説明

二酸化炭素の分離方法

【課題】本発明の課題は、簡単な操作で安価に二酸化炭素を分離する方法を提供すること。
【解決手段】金属触媒の作用下でのプロピレンと酸素の反応からもたらされる成分からなる混合物から二酸化炭素を分離する方法において、該二酸化炭素を二酸化炭素分離膜の一方の壁に吸収させ、該分離膜のマトリックスに可溶化させ、該分離膜に拡散させ、そして他方の壁から脱着させることにより分離を行うことを特徴とする方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、金属触媒の作用下でのプロピレンと酸素の反応からもたらされる成分からなる混合物から二酸化炭素を分離する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
金属触媒存在下でのプロピレンと酸素の反応によるプロピレンオキサイドの製造の際に副生物が生成することは一般に知られている。生成する主要な副生物は二酸化炭素であり、このことはプロピレンオキサイドへの選択性が約80モル%しか達しないことに主な原因がある。
酸化反応に再循環される未反応成分中に多量の二酸化炭素が存在することは望ましくない。通常、プロピレンオキサイド生成物が水中への吸収により反応混合物から除去された後、未反応化合物及び希釈剤を含有する残りのガス混合物(例えば、メタン、窒素、アルゴン、酸素、プロピレン、エタン及び二酸化炭素)が生成する。そのガス混合物を酸化反応に再循環するに当たり、二酸化炭素を分離することが望まれる。この目的のため、反応混合物はスクラバーにおいて吸収剤、例えばアルカリ金属炭酸塩、特に炭酸カリウムと接触される。吸収中に以下の反応が起こる。
CO+HO+CO→2KHCO
【0003】
特許文献1には、銀触媒の作用下でのエチレンと酸素の反応からもたらされる成分からなる混合物から二酸化炭素を分離する方法が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平2−191519
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
従来の炭酸カリウムを使用する二酸化炭素の分離方法においては、環境的理由及びコストの観点から炭酸カリウムの再生が必要であり、そして再生のためには多量の水蒸気が用いられるため、再生を行うことで全体的コストが増大する。更に、再循環流中に蓄積するアルゴンを除去することも必要である。慣用的に用いられているアルゴンのブリーディング(分離除去)はプロピレンの損失を伴い、従って全体的なプロセスの経済性に不利な影響がある。
したがって、本発明の課題は、簡単な操作で安価に二酸化炭素を分離する方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するための手段について検討した結果、以下の発明を見出した。
[1] 金属触媒の作用下でのプロピレンと酸素の反応からもたらされる成分からなる混合物から二酸化炭素を分離する方法において、
該二酸化炭素を二酸化炭素分離膜の一方の壁に吸収させ、該分離膜のマトリックスに可溶化させ、該分離膜に拡散させ、そして他方の壁から脱着させることにより分離を行うことを特徴とする方法。
[2] 二酸化炭素分離膜が、二酸化炭素キャリヤーを膜中に保持させた二酸化炭素分離膜である、[1]記載の方法。
[3] 二酸化炭素分離膜が緻密分離膜である、[1]記載の方法。
[4] 二酸化炭素分離膜がプラズマ重合により得られたものである、[3]記載の方法。
[5] 前記二酸化炭素分離膜は、プラズマ重合物の緻密で選択性のフィルム、緻密で高透過性の中間層及び該プラズマ重合物のフィルムと該中間層とを支持する微孔支持体からなる、[1]記載の方法。
【0007】
