説明

二酸化珪素からのソーラーグレードシリコンの製造

本発明は、ソーラーグレードシリコンとしての使用に好適な純粋のシリコンを製造するための完全な方法であって、1つ以上の純粋炭素源を使用して精製酸化珪素を還元することを含み、水相に溶解された酸化珪素として精製された該精製酸化珪素が、酸化珪素に対して300ppm以下、好ましくは100ppm未満、特に好ましくは50ppm未満、本発明によれば10ppm未満の他の金属の他の多価金属または金属酸化物の含有量を有し、有利にはアルカリ性条件下でのゲル形成によって得られる方法に関する。本発明は、また、活性化剤を含む配合物、およびシリコンを製造するための精製酸化珪素と活性化剤との併用に関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ソーラーシリコンとして好適な純粋のシリコンを製造するための総合的方法であって、精製酸化珪素を1つ以上の純粋炭素源で還元することを含み、水相に実質的に溶解された酸化珪素として精製された該精製酸化珪素が、酸化珪素に基づいて、300ppm以下、好ましくは100ppm未満、より好ましくは50ppm未満、本発明によれば10ppm未満の他の金属の他の多価金属または金属酸化物の含有量を有し、有利にはアルカリ性条件下でのゲル形成によって得られる方法に関する。本発明は、さらに、活性化剤を含む配合物、およびシリコンを製造するための精製酸化珪素と活性化剤との併用に関する。
【0002】
世界の発電における光起電力電池の割合は、数年間で継続的に増加している。市場占有率をさらに拡大することを可能にするために、光起電力電池の生産コストを下げ、その効率を高めることが不可欠である。
【0003】
光起電力電池の生産における重要なコスト要因は、高純度シリコン(ソーラーシリコン)のコストである。これは、工業規模では、通常50年以上前に開発されたシーメンス法によって製造される。この方法では、最初に、シリコンを流動床反応器にて300〜350℃で気体塩化水素と反応させてトリクロロシラン(シリコクロロホルム)を得る。複雑な蒸留工程の後、上記反応を逆にして、水素の存在下で、加熱された超高純度シリコンロッドで1000〜1200℃にてトリクロロシランを再び熱分解させる。珪素元素がロッド上まで成長し、放出された塩化水素が回路にリサイクルされる。得られた副産物は、トリクロロシランに変換されてプロセスにリサイクルされるか、または酸素炎で燃焼してヒュームドシリカになる四塩化珪素である。
【0004】
上記方法の無塩素代替法は、同様に元素から得ることができ、加熱面上で、または流動床反応器を通過しているときに精製工程により再び分解するモノシランの分解である。その例をWO2005/118474A1に見いだすことができる。
【0005】
シリコンを製造する別の既知の方法は、以下の反応式(ウルマンの工業化学辞典、第A23巻、721〜748頁、第5版、1993 VCH Weinheim)に従って炭素の存在下で二酸化珪素を還元することである。
【0006】
SiO2+2C→Si+2CO
【0007】
この反応が進行できるように、例えば光アーク炉で達成される好ましくは1700℃を超える非常に高い温度が必要とされる。高温にもかかわらず、この反応は、非常にゆっくりと開始し、その後も低速度で進行する。それに伴う長い反応時間により、その方法は、エネルギー集約的かつ高コストである。
【0008】
シリコンがソーラー用途に使用される場合は、製造されたシリコンは、その純度について特に高度な要求を満たさなければならない。指定の使用分野では、mg/kg(ppmの範囲)、μg/kg(ppb〜pptの範囲)の出発化合物の汚染でも破壊的である。
【0009】
周期表の第IIIおよびV族の元素は、それらの電子特性により特に破壊的であるため、シリコンにおける汚染の限界は、これらの元素については特に低い。例えば、五価リンおよびヒ素については、n型半導体として、それらが引き起こす、製造されたシリコンのドーピングが問題になる。三価ホウ素も同様に、p型半導体が得られるように、製造されたシリコンの望ましくないドーピングを招く。例えば、99.999%(ファイブナイン)または99.9999%(シックスナイン)の純度を有するソーラーグレードシリコン(Sisg)が存在する。半導体を製造するために好適なシリコン(電子グレードシリコン、Sieg)は、さらにより高い純度を必要とする。これらの理由により、酸化珪素と炭素との反応による金属シリコンでも、シリコン(SisgまたはSieg)を製造するためのハロシランにおける三塩化ホウ素などの同伴ハロゲン化化合物による後続の複雑な精製工程を最小限にするために高度な純度要求を満たす必要がある。シリコン溶融物および固相におけるホウ素は、0.8の分配係数を有するため、帯域溶融によってシリコンから除去するのが実質的に不可能であるため、ホウ素含有化合物による汚染によって特別な困難さがもたらされる。
【0010】
酸化珪素からシリコンを製造するための方法が、先行技術から一般的に知られている。例えば、DE2945141C2には、SiO2で構成された多孔性ガラス体の光アークでの還元が記載されている。還元に必要とされる炭素粒子を多孔性ガラス体に挿入することができる。開示されている方法によって得られたシリコンは、1ppm未満のホウ素含有量で、半導体部品を製造するのに好適である。DE3310828A1では、固体アルミニウムによるハロゲン化シランの分解を介する方法が採用されている。これは、低ホウ素含有量の達成を可能にするが、得られたシリコンにおけるアルミニウムの含有量が増大し、形成される塩化アルミニウムの電解リサイクルが必要になるため、プロセスのエネルギー需要が大きくなる。
【0011】
DE3013319には、二酸化珪素およびカーボンブラックなどの炭素含有還元剤から進行する、特定の純度のシリコンを製造するための方法が、最大ホウ素およびリン含有量の基準とともに開示されている。炭素含有還元剤は、デンプンなどの高純度結合剤とともにタブレットの形で使用された。
【0012】
WO2007/106860A1には、無ホウ素精製珪酸ナトリウムを水相で得るために、珪酸ナトリウムを水相でイオン交換体に通してホウ素を除去する、シリコンを製造するための方法が開示されている。続いて、二酸化珪素を精製水相から沈殿させる。この方法には、主としてホウ素およびリン不純物しか水ガラスから除去されないという短所がある。これは、十分な純度のソーラーシリコンを得るために、特に、金属不純物を除去することも必要であるためである。この目的のために、WO2007/106860A1には、その方法にさらなるイオン交換柱を使用することが提案されている。しかし、これは、低い空時収量で非常に複雑かつ高コストのプロセスをもたらす。
【0013】
太陽電池に好適な品質の製造用シリコンを提供するために、一般には、少なくとも99.99質量%の純度を有する二酸化珪素を使用することが必要である。ホウ素、リンなどの不純物の濃度は、1ppmを超えるべきでない。高品質石英などの天然資源を高純度の二酸化珪素出発材料として使用することが可能であるが、その天然という限界により、それら、ごく限られた程度でしか工業大量生産に利用できない。さらに経済的観点から調達のコストが高すぎる。上記方法における共通の要因は、それらが非常に複雑および/またはエネルギー集約的であるため、ソーラーシリコンを製造するためのより安価でより効果的な方法が強く要求される。
【0014】
したがって、容易に入手可能で安価な珪酸塩から高純度二酸化珪素を製造する必要がある。二酸化珪素砂または長石などの珪素含有材料に融剤を添加し、該混合物を溶融させる既知の方法がある。繊維状珪酸塩ガラスを溶融物から引き出し、酸を用いて浸出させて、粉状多孔性二酸化珪素(SiO2)を形成する(DE3123009)。浸出によって高純度二酸化珪素を製造するために、ガラス材料を、容易に浸出させることができるものに限定し、さらに酸化アルミニウムおよびアルカリ土類金属塩をガラス成分として二酸化珪素に添加する必要がある。深刻な欠点は、二酸化珪素を除いて、後に金属を除去する必要があることである。
【0015】
(一般には水ガラスまたは可溶性珪酸塩と呼ばれる)アルカリ金属珪酸塩と酸とを反応させることによって二酸化珪素ゲルを得る既知の方法も存在する(例えば、J.G.Vail、「Soluble Silicates」(ACSモノグラフシリーズ)、Reinhold、New York、1952、第2巻、549頁参照)。このシリカゲルは、概して、約99.5質量%の純度のSiO2をもたらし、それぞれの場合において、ホウ素、リン、鉄および/またはアルミニウムなどの不純物の含有量が、この二酸化珪素をソーラーシリコンの製造に使用するには大きすぎる。
【0016】
本発明の目的は、工業規模で経済的に実行可能であり、有利には、通常の未精製珪酸塩または二酸化珪素を出発材料として使用して実施することができる、ソーラーシリコンを製造するための、かつ精製二酸化珪素を製造するための総合的な方法を提供する。さらなる目的は、明細書の文脈全体から明らかである。
【0017】
意外にも、ソーラーシリコンとして好適であるか、またはソーラーシリコンを製造するのに好適である純粋のシリコンを製造するための経済的に実行可能な方法を、精製二酸化珪素を1つ以上の純粋炭素源で還元することによって得ることができ、該精製二酸化珪素は、水相に実質的に溶解された二酸化珪素として精製されており、酸化珪素に基づいて、300ppm未満、好ましくは100ppm未満、より好ましくは50ppm未満、最も好ましくは10ppm未満の他の多価金属の含有量を有することが判明した。好ましくは、炭化珪素を特に以下に規定される量でシリコンへの還元のために添加した。
【0018】
その目的は、以下の説明、実施例、図面および請求項の範囲において定義される純粋のシリコンを製造するための総合的な方法、ならびにそこに詳述される処理の部分工程によって達成される。
【0019】
したがって、本発明は、純粋のシリコンを製造するための方法であって、水相に実質的に溶解された酸化珪素として精製されており、酸化珪素に基づいて、好ましくは100ppm未満、より好ましくは50ppm未満、最も好ましくは10ppm未満の他の多価金属の含有量を有する精製酸化珪素を1つ以上の純粋炭素源で還元することを含む方法を提供する。
【0020】
さらなる実施形態は、酸化珪素の水性精製が、酸化珪素水溶液をイオン交換体と接触させる少なくとも1つの処理工程を含む上記方法を含む。好適な実施形態において、酸化珪素水溶液を少なくとも陰イオンおよび/または陽イオン交換体によって接触させる。
【0021】
本発明は、さらに、水相に実質的に溶解された二酸化珪素として精製されており、酸化珪素に基づいて、好ましくは100ppm未満、より好ましくは50ppm未満、最も好ましくは10ppm未満の他の多価金属の含有量を有する精製酸化珪素を酸化珪素溶液から、ゲル形成もしくは噴霧乾燥によって、または酸化珪素溶液を10質量%以上のSiO2の濃度まで濃縮し、続いて酸性化剤と接触させることによって得る方法を提供する。本実施形態の変型において、精製酸化珪素は、特に、アンモニアを添加した後に、場合によって1500℃までの温度、特に約1400℃で焼成することによるゲル形成によって製造されるか、または得られる。
【0022】
本発明は、同様に、純粋のシリコンを製造するための方法であって、水相に実質的に溶解された酸化珪素として精製されており、金属に関しては、酸化珪素に基づいて、300ppm未満、好ましくは100ppm未満、より好ましくは50ppm未満、最も好ましくは10ppm未満の特に多価金属酸化物の形の他の金属の含有量を有する精製酸化珪素を1つ以上の純粋炭素源で還元することを含み、水相に溶解された酸化珪素、特に、二酸化珪素の含有量が2〜6質量%のアルカリ金属珪酸塩などの珪酸塩を珪酸塩強酸性陽イオン交換体に通し、0〜4のpHで得て、精製酸化珪素をゲル形成および/または噴霧乾燥によって得る方法を提供する。すべての処理工程について、さらなる汚染を最小限に抑えるために不活性ガス雰囲気下での作業が好ましい。アルゴン雰囲気下で処理またはその部分工程を実施することが好ましい。アンモニアを添加することによってゲルを形成する場合は、下流焼成工程が好ましい。
【0023】
本発明は、ソーラーシリコンまたはソーラーシリコンの製造に好適なシリコンが得られるように実施される、上記実施形態に定義した方法を提供する。
【0024】
本発明は、さらに、精製酸化珪素、特に精製二酸化珪素の還元を1つ以上の純粋炭素源によって、かつ活性化剤および/または炭素源としての炭化珪素の添加によって実施する、以上に定義した実施形態による方法を提供する。
【0025】
本発明は、また、活性化剤、好ましくは結合剤としての炭化珪素、精製酸化珪素および/または少なくとも1つの純粋炭素源を含む配合物、ならびに該配合物を還元工程で個別に添加する、純粋のシリコンを製造するための方法を提供する。
【0026】
本発明は、また、炭水化物を消泡剤としての酸化珪素、好ましくは高純度二酸化珪素の存在下で熱分解し、このようにして、炭素源として必要な炭素の少なくとも一部を得る少なくとも1つの工程を含む方法を提供する。ここでは、熱分解の前に、少なくとも1つのイオン交換体と接触させることによって、炭水化物、より好ましくは炭水化物の水溶液を精製することが好ましい。同様に好ましくは、対応する成形体、例えば煉炭が熱分解されるように、熱分解の前に、炭水化物、好ましくは炭水化物の水溶液、および酸化珪素、好ましくは高純度酸化珪素に成形処理を施す。
【0027】
定義
純粋または精製または高純度シリコンは、
a.5ppm以下、または5ppm〜0.0001pptの範囲、特に3ppm〜0.0001pptの範囲、好ましくは0.8ppm〜0.0001pptの範囲、より好ましくは0.6ppm〜0.0001pptの範囲、さらに良好には0.1ppm〜0.0001pptの範囲、最も好ましくは0.01ppm〜0.0001pptの範囲、さらにより好ましくは1ppb〜0.0001pptのアルミニウム、
b.10ppm未満〜0.0001ppt、特に5ppm〜0.0001pptの範囲、好ましくは3ppm〜0.0001pptの範囲、またはより好ましくは10ppb〜0.0001pptの範囲、さらにより好ましくは1ppb〜0.0001pptの範囲のホウ素、
c.2ppm以下、好ましくは2ppm〜0.0001pptの範囲、特に0.3ppm〜0.0001pptの範囲、好ましくは0.01ppm〜0.0001pptの範囲、より好ましくは1ppb〜0.0001pptの範囲のカルシウム、
d.20ppm以下、好ましくは10ppm〜0.0001pptの範囲、特に0.6ppm〜0.0001pptの範囲、好ましくは0.05ppm〜0.0001pptの範囲、より好ましくは0.01ppm〜0.0001pptの範囲、最も好ましくは1ppb〜0.0001pptの鉄、
e.10ppm以下、好ましくは5ppm〜0.0001pptの範囲、特に0.5ppm〜0.0001pptの範囲、好ましくは0.1ppm〜0.0001pptの範囲、より好ましくは0.01ppm〜0.0001pptの範囲、最も好ましくは1ppb〜0.0001pptのニッケル、
f.10ppm未満〜0.0001ppt、好ましくは5ppm〜0.0001ppt、特に3ppm未満〜0.0001ppt、好ましくは10ppb〜0.0001pptの範囲、最も好ましくは1ppb〜0.0001pptの範囲のリン、
g.2ppm以下、好ましくは1ppm以下〜0.0001ppt、特に0.6ppm〜0.0001pptの範囲、好ましくは0.1ppm〜0.0001pptの範囲、より好ましくは0.01ppm〜0.0001pptの範囲、最も好ましくは1ppb〜0.0001pptのチタン、
h.3ppm以下、好ましくは1ppm以下〜0.0001ppt、特に0.3ppm〜0.0001pptの範囲、好ましくは0.1ppm〜0.0001pptの範囲、より好ましくは0.01ppm〜0.0001pptの範囲、最も好ましくは1ppb〜0.0001pptの範囲の亜鉛の汚染プロファイルを有し、その目標が各元素の検出限界の領域における純度であるシリコンを指すものと理解される。前記元素による全汚染量は、金属の直接的な処理生成物としてシリコン中合計で100ppm質量未満、好ましくは10ppm質量未満、より好ましくは5質量ppm未満であるべきである。
【0028】
得られた純粋のシリコンは、より好ましくはソーラーシリコンとして好適である。適切には、特に純粋のシリコンを得るために、還元の後に、得られたシリコンの制御固化を行うことができる。
【0029】
精製または高純度酸化珪素、特に二酸化珪素は、
a.アルミニウム含有量が、5ppm以下または5ppm〜0.0001pptの範囲、特に3ppm〜0.0001pptの範囲、好ましくは0.8ppm〜0.0001pptの範囲、特に好ましくは0.6ppm〜0.0001pptの範囲、さらに良好には0.1ppm〜0.0001pptの範囲、最も好ましくは0.01ppm〜0.0001pptの範囲、さらにより好ましくは1ppb〜0.0001pptであり、
b.ホウ素含有量が、10ppm未満〜0.0001ppt、特に5ppm〜0.0001pptの範囲、好ましくは3ppm〜0.0001pptの範囲、またはより好ましくは10ppb〜0.0001pptの範囲、さらにより好ましくは1ppb〜0.0001pptの範囲であり、
c.カルシウム含有量が、2ppm以下、好ましくは2ppm〜0.0001pptの範囲、特に0.3ppm〜0.0001pptの範囲、好ましくは0.01ppm〜0.0001pptの範囲、より好ましくは1ppb〜0.0001pptの範囲であり、
d.鉄含有量が、20ppm以下、好ましくは10ppm〜0.0001pptの範囲、特に0.6ppm〜0.0001pptの範囲、好ましくは0.05ppm〜0.0001pptの範囲、より好ましくは0.01ppm〜0.0001pptの範囲、最も好ましくは1ppb〜0.0001pptであり、
e.ニッケル含有量が、10ppm以下、好ましくは5ppm〜0.0001pptの範囲、特に0.5ppm〜0.0001pptの範囲、好ましくは0.1ppm〜0.0001pptの範囲、より好ましくは0.01ppm〜0.0001pptの範囲、最も好ましくは1ppb〜0.0001pptの範囲であり、
f.リン含有量が、10ppm未満〜0.0001ppt、好ましくは5ppm〜0.0001pptの範囲、特に3ppm未満〜0.0001ppt、好ましくは10ppb〜0.0001pptの範囲、最も好ましくは1ppb〜0.0001pptの範囲であり、
g.チタン含有量が、2ppm以下、好ましくは1ppm以下〜0.0001ppt、特に0.6ppm〜0.0001pptの範囲、好ましくは0.1ppm〜0.0001pptの範囲、より好ましくは0.01ppm〜0.0001pptの範囲、最も好ましくは1ppb〜0.0001pptの範囲であり、
h.亜鉛含有量が、3ppm以下、好ましくは1ppm以下〜0.0001ppt、特に0.3ppm〜0.0001pptの範囲、好ましくは0.1ppm〜0.0001pptの範囲、より好ましくは0.01ppm〜0.0001pptの範囲、最も好ましくは1ppb〜0.0001pptであること、および上記不純物とナトリウムおよびカリウムとの合計が、5ppm未満、好ましくは4ppm未満、より好ましくは3ppm未満、さらにより好ましくは0.5〜3ppm、特に好ましくは1ppm〜3ppm、特に、ナトリウムおよびカリウムと併せて10ppm未満であることを特徴とする。
【0030】
各元素について、目標は、検出限界の範囲の純度であってよい。
【0031】
本発明によれば、水相に存在する活性シリカは、実質的にプロトン化されている。すなわち、他の金属陽イオンなどの金属化合物を実質的に含まない。
【0032】
水相に溶解された酸化珪素、特に二酸化珪素は、本発明によれば、珪酸塩水溶液、特にアルカリ金属珪酸塩溶液である。
【0033】
珪酸塩水溶液は、水ガラスであり、商業的に購入されるか、または二酸化珪素および炭酸ナトリウムから製造されるか、または例えば、高温で二酸化珪素および水酸化ナトリウムおよび水から熱水法を介して直接製造され得る。熱水法は、より透明な沈殿二酸化珪素をもたらすことができるため、ソーダ法より好適であり得る。熱水法の1つの短所は、得られる比率の範囲が限定されることである。例えば、SiO2とN2Oとの比率が2までであり、好適な比率は3〜4である。熱水法で処理した後の水ガラスを、一般には、沈殿前に濃縮しなければならない。一般に、当業者は、水ガラスの製造そのものを認識している。
【0034】
1つの代替法において、アルカリ金属水ガラス、特にナトリウム水ガラスを場合によって濾過し、その後、必要であれば濃縮または希釈する。固体の不溶構成成分を除去するための水ガラスまたは溶存珪酸塩の水溶液の濾過を、当業者に既知の方法により、当業者に既知の装置を用いて実施することができる。
【0035】
使用する水は、脱塩水であることは自明である。それは、金属化合物を除去するために、好ましくは数回処理されている。水ガラスは、ホウ素またはホウ素化合物を錯化する固定化合物と接触する前に、好ましくは、約1〜30質量%、好ましくは1〜20質量%、より好ましくは2〜10質量%、最も好ましくは2〜6質量%の二酸化珪素含有量を有する。
【0036】
本発明による方法において、使用される純粋炭素源は、場合によって混合物の形の1つ以上の純粋炭素源、天然由来の有機化合物、炭水化物、グラファイト(活性化炭素)、コークス、石炭、カーボンブラック、サーマルブラック、熱分解炭水化物、特に熱分解糖である。特にペレットの形の炭素源を、例えば、高温塩酸溶液を用いた処理によって精製することができる。また、活性化剤を本発明による方法に加えることができる。活性化剤は、反応開始剤、反応促進剤の目的、あるいは炭素源の目的を果たすことができる。活性化剤は、純粋の炭化珪素、珪素浸透炭化珪素、あるいは炭素および/または酸化珪素マトリックスを有する純粋の炭化珪素、例えば、炭素繊維を含む炭化珪素である。
【0037】
本発明によれば、少なくとも1つの炭水化物を場合によって含む純粋炭素源、または炭素源の混合物は、ホウ素が2[μg/g]未満であり、リンが0.5[μg/g]未満であり、アルミニウムが2[μg/g]未満、好ましくは1[μg/g]以下であり、特に鉄が60[μg/g]未満であり、好ましくは鉄の含有量が10[μg/g]未満、より好ましくは5[μg/g]未満である不純物プロファイルを有する。全体として、本発明による目標は、ホウ素、リン、アルミニウムおよび/またはヒ素などの不純物の含有量が、それぞれの場合において技術的に可能な検出限界を下回る純粋炭素源を使用することである。
【0038】
少なくとも1つの炭水化物を場合によって含む純粋またはさらなる炭素源、あるいは炭素源の混合物は、以下の好ましくは、ホウ素、リンおよびアルミニウム、ならびに恐らくは鉄、ナトリウム、カリウム、ニッケルおよび/またはクロムの汚染プロファイルを有する。ホウ素(B)による汚染は、特に5〜0.000001μg/g、好ましくは3〜0.00001μg/g、より好ましくは2〜0.00001μg/g、本発明によれば2未満〜0.00001μg/gの範囲である。リン(P)による汚染は、特に5〜0.000001μg/g、好ましくは3〜0.00001μg/g、より好ましくは1〜0.00001μg/g、本発明によれば0.5未満〜0.00001μg/gの範囲である。鉄(Fe)による汚染は、100〜0.000001μg/gの範囲、特に55〜0.00001μg/g、好ましくは2〜0.00001μg/g、より好ましくは1未満〜0.00001μg/g、本発明によれば0.5未満〜0.00001μg/gの範囲である。ナトリウム(Na)による汚染は、特に20〜0.000001μg/g、好ましくは15〜0.00001μg/g、より好ましくは12〜0.00001μg/g、本発明によれば10未満〜0.00001μg/gの範囲である。カリウム(K)による汚染は、特に30〜0.000001μg/g、好ましくは25〜0.00001μg/g、より好ましくは20未満〜0.00001μg/g、本発明によれば16未満〜0.00001μg/gの範囲である。
【0039】
アルミニウム(Al)による汚染は、特に4〜0.000001μg/g、好ましくは3〜0.00001μg/g、より好ましくは2未満〜0.00001μg/g、本発明によれば1.5未満〜0.00001μg/gの範囲である。ニッケル(Ni)による汚染は、特に4〜0.000001μg/g、好ましくは3〜0.00001μg/g、より好ましくは2未満〜0.00001μg/g、本発明によれば1.5未満〜0.00001μg/gの範囲である。クロム(Cr)による汚染は、特に4〜0.000001μg/g、好ましくは3〜0.00001μg/g、より好ましくは2未満〜0.00001μg/g、本発明によれば1未満〜0.00001μg/gの範囲である。特定の元素による最小限の汚染が好ましく、10ppbまたは1ppb未満が特に好ましい。
【0040】
代替的に、純粋炭素源は活性化剤からなる。すなわち、本発明による方法に使用される唯一の炭素源が活性化剤である。この方法は、この処理工程、すなわちシリコンの還元において1モル当量の一酸化炭素ガスが節約されるため、充填組成物をより高密度にする。したがって、活性剤を、酸化珪素に対して等モル量までの触媒量で該方法に使用することができる。
【0041】
