説明

二酸化炭素除去装置

【課題】二酸化炭素を含む被処理気体に対する二酸化炭素の除去率を向上させることが可能な二酸化炭素除去装置を提供する。
【解決手段】二酸化炭素を吸着する二酸化炭素担持体22が充填され且つ下部から導入された被処理気体により、充填された二酸化炭素担持体22の流動層が形成される反応槽2と、二酸化炭素担持体22を反応槽2への上部から間欠的に投入する担持体投入手段4と、二酸化炭素を吸着した二酸化炭素担持体22を反応槽2の下部から回収する担持体回収部6と、担持体回収部6が回収した二酸化炭素担持体22から二酸化炭素を分離させる二酸化炭素分離手段8を備え、担持体投入手段4は、二酸化炭素を分離させた二酸化炭素担持体22を反応槽2へ間欠的に投入し、担持体回収部6は、反応槽2の下部と連通し且つ被処理気体が侵入しない圧力の回収液28が充填された担持体誘導管24を備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、機械技術の分野において、燃焼炉を有する工場や副生ガス輸送配管設備に適用され、燃焼排ガスや副生ガスから二酸化炭素(CO2)を除去する技術に関するものである。
【背景技術】
【0002】
製鉄所等、燃焼炉を有する工場では、二酸化炭素(CO2)を含む比率が高いガスである、燃焼後の排ガスが発生する。また、製鉄所等の工場では、燃焼後の排ガス以外にも、二酸化炭素を含む比率が高いガスである、副生ガス(高炉ガス、転炉ガス、コークス炉で発生するガス等)が発生する。
これらのガスは、燃焼後に煙突等から大気中へ放散されており、含まれている二酸化炭素を除去する処理は、一般的には行われていない。
【0003】
しかしながら、上記のガスに含まれる二酸化炭素は、地球温暖化現象の要因となるため、例えば、特許文献1に記載されているように、大気中へ放散される前のガスから二酸化炭素を除去する技術が開示されている。
特許文献1に記載されている技術は、二酸化炭素(炭酸ガス)を吸収する炭酸ガス吸収材粉末を反応筒内に供給して、反応筒内に炭酸ガス吸収材粉末の流動層を形成する工程と、反応筒の下部に偏在した、二酸化炭素を吸収した炭酸ガス吸収材粉末を反応筒外へ排出する工程を有するものである。
【0004】
ここで、特許文献1に記載されている技術では、二酸化炭素を吸収した炭酸ガス吸収材粉末を反応筒外へ排出する工程において、炭酸ガス吸収材粉末の排出路に設けられた流量調節手段を開くことにより、二酸化炭素を吸収した炭酸ガス吸収材粉末を反応筒外へ排出している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特許3845541号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献1に記載されている技術では、炭酸ガス吸収材粉末の排出路に設けられた流量調節手段を開くことにより、二酸化炭素を吸収した炭酸ガス吸収材粉末を反応筒外へ排出している。このため、二酸化炭素が除去されていない被処理気体が、炭酸ガス吸収材粉末の排出路へ移動する可能性があり、被処理気体に対する二酸化炭素の除去率が低下するという問題が発生するおそれがある。
【0007】
本発明は、上述のような問題点に着目してなされたもので、被処理気体に対する二酸化炭素の除去率を向上させることが可能な、二酸化炭素除去装置を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するために、本発明のうち、請求項1に記載した発明は、被処理気体から二酸化炭素を除去する二酸化炭素除去装置であって、
前記二酸化炭素を吸着する二酸化炭素担持体が収容され且つ下部から導入された前記被処理気体により前記収容された二酸化炭素担持体の流動層が形成される反応槽と、
前記二酸化炭素担持体を前記反応槽の上部から間欠的に投入する担持体投入手段と、
