説明

二酸化炭素除去装置および二酸化炭素の除去方法

【課題】雰囲気中の二酸化炭素を効率よく吸着し、またわずかな加熱で脱離させることのできる二酸化炭素の除去装置を提供する。
【解決手段】二酸化炭素除去装置は、二酸化炭素分子を含む雰囲気に露出される露出面を備えた、ペロブスカイト構造を有する二酸化炭素吸着膜と、前記二酸化炭素吸着膜を加熱する加熱装置と、前記二酸化炭素吸着膜周辺の空間を排気する排気装置と、を備え、前記二酸化炭素吸着膜は、前記雰囲気中の二酸化炭素分子を化学吸着し、前記加熱装置は、前記二酸化炭素吸着膜に吸着した二酸化炭素分子を脱離させる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は一般に環境技術に係り、特に二酸化炭素除去装置および除去方法に関する。
【背景技術】
【0002】
二酸化炭素は主要な温室効果ガスであり、地球温暖化の問題の主な要因となっている。
【0003】
地球温暖化対策に関連して、発電所や工場などから排出される二酸化炭素を捕獲し、これを海底や、廃油井、廃天然ガス井などに、気体、液体あるいは固体の形で貯蔵する技術が数多く提案されている。また、このような技術の飛躍的な進歩を促進するため、Branson賞が設けられている(非特許文献1)。
【0004】
また環境からの二酸化炭素の除去は、宇宙船や潜水艦、坑内や地下室など、密閉環境中で人が作業する必要がある分野においても重要である。
【特許文献1】特開平9−876号公報
【特許文献2】特開2002−120860号公報
【特許文献3】特開平5−293364号公報
【特許文献4】特開2006−298707号公報
【特許文献5】特許第2931340号
【特許文献6】特開2003−88344号公報
【特許文献7】特開平8−54364号公報
【非特許文献1】International Herald Tribune, 2007年2月12日号
【非特許文献2】Saito, Y., et al., Fuel Cell vol.5, No.2, 2005
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
一方、このような地球温暖化の問題に関しては、すでに空気中にある二酸化炭素の除去も重要であり、二酸化炭素を化学的に吸収する水酸化カルシウムなどの化学物質を短冊状あるいは葉状の基材上に被膜の形で塗布し、二酸化炭素を吸収させる「人工木」なども提案されている。しかし、このような手段では、二酸化炭素を吸収した被膜を回収し、再生してリサイクルする必要があり、多大な費用を要する。
【0006】
また水酸化ナトリウムを巨大な筒の中に噴射し、空気中の二酸化炭素を吸収させるアイデアも提案されているが、これら従来の技術は非常に高価であり、大規模に実施することは容易ではない。
【0007】
本発明は、三次元形状を含め、容易に様々な形状に成膜できる誘電体薄膜が強い二酸化炭素の吸収能力を有していることの発見に基づくものであり、このような誘電体薄膜を使った、安価で効率の高い二酸化炭素吸収装置を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
一の側面によれば本発明は、二酸化炭素分子を含む雰囲気に露出される露出面を備えた、ペロブスカイト構造を有する二酸化炭素吸着膜と、前記二酸化炭素吸着膜を加熱する加熱装置と、前記二酸化炭素吸着膜周辺の空間を排気する排気装置と、を備え、前記二酸化炭素吸着膜は、前記雰囲気中の二酸化炭素分子を化学吸着し、前記加熱装置は、前記二酸化炭素吸着膜に吸着した二酸化炭素分子を脱離させることを特徴とする二酸化炭素除去装置を提供する。
【0009】
他の側面によれば本発明は、二酸化炭素分子を含む雰囲気に露出される露出面を備えた、ペロブスカイト構造を有する二酸化炭素吸着膜と、前記二酸化炭素吸着膜を加熱する加熱装置と、前記二酸化炭素吸着膜周辺の空間を排気する排気装置と、備え、前記二酸化炭素吸着膜は、前記雰囲気中の二酸化炭素分子を化学吸着し、前記加熱装置は、前記二酸化炭素吸着膜に吸着した二酸化炭素分子を脱離させることを特徴とする二酸化炭素除去装置による、二酸化炭素の除去方法であって、前記露出面を前記雰囲気に曝露し、前記雰囲気中の二酸化炭素ガスを前記露出面に吸着する手順と、前記二酸化炭素分子を吸着した前記二酸化炭素吸着膜を、600℃以下の温度に加熱し、前記吸着した二酸化炭素分子を脱離させる手順と、含むことを特徴とする二酸化炭素の除去方法を提供する。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、雰囲気中、例えば大気中の二酸化炭素が、前記二酸化炭素吸着膜への化学吸着により除去されるため、前記二酸化炭素吸着膜に吸着した二酸化炭素分子はわずかな加熱により容易に脱離し、これを排気装置により貯蔵装置に送ることにより、効率的に二酸化炭素を除去することが可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
[第1の実施形態]
図1は、本発明の第1の実施形態による二酸化炭素除去装置10の構成を示す。
【0012】
図1を参照するに、前記二酸化炭素除去装置10は可動シャッタ部材11Bを備え、排気ポート11aにおいて真空ポンプ12により排気される容器11Aを有し、前記容器11A中には、前記排気ポート11aに連通する多数の通気口11cを形成された基材11Cが設けられ、前記基板11Cはその上に、誘電体膜の多層構造よりなる二酸化炭素吸着部材11Dが設けられている。