さらなる代替法によれば、活性化剤を、グラファイト、カーボンブラック、炭水化物、炭素などの純粋炭素源に対して1000:1〜1:1000の質量比で使用することができる。炭素源を1:100〜100:1、より好ましくは1:100〜1:9の質量比で使用することが好ましい。
【0042】
純粋または高純度炭化珪素は、炭化珪素の他に、Siyz(y=1.0〜20およびz=0.1〜2.0)、特に炭素マトリックスおよび/またはSiO2マトリックスもしくはSiyzマトリックス(y=1.0〜20およびz=0.1〜2.0)などの炭素および酸化珪素、ならびに恐らくは少量の珪素を含むこともできる炭化珪素と解釈される。高純度炭化珪素は、好ましくは、二酸化珪素を含む不活性化層を有する対応する炭化珪素と解釈される。また、高純度炭化珪素は、炭化珪素、炭素、酸化珪素および恐らくは少量の珪素を含むか、またはそれらからなる高純度組成物であると考えられ、高純度炭化珪素または高純度組成物は、ホウ素が100ppm未満、特に10ppm〜0.001pptの範囲であり、リンが200ppm未満、特に20ppm〜0.001pptの範囲であるホウ素およびリンの不純物プロファイルを含み、特に、それは、ホウ素、リン、ヒ素、アルミニウム、鉄、ナトリウム、カリウム、ニッケル、クロムが、高純度完全組成物または高純度炭化珪素に対して100質量ppm未満、好ましくは10質量ppm未満、特に好ましくは5質量ppm未満である全不純物プロファイルを有する。
【0043】
ホウ素、リン、ヒ素、アルミニウム、鉄、ナトリウム、カリウム、ニッケル、クロムによる純粋の、好ましくは高純度の炭化珪素の汚染プロファイルは、各元素が、好ましくは5ppm未満〜0.01ppt(質量)であり、高純度炭化珪素については特に2.5ppm〜0.1pptである。より好ましくは、炭素および/またはSiyzマトリックスを含む、または含まない、本発明による方法によって得られる炭化珪素は、
ホウ素含有量が、100ppm未満、好ましくは10ppm〜0.001ppt、より好ましくは5ppm〜0.001pptまたは0.5ppm未満〜0.001pptの範囲であり、かつ/または
リン含有量が、200ppm未満、好ましくは20ppm〜0.001ppt、より好ましくは5ppm〜0.001pptまたは0.5ppm未満〜0.001pptの範囲であり、かつ/または
ナトリウム含有量が、100ppm未満、好ましくは10ppm〜0.001ppt、より好ましくは5ppm〜0.001pptまたは1ppm未満〜0.001pptの範囲であり、かつ/または
アルミニウム含有量が、100ppm未満、好ましくは10ppm〜0.001ppt、より好ましくは5ppm〜0.001pptまたは1ppm未満〜0.001pptの範囲であり、かつ/または
鉄含有量が、100ppm未満、好ましくは10ppm〜0.001ppt、より好ましくは5ppm〜0.001pptまたは0.5ppm未満〜0.001pptの範囲であり、かつ/または
クロム含有量が、100ppm未満、好ましくは10ppm〜0.001ppt、より好ましくは5ppm〜0.001pptまたは0.5ppm未満〜0.001pptの範囲であり、かつ/または
ニッケル含有量が、100ppm未満、好ましくは10ppm〜0.001ppt、より好ましくは5ppm〜0.001pptまたは0.5ppm未満〜0.001pptの範囲であり、かつ/または
カリウム含有量が、100ppm未満、好ましくは10ppm〜0.001ppt、より好ましくは5ppm〜0.001pptまたは0.5ppm未満〜0.001pptの範囲であり、かつ/または
硫黄含有量が、100ppm未満、好ましくは10ppm〜0.001ppt、より好ましくは5ppm〜0.001pptまたは2ppm未満〜0.001pptの範囲であり、かつ/または
バリウム含有量が、100ppm未満、好ましくは10ppm〜0.001ppt、より好ましくは5ppm〜0.001pptまたは3ppm未満〜0.001pptの範囲であり、かつ/または
亜鉛含有量が、100ppm未満、好ましくは10ppm〜0.001ppt、より好ましくは5ppm〜0.001pptまたは0.5ppm未満〜0.001pptの範囲であり、かつ/または
ジルコニウム含有量が、100ppm未満、好ましくは10ppm〜0.001ppt、より好ましくは5ppm〜0.001pptまたは0.5ppm未満〜0.001pptの範囲であり、かつ/または
チタン含有量が、100ppm未満、好ましくは10ppm〜0.001ppt、より好ましくは5ppm〜0.001pptまたは0.5ppm未満〜0.001pptの範囲であり、かつ/または
カルシウム含有量が、100ppm未満、好ましくは10ppm〜0.001ppt、より好ましくは5ppm〜0.001pptまたは0.5ppm未満〜0.001pptの範囲であり、特に、マグネシウム含有量が、100ppm未満、好ましくは10ppm〜0.001ppt、より好ましくは11ppm〜0.001pptの範囲であり、かつ/または銅含有量が、100ppm未満、好ましくは10ppm〜0.001pptの範囲、より好ましくは2ppm〜0.001pptの範囲であり、かつ/またはコバルト含有量が、100ppm未満、特に10ppm〜0.001pptの範囲、より好ましくは2ppm〜0.001pptの範囲であり、かつ/またはバナジウム含有量が、100ppm未満、特に10ppm〜0.001pptの範囲、好ましくは2ppm〜0.001pptの範囲であり、かつ/またはマンガン含有量が、100ppm未満、特に10ppm〜0.001pptの範囲、好ましくは2ppm〜0.001pptの範囲であり、かつ/または鉛含有量が、100ppm未満、特に20ppm〜0.001pptの範囲、好ましくは10ppm〜0.001pptの範囲、より好ましくは5ppm〜0.001pptの範囲である。
【0044】
特に好適な純粋または高純度の炭化珪素または高純度組成物は、炭化珪素、炭素、酸化珪素および恐らくは少量の珪素を含むか、またはそれらからなり、高純度炭化珪素または高純度組成物は、特に、ホウ素、リン、ヒ素、アルミニウム、鉄、ナトリウム、カリウム、ニッケル、クロム、硫黄、バリウム、ジルコニウム、亜鉛、チタン、カルシウム、マグネシウム、銅、クロム、コバルト、亜鉛、バナジウム、マンガンおよび/または鉛が、高純度完全組成物または高純度炭化珪素に対して、純粋の炭化珪素では100ppm未満、高純度炭化珪素では好ましくは20ppm未満〜0.001ppt、より好ましくは10ppm〜0.001pptの範囲である汚染プロファイルを有する。
【0045】
総合的方法の説明
本発明によれば、純粋のシリコンを製造するための方法であって、水相に実質的に溶解された酸化珪素として、特に他の金属を含まないように精製されており、酸化珪素に基づいて、金属に関して300ppm以下、好ましくは100ppm未満、より好ましくは50ppm未満、より好ましくは10ppm未満の他の多価金属の含有量を有する精製酸化珪素、好ましくは二酸化珪素を1つ以上の純粋炭素源で還元することを含む方法。
【0046】
本発明によれば、水相に実質的に溶解された酸化珪素の精製は、好ましくは、以下の工程a)、b)、c)、d)およびe)を含む:
a)水相、特にアルカリ金属珪酸塩および/またはアルカリ土類金属珪酸塩溶液またはそれらの混合物、特に、SiO2の含有量が1〜30質量%、好ましくは1〜20質量%、より好ましくは2〜10質量%、最も好ましくは2〜6質量%である水相に溶解された珪酸塩を調製し、
可溶性アルカリ土類金属および/または遷移金属塩、特に、カルシウム、マグネシウムおよび/または遷移金属塩を場合によって添加して、リンまたはリン化合物を沈殿させ、
次いで水相を場合によって濾過して、溶解しにくいアルカリ土類金属および/または遷移金属塩または他の溶解しにくい不純物を除去する。この後に、場合によって、水相と、ホウ素またはホウ素化合物を錯化する固定化合物とを接触させることができる。ホウ素またはホウ素化合物を錯化する化合物は、カラム内で樹脂上に固定して使用できる電子供与体、例えばアミン、好ましくは樹脂上に固定されたn−メチルグルカミン、例えばAmberlite(登録商標)IRA−743−Aを含むことができる。次いで、
b)他の多価金属、特に二酸化珪素以外の金属酸化物をさらに含む水相を、2〜6質量%のSiO2の含有量に場合によって調整し、
c)カラム内で特に水素型の強酸性陽イオン交換樹脂、本発明によればAmberlite(登録商標)IR−120と、水相の温度を0℃〜60℃の範囲、好ましくは5〜50℃の範囲として水相における実質的にすべての他の金属イオンのイオン交換に十分な量で接触させ、
d)SiO2濃度が2〜6質量%であり、pHが0〜4である活性シリカの水相を得る。特に、
e)精製酸化珪素を、特に
a.2)工程d)による活性シリカの水相を酸性化剤と接触させることによって10質量%以上のSiO2の濃度まで濃縮することによって、得る。
【0047】
代替的に、工程e)における接触を、酸性化剤を珪酸塩溶液に添加すること、あるいは濃縮珪酸塩溶液を酸性化剤に添加することによって実施することができる。
【0048】
b.2)ゲル形成の実施後に、場合によって熱後処理および/または噴霧乾燥を行う。
【0049】
好ましくは、アンモニアを添加すること、または噴霧乾燥による、あるいは代替的には工程d)による水相を酸性化剤と接触させることによって10質量%以上のSiO2の濃度まで濃縮することによる、ゲル形成。ゲル形成を、好ましくは、アミンの添加、より好ましくはアンモニアの添加によって実施することができる。
【0050】
c.2)水相を噴霧乾燥するか、あるいは
本発明によれば、上記工程の実施後、特に乾燥または焼成のための熱処理後に精製酸化珪素を得る。酸化珪素、特に珪酸溶液の精製は、好ましくは前記工程からなる。
【0051】
純度がまだ不十分であれば、工程d.2)により、工程d)の直後にさらなる処理を行うことができる。工程d.2)によるさらなる処理は、好ましくは以下のように実施される。
【0052】
d.2)第1の工程1)において、強酸水溶液を、工程d)による活性シリカで構成された水相に、pHが0〜2.0になるように添加し、そのようにして得られた水相を0.5〜120時間にわたって0℃〜100℃に維持し、第2の工程2)において、得られた水相と、特にイオン交換柱としての水素型の強酸性陽イオン交換樹脂、好ましくはAmberlite(登録商標)IR120とを、水相の温度を0〜60℃、好ましくは5〜50℃の範囲として水相における実質的にすべての他の金属イオンのイオン交換に十分な量で接触させ、次いで第3の工程3)において、水相と、ヒドロキシル型の強塩基性陰イオン交換樹脂(Amberlite(登録商標)440 OHまたはAmberlite(R)IRA440)とを、水相の温度を0〜60℃、特に5〜50℃の範囲として、特にカラムの内部で水相における実質的にすべての陰イオンのイオン交換に十分な量で接触させ、次いで第4の工程4)において、活性シリカ以外の他の溶存物質を実質的に含まず、2〜6質量%のSiO2濃度および2〜5のpHを有する、得られた活性シリカの水相を得ることによるさらなる処理。
【0053】
処理工程d.2)工程1)において、使用される強酸は、塩酸、硝酸または硫酸などの無機酸である。この添加は、アルミニウムおよび鉄化合物を除去するために実施される。強酸は、水相が分解する前に、工程d)の後に得られた活性シリカ含有水溶液に添加される。したがって、本発明によれば、添加は、それが得られた直後に実施される。強酸の量は、得られた相のpHが0〜2の範囲、好ましくは0.5〜1.8の範囲であるという事実から導かれる。次いで、その相は、0〜120℃で0.5〜120時間にわたって熟成される。
【0054】
通過またはイオン交換体との接触の過程での特定の空間速度は、全面的に、使用されるカラムに左右される。それぞれの場合において、その速度は、相が再びカラムを出たときに実質的にすべてのイオンが相応に交換されるように調整される。
【0055】
工程4)で得られた活性シリカが所望の純度を有する場合は、それを工程a.3)、b.3)またはc.3)によってさらに処理することが可能である。特に、処理工程d.2)の第4の工程4)で得られた水相は、代替的に、以下の工程a.3)、b.3)またはc.3)の1つによってさらに処理される。
【0056】
a.3)処理工程d.2)の第4の工程4)による水相を、10質量%以上のSiO2濃度まで濃縮し、酸性化剤に添加するか、または酸性化剤を添加するか、あるいは酸性化剤を添加するか、または酸性化剤に添加することによって十分に濃縮する。酸性化剤は、好ましくは強酸である。
【0057】
b.3)ゲル形成を実施した後、場合によって熱後処理および/または噴霧乾燥を行う。ゲル形成を、好ましくは、アンモニアあるいはアミンを添加することによって実施することができる。熱後処理は、好ましくは、約1400℃の焼成を含む。あるいは
c.3)水相を噴霧乾燥する。
【0058】
処理工程4)により得られた活性シリカが所望の純度を有さないときは、それを以下のようにさらに処理する。
【0059】
d.3)第5の工程において、特に水相におけるKOHまたはNaOHの濃度が2〜20質量%である水性水酸化ナトリウムおよび/または水酸化カリウム相を活性シリカの水相に、使用するKOHまたはNaOHの純度が95質量%超、好ましくは99.9質量%、SiO2/M2Oのモル比が60〜200であり、Mが独立してナトリウムまたはカリウムであり、添加された水酸化物に由来し、SiO2が活性シリカの水相に由来し、得られた水相の温度も0〜60℃に維持され、SiO2濃度が2〜6質量%であり、pHが7〜9の活性シリカの安定化水相が維持されるように添加し、第6の工程6)において、活性シリカの安定化水相を原液として部分的または全面的に容器に加え、原液を70〜100℃に維持し、容器を標準圧力または減圧下で維持することができ、特に、先の部分工程d.3)工程5)によるさらなる活性シリカの安定化水相を、除去された水とほぼ同量で供給することによって、除去された水を計量導入して、SiO2濃度が30〜50質量%であり、コロイド二酸化珪素の粒径が10〜30nmである安定水性シリカゾルを形成し、第7の工程7)において、安定水性シリカゾルと、水素型の強酸性陽イオン交換樹脂、特にAmberlite(登録商標)IR120(硫酸基を含む酸性陽イオン交換体)とを0〜60℃にて、ゾルに存在する実質的にすべての金属イオンが交換される量で接触させ、続いて、得られた水相とヒドロキシル型の強塩基性陰イオン交換体(Amberlite(登録商標)440 OHまたはAmberlite(登録商標)IRA440)とを0〜60℃にて、酸化珪素以外の他の多価金属、特に金属酸化物を実質的に含まない水性酸性シリカゾルが第8の工程8)で得られる量で接触させ、ゲル形成を実施するさらなる処理。
【0060】
工程6)の容器は、酸抵抗性およびアルカリ抵抗性材料で構成され、それ自体がそこに存在する水相の汚染に寄与することはない。該容器は、好ましくは、減圧下の動作に好適である。工程6)において、安定化相を部分的または全面的に容器に移す。相の一部が容器に移される場合、これは、好ましくは、連続的またはバッチ式で工程5)から得られ、原液として使用される相の4分の1〜30分の1であってよい。工程5)による相を部分的に使用する場合は、原液の残りの部分を連続的またはバッチ式で供給することができる。水を原液から特に蒸留によって除去すること、および工程5)によるさらなる安定化水相を、水が系から除去される程度に添加することが好ましい。温度、水の蒸留、および工程5)によるさらなる安定化水相の添加は、好ましくは、この工程を5〜200時間後に終了できるように調整される。水を連続的に除去し、工程5)による水相を連続的に添加することが好ましい。
【0061】
使用するすべての陽イオン交換体ならびに陰イオン交換体は、通常のイオン交換体であってよく、該方法の各部分工程に使用され得るが、異なるイオン交換体を特定の部分工程に使用することもできる。
【0062】
ゲル形成を目的とするすべての工程、特に工程b.2)またはb.3)または後の工程d.3)工程8)では、ゲル形成は、好ましくは、アルカリ金属陽イオンを含まず、十分にクリーンであり、当業者に熟知されているアンモニアまたは別の化合物を添加することによって開始または加速される。考えられるさらなる化合物は、水相に可溶である有機アミンである。本発明によれば、ゲル形成は、0〜120℃の範囲、好ましくは0〜100℃の範囲の温度にて、特に0〜7の範囲のpH、好ましくはpH3〜7の範囲で実施される。
【0063】
ゾル形成は、好ましくは、7〜10.5、より好ましくは7.5〜10のpHで実施される。このようにして、安定ゾルを形成することができる。安定ゾルの形成の後に、場合によって後に焼成を伴う噴霧乾燥を行うことができる。代替的に、安定ゾルを直接焼成することができるが、ゾルを、好ましくは、特に炭水化物を含む純粋の炭素と混合し、さらなる精製SiO2を固体の形で場合によって添加し、特に配合し、熱分解および/または焼成する。
【0064】
より好ましくは、水性SiO2含有相を乾燥させる前に、特に、炭水化物および/またはより好ましくは活性化剤、例えば炭化珪素を含む純粋の炭水化物源をそれに添加することによって、精製酸化珪素、特に精製二酸化珪素を工程e)で得ることができる。この方法は、得られた配合物を、結合剤、例えば、以下のシロキサン、シラノール、アルコキシシランを場合によって添加して、成形および乾燥、あるいは熱分解および/または焼成することを可能にする。
【0065】
より好ましくは、同様に、ゲル形成の後に熱後処理、特に、900〜2000℃の範囲の温度での焼成を行い、その場合、焼成の前に場合によって噴霧乾燥を行うことができる。
【0066】
精製酸化珪素、好ましくは二酸化珪素を還元工程に十分に供給することができる。すなわち少なくとも1つの炭素源で珪素に変換することができる。しかし、代替的に、高純度炭素の製造における消泡剤としても進歩性を有する精製酸化珪素の一部を部分工程法に使用することも可能である。そのようにして得られた炭素を還元工程に使用することができる。この場合による部分工程法の詳細を以下に説明する。
【0067】
炭化珪素の製造にも進歩性を有する精製酸化珪素の一部を部分工程法に使用することも可能である。次に、この炭化珪素を還元工程において高純度酸化珪素と反応させるか、または還元工程で活性化剤として添加することができる。この場合による部分工程法を本明細書の後の箇所で説明する。
【0068】
好ましくは、純粋のシリコンを製造するための総合的方法において、精製酸化珪素を、例えば還元工程または場合による部分工程法の1つにおいて、少なくとも1つの純粋炭素源とともに配合および変換する。
【0069】
例えば、なお湿性の酸化珪素を純粋の炭水化物とともに配合し、押し出し、ペレット化し、顆粒化し、または煉炭化することができる。この配合物を乾燥させ、純粋のシリコンを製造するために還元工程に送るか、あるいは最初に先行する方法の部分工程に熱分解を利用しながら使用して高純度炭素を製造するか、あるいは代替的な方法の部分工程において、純粋の炭化珪素を製造するために熱分解および/または焼成に送ることができる。
【0070】
炭素マトリックスもしくは酸化珪素マトリックスを場合によって含むか、もしくは含有し、かつ/または珪素が場合によって浸透された炭化珪素、特に高純度炭化珪素を、好ましくは活性化剤として、または活性化剤と同時に純粋炭素源として、あるいは純粋炭素源のみとして本発明による方法に加える。
【0071】
したがって、本発明によれば、炭化珪素を、精製酸化珪素を還元することによって純粋のシリコンを製造するための方法に、以上に定義されている活性化剤として、または純粋もしくは高純度炭化珪素として加えることができる。炭化珪素を純粋炭素源として加えることもできる。
【0072】
1つの代替的な変型において、純粋のシリコンを製造するための還元の処理工程は、精製酸化珪素、特に二酸化珪素と、以上または以下に定義される純粋または高純度炭化珪素との反応からなる。
【0073】
さらなる代替的な変型において、純粋のシリコンを製造するための還元の処理工程は、精製酸化珪素、特に二酸化珪素と、以上または以下に定義される純粋または高純度炭化珪素が添加された1つ以上の純粋炭素源との反応からなる。炭化珪素は、個々に、または好ましくは発明の配合物で添加される。添加された炭化珪素の使用には、炭化珪素が反応開始剤、反応促進剤として作用し、特にそれが比較的大量に添加されると、反応工程でのガス負荷を有意に低減するという利点がある。活性化剤は、好ましくは、SiCがそこに含まれないものとして計算された純粋炭素源に対して1000:1〜1:1000、より好ましくは1:100〜100:1、最も好ましくは1:100〜1:9である。
【0074】
本発明によれば、精製酸化珪素を1つ以上の純粋炭素源で還元することを含む、純粋のシリコンを製造するための方法において、精製酸化珪素は、少なくとも1つの純粋炭素源、ならびに好ましくは炭化珪素および場合によって珪素とともに使用され、炭化珪素は、炭素マトリックスおよび/または酸化珪素マトリックスを含むことができ、特に配合部で珪素が浸透されていてよく、配合物は、代替的に、
a)精製酸化珪素、および少なくとも1つの純粋炭素源、および場合によって炭化珪素、および場合によって珪素、および/または
b)精製酸化珪素、および場合によって炭化珪素、および場合によって珪素、および/または
c)少なくとも1つの純粋炭素源、および場合によって炭化珪素、および場合によって珪素を含み、それぞれの配合物は、結合剤を場合によって含み、純粋炭素源は、活性化炭素を含むこともできる。
【0075】
精製酸化珪素、特に精製二酸化珪素、例えばシリカ、純粋炭素、特に活性化炭素および/または炭化珪素を、a)粉末、微粒子および/または断片の形で、かつ/またはb)特に結合剤および/または第2の炭素源およびさらなる炭素源として、場合によって他の添加剤とともに、配合物、例えば、多孔性ガラス、特に石英ガラス、押出物および/または成形体、例えばペレットまたは煉炭の形でプロセスに加えることができる。活性化炭素は、グラファイト分またはグラファイトを含む炭素源を指すものと理解される。炭素源におけるグラファイト分は、炭素源に対して好ましくは30〜99質量%の範囲である。グラファイト分は、好ましくは、40〜99質量%であり、特に好ましくは50〜99質量%である。
【0076】
配合物を成形するための好適な方法、特に煉炭化、例えば、押出、圧縮、タブレット化、ペレット化、顆粒化、およびそれ自体既知のさらなる方法が当業者に十分に良く知られている。
【0077】
さらなる添加剤は、酸化珪素または第2の炭素源、特に、例えばHClを用いた洗浄および/または煮沸後の浄化籾殻、あるいはさらなる純粋炭素源、例えば、糖、グラファイト、炭素繊維および/または結合剤および第2の炭素およびさらなる炭素の混合物であり、かつ/またはシリコンは、天然または合成樹脂、例えば、フェノール樹脂、官能性シランまたはシロキサン、工業用アルキルセルロース、例えばメチルセルロース、ポリエチレングリコール、ポリアクリレートおよびポリメタクリレート、または前記化合物の少なくとも2つの混合物であってよい。官能性シランまたはシロキサンとしては、例えば、テトラアルコキシシラン、トリアルコキシシラン、アルキル珪酸塩、アルキルアルコキシシラン、メタクリルオキシアルキルアルコキシシラン、グリシジルオキシアルキルアルコキシシラン、ポリエーテルアルキルアルコキシシラン、および少なくとも2つの前記化合物の対応する加水分解物または縮合体または共縮合体が挙げられ(ただし、それらに限定されない)、「アルコキシ」は、特に、メトキシ、エトキシ、プロポキシまたはブトキシを指し、「アルキル」は、1〜18個の炭素原子を有する一価または二価アルキル基、例えば、メチル、エチル、n−プロピル、ブチル、イソブチル、ペンチル、ヘキシル、ヘプチル、n−/i−オクチル等を指す。したがって、例としては、テトラエトキシシラン、シラノール、珪酸エチル、トリメトキシシラン、メチルトリメトキシシラン、ジメチルジエトキシシラン、トリメチルプロポキシシラン、エチルトリメトキシシラン、メチルエチルジエトキシシラン、n−プロピルトリエトキシシラン、n−/i−オクチルトリメトキシシラン、プロピルシラノール、オクチルシラノールおよび対応するオリゴマーまたは縮合体、1−メタクリルロイルオキシメチルトリメトキシシラン、2−メタクリロイルオキシエチルトリメトキシシラン、3−メタクリロイルオキシプロピルトリメトキシシラン、3−メタクリロイルオキシイソブチルトリメトキシシラン、3−メタクリロイルオキシプロピルメチルジアルコキシシラン、3−メタクリロイルオキシプロピルシラノールおよび対応するオリゴマーまたは縮合体、3−グリシジルオキシプロピルトリメトキシシラン、3−グリシジルオキシプロピルシラノールおよび対応するオリゴマーまたは縮合体または加水分解物、共縮合体またはブロック共縮合体、あるいはn−プロピルトリエトキシシラン、n−/i−オクチルトリエトキシシラン、3−メタクリルオキシプロピルトリメトキシシラン、3−グリシジルオキシプロピルトリメトキシシランおよび3−ポリエーテルプロピルトリエトキシシランの群からの少なくとも2つに基づく共縮合体が挙げられる。
【0078】
前記添加剤は、珪素または炭素供給源、および特にそれ自体が当業者に既知の成形処理における処理助剤の機能、および/または結合剤、特に、室温から300℃の範囲で実質的に耐熱性である結合剤の機能を同時に果たすことができる。顆粒を製造するために、粉末を水溶液またはアルコール溶液で結合剤とともに噴霧し、次いで、乾燥を同時に行うことができる成形処理にそれを供給することが好ましい。代替的に、乾燥を成形後に実施することもできる。形成されたプロセスガスが、還元の過程で配合物を通じて純粋のシリコンに効率的に流れることができるように、高度な多孔性のタブレット、ペレットまたは煉炭を配合物から成形することが好ましい。
