識を提供し、第二の粒子またはその多数は第二の抗原および第二の標識を提供するなど、抗原と標識は共に、いずれの場合にも互いと異なる。したがって、抗原と標識の特異的組合せは、本明細書において独特かつ好ましく、粒子の異なる抗原との混合ならびにターゲティング効率および/または免疫/補体活性化の並行モニタリングを可能にする。このことは、逐次投与と比較して、診断における時間の節約をもたらす。言うまでもなく、粒子が、強度が変動する複数個の抗原および複数個の標識を保有することは同様に可能であり、ある抗原を混合物から選択することができることを意味する。標識は、特にシランと結合している蛍光色素であることが好ましい。
【0037】
さらに、本発明のナノ粒子は、抗原と、例えば、TLRまたはサイトカインなどの危険シグナルの組合せとして設計することができる。
【0038】
本発明のさらなる実施形態において、表面は多官能基の架橋が排除されるような方法で多官能基化される。
【0039】
ナノ粒子への抗原の接続についての表面官能基に関する本発明およびその実施形態の上記教示は、それが適切に見える限り、多官能基および/またはナノ粒子へのさらなる機能の接続にとって有効であり、それらへの制約なしに適用可能である。
【0040】
極めて複雑な系を構築するための普遍的な戦略は、K.B.Sharpless(Angew.Chem.Int.Ed.2001年、40巻、2004頁)により示されたクリックケミストリーの概念である。これは、科学的教義よりむしろ合成哲学であり、特に天然に存在する反応の単純性および効率に端を発している。クリックケミストリーの主要な例は、Huisgen法によるアジドと末端アルキンの1,3−双極子環化付加であることが分かっている。一価の銅の存在下で、これらの反応は劇的な加速を伴って起こり、さらに、位置選択的に、極めて高い収率で、広範囲な官能基の許容度を伴って進行する。さらなる利点は、水性媒体中で室温において合成を行い、興味ある生体分子を、あるタイプの構築セット原理(construction set principle)で他のビルディングブロックとモジュール的かつ広い適用範囲で連結させることができる可能性にある。したがって、本発明の目的にとって、クリックケミストリーを使用し、対応して官能基化された二酸化ケイ素粒子を上述の機能、特に抗原と連結させることが好ましい。
【0041】
本発明は、本発明によるナノ粒子を含むディスパージョン(dispersion)にも関する。ナノ粒子は、ナノ粒子が、溶媒により化学的に攻撃されることも物理的に変形されることもなく、逆もまた同様である限り、任意の望ましい溶媒中に分散された形態であってよく、得られるナノディスパージョンは安定であり、特に薬学的および物理的に安定である。ディスパージョンは、ナノ粒子が、単分散および非凝集形態であり、沈降への傾向がなく、無菌濾過性をもたらすという点に特異的特徴がある。ナノ粒子に関する本発明およびその実施形態の上記教示は、それが適切に見える限り、ディスパージョンにとって有効であり、それへの制約なしに適用可能である。
【0042】
本発明は、本発明によるナノ粒子および/またはそのディスパージョンを含むキットとして実施することもできる。本発明のキットは、書面での指示を含有するか、本発明のナノ粒子の取扱いを説明する書面での指示をユーザーに指摘する物品も含有することがある。ナノ粒子およびそのディスパージョンに関する本発明およびその実施形態の上記教示は、それが適切に見える限り、キットにとって有効であり、それへの制約なしに適用可能である。
【0043】
本発明は、本発明によるナノ粒子またはそのディスパージョンを含む医薬組成物にも関する。ここで「医薬組成物」は、特に、感染性疾患、敗血症性ショック、腫瘍、癌、自己免疫疾患、アレルギーおよび慢性または急性の炎症プロセスの結果として、少なくとも一時的に、患者生物体の全般的状態または個別部分の状態の病原性修飾を示す患者の予防、治療、管理または治療後処置に用いることができる任意の組成物である。すなわち、特に、本発明の意味において、医薬組成物はワクチンおよび/または免疫療法薬であることが可能である。医薬組成物は、例えば薬学的に許容できる塩として、例えばペプチドまたは核酸などの抗原を含むことができる。これは、とりわけ、例えばリン酸などの無機酸の塩または有機酸の塩であってよい。
【0044】
医学的効果、すなわち、特に、免疫応答を支えるために、医薬組成物は、本発明の実施形態においてさらなる活性化合物も含むことができ、同時または逐次投与が考えられる。本発明による医薬組成物の治療効果は、例えば、望ましい副作用としての補体系の活性化または投与量の減少により軽減されているこれらの医薬品の副作用数を通じてより良い作用を有するある抗腫瘍医薬品を通じて生ずることがある。
【0045】
本発明の好ましい実施形態において、本発明による医薬組成物は、サイトカイン、ケモカイン、プロアポトーシス薬、インターフェロン、放射性化合物またはそれらの組合せを含む群から選択される化学療法薬と組み合わせられる。化学療法薬は、核酸および/またはタンパク質代謝、細胞分裂、DNA複製、プリン、ピリミジンおよび/またはアミノ酸生合成、遺伝子発現、mRNAプロセシング、タンパク質合成、アポトーシスまたはそれらの組合せを修飾、特に軽減することが好ましい。
【0046】
内因性防御を刺激するか免疫系を強化するために、本発明のさらなる実施形態において、本医薬組成物と一緒に、免疫刺激薬、例えば、IFN−α、IFN−βまたはIFN−γなどのインターフェロン、例えば、IL−1、IL−2、IL−3、IL−4、IL−5、IL−6、IL−7、IL−8、IL−9、IL−10またはIL−12などのインターロイキン、例えば、TNF−αまたはTNF−βなどの腫瘍壊死因子、エリスロポエチン、M−CSF、G−CSF、GM−CSF、CD2またはICAMを投与することも可能である。このようにして、例えば、Tリンパ球、Bリンパ球、単球、マクロファージ、好中性細胞、好酸性細胞、巨核球および/または顆粒球の増殖、発生、分化または活性化を刺激することができる。
【0047】
本発明による免疫原性ナノ粒子の保護または治療作用を高めるために、薬学的に耐容性を示すアジュバントを、粒子またはそれから調製されるすべての医薬組成物に加えることができる。本発明の目的にとって、本発明に従って抗原による効果を促進、増強または修飾する任意の物質が「アジュバント」である。知られているアジュバントは、例えば、水酸化アルミニウムまたはリン酸アルミニウムなどのアルミニウム化合物、例えば、QS21、ムラミルジペプチドまたはムラミルトリペプチドなどのサポニン、例えば、γ−インターフェロンまたはTNFなどのタンパク質、MF59、フォスファチジルコリン(phosphatdibylcholine)、スクアレンまたはポリオールである。完全フロイントアジュバントにおける卵白アルブミンの同時適用は、細胞性免疫の増加を同様に引き起こし、すなわち形成される中和抗体の作用を支える。さらに、免疫刺激特性を有するか、例えばサイトカインなどのアジュバント効果のあるタンパク質をコードするDNAを、並行してまたは構築物において適用することができる。しかしながら、本発明による二酸化ケイ素ベースのナノ粒子の固有のアジュバント効果のため、この場合には、さらなるアジュバントを使用しないことが好ましい。固有のアジュバント効果が、ある適用において不十分であると分かった場合、言うまでもなく、ナノ粒子へ1つまたは複数のアジュバント、好ましくはたった1つのアジュバントをさらに接続させることは可能である。接続のタイプは、吸着性であるか共有結合からなるかのどちらかであってよい。吸着性に結合させることになる本発明の好ましいアジュバントは、ポロキサマーおよびTLRを包含する。本発明の好ましい共有結合しているアジュバントは、短鎖ペプチド、特に好ましくはタフトシンまたはオボアルブミンを包含する。