前記二酸化炭素を吸着した前記二酸化炭素担持体を前記反応槽の下部から回収する担持体回収部と、
前記担持体回収部が回収した二酸化炭素担持体から前記二酸化炭素を分離させる二酸化炭素分離手段と、を備え、
前記担持体投入手段は、前記二酸化炭素分離手段で前記二酸化炭素を分離させた二酸化炭素担持体を、前記流動層が形成された前記反応槽へ間欠的に投入し、
前記担持体回収部は、前記反応槽の下部と連通し且つ液体が充填された担持体誘導管を備え、
前記担持体誘導管は、一方の端部から前記二酸化炭素を吸着した前記二酸化炭素担持体を前記液体内に回収し、他方の端部から前記液体内に回収した前記二酸化炭素担持体を排出することを特徴とするものである。
【0009】
本発明によると、二酸化炭素を吸着した二酸化炭素担持体を、反応槽の下部から回収する担持体回収部が、反応槽の下部と連通し、且つ液体が充填された担持体誘導管を備えている。
このため、担持体誘導管に充填された液体によって、二酸化炭素が除去されていない被処理気体が、二酸化炭素を吸着した二酸化炭素担持体と共に、反応槽の外部へ移動することを、抑制することが可能となる。
【0010】
次に、本発明のうち、請求項2に記載した発明は、請求項1に記載した発明であって、前記反応槽内の下部に、下部から導入された前記被処理気体を前記反応槽の内部で分散させる分散板を設けたことを特徴とするものである。
本発明によると、反応槽内の下部に設けた分散板により、下部から導入された被処理気体を、反応槽の内部で分散させる。
このため、下部から導入された被処理気体を、反応槽の内部へ、偏りが少ない状態で移動させることが可能となり、下部から導入された被処理気体を、反応槽の内部において、満遍なく分散させることが可能となる。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、二酸化炭素が除去されていない被処理気体が反応槽の外部へ移動することを、抑制することが可能となるため、被処理気体に対する二酸化炭素の除去率を向上させることが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】本発明の二酸化炭素除去装置の概略構成を示す断面図である。
【図2】図1のII線矢視図である。
【図3】本発明の変形例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
(第一実施形態)
以下、本発明の第一実施形態(以下、「本実施形態」と記載する)について、図面を参照しつつ説明する。
(構成)
まず、図1及び図2を用いて、本実施形態の二酸化炭素除去装置1の具体的な構成について説明する。
図1は、二酸化炭素除去装置1の概略構成を示す断面図である。また、図2は、図1のII線矢視図である。
図1中に示すように、本実施形態の二酸化炭素除去装置1は、反応槽2と、担持体投入手段4と、担持体回収部6と、二酸化炭素分離手段8を備えている。
反応槽2は、軸を鉛直方向へ向けた円筒状に形成されており、後述する二酸化炭素担持体22が収容されている。
【0014】
また、反応槽2は、被処理気体導入部10と、分散板12と、担持体投入孔14と、担持体排出孔16と、処理済気体排出ダクト18を備えている。
被処理気体導入部10は、反応槽2の下部において側面に開口している開口部であり、製鉄所等の工場Fに連結している。また、被処理気体導入部10は、製鉄所等の工場Fにおいて発生した排ガスや副生ガス、すなわち、二酸化炭素を含む比率が高いガスである被処理気体を反応槽2の内部(内部空間)へ導入するための開口部である。
【0015】
ここで、被処理気体導入部10は、一つの反応槽2に複数形成してもよく、一つのみ形成してもよい。一つの反応槽2に複数の被処理気体導入部10を形成した場合、例えば、各被処理気体導入部10に、それぞれ、任意に開閉可能なバルブを設け、各被処理気体導入部10に、異なる設備(工場等)から発生した被処理気体が導入される構成としてもよい。