[6] 分離を100〜10,000kPaの範囲の圧力にて行う、[1]〜[5]のいずれか記載の方法。
[7] 混合物が、金属触媒の作用下でのプロピレンと酸素の反応からもたらされる混合物から、主生成物のプロピレンオキサイドを除去した後にもたらされる成分からなる、[1]〜[6]のいずれか記載の方法。
[8] プロピレンオキサイドを水で洗浄除去する、[7]記載の方法。
[9] 成分が、二酸化炭素に加えてメタン、プロピレン、アルゴン、窒素及び酸素から選ばれている、[1]〜[8]のいずれか記載の方法。
[10] 成分がアルゴンを含み、アルゴンを二酸化炭素とともに少なくとも部分的に分離する、[9]記載の方法。
[11] 金属触媒の作用下でのプロピレンと酸素の反応によりプロピレンオキサイドを製造する方法において、
該反応からもたらされる成分から二酸化炭素を[1]〜[10]のいずれか記載の方法により分離することを特徴とする方法。
[12] 二酸化炭素が分離されたガス混合物をプロピレン酸化反応に再循環させる、[11]記載の方法。
【発明の効果】
【0008】
本発明の方法によって、簡単な操作で安価に二酸化炭素を分離することができる。また、本発明の方法によって、アルゴンのブリーディングの必要性は最小限度にすることができ、それによってプロピレンの潜在的な損失を減らすことができる。
【発明を実施するための形態】
【0009】
本発明は、金属触媒の作用下でのプロピレンと酸素の反応からもたらされる成分からなる混合物から二酸化炭素を分離する方法において、該二酸化炭素を二酸化炭素分離膜の一方の壁に吸収させ、該分離膜のマトリックスに可溶化させ、該分離膜に拡散させそして他方の壁から脱着させることにより該分離を行うことを特徴とする方法に関する。
【0010】
〔金属触媒の作用下でのプロピレンと酸素の反応〕
本発明が適用できる金属触媒の作用下でのプロピレンと酸素の方法としては、例えば、金属酸化物等を含有するような金属触媒存在下でプロピレン及び酸素を反応させる製法等が挙げられる。このような金属触媒存在下でプロピレン及び酸素を反応させる製法については、例えば、WO2011/075458、WO2011/075459、WO2012/005822、WO2012/005823、WO2012/005824、WO2012/005825、WO2012/005831、WO2012/005832、WO2012/005835、WO2012/005837、WO2012/009054、WO2012/009059、WO2012/009058、WO2012/009053、WO2012/009057、WO2012/009055、WO2012/009052、WO2012/009056等に記載されている。その製法において用いる触媒としては、下記(a)、(b)、(c)、(d)、(e)、(f)、(g)、(h)、(i)、(j)、(k)、(l)、(m)、(n)、(o)、(p)及び(q)からなる群から選ばれる少なくとも2種を含む触媒が挙げられる。
(a)銅酸化物
(b)ルテニウム酸化物
(c)マンガン酸化物
(d)ニッケル酸化物
(e)オスミウム酸化物
(f)ゲルマニウム酸化物
(g)クロミウム酸化物
(h)タリウム酸化物
(i)スズ酸化物
(j)ビスマス酸化物
(k)アンチモン酸化物
(l)レニウム酸化物
(m)コバルト酸化物
(n)オスミウム酸化物
(o)ランタノイド酸化物
(p)タングステン酸化物
(q)アルカリ金属成分又はアルカリ土類金属成分
好ましくは(a)銅酸化物及び(b)ルテニウム酸化物を含有する触媒であり、より好ましくは(a)銅酸化物、(b)ルテニウム酸化物及び(q)アルカリ金属成分又はアルカリ土類金属成分を含有する触媒である。
【0011】
〔二酸化炭素分離膜〕