【0013】
前記二酸化炭素吸着部材11Dは大気中、あるいは雰囲気中の二酸化炭素分子を化学吸着し、また加熱されることにより、化学吸着していた二酸化炭素分離を脱離させる。
【0014】
図2A,2Bは、前記二酸化炭素吸着部材11Dの構成を示す。ただし図2Bは図2A中、断面B−Bに沿った断面図であり、図2Aは図2B中、断面A−Aに沿った断面図である。
【0015】
図2A,2Bを参照するに、図示の例では前記二酸化炭素吸着部材11DはPt(白金),Ir(イリジウム),Zr(ジルコニウム),Ti(チタン),W(タングステン)などの高融点金属材料よりなる導電性部材11h1,11h2を含み、前記導電部材部材11h1,11h2の間には、同じ導電材料よりなる架橋部11fが多数形成されている。かかる構成では、前記導電部材11h1,11h2の間に通電することにより、前記導電部材11h1,11h2および架橋部11fはヒータとして作用する。なお、本実施形態においてヒータの形状は図示したものに限定されるものではなく、ジグザグ形状やスパイラル形状など、任意の形状に形成することができる。また前記導電部材11h1,11h2,11fはPtなどの高融点に限定されるものではなく、IrOx,PtOx,ZrOx,TiN,TiAlN,TaN,TaSiNなどの導電性金属化合物を使うことが可能である。このような導電性金属化合物は、前記導電性部材11h1,11h2,11fを前記高融点金属材料により形成し、その表面に被膜の形に形成してもよい。また前記導電部材11h1,11h2,11fは、図2Bに示すような矩形断面に限定されるものではなく、図2Cに示すように円形断面を有する部材であってもよい。ただし図2C中、先に説明した部分には同一の参照符号を付し、説明を省略する。
【0016】
さらに前記導電部材11h1,11h2および架橋部11f上には、厚さが1〜1000nmのペロブスカイト構造を有する金属酸化膜11pv、図示の例ではSrTiO3膜11pvが、厚さが1〜10nmのTiなどの密着膜11adを介して、二酸化炭素吸着膜として形成されている。本実施形態では、前記導電部材11h1,11h2および架橋部11fは、このように前記SrTiO3膜11pvの支持部材としても機能するため、十分な力学的強度を有するように、0.001〜100mmの厚さに形成するのが好ましい。本実施形態では前記SrTiO3膜はスパッタ法により形成しているが、MOCVD法など、他の方法により形成することも可能である。
【0017】
図3は、前記SrTiO3膜11pvの表面部分における結晶構造を詳細に示す図である。
【0018】
図3を参照するに、前記SrTiO3膜11pvは、一般にABO3として表されるペロブスカイト構造を有し、12配位のA席をSr原子が占有し、6配位のB席をTi原子が占有しているが、膜表面について見ると、A席が露出する(図中に「As」と表記)AO面で終端される場合と、B席が露出する(図中に「Bs」と表記)BO2面で終端される場合の二通りの場合が考えられる。なお図3中、□は、酸素原子の存在しない欠損席Voを示している。
【0019】
本発明の発明者は、本発明の基礎となる研究において、このようなSrTiO3膜の表面を、二酸化炭素分子を含む雰囲気中に曝露した場合、二酸化炭素分子CO2が、図4Aあるいは図4Bに示すように、前記膜表面に露出しているAO終端面あるいはBO2終端面の酸素原子に結合することで、化学吸着されることを発見した。ただし図4Aは、前記SrTiO3膜11pvの前記AO面への二酸化炭素分子の化学吸着を示し、一方、図4Bは二酸化炭素分子の、前記BO面への化学吸着を示す。
【0020】
図4Aを参照するに、前記AO面は、格子定数が3.905ÅのSrTiO3結晶のユニットセルに含まれるSr原子と酸素原子のうち、合計で4個のSr原子と合計で4個の酸素原子を、それぞれ1.9525Å(=3.905/2)の原子間隔で含んでいる。O=C=Oの分子構造を有する二酸化炭素分子は、約2.32Åの大きさを有しているが、この二酸化炭素分子の大きさは、二酸化炭素分子中の炭素原子がAO面の酸素原子に結合した場合、対角線方向に2.76Å(=1.9505×√2)の間隔で配列した一対のSr原子の間の空間にちょうど収まる大きさとなっている。このため、前記AO面においては、全ての酸素原子が二酸化炭素分子を吸着することが可能である。このような、いわば「飽和」状態では、前記AO終端面に露出する合計で8個の原子(=4個のSr原子と4個の酸素原子)の半分(=4個の酸素原子)が二酸化炭素分子を吸着しており、この状態を、「CO2被覆率θが0.5」(θ=0.5)と定義する。
【0021】
次に図4Bを参照するに、前記BO2終端面では酸素原子の数は8個あり、二酸化炭素分子中の炭素原子が吸着する可能性がある席自体は、前記AO終端面の場合よりも多くなっている。しかし、最隣接酸素原子間の距離は、前記AO終端面の場合には1.9525Åであったのに対し、BO2終端面では1.38Å(=3.905/4×√2)となり、一つの酸素原子に一つの二酸化炭素原子が吸着した場合、隣接する酸素原子では、二酸化炭素原子は排除されてしまい、吸着することができない。このため、前記BO2終端面でも二酸化炭素分子の吸着は生じるが、その効率は、AO終端面におけるよりは低くなるものと考えられる。
【0022】
