説明

二酸化塩素による水処理方法及び装置

【課題】二酸化塩素によるプール水等の殺菌消毒において、副生する亜塩素酸イオンを、二酸化塩素の除去や水の入れ替えなしに、効率的、経済的に分解除去できる水処理方法及び装置を提供する。
【解決手段】プール水を濾過する循環系20に、電解槽からなる亜塩素酸イオン除去手段60、プール水の塩化物イオン濃度を20ppm以上に調整するための塩化物注入手段40を、二酸化塩素注入手段30の下流側に設け、電解により亜塩素酸イオンを分解除去する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、プール水、浴槽水等の殺菌消毒に用いられる二酸化塩素(ClO2 )による水処理方法及び装置に関し、更に詳しくは、二酸化塩素による水処理で副生する亜塩素酸イオンを効率よく分解除去できる二酸化塩素による水処理方法及び装置に関する。
【背景技術】
【0002】
我が国ではプール水の殺菌処理に次亜塩素酸ナトリウム、次亜塩素酸カルシウム、高度さらし粉、塩素化イソシアヌル酸などの塩素系薬剤(以下、塩素と記す)が使用されている。しかしながら、塩素による殺菌処理では、特有の塩素臭があるだけでなく、肌に対する刺激が強く、発癌物質であるトリハロメタンが発生するおそれがあるなど、問題も多い。塩素に代わる殺菌消毒剤としては二酸化塩素があり、欧米では既に広く使用されており、我が国でもその使用は認められているが、殆ど普及していないのが実情である。その理由の一つは、後述するように、二酸化塩素でブール水を処理したときに副生する亜塩素酸イオン(ClO2 - )にある。
【0003】
二酸化塩素は強力な酸化剤で塩素と同等の消毒力を有する上に、塩素臭のような異臭を発せず、発癌物質であるトリハロメタンも生成しない。更に、人の寄生原虫であるクリプトスポジリウムに対して高い不活性化力も有している。このようなことから、遊泳用プールでは、塩素に代わる消毒剤として認められているが、水中に添加された二酸化塩素の一部は揮発してなくなり、別の一部は水中で反応して消費され、残りは水中に残存する。二酸化塩素の反応による消費は、塩化物イオンになる場合、亜塩素酸イオンになる場合、塩素酸イオン(ClO3 - )になる場合がある。このうち、亜塩素酸イオンは、メトヘモグロビン血症、溶血性貧血症の原因になることから、その濃度は1.2mg/L以下に規制されている。このため、二酸化塩素による水処理では、有効な亜塩素酸イオン対策が必要となる。
【0004】
ちなみに、遊泳用プール水における二酸化塩素濃度の基準値は0.1〜0.4mg/Lである。
【0005】
プール水中の亜塩素酸イオンを除去する方法として、亜硫酸ナトリウムやチオ硫酸ナトリウムなどの還元剤による分解処理が考えられるが、プールで規制されている程度の低濃度では分解処理が困難である。そこで次のような方法が考えられている。一つは、酸性化した活性炭を充填したカラム若しくは濾過床に通水する方法(特許文献1)であり、今一つは、水に不溶性の硫化鉄及び/又は天然の水酸化マグネシウム繊維を含むカラムやフィルター、濾過床により還元除去する方法(特許文献2)である。
【0006】
【特許文献1】特開平09−253626号公報
【特許文献2】特開平10−028979号公報
【0007】
しかしながら、いずれの方法も亜塩素酸イオンと同時に、消毒主剤である二酸化塩素をも除去してしまうために実際的でない。
【0008】
これらの問題のため、実際に二酸化塩素を使用する場合は、亜塩素酸イオンの濃度管理のためにプール水の入れ替えが行われているのが現状である。しかし、入れ替えの場合、その量は、毎日全体の2〜3割に及び、数日でプール水が完全に入れ替わる量に達する。この不経済さのため、二酸化塩素による殺菌消毒は、塩素による殺菌消毒と比べて多くの利点があるにもかかわらず、我が国では殆ど普及していないのが実情である。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明の目的は、消毒剤として二酸化塩素を使用したときに副生する亜塩素酸イオンを、二酸化塩素の除去も水の入れ替えもなしに、効率的に分解除去できる経済性に優れた二酸化塩素による水処理方法及び装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記目的を達成するために、本発明者らは、二酸化塩素でプール水を殺菌消毒したときの反応生成物である亜塩素酸イオンを、薬剤によらずに効率的に除去処理することを企画し、一つの方向性として電気分解に着目した。亜塩素酸イオンを含む水を電気分解すると、理論上は化学式(1)に示す反応が陽極で起こり、亜塩素酸イオンが二酸化塩素に戻る。
【0011】
【化1】

