説明

二酸化炭素分離膜、二酸化炭素分離膜の製造方法及び二酸化炭素分離膜を用いた二酸化炭素分離モジュール

【課題】吸水性ポリマー、二酸化炭素の選択的な吸収と放散のいずれにも優れた二酸化炭素分離膜、その製造方法、及びそれを用いた膜モジュールを提供する。
【解決手段】吸水性ポリマー、二酸化炭素キャリア及び水を含むゲル膜と、前記ゲル膜を支持する支持体と、を有し、前記ゲル膜における二酸化炭素を含む混合ガスが供給される側である吸収側表面のpHが、該吸収側表面とは反対側の表面である放散側表面のpHより高い二酸化炭素分離膜である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、二酸化炭素分離膜、二酸化炭素分離膜の製造方法及び二酸化炭素分離膜を用いた二酸化炭素分離モジュールに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、二酸化炭素を含む混合ガス中の二酸化炭素を選択的に分離、除去する技術の開発が進んでいる。例えば、地球温暖化対策として排ガス中の二酸化炭素を分離、回収して濃縮する技術や、水蒸気改質により炭化水素を水素と一酸化炭素(CO)に改質し、さらに一酸化炭素と水蒸気を反応させて二酸化炭素と水素を生成させ、二酸化炭素を選択的に透過する膜によって二酸化炭素を排除分離、除去することで水素を主成分とする燃料電池用等のガスを得る技術が開発されている。
一方、二酸化炭素の分離はアミン類による吸着と放散とを繰り返すアミン吸収法が一般的で広く用いられてきている。しかしながら、この方法は広大な設備設置面積を必要とする上に、吸着時と放散時に、それぞれ、昇圧及び降温と降圧及び昇温を繰り返す必要があり、多大なエネルギーが必要とされるものである。またシステムの能力は設計時に決まってしまい、一旦作られたシステムの能力の拡縮は容易でない。
これに対して、膜分離法は分離膜を介して区画された2つの室の間の二酸化炭素分圧により自然に分離を行うもので、エネルギー消費が少なく、かつ装置の設置面積がアミン吸収法に比べてコンパクトであるという利点を有する。また膜分離法の場合には、システムの能力の拡縮もフィルターユニットの増減で対応できるために、能力の増減に柔軟性に対応可能なシステムの設計が可能であり、近年注目を浴びている。
【0003】
二酸化炭素分離膜は大別すると、膜中に二酸化炭素キャリアを含有し、このキャリアによって二酸化炭素が膜の反対側に輸送される、いわゆる促進輸送膜と、膜に対する二酸化炭素と分離対象物質の溶解性、および膜中の拡散性の差を利用して分離を行ういわゆる溶解拡散膜に大別される。溶解拡散膜は膜への二酸化炭素および分離対象物質の溶解度と拡散速度により分離を行う為、膜の材質、物性が決まればその分離度合いは一義的に決定され、また膜厚が薄いほど透過速度が大きくなるため、一般的に層分離法、界面重合法などを用いて1μm以下の薄膜として製造される。
これに対して促進輸送膜は二酸化炭素キャリアを膜中に添加することで二酸化炭素の溶解度を飛躍的に増大し高濃度環境で輸送を行うため、一般的に溶解拡散膜に比べ分離対象物質との分離度が高く、また二酸化炭素の透過速度が速い特徴を有する。
【0004】
上記の促進輸送膜として、次のようなものが知られている。
例えば、未架橋のビニルアルコール−アクリル酸塩共重合体水溶液を、二酸化炭素透過性支持体上へ膜状に塗布した後、加熱し、架橋させて水不溶化し、この水不溶化物に、二酸化炭素キャリア(二酸化炭素と親和性を有する物質)を含む水溶液を吸収させてゲル化することにより二酸化炭素分離ゲル膜を製造することが提案されている(特許文献1)。
【0005】
また、ポリビニルアルコール−ポリアクリル酸共重合体ゲル膜に炭酸セシウム若しくは重炭酸セシウム若しくは水酸化セシウムからなる添加剤を添加したゲル層を親水性の多孔膜に担持させてCO促進輸送膜を形成し、所定の主成分ガスに少なくとも二酸化炭素と水蒸気が含まれる原料ガスをCO2促進輸送膜の原料側面に100℃以上の供給温度で供給して、二酸化炭素促進輸送膜を透過した二酸化炭素を透過側面から取り出す二酸化炭素分離装置が提案されている(特許文献2)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特公平7−102310号公報
【特許文献2】特開2009−195900号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
特許文献1又は2に記載されている膜は、いずれも、膜の一方の面に供給された原料ガス中の二酸化炭素を、膜の表面(以下、「吸収側表面」とも言う。)で下記の式1で表される反応式に従って吸収し(以下、この反応を「正反応」とも言う。)、膜中を重炭酸イオン、炭酸イオンの形で濃度勾配に沿って拡散し、上記吸収側表面とは反対側の膜の表面(以下、「放散側表面」とも言う。)から下記の式1で表される反応式の逆方向の反応式に従って二酸化炭素として放出される(以下、「逆反応」とも言う。)。
CO + OH → HCO ・・・式1
【0008】
水に溶解できる重炭酸イオン及び炭酸イオンのモル量は、二酸化炭素が溶解できるモル量よりも格段に大きい。そのため、上記の膜を透過する二酸化炭素の速度は、膜中のこれらの重炭酸イオン、炭酸イオンの拡散が律速になることは希であり、上記の式1で表される反応式の反応速度が二酸化炭素の透過量を律速している。
上記の反応式における正反応は塩基性側のpHで促進され、逆反応は酸性側のpHで促進される。このため同一の膜内で両方の反応を同時に促進することは二律背反の事象である。
【0009】
本発明は二酸化炭素促進輸送膜における上記の問題を解決することを課題とする。即ち、本発明は、二酸化炭素の選択的な吸収と放散のいずれにも優れた二酸化炭素分離膜、その製造方法、及びそれを用いた膜モジュールを提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
前記目的を達成する本発明は、以下のとおりである。
<1> 吸水性ポリマー、二酸化炭素キャリア及び水を含むゲル膜と、前記ゲル膜を支持する支持体と、を有し、前記ゲル膜における二酸化炭素を含む混合ガスが供給される側である吸収側表面のpHが、該吸収側表面とは反対側の表面である放散側表面のpHより高い二酸化炭素分離膜。
<2> 前記ゲル膜が、pHが異なる積層された少なくとも二つの層を含む<1>に記載の二酸化炭素分離膜。
<3> 前記ゲル膜は、前記吸収側表面のpHが8.0以上であるか、前記放散側表面のpHが4.0以上8.0未満であるか、またはこれらの両者を満たす<1>又は<2>に記載の二酸化炭素分離膜。
<4> 前記ゲル膜が、積層された少なくとも三つの層を含み、前記吸収側表面を有する層のpHと前記放散側表面を有する層のpHとが異なる<1>〜<3>のいずれか一項に記載の二酸化炭素分離膜。
<5> 前記ゲル膜が、前記吸収側表面から放散側表面に向かってpHが低下する<1>〜<4>のいずれか一項に記載の二酸化炭素分離膜。
<6> 前記ゲル膜が、積層された少なくとも三つの層を含み、前記吸収側表面を有する層と前記放散側表面を有する層とを除く層の総厚が10μmから100μmである<1>〜<5>のいずれか一項に記載の二酸化炭素分離膜。
<7> 前記二酸化炭素キャリアが、アルカリ金属炭酸塩、アルカリ金属重炭酸塩およびアルカリ金属水酸化物よりなる群から選ばれた少なくとも一つの化合物である<1>〜<6>のいずれか一項に記載の二酸化炭素分離膜。
【0011】
<8> <1>〜<7>のいずれか一項に記載の二酸化炭素分離膜の製造方法であって、転写用基材上に、吸水性ポリマー、二酸化炭素キャリア及び水を含む一層のゲル膜を有するゲル膜転写材料を作製すること、前記ゲル膜転写材料のゲル膜が支持体と対向するように前記ゲル膜転写材料と前記支持体とを重畳させた積層体を作製すること、および、前記積層体の転写用基材を前記ゲル膜との界面で剥離すること、を含むゲル膜の転写工程を少なくとも一回含む二酸化炭素分離膜の製造方法。
<9> 前記転写工程を少なくとも二回含み、そのうちの一方の転写工程における前記ゲル膜のpHが8.0以上であり、他方の転写工程における前記ゲル膜のpHが4.0以上8.0未満である<8>に記載の二酸化炭素分離膜の製造方法。
<10> <1>〜<7>のいずれか一項に記載の二酸化炭素分離膜の製造方法であって、支持体上に、吸水性ポリマー、二酸化炭素キャリア及び水を含む一層のゲル膜を有するゲル膜材料を塗布する工程を少なくとも二回含み、そのうちの一方の塗布工程における前記ゲル膜のpHが8.0以上であり、他方の塗布工程における前記ゲル膜のpHが4.0以上8.0未満である二酸化炭素分離膜の製造方法。
<11> その内側に空間を有する容器と、前記空間を第一の室および第二の室に仕切る<1>〜<7>のいずれか一項に記載の二酸化炭素分離膜と、前記容器に形成され、前記第一および第二の室に独立して連通するそれぞれ少なくとも一対の入り口および出口と、を含む二酸化炭素分離モジュール。