上記の予測を検証するため、本発明の発明者は、SrTiO3結晶のAO終端面(SrO終端面)およびBO2終端面(TiO2終端面)について、吸着エネルギEabsの第一原理計算をアドバンスソフト株式会社のプログラム「Advance/PHASE」を使って行った。このプログラムは、第一原理計算を、擬ポテンシャルと密度汎関数法を用いた平面波展開により行うものである。ここで吸着エネルギEabsは、二酸化炭素分子を吸着したSrTiO3結晶の表面エネルギECO2+surface、CO2のエネルギECO2、およびSrTiO3結晶の表面エネルギEsurfaceを使って、
Eabs=ECO2+surface−(ECO2+Esurface
と定義される。
【0023】
前記吸着エネルギEabsが負の値の場合、前記SrTiO3結晶のAO面あるいはBO2面に二酸化炭素分子の吸着が生じる。
【0024】
図5は、様々なCO2被覆率について求めたSrTiO3結晶のAO面(SrO面)とBO2面(TiO2面)の吸着エネルギEabsを示す。
【0025】
図5を参照するに、CO2被覆率θが0.2以下である場合、AO面およびBO2面のいずれも二酸化炭素分子を吸着することができるが、BO2面の場合には、CO2被覆率θが0.33になった時点で、すなわち図4Bの構造において4個の酸素原子に二酸化炭素分子が結合した時点で、吸着エネルギEabsはゼロになり、それ以上の吸着は生じないことが示される。これに対し、AO面の場合には、CO2被覆率θが0.5、すなわち図4Aの構造において4個の酸素原子全てに二酸化炭素分子が結合した場合であっても、吸着エネルギEabsは負の値を維持しており、それ以上の吸着が可能であることが示される。
【0026】
同様な二酸化炭素分子の吸着は、同じペロブスカイト構造を有し、同様な格子定数を有するBaTiO3膜(a=b=3.992Å,c=4.038Å)あるいは組成が(Sr,Ba)TiO3で表される固溶体、組成がPb(Zr,Ti)O3で表されるPZT膜(a=3.904Å,c=4.150Å)や、組成が(Pb,La)(Zr,Ti)O3で表されるPLZT膜などでも生じる。
【0027】
図6は、図7Aに示すように、(001)面方位のSrTiO3基板1上にエピタキシャルに形成した(001)面方位のBaTiO3膜2上への二酸化炭素の吸着を、XPS(X線光電子分光)法により実証した結果を示す。
【0028】
なお、このようにして形成されたBaTiO3膜2が(001)配向したエピタキシャル膜であることは、図7Bに示す、図7Aの試料のX線回折パターンより確認される。
【0029】
図7Bを参照するに、θ−2θプロットにはSrTiO3の(001)回折ピークとBaTiO(001)回折ピーク、SrTiO3の(002)回折ピークとBaTiO(002)回折ピークが対になって現れており、その他の回折ピークは見られないことから、前記BaTiO3膜2は(001)配向膜であることが確認される。また、図7Bのθ−2θプロット中に示したφスキャンでは、90度間隔でBaTiO3膜2およびSrTiO3膜1の(101)回折ピークが現れており、前記SrTiO3膜1およびBaTiO3膜2は、いずれもエピタキシャル膜であることが確認される。
【0030】
再び図6を参照するに、横軸は束縛エネルギを示しており、「as deposited」と記した結果は、前記SrTiO3基板上に前記BaTiO3膜をエピタキシャル成長させた直後の状態の膜についての測定結果であり、一方「1 atm CO2」と表記した結果は、同じBaTiO3膜を1気圧の二酸化炭素雰囲気中に24℃で1時間保持した場合の結果を示す。図6中、左側に酸素原子の1s軌道からの光電子スペクトル(O1s)を、右側に炭素原子の1s軌道からの光電子スペクトル(C1s)を示す。なお図6の測定では、光電子の取出角(TOA)を10度に設定しており、SrTiO3膜のごく表面部分の情報が得られている。
【0031】
図6において「as deposited」の試料と「1 atm CO2」の試料を比較すると、O1sスペクトルとC1sスペクトルのやや高エネルギ側にピークが観測されるが、これらは、前記BaTiO3膜に吸着した二酸化炭素中のそれぞれ酸素原子および炭素原子に起因するものであり、実際に前記BaTiO3膜に二酸化炭素分子が吸着していることを示している。
【0032】
図8は、前記図6における「1 atm CO2」の試料を、その後400℃で熱処理した場合の、XPSスペクトルの、その場観測の結果を示す。
【0033】
図8を参照するに、C1sスペクトルのやや高エネルギ側に見られたCO2由来のピークが、熱処理後には実質的に消滅してしまっており、前記BaTiO3膜に吸着した二酸化炭素分子は、わずか400℃程度の加熱により、脱離させることが可能であることがわかる。なお図8のXPSスペクトルは取り出し角を30度に設定しており、図6の場合よりもやや深い部分の情報が含まれている。
【0034】
図9は、前記図7A(001)配向SrTiO3基板1上にエピタキシャルに成長した(001)配向BaTiO3膜2を、1気圧の二酸化炭素雰囲気中に24℃の温度で1時間曝露した後、400℃の温度で熱処理した場合に放出される二酸化炭素ガスの量を、直接にTDS(thermal desorption spectroscopy)により求めた結果を示す。ただし図9中、「1atm CO2」と表記した試料は、前記二酸化炭素雰囲気に曝露した試料についての結果を示し、「as deposited」と表記した試料は、成膜直後のBaTiO3膜2についての結果を示す。
【0035】