【0048】
細胞または生物体内への医薬組成物の導入は、抗原提示細胞を組成物中に存在するナノ粒子または抗原と接触させることができ、免疫応答が誘導される結果として飲食作用により細胞内に取り込まれる任意の方法で本発明に従って行うことができる。本発明の医薬組成物は、経口的に、経皮的に、経粘膜的に、経尿道的に、膣に、直腸に、肺に、腸におよび/または非経口的に投与することができる。医薬組成物の非経口投与が好ましい。この場合に、二酸化ケイ素は、アジュバントとしてのその特性において、このタイプの適用に結果として認可されていないポリマーアジュバントについて観察されるような脂質バランスに対する有害効果を有していないことが明らかにされている。体内への直接注射が特に好ましい。選択される投与のタイプは、適応症、投与されることになる投与量、個体特異的パラメーターなどによって異なる。特に、様々なタイプの投与は、部位特異的療法を容易にし、副作用を最小限に抑え、活性化合物投与量を軽減する。特に好ましい注射は、皮内、皮下、筋肉内または静脈内注射である。投与は、例えば、いわゆるワクチン接種銃(vaccination gun)の助けを借りるか、注射器によって行うことができる。生物体、好ましくはヒト患者により吸入されるエアゾールとして物質を調製することも可能である。
【0049】
医薬組成物の投与形態は、従来の固体もしくは液体ビヒクルおよび/または希釈剤ならびに通常用いられる補助剤を使用し、適当な用量およびそれ自体知られている方法で投与の望ましいタイプに対応して調製される。すなわち、当業者に知られている薬学的に許容できる賦形剤は、本発明による医薬組成物の一部を基本的に形成することができ、単一投与量を調製するために活性化合物と組み合わされる賦形剤材料の量は、治療されることになる個体および投与のタイプによって異なる。これらの薬学的に耐容性を示す添加剤は、塩、緩衝液、増量剤、安定剤、錯化剤、抗酸化剤、溶媒、結合剤、滑沢剤、錠剤コーティング、香料、色素、保存剤、調整剤などを包含する。このタイプの賦形剤の例は、水、植物油、ベンジルアルコール、アルキレングリコール、ポリエチレングリコール、グリセロールトリアセテート、ゼラチン、例えばラクトースまたはデンプンなどの炭水化物、ステアリン酸マグネシウム、タルクおよびワセリンである。
【0050】
医薬製剤は、錠剤、フィルム錠剤、糖衣錠、ロゼンジ、カプセル、丸薬、粉末、顆粒剤、シロップ、ジュース、点滴剤、溶液、分散液、懸濁液、坐薬、乳濁液、インプラント、クリーム、ゲル、軟膏、ペースト、ローション、血清、油、スプレー、エアゾール、粘着剤、絆創膏または包帯の形態であってよく、ディスパージョンが好ましい。
【0051】
調製される経口投与形態は、錠剤、フィルム錠剤、糖剤、ロゼンジ剤、カプセル剤、丸剤、散剤、顆粒剤、シロップ剤、ジュース剤、点滴剤、液剤、分散剤または懸濁剤であることが好ましく、デポー形態を包含する。錠剤としての医薬品形態は、例えば、活性化合物を、ブドウ糖、糖、ソルビトール、マンニトール、ポリビニルピロリドンなどの知られている補助剤、トウモロコシデンプンまたはアルギン酸などの崩壊剤、デンプンまたはゼラチンなどの結合剤、ステアリン酸マグネシウムまたはタルクなどの滑沢剤、および/または、カルボキシポリメチレン、カルボキシメチルセルロース、セルロースアセテートフタレートまたはポリビニルアセテートなどのデポー効果を達成することができる試剤と混ぜることにより得ることができる。錠剤は、複数の層からなることもある。糖剤は、同様に、錠剤と同じように製造されるコアを、糖衣錠コーティングに通常使用される試剤、例えば、ポリビニルピロリドンまたはシェラック、アラビアゴム、タルク、二酸化チタンまたは糖でコーティングすることにより調製することができる。ここで、糖衣錠シェルは、複数の層からなることがあり、例えば上述の補助剤が使用される。カプセル剤は、活性化合物をラクトースまたはソルビトールなどのビヒクルと混ぜ、次いでカプセル中に導入することにより製造することができる。医薬組成物の液剤または分散剤は、例えばサッカリン、シクラメートまたは糖タイプなどの物質と、および/または、例えばバニリンまたはオレンジエキスなどの芳香と混ぜ、味覚を改善することができる。さらに、それらは、例えば、カルボキシメチルセルロースナトリウムなどの懸濁補助剤、または、例えば、p−ヒドロキシ安息香酸、フェノール、ベンジルアルコール、m−クレゾール、メチルパラベン、プロピルパラベン、塩化ベンザルコニウムまたは塩化ベンゼトニウムなどの保存剤と混ぜることができる。
【0052】
さらに、例えば、坐剤、懸濁剤、乳剤、インプラント剤または液剤などの非経口医薬品形態は、好ましくは油性または水性の液剤が考慮されるべきである。非経口投与の場合、本発明の免疫原性構築物は、例えば、中性脂肪またはポリエチレングリコールもしくはそれらの誘導体などの生理学的に耐容性を示す希釈剤中に溶かすか懸濁することができる。使用される好ましい溶媒は、可溶化剤、界面活性剤、懸濁剤または乳化剤の有無に関わらず、油であることが多い。使用される油の例は、オリーブ油、ピーナッツ油、綿実油、ヒマシ油およびゴマ油である。
【0053】
医薬組成物の局所適用の場合、後者を、例えば微結晶性セルロースなどの少なくとも1つの薬学的に許容できるビヒクル、および、場合により、例えば保湿剤などのさらなる補助剤と一緒に従来の方法で製剤化すると、例えばクリーム剤、ゲル剤、軟膏剤、ペースト剤、散剤または乳剤などの皮膚に適用することができる固体製剤が得られるか、例えば液剤、懸濁剤、ローション剤、血清剤(sera)、油剤、スプレー剤またはエアゾール剤などの皮膚に適用することができる液体製剤が得られる。例は、例えば、エタノールまたはイソプロパノールなどのアルコール、アセトニトリル、DMF、ジメチルアセトアミド、1,2−プロパンジオールまたは互いとのおよび/または水とのそれらの混合物中の液剤である。皮膚内への最適な輸送を保証するリポソーム剤は、医薬組成物のための担体系としての役割を果たすこともできる。適当な局所調製物は、例えば、液剤、懸濁剤、クリーム剤、軟膏剤、散剤、ゲル剤、乳剤、粘着剤、硬膏剤または包帯剤などの経皮システムでもあり、ビヒクルと一緒にナノ粒子を含む。有用なビヒクルは、皮膚を通じてナノ粒子の通過を支えるために吸収性の薬理学的に適当な溶媒を含むことができる。皮膚内への良好な透過を保証する溶媒は、例えば、アルコール フェニル−1−エタノール、グリセロール、エタノールまたはそれらの混合物である。
【0054】
医薬組成物は注射液の形態であることが好ましい。注射液の調製の場合、例えば蒸留水または生理食塩水などの水性媒体を使用することができ、後者は、酸性および塩基性の付加塩を包含する。医薬組成物は、固体組成物の形態、例えば凍結乾燥された状態であってもよく、次いで、例えば蒸留水などの溶解剤の添加により使用前に調製することができる。当業者は凍結乾燥物の調製の基本原理に精通している。