【0016】
また、工場Fから被処理気体導入部10への被処理気体の移動経路となる配管Pには、工場Fから被処理気体導入部10へ移動する被処理気体の流速を変化させることが可能な、流速変化バルブ20が配置されている。
流速変化バルブ20の操作により、工場Fから被処理気体導入部10へ移動する被処理気体の流速を変化させると、被処理気体の被処理気体導入部10への導入量(吹き込み量)を変化させることが可能となる。このため、本実施形態の二酸化炭素除去装置1を用いて、被処理気体から二酸化炭素を除去する際には、流速変化バルブ20の操作量を調節して、反応槽2の内部における被処理気体の流速(空塔速度)を調節する。
【0017】
流速変化バルブ20の操作量は、反応槽2の内部へ導入された被処理気体の流速が、反応槽2の内部へ導入された被処理気体に流動化が発生する最小の速度である、最小流動化速度を超える速度となるように調節する。
なお、最小流動化速度は、例えば、反応槽2の形状や、二酸化炭素担持体22の大きさや形状、被処理気体の組成等に応じて設定する。
【0018】
ここで、本実施形態では、一例として、流速変化バルブ20の操作量を、反応槽2の内部へ導入された被処理気体の流速が最小流動化速度を超える速度となるように調節するために、被処理気体導入部10付近における気圧と、処理済気体排出ダクト18付近における気圧を参照する場合を説明する。具体的には、被処理気体導入部10及び処理済気体排出ダクト18付近に、それぞれ、気圧を検出する圧力センサ(図示せず)を配置し、両圧力センサが検出した気圧の差から反応槽2内における圧力損失を算出して、流速変化バルブ20の操作量を調節する際の指標とする。
【0019】
したがって、上記のように流速変化バルブ20の操作量を調節すると、被処理気体導入部10を介して反応槽2の内部へ導入された被処理気体により、反応槽2の内部に収容されている二酸化炭素担持体22が、反応槽2の内部に流動層を形成する。
分散板12は、図2中に示すように、例えば、中心及び中心付近に開口部を有する円錐状のメッシュ(網)により形成されている。また、分散板12は、反応槽2内の下部、具体的には、反応槽2の内部において、被処理気体導入部10の付近に設けられており、被処理気体導入部10から導入された被処理気体を衝突させて分散させ、反応槽2の内部へ偏りが少ない状態で移動させる。
【0020】
すなわち、分散板12は、被処理気体導入部10から導入された被処理気体が、反応槽2の内壁面に沿って上昇することを抑制している。これにより、分散板12は、被処理気体導入部10、すなわち、反応槽2の下部から導入された被処理気体を、反応槽2の内部において満遍なく分散させている。なお、図2中では、説明のために、分散板12以外の図示を省略している。
【0021】
担持体投入孔14は、反応槽2の上面に開口している孔であり、後述する二酸化炭素担持体22を反応槽2の内部へ投入可能な形状に形成されている。
担持体排出孔16は、反応槽2の底面に開口している孔であり、反応槽2の内部へ投入された二酸化炭素担持体22を、反応槽2の外部へ排出可能な形状に形成されている。
処理済気体排出ダクト18は、反応槽2の上方に設けられており、反応槽2の内部と図外の設備(煙突等)とを連通している。
【0022】
なお、本実施形態では、一例として、処理済気体排出ダクト18内の圧力(気圧)は、図外の昇圧装置(ポンプ等)により、大気圧以上且つ反応槽2内の圧力未満となるように調節されている場合を説明する。これは、処理済気体排出ダクト18が老朽化した場合等、処理済気体排出ダクト18に開口部(穴等)が形成された際に、処理済気体排出ダクト18内の圧力が大気圧よりも低いと、外気が反応槽2内へ流入するためである。
【0023】