図9を参照するに、連続線は、初回の熱処理の際における二酸化炭素の放出を示し、破線は二回目の熱処理の際の二酸化炭素の放出を示しているが、800℃以下の加熱により、膜中から多量の二酸化炭素が脱離するのこと、また脱離がもっとも活発に生じるのは約600℃の温度であることがわかる。
【0036】
図9の結果は、図7AのBaTiO3膜において実際に雰囲気中の二酸化炭素分子が吸着され、それが600℃以下の低温での加熱により、膜中から脱離することを示している。
【0037】
図6〜図9の結果は、図7Aに示すBaTiO3のエピタキシャル膜2についての結果ではあったが、図1および図2A,2Bに示すような、導電部材11h1,11h2,11f上に、密着膜11adを介して形成されたペロブスカイト膜11pvのような多結晶膜であっても、膜表面には前記AO終端面あるいはBO終端面が含まれるため、図1の装置10は、二酸化炭素除去装置として機能する。
【0038】
図10は、前記図1の二酸化炭素除去装置10の動作を説明するフローチャートである。
【0039】
図10を参照するに、ステップ1において前記可動シャッタ部材11Bが開放され、ステップ2において前記二酸化炭素吸収部材11Dが、二酸化炭素を含んだ外部雰囲気、例えば大気に曝露される。
【0040】
さらにステップ3において前記可動シャッタ部材11Bが閉じられ、前記二酸化炭素除去装置10が前記外部雰囲気から遮断される。
【0041】
さらにステップ4において前記真空ポンプ12が駆動され、さらにステップ5において図2Aに示すように前記導電部材11h1,11h2,11fに通電され、前記ペロブスカイト膜11pvを加熱することにより、前記吸着していた二酸化炭素分子を脱離させる。脱離した二酸化炭素分子は前記真空ポンプ12を介して、例えば二酸化炭素を低温で固化させる貯蔵装置13へと送られる。

[第2の実施形態]
図11は、本発明の第2の実施形態による二酸化炭素除去装置40の構成を示す。
【0042】
図11を参照するに、前記二酸化炭素除去装置40は可動シャッタ部材41Bを備え、排気ポート41aにおいて真空ポンプ42により排気される容器41Aを有し、前記容器41A中には、図12に示す二酸化炭素吸着部材41を多数、図示しないスペーサを介在させ、間隔をあけて積層した二酸化炭素吸着部材バンク40Aが設けられている。前記二酸化炭素吸着部材41は大気中、あるいは雰囲気中の二酸化炭素分子を化学吸着し、また加熱されることにより、化学吸着していた二酸化炭素分離を脱離させる。
【0043】
図12を参照するに、個々の二酸化炭素吸着部材41は、力学的強度の観点から0.001μm〜1000μmの厚さを有するSrTiO3あるいはBaTiO3の(001)配向の単結晶基板45よりなり、前記単結晶基板45の下面には、PtやIr,Ru,Rh,Wなどよりなる導電パターン45Hが、ヒータとして形成されている。前記ヒータ45Hは、ジグザグ形状やスパイラル形状など、任意の形状に形成することができる。
【0044】
図13Aは、前記二酸化炭素吸着部材41として使われるSrTiO3あるいはBaTiO3の(001)配向単結晶基板45の構成を示す概略図である。
【0045】
図13Aを参照するに、先に図3で説明したように、(001)配向のSrTiO3結晶あるいはBaTiO3結晶では(001)表面がAO面あるいはBO面により終端されることになるが、AO面(SrO)面とBO2面(TiO2面)は、ほぼ同じ表面エネルギを有するため、自然の状態、あるいは市販の単結晶基板を購入した状態では、前記単結晶基板45においてはAO終端面とBO2終端面とが、便宜的に図示したように規則的ではないが、ほぼ同じ割合で基板面上に形成されている。
【0046】
このような(001)面上にAO終端面およびBO2終端面をほぼ等しい面積比で有するSrTiO3あるいはBaTiO3の単結晶基板45を前記図12の二酸化炭素除去装置40において、前記二酸化炭素吸着部材41として使うことにより、先に図4A,4Bおよび図5で説明したように、雰囲気中の二酸化炭素を前記AO面上の酸素原子、あるいはBO面上の酸素原子に吸着させることが可能となる。
【0047】
前記二酸化炭素除去装置40の運転は、先の図10のフローチャートと同様にして行われる。
【0048】
なお本実施形態において、前記二酸化炭素吸着部材41は、上記SrTiO3あるいはBaTiO3の(001)配向単結晶基板に限定されるものではなく、(Ba,Sr)TiO3膜や、Pb(Zr,Ti)O3膜、(Pb,La)(Zr,Ti)O3膜などを使うことも可能である。

[第3の実施形態]
前記図11の二酸化炭素吸収装置40では、前記二酸化炭素吸着膜41として使われる、SrTiO3あるいはBaTiO3の(001)配向単結晶基板では、表面を特に制御しておらず、このため図13で説明したように、AO終端面とBO終端面が、膜表面にほぼ同じ面積比で現れていた。これに対し、先の図3〜図9の説明からは、二酸化炭素吸収膜として、SrTiO3やBaTiO3,(Sr,Ba)TiO3やPb(Zr,Ti)O3,(La,Pb)(Zr,Ti)O3など、ペロブスカイト構造の金属酸化膜の単結晶膜、特にAO面を主要な終端面とする単結晶膜を使うのが、二酸化炭素の除去に有効であることがわかる。
【0049】
図14は、このような観点から構成された、本発明の第3の実施形態による二酸化炭素除去装置60の構成を示す。
【0050】