【0055】
製剤中の活性ナノ粒子の濃度は、重量で0.1〜100%と変わることがある。医薬組成物は、活性化合物として、薬学的に耐容性を示す補助剤と一緒に、有効量のナノ粒子および/またはそのディスパージョンを含むことが肝要である。「有効量」または「有効投与量」という用語は、本明細書において互換的に使用され、疾患または病理学的変化に対して予防的または治療的に関連する作用を有する薬学的に活性な化合物の量を意味する。「予防的作用」は、その後のその蔓延が大きく軽減されるか、完全にすら不活化されるような方法で、個々の代表者(representatives)の進入後に疾患の突発または病原体による感染さえも防ぐ。「治療的に関連する作用」は、1つまたは複数の疾患症状を取り除くか、疾患または病理学的変化に伴うか原因として関与している1つまたは複数の生理学的または生物化学的パラメーターの標準状態への部分的または完全な逆転をもたらす。本発明によるナノ粒子を投与するためのそれぞれの投与量または投与量範囲は、免疫応答の誘導の望ましい予防的または治療的効果を達成するために十分に大きい。一般に、投与量は、患者の年齢、体質および性別によって変化するはずであり、疾患の重症度が考慮されるはずである。さらに、投与の具体的投与量、頻度および期間は、例えば、ナノ粒子のターゲティングおよび結合能力、治療されることになる個体の栄養習慣、投与のタイプ、排泄速度および他の医薬品との組合せなどの非常に多くの要因によって異なることは言うまでもない。個別の投与量は、原疾患と任意の合併症の発生の両方に関して調整することができる。正確な投与量は、知られている手段および方法を使用して当業者が確立することができる。本発明のこの教示は、それが適切に見える限り、ナノ粒子および/またはそのディスパージョンを含む医薬組成物にとって有効であり、それらへの制約なしに適用可能である。
【0056】
本発明の実施形態において、ナノ粒子は、体重1kg当たりおよび1日当たり0.01mg〜1gの投与量で投与される。しかしながら、体重1kg当たりおよび1日当たり20〜60mgの投与量が投与されることが好ましい。1日投与量は、体重1kg当たり0.02〜10mgであることが好ましい。
【0057】
本発明によれば、本ナノ粒子および/またはナノ粒子ディスパージョンは、感染性疾患、敗血症性ショック、腫瘍、癌、自己免疫疾患、アレルギーおよび慢性または急性の炎症プロセスの群から選択される疾患の予防的または治療的処置に適している。医薬組成物の宿主も本発明の保護の範囲に包含されることは言うまでもない。
【0058】
好ましい実施形態において、治療され、予防的に妨げられるか、その再発が妨げられる癌または腫瘍疾患は、耳−鼻−喉領域、縦隔腔、胃腸管(結腸癌腫、胃癌腫、結腸癌、小腸の癌、膵臓癌腫、肝臓癌腫を包含する)、泌尿生殖器系(腎細胞癌腫を包含する)、婦人科系(卵巣癌腫を包含する)および内分泌系の、ならびに肺(肺癌を包含する)、乳房(乳房癌腫を包含する)および皮膚の癌または腫瘍疾患、ならびに骨および軟組織肉腫、中皮腫、黒色腫、中枢神経系の新生物、小児科の癌疾患または腫瘍疾患、リンパ腫、白血病、新生物随伴症候群、知られている原発性腫瘍を伴わない転移(CUP症候群)、腹膜癌症、免疫抑制関連悪性疾患、多発性骨髄腫および腫瘍転移の群から選択される。
【0059】
本発明が関係する自己免疫疾患は、関節炎、自己免疫性肝炎、慢性胃炎、神経皮膚炎、乾癬、関節症、リウマチ性疾患、関節リウマチ、若年性特発性関節炎、クローン病、結腸の化膿性炎症、糖尿病、炎症性腸疾患、多発性硬化症および/またはアレルギー性炎症を含む群から選択されることが好ましい。
【0060】
本発明によれば、ナノ粒子は、哺乳動物に対して病原性であり得る微生物により引き起こされる疾患の予防または治療にも用いられる。このことは、本発明による作用が、宿主生物体にコロニーを形成する微生物フローラの自然平衡の乱れを通じて、および/または弱まった免疫系を有する宿主の場合に、それら自身の利点のために健康を害するプロセスを行うことができる微生物か、本質的に病原性である微生物のどちらかを対象とすることを意味する。本発明の意味において好ましい微生物は、ウイルス、細菌、真菌および/または単細胞動物である。細菌が特に好ましく、グラム陽性菌およびグラム陰性菌は、それらの成長に影響を受ける。ナノ粒子で治療することができる疾患の例は、上述の微生物により引き起こされるB型肝炎、C型肝炎、HIV、ヘルペス、結核、ライ病またはマラリアである。
【0061】
当業者には、T細胞増殖および/または中和抗体の誘導が、事実上いつでも有利であり得ることが知られている。この場合、ナノ粒子およびそのディスパージョンは、主に免疫療法のために用いられ、本発明の意味におけるワクチン接種が、免疫療法に応答する疾患の診断および/または突発後の本発明による医薬組成物の投与であることが好ましいことを意味する。ワクチン接種は、好ましくは、疾患の診断または突発から少しして行われるべきであり、多くの注射により生物体の初期増殖性免疫応答を増強するために療法として多数回投与することもできる。したがって、モニタリングは、例えば、疾患の症状を完全に排除するために、ナノ粒子がある間隔で投与される場合、あるタイプの治療的処置を意味するとも解釈される。本発明の好ましい実施形態において、ナノ粒子および/またはそのディスパージョンは、癌および/または腫瘍の治療のため、特に好ましくは、癌療法のために使用される。
【0062】
言うまでもなく同様に有利なことに、活性ワクチン接種防御は、生物体における予防的投与後に生じることが可能である。予防的免疫療法は、特に、個体が、例えば、家族歴、遺伝子欠損または現在残存する疾患などの上述の疾患を突発しやすい場合に望ましい。
【0063】
すなわち、本発明は、免疫予防または免疫療法のための本発明によるナノ粒子および/または本発明によるディスパージョンの使用にも関する。さらに、本発明は、免疫予防または免疫療法のためのワクチンを調製するための、有効量の本発明によるナノ粒子および/または本発明によるディスパージョンの使用に関する。両主題において、治療されることになる疾患は、感染性疾患、敗血症性ショック、腫瘍、癌、自己免疫疾患、アレルギーおよび慢性または急性の炎症プロセスを包含する群から選択される。ワクチンは、特に、活性化合物を、少なくとも1つの固体、液体および/または半固体ビヒクルまたは補助剤と一緒に、場合により1つまたは複数のさらなる活性化合物と組み合わせて、適当な剤形に変換することによる非化学的方法により調製される。本発明およびその実施形態の上記教示は、それが適切に見える限り、ナノ粒子、ディスパージョンおよびそれらの医学的使用にとって有効であり、それらへの制約なしに適用可能である。
【0064】