【0079】
好適な結合剤は、150〜300℃の温度範囲で実質的に寸法安定性の配合物をもたらす。特に好適な結合剤は、200〜300℃の温度範囲で寸法安定性の配合物をもたらす。特定の場合において、300℃超〜800℃以上まで、特に好ましくは1400℃までの温度範囲で実質的に寸法安定性の配合物を可能にする配合物を製造することも好適であり得る。好ましくは、これらの配合物を純粋のシリコンへの還元に使用することができる。高温結合剤は、支配的なSi−O基質架橋に実質的に基づくものであり、基質は、一般に、配合物のシラノール基または官能基と縮合可能なすべての成分を指す。
【0080】
好適な配合物は、炭化珪素および/または活性化炭素、すなわち、例えばグラファイト、またはそれらとさらなる純粋炭素源、例えばサーマルブラックとの混合物、ならびに記載の熱安定性結合剤、特に高温結合剤を含む。
【0081】
一般に、あらゆる固体反応物、例えば、二酸化珪素、純粋炭素源および場合によって炭化珪素が処理に使用され得るか、あるいは反応が進行するための可能な限り大きな表面積を与える形で組成物に存在し得る。本発明によれば、配合物が煉炭の形で添加される。
【0082】
精製酸化珪素を、工業用加熱炉、例えば、光アーク炉、熱反応器、誘導炉、回転チューブ炉、および/または例えば流動床および/または回転チューブを備えたマイクロ波炉にて、1つ以上の純粋炭素源および/または活性化剤で還元することができる。
【0083】
一般に、反応を、金属シリコンなどのシリコンを製造するための通常の溶融炉、または他の好適な溶融炉、例えば誘導炉にて実施することができる。当該溶融炉、特に好ましくは、電気光アークをエネルギー源として使用する電気炉の設計は、当業者に十分に良く知られている。直流炉では、それらは溶融電極およびベース電極を有し、交流炉としては、典型的には3つの溶融電極を有する。光アーク長は、電極調整器によって調整される。光アーク炉は、一般に、耐火性材料で構成された反応チャンバに基づき、その下方領域から液体シリコンを流出または排出させることができる。原料は、光アークを生成するためのグラファイト電極も配置される上方領域に加えられる。これらの炉は、通常、約1800℃の領域の温度で動作される。当業者は、また、炉構造そのものが、製造されるシリコンの汚染に寄与すべきでないことを認識している。
【0084】
本発明によれば、精製酸化珪素は、高純度耐火材料で裏張りされ、以下に説明するように、高純度材料からなる電極を場合によって使用する反応チャンバにて1つ以上の純粋炭素源で還元される。通常の電極は、高純度グラファイトで構成され、反応を通じて消費されるため、一般に、それらを連続的に再配置しなければならない。
【0085】
還元によって本発明により得られる融合または溶融シリコンは、溶融純粋シリコンの形で得られる。特に、それは、ソーラーシリコンとして好適であるか、ソーラーシリコンを製造するのに好適である。場合によって、それは、それ自体が当業者に既知である帯域溶融または制御固化によってさらに精製される。
【0086】
代替的または追加的に、シリコンを固化し、粉砕し、粉砕片の異なる磁気挙動によってさらに分類することができる。続いて、特に、帯域溶融または制御固化により不純物が富化した部分を使用して有機シランを製造することができる。磁気分類の方法は、当業者に既知である。精製酸化珪素と1つ以上の純粋炭素源との反応によるシリコンの磁気分類については、磁気分離に供給されるシリコンが、精製酸化珪素と少なくとも1つの純粋炭素源との反応に由来する変更点があるが、WO03/018207の全開示内容が本出願の主題に組み込まれる。本発明は、本発明に従って製造される純粋のシリコン、または純粋のシリコンの帯域溶融によってさらに精製されるシリコンの対応する磁気分離を提供する。
【0087】
その各々が、総合的方法の経済的実用性に重要な相乗的貢献を行う、純粋のシリコンの製造のための総合的方法にとって任意であり、好ましくは組み合わせて実施される特定の処理工程を以下により詳細に説明する。
【0088】
精製SiO2の製造の部分工程の詳細な説明
以上に一般的用語で記載した工程a.2)において、酸沈殿懸濁物を形成するために、SiO2含有量が2〜35質量%である水相を、好ましくは、沈殿のための酸性化剤に添加する。
【0089】
第1の好適な変型において、水相に溶解された酸化珪素が滴加される沈殿懸濁物は、常に酸性でなければならない。この変型において、SiO2の含有量が2〜35質量%、好ましくは15〜35質量%、より好ましくは20〜30質量%である水相が使用される。
【0090】
第2の好適な変型において、水性活性シリカを、陽イオン交換体との接触の直後に、酸性初期充填物に滴加しなければならない。この変型において、SiO2の含有量が2〜6質量%または7〜17質量%である水相が使用される。「酸」は、6.5未満、特に5.0未満、好ましくは3.5未満、特に好ましくは2.5未満、本発明によれば2.0未満〜5.0未満のpH値を指すものと理解される。目標は、一般に、再現性のある沈殿懸濁物を得るために、pHが局部的にあまり変動しすぎないことである。したがって、平均pHも特定の局部pHも、±0.5、好ましくは±0.2のばらつきに留まるべきである。
【0091】
本発明によれば、沈殿懸濁物の添加部分、好ましくは沈殿懸濁物の中央部における沈殿中のpHは、2未満、好ましくは1.5未満、より好ましくは1未満、最も好ましくは0.5未満である。沈殿懸濁物のpHを、酸性化剤の添加によって、撹拌などの沈殿懸濁物の移動によって、または他の手段によってこれらのpH値に一定に維持することができる。1つの手段は、流体を連続的に灌漑する手段、傾斜面上の酸性化剤の膜を酸化珪素の水相またはアルカリ金属水ガラスとともに連続的に落下させる手段、あるいは水相を酸性化剤に注入する手段である。
【0092】
使用される希釈または未希釈酸性化剤あるいは酸性化剤の混合物が、沈殿懸濁物の水相に溶解されない不純物をプロセスに持ち込むべきでないことは、当業者に明らかである。それぞれの場合において、酸性化剤は、錯化剤の添加によって沈殿懸濁物の中に保持するか、または後の洗浄媒体によって洗い流すことができなければ、酸沈殿の過程で酸化珪素とともに沈殿することになる不純物を有してはならない。
【0093】
沈殿懸濁物を形成するための酸性化剤の水相での本発明の活性シリカの酸沈殿、すなわち酸沈殿懸濁物での沈殿の後に、精製酸化珪素、特に精製二酸化珪素を除去し、場合によってその後に、酸化珪素を水性、特に酸性媒体で洗浄し、単離された精製酸化珪素を場合によって洗浄して中性にする。洗浄して中性にすることを、高純度脱塩水を用いて実施することができる。除去を当業者に公知の通常の手段、例えば、濾過、デカント、遠心、沈降によって、これらの手段が酸沈殿精製酸化珪素の汚染の程度を再び悪化させないことを条件として実施することができる。
【0094】
好適な酸性化剤は、塩酸、リン酸、硝酸および/または硫酸などの強い無機酸である。本発明によれば、高純度の酸が使用される。
【0095】
洗浄媒体は、好ましくは、ギ酸、酢酸、フマル酸、シュウ酸、または当業者に既知であり、高純度の水で完全に除去できない場合に精製された酸化珪素の汚染に自ら寄与しない他の有機酸などの有機水溶性酸の水溶液である。したがって、一般に、酸性化剤からも洗浄媒体においても、特にC、HおよびO元素からなるすべての有機水溶性酸が、後の還元工程の汚染に自ら寄与しないという理由により好ましい。
【0096】
発明の洗浄媒体は、酸性化剤の水溶液であり、好適な酸は、ギ酸および/または酢酸などの有機酸である。洗浄媒体は、必要であれば、水と有機溶媒の混合物を含むこともできる。適切な溶媒は、メタノール、エタノールなどの高純度アルコールである。見込まれるエステル化は、後のシリコンへの還元を妨害しない。
【0097】
酸可溶性金属錯体を安定化させるために、EDTAあるいは過酸化物などの金属錯化剤を、着色標示のために、望ましくない金属汚染の「指示薬」として沈殿懸濁物あるいは洗浄媒体に添加することができる。例えば、存在するチタン不純物を色によって指摘するために、ヒドロ過酸化物を沈殿懸濁物または洗浄媒体に添加することができる。一般に、後の還元プロセスにおいて破壊的な影響を及ぼさない他の有機錯化剤による標示も可能である。これらは、C、HおよびO元素に基づくあらゆる錯化剤である。
【0098】
必要であれば、酸沈殿によって得られた精製酸化珪素を、さらに濃縮し、かつ/または後熱処理することができる。また、恐らくはまだゾルとしてのなお湿性のまたは水性の精製酸化珪素を純粋炭素源と混合することができる。
【0099】
工程a.2)で実施される水相の濃縮の工程を、工程d)による水相を酸性化剤に添加すること、または酸性化剤を添加することによって実施することができる。本発明によれば、工程d)において陽イオン交換体から得られる酸性水相を酸性化剤に直接注入するか、または特に予め濃縮せずに酸性化剤と接触させなければならない。
【0100】
基本的な方法の特徴は、酸化珪素、および酸化珪素が異なる処理工程を通じて存在する反応媒体のpHの制御である。水相に溶解された酸化珪素、特に完全に溶解した酸化珪素からの精製酸化珪素の発明の沈殿は、酸性化剤にて実施される。本発明によれば、酸性化剤は、pHが2未満の水溶液である。水相に溶解された二酸化珪素の添加後、それは沈殿懸濁物とも呼ばれる。
【0101】
非常に低いpHでは、表面がさらに正電荷を帯びるため、金属陽イオンがシリカ表面によって追い出される。次いでこれらの金属イオンが洗い流されると、pHが非常に低ければ、それらが発明の二酸化珪素の表面に蓄積するのを防止することができる。シリカ表面が正電荷を帯びると、これによって、シリカ粒子が互いに蓄積するので、不純物が挿入され得る空隙の形成をさらに防止する。
【0102】
よって、沈殿は、好ましくは、工程a.2)、特に工程a.3)のできるだけ早い段階で、好ましくは排出、すなわち工程d)における活性シリカの水相の回収の直後に実施される。沈殿は、
I.pHが2未満、好ましくは1.5未満、より好ましくは1未満、最も好ましくは0.5未満の酸性化剤で構成される初期充填物を調製する工程と、
II.工程d)による水相を供給する工程と、
III.水性シリカを含む工程d)による水相を工程IIによる初期充填物に、得られた沈殿懸濁物のpHが2未満、好ましくは1.5未満、より好ましくは1未満、最も好ましくは0.5未満の値に常に維持されるようにして添加する工程と、
IV.得られた二酸化珪素を除去および洗浄する工程であって、洗浄媒体が2未満、好ましくは1.5未満、より好ましくは1未満、最も好ましくは0.5未満のpHを有する工程と、
V.得られた二酸化珪素を乾燥させる工程
とを含むことができる。本発明は、また、この方法によって得られる精製シリカを提供する。
【0103】
工程Iにおいて、酸性化剤、または酸性化剤と水で構成される初期充填物を沈殿容器にて調製する。水は、好ましくは蒸留水または脱塩水である。
【0104】
酸性化剤は、フィルタケークを洗浄するために工程IVでも使用される酸性化剤であってよい。酸性化剤は、濃縮または希釈された形の塩酸、リン酸、硝酸、硫酸、クロロ硫酸、塩化スルフリルまたは過塩素酸、あるいは前記酸の混合物であってよい。特に、好ましくは2〜14N、より好ましくは2〜12N、さらにより好ましくは2〜10N、特に好ましくは2〜7N、極めて好ましくは3〜6Nの塩酸、好ましくは2〜59N、より好ましくは2〜50N、さらにより好ましくは3〜40N、特に好ましくは3〜30N、極めて好ましくは4〜20Nのリン酸、好ましくは1〜24N、より好ましくは1〜20N、さらにより好ましくは1〜15N、特に好ましくは2〜10Nの硝酸、好ましくは1〜37N、より好ましくは1〜30N、さらにより好ましくは2〜20N、特に好ましくは2〜10Nの硫酸を使用することが可能である。濃硫酸を使用するのが特に好ましい。
【0105】
本発明による沈殿方法の好適な変型において、酸性条件下でチタン(IV)イオンとともに黄色/褐色を引き起こす過酸化物を酸性化剤とともに工程Iの初期充填物に添加する。過酸化物は、より好ましくは、過酸化水素またはペルオキソ二硫酸カリウムである。反応溶液の黄色/褐色は、洗浄工程d)を通じての精製の程度を非常に明確に認識することを可能にする。
【0106】
これは、特にチタンは、2を超えるpH値でも二酸化珪素上に容易に蓄積する非常にしつこい不純物であることが判明したためである。本発明者らは、段階IVにおいて黄色が消えると、精製酸化珪素、特に二酸化珪素の所望の純度が概ね達成され、このときから二酸化珪素を希釈または脱塩水により、二酸化珪素の中性のpHに達するまで洗浄できることを見いだした。過酸化物のこの指示薬機能を達成するために、過酸化物を工程Iでなく工程IIにおいて活性シリカに添加するか、または工程IIIにおいて第3の流れとして添加することも可能である。基本的に、過酸化物を工程IIIの後、工程IVの前、または工程IVの最中にのみ添加することも可能である。
【0107】
すべての前記変型およびそれらの混合形が本発明の主題である。しかし、工程IまたはIIにおいて過酸化物を添加する変型が、この場合におけるさらなる機能ならびに指示薬機能を果たすことができるため好ましい。特定の理論に縛られることなく、本発明者らは、いくつかの不純物、特に炭素含有不純物が過酸化物との反応によって酸化され、反応溶液から除去されるという見解を有する。他の不純物は、酸化によって、洗い流すことができるより良好な可溶性の形に変換される。したがって、本発明による沈殿方法は、焼成工程が必要ないという利点を有するが、これは、勿論、選択肢として可能である。
【0108】
本発明による沈殿方法の工程IIIにおいて、工程d)による活性シリカの水相を初期充填物に直接添加することで、二酸化珪素を沈殿させる。酸性化剤が常に過剰に存在するようにすべきである。したがって、珪酸塩溶液は、反応溶液のpHが、常に、2未満、好ましくは1.5未満、より好ましくは1未満、さらにより好ましくは0.5未満、特に好ましくは0.01〜0.5になるようにして添加される。必要であれば、さらなる酸性化剤を添加することができる。反応溶液の温度は、活性物質の添加中に沈殿容器を加熱または冷却することによって20〜95℃、好ましくは30〜90℃、より好ましくは40〜80℃に維持される。
【0109】
本発明者らは、水性活性シリカが液滴の形で初期充填物および/または沈殿懸濁物に入ると、特に容易に濾過可能な沈殿物が得られることを見いだした。したがって、本発明の好適な実施形態において、活性シリカが液滴の形で初期充填物および/または沈殿懸濁物に入るようにする。これを、例えば、滴加によってシリカを初期充填物に導入することによって達成することができる。装置は、初期充填物/沈殿懸濁物の外側に装着され、かつ/または初期充填物/沈殿懸濁物に浸漬される計量装置であってよい。
【0110】
代替的に、滴加部分のpHがpH2を超えない、好ましくは1.5を超えない、より好ましくは1.0を超えない、最も好ましくは0.5を超えないようにするために、溶液を非常に緩慢に撹拌、例えばポンプによって撹拌もしくは循環させることができる。上記のpHを維持すると同時に、それが初期充填物/沈殿懸濁物に入るときに流入活性シリカをわずかな程度だけ分布させることができるように、容器または計量装置を初期充填物/沈殿懸濁物の上方に移動させることが好ましい。これは、不純物が粒子の内部に組み込まれ得る前に、流入活性シリカの外殻における迅速なゲル化をもたらす。したがって、初期充填物/沈殿懸濁物の流速の最適な選択、あるいは容器または計量装置の移動は、得られた生成物の純度を向上させる。
【0111】
極めて実質的に液滴形状の活性シリカの導入に伴う最適化された移動または流速の組合せは、本発明による方法の1つの実施形態において、活性シリカが、液滴の形で初期充填物/沈殿懸濁物に、反応表面の10cm下までの反応溶液の表面の部分で測定された場合に0.001〜10m/s、好ましくは0.005〜8m/s、より好ましくは0.01〜5m/s、特に0.01〜4m/s、特に好ましくは0.01〜2m/s、特に0.01〜1m/sの流速で導入されるように、この効果をさらに向上させる。好ましくは、計量装置を固定した容器に対して移動させるか、または容器を計量装置に対して0.0001〜10m/sで移動させる。計量装置を移動させることが、これにより、経時的に一定の移動が確保されるため好ましい。
【0112】
特定の理論に縛られることなく、本発明者らは、初期充填量/反応溶液における酸性条件が、水性活性シリカの滴加と相俟って、酸と接触してすぐその表面においてシリカの液滴にゲル化/沈殿を開始させるという見解を有する。
【0113】
発明の精製酸化珪素、特に二酸化珪素は、それらの不純物プロファイルが、上記の「定義」でさらに定義されているものに対応し、不純物とナトリウムおよびカリウムとの合計が5ppm未満、好ましくは4ppm未満、より好ましくは3ppm未満、特に好ましくは0.5〜3ppm、極めて好ましくは1ppm〜3ppmであることを特徴とする。
【0114】
本発明に従って製造される酸化珪素を当業者に既知の方法によって加圧して、顆粒または煉炭にすることができる。粒子が磨砕される場合、すなわちそれらが従来の微粒子の形で存在する場合は、それらは、好ましくは1〜100μm、より好ましくは3〜30μm、最も好ましくは5〜15μmの平均粒径d50を有することができる。粒子は、好ましくは0.1〜10mm、より好ましくは0.3〜9mm、最も好ましくは2〜8mmの平均粒径d50で存在する。
【0115】
そのようにして得られた高純度二酸化珪素を乾燥させ、さらに処理することができる。冒頭に記載したように、乾燥を当業者に既知のすべての方法の手段、例えば、ベルト乾燥器、トレイ乾燥器、ドラム乾燥器等によって実施することができる。
【0116】
必要であれば、窒素含有不純物、硫黄含有不純物を除去するために、得られた珪素酸化物を、900〜2000℃の範囲、より好ましくは約1400℃の温度で熱後処理、特に焼成することができる。
【0117】
工程a.2)またはa.3)、好ましくはa.2)の後のゲル形成または沈殿、および特にその後1400℃までの温度での焼成によって本発明により得られる精製酸化珪素、特に精製二酸化珪素は、アルミニウム、ホウ素、カルシウム、鉄、ニッケル、リン、チタンおよび/または亜鉛元素の含有量が、それぞれの場合において個々に、または組み合わせて、以上に定義されている通りである。
【0118】
上記のように、水相に実質的に溶解された酸化珪素を異なる方法で製造することができる。この点で、水相に実質的に溶解された酸化珪素を汚染させ、すなわち汚染された酸化珪素を最初に溶解させ、次いで本発明により精製することで、高純度酸化珪素を得る総合的方法の別の具体的な変型が開示されている。
【0119】
したがって、本発明は、特にソーラーシリコンとして好適であるか、またはソーラーシリコンを製造するのに好適であるシリコン、好ましくは以上に定義されている純粋のシリコンを製造するための少なくとも1つの不純物含有酸化珪素を使用するためのこの方法変型において、
a)不純物含有酸化珪素を、水相に溶解された珪酸塩に変換する工程と、
b)水相に溶解された珪酸塩を、特に水素型の強酸性陽イオン交換樹脂と接触させることによって精製する工程(有利には、請求項2〜8の少なくとも一項に記載のさらなる工程を実施することができる)と、
c)精製酸化珪素の沈殿物を得る工程と、
d)そのようにして得られた酸化珪素を、1つ以上の炭素源の存在下で、場合によって活性化剤を添加することによって珪素に変換する工程と
を含む方法を提供する。
【0120】
特に、工程b)は、特に請求項2〜8に記載の工程の少なくとも1つ、好ましくは、以上に詳述されている方法I〜Vにより、実質的に溶解された酸化珪素の精製に関する上記見解に従って実施される。
【0121】
不純物含有酸化珪素は、ホウ素、リン、アルミニウム、鉄、チタン、ナトリウムおよび/またはカリウム含有量が1000質量ppm超、特に100質量ppm超の酸化珪素であると考えられる。酸化珪素は、好ましくは、上記不純物の全含有量が10質量ppmを超える場合も汚染酸化珪素であると考えられる。
【0122】
不純物含有酸化珪素は、また、
a.6ppm超、特に5.5ppm超、好ましくは3.5ppm超、より好ましくは0.85ppm超のアルミニウム、および/または
b.10ppm超、好ましくは5.5ppm超、より好ましくは3.5ppb超、より好ましくは15ppb超のホウ素、および/または
c.2ppm超、特に0.35ppm超、より好ましくは0.015ppm超のカルシウム、および/または
d.23ppm超、特に15ppm超、好ましくは0.65ppm超の鉄、および/または
e.15ppm超、特に5.5ppm超、特に0.55ppm超のニッケル、および/または
f.15ppm超、特に5.5ppm超、より好ましくは0.1ppm超、または15ppb超のリン、および/または
g.2.5ppm超、特に1.5ppm超のチタン、および/または
h.3.5ppm超、特に1.5ppm超、より好ましくは0.35ppm超の亜鉛の元素の含有量を、それぞれの場合において個々に、またはそれらの一部もしくはすべての任意の組合せで有し、
前記不純物とナトリウムおよびカリウムとの合計が特に10ppm超、特に5ppm超、好ましくは4ppm超、より好ましくは3ppm超、最も好ましくは1ppm超、または0.5ppm超である二酸化珪素であると考えられる。
【0123】
ホウ素含有量が0.5ppm未満、特に0.1ppm未満であり、かつ/またはリン含有量が1ppm超もしくは0.5ppm超である場合でも、アルミニウム、カルシウム、鉄、ニッケル、チタン、亜鉛の群から選択される少なくとも1つの元素の含有量が以上に指定される限界を超えていれば、酸化珪素は、不純物含有酸化珪素であると考えられる。
【0124】
本発明によれば、精製酸化珪素、特に高純度二酸化珪素をさらに処理して、ソーラー工業のための純粋または高純度シリコンを得る。本発明によれば、精製酸化珪素、特に高純度二酸化珪素と、高純度炭素、炭化珪素および/または純粋の糖などの純粋炭素源と反応させる。
【0125】
特に、以上に詳述されているすべての方法によって精製された酸化珪素、好ましくは高純度二酸化珪素を本発明による総合的な方法に出発材料として使用することができる。この場合、それを高純度シリコンへのさらなる変換、すなわち還元工程に使用することができるが、高純度炭素の製造における高純度消泡剤として1つの方法変型に使用することもできる。最後に、以上に詳述されているすべての方法によって精製された酸化珪素を、以下に記載される炭化珪素の製造に使用することもできる。
【0126】
酸化珪素を消泡剤として使用する糖熱分解による炭素源の製造
本明細書に挙げられている他の炭素源、好ましくは本明細書に列挙されている天然炭素源に加えて、炭水化物から炭素を得ることも可能である。純粋のシリコンを製造するための本発明による総合的方法のこの好適な変型(部分プロセス)において、高純度炭素を製造するために、好ましくは、酸化珪素を添加しながら高温で少なくとも1つの炭水化物または炭水化物混合物、特に結晶糖を工業的に熱分解することによって炭素を得る炭素源、特に純粋炭素源を使用すべきである。
【0127】
意外にも、酸化珪素、好ましくはSiO2、特に沈殿シリカおよび/またはヒュームドシリカを添加すると、泡形成効果を抑制することが可能になることが判明した。
【0128】
炭水化物を熱分解するためのこの工業的方法を、破壊的な泡形成を生じることなく簡単かつ経済的に実行可能な方法で実施することも可能である。また、該方法の実施において、カラメル形成も観察されない。また、有利には、好適な実施形態において、それが特にエネルギー節約的(低温の方法)であるため、熱分解温度を例えば1600℃〜約700℃に下げることが可能である。該方法を、有利には、400℃を超える温度、好ましくは800〜1600℃の範囲、より好ましくは900〜1500℃の範囲、特に1000〜1400℃の温度で実施して、有利にはグラファイト含有熱分解生成物を得る。
【0129】
グラファイト含有熱分解生成物が好適であるときは、所望の熱分解温度は、1300〜1500℃である。熱分解は、有利には、保護ガスおよび/または減圧(真空)下で実施される。例えば1ミリバール〜1バール(大気圧)、特に1〜10ミリバールで実施される。特にマイクロ波を用いた熱分解の場合は、原料を乾燥させる必要がない。反応物質は、残留水分を有していてよい。適切には、使用される熱分解装置は、熱分解の開始前に乾燥され、窒素またはArもしくはHeなどの不活性ガスを用いたパージによって実質的に酸素がなくなるまでパージされる。アルゴンまたはヘリウムを用いた作業が好ましい。熱分解時間は、前記熱分解温度で一般に1分〜48時間の範囲、好ましくは1/4時間〜18時間の範囲、特に時間〜12時間の範囲である。所望の熱分解温度に到達するまでの加熱時間は、同程度の範囲内、特に1/4時間〜8時間の範囲であり得る。
【0130】
該方法は、一般にバッチ式で実施されるが、それを連続的に実施することもできる。
【0131】