【0012】
しかしながら、現実はプール水における亜塩素酸イオンの濃度は最大で1.2mg/Lであり、非常に低濃度である。また、二酸化塩素の基準濃度も0.1〜0.4mg/Lと低い。このような低濃度の水溶液では、電気伝導度が低いために、電解反応を起こさせるためには相当に高い電圧を加える必要があり、その結果として、殆どの反応は化学式(2)に示す水の電気分解となり、高電圧を加えても亜塩素酸イオンの分解除去は期待できないというのが一般常識である。
【0013】
【化2】

【0014】
ところが、二酸化塩素で消毒したプール水の電気分解においては、次に述べる2つの好都合な事象が重なり、前述した常識に反して、反応生成物である亜塩素酸イオンの分解反応が比較的低電圧で想像以上にスムーズに進み、また低コストで行われることが判明した。
【0015】
一つ目の好都合な事象は、プール水おいては汗などに起因して塩分が含まれて電解質化が進んでおり、電解電圧が低下するということである。この場合、芒硝のような電解質では、化学式(1)の反応効率がかなり低く、電圧をかなり上げないと亜塩素酸イオンは分解せず、反応の主体は化学式(2)に示す水の電気分解となる。これに対し、加える電解質が食塩などの塩化物の場合には、低電圧で電解反応が進む上に、化学式(1)に示す亜塩素酸イオンの分解反応が起こり、その上、化学式(3)(4)に示すにように、塩素ガス生成反応が起こり、生成した塩素ガスCl2 は水中の亜塩素酸イオンと反応して二酸化塩素を生成する。
【0016】
【化3】

【化4】

【0017】
すなわち、プール水では元々汗等に起因する塩化物が含まれており、仮に少量の塩化物を加えても衛生上の問題が生じることはなく、この僅かの塩化物の共存により、電気分解による亜塩素酸イオンの分解除去が想像以上にスムーズに進むと共に、その分解除去に伴って、消毒主剤である二酸化塩素が再生成されるのである。この点において、二酸化塩素による殺菌消毒と、副生する亜塩素酸イオンの電解除去との組合せは非常に有意義である。
【0018】
二つ目の好都合な事象は、プール水に消毒主剤として添加される二酸化塩素にある。プール水等の消毒用途の二酸化塩素は、亜塩素酸ナトリウムと塩酸を反応させる二液法(化学式5)、若しくは亜塩素酸ナトリウム、次亜塩素酸ナトリウム及び塩酸を反応させる三液法(化学式6)のいずれかで生成されている。
【0019】
【化5】