<12> 前記二酸化炭素分離膜が、プリーツ形状を有する<11>に記載の二酸化炭素分離モジュール。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、二酸化炭素透過性、二酸化炭素選択性が優れた二酸化炭素分離膜、その製造方法、及びそれを用いた二酸化炭素分離モジュールが提供される。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】本発明に係る三つの層ので構成されたゲル膜を有する二酸化炭素分離膜の断面図である。
【図2】図1に係る二酸化炭素分離膜のゲル膜を構成する三つの層の一実施態様に係る各層のpHの関係を表した説明図である。
【図3】図1に係る二酸化炭素分離膜のゲル膜を構成する三つの層の別の実施態様に係る各層のpHの関係を表した説明図である。
【図4】本発明に係る二酸化炭素分離膜を用いた一実施態様に係る二酸化炭素分離モジュールの部分切り欠き斜視図である。
【図5】本発明に係る二酸化炭素分離膜を用いた別の実施態様に係る二酸化炭素分離モジュールの概略斜視図である。
【図6】図5の入り口566を上下二分する面における断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
本発明に係る二酸化炭素分離膜は、吸水性ポリマー、二酸化炭素キャリア及び水を含むゲル膜と、前記ゲル膜を支持する支持体と、を有し、前記ゲル膜における二酸化炭素を含む混合ガスが供給される側である吸収側表面のpHが、該吸収側表面とは反対側の表面である放散側表面のpHより高いものである。
【0015】
−ゲル膜−
ゲル膜は、一方の表面のpHが反対側である他方の面のpHと相違するものであれば、一層で構成されたものであっても複数の層で構成されたものであっても良い。ゲル膜は、少なくとも二つの層で構成されているものが、前記一方の表面のpH及び他方の面のpHを制御することが容易であるという点から好ましい。この場合、吸収側表面を有する層から放散側表面を有する層に向かって、pHが低下するように各層を配置することが好ましい。 ゲル膜は、二酸化炭素の分離効率の高いものが得られるという点から、少なくとも三つの層で構成されているものが更に好ましい。
ゲル膜は、前記の式1に係る正反応が効率よく進むという点から、吸収側表面のpHは7.0以上であることが好ましく、更に7.5以上がより好ましく、8.0以上が最も好ましい。吸収側表面のpHの上限に制限はないが、実用的な観点から12以下、更に好ましくは11.8以下、最も好ましくは11.5以下とされる。
【0016】
また、ゲル膜は、前記の式1に係る逆反応が効率よく進行するという点から、放散側表面のpHが1.0〜9.5の範囲が好ましく、更に3.0〜8.0の範囲がより好ましく、4.0〜8.0の範囲が最も好ましい。
【0017】
ゲル膜が少なくとも三つの層で構成される場合、吸収側表面を有する層と放散側表面が有する層とで挟まれた中央部の層のpHは、前記の式1に係る正反応で形成された重炭酸イオン(HCO)が溶存状態で維持される(即ち、逆反応により二酸化炭素となって層中に溶解できずに気体となってしまうことがない)限り、いかなるpHであっても良い。
中央部の層のpHは、放散側表面のpHよりも高いことが好ましく、8.0〜12.5の範囲から適宜選択される。中央部の層のpHは、吸収側表面のpHより低く、放散側表面のpHより高い範囲から選ばれることがより好ましい。
【0018】
図1は、本発明に係る三つの層で構成されたゲル膜を有する二酸化炭素分離膜を示した模式的な断面図である。図1において、二酸化炭素分離膜1は、支持体10の一方の表面に、第一の層21、第二の層22及び第三の層23の三つの層で構成されたゲル膜20が設けられている。第三の層23の表面には、更に支持体(図示せず)が設けられていても良い。
図1の断面図で示される二酸化炭素分離膜1に係るゲル膜20は、第三の層23の支持体10とは反対側の表面が二酸化炭素を含む混合ガスが供給される吸収側表面Sとされ、第一の層21の支持体10側の表面が二酸化炭素を放出する放散側表面Rとされる。従って、第三の層23のpHが第一の層21のpHより高くなるように設定される。
【0019】
図2は、図1に係る二酸化炭素分離膜のゲル膜20の一実施態様に係る第一の層21から第三の層23の各層のpHの関係を表した説明図である。図2に示されているように、この実施態様においては第一の層21から第三の層23の順で、階段状にpHが高くなるように設定されている。
図3は、図1に係る二酸化炭素分離膜のゲル膜20の別の実施態様に係る第一の層21から第三の層23の各層のpHの関係を表した説明図である。図3に示されているように、この実施態様においては、第三の層23のpHが第一の層21のpHより高く設定されており、第二の層22のpHは、第一の層21側から第三の層23に向かって徐々に高くなるように設定されている。
【0020】
上記のような二酸化炭素キャリア及び水を含むゲル膜を構成する成分は、ゲル膜とするための吸水性ポリマー、二酸化炭素キャリア及び水を含んで構成され、さらに必要に応じて、二酸化炭素吸収促進剤、セット剤などの添加剤が含まれていても良い。
以下、これらの各成分について、説明する。
−吸水性ポリマー−
吸水性ポリマーは、ゲル膜が所望のpHを有するものとするために、官能性ポリマーであることが好ましい。
ここで、「官能性ポリマー」とは、ポリマーの分子中に、このポリマーのpHを決定付ける機能を有する塩基性基及び酸性基から選ばれた少なくとも一つの官能基を有するポリマーを意味する。上記塩基性基及び酸性基における「塩基」および「酸」は広義の塩基及び酸を含むものである。そして、ポリマーのpHは、後述の方法により決定される。
【0021】
このような官能基としては、次のような一価から四価の基が含まれる。
例えば、カルボキシル基、リン酸基、ホスホン酸基、ホスフィン酸基、チオール基、アミノ基、ヒドロキシル基、シアノ基、エーテル基、チオエーテル基、アミン基、イミン基、アミド基、イミド基、カルボンアミド基、スルホンアミド基、カルバミン基、スルファミン基、四級窒素原子を含む基、スルホニウム基など。
これらの基は、ポリマー構造中に単独で含まれていても良いし、二種以上が組み合わされて含まれていてもよい。
【0022】
好適な官能性ポリマーの具体例には、例えば、ポリビニルアルコール、ポリアクリル酸、ポリ1−ヒドロキシ−2−プロピルアクリレート、ポリエチレンオキサイド変性リン酸メタクリレート、ポリアリルスルホン酸、ポリビニルスルホン酸、ポリアクリルアミドメチルプロパンスルホン酸、ポリエチレンイミン、ポリアリルアミン、キチン、キトサン、ゼラチン、ポリリシン、ポリグルタミン酸、ポリアルギニン、ポリグリシジルメタクリレート、ポリ1−ヒドロキシ−2−プロピルアクリレート、ポリエチレンオキサイド変性リン酸メタクリレートなどが含まる。
これらの中でも、吸水性、保水性、ゲル膜としての強度、及び二酸化炭素キャリアの担持性の少なくとも一つの点で優れているという点から、ポリビニルアルコール、ポリアクリル酸、ポリエチレンイミン、及びポリアリルアミン、並びにこれらの共重合体(例えばポリビニルアルコール−ポリアクリル酸共重合体)を用いることが好ましい。
官能性ポリマーは、更に必要に応じて化学修飾を加えても、官能基以外のその他の基を追加しても良い。また架橋しても良い。
官能性ポリマーは、ゲル膜が形成されるものである限り広い範囲の分子量のものから選択することができるが、一般的には、重量平均分子量が1,000〜5,000,000の範囲のものから選ばれる。
【0023】
これらの官能性ポリマーは、単独で使用してもよいし、二種以上を組み合わせて併用してもよい。
ゲル膜を構成する各層における官能性ポリマーの含有量は、膜を形成し、二酸化炭素分離膜が水分を十分保持できるようにする観点から、0.5〜50質量%であることが好ましく、さらには1〜30質量%であることがより好ましく、さらには2〜15質量%であることが特に好ましい。
【0024】
−二酸化炭素キャリア−
前記二酸化炭素キャリアは、二酸化炭素と親和性を有し、かつ、塩基性を示す各種の水溶性の無機物質であり、アルカリ金属炭酸塩、アルカリ金属重炭酸塩、アルカリ金属水酸化物を意味する。
【0025】
アルカリ金属炭酸塩としては、例えば、炭酸リチウム、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム、炭酸ルビジウム、炭酸セシウムを挙げられる。
アルカリ金属重炭酸塩としては、例えば、炭酸水素リチウム、炭酸水素ナトリウム、炭酸水素カリウム、炭酸水素ルビジウム、炭酸水素セシウムを挙げられる。
アルカリ金属水酸化物としては、例えば、水酸化リチウム、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化ルビジウム、水酸化セシウムなどが挙げられる。
これらの中でも、二酸化炭素との親和性がよいという観点から、カリウム、ルビジウム、セシウムを含む化合物が好ましい。
【0026】
ゲル膜を構成する各層における二酸化炭素キャリアの含有量は、前記官能性ポリマーの量との比率にもよるが、二酸化炭素キャリアとしての機能が発揮され且つ使用環境下における二酸化炭素分離膜としての安定性に優れるという点から0.1〜30質量%であることが好ましく、さらに0.2〜20質量%であることがより好ましく、さらに0.3〜15質量%であることが特に好ましい。
