説明

二酸化塩素を測定するための装置および方法

【課題】二酸化塩素を簡単に測定するため、殊に二酸化塩素を酸素および塩素と共に簡単に測定するための装置および方法を提供することであり、この場合二酸化塩素は、簡単に崩壊する。
【解決手段】試験すべきガス試料が最初に塩素を除去するための試薬に晒され、次に二酸化塩素の定性的測定および/または定量的測定のための指示薬または電気化学的セルに晒される、場合によっては塩素の存在下で二酸化塩素を検出するための、ガス試料が貫流可能な装置の場合に、塩素を除去するための試薬がシクロヘキシルスルファミン酸および/またはその塩であるかまたはシクロヘキシルスルファミン酸および/またはその塩を含有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の対象は、二酸化塩素を、殊に異質ガスとしての塩素の存在下で測定するための装置および方法である。
【背景技術】
【0002】
塩素は、酸化段階に応じて一連の酸化物を形成し、この酸化物は、一般に酸化可能な物質の存在下で、場合によってはむしろ爆発しながら簡単に崩壊する。塩素の酸化物、例えば酸化二塩素(Cl2O)、三酸化二塩素(Cl23)、六酸化二塩素(Cl26)、七酸化二塩素(Cl27)および二酸化塩素(ClO2)は、公知である。
【0003】
二酸化塩素は、唯一の酸化塩素として工業的に重要である。この二酸化塩素は、例えば塩素酸ナトリウムから酸性の環境で塩化物の存在下に製造される(ClO3-+Cl-+2H+→ClO2+1/2Cl2+H2O)。酸化塩素は、亜塩素酸ナトリウムを含有する水溶液から塩素との酸化(2ClO2-+Cl2→2ClO2+2Cl-)または次亜塩素酸塩との酸化(2ClO2-+HOCl→2ClO2+Cl-+OH-)によって製造されてもよい。他面、亜塩素酸を酸の存在下で二酸化塩素および塩化物に不均等化反応させることもできる(5ClO2-+4H+→4ClO2+Cl-+2H2O)。
【0004】
二酸化塩素(ClO2)は、67.45g/molの分子量を有し、帯黄赤色のガスであるか、赤褐色の液体(沸点11℃)であるか、または固体として危険を伴って赤色の結晶(凍結点−59℃)を形成する。臭いは、塩素に似ている。この液体は、1.62g/cm3の密度を有し、ガスは、3.09g/lの密度を有する。二酸化塩素は、塩素と比較して水中で極めて良好に可溶性である。MAK値(Maximale Arbeitsplatzkonzentration最大の作業場濃度)は、0.3mg/m3である。二酸化塩素は、簡単に塩素(Cl2)および酸素に崩壊し、したがってガス状でしばしば酸素および塩素と一緒に存在する。
【0005】
二酸化塩素は、織物工業、セルロース工業および製紙工業において、例えば油、脂肪およびロウを漂白するために使用される塩素化合物である。更に、食品工場でも使用される消毒剤として重要である。二酸化塩素は、水用殺菌剤としても使用され、同様に悪臭を放つ廃棄物および排水の消毒および消臭にも使用される。
【0006】
二酸化塩素は、多くの場合に塩素と比較して工業的利点および/または生態学的利点を有し、一般に、多くの場合に選択的に使用されうる塩素よりも明らかに僅かな副生成物を形成する。即ち、二酸化塩素は、プールの水、シャワーの水および飲料水を消毒するために定評のある薬剤である。
【0007】
二酸化塩素消毒を使用する場合には、使用場所で最少濃度および最大濃度を監視することが必要である。このために、酸化還元指示薬およびこの指示薬の色の急変による化学的方法が使用される。二酸化塩素濃度の自動化された測定は、電気化学的方法、例えば電流測定または酸化還元電位の測定を利用する。二酸化塩素をガスセンサーにより、例えば酸化還元電位につき測定することも可能である。この方法は、総和パラメーターを検出するものであり、一般に特に二酸化塩素のためのものではなく、別の酸化物質をも検出する。
【0008】
二酸化塩素は、塩素および酸素に崩壊するので、二酸化塩素と塩素は、しばしば共存して存在する。これら双方の物質は、酸化剤であり、したがってこれら双方の物質は、酸化還元指示薬が働く通常の試験小管によって、共通してあたかも総和値として表示されるが、試験ガス中の個々の物質が試験結果に貢献したのかどうかを検出し、また、どの程度貢献したのかを算出することはできなかった。しかし、数多くの使用のためには、二酸化塩素を選択的に塩素の存在下でも検出し、場合によっては酸素の存在下でも検出することが望ましい。