【化6】

【0020】
いずれの方法で生成された二酸化塩素も、水に溶解した二酸化塩素水としてプール水に注入されるが、注目すべきは、いずれの生成反応でも塩化ナトリウムが副生するということである。このため生成物をそのまま水で希釈してプール水に注入すれば、二酸化塩素と共に塩化物も一緒に添加されてプール水の電解質化が進み、別途塩化物を添加する手間、コストを省くことができる。
【0021】
すなわち、二酸化塩素生成反応で生成された物質で処理したプール水中には、塩化ナトリウムがある程度の濃度で含有されることになり、外部から別途塩化物を添加しなくても亜塩素酸イオンの分解反応が進むのである。副生物の添加だけでは塩化物が不足する場合は不足分を外部から補充する。その場合も塩化物の補充量は僅かである。
【0022】
二酸化塩素の生成方法として二液法と三液法を比較した場合、三液法の方が反応性がよく、生成コストが安価である。また、反応式(化学式5、6)からも分かるように、二酸化塩素の生成量に対し、二液法の場合は1.25倍、三液法の場合は1.5倍の塩化ナトリウムが副生し、この点からも三液法の方が有利である。
【0023】
本発明はかかる知見を基礎として完成されたものであり、二酸化塩素で水処理すると共に、その水処理に伴って副生する亜塩素酸イオンを、処理水中での陽極と陰極との間の通電による電解処理により分解除去する二酸化塩素による水処理方法を要旨とする。
【0024】
また、本発明の二酸化塩素による水処理装置は、処理すべき水を収容する容器から容器内の水を容器外へ抜き出して再び容器内へ戻す循環系と、循環系を流通する水に二酸化塩素を注入するべく循環系に付設された二酸化塩素注入手段と、二酸化塩素注入手段と共に循環系に設けられ、循環系を流通する水の中で陽極と陰極との間に通電を行う電気分解による亜塩素酸イオン除去手段とを具備する。
【0025】
本発明においては、二酸化塩素による水処理で副生した亜塩素酸イオンが、水中での陽極と陰極との間の通電による電解処理により、前述した化学式(1)(3)(4)に示す反応に従って分解除去される。
【0026】
ここで重要な条件は、二酸化塩素により処理した水の塩化物イオン濃度、換言すれば、電解処理を受ける処理水の塩化物イオン濃度であり、具体的には20mg/L以上が好ましい。この塩化物イオン濃度が低いと、電解電圧が上がるだけでなく、電解の主体が化学式(2)に示す水の分解反応となり、亜塩素酸イオンの除去効率が低下する。特に望ましい塩化物イオン濃度は100mg/L以上である。電解電圧で言えば、20V以下が好ましく、15V以下が特に好ましい。
【0027】
二酸化塩素により処理した水(電解処理を受ける処理水)の塩化物イオン濃度の上限については、多すぎると塩分過多による弊害が生じる。例えば、濃くなると塩味を感じるようになるため、上水道の水質基準では200mg/L以下と決められている。このため200mg/L以下が好ましい。電解電圧で言えば、2V以上が好ましく、5V以上が特に好ましい。
【0028】
水処理するための二酸化塩素としては、二液法又は三液法にて製造された二酸化塩素を副生物と共に使用するのが好ましい。なぜなら、その副生物は塩化ナトリウムを含んでおり、二酸化塩素の添加と同時に塩化物の補給ができるからである。また、製造された二酸化塩素から副生物を分離除去する手間、コストが省略されるので、二酸化塩素を単体で購入して使用する場合と比べて原料コストを低減することができる。副生物だけで必要な塩化物イオン濃度を確保できなければ別途、塩化物を添加する。その場合にあっても添加量は僅かである。なお、添加する塩化物としては、ナトリウム塩、カリウム塩、リチウム塩、マグネシウム塩、カルシウム塩等が挙げられるが、価格面及び運転面からナトリウム塩が望ましい。
【0029】
二液法にて製造された二酸化塩素を使用するより、三液法にて製造された二酸化塩素を使用する方が好ましいことは、前述したとおりである。
【発明の効果】
【0030】