【0027】
−添加剤−
〈二酸化炭素吸収促進剤〉
前記二酸化炭素吸収促進剤は、二酸化炭素と二酸化炭素キャリアとの反応を促進する化合物であり、窒素含有化合物や硫黄酸化物を意味する。
【0028】
前記窒素含有化合物としては、例えば、グリシン、アラニン、セリン、プロリン、ヒスチジン、タウリン、ジアミノプロピオン酸などのアミノ酸類、ピリジン、ヒスチジン、ピペラジン、イミダゾール、トリアジンなどのヘテロ化合物類、モノエタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン、モノプロパノールアミン、ジプロパノールアミン、トリプロパノールアミンなどのアルカノールアミン類や、クリプタンド〔2.1〕、クリプタンド〔2.2〕などの環状ポリエーテルアミン類、クリプタンド〔2.2.1〕、クリプタンド〔2.2.2〕などの双環式ポリエーテルアミン類やポルフィリン、フタロシアニン、エチレンジアミン四酢酸などを用いることができる。
前記硫黄化合物としては、例えば、シスチン、システインなどのアミノ酸類、ポリチオフェン、ドデシルチオールなどを用いることができる。
二酸化炭素促進剤を添加する場合、ゲル膜を構成する層の少なくとも一つに添加され、その量は、添加される層に対して、20質量%〜200質量%の範囲が適当である。
【0029】
〈セット剤〉
セット剤は、ゲル膜を構成する層が膜状となることを助ける製膜性の向上剤であり、冷却すると粘度が上昇する性質を持つ多糖類を用いることが好ましい。
セット剤としては、例えば、寒天、アラビアガム、κ−カラギーナン、ι−カラギーナン、λ−カラギーナン、グアガム、ローカストビーンガム、ペクチン、トラガント、トウモロコシデンプン、リン酸化デンプンなど、微生物系多糖類としては、キタンサンガム、デキストリンなど、動物系天然高分子としては、ゼラチン、カゼイン、コンドロイチン硫酸ナトリウムなどが挙げられる。セルロース系としては、エチルセルロース、カルボキシメチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、メチルセルロース、ニトロセルロース、カチオン化セルロースなどが挙げられる。デンプン系としては、リン酸化デンプン、アルギン酸系としては、アルギン酸ナトリウム、アルギン酸プロピレングリコールなど、その他の分類として、カチオン化グアガム、ヒアルロン酸ナトリウムが挙げられる。
セット剤は、ゲル膜を構成する層の少なくとも一つに添加され、その量は、添加される層に対して、0.5質量%〜30質量%の範囲が適当である。
【0030】
〈架橋剤〉
架橋剤は、ゲル膜を構成する層に含まれる官能性ポリマーおよび必要に応じて添加されたセット剤を架橋する場合に、その架橋を促進させめために所望により添加されるものである。上記の架橋は、一般に加熱、又は、赤外線、紫外線、電子線、放射線等の照射の助けを借りて行われる。特に、ポリビニルアルコール−ポリアクリル酸塩共重合体を官能性ポリマーとして含む層の場合には、架橋剤として、この官能性ポリマーと熱架橋反応し得る官能基を二つ以上有する化合物を含有させることが好ましい。具体的には、多価グリシジルエーテル、多価アルコール、多価イソシアネート、多価アジリジン、ハロエポキシ化合物、多価アルデヒド、多価アミン等が挙げられる。
【0031】
ここで、上記多価グリシジルエーテルとしては、例えば、エチレングリコールジグリシジルエーテル、ポリエチレングリコールジグリシジルエーテル、グリセロールポリグリシジルエーテル、ジグリセロールポリグリシジルエーテル、ポリグリセロールポリグリシジルエーテル、ソルビトールポリグリシジルエーテル、ペンタエリスリトールポリグリシジルエーテル、プロピレングリコールグリシジルエーテル、ポリプロピレングリコールジグリシジルエーテル等が挙げられる。
また、上記多価アルコールとしては、例えば、エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、テトラエチレングリコール、ポリエチレングリコール、グリセリン、ポリグリセリン、プロピレングリコール、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン、ポリオキシプロピル、オキシエチエンオキシプロピレンブロック共重合体、ペンタエリスリトール、ソビトール等が挙げられる。
【0032】
また、上記多価イソシアネートとしては、例えば、2,4−トルイレンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート等が挙げられる。また、上記多価アジリジンとしては、例えば、2,2−ビスヒドロキシメチルブタノール−トリス〔3−(1−アシリジニル)プロピオネート〕、1,6−ヘキサメチレンジエチレンウレア、ジフェニルメタン−ビス−4,4’−N,N’−ジエチレンウレア等が挙げられる。
また、上記ハロエポキシ化合物としては、例えば、エピクロルヒドリン、α−メチルクロルヒドリン等が挙げられる。
また、上記多価アルデヒドとしては、例えば、グルタルアルデヒド、グリオキサール等が挙げられる。
また、上記多価アミンとしては、例えば、エチレンジアミン、ジエチレントリアミン、トリエチレンテトラミン、テトラエチレンペンタミン、ペンタエチレンヘキサミン、ポリエチレンイミン等が挙げられる。
【0033】
上記架橋剤のうち、ポリビニルアルコール−ポリアクリル酸塩共重合体の熱架橋剤とし
てはグルタルアルデヒドが特に好ましい。
架橋剤の含有量は、官能性ポリマー及び必要に応じて加えられたセット剤の総質量に対して、0.1質量%〜10質量%の範囲が適当である。
【0034】
ゲル膜を構成する各層のpHは膜面pH計(メトラートレド社製セブンマルチS40:pHメーター、InLab@Surface電極)を用い計測することができる。25℃の環境下において、膜面に超純水(Millipore)を30マイクロリットル滴下し、滴下した超純水に膜面pH電極を押し付け、1分間静置することでpH値を得ることができる。
更に、支持体上に設けられた少なくとも一つの層で構成されたゲル膜の積層後の各層のpHは、ゲル膜の表面とのなす角度が2°となるようにミクロトームで切削し、切削面に現れた各層の面のpHを上記の方法と同様にして膜面pH計で計測することにより測定することができる。
【0035】
ゲル膜を構成する各層のpHは、その層を構成する成分である官能性ポリマーの種類、二酸化炭素キャリアの種類、及び必要により含有させた添加剤の種類を適宜選択して、所望の値となるように調整される。
例えば、ゲル膜の吸収側表面を構成する層の場合には、官能性ポリマーとして塩基性官能基を有するもの、例えばポリエチレンイミンを選択するか、二酸化炭素キャリアとして炭酸カリウムのようなアルカリ性を示す無機塩または水酸化セシウムなどのアルカリ金属水酸化物を選択するか、またはグリシンのような二酸化炭素吸収剤を添加するか、若しくはこれらを適宜組み合わせた構成とすることにより、pHが8.0以上の層が得られる。
【0036】
また、ゲル膜の放出側表面を構成する層の場合には、官能性ポリマーとして酸基性官能基を有するもの、例えばポリアクリル酸を選択し、二酸化炭素キャリアとして炭酸セシウムのような、その水溶液のpHがなるべく低い値を示すものを選択することにより、pHが8.0未満の層が得られる。
【0037】
ゲル膜の厚さは、少なくとも二つの層で構成される場合も含めて、その総厚が5μm〜2mmの範囲とすることが適当である。このような範囲とすることにより、二酸化炭素を含む混合ガスから二酸化炭素を効率よく除くことができる。ゲル膜の総厚は、より好ましくは10μm〜1mmの範囲、更に好ましくは20μm〜500μmの範囲とされる。
ゲル膜が少なくとも二つの層で構成される場合、各々の層の厚さは、1μm以上2mm未満の厚さとされる。そして、ゲル膜を構成する複数の層の間での比率は、広範囲の比率から選択することが可能であるが、当該複数の層から任意に選択した二つの層の間での比率は、1:100〜50:50の範囲から選択されることが適当である。
ゲル膜が少なくとも三つの層で構成される場合には、吸収側表面を有する層と放散側表面を有する層の二つの外側の層を除く中央部の層の総厚が、当該外側の層の各層の厚さよりも厚くしておくことが、二酸化炭素を除去する性能が高まるので好ましい。中央部の層の総厚は1μm〜2mmが好ましく、さらに好ましくは5μmから500μm、最も好ましくは10μm〜100μmである。
【0038】
−支持体−
支持体は、二酸化炭素分離膜を支持するものであり、二酸化炭素透過性を有し、前記のゲル膜を長期間にわたって安定に保持することができ、さらにこの膜を支持することができるものであれば特に限定されない。