担持体投入手段4は、例えば、ホッパーやコンベア等を備えて構成されており、二酸化炭素を吸着する二酸化炭素担持体22を、被処理ガスにより反応槽2の上部と等しい圧力まで昇圧した状態で、内部に二酸化炭素担持体22の流動層が形成された反応槽2へ間欠的に投入する。これにより、二酸化炭素担持体22を取り巻く雰囲気の圧力を昇圧して、担持体投入手段4から担持体投入孔14を介して反応槽2へ投入する二酸化炭素担持体22が、反応槽2外へ飛散することを防止している。
【0024】
担持体投入手段4による二酸化炭素担持体22の投入量は、例えば、二酸化炭素担持体22の流動層が形成された反応槽2内において、多数の二酸化炭素担持体22が、少なくとも変位可能な程度の隙間を有して収容される量とする。
ここで、二酸化炭素担持体22は、例えば、γ(ガンマ)‐アルミナ等の細孔を持つ材料とし、有機アミンのような二酸化炭素を固定化する物質を担持させて形成される。
【0025】
また、二酸化炭素担持体22は、被処理気体が含む二酸化炭素を吸着していない、または、二酸化炭素の吸着量が少なく、二酸化炭素を十分に吸着した状態と比較して比重が小さい状態では、反応槽2の内部に形成された流動層により、反応槽2内で浮上して、反応槽2の上部に偏析し、二酸化炭素が十分に吸着した状態では、反応槽2の下部に偏析する重さとなるように形成されている。
【0026】
本実施形態では、二酸化炭素担持体22を、球状の粒体であるγ‐アルミナ等の担体に、有機アミンのような二酸化炭素を固定化する物質を担持させて形成した場合について説明する。なお、二酸化炭素担持体22の構成は、上記の構成に限定するものではなく、例えば、固体塩基の粉末や有機アミン等、すなわち、γ‐アルミナ以外の、二酸化炭素を固定化する反応が発生する材料を用いて形成した構成としてもよい。
【0027】
担持体回収部6は、担持体誘導管24と、沈降分離槽26を備えている。
担持体誘導管24は、反応槽2の鉛直方向下方に配置されており、回収液28を内部に充填した連通管である。また、担持体誘導管24は、一方の端部が、担持体排出孔16を介して反応槽2の内部と連通しており、他方の端部が、沈降分離槽26と連通している。
すなわち、担持体誘導管24は、一方の端部から、二酸化炭素を吸着した二酸化炭素担持体22を回収液28内に回収し、他方の端部から、回収液28内に回収した二酸化炭素担持体22を排出する。
【0028】
ここで、担持体誘導管24の内部に充填した回収液28は、水等の液体であり、被処理気体導入部10から反応槽2の内部へ導入された被処理気体が、担持体誘導管24へ侵入しない強さの圧力に加圧されている。
沈降分離槽26は、担持体誘導管24を介して反応槽2から移動してきた二酸化炭素担持体22及び回収液28を収容する槽であり、図示しないフィルター及びポンプを備えている。
【0029】
フィルターは、例えば、ストレーナー等を用いて形成されており、回収液28を濾過して、回収液28から二酸化炭素担持体22や二酸化炭素担持体22の欠片等を取り出す。
ポンプは、上記のフィルターにより濾過した回収液28を、反応槽2の下方において被処理気体導入部10の近辺に開口している回収液投入口(図示せず)を介して、担持体誘導管24へ上方から投入する。すなわち、回収液28は、フィルター及びポンプを介して、担持体誘導管24と沈降分離槽26とを循環する。
【0030】
以上により、担持体回収部6は、二酸化炭素を吸着した二酸化炭素担持体22を、反応槽2の下部から回収する。
なお、特に図示しないが、担持体誘導管24には、担持体誘導管24から沈降分離槽26へ移動する二酸化炭素担持体22及び回収液28の移動量、及び反応槽2内における回収液28の液面位置を制御するために、担持体誘導管24と沈降分離槽26との間における二酸化炭素担持体22及び回収液28の移動量を変化可能なバルブが設けられている。
【0031】
二酸化炭素分離手段8は、担持体回収部6が回収した二酸化炭素担持体22から二酸化炭素を分離させる。
ここで、二酸化炭素担持体22から分離させた二酸化炭素は、再利用等を目的として回収する。