本発明で用いることができる二酸化炭素分離膜としては、例えば、二酸化炭素キャリヤーを膜中に保持させた二酸化炭素分離膜が挙げられる。二酸化炭素キャリヤーとしては、従来公知の各種のものを用いることができる。二酸化炭素キャリヤーは、二酸化炭素と親和性を有する物質であり、塩基性を示す各種の無機及び有機物質が用いられる。本発明で好ましく用いられる二酸化炭素キャリヤーは、アルカリ金属炭酸塩及び/又はアルカリ金属重炭酸塩、アルカリ金属炭酸塩及び/又はアルカリ金属重炭酸塩とアルカリ金属イオンと錯体を形成する多座配位子との混合物、アルカノールアミン等を挙げることができる。
【0012】
二酸化炭素キャリヤーとして用いられる前記アルカリ金属炭酸塩としては、炭酸リチウム、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム、炭酸ルビジウム、炭酸セシウムを挙げることができる。アルカリ金属重炭酸塩としては、炭酸水素リチウム、炭酸水素ナトリウム、炭酸水素カリウム、炭酸水素ルビジウム、炭酸水素セシウムを挙げることができる。アルカノールアミンとしては、モノエタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン、モノプロパノールアミン、ジプロパノールアミン、トリプロパノールアミン等各種のものを挙げることができる。二酸化炭素キャリヤーは、前記したものに限られるものではなく、二酸化炭素と親和性を有するものであればよく、有機酸のアルカリ金属塩等各種のものを用いることができる。
【0013】
アルカリ金属イオンと錯体を形成する多座配位子としては、従来公知のもの、例えば、12−クラウン−4、15−クラウン−5、18−クラウン−6、ベンゾ−12−クラウン−4、ベンゾ−15−クラウン−5、ベンゾ−18−クラウン−6、ジベンゾ−12−クラウン−4、ジベンゾ−15−クラウン−5、ジベンゾ−18−クラウン−6、ジシクロヘキシル−12−クラウン−4、ジシクロヘキシル−15−クラウン−5、ジシクロヘキシル−18−クラウン−6、n−オクチル−12−クラウン−4、n−オクチル−15−クラウン−5、n−オクチル−18−クラウン−6等の環状ポリエーテル;クリプタンド〔2.1〕、クリプタンド〔2.2〕等の環状ポリエーテルアミン;クリプタンド〔2.2.1〕、クリプタンド〔2.2.2〕等の双環状ポリエーテルアミン、1,4,7,10,13,16−ヘキサアザシクロオクタデカン、8−アザアデニン等の環状ポリアミン;ポリエチレングリコール、ポリエチレングリコールモノアルキルエーテル、ポリプロピレングリコール等の非環状ポリエーテル;エチレンジアミン四酢酸、イミノ二酢酸、ニトリロ三酢酸、ヒドロキシエチルイミノ二酢酸、trans−1,2−ジアミノシクロヘキサン−N,N,N′,N′−四酢酸、エチレンジエチルトリアミン−N,N,N′,N″,N″−五酢酸、ヒドロキシエチルエチレンジアミン三酢酸、ジヒドロキシエチルグリシン等のポリアミノカルボン酸;エチレンジアミンテトラキス(メチレンホスホン酸)、ニトリロトリス(メチレンホスホン酸)等のポリアミノリン酸;クエン酸等のオキシカルボン酸;縮合リン酸;エチレンジアミン、ジエチレントリアミン、トリエチレンテトラミン等のポリアミン;アセチルアセトン、オキシンの他、グリシン、ヘミン、クロロフィル、バリノマイシン、ナイジェリシン等の天然物及びその誘導体を用いることができる。上記の内、塩を形成するものについては、それを使用することができる(部分塩を含む)。又、多座配位子を数種類混合して添加することも可能である。
【0014】