支持体の材質としては、紙、上質紙、コート紙、キャストコート紙、合成紙、さらに、セルロース、ポリエステル、ポリオレフィン、ポリアミド、ポリイミド、ポリスルフォンアラミド、ポリカーボネート、金属、ガラス、セラミックスなどが好適に使用できる。より具体的にはポリプロピレン、ポリエチレン、ポリスチレン、ポリエーテルイミド、ポリフェニルサルファイド、ポリエチレンテレフタレート、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、ポリフッ化ビニリデンなどの樹脂材料が好適に使用できる。これら中でもポリオレフィンおよびそのフッ化物が、長期間にわたって変質することなく安定に維持される経時安定性の観点から特に好ましく使用できる。
【0039】
上記のような素材で構成された支持体は、二酸化炭素透過性を確保するという点から多孔質のものが使用される。例えば、樹脂材料を素材とする場合には、織布、不織布、多数の貫通孔を有する膜等の形態のものが使用される。また金属、ガラス、セラミックスのような無機材料を素材とする支持体の場合には、多孔質のものが使用される。
これらのうち、一般的には自己支持性が高く、空隙率が高い支持体が好適に使用できる。このような支持体として、ポリフェニルサルファイド、ポリスルフォン、セルロースのメンブレンフィルター膜、ポリテトラフルオロエチレン、ポリフッ化ビニリデン、高分子量ポリエチレンの延伸多孔膜などは空隙率が高く、二酸化炭素の拡散阻害が小さく、強度、製造適性などの観点から好ましい。この中でも特にポリテトラフルオロエチレンの延伸膜が好ましい。
これらの支持体は、単一の素材で構成されたものであっても、補強用の支持体と一体化した複合素材のものであっても良い。
【0040】
支持体の形状は、平板であっても円筒であっても良い。円筒には、チューブ、中空糸が含まれる。また、平板及び円筒を構成する壁はプリーツ形状とする等、その表面積が大きな形状とすることが有利である。
【0041】
支持体の厚さは、二酸化炭素の透過性およびゲル膜の支持性の点から、平膜及びチューブの場合には、30〜500μmの範囲が好ましい。さらには50〜300μmがより好ましく、さらには50〜200μmが特に好ましい。ここで、チューブの場合には、チューブの壁の厚さを意味する。
また、中空糸の場合には、壁の厚さが1μm〜5μmの範囲が好ましい。
支持体の素材が疎水性を示す場合には、その表面が親水性となるように処理してから、ゲル膜を設けることが好ましい。
【0042】
(二酸化炭素分離膜の製造方法)
本発明の二酸化炭素分離膜の製造方法は、支持体上にゲル膜を形成することができれば、特に制限はない。具体的には、ゲル膜を構成する吸水性ポリマー、二酸化炭素キャリア及び水を含む組成物を所望の基材上に塗布する塗布工程と、基材上に塗布された組成物の水の一部を蒸発させて除去する乾燥工程により、基材上にゲル膜が形成される。上記組成物が、冷却することにより粘度が上昇する性質を有する多糖類を含む場合には、上記塗布工程に引き続いて冷却する工程を挿入し、その後に上記乾燥工程を行うことが好ましい。
上記の基材としては、支持体を使用しても良いし、支持体とは別の転写用基材を用いてもよい。転写用基材にゲル膜を形成したゲル膜転写材料を作製した場合には、当該ゲル膜転写材料のゲル膜側が支持体の表面と向き合うようにして重畳した積層体を作製し、この積層体から、転写用基材をゲル膜との界面で剥離することによって、ゲル膜転写材料のゲル膜を支持体上に転写して、支持体上にゲル膜を有する二酸化炭素分離膜が製造される。
ゲル膜が二層以上の層で構成されている場合には、予め各々の層を個別の転写用基材上に形成した個別のゲル膜転写材料を作製しておき、これら個別のゲル膜転写材料の層を支持体上に順次転写するか、一旦、一つの仮基材上に、これら個別のゲル膜転写材料の層を順次転写して二層以上の層で構成されたゲル膜を仮基材に形成してから、仮基材上のゲル膜をまとめて支持体上に転写することにより、二酸化炭素分離膜を製造する方法を採用することが有利である。
【0043】
組成物の塗布方法としては、従来公知の方法を採用することができる。例えば、カーテンフローコーター、エクストルージョンダイコーター、エアードクターコーター、ブレードコーター、ロッドコーター、ナイフコーター、スクイズコーター、リバースロールコーター、バーコーター等が挙げられる。特に、膜厚均一性、塗布量などの観点から、エクストルージョンダイコーターが好ましい。
また、ゲル膜が少なくとも二つの層で構成されている場合には、一層ずつ塗布する逐次塗布方法であっても、同時多層塗布方法であってもよい。
【0044】
ゲル膜が少なくとも二つの層で構成されている場合、支持体上に形成される少なくとも二つの層は、支持体の一方の表面に重畳されて形成されていても良いし、支持体の両方の面に分けて形成されていても良い。後者の場合には、支持体の空隙中に、ゲル膜を構成する少なくとも一つの層の成分が満たされたものとされる。
二酸化炭素分離膜は、ゲル膜が二つの支持体で挟まれた形状であることが取り扱い時に物理的な損傷を受けることが少ないので好ましい。
【0045】
(二酸化炭素分離モジュール)
本発明に係る二酸化炭素分離モジュールは、その内側に空間を有する容器と、この空間を第一の室および第二の室に仕切る二酸化炭素分離膜と、これら第一および第二の室の各々に連通する少なくとも一対の入り口と出口が前記容器に有するものである。
二酸化炭素分離モジュールに使用される二酸化炭素分離膜の形状は、例えばスパイラル型、プリーツ型、平膜等公知の形態をとることが出来る。以下、平膜の場合及びプリーツ型の場合を例にモジュールを説明する。
図4は、本発明に係る二酸化炭素分離モジュールの一実施態様を示した斜視図であり、容器の壁の一部が切り欠き部Aで切り欠かれて描かれている。
図4に係る二酸化炭素分離モジュール40においては、円筒形の容器43の内側の空間45が第一の室451と第二の室452とに二酸化炭素分離膜42で仕切られている。そして、第一の室451に連通する一対の入り口461、出口462が容器43に設けられており、第二の室452に連通する一対の入り口466、出口467が設けられている。
二酸化炭素分離膜42は、例えば図1に示される二酸化炭素分離膜1と同じ断面構造を有しており、その吸収側表面Sが第一の室451に対向し、放散側表面Rが第二の室452に対向するように設置されている。そして、二酸化炭素分離膜42の外周端面は、容器43の内壁に密着、固定されており、上記外周端面と内壁との間の隙間から第一の室451と第二の室452との間で気体が通過して漏れることがないようにされている。
【0046】
二酸化炭素を含む混合ガスは、上記の第一の室451に通ずる入り口461から導入され、出口462から取り出される。そして、上記混合ガスが第一の室451を通過している間に、その中に含まれている二酸化炭素の少なくとも一部が二酸化炭素分離膜42の吸収側表面Sで吸収される。その結果、出口462から排出される混合ガス中の二酸化炭素の濃度は、入り口461から導入された混合ガスの二酸化炭素の濃度よりも低くなっている。
二酸化炭素分離膜42の吸収側表面Sで吸収された二酸化炭素は、前述の式1で表される反応式の正反応に従って重炭酸イオンとなり、これが放散側表面Rにおいて、前述の式1で表される反応式の逆反応に従って二酸化炭素となって放出される。放出された二酸化炭素は、第二の室452に通ずる入り口466から導入された空気等のキャリアガスと共に、出口467から排出される。
図4に示した二酸化炭素分離モジュールにおいては、二酸化炭素分離膜として平板の形状のものを使用しているが、円筒の形状の二酸化炭素分離膜を使用した二酸化炭素分離モジュールとすることもできる。この場合、多数の円筒の形状の二酸化炭素分離膜を、円筒の長手方向が並行となるように配列し、第一の室を円筒の内側とし、第二の室を円筒の外側とするか、その逆とすれば良い。
【0047】
図5は、本発明に係る二酸化炭素分離膜を用いた別の実施態様に係る二酸化炭素分離モジュールの概略斜視図であり、図6は、図5の入り口566を上下に二分する面における断面図である。
図5に示される二酸化炭素分離モジュール50においては、円筒形の容器53の軸線L−Lの近傍に、容器53の直径より小さい直径を有する直線状に延在する中空パイプ51を有している。中空パイプ51の軸線L方向中央付近には図示しない仕切り板が設置されており、中空パイプ51の一方の端部の開口511から他方の端部の開口512へ中空パイプ内を直接気体が通ずることを防止している。そして、中空パイプ51における開口511に近いパイプ壁には、軸線L回りに等間隔で形成された複数の通気口513が形成されており、開口512に近いパイプ壁には、軸線L−L回りに等間隔で形成された複数の通気口514が形成されている。
【0048】
容器53の内壁と中空パイプ51の外壁との間の空間には、プリーツ形状に折られた二酸化炭素分離膜521が中空パイプ51の外壁周りを囲むように、各プリーツの一方の端部523が中空パイプ51に近く、他方の端部524が容器53の内壁に近い位置となるように設置されている。この二酸化炭素分離膜521により、容器53の内部空間は第一の室551と第二の室552(図6参照)に仕切られている。そして、二酸化炭素分離膜521は、図6に示されるように、その内側の表面521Sが本発明に係る二酸化炭素分離膜の吸収側表面とされ、外側の表面521Rが本発明に係る二酸化炭素分離膜の放散側表面とされる。