得られた炭素系熱分解生成物は炭素、特に、グラファイト分およびシリカおよび場合によってコークスなどの他の炭素形分を含み、不純物、例えば、ホウ素、リン、ヒ素およびアルミニウム化合物が特に少ない。例えば、有利には、熱分解生成物を本発明による総合的方法に還元剤として使用することができる。特に、その伝導特性により、グラファイト含有熱分解生成物を光アーク反応器に使用することができる。
【0132】
したがって、本発明は、酸化珪素、特に精製酸化珪素を添加しながら高温で炭水化物または炭水化物混合物を技術的、すなわち工業的に熱分解するための技術的な方法を提供する。
【0133】
熱分解に使用される炭水化物成分は、好ましくは、単糖、すなわちアルドースまたはケトース、例えば、トリオース、テトロース、ペントース、ヘキソース、ヘプトース、特にグルコースおよびフルクトースだけでなく、多糖のわずかな例を挙げると、アミロースおよびアミロペクチンを含むデンプン、グリコーゲン、グリコサンおよびフルクトサンを含めて、前記モノマーに基づくオリゴ糖および多糖、例えばわずかな例を挙げると、ラクトース、マルトース、スクロース、ラフィノースである。しかし、そこに指定される純度のSiCを製造するために、以下に詳述されるあらゆる炭水化物/糖を使用することも可能である。
【0134】
場合によって、前記炭水化物を、イオン交換体を使用する処理によってさらに精製することができ、その場合、炭水化物を好適な溶媒、有利には水に溶解させ、イオン交換樹脂、好ましくはイオン性または陽イオン性樹脂が充填されたカラムに通し、得られた溶液を、例えば特に減圧下で加熱することによって溶媒分を除去することによって濃縮し、そのようにして精製された炭水化物を、有利には、例えば溶液を冷却し、次いで濾過または遠心を含む方法によって結晶分を除去することによって結晶形態で得る。しかし、前記炭水化物の少なくとも2つの混合物を炭水化物または炭水化物成分として熱分解に使用することも可能である。
【0135】
経済的に実行可能な量で利用可能な結晶糖、すなわち、例えば、サトウキビまたはサトウダイコンの溶液またはジュースを結晶化させることによって、それ自体既知の方法で得ることができる糖、すなわち従来の結晶糖、例えば精製糖、好ましくは、物質特有の融点/軟化範囲および1μm〜10cm、より好ましくは10μm〜1cm、特に100μm〜0.5cmの平均粒径を有する結晶糖を使用することが特に好ましい。粒径を、例えば、篩分析、TEM、SEMまたは光学顕微鏡法(ただし、それらに限定されない)によって測定することができる。炭水化物を、例えば水溶液(ただし、それに限定されない)に溶解した形で使用することも可能であり、その場合、溶媒は、明らかに、実際の熱分解温度に到達する前に多少迅速に蒸発する。
【0136】
熱分解に使用する酸化珪素成分は、好ましくは、例えば湿性、乾性もしくは焼成ヒュームドもしくは沈殿シリカの形のSiOx(X=0.5〜1.5)、SiO、SiO2、酸化(水和)珪素、水性もしくは含水SiO2、例えばAerosil(登録商標)もしくはSipernat(登録商標)、またはシリカゾルもしくはゲル、多孔性もしくは高密度石英ガラス、石英砂、石英ガラス繊維、例えば、光導繊維、石英ガラスビーズ、または前記成分の少なくとも2つの混合物である。内部表面積が0.1〜600m2/g、より好ましくは10〜500m2/g、特に100〜200m2/gのシリカを熱分解に使用することが好ましい。内部表面積または比表面積を、例えばBET法(DIN ISO 9277)によって測定することができる。平均粒径が10nm〜51mm、特に1〜500μmのシリカを使用することが好ましい。ここでも、とりわけ、TEM(透過型電子顕微鏡法)、SEM(走査型電子顕微鏡法)または光学顕微鏡法によって粒径を測定することができる。極めて好ましくは、前記方法の部分工程によって得られた酸化珪素を使用することが極めて好ましい。
【0137】
本発明によれば、精製酸化珪素、特に、以上に定義されている高純度酸化珪素が熱分解に使用される。熱分解に使用されるシリカは、有利には、高(99%)から超高(99.9999%)純度を有し、ホウ素、リン、ヒ素およびアルミニウム化合物などの不純物の含有量は、有利には、合計で10質量ppm以下、特に1質量ppm以下、好ましくは0.5質量ppm〜0.0001質量ppbであるべきである。本発明によれば、精製酸化珪素、すなわち特に、a.2)またはa.3)におけるゲル形成または沈殿、ならびに特に熱後処理、例えば焼成によって得られる二酸化珪素が使用される。
【0138】
したがって、熱分解において、炭水化物と消泡剤、すなわちSiO2として計算された酸化珪素成分を1000:0.1〜0.1:1000の質量比で使用することができる。炭水化物成分と酸化珪素成分の質量比は、好ましくは、100:1〜1:100、より好ましくは50:1〜1:50、最も好ましくは20:1〜1:20、特に2:1〜1:1に調整され得る。
【0139】
熱分解を実施するのに使用される装置は、反応器をステンレス鋼で設計し、反応に関して、好適な不活性物質、例えば、高純度SiC、Si33、高純度石英ガラスもしくは石英ガラス、高純度炭素またはグラファイトで被覆または裏張りすることができる誘導加熱真空反応器であってよい。
【0140】
しかし、他の好適な反応容器、例えば、適切な反応坩堝または槽を収容する真空チャンバを有する誘導炉を使用することも可能である。
【0141】
概して、熱分解は、以下のように実施される:
反応器内部および反応容器を好適な方法で乾燥させ、例えば、室温から300℃の温度に加熱することができる不活性ガスでパージする。続いて、熱分解すべき炭水化物または炭水化物混合物を、消泡剤成分としての酸化珪素とともに、熱分解装置の反応チャンバまたは反応容器に導入する。原料を予め密接に混合し、減圧下で脱気し、保護ガス下で、準備された反応器内に移すことができる。反応器を既に軽く予備加熱しておくことができる。続いて、温度を連続的または段階的に所望の熱分解温度まで上昇させることができ、反応混合物から漏出する気体分解生成物を非常に迅速に除去できるように、圧力を下げることができる。特に酸化珪素の添加を通じて、反応混合物における泡形成を実質的に回避することが有利である。
【0142】
熱分解反応が終了した後に、熱分解生成物を、有利には1000〜1500℃の範囲の温度で一定時間にわたって熱後処理することができる。したがって、概して、純粋または高純度炭素を含む熱分解生性物または組成物が得られる。本発明によれば、熱分解生成物は、好ましくは、総合的方法によるソーラーシリコンの製造のための還元剤として使用される。
【0143】
このために、熱分解生成物を、さらなる成分を添加しながら規定の形に変換することができ、特に本発明により精製されたSiO2、SiCなどの活性化剤、有機シラン、有機シロキサン、炭水化物、シリカゲル、天然または合成樹脂などの結合剤、グラファイトなどの加圧成形、タブレット化もしくは押出補助剤などの高純度処理助剤を添加しながら、わずかな例を挙げると例えば顆粒化、ペレット化、タブレット化、押出によって規定の形に変換することができる。
【0144】
したがって、本発明は、また、熱分解後に得られる組成物または分解生成物を提供する。
【0145】
したがって、本発明は、また、400:0.1〜0.4:1000、特に400:0.4〜4:10、好ましくは400:2〜4:1.3、より好ましくは400:4〜40:7の炭素と(二酸化珪素として計算された)酸化珪素の含有率の熱分解生成物を提供する。
【0146】
特に、直接的な熱分解生成物は、高純度であること、および多結晶シリコン、特に、光起電力システムばかりでなく医学的用途のソーラーシリコンの製造に有用であることが注目に値する。本発明によれば、当該組成物(略して熱分解物または熱分解生成物としても既知である)を、特に光アーク炉における高温でのSiO2の還元、特に精製酸化珪素の還元によるソーラーシリコンの製造における使用原料であってよい。
【0147】
本発明によれば、直接的な処理生成物は、本発明による方法における精製酸化珪素と純粋炭素源との反応に使用される。別の代替法は、直接的な処理生成物を、例えば、US4,247,528、US4,460,556、US4,294,811およびWO2007/106860に開示されているように、引用文献の方法において炭素含有還元剤として簡単かつ経済的に実行可能に使用することである。
【0148】
本発明は、また、特に光アーク炉における高温でのSiO2の還元、特に精製酸化珪素の還元によるソーラーシリコンの製造における原料としての組成物(熱分解生成物)の使用を提供する。
【0149】
SiO2からの高純度SiCの製造、および本発明による方法におけるその使用
純粋のシリコンを製造するための総合的方法のさらなる発明の態様は、活性化剤および/または純粋炭素源としての炭化珪素の使用を含み、その場合は、炭化珪素が純粋の炭化珪素でなければならない。
【0150】
特に、純粋のシリコンを製造するための本発明による方法における使用のための炭化珪素の製造を最初に以下に説明し、次いで、炭化珪素を活性化剤、反応開始剤、反応促進剤あるいは純粋炭素源としてシリコンの製造に使用する方法を説明する。
【0151】
一般に、炭化珪素を購入することができ、かつ/または、この方法の純度要求を満たすのであれば、リサイクルされる炭化珪素または廃棄物とすることができる。純粋の炭化珪素を、酸化珪素と、少なくとも1つの炭水化物を含む炭素源とを高温で反応させることによって得て、例えば、電極、あるいは反応器、特に反応器チャンバまたは反応器の第1の層を裏張りするための高純度耐火物を製造するための材料として、本発明による方法に使用することもできる。この態様を以下の他の箇所で説明する。少なくとも1つの炭水化物を含む炭素源、特に、純粋炭素源は、好ましくは結晶糖である。
【0152】
本発明のこの態様において、酸化珪素、特に精製酸化珪素と、炭水化物、特に複数の炭水化物を含む炭素源とを高温で反応させることによって純粋または高純度炭化珪素および/または炭化珪素−グラファイト粒子を製造するための方法、特に炭化珪素を製造するか、または炭化珪素を含む組成物を製造し、反応生成物を単離するための工業的方法が開示される。さらに、本発明のこの態様は、純粋または高純度炭化珪素、それを含む組成物、触媒としての使用、電極の製造における使用、または電極および他の物品の材料としての使用に関する。
【0153】
本発明の態様によれば、1つの課題は、純粋または高純度炭化珪素を有意により安価な原料から製造すること、および加水分解に敏感で自己着火性のガスを堆積して炭化珪素を得る既知の方法の今日までのプロセス上の短所を克服することであった。
【0154】
意外にも、二酸化珪素、特に本発明により精製された酸化珪素と糖との混合物を反応させた後、混合比に応じて熱分解および/または高温焼成を行うことによって、炭素マトリックスの高純度炭化珪素、および/または二酸化珪素マトリックスの炭化珪素、および/または二酸化珪素を含む炭化珪素および/または組成物における二酸化珪素を低コストで製造することが可能であることが判明した。炭素マトリックスの炭化珪素を製造することが好ましい。特に、外部炭素マトリックス、好ましくはグラファイトマトリックスを粒子の内面および/または外面に有する炭化珪素粒子を得ることが可能である。
【0155】
その後、空気による受動酸化、特に酸化により炭素を除去することによって炭化珪素を純粋な形で簡単に得ることができる。代替的に、炭化珪素をさらに精製し、かつ/または高温および場合によって高真空下で昇華によって堆積させることができる。炭化珪素は、約2800℃の温度で昇華され得る。
【0156】
炭化珪素を、例えば約800℃の温度での酸素、空気および/またはNOx・H2Oによる受動酸化により炭素マトリックスの炭化珪素を後処理することによって純粋な形で得ることができる。この酸化プロセスでは、炭素または炭素含有マトリックスを酸化し、プロセスガス、例えば一酸化炭素として系から除去することができる。次いで、精製炭化珪素は、1つ以上の酸化珪素マトリックス、または恐らくは少量の珪素を含むことができる。
【0157】
炭化珪素は、それ自体が、800℃を超える温度における酸素に対する比較的強い酸化抵抗性を有する。酸素との直接的な接触において、それは、二酸化珪素の不動態化層を形成する(SiO2、「受動酸化」)。約1600℃を超える温度で、同時に酸素が欠如すると(約50ミリバールを下回る分圧)、ガラス様SiO2でなく、気体のSiOが形成される。保護効果は存在せず、SiCが迅速に燃焼する(「活性酸化」)。この活性酸化は、系の遊離酸素が使い果たされると進行する。
【0158】
本発明により得られる炭素系反応生成物または炭素マトリックスを有する反応生成物、特に熱分解生成物は、特にコークスおよび/またはカーボンブラックの形の炭素、ならびにシリカ、ならびにグラファイトなどの他の形の炭素分を含み、不純物、例えばホウ素、リン、ヒ素、鉄およびアルミニウム元素ならびにそれらの化合物が特に少ない。
【0159】
好ましくは、熱分解および/または焼成生成物を還元剤として、高温での糖コークスおよびシリカからの炭化珪素の製造に使用することができる。特に、発明の炭素もしくはグラファイト含有熱分解および/または焼成生成物は、その伝導特性により、例えば光アーク反応器での電極材料の製造に、あるいは触媒として、かつ本発明によれば、純粋のシリコンの製造、特にソーラーシリコンの製造のための原料として使用される。得られる炭化珪素を、反応器、反応器チャンバを裏張りするための、あるいは他の付属品、導入口または排出口を裏張りするための耐火性高純度材料の製造に使用することもできる。
【0160】
高純度炭化珪素をエネルギー源、および/または高純度鋼を製造するための添加剤として使用することもできる。
【0161】
したがって、本発明は、酸化珪素、特に上記定義による精製酸化珪素、特に精製二酸化珪素と、少なくとも1つの炭水化物を含む炭素源、特に純粋炭素源とを高温で反応させ、特に炭化珪素を単離することによって高純度炭化珪素を製造するための方法を提供する。本発明は、また、この方法によって得られる炭化珪素、または炭化珪素を含む組成物、ならびに本発明による方法によって得られる熱分解および/または焼成生成物、ならびに特にそれらの単離を提供する。
【0162】
本発明によれば、該方法は、酸化珪素、特に精製二酸化珪素を添加しながら、純粋の炭水化物または炭水化物混合物を高温で工業的に反応または工業的に熱分解および/または焼成し、それらを材料変換するための工業的方法、好ましくは工業規模の方法である。特に好適な方法変型において、高純度炭化珪素を製造するための工業的方法は、純粋の炭水化物、場合によって炭水化物混合物と、酸化珪素、特に精製二酸化珪素、および現場で形成された酸化珪素とを高温、特に400〜3000℃の範囲、好ましくは1400〜1800℃、より好ましくは約1450〜約1600℃未満の範囲の温度で反応させることからなる。
【0163】
本発明によれば、純粋または高純度炭化珪素を、炭素マトリックスおよび/または酸化珪素マトリックス、あるいは炭素および/または酸化珪素を含むマトリックスとともに場合によって単離することができる。特に、それを、恐らくは珪素の含有量を含む生成物として単離する。単離された炭化珪素は、任意の結晶相、例えば、α−またはβ−炭化珪素相、またはこれらの混合物、あるいはさらなる炭化珪素相を有することができる。一般に、全部で150を超える炭化珪素の熱分解相が既知である。該方法によって得られる純粋または高純度炭化珪素は、好ましくは、珪素を含んでいてもごくわずかであり、あるいは記載のマトリックスおよび場合によって珪素を含む炭化珪素に対して、わずかな量、特に0.001〜60質量%、好ましくは0.01〜50質量%の範囲、より好ましくは0.1〜20質量%の範囲の量の珪素が浸透しているにすぎない。本発明によれば、粒子が凝集せず、概して溶融物が形成されないため、一般に、焼成または高温反応において珪素が形成しない。珪素は、溶融物の形成によってのみ形成することになる。珪素のさらなる含有量を珪素の浸透によって制御することができる。
【0164】
純粋または高純度炭化珪素は、本明細書の冒頭の「定義」において定義されているものと解釈される。
【0165】
反応参加物、炭水化物含有炭素源および使用される酸化珪素、ならびに反応器、反応部材、供給ライン、反応物質の貯蔵タンク、反応器内張、外被、ならびに本発明による方法におけるこの目的に必要な純度の添加反応ガスまたは不活性ガスを使用することによって、純粋または高純度炭化珪素あるいは高純度組成物を得ることができる。
【0166】
特に、例えばコークス、カーボンブラック、グラファイトの形の一定含有量の炭素、および/または特にSiO2の形、または好ましくは精製酸化珪素の反応生成物の形の酸化珪素を含む、以上に定義されている純粋または高純度炭化珪素あるいは高純度組成物は、ホウ素元素が好ましくは100ppm未満、特に10ppm〜0.001pptの範囲であり、リンが200ppm未満、特に20ppm〜0.001pptの範囲であるホウ素および/またはリンあるいはホウ素含有および/またはリン含有化合物による汚染プロファイルを有する。炭化珪素におけるホウ素の含有量は、好ましくは、7ppm〜1pptの範囲、好ましくは6ppm〜1pptの範囲、より好ましくは5ppm〜1ppt以下の範囲、または例えば0.001ppm〜0.001pptの範囲、好ましくは分析検出限界領域である。炭化珪素におけるリンの含有量は、好ましくは、18ppm〜1pptの範囲、好ましくは15ppm〜1pptの範囲、より好ましくは10ppm〜1ppt以下の範囲であるべきである。リンの含有量は、好ましくは、分析検出限界領域である。ppm、ppbおよび/またはpptの単位は、全体を通じて、特に、mg/kg、μg/kg、ng/kgまたはmg/g、μg/gもしくはng/g等の単位の質量の割合として理解されるべきである。
【0167】
本発明の方法に使用される、少なくとも1つの炭水化物を含む炭素源、特に純粋炭素源は、本発明によれば、炭水化物または糖、あるいは炭水化物の混合物または炭水化物の好適な誘導体である。天然炭水化物、それらのアノマー、転化糖あるいは合成炭水化物を使用することが可能である。生物工学的手段、例えば発酵によって得られた炭水化物を使用することも可能である。炭水化物または誘導体は、好ましくは、単糖、二糖、オリゴ糖もしくは多糖、または記載の糖の少なくとも2つの混合物から選択される。より好ましくは、単糖、すなわちアルドースまたはケトース、例えば、トリオース、テトロース、ペントース、ヘキソース、ヘプトース、特にグルコースおよびフルクトースばかりでなく、前記モノマーに基づく対応するオリゴおよび多糖、例えばわずかな例を挙げるとラクトース、マルトース、スクロース、ラフィノースなどの炭水化物が該方法に使用される。記載の炭水化物の誘導体を、それらが指定の純度要件を有するのであれば使用することも可能であり、さらに多糖類のわずかな例を挙げるとセルロース、セルロース誘導体、アミロースおよびアミロペクチンを含むデンプン、グリコーゲン、グリコサンおよびフルクトサンも含められる。しかし、前記炭水化物の少なくとも2つの混合物を炭水化物または炭水化物成分として本発明による方法に使用することも可能である。
【0168】
一般に、好ましくは、ホウ素、リンおよび/またはアルミニウム元素に関して十分な純度を有するすべての炭水化物、炭水化物の誘導体および炭水化物混合物を本発明による方法に使用することが可能である。概して、記載の元素は、炭水化物または混合物における不純物として、合計で、100μg/g未満、特に100μg/g未満〜0.001μg/g、好ましくは10μg/g未満〜0.001μg/g、より好ましくは5μg/g未満〜0.01μg/gの量で存在すべきである。本発明に従って使用される炭水化物は、炭素、水素および酸素元素からなり、指定の不純物プロファイルを有することができる。
【0169】
適切には、ドープされた炭化珪素、またはいくらかの窒化珪素を含む炭化珪素を製造する場合は、恐らくは前記不純物プロファイルで、炭素、水素、酸素および窒素元素からなる炭水化物を該方法に使用することが可能である。この場合は窒化珪素が不純物と見なされないいくらかの窒化珪素を有する炭化珪素を製造するために、適切にはキチンを該方法に使用することもできる。
【0170】
工業規模で得られるさらなる炭水化物は、ラクトース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース(HPMC)、および酸化珪素と通常の結晶糖とを配合するために場合によって使用できるさらなる通常のタブレット化補助剤である。
【0171】
より好ましくは、本発明による方法において、経済的な量で利用可能な結晶糖は、溶液の結晶化によって、またはそれ自体既知の方法でサトウキビもしくはサトウダイコンのジュースから得ることができる糖、すなわち市販の結晶糖、特に食品品質の結晶糖である。不純物プロファイルが該方法に好適であれば、一般に、糖または炭水化物を、勿論、液体の形で、シロップとして、固相、すなわち非晶質形を含む相で該方法に使用することができる。次いで、先述の配合および/または乾燥工程が場合によって存在する。
【0172】
結晶化によって効率的に除去されにくい特定の不純物を除去するために、糖を液相、場合によって脱塩水または別の好適な溶媒もしくは溶媒混合物にてイオン交換体により予め精製しておくこともできる。有用なイオン交換体は、強酸性、弱酸性、両性、中性または塩基性イオン交換体であり得る。除去すべき不純物に応じた適切なイオン交換体の選択は、それ自体が当業者に熟知されている。続いて、糖を結晶化させ、遠心し、かつ/または乾燥させ、または酸化珪素と混合して乾燥させることができる。結晶化を、冷却または逆溶剤の添加、あるいは当業者に熟知されている他の方法によって実施することができる。結晶性の部分を濾過および/または遠心によって除去することができる。
【0173】
本発明によれば、少なくとも1つの炭水化物または炭水化物混合物を含む炭素源、特に純粋炭素源は、ホウ素が2[μg/g]未満であり、リンが0.5[μg/g]未満であり、アルミニウムが2[μg/g]未満、好ましくは1[μg/g]未満であり、特に、鉄が60[μg/g]未満であり、鉄の含有量が好ましくは10[μg/g]未満、特に好ましくは5[μg/g]未満である不純物プロファイルを有する。概して、本発明による目標は、ホウ素、リン、アルミニウムおよび/またはヒ素等の不純物の含有量が、それぞれの場合において技術的に可能な検出限界を下回る炭水化物を使用することである。
【0174】
少なくとも1つの炭水化物を含む炭水化物源、本発明によれば炭水化物または炭水化物混合物は、好ましくは、ホウ素、リンおよびアルミニウム、ならびに恐らくは鉄、ナトリウム、カリウム、ニッケルおよび/またはクロムによる以下の汚染プロファイルを有する。ホウ素(B)による汚染は、特に5〜0.00001μg/g、好ましくは3〜0.00001μg/g、より好ましくは2〜0.00001μg/g、本発明によれば2未満〜0.00001μg/gの範囲である。リン(P)による汚染は、特に5〜0.00001μg/g、好ましくは3〜0.00001μg/g、より好ましくは1〜0.00001μg/g、本発明によれば0.5未満〜0.00001μg/gの範囲である。鉄(Fe)による汚染は、100〜0.00001μg/gの範囲、特に55〜0.00001μg/g、好ましくは2〜0.00001μg/g、より好ましくは1未満〜0.00001μg/g、本発明によれば0.5未満〜0.00001μg/gの範囲である。ナトリウム(Na)による汚染は、特に20〜0.00001μg/g、好ましくは15〜0.00001μg/g、より好ましくは12〜0.00001μg/g、本発明によれば10未満〜0.00001μg/gの範囲である。カリウム(K)による汚染は、特に30〜0.00001μg/g、好ましくは25〜0.00001μg/g、より好ましくは20未満〜0.00001μg/g、本発明によれば16未満〜0.00001μg/gの範囲である。アルミニウム(Al)による汚染は、特に4〜0.00001μg/g、好ましくは3〜0.00001μg/g、より好ましくは2〜0.00001μg/g、本発明によれば1.5未満〜0.00001μg/gの範囲である。ニッケル(Ni)による汚染は、特に4〜0.000001μg/g、好ましくは3〜0.00001μg/g、より好ましくは2未満〜0.00001μg/g、本発明によれば1.5未満〜0.00001μg/gの範囲である。クロム(Cr)による汚染は、特に4〜0.00001μg/g、好ましくは3〜0.00001μg/g、より好ましくは2未満〜0.00001μg/g、本発明によれば1未満〜0.00001μg/gの範囲である。
【0175】
本発明によれば、結晶糖、例えば精製糖を使用し、あるいは結晶糖を含水二酸化珪素またはシリカゾルと混合し、乾燥させて、微粒子の形で該方法に使用する。代替的に、任意の所望の炭水化物、特に、糖、転化糖またはシロップを乾性、含水または水性酸化珪素、二酸化珪素、水分を有するシリカ、またはシリカゾル、または以下に指定する酸化珪素成分と混合し、場合によって乾燥工程に送り、好ましくは1nm〜10mmの粒径の粒子の形で該方法に使用することができる。
【0176】
典型的には、平均粒径が1nm〜10cm、特に10μm〜1cm、好ましくは100μm〜0.5cmの糖を使用する。代替的に、平均粒径がマイクロメートル〜ミリメートルの範囲である糖を使用することが可能であり、1マイクロメートル〜1mm、より好ましくは10マイクロメートル〜100マイクロメートルの範囲が好ましい。粒径を、篩分析、TEM(透過型電子顕微鏡法)、SEM(走査型電子顕微鏡法)または光学顕微鏡法によって測定することができる。溶存炭水化物を液体、シロップまたはペーストの形で使用することも可能であり、その場合は熱分解の前に高純度溶媒を蒸発させる。代替的に、溶媒回収のための先述の乾燥工程が存在してもよい。