また、二酸化炭素を分離させた二酸化炭素担持体22は、洗浄や乾燥等の処理を行った後、担持体投入手段4によって、内部に流動層が形成された反応槽2へ、担持体投入孔14から間欠的に投入される。
【0032】
すなわち、担持体投入手段4は、二酸化炭素分離手段8で二酸化炭素を分離させた二酸化炭素担持体22を、流動層が形成された反応槽2へ、反応槽2の上部から間欠的に投入する。
したがって、二酸化炭素担持体22は、二酸化炭素を吸着していない状態で、担持体投入手段4によって、内部に流動層が形成された反応槽2へ間欠的に投入された後、二酸化炭素を吸着して比重が大きくなると、担持体誘導管24内の回収液28中へ移動する。そして、担持体誘導管24から沈降分離槽26へ移動し、吸着した二酸化炭素を二酸化炭素分離手段8によって分離された後、サイズの小さくなった二酸化炭素担持体22を分離操作で排除し、再び、担持体投入手段4によって反応槽2へ間欠的に投入される循環を繰り返す。
【0033】
(二酸化炭素除去方法)
次に、図1及び図2を参照して、本実施形態の二酸化炭素除去装置1を用いて被処理気体から二酸化炭素を除去する方法(以下、「二酸化炭素除去」と記載する)について説明する。
二酸化炭素除去装置1を用いた二酸化炭素除去では、工場Fにおいて発生した排ガスや副生ガスを、流速変化バルブ20の操作量を、反応槽2の内部へ導入された被処理気体の流速が最小流動化速度を超える速度となるように調節した状態で、被処理気体導入部10から、二酸化炭素担持体22を収容した反応槽2の内部へ導入する。これにより、反応槽2の内部に、二酸化炭素担持体22による流動層を形成する。
【0034】
このとき、被処理気体導入部10から反応槽2の内部へ導入された被処理気体は、分散板12により、反応槽2の内部において満遍なく分散する。
反応槽2の内部に二酸化炭素担持体22による流動層を形成した後、担持体投入手段4により、二酸化炭素を吸着していない二酸化炭素担持体22を、担持体投入孔14から間欠的に投入する。
【0035】
流動層が形成されている反応槽2の内部に投入された二酸化炭素担持体22は、二酸化炭素を吸着して、その比重が大きくなる。そして、二酸化炭素を十分に吸着して比重が大きくなった状態の二酸化炭素担持体22は、反応槽2の内部において下降し、担持体排出孔16から排出されて、担持体誘導管24に充填されている回収液28内を移動(沈降)し、沈降分離槽26へ移動する。
【0036】
このとき、担持体誘導管24に充填されている回収液28は、担持体誘導管24に被処理気体が侵入しない強さの圧力に加圧されているため、二酸化炭素を十分に吸着した二酸化炭素担持体22のみが、反応槽2から担持体誘導管24を介して沈降分離槽26へ移動することとなる。
ここで、反応槽2の内部へ導入された被処理気体の流速が、最小流動化速度を超え、さらに大きな速度となると、流動層において、多数の二酸化炭素担持体22に攪拌を促進することとなる。このため、二酸化炭素を吸着していない、または、二酸化炭素の吸着量が少ない状態の二酸化炭素担持体22が、二酸化炭素を十分に吸着した状態の二酸化炭素担持体22に混入する可能性がある。
【0037】
したがって、流速変化バルブ20の操作量を調節する際には、反応槽2の内部へ導入された被処理気体の流速が最小流動化速度を超える度合いを、二酸化炭素の吸着量に応じた二酸化炭素担持体22の比重差による、流動層内の偏析を発生させるために適した値とすることが好適である。
なお、反応槽2の内部において行う各種(二酸化炭素担持体22による流動層の形成、二酸化炭素担持体22の投入等)の処理は、反応槽2に対する加熱や冷却等を行うことなく、常温の状態で行う。
【0038】
二酸化炭素を十分に吸着して比重が大きくなり、沈降分離槽26へ移動した二酸化炭素担持体22は、フィルターによって濾過された回収液28から取り出されて回収され、二酸化炭素分離手段8へ移動する。