容器53には、前記第二の室552に通ずる入り口566と出口567を有している。
【0049】
次に、上記の二酸化炭素分離モジュールにより、二酸化炭素を含む混合ガスから二酸化炭素を分離、除去する方法について説明する。
二酸化炭素を含む混合ガスは、中空パイプ51の開口511から送り込まれ、通気口513から第一の室551に導入される。第一の室551に導入された混合ガスは、第一の室551を図5および図6中の実線で示した矢印57のような流路にて通過している間に、その中に含まれる二酸化炭素が二酸化炭素分離膜521の吸収側表面521Sから吸収されて除かれる。このようにして二酸化炭素の少なくとも一部が除かれた混合ガスは、通気口514を経由して中空パイプ51の開口512から取り出される。
他方、二酸化炭素分離膜521の吸収側表面521Sで吸収された二酸化炭素は、前述の式1で表される反応式の正反応に従って重炭酸イオンとなり、これが放散側表面521Rにおいて、前述の式1で表される反応式の逆反応に従って二酸化炭素となって第二の室552に放出される。放出された二酸化炭素は、第二の室552に通ずる入り口566から導入された空気等のキャリアガスと共に、出口567から図5および図6中の破線59で示した矢印のような流路にて出口567から排出される。
【実施例】
【0050】
以下、本発明の実施例を説明するが、本発明は、これらの実施例に何ら限定されるものではない。
なお、ゲル膜を構成する各層のpHは膜面pH計(メトラートレド社製セブンマルチS40:pHメーター、InLab@Surface電極)を用いて以下のようにして計測した。即ち、支持体上に形成した層を、25℃の環境下において、層の表面に超純水(Millipore)を30マイクロリットル滴下し、滴下した超純水に膜面pH電極を押し付け、1分間静置することでpHを測定した。
【0051】
(実施例1)
層1の作製:1.5質量%のポリエチレンイミン(重量平均分子量300,000)、及び1.5質量%のポリビニルアルコール(重量平均分子量2,000,000)、0.5質量%の寒天、4.0質量%の炭酸セシウムを含む水を組成物として調整した。この組成物を厚さ100μmのポリエチレンテレフタレートフィルム(転写用基材)に、エクストルージョンダイコーター(クリアランス1mm)で塗布し、冷却後、乾燥させることで、層1を作製した。乾燥後の層1の厚さは30μmであった。また、前述の方法で測定した層1のpHは11.5であった。
層2の作製:2.5質量%のポリビニルアルコール−ポリアクリル酸(前者/後者の共重合比:100/200質量比、(重量平均分子量60,000)、0.5質量%の寒天、4.0質量%の炭酸セシウムを含む水を組成物として調整した。この組成物を、層1の場合と同様にしてポリエチレンテレフタレートフィルム(転写用基材)に塗布し、冷却後、乾燥させることで、層2を作製した。乾燥後の層2の厚さは26μmであった。また、前述の方法で測定した層2のpHは9.5であった。
層3の作製:2.0質量%のポリアクリル酸(重量平均分子量200,000)、及び1.5質量%のポリビニルアルコール、0.5質量%の寒天、4.0質量%の炭酸セシウムを含む水を組成物として調整した。この組成物を、層1の場合と同様にして、ポリエチレンテレフタレートフィルム(転写用基材)に塗布し、冷却後、乾燥させることで、層3を作製した。乾燥後の層3の厚さは35μmであった。また、前述の方法で測定した層3のpHは7.9であった。
それぞれの層を転写用基材上から剥がし、層1〜層3の順で重ね合わせ、支持体としての疎水性のPTFE多孔質膜(アドバンテック社製T010A047A)を上下面に一枚づつ貼り付けた。
【0052】
(実施例2)
層1の作製:1.5質量%のポリエチレンイミン(重量平均分子量300,000)、及び1.5質量%のポリビニルアルコール(重量平均分子量2,000,000)、0.5質量%の寒天、1.3質量%の炭酸カリウムを含む水を組成物として調整した。この組成物を厚さ100μmのポリエチレンテレフタレートフィルム(転写用基材)に、エクストルージョンダイコーター(クリアランス1mm)で塗布し、冷却後、乾燥させることで、層1を作製した。乾燥後の層1の厚さは28μmであった。また、前述の方法で測定した層1のpHは11.0であった。
層2の作製:2.5質量%のポリビニルアルコール−ポリアクリル酸(前者/後者の共重合比:100/20質量比、(重量平均分子量60,000)、0.5質量%の寒天、1.3質量%の炭酸カリウムを含む水を組成物として調整した。この組成物を層1の場合と同様にしてPETに塗布し、冷却後、乾燥させることで、層2を作製した。乾燥後の層2の厚さは24μmであった。また、前述の方法で測定した層2のpHは9.0であった。
層3の作製:2.0質量%のポリアクリル酸(重量平均分子量200,000)、及び1.5質量%のポリビニルアルコール、0.5質量%の寒天、1.3質量%の炭酸カリウムを含む水を組成物として調整した。この組成物を層1の場合と同様にしてPETに塗布し、冷却後、乾燥させることで、層3を作製した。乾燥後の層3の厚さは32μmであった。また、前述の方法で測定した層3のpHは7.4であった。
それぞれの層を転写用基材上から剥がし、層1〜層3の順で重ね合わせ、支持体としての疎水性のPTFE多孔質膜(アドバンテック社製T010A047A)を上下面に一枚づつ貼り付けた。
【0053】
(実施例3)
層1の作製:1.5質量%のポリエチレンイミン(重量平均分子量300,000)、及び1.5質量%のポリビニルアルコール(重量平均分子量2,000,000)、0.5質量%の寒天、4.0質量%の炭酸セシウムを含む水を組成物として調整した。この組成物を厚さ100μmのポリエチレンテレフタレートフィルム(転写用基材)に、エクストルージョンダイコーター(クリアランス1mm)で塗布し、冷却後、乾燥させることで、層1を作製した。乾燥後の層1の厚さは30μmであった。また、前述の方法で測定した層1のpHは11.5であった。
層3の作製:2.5質量%のポリビニルアルコール−ポリアクリル酸(前者/後者の共重合比:100/200質量比、(重量平均分子量60,000)、0.5質量%の寒天、4.0質量%の炭酸セシウムを含む水を組成物として調整した。この組成物を、層1の場合と同様にしてポリエチレンテレフタレートフィルム(転写用基材)に塗布し、冷却後、乾燥させることで、層3を作製した。乾燥後の層3の厚さは26μmであった。また、前述の方法で測定した層3のpHは9.5であった。
それぞれの層を転写用基材上から剥がし、重ね合わせ、支持体としての疎水性のPTFE多孔質膜(アドバンテック社製T010A047A)を上下面に一枚づつ貼り付けた。
【0054】
(実施例4)
層1の作製:2.5質量%のポリビニルアルコール−ポリアクリル酸(前者/後者の共重合比:100/200質量比、(重量平均分子量60,000)、0.5質量%の寒天、4.0質量%の炭酸セシウムを含む水を組成物として調整した。この組成物を、ポリエチレンテレフタレートフィルム(転写用基材)にエクストルージョンダイコーター(クリアランス1mm)で塗布し、冷却後、乾燥させることで、層1を作製した。乾燥後の層1の厚さは26μmであった。また、前述の方法で測定した層1のpHは9.5であった。
層3の作製:2.0質量%のポリアクリル酸(重量平均分子量200,000)、及び1.5質量%のポリビニルアルコール、0.5質量%の寒天、4.0質量%の炭酸セシウムを含む水を組成物として調整した。この組成物を、層1の場合と同様にして、ポリエチレンテレフタレートフィルム(転写用基材)に塗布し、冷却後、乾燥させることで、層3を作製した。乾燥後の層3の厚さは35μmであった。また、前述の方法で測定した層3のpHは7.9であった。
それぞれの層を転写用基材上から剥がし、重ね合わせ、支持体としての疎水性のPTFE多孔質膜(アドバンテック社製T010A047A)を上下面に一枚づつ貼り付けた。
【0055】
(実施例5)
層1の作製:2.5質量%のポリビニルアルコール−ポリアクリル酸(前者/後者の共重合比:100/200質量比、(重量平均分子量60,000)、0.5質量%の寒天、4.0質量%の炭酸セシウムを含む水を組成物として調整した。この組成物を、ポリエチレンテレフタレートフィルム(転写用基材)にエクストルージョンダイコーター(クリアランス1mm)で塗布し、冷却後、乾燥させることで、層1を作製した。乾燥後の層1の厚さは26μmであった。また、前述の方法で測定した層1のpHは9.5であった。
層2の作製:1.5質量%のポリエチレンイミン(重量平均分子量300,000)、及び1.5質量%のポリビニルアルコール(重量平均分子量2,000,000)、0.5質量%の寒天、4.0質量%の炭酸セシウムを含む水を組成物として調整した。この組成物を層1と同様にしてポリエチレンテレフタレートフィルム(転写用基材)に塗布し、冷却後、乾燥させることで、層2を作製した。乾燥後の層2の厚さは30μmであった。また、前述の方法で測定した層2のpHは11.5であった。