【0177】
炭素源、特に純粋炭素源としての好適な原料は、また、少なくとも1つの炭水化物を含み、純度要求を満たす当業者に既知のあらゆる有機化合物、例えば炭水化物の溶液である。使用される炭水化物溶液は、水性アルコール溶液、またはテトラエトキシシラン(Dynasylan(登録商標)TEOS)もしくはテトラアルコキシシランを含む溶液であってもよく、該溶液を実際の熱分解の前に蒸発および/または熱分解させる。
【0178】
使用される酸化珪素または酸化珪素成分は、好ましくはSiO、より好ましくはSiOx(X=0.5〜1.5)、SiO、SiO2、酸化(水和)珪素、水性もしくは含水SiO2、湿性、乾性もしくは焼成ヒュームドシリカもしくは沈殿シリカ、例えばAerosil(登録商標)もしくはSipernat(登録商標)、またはシリカゾルもしくはゲル、多孔性もしくは高密度石英ガラス、石英砂、石英ガラス繊維、例えば、光導繊維、石英ガラスビーズ、または前記の酸化珪素の形の少なくとも2つの混合物の形の酸化珪素である。当業者に既知の方法で、個々の成分の粒径を互いに整合させる。
【0179】
本発明の文脈において、ゾルは、固体または液体物質が固体、液体または気体の媒体に極めて微細な分布状態で分散されたコロイド溶液を指すものと理解される(Roempp Chemie Lexikonも参照)。成分の良好な均質化を可能にし、プロセスの前または最中の分離を防止するために、特に、炭水化物を含む炭素源の粒径および酸化珪素の粒径を互いに整合させる
特に内表面積が0.1〜800m2/g、好ましくは10〜500m2/gまたは100〜200m2/gであり、特に平均粒径が1nm以上、または10nm〜10mmであり、特にシリカが高(99.9%)から超高(99.9999%)純度であり、ホウ素、リン、ヒ素およびアルミニウム化合物などの不純物の含有量が、全体で、有利には全組成物に対して10質量ppm未満である多孔性シリカを使用することが好ましい。純度は、当業者に既知のサンプル分析、例えば、ICP−MS(微量汚染の測定のための分析)での検出によって測定される。電子スピン分光測定法によって、特に高感度の検出が可能である。内表面積を、例えば、BET法(DIN ISO 9277、1995)によって測定することができる。
【0180】
酸化珪素の好適な平均粒径は、10nm〜1mmの範囲、特に1〜500μmの範囲である。粒径を、TEM(透過型電子顕微鏡法)、SEM(走査型電子顕微鏡法)または光学顕微鏡法を含む方法によって測定することができる。
【0181】
好適な酸化珪素は、一般に、該方法、および処理生成物に対して好適な純度を有し、破壊的元素および/または化合物をプロセスに導入しないか、または残留物を伴わずに燃焼しないのであれば、酸化珪素を含むすべての化合物および/または鉱物を含む。上記のように、純粋または高純度酸化珪素含有化合物または材料が該方法に使用される。本発明によれば、特に好ましくは、上記定義に従い、かつ/または上記方法の部分工程によって製造される精製酸化珪素が、炭化珪素を製造するための方法に使用される。
【0182】
異なる酸化珪素、特に異なるシリカ等を使用すると、粒子表面のpH値に応じて、凝集が熱分解を通じて異なり得る。一般に、比較的酸性の酸化珪素の場合は、熱分解の結果としての粒子の強い凝集が観察される。したがって、凝集の弱い熱分解物および/または焼成生成物を製造するために、例えば7〜14のpH値の中性またはアルカリ性の表面を有する酸化珪素を該方法に使用することが好ましい。
【0183】
本発明によれば、酸化珪素は、二酸化珪素、特にヒュームドシリカまたは沈殿シリカ、好ましくは高または超高純度のヒュームドシリカまたは沈殿シリカ、本発明によれば精製酸化珪素を含む。「超高純度」は、ホウ素および/またはリン、あるいはホウ素含有および/またはリン含有化合物による酸化珪素の汚染が、ホウ素については10ppm未満、特に10ppm〜0.001pptの範囲であり、リンについては20ppm未満、特に20ppm〜0.001pptの範囲である酸化珪素、特に二酸化珪素を指す。ホウ素含有量は、好ましくは、7ppm〜1pptの範囲、好ましくは6ppm〜1pptの範囲、より好ましくは5ppm〜1ppt以下の範囲、または例えば0.001ppm〜0.001pptの範囲、好ましくは分析検出限界の領域である。酸化珪素のリン含有量は、好ましくは、18ppm〜1pptの範囲、好ましくは15ppm〜1pptの範囲、より好ましくは10ppm〜1ppt以下の範囲であるべきである。リン含有量は、好ましくは、分析検出限界の領域である。
【0184】
石英、珪岩、および/または通常の方法で製造された二酸化珪素も適切である。これらは、特に指定の純度要求を満たすときに、結晶性多形体で存在する二酸化珪素、例えば、モルガナイト(王随)、α−石英(低石英)、β−石英(高石英)、トリジマイト、クリストバライト、コーサイト、スティショバイトまたは非晶質SiO2であってよい。また、好ましくは、シリカ、特に沈殿シリカまたはシリカゲル、ヒュームドSiO2、ヒュームドシリカまたはシリカを該方法および/または組成物に使用することが可能である。通常のヒュームドシリカは、5〜50nmの平均直径および50〜600m2/gの比表面積を有する非晶質SiO2粉末である。上記列挙は、包含的なものであると考えられるべきでない。該方法に好適である他の酸化珪素源も、その酸化珪素源が適切な純度を有する場合に、または精製された後に、該方法に使用できることが当業者に自明である。
【0185】
酸化珪素、特にSiO2を、場合によってさらなる添加剤とともに、特に、少なくとも1つの炭水化物を含む炭素源、ならびに場合によって結合剤および/または成形助剤とともに押出物として、加圧成形体として、かつ/または多孔性ガラスとして粉末状、顆粒状、多孔性または発泡体の形で最初に充填および/または使用することができる。
【0186】
粉末状多孔性二酸化珪素を、特に押出物または加圧成形体としての成形体の形で、より好ましくは、押出物または加圧成形体、例えばペレットまたは煉炭に炭水化物を含む炭素源とともに使用することが好ましい。一般に、二酸化珪素、および場合によって少なくとも1つの炭水化物を鋳型に含む炭素源などのすべての固体反応物質が該方法に使用されるか、または反応の進行のための可能な限り大きな表面積を与える組成物で存在する。加えて、プロセスガスを迅速に除去するために空隙率を増加させることが望ましい。したがって、本発明によれば、炭水化物で被膜を有する二酸化珪素粒子の微粒子混合物を使用することが可能である。特に好適な実施形態において、この微粒子混合物は、特に梱包された組成物またはキットの形で存在する。
【0187】
供給原料の使用量、ならびに酸化珪素、特に二酸化珪素と、少なくとも1つの炭水化物を含む炭素源との特定の比率は、当業者に既知の状況、および/または例えばシリコン製造のための後の方法、焼結方法、電極材料もしくは電極を製造するための方法における要件によって導かれる。
【0188】
本発明による方法において、炭水化物を、全質量に対して1000:0.1〜1:1000の質量比の炭水化物と酸化珪素、特に二酸化珪素の質量比で使用することができる。炭水化物または炭水化物混合物を、酸化珪素、特に二酸化珪素に対して100:1〜1:100、より好ましくは50:1〜1:5、最も好ましくは20:1〜1:2の質量比で使用することが好ましく、好適な範囲は、2:1〜1:1である。好適な変型において、炭水化物を介する炭素を、酸化珪素における変換すべき珪素に対して過剰量で該方法に使用される。適切な実施形態において酸化珪素を過剰に使用する場合は、比率の選択に際して、炭化珪素の形成が抑圧されないようにすべきである。
【0189】
また、本発明によれば、酸化珪素、特に二酸化珪素の珪素含有量に対する、炭水化物を含む炭素源の炭素含有率は、全組成物に対して1000:0.1〜0.1:1000のモル比である。通常の結晶糖を使用する場合は、酸化珪素化合物を介して導入された珪素のモル数に対する、炭水化物を含む炭素源を介して導入された炭素のモル数の好適な範囲は、100モル:1モル〜1モル:100モル(反応物質におけるC対Si)の範囲である。より好ましくは、CとSiが50:1〜1:50、さらにより好ましくは20:1〜1:20、本発明によれば3:1〜2:1または1:1の比で存在する。炭素が炭素源を介して、酸化珪素における珪素に対してほぼ等量、または過剰量で添加されるモル比が好ましい。
【0190】
方法の部分工程は、典型的には、多段階構成を有する。第1の処理工程において、少なくとも1つの炭水化物を含む炭素源を酸化珪素の存在下で熱分解して黒鉛化させる。特に、酸化珪素成分、例えば、SiOx(x=0.5〜1.5)、SiO、SiO2、酸化(水和)珪素の上および/または中に炭素含有熱分解生成物、例えば、いくらかのグラファイトおよび/またはカーボンブラックを含む被膜が形成する。熱分解の後に焼成が行われる。熱分解および/または焼成を1つの反応器にて連続的に、または異なる反応器にて互いに別々に実施することができる。例えば、熱分解は、第1の反応器で実施され、後の焼成は、例えば流動床を備えたマイクロ波で実施される。反応器内部構造物、容器、導入口および/または排出口、ならびに加熱炉内部構造物は、それ自体が処理生成物の汚染に寄与すべきでないことが当業者に熟知されている。
【0191】
方法の部分工程は、一般に、酸化珪素および少なくとも1つの炭水化物を含む炭素源を、均一混合され、分散され、または均質化された形、または配合物の形で、熱分解のための第1の反応器に供給するように実施される。これを連続的に、またはバッチ式で実施することができる。場合によって、供給原料は、実際の反応器に供給される前に乾燥される。付着水または残留水分は、好ましくは、系に残留することができる。総合的方法は、熱分解を実施する第1の段階と、焼成を行うさらなる段階に分けられる。
【0192】
反応を150℃から出発する温度、好ましくは400〜3000℃で実施することができ、第1の熱分解工程(低温法)では、反応を比較的低い温度、特に400〜1400℃で実施することができ、後の焼成をより高い温度(高温法)、特に1400〜3000℃、好ましくは1400〜1800℃で実施することができる。熱分解および焼成を1つのプロセスで直接連続して、または2つの個別的な工程で実施することができる。例えば、熱分解の処理生成物を組成物として梱包し、炭化珪素またはシリコンの製造のためのさらなる処理装置によって後に使用することができる。
【0193】
代替的に、酸化珪素、特に精製酸化珪素と、炭水化物を含む炭素源、特に純粋炭素源との反応は、例えば150℃からの低温度範囲、好ましくは400℃で開始することができ、連続的または段階的に例えば1800℃以上まで、例えば約1900℃まで温度を上昇させることができる。この動作方式は、形成するプロセスガスを除去するのに有利であり得る。
【0194】
さらなる代替的な方法形態において、反応を高温、特に1400℃を超える温度から3000℃、好ましくは1400℃〜1800℃、より好ましくは1450〜約1600℃未満の温度で直接実施することができる。形成した炭化珪素の分解を防止するために、反応を、好ましくは、分解温度未満、特に1800℃未満、好ましくは1600℃未満の温度にて低酸素雰囲気で実施する。本発明に従って単離される処理生成物は、以下に定義される高純度炭化珪素である。
【0195】
実際の熱分解(低温工程)は、一般に、約800℃未満の温度で行われる。熱分解を、所望の生成物に応じて、雰囲気圧力、減圧下または高圧下で実施することができる。真空または低圧が採用される場合は、プロセスガスを効率的に除去することができ、典型的には、熱分解後に高度な多孔性の微粒子構造体が得られる。標準圧力の領域の条件下では、通常、多孔性微粒子構造体が、典型的には比較的高度に凝集される。熱分解を高圧で実施すると、揮発性反応生成物が酸化珪素粒子上で凝縮し、恐らくは互いに、または二酸化珪素の反応性基と反応し得る。例えば、炭水化物から形成する分解生成物、例えば、ケトン、アルデヒドまたはアルコールが二酸化珪素粒子の遊離ヒドロキシル基と反応し得る。これは、プロセスガスによる環境の汚染を有意に軽減する。得られた多孔性熱分解生成物は、この場合は幾分より強く凝集している。
【0196】
所望の熱分解生成物に応じて、広い範囲内で自由に選択可能であり、互いの正確な整合がそれ自体当業者に既知である圧力および温度に加えて、少なくとも1つの炭水化物を含む炭素源の熱分解を、水分、特に反応物質の残留水分の存在下で、または水分を凝縮水、水蒸気もしくは水和物含有成分、例えばSiO2・nH2Oまたは当業者に熟知される他の水和物の形で添加することによって実施することができる。水分の存在は、特に、炭水化物がより容易に熱分解するとともに、反応物質の複雑な予備乾燥を省略できる効果を有する。該方法は、より好ましくは、酸化珪素、特に精製酸化珪素と、少なくとも1つの炭水化物を含む炭素源、特に純粋炭素源とを、水分の存在下で特に熱分解の開始時に高温で反応させることによって炭化珪素を製造するために実施される。水分は、熱分解中に存在することもでき、または計量導入される。
【0197】
熱分解は、一般には、特に少なくとも1つの第1の反応器にて、低温法において約700℃、典型的には200℃〜1600℃の範囲、より好ましくは300℃〜1500℃の範囲、特に400〜1400℃で実施され、グラファイト含有熱分解生成物を得ることが好ましい。熱分解温度は、好ましくは、反応参加物の内部温度であると考えられる。熱分解生成物は、好ましくは、約1300〜1500℃の温度で得られる。
【0198】
該方法は、一般に、低圧力範囲および/または不活性ガス雰囲気下で実施される。好適な不活性ガスは、アルゴンまたはヘリウムである。すなわち、焼成工程において、炭化珪素またはnドープ炭化珪素の他に、方法形態に応じて所望され得る窒化珪素が形成することが意図される場合は、窒素も適切であり得る。焼成工程でnドープ炭化珪素を製造するために、熱分解および/または焼成工程における処理に対して、場合によってキチンなどの炭水化物を介して窒素を加えることができる。特異的にpドープされた炭化珪素の製造も適切であり得る。この特殊な例外では、例えばアルミニウム含有量がより大きくなり得る。アルミニウム含有物質、例えば、トリメチルアルミニウムガスを用いてドーピングを実施することができる。
【0199】
反応器の圧力に応じて、多少凝集され、多少多孔性の熱分解生性物または組成物をこの処理工程で製造することができる。減圧下では、一般に、通常の圧力または高圧で得られたものより凝集が小さく、空隙率が大きい熱分解生成物が得られる。
【0200】
熱分解時間は、指定の熱分解温度で、1分から典型的には48時間の範囲、特に15分〜18時間の範囲、好ましくは30分〜約12時間の範囲であってよい。一般には、熱分解温度までの加熱段階をこれに含めるべきである。
【0201】
圧力範囲は、典型的には1ミリバール〜50バール、特に1ミリバール〜10バール、好ましくは1ミリバール〜5バールである。所望の熱分解生成物に応じて、かつ炭素含有プロセスガスの形成を最小限に抑えるために、該方法における熱分解工程を1〜50バール、好ましくは2〜50バール、より好ましくは5〜50バールの圧力範囲で実施することもできる。選択すべき圧力は、ガスの除去と、凝集と、炭素含有プロセスガスの低減との妥協点であることを当業者は認識している。
【0202】
酸化珪素および炭水化物などの反応参加物の熱分解に続いて、焼成工程が実施される。焼成(高温領域)は、反応参加物が反応して、基本的に、炭素マトリックスおよび/または酸化珪素マトリックスおよび/またはそれらの混合物を場合によって含む高純度炭化珪素を与えるプロセスの部分を指すものと理解される。この工程において、熱分解生成物をさらに炭化珪素に変換し、結晶化の水を場合によって蒸発させ、処理生成物を焼結する。焼成工程(高温工程)は、一般には、熱分解の直後に行われるが、後の時間、例えば熱分解生成物が必要とされるときにそれを実施することもできる。熱分解および焼成工程の温度範囲は、幾分重複してよい。焼成は、典型的には、1400〜2000℃、好ましくは1400〜1800℃の範囲で実施される。熱分解が800℃未満の温度で実施される場合は、焼成工程を、800℃〜約1800℃の温度範囲まで拡大することもできる。熱伝達の向上のために、高純度酸化珪素球体、特に石英ガラス球体および/または炭化珪素球体、あるいは一般には石英ガラスおよび/または炭化珪素粒子を該方法に使用することができる。これらの伝熱物質は、好ましくは、回転チューブ炉またはマイクロ波加熱炉に使用される。マイクロ波加熱炉では、マイクロ波を、粒子が加熱するように、石英ガラス粒子および/または炭化珪素粒子に吸収させることができる。それらの球体および/または粒子は、好ましくは、均一な熱伝達を可能にするために反応系に良好に分布される。
【0203】
プロセスの焼成または高温領域は、典型的には1ミリバール〜50バール、特に1ミリバール〜1バール(大気圧)の範囲、特に1〜250ミリバール、好ましくは1〜10ミリバールの圧力範囲で実施される。有用な不活性ガス雰囲気は、以上に明記されている雰囲気である。焼成時間は、温度および使用される反応物質に左右される。概して、それは、指定の焼成温度で、1分から典型的には48時間の範囲、特に15分〜18時間の範囲、好ましくは30分〜約12時間の範囲である。一般に、加熱段階から焼成までの温度を含めるべきである。
【0204】
酸化珪素と、炭水化物を含む炭素源との反応を高温範囲で直接実施することもでき、その場合は、形成する気体反応参加物およびプロセスガスを反応域から効率的に除去することが可能でなければならない。これを、遊離層、または酸化珪素および/または炭素源の成形体を含むか、あるいは好ましくは、酸化珪素および炭素源(炭水化物)を含む成形体を含む層によって確保することができる。気体反応生成物およびプロセスガスは、特に、水蒸気、一酸化炭素および変換生成物であってよい。高温、特に高温範囲では、主として一酸化炭素が形成する。
【0205】
特に焼成工程における高温での炭化珪素への変換は、好ましくは、400〜3000℃の温度で実施され、焼成を1400〜3000℃、好ましくは1400℃〜1800℃、より好ましくは1450〜1500および1700℃の高温範囲で実施することが好ましい。到達温度は、使用される反応器にも直接左右されるため、温度範囲は、開示されている範囲に限定されるべきでない。温度データは、標準的な高温センサ、例えば封入されたセンサ(PtRhPt素子)による測定、あるいは白熱素子との視覚的比較による色温度による測定に基づく。
【0206】
本発明による方法に使用される有用な反応器は、熱分解および/または焼成のための当業者に既知のすべての反応器を含む。したがって、SiCを形成するための熱分解およびその後の焼成ならびに場合による黒鉛化に、当業者に既知のすべての実験用反応器、パイロットプラント反応器または好ましくは工業規模の反応器、例えば、回転チューブ反応器、あるいはセラミックスの焼結で知られるマイクロ波反応器を利用することが可能である。
【0207】
マイクロ波反応器を高周波(HF)レンジで動作させることができ、「高周波レンジ」は、本発明の文脈において、100MHz〜100GHz、特に100MHz〜50GHzまたは100MHz〜40GHzの範囲であると理解される。好適な周波数レンジは、例えば、1MHz〜100GHzであり、10MHz〜50GHzが特に好適である。反応器を並行して動作させることができる。特に好ましくは、2.4MHzの磁電管を該方法に使用することが特に好適である。
【0208】
高温反応を、鋼またはシリコン、例えば金属シリコンを製造するための通常の溶融炉、あるいは他の好適な溶融炉、例えば工業用加熱炉で実施することもできる。当該溶融炉、特に好ましくは、電気光アークをエネルギー源として使用する電気炉の設計は、当業者に十分に良く知られており、本出願の一部を構成するものでない。直流炉では、それらは、1つの溶融電極および1つのベース電極を有し、あるいは交流炉の形では、典型的には3つの溶融電極を有する。光アーク長は、電極調節器によって調節される。光アーク炉は、一般に、耐火性材料で構成された反応チャンバに基づく。原料、特にシリカ/SiO2上の熱分解炭水化物が、光アークを生成するためのグラファイト電極も配置される上部領域に加えられる。これらの炉は、通常、1800℃の領域の温度で動作される。また、炉内部構造物は、それ自体が製造される炭化珪素の汚染に寄与すべきでないことが当業者に既知である。
【0209】
本発明は、また、本発明による方法の部分工程、特に焼成工程によって得られ、特に単離される、場合によって炭素マトリックスおよび/または酸化珪素マトリックス、あるいは炭化珪素、炭素および/または酸化珪素および場合によって珪素を含むマトリックスとともに炭化珪素を含む組成物を提供する。「単離」は、該方法を実施した後、組成物および/または高純度炭化珪素を得て、特に生成物として単離することを意味する。炭化珪素に、さらに、例えばSiO2を含む不活性化層を設けることができる。
【0210】
次いで、この生成物を、反応参加物、触媒、物品、例えばフィルタ、成形体または未加工体を製造するための材料として、また当業者に熟知される他の用途に利用することができる。さらなる重要な用途は、炭化珪素を含む組成物の反応開始剤および/または反応参加物としての利用、および/または電極材料の製造、もしくは糖コークスおよびシリカを用いた炭化珪素の製造における利用である。
【0211】
本発明は、また、熱分解生成物および場合によって焼成生成物、特に、本発明による方法によって得られる組成物、ならびに特に、酸化珪素、特に二酸化珪素に対する炭素の含有率が400:0.1〜0.4:1000である、該方法の部分工程から単離される熱分解および/または焼成生成物を提供する。
【0212】
尖頭電極間で測定された処理生成物、特に、高密度圧縮粉末状処理生成物の伝導率は、好ましくはκ[m/Ω.m2]=1・10-1〜1・10-6の範囲である。処理生成物の純度と直接関連づけられる低伝導率が、特定の炭化珪素処理生成物にとって望ましい。
【0213】
該組成物あるいは熱分解および/または焼成生成物は、好ましくは、グラファイト含有量が全組成物に対して0〜50質量%、好ましくは25〜50質量%である。本発明によれば、該組成物あるいは熱分解および/または焼成生成物は、炭化珪素の割合が全組成物に対して25〜100質量%、特に30〜50質量%である。
【0214】
本発明は、また、本発明による方法、特に請求項1〜10のいずれか一項に記載の方法によって得られる、コークスおよび/またはカーボンブラックおよび/またはグラファイトまたはそれらの混合物を含む炭素マトリックス、および/または二酸化珪素、シリカおよび/またはそれらの混合物を含む酸化珪素マトリックス、あるいは前記成分の混合物を有する炭化珪素を提供する。特に、以下に詳述するように、SiCを単離し、さらに使用する。
【0215】
本発明の定義によれば、炭化珪素におけるホウ素、リン、ヒ素および/またはアルミニウム元素の含有量は、合計で、好ましくは10質量ppm未満である。
【0216】
本発明は、また、炭素成分および/または酸化珪素成分、あるいは炭化珪素、炭素および/または酸化珪素、特に二酸化珪素を含む混合物を場合によって有し、炭化珪素におけるホウ素、リン、ヒ素および/またはアルミニウム元素の含有量が合計で100質量ppm未満である炭化珪素を提供する。ホウ素、リン、ヒ素、アルミニウム、鉄、ナトリウム、カリウム、ニッケル、クロムによる高純度炭化珪素の汚染プロファイルは、好ましくは、5ppm未満から0.01ppt(質量)、特に2.5ppm未満から0.1pptである。より好ましくは、炭素および/またはSiyzマトリックスを場合によって有する、本発明による方法によって得られる炭化珪素は、B、P、Na、S、Ba、Zr、Zn、Al、Fe、Ti、Ca、K、Mg、Cu、Cr、Co、Zn、Ni、V、Mnおよび/またはPb元素ならびにこれらの元素の混合物を含む、以上に定義されている汚染プロファイルを有する。
【0217】
特に、得られる炭化珪素は、全体的に、酸化珪素、特に二酸化珪素に対する炭素の含有率が400:0.1〜0.4:1000である。該炭化珪素、特に組成物は、グラファイト含有量が好ましくは0〜50質量%、より好ましくは25〜50質量%である。炭化珪素の割合は、以上に定義されている炭化珪素(全体)において、特に25〜100質量%、好ましくは30〜50質量%の範囲である。
【0218】
1つの変型において、本発明は、純粋のシリコンの製造、特にソーラーシリコンの製造における、該方法の炭化珪素または組成物、あるいは熱分解および/または焼成生成物の使用を提供する。本発明は、特に、高温での二酸化珪素、特に精製二酸化珪素の還元によるソーラーシリコンの製造、あるいはコークス、特に糖コークスと、二酸化珪素、特にシリカ、好ましくはヒュームドシリカもしくは沈殿シリカ、またはイオン交換により精製されたシリカもしくはSiO2とを高温で反応させることによる炭化珪素の研磨材料、絶縁体、耐熱性タイルなどの耐火物としての製造、あるいは物品の製造または電極の製造における使用を提供する。
【0219】