本発明のさらなる実施形態は、抗原提示細胞における抗原のターゲティングのため、場合により、免疫系の活性化のため、好ましくは、補体系の活性化のための本発明によるナノ粒子および/またはそのディスパージョンの使用に関する。ターゲティングは、抗原を保有するナノ粒子を、抗原提示細胞を含む細胞、細胞培養物、組織または器官に投与することによりエクスビボ(ex vivo)またはインビトロ(in vitro)で行われることが好ましい。エクスビボ使用は、特に、感染性疾患、敗血症性ショック、腫瘍、癌、自己免疫疾患、アレルギーおよび慢性または急性の炎症プロセスの群から選択される疾患により影響を受ける動物生物体が起源である動物細胞の場合に使用される。エクスビボ処置細胞は、その後の検討のために培養液中に保ち続けることができるか、宿主動物または別の動物であってよい動物に移動することができるかのどちらかである。本発明によるエクスビボターゲティングは、特に、粒子サイズ、抗原、接続および多官能基化に関してナノ粒子の具体的構造をテストするために有利であり、インビボ投与量をこれらのエクスビボデータの評価に先立って設定することができる。結果として、後天性免疫応答の形態での治療効果が著しく高められる。同様に、ナノ粒子に暴露された抗原提示細胞によって直接体外で患者のT細胞を刺激し、次いで、T細胞を移植するか、研究目的のためにT細胞を使用するかのどちらかが可能である。
【0065】
本発明による使用の好ましい実施形態において、抗原は樹状細胞を対象とする。この使用の特に好ましい実施形態において、樹状細胞はリンパ節に局在する。最後に述べた実施形態は、少なくとも1つの組織または器官を必要とするが、最良の場合に、インタクトな動物生物体を必要とすることは言うまでもない。同様に、この必要条件は、免疫または、特に補体活性化に合致していなければならないことは言うまでもない。
【0066】
したがって、ナノ粒子は、知られている経路を介して、動物、特に哺乳動物、特に好ましくはヒトに直接それらを投与することによりインビボで使用することができる。さらに、ナノ粒子はエクスビボで用いることができ、抗原提示細胞を動物からまず単離し、続いて、ナノ粒子が細胞により取り込まれるような方法で、本発明によるナノ粒子によりエクスビボで処理する。この方法で処理される抗原提示細胞は、生物体のT細胞が刺激された結果として、体に戻される。
【0067】
したがって、本発明は、さらに下記のステップ、すなわち
(a)少なくとも1つの抗原が接続している表面官能基を有する純粋な二酸化ケイ素を本質的に含むナノ粒子の提供、
(b)細胞培養物、組織、器官または動物中に存在する抗原提示細胞へのナノ粒子の投与、
(c)少なくとも部分的に反比例するナノ粒子のサイズを介してターゲティング効率を調整することによる、間質液を介する抗原提示細胞への抗原のターゲティング
を有する、抗原提示細胞に抗原をターゲティングするための方法に関する。
【0068】
本発明による方法のステップ(a)において、ナノ粒子は、下記のステップ、すなわち
(a’)水、少なくとも1つの可溶化剤および少なくとも1つのアミンまたはアンモニアを含む媒体におけるテトラアルコキシシランおよび/または有機トリアルコキシシランの加水分解重縮合であって、初めに、一次粒子のゾルを製造し、続いて、得られるナノ粒子を、さらなる核形成が反応の程度に対応する制御された方法で対応するシランの連続メータリングインにより妨げられるような方法で、望ましい粒子サイズにする加水分解重縮合、
(a’’)ナノ粒子の表面官能基への少なくとも1つの抗原の接着、場合により
(a’’’)ナノ粒子の分散
により提供されることが好ましい。
【0069】
本発明による方法のステップ(b)において、ナノ粒子は、動物、特に好ましくは哺乳動物、特に好ましくはヒトに投与されることが好ましい。投与は、特に非経口的に、特に好ましくは皮内または皮下に行われることが好ましい。
【0070】
ステップ(c)において、予想外に、二酸化ケイ素粒子のターゲティングが、ナノ粒子のサイズを介して影響されることがあることが判明した。約150nmの粒子サイズは、ターゲティングが依然として観察される上限に相当するが、ターゲティングの効率はより小さな粒子サイズで増加する。粒子のサイズ範囲は、0nmを超えて150nm未満であることが好ましく、特に好ましくは5〜50nmであり、特に好ましくは10〜30nmであり、最も好ましくは13〜29nmである。
【0071】
本発明の実施形態において、ターゲティング効率およびナノ粒子のサイズは、範囲を通じて反比例する。効率は、線形的か非線形的のどちらかで、好ましくは非線形的に高めることができる。
【0072】
本発明の別の実施形態において、ターゲティング効率と粒子サイズの間の反比例がサイズ範囲を通じて存在せず、代わりに、本発明による相関関係が、最小粒子サイズ、すなわち、サイズ範囲の終点において観察されないターゲティング効率の最大値に接近させることが可能である。本発明による方法のこの実施形態において、粒子サイズ(横軸上)に対するターゲティング効率(縦軸上)の依存性は、最高点が最大効率を表すように、放物線が底に開いている2以上の自然数の偶数指数の指数関数により記載されることが好ましい。二次関数が特に好ましい。言い換えれば、このことは、反比例が、0〜150nmの上述の粒子サイズ範囲において最高点(変曲点)まで観察されることを意味する。
【0073】
方法によって、部分的ターゲティングを具体的に設定することができるか、ターゲティングの最大化を達成することができる。本方法の実施形態において、リンパ節中の50%を超える、好ましくは70%を超える、特に好ましくは85%を超える、特に好ましくは95%を超える抗原提示細胞がターゲティングされる。この目的のために、5〜50nmのサイズを有するナノ粒子を用いることが好ましい。粒子サイズは、少なくとも二酸化ケイ素マトリクス、好ましくは全粒子を包含する。
【0074】
本発明による方法のさらなる実施形態において、ステップ(c)に、さらなるステップ、すなわち
(d)抗原提示細胞内へのナノ粒子の取り込み、場合により
(e)エンドソームにおける抗原の遊離
が続く。
【0075】
両ステップ(d)および(e)は、ステップ(c)の後に行われることが好ましい。飲食作用後の粒子状結合マトリクスによる抗原遊離の速度は、いわゆる切断可能リンカーを介してビヒクルに共有結合している抗原によりステップ(e)において制御することができる。例えば、pH感受性結合、酵素的インターフェース(例えばプロテアーゼ感受性リンカー)および/または還元的もしくは酸化的に切断可能なリンカーを表面官能基として組み入れることができる。本発明の好ましいpH感受性結合は、あるエステル、ジスルフィド架橋、ヒドラゾンリンカー、無水物結合、自己切断型インテイン配列、pH感受性の錯化剤または、例えば、ポリエチレンオキシド−修飾ポリ−β−アミノエステルなどのポリマーにより達成される。表面官能基としての不安定なリンカーを介する抗原の共有結合は、ステップ(e)に不可欠であり、ヒドラゾンリンカー、ジスルフィドリンカーまたは酵素的に容易に接近可能なペプチド配列が好ましい。さらに、抗原は、初期エンドソームにおいて遊離されることが好ましい。
【0076】
ナノ粒子、そのディスパージョン、医薬組成物および使用に関する本発明およびその実施形態の上記教示は、それが適切に見える限り、抗原提示細胞において抗原をターゲッティングするための方法にとって有効であり、それへの制約なしに適用可能である。
【0077】