層3の作製:2.0質量%のポリアクリル酸(重量平均分子量200,000)、及び1.5質量%のポリビニルアルコール、0.5質量%の寒天、4.0質量%の炭酸セシウムを含む水を組成物として調整した。この組成物を、層1の場合と同様にして、ポリエチレンテレフタレートフィルム(転写用基材)に塗布し、冷却後、乾燥させることで、層3を作製した。乾燥後の層3の厚さは35μmであった。また、前述の方法で測定した層3のpHは7.9であった。
それぞれの層を転写用基材上から剥がし、層1〜層3の順で重ね合わせ、支持体としての疎水性のPTFE多孔質膜(アドバンテック社製T010A047A)を上下面に一枚づつ貼り付けた。
【0056】
(実施例6)
層1の作製:1.8質量%のポリアクリル酸(重量平均分子量200,000)、及び1.5質量%のポリビニルアルコール、0.5質量%の寒天、4.0質量%の炭酸セシウムを含む水を組成物として調整した。この組成物をポリエチレンテレフタレートフィルム(転写用基材)にエクストルージョンダイコーター(クリアランス1mm)で塗布し、冷却後、乾燥させることで、層1を作製した。乾燥後の層1の厚さは35μmであった。また、前述の方法で測定した層1のpHは8.0であった。
層2の作製:2.8質量%のポリアクリル酸(重量平均分子量200,000)、及び1.5質量%のポリビニルアルコール、0.5質量%の寒天、4.0質量%の炭酸セシウムを含む水を組成物として調整した。この組成物を、層1の場合と同様にして、ポリエチレンテレフタレートフィルム(転写用基材)に塗布し、冷却後、乾燥させることで、層2を作製した。乾燥後の層2の厚さは41μmであった。また、前述の方法で測定した層2のpHは6.0であった。
層3の作製:2.5質量%のポリ−2−アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸(重量平均分子量800,000)、及び1.5質量%のポリビニルアルコール、0.5質量%の寒天、4.0質量%の炭酸セシウムを含む水を組成物として調整した。この組成物を、層1の場合と同様にして、ポリエチレンテレフタレートフィルム(転写用基材)に塗布し、冷却後、乾燥させることで、層3を作製した。乾燥後の層3の厚さは35μmであった。また、前述の方法で測定した層3のpHは4.0であった。
それぞれの層を転写用基材上から剥がし、層1〜層3の順で重ね合わせ、支持体としての疎水性のPTFE多孔質膜(アドバンテック社製T010A047A)を上下面に一枚づつ貼り付けた。
【0057】
(実施例7)
層1の作製:2.0質量%のポリアクリル酸(重量平均分子量200,000)、及び1.5質量%のポリビニルアルコール、0.5質量%の寒天、4.0質量%の炭酸セシウムを含む水を組成物として調整した。この組成物をポリエチレンテレフタレートフィルム(転写用基材)にエクストルージョンダイコーター(クリアランス1mm)で塗布し、冷却後、乾燥させることで、層1を作製した。乾燥後の層1の厚さは35μmであった。また、前述の方法で測定した層1のpHは7.9であった。
層2の作製:2.8質量%のポリアクリル酸(重量平均分子量200,000)、及び1.5質量%のポリビニルアルコール、0.5質量%の寒天、4.0質量%の炭酸セシウムを含む水を組成物として調整した。この組成物を、層1の場合と同様にして、ポリエチレンテレフタレートフィルム(転写用基材)に塗布し、冷却後、乾燥させることで、層2を作製した。乾燥後の層2の厚さは41μmであった。また、前述の方法で測定した層2のpHは6.0であった。
層3の作製:2.5質量%のポリ−2−アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸(重量平均分子量800,000)、及び1.5質量%のポリビニルアルコール、0.5質量%の寒天、4.0質量%の炭酸セシウムを含む水を組成物として調整した。この組成物を、層1の場合と同様にして、ポリエチレンテレフタレートフィルム(転写用基材)に塗布し、冷却後、乾燥させることで、層3を作製した。乾燥後の層3の厚さは35μmであった。また、前述の方法で測定した層3のpHは4.0であった。
それぞれの層を転写用基材上から剥がし、層1〜層3の順で重ね合わせ、支持体としての疎水性のPTFE多孔質膜(アドバンテック社製T010A047A)を上下面に一枚づつ貼り付けた。
【0058】
(実施例8)
層1の作製:2.3質量%のポリアクリル酸(重量平均分子量200,000)、及び1.5質量%のポリビニルアルコール、0.5質量%の寒天、4.0質量%の炭酸セシウムを含む水を組成物として調整した。この組成物をポリエチレンテレフタレートフィルム(転写用基材)にエクストルージョンダイコーター(クリアランス1mm)で塗布し、冷却後、乾燥させることで、層1を作製した。乾燥後の層1の厚さは37μmであった。また、前述の方法で測定した層1のpHは7.5であった。
層2の作製:2.8質量%のポリアクリル酸(重量平均分子量200,000)、及び1.5質量%のポリビニルアルコール、0.5質量%の寒天、4.0質量%の炭酸セシウムを含む水を組成物として調整した。この組成物を、層1の場合と同様にして、ポリエチレンテレフタレートフィルム(転写用基材)に塗布し、冷却後、乾燥させることで、層2を作製した。乾燥後の層2の厚さは41μmであった。また、前述の方法で測定した層2のpHは6.0であった。
層3の作製:2.5質量%のポリ−2−アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸(重量平均分子量800,000)、及び1.5質量%のポリビニルアルコール、0.5質量%の寒天、4.0質量%の炭酸セシウムを含む水を組成物として調整した。この組成物を、層1の場合と同様にして、ポリエチレンテレフタレートフィルム(転写用基材)に塗布し、冷却後、乾燥させることで、層3を作製した。乾燥後の層3の厚さは35μmであった。また、前述の方法で測定した層3のpHは4.0であった。
それぞれの層を転写用基材上から剥がし、層1〜層3の順で重ね合わせ、支持体としての疎水性のPTFE多孔質膜(アドバンテック社製T010A047A)を上下面に一枚づつ貼り付けた。
【0059】
(実施例9)
層1の作製:2.5質量%のポリアクリル酸(重量平均分子量200,000)、及び1.5質量%のポリビニルアルコール、0.5質量%の寒天、4.0質量%の炭酸セシウムを含む水を組成物として調整した。この組成物をポリエチレンテレフタレートフィルム(転写用基材)にエクストルージョンダイコーター(クリアランス1mm)で塗布し、冷却後、乾燥させることで、層1を作製した。乾燥後の層1の厚さは39μmであった。また、前述の方法で測定した層1のpHは7.0であった。
層2の作製:2.8質量%のポリアクリル酸(重量平均分子量200,000)、及び1.5質量%のポリビニルアルコール、0.5質量%の寒天、4.0質量%の炭酸セシウムを含む水を組成物として調整した。この組成物を、層1の場合と同様にして、ポリエチレンテレフタレートフィルム(転写用基材)に塗布し、冷却後、乾燥させることで、層2を作製した。乾燥後の層2の厚さは41μmであった。また、前述の方法で測定した層2のpHは6.0であった。
層3の作製:2.5質量%のポリ−2−アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸(重量平均分子量800,000)、及び1.5質量%のポリビニルアルコール、0.5質量%の寒天、4.0質量%の炭酸セシウムを含む水を組成物として調整した。この組成物を、層1の場合と同様にして、ポリエチレンテレフタレートフィルム(転写用基材)に塗布し、冷却後、乾燥させることで、層3を作製した。乾燥後の層3の厚さは35μmであった。また、前述の方法で測定した層3のpHは4.0であった。
それぞれの層を転写用基材上から剥がし、層1〜層3の順で重ね合わせ、支持体としての疎水性のPTFE多孔質膜(アドバンテック社製T010A047A)を上下面に一枚づつ貼り付けた。
【0060】
(実施例10)
層1の作製:2.6質量%のポリアクリル酸(重量平均分子量200,000)、及び1.5質量%のポリビニルアルコール、0.5質量%の寒天、4.0質量%の炭酸セシウムを含む水を組成物として調整した。この組成物をポリエチレンテレフタレートフィルム(転写用基材)にエクストルージョンダイコーター(クリアランス1mm)で塗布し、冷却後、乾燥させることで、層1を作製した。乾燥後の層1の厚さは39μmであった。また、前述の方法で測定した層1のpHは6.9であった。
層2の作製:2.8質量%のポリアクリル酸(重量平均分子量200,000)、及び1.5質量%のポリビニルアルコール、0.5質量%の寒天、4.0質量%の炭酸セシウムを含む水を組成物として調整した。この組成物を、層1の場合と同様にして、ポリエチレンテレフタレートフィルム(転写用基材)に塗布し、冷却後、乾燥させることで、層2を作製した。乾燥後の層2の厚さは41μmであった。また、前述の方法で測定した層2のpHは6.0であった。