本発明は、また、本発明による方法によって得られる炭化珪素または組成物、または熱分解および/または焼成生成物の、触媒としての特にシリコンの製造、好ましくは精製シリコンの製造、特にソーラーシリコンの製造、特に高温での二酸化珪素の還元によるソーラーシリコンの製造における使用、ならびに場合によって半導体用途の炭化珪素の製造における使用、あるいは例えば昇華による超純粋炭化珪素の製造における触媒としての使用、またはシリコンの製造、または特にコークス、好ましくは糖コークスと二酸化珪素、好ましくはシリカによる高温での炭化珪素の製造における反応物質としての使用、あるいは物品の材料、または特に光アーク炉の電極のための電極材料としての使用を提供する。物品、特に電極の材料としての使用は、物品の材料としての該材料の使用、あるいは物品の製造のためのさらに処理された材料、例えば焼結材料または研磨材料の使用を含む。
【0220】
本発明は、さらに、少なくとも1つの炭水化物、特に、純粋または超純水炭化珪素、あるいは炭化珪素、または炭化珪素を含む熱分解および/または焼成生成物を含む組成物の、特に酸化珪素の存在下、好ましくは酸化珪素および/または二酸化珪素の存在下での製造における生成物として特に単離可能な純粋の炭化珪素の使用を提供する。
【0221】
特にさらなる成分を含まない少なくとも1つの炭水化物および酸化珪素、特に精製二酸化珪素から選択されたものを使用して、炭化珪素を製造し、炭化珪素、炭化珪素を含む組成物、または熱分解および/または焼成生成物を反応生成物として単離することが好ましい。
【0222】
本発明は、また、本発明による方法における、少なくとも1つの炭水化物および酸化珪素、特に精製酸化珪素を含む組成物、特に配合物、またはキットの使用を提供する。したがって、本発明は、また、分離配合物を、特に、容器、袋および/または缶などの個別の容器に、特に酸化珪素、特に精製酸化珪素、好ましくは精製二酸化珪素の押出物および/または粉末の形で、場合によって、上記記載に従って使用するためのSiO2上の炭水化物および/または少なくとも1つの炭水化物を含む炭素源の熱分解生成物とともに含むキットを提供する。酸化珪素が、炭水化物を含む炭素源、特に純粋炭素源と、例えばそれが含浸された状態、または炭水化物がSiO2に支持された状態で直に接触して、顆粒、押出物、煉炭、特にペレットまたは煉炭としてキット内の容器に存在し、場合によってさらなる炭水化物および/または酸化珪素が粉末として第2の容器に存在する場合に好適であり得る。
【0223】
本発明は、さらに、本発明による総合的方法における、発明の炭化珪素、または炭化珪素を含む発明の組成物、ならびに場合によってさらなる通常の添加剤、処理助剤、顔料または結合剤を含む物品、特に未加工体、成形体、焼結体、電極、耐熱性部品の使用を提供する。したがって、本発明は、発明の炭化珪素を使用して製造される、発明の炭化珪素を含む物品、および本発明による総合的方法におけるその使用を提供する。
【0224】
炭素源による酸化珪素の還元における活性化剤としてのSiCの使用
冒頭で説明したように、純粋のシリコンを製造するための本発明による方法において炭化珪素を加えることもできる。
【0225】
本発明によれば、純粋のシリコンを製造するための方法の経済的実行可能性を、反応開始剤、反応促進剤および/または炭素源としての機能を果たす活性化剤を添加することによって著しく向上させることができる。同時に、活性化剤、すなわち反応開始剤および/または反応促進剤は、極めて実質的に純粋かつ安価である必要がある。特に好適な反応開始剤および/または反応促進剤、最初に記載した理由により、それ自体がシリコン溶融物に破壊的な不純物を導入しないか、または好ましくは最小限の量のみ不純物を導入するものである必要がある。
【0226】
本発明による方法を様々な方式で実施することができる。特に好適な変型において、酸化珪素、特に二酸化珪素、好ましくは酸沈殿によって精製された二酸化珪素を、炭化珪素を純粋炭素源または活性化剤として酸化珪素に、本発明によれば精製酸化珪素に添加することによって高温で変換させ、あるいは炭化珪素(SiC)を、酸化珪素を含む組成物でプロセスに加える。シリコンを製造するために、酸化珪素、特に二酸化珪素、および炭化珪素をほぼ化学量論比、すなわち約1モルのSiO2と2モルのSiCの比率で添加すると特に好適である。特に、シリコンを製造するための反応混合物は、酸化珪素および炭化珪素からなる。
【0227】
この方法形態のさらなるの利点は、SiCを添加することによって、形成されるSiの1単位当たりに放出されるCOが相応に少なくなることである。したがって、有利には、プロセスを決定的に制限するガス負荷が低減される。したがって、有利には、SiCを添加することによってプロセス強化が可能になる。
【0228】
さらなる特に好適な変型において、精製酸化珪素、特に二酸化珪素を、炭化珪素およびさらなる純粋炭素源を酸化珪素または炭化珪素および純粋炭素源、特に第2の純粋炭素源に、酸化珪素を含む組成物で添加および反応することによって高温で変換させる。この変型において、炭化珪素の濃度を、それが反応開始剤および/または反応促進剤としてより強く作用し、反応物質としての作用が弱まるように低下させることができる。好ましくは、該方法において、約1モルの二酸化珪素を約1モルの炭化珪素および約1モルの第2の炭素源と反応させることも可能である。
【0229】
本発明によれば、精製酸化珪素を高温で変換させることによってシリコンを製造するための方法では、炭化珪素を酸化珪素、または場合によって精製酸化珪素を含む組成物に添加する。特に、電気光アークをエネルギー源として使用する。その目的は、炭化珪素を活性化剤、すなわち反応開始剤および/または反応促進剤として、かつ/または炭素源、すなわち反応物質として該方法に加え、かつ/またはそれを組成物で該方法に加えることである。
【0230】
したがって、炭化珪素を該方法に個別に供給する。炭化珪素を反応開始剤および/または反応促進剤として該方法または組成物に加えることが好ましい。炭化珪素は、約2700〜3070℃の温度でしかそれ自体分解しないため、それを反応開始剤および/または反応促進剤として、あるいは反応物質または伝熱物質としてシリコン製造の該方法に加えることができることは意外であった。極めて意外なことに、電気光アークの発生後に、開始して非常に遅く進行する二酸化珪素と炭素、特にグラファイトとの反応が、粉末状炭化珪素を少量加えると、短時間で極めて著しい反応の増強をもたらすことが実験で確認された。発光現象が観察され、意外にも、後続反応全体が強い明光のなかで特に反応の終了まで継続した。
【0231】
特に炭化珪素に加えて、更なるまたは第2の純粋炭素源としては、炭化珪素から構成されず、炭化珪素を有さず、または炭化珪素を含まない組成物または材料が、シリコンを製造するための方法に関して定義される。したがって、第2の炭素源は、炭化珪素から構成されず、炭化珪素を有さず、または炭化珪素を含まない。第2の炭素源の機能は、どちらかというと純粋の反応物質の機能であるのに対して、炭化珪素は、反応開始剤および/または反応促進剤でもある。有用な第2の炭素源としては、好適な純度を有し、該方法を望ましくない化合物または要素で汚染しなければ、特に、糖、グラファイト、石炭、木炭、カーボンブラック、コークス、無煙炭、褐炭、活性化炭素、石油コークス、木片もしくはペレットとしての木材、米殻もしくは茎、炭素繊維、フレーレンおよび/または炭化水素、特に気体もしくは液体の炭化水素、ならびに記載の化合物の少なくとも2つの混合物が挙げられる。第2の炭素源は、好ましくは記載の化合物から選択される。ホウ素および/またはリンおよびホウ素および/またはリン含有化合物によるさらなるまたは第2の純粋炭素源の汚染は、質量部の単位で、ホウ素については10ppm未満、特に10ppm〜0.001pptの範囲であり、リンについては20ppm未満、特に20ppm〜0.001pptの範囲であるべきである。ppm、ppbおよび/またはpptの単位は、全体を通じて、mg/kg、μg/kg等の単位の質量比率であると理解されるべきである。
【0232】
ホウ素含有量は、好ましくは7ppm〜1pptの範囲、好ましくは6ppm〜1pptの範囲、より好ましくは5ppm〜1ppt以下の範囲、例えば、0.001ppm〜0.001pptの範囲、好ましくは分析検出限界の領域である。リン含有量は、好ましくは18ppm〜1pptの範囲、好ましくは15ppm〜1pptの範囲、より好ましくは10ppm〜1ppt以下の範囲であるべきである。リン含有量は、好ましくは分析検出限界の領域である。一般に、これらの限界値は、ソーラーシリコンおよび/または半導体シリコンの製造に好適であるために、該方法に対するすべての反応物質または添加剤に対する目標である。
【0233】
使用する酸化珪素は、好ましくは、以上に定義された精製または高純度酸化珪素、特に精製または高純度二酸化珪素である。本発明に従って精製された酸化珪素に加えて、さらなる相応に純粋の酸化珪素を、純粋のシリコンを製造するための方法に使用することが可能である。
【0234】
精製酸化珪素の他に、さらなる好適な酸化珪素を添加することも適切であり得る。これらは、石英、珪岩、および/または通常の方法で製造された二酸化珪素である。これらは、結晶性多形体で存在する二酸化珪素、例えば、モルガナイト(王随)、α−石英(低石英)、β−石英(高石英)、トリジマイト、クリストバライト、コーサイト、スティショバイトまたは非晶質SiO2であってよい。加えて、好ましくは、シリカ、ヒュームドSiO2、ヒュームドシリカまたはシリカを該方法および/または組成物に使用することが可能である。典型的なヒュームドシリカは、5〜50nmの平均直径および50〜600m2/gの比表面積を有する非晶質SiO2粉末ある。上記リストは、包含的であると理解されるべきでない。該方法に好適な他の酸化珪素源も該方法および/または組成物に使用できることが当業者に自明である。
【0235】
精製酸化珪素、特に精製二酸化珪素、および炭化珪素、ならびに場合によって第2の炭素源、特に第2の純粋炭素源を、数字が、該方法における反応物質および特に反応混合物に基づくことができる以下の指定のモル比および/または質量百分率で該方法に使用することが好ましい:
1モルの酸化珪素、例えばPatinal(登録商標)などの一酸化珪素に対して、約1モルの第2の純粋炭素源および炭化珪素を反応開始剤または反応促進剤として少量で加えることが可能である。反応開始剤および/または反応促進剤としての炭化珪素の通常の量は、特に酸化珪素、炭化珪素および第2の炭素源、ならびに場合によってさらなる添加剤を含む反応混合物の全質量に基づいて、約0.0001質量%〜25質量%、好ましくは0.0001〜20質量%、より好ましくは0.0001〜15質量%、特に1〜10質量%である。
【0236】
1モルの精製酸化珪素、特に二酸化珪素に対して、約1モルの純粋炭化珪素および約1モルの第2の炭素源、特に純粋炭素源を該方法に加えることも特に好適であり得る。炭素繊維または他の類似の炭素含有化合物を含む炭化珪素を使用する場合は、第2の炭素源のモル単位の量を相応に減少させることができる。1モルの二酸化珪素に対して、約2モルの第2の炭素源および炭化珪素を反応開始剤または反応促進剤として少量で加えることが可能である。反応開始剤および/または反応促進剤としての炭化珪素の通常の量は、特に、酸化珪素、炭化珪素および第2の炭素源、ならびに場合によってさらなる添加剤を含む反応混合物の全質量に基づいて、約0.0001質量%〜25質量%、好ましくは0.0001〜20質量%、より好ましくは0.0001〜15質量%、特に1〜10質量%である。
【0237】
好適な代替において、1モルの二酸化珪素に対して、約2モルの炭化珪素を反応物質として該方法に使用することができ、第2の炭素源が少量で場合によって存在することができる。第2の炭素源の通常の量は、特に、二酸化珪素、炭化珪素および第2の炭素源、ならびに場合によってさらなる添加剤を含む反応混合物の全質量に基づいて、約0.0001質量%〜29質量%、好ましくは0.001〜25質量%、より好ましくは0.01〜20質量%、さらにより好ましくは0.1〜15質量%、特に1〜10質量%である。
【0238】
化学量論的に、二酸化珪素を、特に、以下の反応式に従って炭化珪素および/または第2の炭素源と反応させることができる。
【0239】
SiO2+2C→Si+2CO
SiO2+2SiC→3Si+2CO
または
SiO2+SiC+C→2Si+2CO
または
SiO2+0.5SiC+1.5C→1.5Si+2CO
または
SiO2+1.5SiC+0.5C→2.5Si+2CO等
【0240】
精製二酸化珪素は、2モルの炭化珪素および/または第2の炭素源に対して1モルのモル比で反応することができるため、炭化珪素とさらなるまたは第2の純粋炭素源とのモル比を介して該方法を制御することが可能である。好ましくは、炭化珪素および第2の炭素源を二酸化珪素1モルに対して約2モルの比で該方法に使用するか、または一緒に該方法に存在させる必要がある。したがって、2モルの炭化珪素および場合によって第2の炭素源は、2モルのSiC対0モルの第2の炭素源から0.00001モルのSiC対1.99999モルの第2の炭素源(C)で構成され得る。炭化珪素と第2の炭素源との比は、好ましくは、第1表に従って約1モルの二酸化珪素との反応に対して化学量論的な約2モルの範囲内で変動する。
【0241】
【表1】

【0242】
例えば、2モルのSiCおよび場合によってCは、2〜0.00001モルのSiCおよび0〜1.99999モルのC、特に0.0001〜0.5モルのSiCおよび2モルに対する1.9999〜1.5のC、好ましくは0.001〜1モルのSiCおよび2モルに対する1.999〜1のC、より好ましくは0.01〜1.5モルのSiCおよび2モルに対する1.99〜0.5のCで構成される。特に、約1モルの二酸化珪素に対して0.1〜1.9モルのSiCおよび2モルに対する1.9〜0.1のCを本発明による方法に使用することが特に好適である。
【0243】
本発明による方法または発明の組成物に使用される有用な炭化珪素は、好ましくは、上記定義による純粋または超純粋炭化珪素、および一般にすべての多型相を含む。炭化珪素をSiO2の不活性化層で場合によって被覆することができる。例えば、該方法における反応の反応プロファイルまたは開始を制御することを可能にするため、好ましくは、安定性が異なるいくつかの多型相を該方法に使用することができる。高純度炭化珪素は、無色であり、該方法に好適に使用される。加えて、該方法または組成物に使用される炭化珪素は、汚染が低レベルであるため、製造されるシリコンがソーラーシリコンおよび/または半導体シリコンの製造に好適であれば、工業用SiC(カーボランダム)、金属SiC、SiC結合マトリックス、開放気孔または高密度炭化珪素セラミックス、例えば珪酸塩結合炭化珪素、再結晶化SiC(RSiC)、反応結合珪素浸透炭化珪素(SiSiC)、焼結炭化珪素、高温(均衡)圧縮炭化珪素(HpSiC、HiPSiC)および/または液相焼結炭化珪素(LPSSiC)、炭素繊維強化炭化珪素複合材料(CMC、セラミックマトリックス複合体)および/またはこれらの化合物の混合物であってよい。純粋のシリコンの全汚染が本発明によるものに対応するのであれば、前記炭化珪素を本発明による方法に少量で加えることもできる。したがって、製造される純粋のシリコンの該全汚染が達成されるのであれば、本発明による方法において、炭化珪素を一定量でリサイクルさせて供給することも可能である。得られる純粋のシリコンの全汚染を、異なるバッチを加え、汚染プロファイルを変更することによって制御できることを当業者は認識している。
【0244】
該方法に好適な炭化珪素のホウ素および/またはリンあるいはホウ素含有および/またはリン含有化合物による汚染は、好ましくは、ホウ素については10ppm未満、特に10ppm〜0.001pptの範囲であり、リンについては20ppm未満、特に20ppm〜0.001pptの範囲である。炭化珪素におけるホウ素含有量は、好ましくは、7ppm〜1pptの範囲、好ましくは6ppm〜1pptの範囲、より好ましくは5ppm〜1ppt以下の範囲、例えば0.001ppm〜0.001pptの範囲、好ましくは分析検出限界の領域である。炭化珪素のリン含有量は、好ましくは、18ppm〜1pptの範囲、好ましくは15ppm〜1pptの範囲、より好ましくは10ppm〜1ppt以下であるべきである。リン含有量は、好ましくは、分析検出限界の領域である。
【0245】
炭化珪素は、例えば、半導体、ブレーキディスク材料または遮熱材およびさらなる製品を製造するための複合材料としてますます使用されているため、本発明による方法および組成物または配合物は、使用後のこれらの製品またはそれらの製造において生じる廃棄物もしくは不良品を効率的にリサイクルさせる手段を提供する。リサイクルされる炭化珪素に対する唯一の必要条件は、該方法に対応する十分な純度である。ホウ素および/またはリンについての上記規格を満たす炭化珪素をリサイクルさせることが好ましい。炭化珪素を、a)粉末、微粒子および/または断片の形で、かつ/またはb)多孔性ガラス、特に石英ガラス、押出物および/または加圧成形体、例えばペレットもしくは煉炭、特に上記配合物で、場合によって他の添加剤とともに該方法に加えることができる。
【0246】
すべての反応参加物、すなわち精製酸化珪素、炭化珪素および任意のさらなる純粋炭素源を、それぞれ個別に、または組成物もしくは配合物で連続的に、もしくはバッチ式に該方法に加えることができる。炭化珪素は、好ましくは、当該量で、かつ特に経済的に実行可能な方法形態が達成されるように該方法の過程で加えられる。したがって、反応の連続的な加速化を維持するために、炭化珪素が連続的かつ段階的に加えられる場合に有利であり得る。
【0247】
冒頭に記載したように、反応を、シリコンを製造するための通常の溶融炉にて実施することができる。
【0248】
以上に詳述したように、炭化珪素を、他の反応物質の汚染プロファイルに応じて、炭化珪素の形で、純粋の炭化珪素の形で、または超純粋炭化珪素の形で、あるいはこれらの混合物として使用することができる。炭化珪素は、好ましくは、混合物において予め配合され、特に煉炭化される。全般的に、炭化珪素の汚染が大きいほど、該方法に存在するその量が少なくなるということである。
【0249】
該方法は、
a)炭化珪素および精製酸化珪素、特に二酸化珪素、および場合によってさらなる純粋炭素源を該方法に、特に反応チャンバにそれぞれ個別に供給し、次いで場合によって混合し、かつ/または
b)炭化珪素を精製酸化珪素、特に二酸化珪素、および場合によってさらなる純粋炭素源とともに配合物で、かつ/または
c)精製酸化珪素、特に二酸化珪素を純粋炭素源とともに配合物で、特に押出物もしくは加圧成形体の形で、好ましくはペレットもしくは煉炭として、かつ/または
d)さらなる純粋炭素源を含む組成物における炭化珪素を該方法に供給するか、または加えるように実施することができる。この配合物は、物理的混合物、押出物もしくは加圧成形体または炭素繊維強化炭化珪素であってよい。
【0250】
炭化珪素について既に詳述したように、炭化珪素および/または酸化珪素、ならびに場合によって少なくとも1つのさらなる純粋炭素源を、リサイクルされる材料として該方法に供給することができる。リサイクルされる化合物に対する唯一の必要条件は、ソーラーシリコンおよび/または半導体シリコンを製造することができるシリコンを該方法で形成するための十分な純度を保持することである。
【0251】
また、本発明による方法において、精製酸化珪素に加えて、リサイクルされ、十分な純度を有する酸化珪素を使用することも可能である。これらは、石英ガラス、例えばブロークンガラスを含む。わずかな例を挙げれば、これらは、スプラシル、SQ1、ヘラシル、スペクトロシルAであってよい。これらの石英ガラスの純度を、例えば、157nmまたは193nmなどの異なる波長における吸収率を介して測定することができる。使用される第2の炭素源は、所望の形、例えば粉末形態に変換された、実質的に消費された電極であってよい。
【0252】
本発明による方法によって製造または取得される純粋のシリコンは、本発明によれば、場合によって帯域溶融/制御固化の後に、ソーラーシリコンとして好適になる。それは、好ましくは、a)ソーラーシリコンまたは半導体シリコンを製造するための方法におけるさらなる処理に好適である。
【0253】
製造されたシリコンのホウ素含有および/またはリン含有化合物による汚染は、本明細書の最初に定義した範囲に対応すべきであるが、それは、質量比率で報告すると、ホウ素については10ppm未満〜0.0001pptの範囲、特に5ppm〜0.0001pptの範囲、好ましくは3ppm〜0.0001pptの範囲、またはより好ましくは10ppb〜0.0001pptの範囲、さらにより好ましくは1ppb〜0.0001pptの範囲であり、リンについては10ppm未満〜0.0001pptの範囲、特に5ppm〜0.0001pptの範囲、好ましくは3ppm〜0.0001pptの範囲、またはより好ましくは10ppb〜0.0001pptの範囲、より好ましくは1ppb〜0.0001pptの範囲であってよい。一般に、不純物の範囲に下限はなく、実際は分析法の検出の現行の限界によってのみ決定づけられる。
【0254】
本発明によれば、純粋のシリコンは、冒頭で指定したホウ素、アルミニウム、カルシウム、鉄、ニッケル、リン、チタンおよび/または亜鉛の汚染プロファイルを有する。
【0255】
適切には、炭素、酸素、窒素、ホウ素、または存在するあらゆる他の不純物を溶融シリコンから除去するために、溶融シリコンに希土類金属による処理を施すことができる。
【0256】
本発明は、また、シリコンを製造するための上記方法における使用に特に好適であり、その品質が、好ましくは、ソーラーシリコンとして、あるいはソーラーシリコンおよび/または半導体シリコンの製造に好適である組成物であって、酸化珪素および炭化珪素ならびに場合によって第2の炭素源、特に純粋炭素源を含む組成物を提供する。有用な精製酸化珪素、特に二酸化珪素、炭化珪素および場合によって第2の炭素源は、特に以上に指定したものを含み、好ましくは、また、そこに挙げられている純度要件を満たす。
【0257】
炭化珪素は、以上の記載に従って配合物、a)粉末、微粒子および/または断片の形で存在し、かつ/またはb)多孔性ガラス、特に石英ガラス、押出物および/またはペレットで場合によってさらなる添加剤とともに存在する。さらなる実施形態において、配合物は、珪素浸透炭化珪素および/または炭素繊維を含む炭化珪素を含むことができる。これらの配合物は、他に使用できない例えば製造不良品または消費製品であるため、対応する炭化珪素がリサイクルに送られる場合に好ましい。純度が本発明の方法に十分なものであれば、このように、炭化珪素、炭化珪素セラミックス、例えばホットプレート、ブレーキディスク材料を再びリサイクルすることが可能である。概して、これらの製品は、その製造の結果として、既に十分な純度を有する。したがって、本発明は、シリコンを製造するための方法における炭化珪素のリサイクルを提供することもできる。使用される結合剤は、以上に定義した結合剤、特に、配合物を製造するための耐熱性または高耐火性結合剤であってよい。
【0258】
本発明は、また、太陽電池および/または半導体の基材、あるいは特にソーラーシリコンを製造するための出発材料としての、本発明による方法によって製造されたシリコンの使用を提供する。
【0259】
本発明による総合的方法における使用に好適な反応器
本発明は、また、特にソーラーシリコンまたは半導体シリコンの製造に好適な反応器、装置および電極を提供する。
【0260】
高純度のシリコンを製造することを可能にするために、不純物による汚染を極めて実質的に回避、より好ましくは防止することができる還元炉を使用することが必要である。この種の好適な反応器および装置は、例えば、さらなる発明の主題である。還元における汚染を防止するために、本発明によれば、反応器を高純度グラファイト、炭化珪素で裏張りすること、あるいはそれらから電極を製造することが提案される。
【0261】
ホウ素、リン、ヒ素、アルミニウム、鉄、ナトリウム、カリウム、ニッケル、クロムの含有量は、各元素について、純粋の炭化珪素では、好ましくは5ppm未満〜0.01ppt(質量)であり、高純度炭化珪素では特に2.5ppm未満〜0.1pptである。場合によって炭素および/またはSiyzマトリックスを伴う、酸化珪素と純水炭水化物源、特に精製糖との反応から得られる炭化珪素は、より好ましくは、SiCについて本明細書の最初に定義されている不純物プロファイルを有する。
【0262】
特に好適な純粋または高純度炭化珪素、あるいは高純度組成物は、炭化珪素、炭素、酸化珪素および場合によって少量の珪素を含むか、またはそれらからなり、高純度炭化珪素または高純度組成物は、特に、ホウ素、リン、ヒ素、アルミニウム、鉄、ナトリウム、カリウム、ニッケル、クロム、硫黄、バリウム、ジルコニウム、亜鉛、チタン、カルシウム、マグネシウム、銅、クロム、コバルト、亜鉛、バナジウム、マンガンおよび/または鉛による汚染プロファイルが、純粋の炭化珪素については100ppm未満であり、高純度炭化珪素については好ましくは20ppm未満〜0.001pptであり、高純度完全組成物または高純度炭化珪素に関してはより好ましくは10ppm〜0.001pptである。
【0263】
炭化珪素は、より好ましくは、精製酸化珪素と純水炭水化物源、特に上記の純粋の糖との反応から得られる。反応中に、珪素含有量を、反応条件を介して、または個別の珪素を添加することによって制御することができる。炭化珪素は、好ましくは、炭化珪素を製造するための以上に説明した方法によって製造される。