図14を参照するに、前記二酸化炭素除去装置60は可動シャッタ部材61Bを備え、排気ポート61aにおいて真空ポンプ62により排気される容器61Aを有し、前記容器61A中には、図15に示す二酸化炭素吸着部材61を多数、図示しないスペーサを介在させ、間隔をあけて積層した二酸化炭素吸着部材バンク60Aが設けられている。前記二酸化炭素吸着部材61は大気中、あるいは雰囲気中の二酸化炭素分子を化学吸着し、また加熱されることにより、化学吸着していた二酸化炭素分離を脱離させる。
【0051】
図15を参照するに、個々の二酸化炭素吸着部材61は、力学的強度の観点から0.001μm〜1000μmの厚さを有するSrTiO3あるいはBaTiO3の(001)配向の単結晶基板65よりなり、前記単結晶基板65の下面には、PtやIr,Ru,Rh,Wなどよりなる導電パターン65Hが、ヒータとして形成されている。前記ヒータ65Hは、ジグザグ形状やスパイラル形状など、任意の形状に形成することができる。
【0052】
図16Aは、通常の、すなわち市販されているSrTiO3単結晶基板65を示す概略図である。
【0053】
図16Aを参照するに、先に説明したSrTiO3結晶のAO面(SrO)面とBO2面(TiO2面)は、ほぼ同じ表面エネルギを有するため、自然の状態、あるいは購入した状態では、図示したように規則的ではないにしても、ほぼ同じ割合で基板面上に形成されている。
【0054】
これに対し本実施形態は、特に前記AO面の二酸化炭素吸着能力を利用するものであるため、図16Aに示す単結晶基板65の表面の状態を、酸素雰囲気中、100〜1500℃の温度で熱処理することにより、図16Bに示すように前記単結晶基板65の表面状態を、AO終端面が面積比で50%を超えるように、実際的には60〜80%の面積比となるように、制御する。
【0055】
このようなAO面の面積比の大きい膜を前記図14の二酸化炭素除去装置60において前記二酸化炭素吸収部材61として使い、先に説明した図10のフローチャートに従った運転を行うことにより、より効率的な二酸化炭素の除去が可能となる。
【0056】
なお、本実施形態において、前記単結晶基板65表面のAO終端面は、次の実施形態で詳細に説明するXPS分析により行うことが可能である。
【0057】
本実施形態においても、前記二酸化炭素吸収膜はSrTiO3膜あるいはBaTiO3膜に限定されるものではなく、ペロブスカイト構造を有する他の金属酸化物、例えばPb(Zr,Ti)O3や(Pb,La)(Zr,Ti)O3などを使うことも可能である。

[第4の実施形態]
図17は、本発明の第4の実施形態による二酸化炭素除去装置80の構成を示す。
【0058】
図17を参照するに、前記二酸化炭素除去装置80は可動シャッタ部材81Bを備え、排気ポート81aにおいて真空ポンプ82により排気される容器81Aを有し、前記容器81A中には、図18に示す二酸化炭素吸着部材81を多数、図示しないスペーサを介在させ、間隔をあけて積層した二酸化炭素吸着部材バンク80Aが設けられている。前記二酸化炭素吸着部材81は大気中、あるいは雰囲気中の二酸化炭素分子を化学吸着し、また加熱されることにより、化学吸着していた二酸化炭素分離を脱離させる。
【0059】
図18を参照するに、個々の二酸化炭素吸着部材81は、力学的強度の観点から0.001μm〜1000μmの厚さを有するSrTiO3あるいはBaTiO3の(001)配向の単結晶基板85と、前記単結晶基板82上に1〜1000nmの膜厚でエピタキシャルに形成された(001)配向のSrTiO3あるいはBaTiO3膜86とよりなり、前記単結晶基板85の下面には、PtやIr,Ru,Rh,Wなどよりなる導電パターン85Hが、ヒータとして形成されている。前記ヒータ85Hは、ジグザグ形状やスパイラル形状など、任意の形状に形成することができる。
【0060】
図19Aは、通常の、すなわち市販されているSrTiO3単結晶基板85を示す概略図である。
【0061】
図19Aを参照するに、先に説明したSrTiO3結晶のAO面(SrO)面とBO2面(TiO2面)は、ほぼ同じ表面エネルギを有するため、自然の状態、あるいは購入した状態では、図示したように規則的ではないにしても、ほぼ同じ割合で前記基板85の表面上に形成されている。
【0062】
これに対し本実施形態は、特に前記AO面の二酸化炭素吸着能力を利用するものであるため、図19Aに示す単結晶基板85の表面の状態を、最初に酸素雰囲気中、100〜1500℃の温度で熱処理することにより、図19Bに示すようにAO面を、面積比で50%を超えるように、実際的には60〜80%の面積比となるように、制御する。あるいは、図13Aの単結晶基板85の表面を、温度が20〜100℃の緩衝フッ化水素酸(BHF)で1秒〜60分間処理し、BO2面を、50%を超える面積比となるように、実際的には60〜80%の面積比となるように制御してもよい。
【0063】
さらに図19Cに示すように、このように表面が制御された単結晶基板85上には、スパッタ法やMOCVD法などにより、二酸化炭素吸収膜となるSrTiO3膜あるいはBaTiO3膜86が、1〜1000nmの膜厚に形成される。本実施形態ではその際、前記膜86の表面状態を、XPS法によりその場観察し、図20Bに示すAO面(SrO面)に特徴的なSr3d軌道のXPSスペクトルSrIとXPSスペクトルSrIIが観測されたところで前記膜86の成膜を停止する。
【0064】