本発明の分離膜を製造するには、先ず、前記二酸化炭素キャリヤーを溶媒に溶解させて溶液を作る。溶媒としては、二酸化炭素キャリヤーを溶解し得るものであれば任意のものが使用可能である。一般的には、水や極性有機溶媒あるいは水と極性有機溶媒との混合液が用いられる。極性有機溶媒としては、窒素や、硫黄、酸素等のヘテロ原子を含むもの、例えば、イミダゾールや、N−メチルイミダゾール、N−プロピルイミダゾール、N−フェニルイミダゾール、N−ベンジルイミダゾール等のN−置換イミダゾール等のイミダゾール系化合物の他、ジメチルスルホキシド、ジオクチルスルホキシド等のジアルキルスルホキシド、N,N−ジアルキルホルムアミド、N,N−ジオクチルホルムアミド等のN,N−ジアルキルホルムアミド等が挙げられる。また、本発明においては、分離膜の安定性の点から、極性有機溶媒としては、できるだけ高沸点のもの、通常、沸点100℃以上、好ましくは150℃以上のものを使用するのがよい。
【0015】
二酸化炭素キャリヤーの例であるアルカリ金属炭酸塩及び/又はアルカリ金属重炭酸塩の濃度は、0.1〜5.0mol/l好ましくは1.0〜4.0mol/lである。アルカリ金属イオンと錯体を形成する多座配位子の溶液中濃度は、0.001〜1.0mol/l、好ましくは0.01〜0.1mol/lである。また、二酸化炭素と親和性を有する物質の他の例であるアルカノールアミンの溶液中濃度は10重量%以上にすることが好ましい。二酸化炭素キャリヤーの濃度が低すぎると、キャリヤー効果が低くなりすぎて好ましくなく、一方濃度が高すぎると二酸化炭素の移動速度が遅くなりすぎて好ましくない。
【0016】
前記のようにして得られた二酸化炭素キャリヤーを含む溶液は、分離膜とするために、支持体に含浸保持される。支持体としては、溶液を液膜として保持し得るものであればどのようなものでも使用可能であり、特に制約されない。このようなものとしては、各種の多孔質材料、例えば、プラスチック、セラミックス、金属、ガラス等の多孔質体や、ゲル材料、例えば、架橋構造を有するポリアクリル酸等が挙げられる。また、その形状は、平膜状、スパイラル状、中空糸状、筒体状、織布状、不織布状、紙状等の各種の形状であることができる。また、キャリアーは、溶液を含浸保持する方法の他に、膜中にイオン結合又は共有結合等で結合することもできる。分離膜の厚さは、できるだけ薄厚であるのが望ましいが、通常、500μm以下、好ましくは200μm以下である。前記支持体に二酸化炭素キャリヤーと二酸化炭素以外の酸性ガスキャリヤーを含む溶液を含浸保持させて形成した分離膜は、その一方の側が二酸化炭素吸着面として作用し、その反対の側が二酸化炭素放出面として作用する。支持体が中空糸の場合には、中空糸の外側を二酸化炭素吸着面として用い、中空糸の内側を二酸化炭素放出面として用いるか、又はその逆に用いる。このような中空糸を支持体とした分離膜は、その中空糸を混合ガス中に置き、その中空糸外面から二酸化炭素を中空糸内部に透過させ、中空糸内部から濃縮された二酸化炭素を回収するか、又はその逆に、中空糸内面から二酸化炭素を中空糸外面に透過させ、中空糸外部に濃縮された二酸化炭素を回収することができる。
【0017】
本発明では、二酸化炭素分離膜として、上記の二酸化炭素分離膜に加えて、Kirk−Othmer,"Encyclopaedia of Chemical Technology",Vol.3,Part 15の"MEMBRANE TECHNOLOGY"の見出しの下に非常に詳しく記載され、特にその第102頁及び第104頁に記載されている緻密メンブラン(分離膜)を用いることもできる。緻密分離膜は、一般に特定物を選択的に輸送する能力を有し、それ故分子の分離法、例えばガスの精製のために適用できる。緻密分離膜の場合、同じ大きさの分子でさえ、分離膜におけるそれらの溶解度又は拡散度が異なる場合、分離され得る。緻密分離膜は、低い輸送速度を有し得る。その場合、生産性が最も重要である分離法における商業的適用に必要とされる許容可能な輸送速度を達成するためには、分離膜を極めて薄くすることが必要である。
【0018】