【0264】
アルミニウム、ホウ素、カルシウム、鉄、ニッケル、リン、チタンおよび亜鉛についての対応する限界値が高純度グラファイトに適用される。これらは、特に、
−ホウ素が、5.5[μg/g]未満、特に5〜0.000001μg/g、好ましくは3〜0.00001μg/g、より好ましくは2〜0.00001μg/g、本発明によれば2未満〜0.00001μg/gの範囲であり、
−リンが、5.5[μg/g]未満、特に5〜0.000001μg/g、好ましくは3〜0.00001μg/g、より好ましくは1未満〜0.00001μg/g、本発明によれば0.5未満〜0.00001μg/gの範囲であり、
−アルミニウムが、4〜0.000001μg/g、好ましくは3〜0.00001μg/g、より好ましくは2.5未満〜0.00001μg/g、本発明によれば2〜0.00001μg/gの範囲であり、
−鉄が、100〜0.000001μg/gの範囲、好ましくは60〜0.00001μg/gの範囲、特に10〜0.000001μg/g、好ましくは5〜0.00001μg/g、より好ましくは2〜0.00001μg/g、さらにより好ましくは1未満〜0.00001μg/g、本発明によれば0.5未満〜0.00001μg/gの範囲であり、
−ナトリウム(Na)が、20〜0.000001μg/g、好ましくは15〜0.00001μg/g、より好ましくは12未満〜0.00001μg/g、本発明によれば10未満〜0.00001μg/gの範囲であり、
−カリウム(K)が、30〜0.000001μg/g、好ましくは25〜0.00001μg/g、より好ましくは20未満〜0.00001μg/g、本発明によれば16未満〜0.00001μg/gの範囲であり、
−ニッケル(Ni)が、4〜0.000001μg/g、好ましくは3〜0.00001μg/g、より好ましくは2未満〜0.00001μg/g、本発明によれば1.5未満〜0.00001μg/gの範囲であり、
−クロム(Cr)が、4〜0.000001μg/g、好ましくは3〜0.00001μg/g、より好ましくは2未満〜0.00001μg/g、本発明によれば1未満〜0.00001μg/gの範囲である。
【0265】
特定の元素による最小限の汚染が好ましく、より好ましくは100ppm未満、最も好ましくは10ppb未満または1ppb未満である。
【0266】
試験方法:
沈殿懸濁物のpHの測定
DIN EN ISO 787−9に基づく方法は、二酸化珪素の水性懸濁物のpHを測定するように機能する。
【0267】
pH測定を実施する前に、pH計(Knickの温度センサ付きcalimatic766pH計)およびpH電極(SchottのN7680複合電極)を、20℃の緩衝液を使用して較正する必要がある。使用する2つの緩衝液がサンプルの推定pHを含むように較正機能を選択すべきである(pH4.00および7.00、pH7.00およびpH9.00、ならびに適切であればpH7.00および12.00の緩衝液)。
【0268】
不純物の含有量の測定:
高分解能誘導結合プラズマ質量分光分析(HR−ICPMS)によるシリカにおける微量元素の測定のための方法の説明(試験報告書A080007580と同様)
1〜5gのサンプル材料を±1mgの精度でPFAビーカーに量り取る。1gのマンニトール溶液(約1%)および25〜30gのフッ化水素酸(約50%)を添加する。手短に傾斜させた後で、PFAビーカーを加熱ブロックで110℃に加熱して、ヘキサフルオロ珪酸および過剰のフッ化水素酸としてサンプルに存在するシリコンを徐々に蒸発させる。残渣を0.5mlの硝酸(約65%)および数滴の過酸化水素溶液(約30%)で約1時間にわたって溶解させ、超純水で10gまで増量させる。
【0269】
微量元素の測定のために、消化溶液から0.05mlまたは0.1mlを採取し、それぞれの場合においてポリエチレンサンプル管に移し、内部標準としての0.1mlのインジウム溶液(c=0.1mg/l)と混合し、希硝酸(約3%)で10mlまで増量する。異なる希釈率でのこれらの2つのサンプル溶液の調製は、内部品質保証、すなわち測定またはサンプル調製で誤差が生じたかどうかについての試験に役立つ。基本的に、ただ1つのサンプル溶液を用いて実験することも可能である。
【0270】
インジウム以外の分析すべきすべての元素が存在する多元素原液(c=10mg/l)を使用して、4つの較正溶液(c=0.1;0.5;1.0;5.0μg/l)を調製し、再び0.1mlのインジウム溶液(c=0.1mg/l)を添加して最終容量を10mlとする。加えて、最終容量が10mlになるように、0.1mlのインジウム溶液(c=0.1mg/l)を用いてブランク値溶液を調製する。
【0271】
ブランク値溶液、較正溶液およびサンプル溶液における元素の含有量を高分解能誘導結合質量分光分析(HR−ICPMS)および外部較正によって定量する。カリウム、ヒ素およびセレン元素に対して少なくとも4000または10000の質量分解能(m/Δm)で測定を実施する。
【0272】
以下の実施例は、本発明をより詳細に説明することを意図するものであるが、いかなる場合もそれを限定しない。
【図面の簡単な説明】
【0273】
【図1】反応容器の壁に付着した熱分解生成物及び反応容器の壁に付着していないグラファイト含有微粒子熱分解生成物を示す。
【図2】実施例3aによる熱分解生成物の顕微鏡画像である。
【図3】焼成生成物のサンプルの顕微鏡画像である。
【図4】焼成生成物のサンプルの顕微鏡画像である。
【0274】
全般的な実施形態において、精製二酸化珪素の還元のための方法を一般的な処理系統で以下のように実施することができる。例えば、市販の水ガラスから出発して、第1の工程において、必要であれば脱塩水を用いて水ガラスを1〜30質量%、好ましくは1〜20質量%、より好ましくは2〜10質量%、最も好ましくは2〜6質量%の含有量まで希釈することによって水ガラスを精製することができる。固体の構成成分を、当業者に既知の通常の濾過処理によって除去することができる。
【0275】
次いで、得られた相を、特に工程c)に従って強酸性陽イオン交換体に通し、陽イオン交換体の一端から生じる水相の活性シリカを特にpH0.5の酸性初期充填物に徐々に滴加し、ゲル形成を待つ。
【0276】
代替的に、本発明によれば、ゲル形成の後に、特にアンモニアを添加することができる。
【0277】
続いて、得られた二酸化珪素を除去することができ、その場合は、洗浄媒体は、2未満、好ましくは1未満のpHを有する。洗浄媒体が、数滴のH22の添加後、黄色を実質的に示さなくなるまで洗浄を継続する。精製酸化珪素を場合によって乾燥させることができる。
【0278】
しかし、それを、好ましくは、湿った状態で少なくとも部分的に結晶糖(純粋炭素源)と混合し、場合によってサーマルブラックおよび結合剤としてのシロキサンと混合する。得られたペースト状混合物を、例えば押出機で成形し、少なくとも部分的な乾燥に送る。本発明によれば、湿性二酸化珪素を、配合物、特に煉炭として還元工程に送るために、炭化珪素および場合によって糖と混合し、成形し、次いで乾燥または焼成する。
【0279】
好適な代替において、陽イオン交換体から生じる活性シリカの水相は、ゲルを形成することができる。ゲルをアルゴン下で形成し、好ましくは、有機アミンまたはアンモニアを純粋な形で添加することによって加速させることができる。
【0280】
次いで、活性炭素を含む純粋炭素源を得るために、得られた煉炭を熱分解させることができる。熱分解した炭素(活性炭素)を、シリコンを製造するための後のプロセスに加えて、伝熱性および/または導電性を向上させる。炭化珪素含有煉炭を製造するために、煉炭のさらなる部分を熱分解させ、焼成することができる。純粋のシリコンへの実際の還元工程において、その割合の一酸化炭素の還元のための後の段階で、これらの炭化珪素含有煉炭を本発明による方法に加える。炭化珪素のさらなる機能は、活性化剤の機能、反応促進剤の機能、および伝導性を向上させるための機能である。
【0281】
精製二酸化珪素を還元するために、精製二酸化珪素、サーマルブラックおよび糖を含む煉炭、ならびに煉炭に前記熱分解を施し、熱分解および焼成が施された煉炭を約1800℃で光アーク炉にて純粋のシリコンに還元することが好ましい。炭化珪素含有量の添加を用いて、一酸化炭素によるプロセスのガス負荷を直接制御することができる。本発明によれば、反応は、内張が高純度炭化珪素で構成された記載のサンドイッチ設計の反応器を備えた光アーク炉にて実施される。使用される電極は、好ましくは、炭素繊維分を有する区画化された珪素浸透炭化珪素電極である。金属流出口から溶融シリコンを排出することができ、必要であれば制御固化に送ることができる。
【0282】
得られたシリコンは、ソーラーシリコンに必要な純度を有していた。
【0283】
ゲル形成に好適な精製シリカゾルを達成するために、これらの処理工程を首尾良く実施する方法について、工程c)、d)、d.2)、d.3)を以降により詳細に説明する。
【0284】
シリカゾルは結合剤として使用され、ゾルは、ゾルにおけるコロイド二酸化珪素の粒径が小さいほど大きな結合力を受けることになることを当業者は認識している。一方、ゾルは、ゾルにおけるコロイド二酸化珪素の粒径が小さいほど安定性が低くなる。したがって、後者の欠点を補償するために、ゾルにおけるSiO2濃度を低下させなければならない。概して、ゾルを結合剤として使用するときは、高いSiO2濃度の存在とともに、十分な結合力を有することが所望される。ゾルにおけるコロイド二酸化珪素の粒径分布に関して、広い粒径分布は、狭い粒径分布を有するに二酸化珪素より強い結合力をゾルに付与する。
【0285】
精製酸化珪素を製造するための方法は、30〜50質量%のSiO2濃度を有し、二酸化珪素以外の他の多価金属、特に金属酸化物を300ppm以下の量で含み、コロイド二酸化珪素粒子が10〜30nm(ナノメートル)の平均粒径を有する安定水性シリカゾルの形成を介して進行することができる。
【0286】
該方法の工程c)に使用されるアルカリ金属珪酸塩は、市販の工業製品として得られる任意のものであってよいが、珪素と、そこに存在するアルカリ金属とのモル比がSiO2/M2O(Mは、アルカリ金属、特にナトリウムまたはカリウムである)として約0.5〜4.5である水溶性アルカリ金属珪酸塩が好ましい。特に、工業規模のプラントにおける安価な工業製品としての精製酸化珪素の製造には、好ましくは、安価な工業製品であり、SiO2/Na2Oのモル比が約2〜4であるナトリウム水ガラスが使用される。
【0287】
しかし、工業用途の市販の水ガラス生成物は、一般に、不純物として二酸化珪素以外の他の多価金属、特に金属酸化物を、水ガラスにおけるSiO2含有量に基づいて約500〜10000ppmの量で含む。
【0288】
工程c)において、例えばアルミニウム型または鉄型の多価金属酸化物を含むアルカリ金属珪酸塩を、珪酸塩に由来するSiO2分として2〜6質量%の濃度で水に溶解させることによって得られるアルカリ金属珪酸塩の水相が使用される。
【0289】
工程c)に使用するための水素型の強酸性陽イオン交換樹脂は、水ガラス含有水溶液からアルカリ金属イオンを除去するために今日まで使用されてきた任意のものであってよく、これは、工業用途の商品として容易に入手可能である。その樹脂の一例は、Amberlite IR−120である。
【0290】
工程c)において、上記アルカリ金属珪酸塩含有水溶液を水素型の上記強陽イオン交換樹脂と接触させる。その接触を、好ましくは、イオン交換樹脂、特にAmberlite(登録商標)IR120が充填されたカラムに水溶液を0〜60℃、好ましくは5〜50℃で通すことによって実施し、カラムを通過した溶液を活性シリカ含有水溶液として、2〜6質量%のSiO2濃度および2〜4のpHで工程d)において回収する。水素型の強酸性陽イオン交換樹脂の量は、アルカリ金属珪酸塩含有水溶液におけるすべてのアルカリ金属イオンを水素イオンに交換するのに十分な量であってよい。溶液をカラムに通す速度は、好ましくは、空間速度として毎時約1〜10である。得られた相d)が既に十分な純度の多価金属を有する場合は、それを、特にアンモニアの添加によるゲル形成に送ることができる。
【0291】
そうでない場合は、塩酸、硝酸および硫酸などの無機酸を含む強酸を工程d.2)工程1)において添加する。硝酸は、特に、アルミニウムおよび鉄分の除去率を高めるのに最も好適である。強酸を、工程d)の後に得られた活性シリカ含有水相に、相が得られた後に分解する前に添加し、好ましくはそれが得られた直後に添加する。添加する強酸の量は、得られた溶液のpHが0〜2、好ましくは0.5〜1.8の範囲内になる量である。添加後、相を0.5〜120時間にわたって0℃〜100℃の温度に維持する。
【0292】
工程d.2)工程2)で使用する水素型の強酸性陽イオン交換樹脂は、前の工程c)で使用するのと同じであってよい。工程d.2)工程2)で使用するヒドロキシル型の強塩基性陰イオン交換樹脂、特にAmberlite(登録商標)IR440は、通常のシリカゾルから陰イオンを除去するために今日まで使用されてきた任意のものであってよく、当該材料は、商品として容易に得られる。
【0293】
工程d.2)工程2)において、工程d.2)工程1)で得られた水溶液を最初に水素型の上記強酸性陽イオン交換樹脂と接触させる。その接触を、好ましくは、水素型の上記強酸性陽イオン交換樹脂が充填されたカラムに水溶液を0〜60℃、好ましくは5〜50℃および毎時2〜20の空間速度にて、溶液におけるすべての金属イオンのイオン交換に十分な量で通すことによって実施する。続いて、得られた水相を、好ましくはそれが得られた直後に、工程d.2)工程3)において、ヒドロキシル型の上記強塩基性陰イオン交換樹脂と0〜60℃、好ましくは5〜50℃の温度で接触させる。その接触を、ヒドロキシル型の上記強塩基性陰イオン交換樹脂が充填されたカラムに水相を毎時1〜10の空間速度で通すことによって実施することもできる。得られた水溶液を、それが得られた直後に、水素型の上記強酸性陽イオン交換樹脂と、0〜60℃、好ましくは5〜50℃で接触させることができる。その接触を、水素型の上記強酸性陽イオン交換樹脂が充填されたカラムに水溶液を毎時1〜10の空間速度にて、溶液におけるすべての金属イオンのイオン交換に十分な量で通すことによって実施することができる。続いて、水相が工程d.2)工程4)で得られ、得られた溶液は、SiO2濃度が2〜6質量%であり、pHが2〜5である活性シリカ含有水相である。次いで、これを次の工程d.3)工程5)で使用する。
【0294】
工程d.3)工程5)で使用する、水酸化ナトリウムまたは水酸化カリウムで構成される水相を、好ましくは95%以上の純度を有する工業用途の商品の水酸化ナトリウムまたは水酸化カリウムを好ましくは2〜20質量%の濃度で脱陽イオン化工業水に溶解させることによって得ることができる。工程d.3)工程5)において、水酸化ナトリウムまたは水酸化カリウム含有水溶液を、工程d.2)工程4)から得られた活性シリカ含有水溶液に、好ましくはそれが得られた直後に、60〜200のSiO2/M2O(Mは以上に記載したように定義される)のモル比で添加する。その添加を、0℃〜60℃の範囲の温度で実施することができるが、好ましくは、恐らくはより短時間にわたって室温で実施する。その添加により、SiO2濃度が2〜6質量%であり、pHが7〜9である安定化活性シリカ含有水溶液を得ることが可能になる。そのようにして調製された水相は長時間にわたって安定であるが、好ましくは、30時間以内に次の工程d.3)工程6)で使用される。
【0295】
工程d.3)工程6)を実施するための装置は、例えば、撹拌機、温度制御装置、液面センサ、減圧装置、液体供給装置または蒸気冷却装置を備えた通常の酸抵抗性、アルカリ抵抗性および圧力抵抗性の容器であってよい。工程d.3)工程6)において、工程d.3工程5)で得られた安定化活性シリカ含有水溶液のすべてまたは一部(1/5〜1/20)を最初に原液として容器に導入する。工業規模の製造プラントにおいて、この工程による水相全体を原液として使用し、さらなる安定化活性シリカ含有水相を上記連続的工程a)〜d.3)工程5)によって個別に調製することが好適である。
【0296】
新たに調製した水相を、原液の5〜20倍の量で、供給溶液の個別の調製後30分以内に供給溶液として使用する。一方、前の工程d.2)工程5)で調製した溶液の1/5〜1/20の部分を工程d.3)工程6)における原液として使用する場合は、残留する水相を供給溶液として使用する。
【0297】
容器の内部の工程d.3)工程6)における液温を70〜100℃、好ましくは80〜100℃に設定し、容器の内部圧力を、水が制御条件下で液体から蒸発できるように制御する。加えて、供給溶液の供給速度および蒸発した水の除去速度を、容器内の液体の量が一定に維持され、供給溶液の供給を50〜200時間以内に終了できるように調整する。水相の供給および蒸発水の除去を、工程d.3)工程6)を通じて不断かつ連続的に、または間隔的に実施するが、好ましくは、容器内の液体の量が工程を通じて一定に維持されるように実施する。供給溶液の供給速度を一定に維持することも好適である。
【0298】
工程d.3)工程7)に使用される水素型の強酸性陽イオン交換樹脂は、前の工程c)およびd.2)工程2)に使用されたものと同じであってよい。それに使用されるヒドロキシル型の強塩基性陰イオン交換樹脂も、工程d.2)工程2)に使用されたのと同じ通常の陰イオン交換樹脂であってよい。安定水性ゾルを工程d.3)工程7)において、工程d.2)工程2)と同様にしてイオン交換樹脂と接触させることができる。陰イオン交換樹脂との接触により得られた水相を陽イオン交換樹脂と接触させることも特に好適である。
【0299】
その工程においてゲル形成に使用されるアミンまたは好ましくはアンモニアは、工業用途の商品であってよいが、好ましくは高純度品である。それを、アンモニア濃度が約5〜30質量%のアンモニア水溶液の形で使用することが望ましい。アンモニアの代わりに、第四級水酸化アンモニウム、水酸化グアニジンまたは水溶性アミンを使用することも可能である。しかし、特殊な理由により望ましくない場合を除いては概してアンモニアが好適である。
【0300】
ゲル形成において、上記アンモニアを工程b.2)、b.3)で、または工程d.3)工程8)の後に、好ましくはゾルの形成の直後に水性ゾルに添加する。その添加を0〜100℃の温度で実施することができるが、好ましくは室温で実施する。添加するアンモニアの量は、好ましくは、得られたシリカゾルが8〜10.5のpHを有することができる量である。場合によって、所望される場合は、いずれの種類の金属成分も含まない酸またはアンモニア塩を水相、特にゾルに1000ppm以下の量で添加することができる。
【0301】
シリカゾルにおけるコロイド粒子の平均粒径を、窒素ガス吸収法、所謂BET法によって測定される比表面積を介して計算する。コロイド粒子の粒径を電子顕微鏡で観察することができる。10nm(ナノメートル)の平均粒径を有する、工程b.2)、b.3)において、または工程d.3)工程8)の後に得られたシリカゾルは、最小で約4nm(ナノメートル)から最大で約20nm(ナノメートル)までの粒径分布を有し、30nm(ナノメートル)の平均粒径を有するさらなるシリカゾルは、最小で約10nm(ナノメートル)から最大で約60nm(ナノメートル)までの粒径分布を有する。
【0302】
好適な方法において、アルカリ金属珪酸塩含有水相を水素型の強酸性陽イオン交換樹脂と接触させると、アルカリ金属イオンを含まない活性シリカの水相が形成される。水溶液中の活性シリカは、粒径が3nm以下のシリカまたはそのオリゴマーの形で存在し、水溶液は不安定であるため、アルミニウムなどの多価金属の存在下でも約100時間以内にゲル化する。溶液におけるSiO2濃度が大きいほど、または溶液の温度が高いほど、そのような不安定性が観察される程度が大きくなる。よって、大量のシリカゾルを工業プラントで製造する場合は、工程a)またはc)で形成される水相における活性シリカの濃度が約6質量%を超えず、そのような低いSiO2濃度を有する水相を室温で形成するのがよい。特に、原料に存在するアルカリ金属または多価金属をシリカポリマー粒子の内部に含めると、当該金属が粒子から除去されにくくなる。したがって、水溶液は、溶液中のシリカの重合が進行しにくくなるように比較的低い濃度を有するべきである。さらに、室温でも避けることができないシリカの漸進的重合の回避に関しては、形成された活性シリカの全水溶液を、次の工程において、形成後できるだけ早く使用すべきである。後に形成されるシリカゾルの濃縮工程を通じて除去される水の量が多すぎるため、活性水性シリカ溶液における約2質量%のSiO2濃度は不十分である。工程c)において、工程c)で形成される活性シリカの水溶液のSiO2濃度が2〜6質量%になり、そのようにして形成された活性シリカ含有水相を、その形成直後、または純度が十分であるときに次の工程d.2)に直接使用することができ、特にアンモニアの添加によるゲル形成に直接送るように、アルカリ金属珪酸塩含有水溶液のSiO2濃度を2〜6質量%に調整してから、それを陽イオン交換樹脂と接触させる。
【0303】
工程c)において、水相を、有利には空間速度で毎時約1〜10の溶液流速でこの工程に使用するのが好ましい陽イオン交換樹脂充填カラムに供給して、恐らくは比較的大量の金属イオンを溶液から除去する。加えて、重合、すなわち活性シリカ溶液の粘度上昇またはゲル化が、カラム通過中に生じにくくなるように、溶液温度が0〜60℃であることが所望される。工程c)、d)、d.2)工程2)およびd.2)工程2)〜d.2)工程4)において、活性シリカ含有水相を安定化するための特定の条件を必要としない。したがって、これらの工程において上記SiO2濃度および温度を維持することが重要である。
【0304】
工程d.2)工程1)において添加される強酸は、活性シリカまたはそのポリマーの内部に結合し、解離イオンの形で存在しないアルカリ金属または多価金属などの汚染性金属成分を溶液中の解離イオンに変換する機能を有する。活性シリカは、重合度が低いため、多価金属を活性シリカから容易に抽出することができる。工程c)で得られる活性シリカ含有水溶液に対する強酸の添加を可能な限り早く完了させることも所望される。
【0305】
しかし、得られた活性シリカ含有水溶液のpHが0未満になるように、添加する強酸の量が増加した場合は、この工程d.2)工程1)における金属成分の除去を向上させても、後の工程d.2)工程2)〜d.1)工程4)における陰イオンの除去が困難になる。さらに、得られた溶液のpHが2を超える量で強酸を添加すると、金属成分の除去の効果が低下する。強酸の中で、硝酸は、アルミニウム成分または鉄成分などの金属成分を除去するための特に高度な作用を有する。多価金属成分を除去するための強酸の作用は、相の温度および処理時間にも左右される。例えば、温度は、0〜40℃、処理時間は10〜120時間である。前者が40〜60℃である場合は、後者は、好ましくは2〜10時間であり、前者が60〜100℃である場合は、後者は、好ましくは0.5〜2時間である。相を長時間にわたって強酸で処理すると、水相の粘度が上昇し、それがゲル化することになる。
【0306】
工程d.2)工程2)〜d.2)工程4)において、溶液に溶解された金属イオンおよび工程d.2)工程1)において添加された酸の陰イオンを、陽イオン交換樹脂および陰イオン交換樹脂を用いて除去する。第1の陽イオン交換樹脂処理による溶液は、工程d.2)工程1)において添加された酸の陰イオンを含むため、溶存金属イオンは、極めて単純に溶液中に残存する。陰イオン交換樹脂処理後の溶液中の残留金属イオンの量は、溶液が5〜7のpHを有する量であってよい。しかし、この場合、溶液は約1時間以内にゲル化することになる。陰イオン交換樹脂による処理によって溶液の陰イオンを除去した後に実施される陽イオン交換樹脂による二段階処理は、有利には、当該望ましくない溶存金属イオンを除去することもできる。
【0307】
工程d.2)工程4)による活性シリカ含有水相は、6時間以内にゲル化するほど不安定であるため、それを次の工程d.3)工程5)において可能な限り早く、好ましくは溶液の形成の直後に使用する。不安定な活性シリカ含有水相に添加する水酸化ナトリウムまたは水酸化カリウムの量が、SiO2/M2Oのモル比に基づいて60未満である場合は、活性シリカが容易に重合され、その結果として工程d.3)工程6)における粒子の成長が不十分になるか、または形成されるゾルが不安定になる。しかし、一方、モル比が200を超えるほどその量が小さくなると、得られた相を工程d.3)工程6)と同様に処理してもコロイド二酸化珪素粒子の粒径を大きくすることが不可能になる。工程d.3)工程5)で得られた溶液が室温でかなり長時間にわたって安定しても、その中の活性シリカの重合が高温で加速されることになる。したがって、工程d.3)工程5)で得られた溶液を次の工程d.3)工程6で30時間以内に使用することが特に好適である。工程d.3工程5)において添加する水酸化ナトリウムまたは水酸化カリウムは、次の工程d.3)工程6)において10〜30nmの粒径までのコロイド二酸化珪素粒子のより高度な成長速度をもたらす。この速度は、例えば、アンモニアまたはアミンなどの他の塩基の同じモル量の2倍以上である。
【0308】