ここで、図20BのXPSスペクトルは、前記XPSスペクトルSrIを構成する約132.5eVと約134.5eVの二つのピークと、前記XPSスペクトルSrIIを構成する約133.5eVと約135.5eVの二つのピークの合成になっていることに注意すべきである。前記XPSスペクトルSrIは、AO終端面の一層下のAO面において、安定な12配位席を占有しているSr原子(図3の原子A)に由来するものであり、低いエネルギの位置に現れているのに対し、前記XPSスペクトルSrIIは、前記AO終端面上のSr原子(図3の原子As)に由来するものであり、よりエネルギが高い位置に現れている。前記XPSスペクトルSrI,SrIIが二つのピークにスプリットしているのは、スピン軌道相互作用の効果による。
【0065】
これに対し、前記BO2面(TiO2面)が膜表面を終端している場合には、図20Aに示すように12配位席を占有しているSr原子(図3の原子As)に由来するXPSスペクトルSrIしか観測されず、AO終端面上のSr原子(図3の原子As)に由来するXPSスペクトルSrIIは観測されない。
【0066】
このように、本実施形態では、前記図19Cの工程において、SrTiO3膜あるいはBaTiO3膜86の成膜を、前記膜86を構成する金属元素のXPSスペクトルを観察しながら行い、AO終端面が形成された時点で成膜を停止することにより、50%を大きく超える面積比でAO終端面を確実に得ることが可能となる。
【0067】
このようなAO面の面積比の大きい膜を前記図17の二酸化炭素除去装置80において前記二酸化炭素吸収部材81として使い、先に説明した図10のフローチャートに従った運転を行うことにより、より効率的な二酸化炭素の除去が可能となる。
【0068】
本実施形態においても、前記二酸化炭素吸収膜86はSrTiO3膜あるいはBaTiO3膜に限定されるものではなく、ペロブスカイト構造を有する他の金属酸化物、例えばPb(Zr,Ti)O3や(Pb,La)(Zr,Ti)O3などを使うことも可能である。またそれに合わせて、前記単結晶基板85も、SrTiO3基板あるいはBaTiO3基板に限定されるものではなく、前記二酸化炭素吸収膜86のエピタキシャル成長が可能な、例えばMgO単結晶基板など、他の材料を選ぶことができる。

[第5の実施形態]
図21は、本発明の第4の実施形態による二酸化炭素除去装置100の構成を示す。
【0069】
図21を参照するに、前記二酸化炭素除去装置100は可動シャッタ部材101Bを備え、排気ポート101aにおいて真空ポンプ102により排気される容器101Aを有し、前記容器101A中には、図22に示す二酸化炭素吸着部材101を多数、図示しないスペーサを介在させ、間隔をあけて積層した二酸化炭素吸着部材バンク100Aが設けられている。前記二酸化炭素吸着部材101は大気中、あるいは雰囲気中の二酸化炭素分子を化学吸着し、また加熱されることにより、化学吸着していた二酸化炭素分離を脱離させる。
【0070】
図22を参照するに、個々の二酸化炭素吸着部材101は、力学的強度の観点から0.001μm〜1000μmの厚さを有するシリカガラス基板105と、前記シリカガラス基板105上に1〜1000nmの膜厚で形成されたSrTiO3あるいはBaTiO3の多結晶膜106とよりなり、前記シリカガラス基板105の下面には、PtやIr,Ru,Rh,Wなどよりなる導電パターン105Hが、ヒータとして形成されている。前記ヒータ105Hは、ジグザグ形状やスパイラル形状など、任意の形状に形成することができる。
【0071】
本実施形態では、二酸化炭素を吸着膜106が多結晶膜となるが、基板105に安価な材料を使うことができ、二酸化炭素除去装置100の費用を低減することができる。
【0072】
なお前記基板105としては、前記シリカガラス基板などの酸化物基板の他に、SiN基板などの窒化物基板、SiON基板などの酸窒化物基板、さらにはシリコン基板、ゲルマニウム基板、SiGe混晶基板、GaAsなどのIII−V族化合物半導体基板などの、半導体基板などを使うことも可能である。
【0073】
本実施形態においても、前記二酸化炭素吸収膜106はSrTiO3膜あるいはBaTiO3膜に限定されるものではなく、ペロブスカイト構造を有する他の金属酸化物、例えばPb(Zr,Ti)O3や(Pb,La)(Zr,Ti)O3などを使うことも可能である。
【0074】
以上、本発明を好ましい実施形態について説明したが、本発明はかかる特定の実施形態に限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載した要旨内において様々な変形・変更が可能である。
(付記1)
二酸化炭素分子を含む雰囲気に露出される露出面を備えた、ペロブスカイト構造を有する二酸化炭素吸着膜と、
前記二酸化炭素吸着膜を加熱する加熱装置と、
前記二酸化炭素吸着膜周辺の空間を排気する排気装置と、
を備え、
前記二酸化炭素吸着膜は、前記雰囲気中の二酸化炭素分子を化学吸着し、
前記加熱装置は、前記二酸化炭素吸着膜に吸着した二酸化炭素分子を脱離させることを特徴とする二酸化炭素除去装置。
(付記2)
前記二酸化炭素吸着膜は、前記露出面において、式ABO3で表されるペロブスカイト構造のAO原子層終端面を、BO2原子層終端面よりもより多くの割合で露出することを特徴とする付記1記載の二酸化炭素除去装置。
(付記3)
前記二酸化炭素吸着膜は、SrTiO3膜またはBaTiO3膜よりなることを特徴とする付記1または2記載の二酸化炭素除去装置。
(付記4)
前記二酸化炭素吸着膜は、(001)面方位を有する単結晶膜であることを特徴とする請求項1〜3のうち、いずれか一項記載の二酸化炭素除去装置。
(付記5)