さらに、本発明は、哺乳動物において免疫系を活性化するための方法であって、第一ステップ(a)において、ナノ粒子を上記の本発明による方法に従って抗原提示細胞に導き、第二ステップ(b)において、免疫系を活性化する方法に関する。補体系が活性化されることが好ましい。ステップ(b)において、活性化効率は、特に、粒子サイズ、表面官能基、表面荷電ならびにリガンド(例えば、抗原、PEG、アジュバント)のタイプ、比、量および密度を包含する粒子特性を介して調整することができる。ステップ(b)において、少なくとも部分的に反比例である粒子サイズを介して活性化効率を調整することが好ましい。活性化効率は、特により小さな粒子サイズで増加する。抗原提示細胞において抗原をターゲティングするための方法に関する本発明およびその実施形態の上記教示は、それが適切に見える限り、哺乳動物において免疫系または補体系を活性化するための方法にとって有効であり、それへの制約なしに適用可能である。
【0078】
さらに、本発明はワクチン接種方法であって、有効量の本発明によるナノ粒子および/またはこれらのナノ粒子を含むディスパージョンを、そのような治療を必要としている哺乳動物に投与する方法を教示する。治療されることになる哺乳動物は、ヒトであることが好ましい。本発明およびその実施形態の上記教示は、治療方法にとって有効であり、それへの制約なしに適用可能である。
【0079】
さらに、本発明は、T細胞応答、抗体応答および/または樹状細胞成熟を誘導するための方法であって、ディスパージョンおよび/または医薬組成物の形態であってよい本発明によるナノ粒子を哺乳動物に投与し、T細胞および/または樹状細胞の増殖および/または中和抗体の形成を誘導することを特徴とする方法を教示する。本発明の意味における好ましい生物体はヒトまたは動物である。本発明によるナノ粒子の開示は、当業者がT細胞および/または中和抗体の誘導のためにこれらを使用することを可能にする。
【0080】
ここで、当業者には、彼が、生物体、特にヒト患者に様々な用量で、本発明による医薬組成物として言うまでもなく使用することができる本発明によるナノ粒子を投与することができることは知られている。ここで、投与は、最大可能量のT細胞および/または中和抗体が生成されるような方法で行われるべきである。濃度および投与のタイプは、ルーチンな実験により当業者が決定することができる。
【0081】
ナノ粒子または医薬組成物を接触させることは、予防的または治療的に行うことができる。例えば、ウイルス感染性疾患に対する能動的ワクチン接種防御を発生するための予防的ワクチン接種の場合、ウイルスによる感染は、少なくとも、例えば、創傷内への個々のウイルスの進入後にそれらのさらなる増殖が大きく軽減されるか、進入してしまったウイルスが事実上完全に全滅されるような方法で防がれるべきである。免疫応答の治療的誘導の場合、患者の感染はすでに存在し、T細胞および/または中和抗体の誘導は、体内にすでに存在するウイルスを全滅させるか、それらの増殖を阻害するために行われる。
【0082】
さらに、本発明は生物体を受動免疫化するための方法であって、ある哺乳動物について本発明によるナノ粒子の投与により誘導されたT細胞および/または抗体を単離し、さらなる哺乳動物に投与することを特徴とする方法に関する。本発明の意味における「さらなる哺乳動物」は、同じ種または異なる種であるが、前記T細胞および/または抗体を誘導した生物体とは異なることを意味すると解釈される。とりわけ、対応するヒト化後に用いられるモノクローナル抗体を単離することも可能である。同様に、抗体産生細胞を本発明によるナノ粒子を対象とする中和抗体を産生するワクチン接種されたか感染した個体から単離し、受動免疫化の場合にモノクローナル抗体の形態で投与することができる。
【0083】
受動免疫化において、基本的に、例えば、あるウイルスに対する固有の免疫反応が患者の体内で起きず、代わりに、T細胞および/または抗体が、例えば治癒血清の形態で患者に導入される。能動免疫化と対照的に、受動免疫化は、できるだけ早くすでに起きた感染を治癒するか、あるいはウイルスの感染に対して直ちに防御を提供するという役目を有する。受動免疫化についての様々なワクチン接種スキームが、例えば、A型肝炎、B型肝炎またはFSMEに対する受動免疫化から当業者に知られている。このタイプのワクチン接種スキームは、ルーチンな実験により、例えば、HIV、ネコ白血病ウイルスおよび他のウイルスなどの特定のレトロウイルスに適合させることができる。受動免疫化のために使用される抗体は、モノクローナル抗体であることが好ましい。それらは特に、併用療法の構成要素として使用される。
【0084】
すべての知られているおよびさらなる構成要素または構成成分は、当業者によく知られており、ルーチンな実験において本発明による教示に具体的精緻化を受けることができる。
【0085】
すなわち、本発明の枠内で、ワクチン接種後に有効な細胞性免疫応答を促進する極小の二酸化ケイ素抗原コンジュゲートが初めて提供される。コンジュゲートは、抗原提示細胞における特異的ターゲティングと同時補体活性化の双方の能力があるという点で二重作用機構に対処する。50nm未満のナノ粒子は、従来技術の大きなナノ粒子と比較して、数倍高いターゲティング効率を有する。リンパ管内への効率的移動の結果として、間質流の生物物理学的機構を、有利なことに、リンパ節の樹状細胞をターゲティングするのに利用することができる。この新たな輸送経路におけるナノ粒子の対流は、複雑な細胞特異的ターゲティングが不必要である結果として、受動ターゲティングを可能にするが、樹状細胞がリンパ節に数多く存在することから、特に多数の細胞に到達する。これらの特性は、リンパ節の樹状細胞の確かな認識−交差反応性(末梢樹状細胞のターゲティングを包含する)の非存在を包含する−およびこれらの抗原提示細胞内への再現性のある確かでかつ完全な飲食作用の基礎をなす。その固有のアジュバント効果が免疫系、特に補体系を活性化する、二酸化ケイ素をベースとするナノ粒子の第二の有利な特性は、ターゲットにおいて奏功する。活性化の強度は、選択される抗原と無関係であるが、粒子サイズを介して修飾することができる。追加の補助薬および/または免疫系または補体系を活性化するためのナノ粒子表面の修飾(例えばポリヒドロキシル化)の非存在は、著しい単純化およびコスト削減に相当する。
【0086】
本発明によるナノ粒子は、無機の不活性で生体適合性のマトリクス材料を特徴とし、特に、予防的または治療的なワクチン接種のために使用することができる。同様に、ここで提供される二酸化ケイ素/抗原コンジュゲートを含むナノ粒子の開発は、細胞傷害性の活性化合物の治療係数を改善するための極めて有望な戦略である。特に、構成要素の不安定な連結は、身体の特異的コンパートメントにおける抗原性治療薬の遊離を保障し、可能な副作用の減少を期待できることを意味する。ナノ粒子は、高い薬学的安定性でも区別され、とりわけそれらの小さなサイズによって取り扱いやすい。単分散サイズの粒子を含む超微細ナノ粒子は、有利なことに無菌濾過性に適している。
【0087】
本発明が、本明細書に記載されているような具体的な方法、粒子および条件に限定されないことが言うまでもないのは、そのような事を変えることができるからである。さらに、ここで使用される用語は、特定の実施形態を説明する目的で専ら用いられ、本発明の保護の範囲を制限することは意図されていないことは言うまでもない。添付の特許請求の範囲を包含する本明細書においてここで使用されるように、例えば、「ある(a)」または「その(the)」などの単数の単語形態は、文脈が、他のことを具体的に指示していない限りは、複数の等価体を包含する。例えば、「ある抗原(an antigen)」への言及は、単一の抗原または、同一または異なっていてよい複数の抗原を包含し、または、「ある方法(a method)」への言及は、当業者に知られている等価なステップおよび方法を包含する。