本発明の二酸化塩素による水処理方法及び装置は、殺菌能力が塩素殺菌の2.6倍で、大腸菌群や緑膿菌などの一般細菌及び飛沫と一緒に吸引されて肺炎を引き起し問題となっているレジオネラ属菌をも確実に殺菌し、更に発癌物質であるトリハロメタンを生成せず、塩素臭もない二酸化塩素を殺菌剤として使用する上に、殺菌処理に伴う副生物である亜塩素酸イオンを、水の入れ替えなしに効率的に分解除去できる。しかも、その亜塩素酸イオンの分解除去では二酸化塩素が除去されるどころか、逆に再生成するので、処理能力及び経済性の両方に著しく優れる。したがって、本発明の二酸化塩素による水処理方法及び装置は、遊泳用プール水の殺菌処理に特に有効である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0031】
以下に本発明の実施形態を図面に基づいて詳細に説明する。図1は本発明の第1実施形態を示す水処理装置の概略構成図である。
【0032】
第1実施形態の水処理装置は、遊泳用プール10内の水の殺菌消毒に使用される。この水処理装置は、プール水の濾過のために、プール10内の水をプール外へ抜き出して再びプール内へ戻す循環系20を備えており、循環系20内には循環ポンプ21、濾過器22などが設けられている。循環系20には又、二酸化塩素注入手段30及び塩化物注入手段40が、循環ポンプ21と濾過器22の間に位置して付設されると共に、濾過器22を迂回するバイパスライン50が付設されており、バイパスライン50内には亜塩素酸イオン除去手段60が設けられている。
【0033】
二酸化塩素注入手段30は、三液法により製造された二酸化塩素の水溶液を収容する二酸化塩素水貯槽31と、貯槽31内の二酸化塩素水を循環系20の配管内に注入する注入ポンプ32とを有している。貯槽31内の二酸化塩素水は、二酸化塩素だけでなくその製造時に副生する塩化ナトリウムも一緒に水に溶解したものである。塩化物注入手段40は、食塩水を収容する食塩水貯槽41と、貯槽41内の食塩水を、循環系20の配管内に二酸化塩素注入位置と濾過器22との間で注入する注入ポンプ32とを有している。
【0034】
亜塩素酸イオン除去手段60は電解槽であり、バイパスライン50を流通するプール水を一時的に貯留して減速させるタンク61、タンク61内に配設された陽極62及び陰極63、並びに陽極62と陰極63の間に所定の直流電圧を印加する直流電源64を有している。タンク61は、バイパスライン50の断面積より十分に大きい断面積の円筒状又は矩形状容器であり、循環系20を流通するプール水の一部が通過するようにバイパスライン50内に介装されている。陽極62及び陰極63は、タンク61の中心線を挟んで平行に配置された平坦な導電板であり、タンク61内を通過するプール水の多くが極板間を通るように構成されている。
【0035】
第1実施形態の水処理装置においては、循環系20における循環ポンプ21が作動することにより、プール10内の水の一部が循環系20を循環する。循環系20に流入した循環プール水には、まず循環ポンプ21の下流側で二酸化塩素注入手段30から二酸化塩素と塩化ナトリウムの混合水が注入される。これにより循環プール水中の二酸化塩素濃度が規定値に維持される。この維持のために、通常は二酸化塩素注入手段30の上流側に二酸化塩素濃度計が設けられる。
【0036】
遊泳用プールのプール水の場合は、この二酸化塩素濃度が0.1〜0.4mg/Lに管理される。この結果、プール水が二酸化塩素により殺菌消毒される。同時に、二酸化塩素と共に塩化ナトリウムが添加されるため、プール水の塩化物イオン濃度も上昇する。二酸化塩素添加後の塩化物イオン濃度が20mg/L未満の場合は、その濃度が20mg/L以上となるように、二酸化塩素注入手段30の下流側で塩化物注入手段40から塩化ナトリウム水が循環プール水に注入される。塩化物イオン濃度の管理のために、塩化物注入手段40の下流側には塩化物イオン濃度計が設けられている。
【0037】
こうして二酸化塩素濃度及び塩化物イオン濃度が調整された循環プール水は、一部が濾過器22通過してプール10に戻る。残りは、濾過器22に対して並列配置された亜塩素酸イオン除去手段60を通過してプール水10に戻る。
【0038】