本発明による方法に用いられる緻密分離膜は、好ましくは、プラズマ重合により得られる分離膜である。プラズマは、物理学上、正及び負に荷電した粒子及び中性種(分子、原子及びラジカル)の集合体であり、中性的に荷電分布されている物質をなしていると考えられている。プラズマは、固体にて(金属における励起電子として)及び液体にて(水に溶解された塩として)存在し得、しかし通常は気体に一層結びつけられていると考えられる。エネルギー(例えば、熱)が固体に加えられる場合、該固体は最初溶解しそして次いで蒸発し、最後に電子が中性ガスの原子や分子のいくつかから除去(イオン化といわれる過程)されて、正のイオン及び負の電子の混合物を生じる一方、全体的な中性の電荷密度は維持される。ガスの有意的な部分がイオン化される場合、その特性は実質的に変わり、固体、液体及び気体にほとんど類似しなくなる。プラズマ状態は、物質の第4の状態と考えられ得、それ自体と及び電磁場と及びその環境と影響し合う点で独得的である。プラズマ重合は、プラズマで満たされる空間に有機モノマーが導入され、そして該有機モノマーが例えば電場をかけることにより活性化され、そしてラジカル又はイオンに変換されて重合を遂行させる。1つ又はそれ以上の層のプラズマ重合物からなる分離膜が作られ得る。プラズマ重合物は通常、多孔支持体に施される。
【0019】
プラズマ重合物のフィルムは、イオン化可能な性質を有するいかなるモノマー状有機化合物から作られてもよい。かかる有機化合物の適当な例は、オレフィン、芳香族、アルキレンオキサイド、ハロゲン化低級炭化水素及びニトリルである。好ましくは、かかる有機化合物は、不活性ガス例えばアルゴンとともに、誘導コイルに取り囲まれたあるいは電極を備えたプラズマ室中に入れられる。種々の反応態様が、プラズマ重合の際、同時に起こる。本発明において、好ましくは緻密で高透過性の中間層が、プラズマ重合物のフィルムと多孔支持体との間に存在する。この中間層は、2つの目的即ちプラズマ重合物の支持及び多孔支持体への流体の分配を果たす。該中間層の機械的安定性により、プラズマ重合物によって作られる非常に薄い頂部層の適用が可能になる。該中間層の第2の機能、即ちプラズマ重合物の緻密で選択性のフィルムに通された流体を分配することにより、多孔支持体の存在にもかわらず該フィルムの全域が流体分離のために効率的に用いられるようになる。かくして、上述の分離膜は、3つの層、即ちプラズマ重合物の緻密で極めて薄くて選択性のフィルム、緻密で高透過性の中間層及びこれらの両方の層を支持する微孔支持体を有する。かかる三層型分離膜は、特開昭60−54707に詳しく記載されている。
【0020】
〔分離方法〕
二酸化炭素が分離膜を通じて輸送される非常に重要で基本的な手段は、二酸化炭素を分離膜中にその上流表面にて溶解させ、そしてその後その濃度勾配に沿って分離膜の下流面に分子を拡散させることを含む。その際、二酸化炭素は、隣接の流体相中に溶解又は蒸発させる。分離膜に拡散させるための推進力は、当該系にかけられる圧力である。別の推進力は、濃度である。実際に、主要な推進力をなすのは、分離膜の上流表面と下流表面との間の圧力差及び濃度差である。分離膜の上流面にかけられる圧力は、一般に分離中100〜10,000kPaの範囲にあり、好ましくは1,000〜8,000kPaの範囲内にある。
好ましくは、二酸化炭素が分離される混合物は、金属触媒の作用下でのプロピレンと酸素の反応からもたらされる成分からなる混合物から生成物のプロピレンオキサイドを除去(好ましくは、水での洗浄による除去)した後にもたらされる成分からなる。実際、該混合物の主成分は、酸化反応に用いられた出発混合物に依存して二酸化炭素、メタン、プロピレン、アルゴン、窒素及び酸素から選択される。
【0021】