【0009】
ガス試料中での二酸化塩素測定に対する他の酸化剤の影響は、自体公知である。即ち、例えば特開昭61−18041号公報の記載により、キャリヤーガス中に含有されているオゾンおよびヒポクロリド(Hypochlorid)は、二酸化マンガンおよび強塩基性のイオン交換樹脂に対して分解されるかまたは結合され、したがって二酸化塩素は、前記の異質ガスを含まずに半導体ガスセンサーによって測定されることができる。米国特許第2004/0161367号明細書の記載によれば、スルファミン酸は、塩素の捕捉のために試験小管中で使用される。
【特許文献1】特開昭61−18041号公報
【特許文献2】米国特許第2004/0161367号明細書
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明の課題は、二酸化塩素を簡単に測定するため、殊に二酸化塩素を酸素および塩素と共に簡単に測定するための装置および方法を提供することであり、この場合二酸化塩素は、簡単に崩壊する。
【課題を解決するための手段】
【0011】
この課題は、本発明によれば、塩素を除去するための試薬がシクロヘキシルスルファミン酸および/またはその塩であるかまたはシクロヘキシルスルファミン酸および/またはその塩を含有することを特徴とする、試験すべきガス試料が最初に塩素を除去するための試薬に晒され、次に二酸化塩素の定性的測定および/または定量的測定のための指示薬または電気化学的セルに晒される、場合によっては塩素の存在下で二酸化塩素を検出するための、ガス試料が貫流可能な装置、ならびに塩素を除去するための試薬がシクロヘキシルスルファミン酸および/またはその塩であるかまたはシクロヘキシルスルファミン酸および/またはその塩を含有することを特徴とする、試験すべきガス試料を、最初に塩素を除去するための試薬に晒し、次に二酸化塩素を定性的測定または定量的測定するための指示薬または電気化学的セルに晒すことにより、二酸化塩素を検出するための方法によって解決される。
【0012】
好ましい実施態様は、本発明による装置によれば、塩素を除去するための試薬は、ナトリウム−N−シクロヘキシルスルファメートおよび/またはカルシウム−N−シクロヘキシルスルファメートであり、指示薬は、比色指示薬、特にベンジジン誘導体であり、指示薬は、N,N−ジエチル−p−フェニレンジアミン、アリザリンバイオレット3R、3,3′,5,5′−テトラメチルベンゼン−ジフェニルベンジジン、クロロフェノールレッド、メチレンブルー、N,N,N′,N′−テトラフェニルベンジジン、o−トリジンおよび/またはo−ジアニシジン、殊に3,3′,5,5′−テトラメチルベンゼン−ジフェニルベンジジン、o−トリジンおよび/またはo−ジアニシジンであり、貫流可能な装置は、試験小管であり、試薬および指示薬は、この試験小管内で少なくとも2つの分かれた容器内または範囲内で互いに、場合によっては石英ガラス粒状物によって、別々に堆積されており、前記の容器または範囲は、貫流するガスのために結合されており、2つの容器または範囲は、透明な試験小管の一部分であり、および2つの容器は、2つの小管の一部分であり、これらの小管は、一緒になって試験小管を形成している。
【0013】
また、本発明による方法によれば、塩素を除去するための試薬は、ナトリウム−N−シクロヘキシルスルファメートおよび/またはカルシウム−N−シクロヘキシルスルファメートであり、指示薬は、比色指示薬、特にベンジジン誘導体であり、指示薬は、N,N−ジエチル−p−フェニレンジアミン、アリザリンバイオレット3R、3,3′,5,5′−テトラメチルベンゼン−ジフェニルベンジジン、クロロフェノールレッド、メチレンブルー、N,N,N′,N′−テトラフェニルベンジジン、o−トリジンおよび/またはo−ジアニシジン、殊に3,3′,5,5′−テトラメチルベンゼン−ジフェニルベンジジン、o−トリジンおよび/またはo−ジアニシジンであり、および定義された量の試料ガスは、手動ポンプにより場合によっては複数に分かれた試料小管を通して吸い込まれ、塩素を除去するための試薬および指示薬と接触され、殊に二酸化塩素の定量的測定が行なわれる。
【0014】
更に、好ましい実施態様は、以下の記載に記載されている。
【0015】