層3の作製:2.5質量%のポリ−2−アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸(重量平均分子量800,000)、及び1.5質量%のポリビニルアルコール、0.5質量%の寒天、4.0質量%の炭酸セシウムを含む水を組成物として調整した。この組成物を、層1の場合と同様にして、ポリエチレンテレフタレートフィルム(転写用基材)に塗布し、冷却後、乾燥させることで、層3を作製した。乾燥後の層3の厚さは35μmであった。また、前述の方法で測定した層3のpHは4.0であった。
それぞれの層を転写用基材上から剥がし、層1〜層3の順で重ね合わせ、支持体としての疎水性のPTFE多孔質膜(アドバンテック社製T010A047A)を上下面に一枚づつ貼り付けた。
【0061】
(実施例11)
層1の作製:2.0質量%のポリアクリル酸(重量平均分子量200,000)、及び1.5質量%のポリビニルアルコール、0.5質量%の寒天、4.0質量%の炭酸セシウムを含む水を組成物として調整した。この組成物をポリエチレンテレフタレートフィルム(転写用基材)にエクストルージョンダイコーター(クリアランス1mm)で塗布し、冷却後、乾燥させることで、層1を作製した。乾燥後の層1の厚さは35μmであった。また、前述の方法で測定した層1のpHは7.9であった。
層2の作製:2.5質量%のポリアクリル酸(重量平均分子量200,000)、及び1.5質量%のポリビニルアルコール、0.5質量%の寒天、4.0質量%の炭酸セシウムを含む水を組成物として調整した。この組成物を、層1の場合と同様にして、ポリエチレンテレフタレートフィルム(転写用基材)に塗布し、冷却後、乾燥させることで、層2を作製した。乾燥後の層2の厚さは35μmであった。また、前述の方法で測定した層2のpHは6.0であった。
層3の作製:2.8質量%のポリ−2−アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸(重量平均分子量800,000)、及び1.5質量%のポリビニルアルコール、0.5質量%の寒天、4.0質量%の炭酸セシウムを含む水を組成物として調整した。この組成物を、層1の場合と同様にして、ポリエチレンテレフタレートフィルム(転写用基材)に塗布し、冷却後、乾燥させることで、層3を作製した。乾燥後の層3の厚さは35μmであった。また、前述の方法で測定した層3のpHは3.9であった。
【0062】
(実施例12)
層1の作製:2.0質量%のポリアクリル酸(重量平均分子量200,000)、及び1.5質量%のポリビニルアルコール、0.5質量%の寒天、4.0質量%の炭酸セシウムを含む水を組成物として調整した。この組成物をポリエチレンテレフタレートフィルム(転写用基材)にエクストルージョンダイコーター(クリアランス1mm)で塗布し、冷却後、乾燥させることで、層1を作製した。乾燥後の層1の厚さは35μmであった。また、前述の方法で測定した層1のpHは7.9であった。
層2の作製:2.5質量%のポリアクリル酸(重量平均分子量200,000)、及び1.5質量%のポリビニルアルコール、0.5質量%の寒天、4.0質量%の炭酸セシウムを含む水を組成物として調整した。この組成物を、層1の場合と同様にして、ポリエチレンテレフタレートフィルム(転写用基材)に塗布し、冷却後、乾燥させることで、層2を作製した。乾燥後の層2の厚さは35μmであった。また、前述の方法で測定した層2のpHは6.0であった。
層3の作製:3.3質量%のポリ−2−アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸(重量平均分子量800,000)、及び1.5質量%のポリビニルアルコール、0.5質量%の寒天、4.0質量%の炭酸セシウムを含む水を組成物として調整した。この組成物を、層1の場合と同様にして、ポリエチレンテレフタレートフィルム(転写用基材)に塗布し、冷却後、乾燥させることで、層3を作製した。乾燥後の層3の厚さは37μmであった。また、前述の方法で測定した層3のpHは2.9であった。
それぞれの層を転写用基材上から剥がし、層1〜層3の順で重ね合わせ、支持体としての疎水性のPTFE多孔質膜(アドバンテック社製T010A047A)を上下面に一枚づつ貼り付けた。
【0063】
(比較例1)
層1の作製:2.5質量%のポリビニルアルコール−ポリアクリル酸(前者/後者の共重合比:100/200質量比、(重量平均分子量60,000)、0.5質量%の寒天、4.0質量%の炭酸セシウムを含む水を組成物として調整した。この組成物をポリエチレンテレフタレートフィルム(転写用基材)にエクストルージョンダイコーター(クリアランス1mm)で塗布し、冷却後、乾燥させることで、層1を作製した。乾燥後の層1の厚さは26μmであった。また、前述の方法で測定した層1のpHは9.5であった。この層1を2枚重ね、疎水性のPTFE多孔質膜(アドバンテック社製T010A047A)を上下面に一枚づつ貼り付け、サンプルとした。
【0064】
(比較例2)
2.0質量%のポリアクリル酸(重量平均分子量200,000)、及び1.5質量%のポリビニルアルコール、0.5質量%の寒天、1.3質量%の炭酸カリウム、1.2質量%のグリシンを含む水を組成物として調整した。この組成物を比較例1の場合と同様にしてポリエチレンテレフタレートフィルム(転写用基材)に塗布し、冷却後、乾燥させることで、層1を作製した。乾燥後の層1の厚さは36μmであった。また、前述の方法で測定した層1のpHは7.9であった。この層1を転写用基材上から剥がし2枚重ね、疎水性のPTFE多孔質膜(アドバンテック社製T010A047A)を上下面に一枚づつ貼り付け、サンプルとした。
【0065】
(比較例3)
1.5質量%のポリエチレンイミン(重量平均分子量300,000)、及び1.5質量%のポリビニルアルコール(重量平均分子量2,000,000)、0.5質量%の寒天、4.0質量%の炭酸セシウムを含む水を組成物として調整した。この組成物を厚さ100μmのポリエチレンテレフタレートフィルム(転写用基材)に、エクストルージョンダイコーター(クリアランス1mm)で塗布し、冷却後、乾燥させることで、層1を作製した。乾燥後の層1の厚さは30μmであった。また、前述の方法で測定した層1のpHは11.5であった。この層1を2枚重ね、疎水性のPTFE多孔質膜(アドバンテック社製T010A047A)を上下面に一枚づつ貼り付け、サンプルとした。
【0066】
(比較例4)
実施例1の層1と層3を入れ替えて透過試験を行った。
【0067】
(実施例13)
層1の作製:1.5質量%のポリエチレンイミン(重量平均分子量300,000)、及び1.5質量%のポリビニルアルコール(重量平均分子量2,000,000)、0.5質量%の寒天、1.2質量%のグリシン、4.0質量%の炭酸セシウムを含む水を組成物として調整した。この組成物をサポーテッドPTFE(中尾フィルター社製、テトラトックス7008、200μm厚)に、エクストルージョンダイコーター(クリアランス1mm)で塗布し、冷却後、乾燥させることで、層1を作製した。乾燥後の層1の厚さは34μmであった。また、前述の方法で測定した層1のpHは11.2であった。
層2の作製:2.5質量%のポリビニルアルコール−ポリアクリル酸(前者/後者の共重合比:100/200質量比、(重量平均分子量60,000)、0.5質量%の寒天、1.2質量%のグリシン、4.0質量%の炭酸セシウムを含む水を組成物として調整した。この組成物を、層1を塗布したサポーテッドPTFE上に重ねて塗布し、冷却後、乾燥させることで、層2を作製した。乾燥後の層2の厚さは30μmであった。また、前述の方法で測定した層2のpHは9.1であった。
層3の作製:2.0質量%のポリアクリル酸(重量平均分子量200,000)、及び1.5質量%のポリビニルアルコール、0.5質量%の寒天、1.2質量%のグリシン、4.0質量%の炭酸セシウムを含む水を組成物として調整した。この組成物を、層2まで塗布したサポーテッドPTFE上に重ねて塗布し、冷却後、乾燥させることで、層3を作製した。乾燥後の層3の厚さは38μmであった。また、前述の方法で測定した層3のpHは7.4であった。疎水性のPTFE多孔質膜(アドバンテック社製T010A047A)を上下面に一枚づつ貼り付け、透過試験サンプルとした。
【0068】
(実施例14)
層1の作製:1.5質量%のポリアリルアミン(重量平均分子量10,000)、及び1.5質量%のポリビニルアルコール(重量平均分子量2,000,000)、0.5質量%の寒天、1.2質量%のグリシン、1.3質量%の炭酸カリウムを含む水を組成物として調整した。この組成物をサポーテッドPTFE(中尾フィルター社製、テトラトックス7008、200μm厚)に、エクストルージョンダイコーター(クリアランス1mm)で塗布し、冷却後、乾燥させることで、層1を作製した。乾燥後の層1の厚さは32μmであった。また、前述の方法で測定した層1のpHは10.8であった。
層2の作製:2.5質量%のポリビニルアルコール−ポリアクリル酸(前者/後者の共重合比:100/200質量比、(重量平均分子量60,000)、0.5質量%の寒天、1.2質量%のグリシン、1.3質量%の炭酸カリウムを含む水を組成物として調整した。この組成物を、層1を塗布したサポーテッドPTFE上に重ねて塗布し、冷却後、乾燥させることで、層2を作製した。乾燥後の層2の厚さは30μmであった。また、前述の方法で測定した層2のpHは8.6であった。