前記二酸化炭素吸着膜は、単結晶膜上にエピタキシャルに形成されていることを特徴とする付記1〜4のうち、いずれか一項記載の二酸化炭素除去装置。
(付記6)
前記二酸化炭素吸着膜は、1〜1000nmの膜厚を有することを特徴とする付記1〜5のうち、いずれか一項記載の二酸化炭素除去装置。
(付記7)
前記加熱装置は前記二酸化炭素吸収膜を、600℃以下の温度に加熱することを特徴とする付記1〜6のうち、いずれか一項記載の二酸化炭素除去装置。
(付記8)
前記加熱装置はヒータ部材を含み、前記二酸化炭素吸着膜は、前記ヒータ部材上に形成されることを特徴とする付記1〜7のうち、いずれか一項記載の二酸化炭素除去装置。
(付記9)
前記加熱装置はヒータ部材を含み、前記二酸化炭素吸着膜は支持体の表面に形成され、前記ヒータ部材は、前記支持体の裏面に形成されることを特徴とする付記1〜7のうち、いずれか一項記載の二酸化炭素除去装置。
(付記10)
さらに前記露出面を覆う可動シャッタを備え、前記可動シャッタは、前記二酸化炭素吸着膜が前記雰囲気中の二酸化炭素分子を吸着する際には前記露出面を開放し、前記二酸化炭素吸着膜から前記二酸化炭素分子が脱離される際には前記露出面を覆うことを特徴とする付記1記載の二酸化炭素除去装置。
(付記11)
二酸化炭素分子を含む雰囲気に露出される露出面を備えた、ペロブスカイト構造を有する二酸化炭素吸着膜と、
前記二酸化炭素吸着膜を加熱する加熱装置と、
前記二酸化炭素吸着膜周辺の空間を排気する排気装置と、
を備え、
前記二酸化炭素吸着膜は、前記雰囲気中の二酸化炭素分子を化学吸着し、
前記加熱装置は、前記二酸化炭素吸着膜に吸着した二酸化炭素分子を脱離させることを特徴とする二酸化炭素除去装置による、二酸化炭素の除去方法であって、
前記露出面を前記雰囲気に曝露し、前記雰囲気中の二酸化炭素ガスを前記露出面に吸着する手順と、
前記二酸化炭素分子を吸着した前記二酸化炭素吸着膜を、600℃以下の温度に加熱し、前記吸着した二酸化炭素分子を脱離させる手順と、
を含むことを特徴とする二酸化炭素の除去方法。
【図面の簡単な説明】
【0075】
【図1】本発明の第1の実施形態による二酸化炭素除去装置の構成を示す図である。
【図2A】図1の二酸化炭素除去装置の一部を拡大して示す断面図である。
【図2B】図2Aの一部を拡大して示す断面図である。
【図2C】図2Bの一変形例を示す図である。
【図3】ペロブスカイト構造のAO終端面とBO2終端面を示す図である。
【図4A】ペロブスカイト構造のAO終端面への二酸化炭素分子の吸着を示す図である。
【図4B】ペロブスカイト構造のBO2終端面への二酸化炭素分子の吸着を示す図である。
【図5】第1原理計算により求めた、SrTiO3膜のAO終端面およびBO終端面における二酸化炭素分子の吸着エネルギを、二酸化炭素被覆率の関数として示すXPSスペクトル図形である。
【図6】ペロブスカイト膜表面への二酸化炭素分子の吸着を実証する図である。
【図7A】図6の実験で使われた試料を説明する図である。
【図7B】図7Aの試料におけるペロブスカイト膜の配向性を示す図である。
【図8】加熱による、ペロブスカイト膜表面からの二酸化炭素分子の脱離を実証する図である。
【図9】加熱による、ペロブスカイト膜表面からの二酸化炭素分子の脱離を実証する別の図である。
【図10】図1の二酸化炭素除去装置の動作を説明する図である。
【図11】本発明の第2の実施形態による二酸化炭素除去装置の構成を示す図である。
【図12】図11の二酸化炭素除去装置の一部を拡大して示す図である。
【図13】図12の一部をさらに拡大して示す図である。
【図14】本発明の第3の実施形態による二酸化炭素除去装置の構成を示す図である。
【図15】図14の二酸化炭素除去装置の一部を拡大して示す図である。
【図16A】図14の二酸化炭素除去装置の製造工程を示す図(その1)である
【図16B】図14の二酸化炭素除去装置の製造工程を示す図(その2)である
【図17】本発明の第4の実施形態による二酸化炭素除去装置の構成を示す図である。
【図18】図17の二酸化炭素除去装置の一部を拡大して示す図である。
【図19A】図17の二酸化炭素除去装置の製造工程を示す図(その1)である
【図19B】図17の二酸化炭素除去装置の製造工程を示す図(その2)である
【図19C】図17の二酸化炭素除去装置の製造工程を示す図(その3)である
【図20A】BO2終端面に特徴的なXPSスペクトルを示す図である。
【図20B】AO終端面に特徴的なXPSスペクトルを示す図である。
【図21】本発明の第5の実施形態による二酸化炭素除去装置の構成を示す図である。
【図22】図21の二酸化炭素除去装置の一部を拡大して示す図である。
【符号の説明】
【0076】
10,40、60,80,100 二酸化炭素除去装置
11A,41A,61A,81A,101A 容器
11a,41a,61a,81a,101a 排気ポート
11ad 密着膜
11B,41B,61B,81B,101B 可動シャッタ部材
11C 基材
11c 通気口
11D 二酸化炭素吸着部材
11f,11h,11h 導電部材
11pv ペロブスカイト膜
12,42,62,82,012 真空ポンプ
13,43,63,83,103 二酸化炭素貯蔵部
40A,60A,80A,100A 二酸化炭素吸着部材バンク
41,61,81,101 二酸化炭素吸着部材
45,65,85 単結晶基板
45H,65H,85H,105H ヒータ
86,106 ペロブスカイト膜

【特許請求の範囲】
【請求項1】