そのような高度な成長速度により、工程d.3)工程6)における供給溶液の供給速度を増加させることができるため、本発明による最終製品としてのシリカゾルの製造速度が極めて高レベルに高められる。加えて、工程d.3)工程6)において当該高速で実施される供給溶液の供給は、形成されるシリカゾル中のコロイド状の不均質二酸化珪素の製造およびその中の粒子の粒径分布の拡大に関しても有利である。工程d.3)工程6)において、供給溶液の供給と同時に、形成されたゾルから水を蒸発させる。蒸発した水を反応系から除去して、高度に濃縮されたシリカゾルの製造速度を高める。工程d.3)工程6)における液温が70℃未満であると、コロイド二酸化珪素粒子が相の中で十分に成長できないため、得られた溶液は、平均粒径が10nm以下のコロイド二酸化珪素粒子を含む。そのような小さいシリコン粒子を含むシリカゾルが濃縮されると、液体の粘度が上昇するか、液体がゲル化するため、SiO2濃度が30質量%以上の安定なゾルを得ることが不可能になる。液体の温度が70℃を超えると、成長速度が大きくなる。しかし、温度が100℃を超えると、成長速度は、形成された粒子の平均粒径の制御が困難になる程度まで上昇する。
【0309】
添加する供給溶液の量が原液の量の5倍未満である場合は、粒子を、10nmを超える平均粒径まで成長させることができない。この場合、濃度が30質量%以上の濃度の高濃度安定ゾルまたはシリカゾルを得ることも不可能である。
【0310】
形成されるコロイド精製二酸化珪素粒子の平均粒径は、供給される供給液の量が増加するに従って大きくなる。しかし、供給される供給液の量が原液の量の20倍を超えると、形成される粒子の平均粒径は、不利なことに、30nmを超える。そのような場合は、高度な結合力を有するゾルを得ることができない。
【0311】
以上の状況にもかかわらず、供給液の量と、形成されるコロイド粒子の平均粒径との関係は、供給溶液の供給速度によってさらに影響される。例えば、供給溶液を原液の5〜20倍の量で50時間以内に原液に添加する場合は、平均粒径が10nmを超えるコロイド二酸化珪素粒子を形成することができない。これは、恐らく以下の理由に基づく。添加された供給溶液中の活性シリカの一部がコロイド二酸化珪素粒子の表面に付着せず、水相に新たなコア粒子を形成する。特に、供給溶液の供給速度が大きい場合は、当該新たなコアのために消費される活性シリカの量と、二酸化珪素粒子の成長のために消費される量との比率が大きくなる。したがって、この場合、平均粒径が10nm以上のコロイド二酸化珪素粒子を効率的に形成することが不可能である。
【0312】
したがって、速度が大きすぎる供給溶液の供給を避けるべきである。しかし、200時間を超える時間にわたる原液の5〜20倍の量での供給溶液の供給は、シリカゾルの工業的製造には不十分である。工業プラントにて一定の品質でゾルまたはシリカゾルを製造するために、供給溶液の供給を、好ましくは、50〜20時間の時間にわたって連続的に実施する。工程d.3)工程6)において、容器の内部の液面が、供給溶液の供給、および連続的に実施される容器内の液体の濃縮により、容器の壁に沿って変動すると、シリカが変動する液面に沿って容器の壁に付着するため、好ましいゾル生成物を得ることができない。よって、工程d.3)工程6)において、供給溶液の供給液および蒸発水の除去速度は、好ましくは、容器の液面が常に同じになるものである。工程d.3)工程6)で形成されるシリカゾルのSiO2濃度が50質量%を超えると、得られるゾルの粘度が望ましくない値まで上昇する。したがって、工程d.3)工程6)でそのような高濃度のゾルを形成することは望ましくない。工程d.3)工程6)において、予めゾルに供給されたナトリウムおよびカリウムイオンを陽イオン交換体によって再び除去する。カリウムまたはナトリウムイオンの除去の向上のために、1つの陽イオン交換体を用いて2つ以上の段階で処理することが好ましい。工程d.3)工程7)で得られた陽イオンがないゾルは、活性シリカ含有水相と同じ不安定さを示さないが、安定性は、まだ不十分である。したがって、イオン交換体による処理をあまり高温で実施しないのが好ましい。ゾルは、可能な限り工程d.3)工程8)の後、好ましくは工程d.3)工程8)の直後にゲル形成の工程に存在する。安定化のために、好ましくは、アンモニアをゾルに添加し、その結果として、得られたゾルは、8〜10.5のpHを有することができる。アンモニアを高純度のアンモニア水溶液として購入することができる。使用されるアンモニアの特定の利点は、シリカゾルから容易に蒸発させることができることである。
【0313】
酸化珪素水溶液の精製の実施例
実施例1
最初に、滴下漏斗、撹拌機、温度計およびpH電極を備えた1000mlガラス装置に、SiO2含有量が25g/lの700mlの水ガラスを充填した。滴下漏斗に100mlの10%硫酸を充填し、水ガラスを加熱マントルで88℃に加熱した。約9.5のpHから、pH電極を設置し、約8.5のpHまでの酸性化のために硫酸を使用した。
【0314】
わずかに濁ったゾルを得て、それを最初にAmberlite IR−120陽イオン交換体によって精製した。150mlの第1の部分の後、610gの主要部分を採取した。陽イオン交換体の後、溶液は、1.0のpHおよび43.8ms/cmの伝導率を有していた。濁りは、陽イオン交換体の前とほぼ同じ程度であった。
【0315】
その後、ゾルをAmberlite IRA−400陰イオン交換体に通した。150mlの第1の部分を排出し、435gの主要部分を回収した。次いで、ゾルは、6.65のpHおよび54μs/cmの伝導率を有していた。濁りが小さくなったが、依然として非常にわずかに認識できた。
【0316】
続いて、0.2gの40%水酸化カリウム溶液(5滴)を使用して、8.45の最終pHに調整し、99μs/cmの伝導率を確定した。
【0317】
403g(395ml)のゾルを、撹拌機および蒸留システムを備えた500mlの三口フラスコにて濃縮した。この目的のために、360mlの水を蒸留除去した。
【0318】
pHが8.7であり、SiO2濃度が26.8質量%である30gの濃縮ゾルを得た。乾燥生成物がガラス状のフレークを形成した。
【0319】
濃縮ゾルは、第2表に示される不純物を有しており、ゲル化によって高純度二酸化珪素に変換された。
【0320】
実施例2:
標準的な水ガラスを、SiO2含有量が4質量%になるまで希釈し、硫酸によって1.09のpHに調整した(1051.05gの脱塩水で希釈され、650gの10%硫酸に添加された298.95gの水ガラス)。
【0321】
続いて、177.5gの10%水酸化ナトリウム溶液を使用して、2.01のpHを確定した。
【0322】
溶液を終夜放置し、翌日、pH2で酸性イオン交換体(Amberlite IR−120)に添加した。293gの第1の部分が終了すると、約1のpHが測定された。第1の部分を廃棄し、1.45のpHおよび49.1ms/cmの伝導率を有する1882.5gの酸性水ガラスの主要部分を回収した。
【0323】
1700gの酸性水ガラスを991gの脱塩水および29.0gの溶存NaOHに添加した。これにより、添加の終了の後数秒以内に再び溶解した白色沈殿が形成された。透明溶液は、10.83のpHおよび33.1ms/cmの伝導率を有していた。水ガラスは、第2表に示される不純物を有していた。
【0324】
そのようにして精製された水ガラスの部分を蒸発によって濃縮し、次いで沈殿懸濁物のpHを2未満に維持するように硫酸溶液(96質量%)に添加した。最初に2未満のpHが洗浄媒体に維持された適切な洗浄工程、濾過および乾燥の後に、高純度SiO2を得た。
【0325】
【表2】

【0326】
実施例−熱分解
比較例1
市販の精製糖を保護ガス下で、石英管内で溶融させ、次いで約1600℃に加熱した。この過程で、反応混合物が著しく発泡し、一部が漏出し、カラメル形成も観察され、熱分解生成物が、反応容器の壁に付着した(図1a参照)。
【0327】
実施例3
市販の精製糖を20:1の質量比でSiO2(Sipernat(登録商標)100)と混合し、溶融させ、約800℃に加熱した。この過程で、カラメル形成が観察されず、発泡も生じなかった。有利には反応容器の壁に実質的に付着しないグラファイト含有微粒子熱分解生成物を得た。
【0328】
熱分解および焼成実施例
比較例2
市販の精製糖を石英管内で溶融させ、次いで約1600℃に加熱した。加熱の過程で反応混合物が著しく発泡し、一部が石英管から漏出した。同時に、カラメル形成が観察される。形成された熱分解生成物が反応容器の壁に付着する(図1a)。
【0329】
実施例4a:
市販の精製糖を1.25:1の質量比でSiO2(Sipernat(登録商標)100)と混合し、溶融させ、約800℃に加熱した。カラメル形成が観察される。発泡はない。特に、反応容器の壁に付着していないグラファイト含有微粒子熱分解生成物が得られる(図1b)(図2は、実施例3aによる熱分解生成物の顕微鏡画像である)。
【0330】
熱分解生成物は、SiO2粒子の上に分布し、恐らくはそれらの孔の内部にも分布していた。微粒子構造が保持される。
【0331】
実施例4b:
市販の精製糖を5:1の質量比でSiO2(Sipernat(登録商標)100)と混合し、溶融させ、最初に約800℃に加熱し次いでさらに約1800℃に加熱した。カラメル形成が観察される。発泡はない。グラファイト分を有する炭化珪素が得られる。図3および4は、焼成生成物の2つのサンプルの顕微鏡画像である。XPSスペクトルおよび結合エネルギーの測定を用いて、炭化珪素の形成を実証した。加えて、Si−O構造を検出した。光学顕微鏡下での金属光沢によって、グラファイトが形成されていると結論づけられた。
【0332】
実施例5:
熱分配のためのSiO2球体を含む回転チューブ炉において、SiO2粒子上に塗布された微粒子配合物を高温で変換する。例えば、糖をシリカ水溶液に溶解した後、乾燥させ、必要であれば均質化することによって調製する。残留水分がまだ系に存在していた。約1kgの配合物を使用した。
【0333】
回転チューブ炉での滞留時間を微粒子配合物の含水量から導く。回転チューブ炉は、配合物の乾燥のための予備加熱域を備えており、次いで配合物は、400℃〜1800℃の温度の熱分解および焼成域を通った。乾燥工程、熱分解および焼成工程を含む滞留時間は、約17時間であった。プロセス全体にわたって、水蒸気およびCOなどの形成プロセスガスを回転チューブ炉から簡単な方法で除去した。
【0334】
使用したSiO2は、ホウ素含有量が0.1ppm未満であり、リン含有量が0.1ppm未満であり、鉄含有量が約0.2ppm未満であった。糖の鉄含有量を配合前に測定したところ0.5ppm未満であった。
【0335】
熱分解および焼成後に再び含有量を測定したところ、ホウ素およびリン含有量が0.1ppm未満であり、鉄含有量が1ppmに増加した。生成物が鉄によって汚染された炉の部分と接触することによって接触したことによってのみその鉄の増加を説明することができる。
【0336】
実施例6:
実験用回転チューブ炉を予め高純度炭化珪素で被覆したことを除いては、実施例5を繰り返した。これと、熱分配のためのSiO2球体、およびSiO2粒子上に塗布された糖を含む微粒子配合物とを高温で反応させた。例えば、糖をシリカ水溶液に溶解した後、乾燥させ、必要であれば均質化することによって調製する。残留水分がまだ系に存在していた。約10gの配合物を使用した。
【0337】
回転チューブ炉での滞留時間を微粒子配合物の含水量から導く。回転チューブ炉は、配合物の乾燥のための予備加熱域を備えており、次いで配合物は、400℃〜1800℃の温度の熱分解および焼成域を通った。乾燥工程、熱分解および焼成工程を含む滞留時間は、約17時間であった。プロセス全体にわたって、水蒸気およびCOなどの形成プロセスガスを回転チューブ炉から簡単な方法で除去した。
【0338】
使用したSiO2は、ホウ素含有量が0.1ppm未満であり、リン含有量が0.1ppm未満であり、鉄含有量が約0.2ppm未満であった。糖の鉄含有量を配合前に測定したところ0.5ppm未満であった。
【0339】
熱分解および焼成後に再び含有量を測定したところ、ホウ素およびリン含有量が0.1ppm未満であり、鉄含有量も0.5ppm未満であった。
【0340】
実施例7:
光アーク炉において、SiO2粒子上の熱分解糖の微粒子配合物を高温で変換する。熱分解糖の配合物を、約800℃における回転チューブ炉での熱分解によって予め調製した。約1kgの微粒子熱分解配合物を使用した。光アーク炉における反応中に、形成されたプロセスガスCOを、SiO2粒子の微粒子構造によって形成された中間スペースを介して容易に逃がし、反応チャンバから除去することができる。利用した電極は、高純度グラファイト電極であり、高純度グラファイトを使用して反応器底部を同様に裏張りした。光アーク炉を1〜12kWで動作させた。
【0341】
反応後、グラファイト分を有する、すなわち炭素マトリックスの高純度炭化珪素を得た。
【0342】
使用したSiO2は、ホウ素含有量が0.17ppm未満であり、リン含有量が0.15ppm未満であり、鉄含有量が約0.2ppm未満であった。糖の鉄含有量を配合前に測定したところ0.7ppm未満であった。
【0343】
熱分解および焼成後に再び炭化珪素含有量を測定したところ、ホウ素およびリン含有量がそれぞれ0.17ppm未満および0.15ppm未満であり、鉄含有量も0.7ppm未満であった。
【0344】
実施例8:
実施例5による熱分解配合物の対応する反応をマイクロ波反応器で実施した。このために、SiO2上の熱分解糖の乾燥微粒子配合物の0.1kgを、1ギガワットを超える周波数で炭化物マトリックスの炭化珪素に変換した。反応時間は、導入電力および反応物質に直接左右される。
【0345】
反応を炭水化物およびSiO2粒子から実施すると、反応時間が相応に長くなる。
【0346】
実施例9:
SiO2(AEROSIL(登録商標)OX5O)とC(グラファイト)を約75:25の質量比で、SiCの存在下で反応させた。
【0347】
処理手順:エネルギー源として機能する電気光アークをそれ自体既知の方法で発生させる。SiO2とCの間の気体化合物の生成を通じて反応が徐々に開始するのが観察される。続いて、1質量%の粉末状SiCを添加する。非常に短時間の後、発光によって極めて有意な反応の増強が観察される。続いて、SiCの添加後、反応は、強い明橙色の光(約1000℃)の中でさらに進行した。反応が終了した後で得られた固体は、その典型的な暗褐色(M.J.Mulligan et al.Trans.Soc.Can.[3]21 III[1927]263/4;Gmelin 15,part B p.1[1959])に基づいて、かつ走査型電子顕微鏡法(SEM)によって、シリコンであることが確認された。
【0348】
実施例10
SiO2(AEROSIL(登録商標)OX5O)とCを約65:35の質量比で、SiCの存在下で反応させた。
【0349】
処理手順:エネルギー源として機能する電気光アークをそれ自体既知の方法で発生させる。SiO2とCの反応が徐々に開始する。気体の発生が観察される。1質量%の粉末状SiCを添加すると、短時間後に、発光によって認識可能である反応の有意な増強がもたらされる。SiCの添加後、反応は、強い点滅光の中でさらに進行した。反応が終了した後に得られた固体は、SEMおよびEDX分析(エネルギー分散型X線分光分析)によって、シリコンであることが確認された。
【0350】
比較例3
SiO2(AEROSIL(登録商標)OX5O)とCを65:35の混合物として高温(>1700℃)にてチューブ内で反応させた。反応は、なかなか開始せず、注目すべき進歩がなかった。明るい光は観察されなかった。
【図1a)−1b)】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
水相に実質的に溶解された酸化珪素として精製された酸化珪素、好ましくは同様に精製された二酸化珪素を、1以上の純粋炭素源で還元することを含む、純粋のシリコンを製造するための方法であって、
前記酸化珪素が、酸化珪素に基づいて、金属に関して300ppm以下、好ましくは100ppm未満、より好ましくは50ppm未満、最も好ましくは10ppm未満の他の多価金属の含有量を有する、前記方法。
【請求項2】
酸化珪素の水性精製は、酸化珪素水溶液をイオン交換体、好ましくは少なくとも1つの陰イオンおよび/または陽イオン交換体と接触させる少なくとも1つの処理工程を含むことを特徴とする、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記精製された酸化珪素を、ゲル形成または噴霧乾燥によって、あるいは酸化珪素溶液を10質量%以上のSiO2の濃度まで濃縮した後に酸性化剤と接触させることによって酸化珪素溶液から得ることを特徴とする、請求項1または2に記載の方法。
【請求項4】
ゲル形成をアンモニアの添加によって実施し、かつ/またはゲルの焼成を1500℃までの温度、特に約1400℃の温度で実施することを特徴とする、請求項3に記載の方法。
【請求項5】
水相に実質的に溶解された酸化珪素の精製は、
a)水相、特に、SiO2の含有量が1〜30質量%の水相に溶解された珪酸塩を提供し、
可溶性アルカリ土類金属および/または遷移金属塩を場合によって添加し、水相を場合によって濾過して、溶解しにくいアルカリ土類金属および/または遷移金属塩および/または他の不溶性成分を除去し、
水相と、ホウ素またはホウ素化合物を錯化する固定化合物とを場合によって接触させる工程と、
b)二酸化珪素以外の他の多価金属酸化物をさらに含む水相を、2〜6質量%のSiO2の含有量に場合によって調整する工程と、および
c)水素型の強酸性陽イオン交換樹脂と、水相の温度を0℃〜60℃の範囲として水相における実質的にすべての他の金属イオンのイオン交換に十分な量で接触させる工程と、
d)SiO2濃度が2〜6質量%であり、pHが0〜4である活性シリカの水相を得る工程と、
e)精製酸化珪素を得る工程と
を含むことを特徴とする、請求項1から4までのいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
代替的に、工程d)による水相を、工程e)の前に、
a.2)場合によって、予めSiO2の濃度を10質量%以上にした工程d)による水相を酸性化剤に添加するか、または酸性化剤を添加する工程、または
b.2)ゲル形成を実施した後に、場合によって熱後処理および/または噴霧乾燥を行う工程、または
c.2)水相を噴霧乾燥する工程、または
d.2)第1の工程1)において、強酸水溶液を、工程d)による活性シリカで構成された水相に、pHが0〜2.0になるように添加し、そのようにして得られた水相を0.5〜120時間にわたって0℃〜100℃に維持し、第2の工程2)において、得られた水相と、水素型の強酸性陽イオン交換樹脂とを、水相の温度を0〜60℃の範囲として水相における実質的にすべての他の金属イオンのイオン交換に十分な量で接触させ、次いで第3の工程3)において、水相と、ヒドロキシル型の強塩基性陰イオン交換樹脂とを、水相の温度を0〜60℃の範囲として、水相における実質的にすべての陰イオンのイオン交換に十分な量で接触させ、次いで第4の工程4)において、活性シリカ以外の他の溶存物質を実質的に含まず、2〜6質量%のSiO2濃度および2〜5のpHを有する、得られた活性シリカの水相を得る工程
のいずれか1つの工程によりさらに処理することを特徴とする、請求項5に記載の方法。
【請求項7】
代替的に、d.2)の第4の工程4)で得られた水相を、
a.3)d.2)の第4の工程4)による水相を、10質量%以上のSiO2濃度まで濃縮し、酸性化剤に添加するか、または酸性化剤を添加する工程、または
b.3)ゲル形成を実施した後に、場合によって熱後処理および/または噴霧乾燥を行う工程、または
c.3)水相を噴霧乾燥する工程、または
d.3)第5の工程5)において、水性水酸化ナトリウムおよび/または水酸化カリウム相を活性シリカの水相に、SiO2/M2Oのモル比が60〜200であり、Mが独立してナトリウムまたはカリウムであり、添加された水酸化物に由来し、SiO2が活性シリカの水相に由来し、得られた水相の温度も0〜60℃に維持され、SiO2濃度が2〜6質量%であり、pHが7〜9の活性シリカの安定化水相が維持されるように添加し、第6の工程6)において、活性シリカの安定化水相を原液として部分的または全面的に容器に加え、原液を70〜100℃に維持し、容器を標準圧力下または減圧下で維持することができ、特に、先の部分工程d.3)工程5)によるさらなる活性シリカの安定化水相を、除去された水とほぼ同量で供給することによって、除去された水を計量導入して、SiO2濃度が30〜50質量%であり、コロイド二酸化珪素の粒径が10〜30nmである安定水性シリカゾルを形成し、第7の工程7)において、安定水性シリカゾルと、水素型の強酸性陽イオン交換樹脂とを0〜60℃にて、ゾルに存在する実質的にすべての金属イオンが交換される量で接触させ、続いて、得られた水相とヒドロキシル型の強塩基性陰イオン交換体とを0〜60℃にて、酸化珪素以外の他の多価金属、特に金属酸化物を実質的に含まない水性酸性シリカゾルが第8の工程8)で得られる量で接触させ、ゲル形成を実施する工程
のいずれか1つの工程によりさらに処理することを特徴とする、請求項6に記載の方法。
【請求項8】
工程b.2)、b.3)における、または工程d.3)工程8)の後のゲル形成を、アミンおよび/またはアンモニアの添加により実施することを特徴とする、請求項6または7に記載の方法。
【請求項9】
ゲル形成を0〜100℃の範囲の温度で実施し、特に、pHを0〜7に維持して安定水性ゾルを形成することを特徴とする、請求項8に記載の方法。
【請求項10】
炭化珪素を活性化剤および/または炭素源として1つの処理工程で、好ましくは、精製酸化珪素が、炭化珪素であってよい少なくとも1つの純粋炭素源、および/または炭化珪素および/または珪素とともに存在するように、
a)精製酸化珪素および少なくとも1つの純粋炭素源、および場合によって炭化珪素、および場合によって珪素を含む配合物、および/または
b)精製酸化珪素、および場合によって炭化珪素、および場合によって珪素を含む配合物、および/または
c)少なくとも1つの純粋炭素源、および場合によって炭化珪素、および場合によって珪素を含む配合物
に添加し、それぞれの配合物が、結合剤を場合によって含むことを特徴とする、請求項1から9までのいずれか一項に記載の方法。
【請求項11】
純粋炭素源は、天然由来の有機化合物、炭水化物、グラファイト、コークス、石炭、カーボンブラック、サーマルブラック、熱分解炭水化物、特に熱分解糖を含むことを特徴とする、請求項1から10までのいずれか一項に記載の方法。
【請求項12】
炭水化物を、消泡剤としての酸化珪素、好ましくは高純度二酸化珪素の存在下で熱分解し、このようにして、炭素源として必要な炭素の少なくとも一部を得る行程を含むことを特徴とする、請求項1から11までのいずれか一項に記載の方法。
【請求項13】
炭水化物、好ましくは炭水化物の水溶液を、少なくとも1つのイオン交換体と接触させることによって熱分解の前に精製することを特徴とする、請求項12に記載の方法。
【請求項14】
炭水化物、好ましくは炭水化物の水溶液、および酸化珪素、好ましくは高純度二酸化珪素を熱分解の前に成形処理することを特徴とする、請求項12または13のいずれかに記載の方法。
【請求項15】
光アーク炉、熱反応器、誘導炉、回転チューブ炉および/またはマイクロ波加熱炉にて、精製酸化珪素を1つ以上の純粋炭素源で還元することを特徴とする、請求項1から14までのいずれか一項に記載の方法。
【請求項16】
高純度耐火性材料で裏張りされた反応器チャンバにて精製酸化珪素を1つ以上の純粋炭素源で還元し、使用される場合には電極が高純度材料からなることを特徴とする、請求項1から15までのいずれか一項に記載の方法。
【請求項17】
溶融純粋シリコンを得て、帯域溶融または制御固化によってさらに精製することを特徴とする、請求項1から16までのいずれか一項に記載の方法。
【請求項18】
a)不純物を含む酸化珪素、好ましくは二酸化珪素を、水相に溶解された酸化珪素に変換する工程と、
b)水相に溶解された珪酸塩を、特に水素型の強酸性陽イオン交換樹脂と接触させることによって精製する工程と、
c)精製酸化珪素の沈殿物を得る工程と、および
d)そのようにして得られた精製酸化珪素を、1つ以上の炭素源の存在下で、必要であれば活性化剤を添加することによってシリコンに変換する工程と
を含むことを特徴とする、請求項1から17までのいずれか一項に記載の方法。

【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公表番号】特表2012−504103(P2012−504103A)
【公表日】平成24年2月16日(2012.2.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−529520(P2011−529520)
【出願日】平成21年9月28日(2009.9.28)
【国際出願番号】PCT/EP2009/062515
【国際公開番号】WO2010/037709
【国際公開日】平成22年4月8日(2010.4.8)
【出願人】(501073862)エボニック デグサ ゲーエムベーハー (837)
【氏名又は名称原語表記】Evonik Degussa GmbH
【住所又は居所原語表記】Rellinghauser Strasse 1−11, D−45128 Essen, Germany
【Fターム(参考)】