本発明に従って二酸化炭素を分離した後に残存するガス混合物は、酸化反応に再循環され得る。存在するアルゴンの少なくとも一部もまた二酸化炭素とともに分離され、かくしてアルゴンの蓄積を防ぐためのブリーディングの必要性が減じられる。
本発明によって、二酸化炭素及びプロピレンを含むガス混合物は、一部の二酸化炭素のみ及びほぼすべてのプロピレンを含む混合物にされ得る。プロピレンの損失を最小にするために、二酸化炭素を含む透過物のガスを、再度、分離処理を行うこともできる。
【実施例】
【0022】
以下、本発明をさらに詳しく述べるために、図面に基づいて具体的な実施態様を説明する。しかし本発明はこの実施態様のみによって本発明の範囲を規制するものでない。
二酸化炭素分離膜の一方の側を1400kPaのガス供給圧として、二酸化炭素分離膜の下流側(表面積100cm)を大気圧にして、25℃の温度で、プロピレン、二酸化炭素及びメタンからなるガス混合物を、二酸化炭素分離膜に対して試験を行う。その結果、二酸化炭素を選択的に分離することができる。
【産業上の利用可能性】
【0023】
本発明の方法によって、簡単な操作で安価に二酸化炭素を分離することができる。また、本発明の方法によって、アルゴンのブリーディングの必要性は最小限度にすることができ、それによってプロピレンの潜在的な損失を減らすことができる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
金属触媒の作用下でのプロピレンと酸素の反応からもたらされる成分からなる混合物から二酸化炭素を分離する方法において、
該二酸化炭素を二酸化炭素分離膜の一方の壁に吸収させ、該分離膜のマトリックスに可溶化させ、該分離膜に拡散させ、そして他方の壁から脱着させることにより分離を行うことを特徴とする方法。
【請求項2】
二酸化炭素分離膜が、二酸化炭素キャリヤーを膜中に保持させた二酸化炭素分離膜である、請求項1記載の方法。
【請求項3】
二酸化炭素分離膜が緻密分離膜である、請求項1記載の方法。
【請求項4】
二酸化炭素分離膜がプラズマ重合により得られたものである、請求項3記載の方法。
【請求項5】
前記二酸化炭素分離膜は、プラズマ重合物の緻密で選択性のフィルム、緻密で高透過性の中間層及び該プラズマ重合物のフィルムと該中間層とを支持する微孔支持体からなる、請求項1記載の方法。
【請求項6】
分離を100〜10,000kPaの範囲の圧力にて行う、請求項1〜5のいずれか記載の方法。
【請求項7】
混合物が、金属触媒の作用下でのプロピレンと酸素の反応からもたらされる混合物から、主生成物のプロピレンオキサイドを除去した後にもたらされる成分からなる、請求項1〜6のいずれか記載の方法。
【請求項8】
プロピレンオキサイドを水で洗浄除去する、請求項7記載の方法。
【請求項9】
成分が、二酸化炭素に加えてメタン、プロピレン、アルゴン、窒素及び酸素から選ばれている、請求項1〜8のいずれか記載の方法。
【請求項10】
成分がアルゴンを含み、アルゴンを二酸化炭素とともに少なくとも部分的に分離する、請求項9記載の方法。
【請求項11】
金属触媒の作用下でのプロピレンと酸素の反応によりプロピレンオキサイドを製造する方法において、
該反応からもたらされる成分から二酸化炭素を請求項1〜10のいずれか記載の方法により分離することを特徴とする方法。
【請求項12】
二酸化炭素が分離されたガス混合物をプロピレン酸化反応に再循環させる、請求項11記載の方法。

【公開番号】特開2013−82613(P2013−82613A)
【公開日】平成25年5月9日(2013.5.9)
【国際特許分類】
【公開請求】
【出願番号】特願2012−219167(P2012−219167)
【出願日】平成24年10月1日(2012.10.1)
【出願人】(000002093)住友化学株式会社 (8,981)
【Fターム(参考)】