【0088】
本発明を、具体的実施形態の非限定的な例を参照して下でより詳細に説明する。例は、特に、具体的に例示されている特徴の組合せに限定されていないと解釈されるべきである代わりに、例示的特徴は、本発明の目的が達成される限り、自由に組み合わせることができる。
【実施例】
【0089】
例1:単分散二酸化ケイ素粒子の製造
単分散二酸化ケイ素粒子の製造は、EP0216278B1に記載されているように、まず、一次粒子のゾルを製造し、続いて、得られるSiO2粒子を、反応の程度に対応する制御された方法で、テトラアルコキシシランの連続メータリングインにより望ましい粒子サイズにする、水性−アルコール性−アンモニア性媒体におけるテトラエトキシシランの加水分解により行った。25nmのサイズを有するSiO2粒子50gの製造は、例えば、可溶化剤としてのEtOH1.2l、脱イオン水860ml、テトラエチルオルトシリケート(TEOS)167mlおよび25%アンモニア水溶液28.5mlを必要とする。
【0090】
球状二酸化ケイ素粒子は、Zetasizer Nano ZS(Malvern Instruments、Herrenberg、Germany)を使用する動的光散乱測定によって決定した。値<0.1を有するMalvern−PDI(多分散性指数)は、単分散分布を示した。図1は、SEM顕微鏡写真によって粒子サイズおよび形態を示している。
【0091】
例2:N末端アルキン基を有するOVAペプチド断片SIINFEKLの調製
ペプチドは、Fmoc化学によってリンクアミド樹脂上で構築した。適当な側鎖保護基を有するN−α−Fmoc保護アミノ酸を用いた。使用する溶媒は、N−メチルピロリドンとした。まず、ペプチド鎖を自動合成装置(Applied Biosystems Model ABI433A)中で構築した。配列の終了後、末端Fmoc保護基を切断した。ポリマーを注射器内のアルキンカルボン酸と手動でカップリングさせた。DMFと、続いてジクロロメタンおよびメタノールで注意深く洗浄し、樹脂を一晩にわたって真空中で乾燥した。切断および脱保護のために、TFA/H2O/フェノール/トリイソプロピルシラン(37:1:1:1)の混合物5mlを樹脂に加え、混合物を2時間にわたって室温にて振盪した。TFA溶液を遠心分離管に移し、4℃にてジエチルエーテルをゆっくりと加えることにより沈殿させ、遠心分離し、ジエチルエーテルを加えることにより2回洗浄し、乾燥し、H2O/アセトニトリル(1:1v/v)に取った。精製は、7.5分のB0%〜B100%勾配(A=H2OおよびB=アセトニトリル、共にTFA0.1%を含む)、流速=10ml/分でRP−セレクトBカラム(150×10mm)を使用するRP−HPLCにより行った。精製した生成物の均質性および同一性は、分析用HPLCおよび質量分析法により裏付けられた。RP−HPLC精製後、ペプチドを凍結乾燥した。
【0092】
例3:3−ブロモプロピルトリメトキシシランによる二酸化ケイ素粒子の官能基化
例1において製造されたSiO2粒子(25nm)1gを、エタノール/水混合物(100ml;4:1)中に懸濁し、25%アンモニア水溶液0.3mlを加えた。続いて、3−ブロモプロピルトリメトキシシラン(ABCR、Karlsruhe、Germany)0.25mlをエタノール10mlに溶かし、滴下漏斗を介してゆっくりと滴加し、混合物を約20時間にわたって還流下で加熱した。反応混合物を室温まで冷却し、SiO2粒子をエタノール/水混合物(4:1)で5回洗浄した。すべての洗浄ステップは、50mlの反応容器中の温度制御された遠心分離機における9000×gおよび20℃で10分にわたる遠心分離および超音波フィンガー(ultrasound finger)を使用する粒子の再懸濁によって行った。
【0093】
例4:官能基化された二酸化ケイ素粒子のアジ化ナトリウムとの反応
3番目の例において3−ブロモプロピルトリメトキシシランで官能基化されたSiO2粒子を、ジメチルスルホキシド(DMSO)80ml中に再分散させた。アジ化ナトリウム1gおよび臭化テトラメチルアンモニウム100mgを加え、混合物を40時間にわたって80℃にて撹拌した。続いて、脱イオン水200mlを加え、粒子を、保持性能が10kDaの膜(Millipore、Bedford、USA)を使用する限外濾過法によって単離し、脱イオン水600mlで洗浄した。
【0094】
例5:OVAペプチド断片SIINFEKLの、官能基化されたSiO2粒子への連結
4番目の例において製造されたアジド−SiO2粒子をアセトニトリル40ml中に再懸濁し、例1からのOVAペプチド断片(SIINFEKL−アルキン)、ジイソプロピルエチルアミン(DIPEA)およびヨウ化銅(I)を加え、混合物を20時間にわたって室温にて撹拌した。脱イオン水100mlを懸濁液に加え、生成物を、10kDa膜(Millipore、Bedford、USA)を介する限外濾過法によって単離し、脱イオン水200mlおよびEDTA水溶液50mlで洗浄した。
【0095】
例6:読み出しとしてPBL表現型(末梢血リンパ球)を使用するインビボアジュバント活性についてのシリカナノ粒子の試験
検討はC57B1/6マウスで行った。動物を、PBS(リン酸緩衝溶液)、LPS(リポ多糖)またはシリカナノ粒子(25nm)のいずれかを投与する3群(1群当たり2匹のマウス)に分けた。PBSは対照としての役割を果たし、LPSは、それらのアジュバント活性に関するシリカナノ粒子に対して基準とされる参照試料(TLR4アゴニスト)としての役割を果たした。
【0096】
実験において、例1に記載されている方法により製造され、透析され、続いて、無菌濾過された25nmのサイズを有する未修飾シリカナノ粒子を検討した。続いて、シリカディスパージョンを、内毒素について検討し、動物実験の読み出しがナノ粒子の内毒素汚染により改ざんされないことを保証した。検討されるナノ粒子ディスパージョン中の内毒素濃度は、0.5IU/mlの液体非経口製剤についてPh.Eur.により推奨される最高レベル未満である。
【0097】
試験溶液またはディスパージョンの各々100μlを、動物の脇腹にs.c.(皮下)投与した。ナノ粒子ディスパージョンは、PBS100μl中にシリカナノ粒子450μgを含んでいた。参照試料としてLPS10μg/マウスを投与した。
【0098】
末梢血/マウス75〜100μlを、ヘパリン処置した毛細管によって後眼窩出血により採取し、ヘパリン処置したEppendorfカップに集めた。血液試料を様々な検出カクテルで標識した。続いて、免疫学的に関連するPBL表現型の百分率分布をFACS(蛍光活性化細胞分類)によって決定した。図2a〜cには、全PBL集団に関して4つのPBL亜集団CD4(図2a)、CD8エフェクター(図2b)、CD11b+およびCD11c+(DC)(図2c)の百分率比率がプロットされている。データは、シリカナノ粒子の投与後、免疫学的に重要なT細胞および樹状細胞の数がビヒクル対照PBSと比較して増加したことを裏付けており、シリカナノ粒子のアジュバント効果を示している。