電解槽である亜塩素酸イオン除去手段60においては、循環プール水が流速を落としてタンク61内を通過する。このとき、多くの循環プール水は陽極62と陰極63との間を通過する。陽極62と陰極63との間には例えば10Vというような直流電圧が印加されている。陽極62と陰極63との間を通過する循環プール水の塩化物イオン濃度が20mg/L以上と高くされているために、10Vというような比較的低い電圧でも、化学式(1)(3)(4)に示す電気分解反応が起こる。この結果、二酸化塩素の添加に伴って副生した亜塩素酸イオンが分解処理されると共に、二酸化塩素が再生成される。
【0039】
分解処理後の亜塩素酸イオン濃度が規定値を満足するように、亜塩素酸イオン除去手段60は設計されている。遊泳用プール水の場合、この規定値は1.2mg/L以下である。
【0040】
このようして第1実施形態の水処理装置でプール水の殺菌消毒を継続することにより、プール10内の水は、入れ替えを行わずとも、二酸化塩素濃度が0.1〜0.4mg/Lに、亜塩素酸イオン濃度が1.2mg/L以下に管理される。
【0041】
図2は本発明の第2実施形態を示す水処理装置の概略構成図である。第2実施形態の水処理装置は、第1実施形態の水処理装置と比べて亜塩素酸イオン除去手段60の配置形態及び構成が相違する。
【0042】
第2実施形態の水処理装置における亜塩素酸イオン除去手段60は、タンク61が循環系20の配管23に直列に設けられており、且つその配管23内に陽極62及び陰極63が直接配置されている。これに伴ってタンク61は省略されているが、流速を遅くするためにタンク61を配置することは有効である。
【0043】
他の構成は第1実施形態の水処理装置と実質同一であり、図示されていなが、循環系20内の亜塩素酸イオン除去手段60より上流側には、二酸化塩素注入手段30及び塩化物注入手段40が設けられている。
【0044】
第2実施形態の水処理装置においても、第1実施形態の水処理装置と同じように、循環系20内の二酸化塩素注入手段及び塩化物注入手段、並びに亜塩素酸イオン除去手段60により、プール10内の水の入れ替えを行わずとも、そのプール水の二酸化塩素濃度が0.1〜0.4mg/Lに、亜塩素酸イオン濃度が1.2mg/L以下に管理される。
【0045】
図3は本発明の第3実施形態を示す水処理装置の概略構成図である。第3実施形態の水処理装置は、第1実施形態及び第2実施形態の水処理装置と比べて亜塩素酸イオン除去手段60の配置形態及び構成が相違する。
【0046】
第3実施形態の水処理装置における亜塩素酸イオン除去手段60は、陽極62及び陰極63がプール10内に直接設けられており、より詳しくは、プール10の内壁から内側へ突出する形で設けられている。プール10内の陽極62及び陰極63は、安全のため、通水性のある保護カバーで覆われている。陽極62及び陰極63の構成自体は、第1実施形態及び第2実施形態の水処理装置と同じである。二酸化塩素注入手段及び塩化物注入手段についても、図示されていないが、第1実施形態及び第2実施形態の水処理装置と同様に、プール10外の循環系に設けられている。
【0047】
第3実施形態の水処理装置においても、第1実施形態及び第2実施形態の水処理装置と同じように、循環系20内の二酸化塩素注入手段及び塩化物注入手段、並びにプール10に直接取付けられた亜塩素酸イオン除去手段60により、プール10内の水の入れ替えを行わずとも、そのプール水の二酸化塩素濃度が0.1〜0.4mg/Lに、亜塩素酸イオン濃度が1.2mg/L以下に管理される。
【実施例】
【0048】
次に、本発明の実施例を説明し、比較例と対比することにより、本発明の効果を明らかにする。
【0049】
純水に亜塩素酸イオンを添加して、亜塩素酸イオン濃度が2.0ppmに調製された第1試験液を作成した。第1試験液に芒硝を添加して、硫酸イオン濃度が100ppmに調製された第2試験液を作成した。第1試験液に塩化ナトリウムを添加して、塩化物イオン濃度がそれぞれ5、10、20、50ppmに調製された第3、4、5、6試験液を作成した。
【0050】
それそれの試験液500mLを1Lビーカーに入れると共に、そのビーカー内に電極(陰極板:SUS316L 30mm×30mm、陽極板:白金板 30mm×30mm、極間距離10mm)をセットし、電極間に10Vの直流電圧を印加して15分間放置した。電解処理前後の試験液中の亜塩素酸イオン濃度をイオンクロマトグラフ法で測定した結果を表1に示す。
【0051】
【表1】