二酸化炭素分離手段8へ移動した二酸化炭素担持体22は、二酸化炭素分離手段8によって二酸化炭素を分離された後、洗浄や乾燥等の処理が行われ、担持体投入手段4によって反応槽2へ間欠的に投入され、再び、反応槽2内において、被処理気体が含む二酸化炭素を吸着する。
【0039】
二酸化炭素担持体22に二酸化炭素を吸着されて、含んでいた二酸化炭素を除去された被処理気体は、反応槽2内を上昇して、処理済気体排出ダクト18から図外の設備(煙突等)へ移動する。
ここで、被処理気体が排ガスの場合、含んでいた二酸化炭素を除去された排ガスは、大気中へ放散される。これにより、地球温暖化現象の抑制に寄与することが可能となる。
【0040】
一方、被処理気体が副生ガスの場合、含んでいた二酸化炭素を除去された副生ガスは、燃料とならない二酸化炭素が除去されることで、燃焼用ガス等としてさらに扱いやすいものとなる。これにより、資源の再利用が促進され、コスト削減及び環境悪化の抑制に寄与することが可能となる。
【0041】
(第一実施形態の効果)
以下、本実施形態の効果を列挙する。
(1)本実施形態の二酸化炭素除去装置1では、二酸化炭素を吸着した二酸化炭素担持体22を反応槽2の下部から回収する担持体回収部6が、反応槽2の下部と連通し、且つ回収液28が充填された担持体誘導管24を備えている。
このため、担持体誘導管24に充填された回収液28によって、二酸化炭素が除去されていない被処理気体が、二酸化炭素を吸着した二酸化炭素担持体22と共に、反応槽2の外部へ移動することを、抑制することが可能となる。
その結果、二酸化炭素除去装置1の使用時において、二酸化炭素が除去されていない被処理気体が反応槽2の外部へ移動することを抑制することが可能となるため、被処理気体に対する二酸化炭素の除去率を向上させることが可能となる。
【0042】
(2)本実施形態の二酸化炭素除去装置1では、担持体投入手段4が、二酸化炭素分離手段8で二酸化炭素を分離させた二酸化炭素担持体22を、流動層が形成された反応槽2へ間欠的に投入し、反応槽2は、常時、流動化状態を保つ。
このため、二酸化炭素担持体22により流動層が形成されている反応槽2において、被処理気体に含まれる二酸化炭素の除去を連続的に行うことが可能となる。
その結果、被処理気体に対する二酸化炭素の除去率を向上させることが可能となるとともに、製鉄所等の大規模な設備に対して、被処理気体に対する二酸化炭素の除去を連続的に行うことが可能となる。
【0043】
(3)本実施形態の二酸化炭素除去装置1では、反応槽2内の下部に、下部から導入された被処理気体を反応槽2の内部で分散させる分散板12を設けている。
このため、分散板12により、反応槽2の下部から導入された被処理気体を、反応槽2の内部で分散させることが可能となり、反応槽2の鉛直方向下方から導入された被処理気体を、反応槽2の内部へ、偏りが少ない状態で移動させることが可能となる。
その結果、反応槽2の鉛直方向下方から導入された被処理気体を、反応槽2の内部において満遍なく分散させることが可能となるため、担持体投入手段4により間欠的に投入された多数の二酸化炭素担持体22による二酸化炭素の除去を、効率良く行うことが可能となる。
【0044】
(応用例)
以下、本実施形態の応用例を列挙する。
(1)本実施形態の二酸化炭素除去装置1では、反応槽2内の下部に分散板12を設けた構成としたが、これに限定するものではなく、反応槽2に分散板12を設けていない構成としてもよい。
(2)本実施形態の二酸化炭素除去装置1では、分散板12の構成を、図2中に示すように、中心及び中心付近に開口部を有する円錐状のメッシュにより形成されている構成としたが、分散板12の構成は、これに限定するものではない。すなわち、例えば、図3中に示すように、中心及び中心付近に開口部を有する円錐状のメッシュを複数枚(図中では二枚)重ねてもよい。また、特に図示しないが、例えば、複数枚重ねた円錐状のメッシュ間に、反応槽2の鉛直方向下方から導入された被処理気体の流れを調節するための、開口部を有する部材を介装してもよい。