二酸化炭素分子を含む雰囲気に露出される露出面を備えた、ペロブスカイト構造を有する二酸化炭素吸着膜と、
前記二酸化炭素吸着膜を加熱する加熱装置と、
前記二酸化炭素吸着膜周辺の空間を排気する排気装置と、
を備え、
前記二酸化炭素吸着膜は、前記雰囲気中の二酸化炭素分子を化学吸着し、
前記加熱装置は、前記二酸化炭素吸着膜に吸着した二酸化炭素分子を脱離させることを特徴とする二酸化炭素除去装置。
【請求項2】
前記二酸化炭素吸着膜は、式ABO3で表されるペロブスカイト構造を有し、且つ、前記露出面において、前記ペロブスカイト構造のAO原子層終端面を、前記ペロブスカイト構造のBO2原子層終端面よりもより多くの割合で露出することを特徴とする請求項1記載の二酸化炭素除去装置。
【請求項3】
前記二酸化炭素吸着膜は、SrTiO3膜またはBaTiO3膜よりなることを特徴とする請求項1または2記載の二酸化炭素除去装置。
【請求項4】
前記二酸化炭素吸着膜は、(001)面方位を有する単結晶膜であることを特徴とする請求項1〜3のうち、いずれか一項記載の二酸化炭素除去装置。
【請求項5】
前記二酸化炭素吸着膜は、単結晶膜上にエピタキシャルに形成されていることを特徴とする請求項1〜4のうち、いずれか一項記載の二酸化炭素除去装置。
【請求項6】
二酸化炭素分子を含む雰囲気に露出される露出面を備えた、ペロブスカイト構造を有する二酸化炭素吸着膜と、
前記二酸化炭素吸着膜を加熱する加熱装置と、
前記二酸化炭素吸着膜周辺の空間を排気する排気装置と、
を備え、
前記二酸化炭素吸着膜は、前記雰囲気中の二酸化炭素分子を化学吸着し、
前記加熱装置は、前記二酸化炭素吸着膜に吸着した二酸化炭素分子を脱離させることを特徴とする二酸化炭素除去装置による、二酸化炭素の除去方法であって、
前記露出面を前記雰囲気に曝露し、前記雰囲気中の二酸化炭素ガスを前記露出面に吸着する手順と、
前記二酸化炭素分子を吸着した前記二酸化炭素吸着膜を、600℃以下の温度に加熱し、前記吸着した二酸化炭素分子を脱離させる手順と、
を含むことを特徴とする二酸化炭素の除去方法。

【図1】
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【図2A】
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【図2B】
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【図2C】
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【図3】
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【図4A】
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【図4B】
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【図5】
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【図6】
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【図7A】
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【図7B】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16A】
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【図16B】
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【図17】
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【図18】
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【図19A】
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【図19B】
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【図19C】
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【図20A】
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【図20B】
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【図21】
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【図22】
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【公開番号】特開2009−172479(P2009−172479A)
【公開日】平成21年8月6日(2009.8.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−11881(P2008−11881)
【出願日】平成20年1月22日(2008.1.22)
【出願人】(000005223)富士通株式会社 (25,993)
【Fターム(参考)】