意外なことに、塩素および二酸化塩素を含有する試験ガスは、シクロヘキシルスルファミン酸(CAS No.:100-88-9)
【化1】

および/またはその塩(以下、一部は略記して試薬と呼ばれる)上に導かれ、ガス状塩素は、選択的に結合されるが、しかし、二酸化塩素は、試薬を通過することが見出された。
【0016】
特に、この試薬は、唯一使用される塩素捕捉剤である。
【0017】
更に、本発明の対象は、試験ガスの漏出に関連して指示薬を有する固有の表示層の前方で前層を有する試験小管であり、この場合この前層は、二酸化塩素を本質的に支障なく通過させることができるが、しかし、塩素を結合するかまたは吸着する。
【0018】
シクロヘキシルスルファミン酸塩は、例えばナトリウム−N−シクロヘキシルスルファメートまたはカルシウム−N−シクロヘキシルスルファメート(CAS 139-06-0)と呼称され、ナトリウム−シクラマートまたはカルシウム−シクラマートとも呼称され、公知であり、合成により製造された甘味料としてシクラマート(E952)の名称で使用される。
【0019】
二酸化塩素の本発明による測定のための指示薬としては、例示的に次のものが挙げられる:N,N−ジエチル−p−フェニレンジアミン(DPD)、アリザリンバイオレット(Alizarin Violet)3R(CAS 6408-63-5)、3,3′,5,5′−テトラメチルベンゼン−ジフェニルベンジジン、クロロフェノールレッド、メチレンブルー、N,N,N′,N′−テトラフェニルベンジジン、o−トリジン(3,3′−ジメチルベンジジン)および/またはo−ジアニシジン(3,3′−ジメトキシベンジジン)。好ましいのは、ベンジジン誘導体、例えば3,3,5,5−テトラメチルベンゼン−ジフェニルベンジジン、N,N,N′,N′−テトラフェニルベンジジン、o−トリジンおよび/またはo−ジアニシジンである。指示薬は、酸化還元指示薬であり、比色指示薬として使用されることができる。
【0020】
クロロフェノールレッド法は、選択的にクロロフェノールレッドの色を減少させる、二酸化塩素の能力に基づくものである(定量的)。DPD−グリシン試験によれば、塩素は、グリシンによって結合され(恐らく、クロロアミノ酢酸)、二酸化塩素は、DPDと一緒に淡紅色を形成し、この淡紅色の強さは、二酸化塩素の濃度と比例する。塩基性物質(例えば、pH8.1〜8.5で緩衝液NH3−NH4Clを用いて)中で、二酸化塩素は、指示薬アリザリンバイオレット3Rに対して作用して脱色する。
【0021】
指示薬および/または試薬は、粒状材料、例えばシリカゲル上にもたらされてよい。
【0022】
従って、大気中の二酸化塩素は、ガス容量、特に定義されたガス容量を吸収し、かつ試料小管/試験小管に通過させることによって定量的に測定されることもできる。
【0023】
本発明の実施態様によれば、試験小管は、前小管を備えていてよく、この前小管には、二酸化塩素のための比色試験小管が後接続されている。この試験小管は、例えばホースによって互いに結合されている。前小管は、例えばガラスフリット床の形の少なくとも2個の保持部材の間に試薬を含み、さらに、必要に応じて、2つの石英ガラス粒状物層またはガラスウール層の間にも試薬を含む。この石英ガラス粒状物層またはガラスウール層は、吸着剤が保持部材にさらさらと流れ落ちることを阻止するために使用することができる。同時に、吸着剤は、石英ガラス粒状物層と混合されてもよく、ガスと試薬とのよりいっそう良好な接触を保証する。
【0024】
比色試験小管は、上記された指示薬の1つからなる、場合によっては付加的に二酸化塩素濃度を測定するために指示薬に沿っての色の足跡の進行に応じて特に0.025〜1ppmの色目盛りおよび/または測定範囲を有する表示層を含む。
【0025】
更に、本発明の実施態様によれば、本質的に1つの部分からなる試験小管は、試薬/捕捉剤を含む分かれた前層を有し、この場合には、この前層を試料ガス量が貫流し、この試料ガス量は、塩素を含まないガスの形で前層を去り、二酸化塩素のための指示薬を含有する表示層上に流れる。必要な場合には、前層および表示層には、貫流中にのみ開く弁部材が設けられていてよい。本発明の好ましい実施形式において、この弁部材は、ばね負荷される円板弁または球型弁からなることができる。更に、前記の弁部材は、簡単に逆止弁としても作用する。
【0026】