層3の作製:2.0質量%のポリアクリル酸(重量平均分子量200,000)、及び1.5質量%のポリビニルアルコール、0.5質量%の寒天、1.2質量%のグリシン、1.3質量%の炭酸カリウムを含む水を組成物として調整した。この組成物を、層2まで塗布したサポーテッドPTFE上に重ねて塗布し、冷却後、乾燥させることで、層3を作製した。乾燥後の層3の厚さは38μmであった。また、前述の方法で測定した層3のpHは7.1であった。疎水性のPTFE多孔質膜(アドバンテック社製T010A047A)を上下面に一枚づつ貼り付け、透過試験サンプルとした。
【0069】
(実施例15〜実施例19)
層1の作製:1.5質量%のポリエチレンイミン(重量平均分子量300,000)、及び1.5質量%のポリビニルアルコール(重量平均分子量2,000,000)、0.5質量%の寒天、4.0質量%の炭酸セシウムを含む水を組成物として調整した。この組成物をサポーテッドPTFE(中尾フィルター社製、テトラトックス7008、200μm厚)に、エクストルージョンダイコーター(クリアランス1mm)で塗布し、冷却後、乾燥させることで、層1を作製した。乾燥後の層1の厚さは34μmであった。また、前述の方法で測定した層1のpHは11.5であった。
層2の作製:2.5質量%のポリビニルアルコール−ポリアクリル酸(前者/後者の共重合比:100/200質量比、(重量平均分子量60,000)、0.5質量%の寒天、4.0質量%の炭酸セシウムを含む水を組成物として調整した。この組成物を、層1を塗布したサポーテッドPTFE上にエクストルージョンダイコーターでクリアランスを適宜調整して塗布し、冷却後、乾燥させることで、層2を作製した。前述の方法で測定した層2のpHは9.5であった。
層3の作製:2.0質量%のポリアクリル酸(重量平均分子量200,000)、及び1.5質量%のポリビニルアルコール、0.5質量%の寒天、4.0質量%の炭酸セシウムを含む水を組成物として調整した。この組成物を、層2まで塗布したサポーテッドPTFE上に重ねて塗布し、冷却後、乾燥させることで、層3を作製した。乾燥後の層3の厚さは38μmであった。また、前述の方法で測定した層3のpHは7.9であった。疎水性のPTFE多孔質膜(アドバンテック社製T010A047A)を上下面に一枚づつ貼り付け、透過試験サンプルとした。
【0070】
−ガス分離評価−
実施例、比較例で作製したゲル膜を用いて二酸化炭素ガスの分離性能について、以下のように評価した。
各サンプルを支持体ごと直径47mmに切り取り透過試験サンプルを作製した。ここで、実施例に係るサンプルは層1側を二酸化炭素供給側とし、層3側を二酸化炭素側に来るように設置した。吸収側の室と放散側の室はステンレス性の容器で、O−リングを用いネジで密閉した。
テストガスとしてCO/H:10/90(容積比)の混合ガスを相対湿度70%、流量100ml/分、温度130℃、全圧3atmで、前記の各サンプル(有効面積2.40cm)に供給し、透過側にArガス(流量90ml/分)を圧力をかけず(1atm)フローさせた。透過してきたガスをガスクロマトグラフで分析し、二酸化炭素の透過速度[Q(CO)]と分離係数[α]を算出した。
ここで、二酸化炭素の透過速度と分離係数は、以下のように定義されるものである。
・二酸化炭素の透過速度[Q(CO)]:1×10−6cm(STP)/(s・cm・cmHg)
・分離係数[α]:Q(CO)/Q(H
実施例1から14、及び比較例1〜4の二酸化炭素分離膜についての結果を表1に、そして実施例15〜19の二酸化炭素分離膜についての結果を表2に示す。
【0071】
【表1】

【0072】
【表2】

【0073】
表1の実施例1〜12の結果から、異種の官能性ポリマーを用いることでpHの異なる層を作成することができることが分かる。そして、実施例1〜12と比較例1〜4とを対比すれば分かるように、本発明に係る吸収側表面のpHが放散側表面のpHより高い実施例1〜14の二酸化炭素分離膜は、二酸化炭素の透過速度が速く、しかも分離係数が高いことが分かる。
【0074】
に、実施例1及び実施例13と実施例2及び実施例14とを対比すれば分かるように、二酸化炭素吸収促進剤を含有するゲル膜を用いた二酸化炭素分離膜の方が、それを含まないものに比べて、より一段と二酸化炭素の透過速度が速く、しかも分離係数が高いことが分かる。
【0075】
更にまた、表2の結果から、三つの層で構成されたゲル膜における中間の層の厚さが100μm以下の範囲においては、中間の層が厚い方が二酸化炭素の分離係数が高い二酸化炭素分離膜が得られることが分かる。
【産業上の利用可能性】
【0076】
本発明の二酸化炭素分離膜及びこれを用いた二酸化炭素分離モジュールは、二酸化炭素を含む混合ガスから二酸化炭素を分離、除去する特性が優れているため、二酸化炭素の分離が必要とされる様々な分野において使用することができる。例えば、天然ガスに含まれる二酸化炭素を除去する天然ガス精製、CCS、燃料電池用水素製造、二酸化炭素の超臨界流体精製などに幅広く用いることができる。
【符合の説明】
【0077】
1,42,521 二酸化炭素分離膜
10 支持体
20 ゲル膜
40,50 二酸化炭素分離モジュール
43,53 容器
451,551 第一の室
452,552 第二の室

【特許請求の範囲】
【請求項1】
吸水性ポリマー、二酸化炭素キャリア及び水を含むゲル膜と、前記ゲル膜を支持する支持体と、を有し、前記ゲル膜における二酸化炭素を含む混合ガスが供給される側である吸収側表面のpHが、該吸収側表面とは反対側の表面である放散側表面のpHより高い二酸化炭素分離膜。
【請求項2】
前記ゲル膜が、pHが異なる積層された少なくとも二つの層を含む請求項1に記載の二酸化炭素分離膜。
【請求項3】
前記ゲル膜は、前記吸収側表面のpHが8.0以上であるか、前記放散側表面のpHが4.0以上8.0未満であるか、またはこれらの両者を満たす請求項1または請求項2に記載の二酸化炭素分離膜。
【請求項4】
前記ゲル膜が、積層された少なくとも三つの層を含み、前記吸収側表面を有する層のpHと前記放散側表面を有する層のpHとが異なる請求項1〜請求項3のいずれか一項に記載の二酸化炭素分離膜。
【請求項5】
前記吸収側表面から放散側表面に向かってpHが低下する請求項1〜請求項4のいずれか一項に記載の二酸化炭素分離膜。
【請求項6】
前記ゲル膜が、積層された少なくとも三つの層を含み、前記吸収側表面を有する層と前記放散側表面を有する層とを除く層の総厚が10μmから100μmである請求項1〜請求項5のいずれか一項に記載の二酸化炭素分離膜。
【請求項7】
前記二酸化炭素キャリアが、アルカリ金属炭酸塩、アルカリ金属重炭酸塩およびアルカリ金属水酸化物よりなる群から選ばれた少なくとも一つの化合物である請求項1〜請求項6のいずれか一項に記載の二酸化炭素分離膜。
【請求項8】
請求項1〜請求項7のいずれか一項に記載の二酸化炭素分離膜の製造方法であって、転写用基材上に、吸水性ポリマー、二酸化炭素キャリア及び水を含む一層のゲル膜を有するゲル膜転写材料を作製すること、前記ゲル膜転写材料のゲル膜が支持体と対向するように前記ゲル膜転写材料と前記支持体とを重畳させた積層体を作製すること、および、前記積層体の転写用基材を前記ゲル膜との界面で剥離すること、を含むゲル膜の転写工程を少なくとも一回含む二酸化炭素分離膜の製造方法。
【請求項9】
前記転写工程を少なくとも二回含み、そのうちの一方の転写工程における前記ゲル膜のpHが8.0以上であり、他方の転写工程における前記ゲル膜のpHが4.0以上8.0未満である請求項8に記載の二酸化炭素分離膜の製造方法。
【請求項10】
請求項1〜請求項7のいずれか一項に記載の二酸化炭素分離膜の製造方法であって、支持体上に、吸水性ポリマー、二酸化炭素キャリア及び水を含む一層のゲル膜を有するゲル膜材料を塗布する工程を少なくとも二回含み、そのうちの一方の塗布工程における前記ゲル膜のpHが8.0以上であり、他方の塗布工程における前記ゲル膜のpHが4.0以上8.0未満である二酸化炭素分離膜の製造方法。
【請求項11】
その内側に空間を有する容器と、前記空間を第一の室および第二の室に仕切る請求項1〜請求項7のいずれか一項に記載の二酸化炭素分離膜と、前記容器に形成され、前記第一および第二の室に独立して連通するそれぞれ少なくとも一対の入り口および出口と、を含む二酸化炭素分離モジュール。
【請求項12】
前記二酸化炭素分離膜が、プリーツ形状を有する請求項11に記載の二酸化炭素分離モジュール。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2013−27850(P2013−27850A)
【公開日】平成25年2月7日(2013.2.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−167575(P2011−167575)
【出願日】平成23年7月29日(2011.7.29)
【出願人】(306037311)富士フイルム株式会社 (25,513)
【Fターム(参考)】