【0045】
(実施例)
以下、図1及び図2を参照しつつ、本発明例及び比較例の二酸化炭素除去方法を用いて、本発明例の二酸化炭素除去方法が奏する効果を検証した結果について説明する。
本発明例の二酸化炭素除去方法は、上述した第一実施形態と同様、二酸化炭素担持体22による流動層が形成された反応槽2へ、二酸化炭素担持体22を間欠的に投入することにより、被処理気体から二酸化炭素を連続的に除去する方法である。
【0046】
一方、比較例の二酸化炭素除去方法は、二酸化炭素を固定化する反応が生じる材料を充填した層(反応剤充填層)に対し、二酸化炭素を含んだ被処理気体を通過させて、被処理気体から二酸化炭素を除去する方法である。
ここで、被処理気体としては、各種の副生ガス(Bガス、Cガス、SFガス、LDガス、サーモセレクト炉ガス、Mガス、燃焼後の排ガス等)を用いる。
また、被処理気体を発生する設備は、製鉄所等の工場Fや火力発電機に用いる燃焼炉等の大規模な設備や、上述した各種の副生ガスを移送する配管(Bガス配管、Cガス配管、SFガス配管、LDガス配管、サーモセレクト炉ガス配管、Mガス配管等)等とする。
【0047】
そして、本発明例及び比較例の二酸化炭素除去方法に対して、被処理気体に対する二酸化炭素の除去を行い、単位時間当たりの処理量を比較した結果、本発明例の二酸化炭素除去方法では、比較例の二酸化炭素除去方法よりも、単位時間当たりの処理量が大きいことが確認された。
【符号の説明】
【0048】
1 二酸化炭素除去装置
2 反応槽
4 担持体投入手段
6 担持体回収部
8 二酸化炭素分離手段
10 被処理気体導入部
12 分散板
14 担持体投入孔
16 担持体排出孔
18 処理済気体排出ダクト
20 流速変化バルブ
22 二酸化炭素担持体
24 担持体誘導管
26 沈降分離槽
28 回収液
F 工場
P 配管

【特許請求の範囲】
【請求項1】
被処理気体から二酸化炭素を除去する二酸化炭素除去装置であって、
前記二酸化炭素を吸着する二酸化炭素担持体が収容され且つ下部から導入された前記被処理気体により前記収容された二酸化炭素担持体の流動層が形成される反応槽と、
前記二酸化炭素担持体を前記反応槽の上部から間欠的に投入する担持体投入手段と、
前記二酸化炭素を吸着した前記二酸化炭素担持体を前記反応槽の下部から回収する担持体回収部と、
前記担持体回収部が回収した二酸化炭素担持体から前記二酸化炭素を分離させる二酸化炭素分離手段と、を備え、
前記担持体投入手段は、前記二酸化炭素分離手段で前記二酸化炭素を分離させた二酸化炭素担持体を、前記流動層が形成された前記反応槽へ間欠的に投入し、
前記担持体回収部は、前記反応槽の下部と連通し且つ液体が充填された担持体誘導管を備え、
前記担持体誘導管は、一方の端部から前記二酸化炭素を吸着した前記二酸化炭素担持体を前記液体内に回収し、他方の端部から前記液体内に回収した前記二酸化炭素担持体を排出することを特徴とする二酸化炭素除去装置。
【請求項2】
前記反応槽内の下部に、下部から導入された前記被処理気体を前記反応槽の内部で分散させる分散板を設けたことを特徴とする請求項1に記載した二酸化炭素除去装置。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate


【公開番号】特開2012−71246(P2012−71246A)
【公開日】平成24年4月12日(2012.4.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−217424(P2010−217424)
【出願日】平成22年9月28日(2010.9.28)
【出願人】(000001258)JFEスチール株式会社 (8,589)
【Fターム(参考)】