試験小管は、有利に2個の中断可能な先端部を有し、かつ流れ方向に前層および次に表示層を有する。これら2つの層は、1つ以上のガス透過性の保持部材からなる中間位置によって互いに分離されており、場合によってはその間の形成された弁を備えている。この試験小管は、例えば中断された先端部により両側が開かれ、例えば端部に載置された手動ポンプによって定義されたガス量が貫流される。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
試験すべきガス試料が最初に塩素を除去するための試薬に晒され、次に二酸化塩素の定性的測定および/または定量的測定のための指示薬または電気化学的セルに晒される、場合によっては塩素の存在下で二酸化塩素を検出するための、ガス試料が貫流可能な装置において、塩素を除去するための試薬がシクロヘキシルスルファミン酸および/またはその塩であるかまたはシクロヘキシルスルファミン酸および/またはその塩を含有することを特徴とする、二酸化塩素を検出するための、ガス試料が貫流可能な装置。
【請求項2】
塩素を除去するための試薬は、ナトリウム−N−シクロヘキシルスルファメートおよび/またはカルシウム−N−シクロヘキシルスルファメートである、請求項1記載の装置。
【請求項3】
指示薬は、比色指示薬、特にベンジジン誘導体である、請求項1記載の装置。
【請求項4】
指示薬は、N,N−ジエチル−p−フェニレンジアミン、アリザリンバイオレット3R、3,3′,5,5′−テトラメチルベンゼン−ジフェニルベンジジン、クロロフェノールレッド、メチレンブルー、N,N,N′,N′−テトラフェニルベンジジン、o−トリジンおよび/またはo−ジアニシジン、殊に3,3′,5,5′−テトラメチルベンゼン−ジフェニルベンジジン、o−トリジンおよび/またはo−ジアニシジンである、請求項1記載の装置。
【請求項5】
貫流可能な装置が試験小管であり、試薬および指示薬がこの試験小管内で少なくとも2つの分かれた容器内または範囲内で互いに、場合によっては石英ガラス粒状物によって、別々に堆積されており、前記の容器または範囲は、貫流するガスのために結合されている、請求項1記載の装置。
【請求項6】
2つの容器または範囲は、透明な試験小管の一部分である、請求項5記載の装置。
【請求項7】
2つの容器は、2つの小管の一部分であり、これらの小管は、一緒になって試験小管を形成している、請求項5記載の装置。
【請求項8】
試験すべきガス試料を、最初に塩素を除去するための試薬に晒し、次に二酸化塩素を定性的測定または定量的測定するための指示薬または電気化学的セルに晒すことにより、二酸化塩素を検出するための方法において、塩素を除去するための試薬がシクロヘキシルスルファミン酸および/またはその塩であるかまたはシクロヘキシルスルファミン酸および/またはその塩を含有することを特徴とする、二酸化塩素を検出するための方法。
【請求項9】
塩素を除去するための試薬は、ナトリウム−N−シクロヘキシルスルファメートおよび/またはカルシウム−N−シクロヘキシルスルファメートである、請求項8記載の方法。
【請求項10】
指示薬は、比色指示薬、特にベンジジン誘導体である、請求項8記載の方法。
【請求項11】
指示薬は、N,N−ジエチル−p−フェニレンジアミン、アリザリンバイオレット3R、3,3′,5,5′−テトラメチルベンゼン−ジフェニルベンジジン、クロロフェノールレッド、メチレンブルー、N,N,N′,N′−テトラフェニルベンジジン、o−トリジンおよび/またはo−ジアニシジン、殊に3,3′,5,5′−テトラメチルベンゼン−ジフェニルベンジジン、o−トリジンおよび/またはo−ジアニシジンである、請求項8記載の方法。
【請求項12】
定義された量の試料ガスを手動ポンプにより場合によっては複数に分かれた試料小管を通して吸い込み、塩素を除去するための試薬および指示薬と接触させ、殊に二酸化塩素の定量的測定を行なう、請求項8記載の方法。

【公開番号】特開2008−83053(P2008−83053A)
【公開日】平成20年4月10日(2008.4.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−248091(P2007−248091)
【出願日】平成19年9月25日(2007.9.25)
【出願人】(503432043)ドレーガー セイフティー アクチエンゲゼルシャフト ウント コンパニー コマンディートゲゼルシャフト アウフ アクチエン (2)
【Fターム(参考)】