【0099】
例7:水におけるシリカナノ粒子の99mTc標識
ナノ粒子溶液(25nm、固形物含量9.0mg/ml)を、使用前にMILEX−GV0.22μmフィルターユニットに通して濾過した。シリカナノ粒子50μlを99mTc(40μl中132MBq)に加え、溶液を混ぜた。次いで、SnCl2溶液(10mM HCl中SnCl2二水和物0.1%)2μlを加え、溶液を再び混ぜた。約2分後、0.5Mリン酸緩衝液pH8 150μlを加え、溶液を、Millipore Microcon Ultracel YM−100遠心分離濾過装置に移し、3分にわたって13,000rpmにて遠心分離した。フィルターを各回0.5Mリン酸緩衝液pH8 200μlで2回洗浄した。全濾液は99mTc 46.84MBqを含んでいた。99mTc 69.8MBqがフィルター中に残っていた。フィルター中の粒子を、各回0.5Mリン酸緩衝液pH8 200μl中に2回懸濁し、フィルターの回転および短時間の遠心分離により回収した。99mTc 28MBqで標識された粒子が得られた。続いて、得られた粒子懸濁液を動物実験のために使用した。
【0100】
例8:99mTc標識シリカナノ粒子のインビボイメージング
粒子を例7に記載されているように標識した。続いて、センチネルリンパ節における移動の非侵襲的イメージングを行った。この目的のために、体重約400〜500gの雌性ウィスターラットを、イソフルランを使用する吸入麻酔によって麻酔した。動物に、2本の後肢のうちの1本への99mTc 10〜20MBqを含む放射性標識粒子の澄明な懸濁液の皮下注射を行った。続いて、依然として麻酔下にある動物を、シンチグラフィーによって検討した。この目的のために、様々な時間における動物の下半身における蓄積を、ガンマカメラを使用して表示した。これらの写真の動態は、後肢から離れたリンパ節における粒子の著しい蓄積を示している(図3を参照)。これらはセンチネルリンパ節である。さらに腎臓および膀胱における一過性の蓄積が明らかである。対照的にリンパ節における蓄積は24時間にわたって続く。投与された投与量の約1%の移動率が観察された。対照実験として、センチネルリンパ節をイメージングするための市販のコロイド状調製物である99mTc標識Nano−Albumonの移動の分析を行った。この物質の蓄積はシリカ粒子の蓄積に匹敵していた。遊離99mTcを、雌性ウィスターラットの2本の後肢のうちの1本に皮下注射することにより投与するさらなる対照実験によって、遊離99mTcはリンパ節に蓄積しないことが裏付けられた。
【0101】
したがって、シリカナノ粒子は、免疫系の活性化が起こり得ることを介して、リンパ節をターゲティングすることができることが分かった。
【0102】
下記の例は医薬調製物に関する
例A:注射バイアル
再蒸留水3l中のナノ粒子100gおよびリン酸水素二ナトリウム5gの溶液を、2N塩酸を使用してpH6.8に調整し、無菌濾過し、注射バイアルに移し、無菌条件下で凍結乾燥し、無菌条件下で密封する。各注射バイアルは、ナノ粒子5mgを含有する。
【0103】
例B:坐剤
ナノ粒子20gの大豆レシチン100gおよびカカオ脂1400gとの混合物を融解し、鋳型に注ぎ込み、冷却する。各坐剤は、ナノ粒子20mgを含有する。
【0104】
例C:溶液
溶液は、再蒸留水940ml中でナノ粒子1g、NaH2PO4*2H2O9.38g、Na2HPO4*12H2O28.48gおよび塩化ベンザルコニウム0.1gから調製する。pHを6.8に調整し、溶液を1lにし、放射線照射により滅菌する。この溶液は、点眼剤の形態で使用することができる。
【0105】
例D:軟膏
ナノ粒子500mgを、無菌条件下でワセリン99.5gと混ぜる。
【0106】
例E:錠剤
ナノ粒子1kg、ラクトース4kg、ジャガイモデンプン1.2kg、タルク0.2kgおよびステアリン酸マグネシウム0.1kgの混合物を押し付けると、各錠剤がナノ粒子10mgを含有するように従来どおりに錠剤が得られる。
【0107】
例F:糖剤
錠剤を、例Eと同様に押し付け、続いて、スクロース、ジャガイモデンプン、タルク、トラガカントおよび色素のコーティングで従来のようにコーティングする。
【0108】
例G:カプセル剤
ナノ粒子2kgを、各カプセルがナノ粒子20mgを含有するように従来どおりに硬ゼラチンカプセルに導入する。
【0109】
例H:アンプル剤
再蒸留水60l中のナノ粒子1kgの溶液を無菌濾過し、アンプルに移し、無菌条件下で凍結乾燥し、無菌条件下で密封する。各アンプルは、ナノ粒子10mgを含有する。
【0110】
例I:吸入スプレー
ナノ粒子14gを等張性NaCl溶液10lに溶かし、溶液を、ポンプ機構付きの市販スプレー容器に導入する。溶液は、口または鼻の中にスプレーすることができる。1スプレーショット(約0.1ml)は、約0.14mgの投与量に相当する。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
粒子が、5〜50nmのサイズを有することを特徴とする、少なくとも1つの抗原が接続する少なくとも1つの表面官能基を有する50%を超える二酸化ケイ素を含むマトリクスを含むナノ粒子。
【請求項2】
下記のステップ、すなわち
(a)水、少なくとも1つの可溶化剤および少なくとも1つのアミンまたはアンモニアを含む媒体におけるテトラアルコキシシランおよび/または有機トリアルコキシシランの加水分解重縮合であって、初めに、一次粒子のゾルを製造し、続いて、得られるナノ粒子を、さらなる核形成が、反応の程度に対応する制御された方法で対応するシランの連続メータリングイン(metering in)により妨げられるような方法で、5〜50nmの範囲の望ましい粒子サイズにする加水分解重縮合、および
(b)ナノ粒子の表面官能基への抗原の接着、
を有する方法により製造されるナノ粒子。
【請求項3】
粒子表面がステップ(a)の前およびステップ(b)の後に官能基化されることを特徴とする、請求項2に記載のナノ粒子。
【請求項4】
前記表面官能基が、不安定なリンカーまたはアルコキシシラン、好ましくは、ジスルフィドリンカー、酵素的に接近可能なペプチド配列、ヒドラゾンリンカーまたは末端の反応性チオール基であることを特徴とする、前記請求項の一項に記載のナノ粒子。
【請求項5】
表面が多官能基化され、多官能基の架橋が、好ましくは、表面が抗原およびPEGおよび/またはアジュバントで吸着的または共有結合的に多官能基化されるという点で排除されることを特徴とする、前記請求項の一項に記載のナノ粒子。
【請求項6】
粒子が、10〜30nm、好ましくは25nm±10%のサイズを有することを特徴とする、前記請求項の一項に記載のナノ粒子。
【請求項7】
多孔性または非多孔性であることを特徴とする、前記請求項の一項に記載のナノ粒子。
【請求項8】
単分散であることを特徴とする、前記請求項の一項に記載のナノ粒子。
【請求項9】
抗原が、癌抗原、好ましくはスルビビンまたはそのエピトープであることを特徴とする、前記請求項の一項に記載のナノ粒子。
【請求項10】
前記請求項の一項に記載のナノ粒子を含むディスパージョン。
【請求項11】
ナノ粒子が単分散であり非凝集性であることを特徴とする、請求項10に記載のディスパージョン。
【請求項12】
請求項1から9の一項に記載のナノ粒子および/または請求項10または11に記載のディスパージョンを含むキット。