【0052】
電解処理により試験液中の亜塩素酸イオン濃度は低下するが、塩化物イオン濃度が20ppm以上に調製された第5、6試験液で特にその効果が顕著である。
【0053】
図1に示す水処理装置を備えたプールにおいて、水処理装置の有効性、特に電解槽である亜塩素酸イオン除去手段60の有効性を調査した。プール水中の二酸化塩素濃度、亜塩素酸イオン濃度、塩化物イオン濃度は表2に示すとおりである。
【0054】
【表2】

【0055】
電解槽である亜塩素酸イオン除去手段60(電極面積2dm2 )に毎分1Lのプール水を流通させた。電極間電圧は10Vとした。亜塩素酸イオン除去手段60の出口において亜塩素酸イオン濃度を測定したところ0ppmが維持された。
【図面の簡単な説明】
【0056】
【図1】本発明の第1実施形態を示す水処理装置の概略構成図である。
【図2】本発明の第2実施形態を示す水処理装置の概略構成図である。
【図3】本発明の第3実施形態を示す水処理装置の概略構成図である。
【符号の説明】
【0057】
10 プール
20 循環系
30 二酸化塩素注入手段
40 塩化物注入手段
50 バイパスライン
60 亜塩素酸イオン除去手段
61 タンク
62 陽極
63 陰極
64 直流電源

【特許請求の範囲】
【請求項1】
二酸化塩素で水処理すると共に、その水処理に伴って副生する亜塩素酸イオンを、処理水中での陽極と陰極との間の通電による電解処理により分解除去する二酸化塩素による水処理方法。
【請求項2】
請求項1に記載の二酸化塩素による水処理方法において、電解処理を受ける処理水が塩化物イオンを20mg/L以上含む二酸化塩素による水処理方法。
【請求項3】
請求項2に記載の二酸化塩素による水処理方法において、水処理するための二酸化塩素として、二液法又は三液法にて製造された二酸化塩素を副生物と共に使用する二酸化塩素による水処理方法。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれかに記載の二酸化塩素による水処理方法おいて、二酸化塩素で処理する水がプール水である二酸化塩素による水処理方法。
【請求項5】
処理すべき水を収容する容器から容器内の水を容器外へ抜き出して再び容器内へ戻す循環系と、
循環系を流通する水に二酸化塩素を注入するべく循環系に付設された二酸化塩素注入手段と、
二酸化塩素注入手段と共に循環系に設けられ、循環系を流通する水の中で陽極と陰極との間に通電を行う電気分解による亜塩素酸イオン除去手段とを具備する二酸化塩素による水処理装置。
【請求項6】
請求項5に記載の二酸化塩素による水処理装置において、電気分解による亜塩素酸イオン除去手段は、循環系の一部を迂回するバイパスラインに設けられている二酸化塩素による水処理装置。
【請求項7】
請求項5又は6に記載の二酸化塩素による水処理装置において、前記循環系を流通する水に塩化物を注入する塩化物注入手段が、前記循環系に付設されている二酸化塩素による水処理装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2009−279532(P2009−279532A)
【公開日】平成21年12月3日(2009.12.3)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−135258(P2008−135258)
【出願日】平成20年5月23日(2008.5.23)
【出願人】(000108993)ダイソー株式会社 (229)
【Fターム(参考)】