【請求項13】
請求項1から9の一項に記載のナノ粒子および/または請求項10または11に記載のディスパージョンを含む医薬組成物。
【請求項14】
非経口投与のための請求項13に記載の医薬組成物。
【請求項15】
薬学的に耐容性を示す補助剤と一緒に、活性化合物として、有効量の請求項1から9の一項に記載のナノ粒子および/または請求項10または11に記載のディスパージョンを含む医薬組成物。
【請求項16】
感染性疾患、敗血症性ショック、腫瘍、癌、自己免疫疾患、アレルギーおよび慢性または急性の炎症プロセスの群から選択される疾患を予防または治療するための、請求項1から9の一項に記載のナノ粒子および/または請求項10または11に記載のディスパージョン。
【請求項17】
腫瘍および/または癌を予防または治療するための、好ましくは癌を治療するための、請求項16に記載のナノ粒子および/またはディスパージョン。
【請求項18】
免疫予防または免疫療法のためのワクチンを調製するための、請求項1から9の一項に記載のナノ粒子および/または請求項10または11に記載のディスパージョンの使用。
【請求項19】
抗原提示細胞において抗原をターゲティングするための、場合により免疫系を活性化するための、請求項1から9の一項に記載のナノ粒子および/または請求項10または11に記載のディスパージョンの使用。
【請求項20】
抗原が、リンパ節中の樹状細胞においてターゲティングされることを特徴とする、請求項19に記載の使用。
【請求項21】
エクスビボ(ex vivo)での請求項19または20に記載の使用。
【請求項22】
下記のステップ、すなわち
(a)少なくとも1つの抗原が接続している表面官能基を有する純粋な二酸化ケイ素を本質的に含むナノ粒子の提供、
(b)細胞培養物、組織、器官または哺乳動物中に存在する抗原提示細胞へのナノ粒子の投与、
(c)少なくとも部分的に反比例するナノ粒子のサイズを介してターゲティング効率を調整することによる、間質液を介する抗原提示細胞への抗原のターゲティング
を有する、抗原提示細胞に抗原をターゲティングするための方法。
【請求項23】
ステップ(a)において、ナノ粒子が、下記のステップ、すなわち
(a’)水、少なくとも1つの可溶化剤および少なくとも1つのアミンまたはアンモニアを含む媒体におけるテトラアルコキシシランおよび/または有機トリアルコキシシランの加水分解重縮合であって、初めに、一次粒子のゾルを製造し、続いて、得られるナノ粒子を、さらなる核形成が、反応の程度に対応する制御された方法で対応するシランの連続メータリングインにより妨げられるような方法で、望ましい粒子サイズにする加水分解重縮合、
(a’’)ナノ粒子の表面官能基への少なくとも1つの抗原の接着、場合により
(a’’’)ナノ粒子の分散
により提供されることを特徴とする、請求項22に記載の方法。
【請求項24】
ステップ(a’’)において、表面が多官能基化され、多官能基の交差反応が、好ましくは、表面が抗原およびPEGおよび/またはアジュバントで吸着的または共有結合的に多官能基化されるという点で排除されることを特徴とする、請求項23に記載の方法。
【請求項25】
ステップ(a)において、5〜50nmのサイズを有する多孔性または非多孔性ナノ粒子が提供されることを特徴とする、請求項22から24の一項に記載の方法。
【請求項26】
ステップ(a)において、表面官能基が、不安定なリンカーまたはアルコキシシラン、好ましくは、ジスルフィドリンカー、酵素的に接近可能なペプチド配列、ヒドラゾンリンカーまたは末端の反応性チオール基であることを特徴とする、請求項22から25の一項に記載の方法。
【請求項27】
ステップ(b)において、ナノ粒子が、好ましくは非経口的に哺乳動物に投与されることを特徴とする、請求項22から26の一項に記載の方法。
【請求項28】
ステップ(c)において、リンパ節中の50%を超える抗原提示細胞がターゲティングされることを特徴とする、請求項22から27の一項に記載の方法。
【請求項29】
ステップ(c)に、さらなるステップ、すなわち
(d)抗原提示細胞内へのナノ粒子の取り込み、場合により
(e)エンドソームにおける抗原の遊離
が続くことを特徴とする、請求項22から28の一項に記載の方法。
【請求項30】
ステップ(e)において、抗原が、初期エンドソーム中で遊離されることを特徴とする、請求項29に記載の方法。
【請求項31】
下記のステップ、すなわち
(a)請求項22から30の一項に記載の方法による抗原提示細胞への抗原のターゲティング、および
(b)免疫系の活性化
を有する、哺乳動物において免疫系を活性化するための方法。
【請求項32】
ステップ(b)において、活性化効率が、少なくとも部分的に反比例する粒子サイズを介して調整されることを特徴とする、請求項31に記載の方法。
【請求項33】
有効量の請求項1から9の一項に記載のナノ粒子および/または請求項10または11に記載のディスパージョンが、そのような治療を必要としている哺乳動物に投与されることを特徴とする、ワクチン接種方法。
【請求項34】
請求項1から9の一項に記載のナノ粒子および/または請求項10または11に記載のディスパージョンが哺乳動物に投与され、T細胞および/または樹状細胞の増殖および/または中和抗体の形成が誘導されることを特徴とする、T細胞応答、抗体応答および/または樹状細胞成熟を誘導するための方法。
【請求項35】
請求項30に記載の方法により増殖した、形成されるT細胞および/または抗体が、単離されて哺乳動物に投与されることを特徴とする、哺乳動物を受動免疫化するための方法。

【図1】
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【図2a】
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【図2b】
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【図2c】
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【図3】
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【公表番号】特表2011−527996(P2011−527996A)
【公表日】平成23年11月10日(2011.11.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−517795(P2011−517795)
【出願日】平成21年7月13日(2009.7.13)
【国際出願番号】PCT/EP2009/005078
【国際公開番号】WO2010/006753
【国際公開日】平成22年1月21日(2010.1.21)
【出願人】(591032596)メルク パテント ゲゼルシャフト ミット ベシュレンクテル ハフツング (1,043)
【氏名又は名称原語表記】Merck Patent Gesellschaft mit beschraenkter Haftung
【住所又は居所原語表記】Frankfurter Str. 250,D−64293 Darmstadt,Federal Republic of Germany
【Fターム(参考)】