説明

二重サッシ

【課題】 遮音効果に優れ且つ外観が良い二重サッシを提供する。
【解決手段】 本発明の二重サッシ1は、サッシ枠7と、サッシ枠内周側を閉塞する内側閉塞体3と、内側閉塞体3の室外側においてサッシ枠7の内周側を閉塞する外側閉塞体5とを備え、内側閉塞体3と外側閉塞体5の間には中間空気層20が設けてあり、サッシ枠7は、サッシ枠の上下左右枠21、23、25の少なくとも一つの枠は、吸音材31と枠内空気層35、37とを内部に有しており、吸音材31の内周側面31aが中間空気層20に面し且つ外周側面31d、室内側面31b及び室外側面31cのうちの少なくとも一つの面が枠内空気層35、37に面している。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ガラス面及び枠と障子の間から侵入する音を減衰する二重サッシに関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、内側閉塞体と外側閉塞体との間の中間空気層におけるサッシ枠内周面に吸音材を設けた二重サッシが開示されている。
【0003】
【特許文献1】特開2002−61465号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、サッシ枠内周面に吸音材を配置しただけでは、高速道路騒音や航空機騒音に多く含まれる周波数成分(高周波域)及び一般道路騒音や電車騒音に多く含まれる周波数成分(低周波域)の両方に対して十分な遮音効果を得ることができないという問題がある。また、上述の従来技術のようにサッシ枠内周面に吸音材を設けた場合は、吸音材が外部から見えるので外観を損なうという問題点があった。
【0005】
そこで、本発明は、遮音効果に優れ且つ外観が良い二重サッシの提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
請求項1に記載の発明は、サッシ枠と、サッシ枠内周側を閉塞する内側閉塞体と、内側閉塞体の室外側においてサッシ枠内周側を閉塞する外側閉塞体とを備え、内側閉塞体と外側閉塞体の間には中間空気層が設けてあり、サッシ枠の上下左右枠の少なくとも一つの枠は、吸音材と枠内空気層とを内部に有しており、吸音材の内周側面が中間空気層に面し且つ吸音材の外周側面、室内側面及び室外側面のうちの少なくとも一つの面が枠内空気層に面していることを特徴とする。
【0007】
請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の発明において、枠内空気層は吸音材の室内側面及び室外側面に面していることを特徴とする。
【0008】
請求項3に記載の発明は、請求項1又は2に記載の発明において、サッシ枠は複数の連通口を有する目板をサッシ枠内周側に着脱自在に有し、目板で吸音材を隠蔽してあることを特徴とする。
【発明の効果】
【0009】
請求項1に記載の発明によれば、サッシ枠の上下左右枠の少なくとも一つの枠は、内部に吸音材を配置していると共に、吸音材の室内側面、室外側面及び外周側面のうちの少なくとも一方の面が枠内空気層に面しているので、これらの枠内空気層によっても音を減衰できるので高い遮音効果を得ることができる。
また、吸音材のみでは高周波音しか減衰できないが、枠内空気層を吸音材に連通させることにより、低周波音も合わせて減衰できる。これにより、高周波域及び低周波域の両方に対して効果的な遮音を図ることができる。
吸音材はサッシ枠の内部に設けており、外部から吸音材が見え難くいので、外観が良い。
【0010】
請求項2に記載の発明によれば、請求項1に記載の発明と同様の効果を奏すると共に、必要以上に枠の見込み寸法を大きくすることなく高い遮音効果を得ることができる。
【0011】
請求項3に記載の発明によれば、請求項1又は2に記載の発明と同様の効果を奏すると共に、サッシ枠内周側の目板を脱着することにより吸音材のメンテナンスが容易にできる。また、目板には連通口が形成してあるので、目板をサッシ枠に装着してあるときにも中間空気層と吸音材との連通を確保することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
以下に、添付図面を参照して本発明の実施の形態を説明する。図1は本発明の第1実施の形態にかかる二重サッシの縦断面図であり、図2は本発明の第1実施の形態にかかる二重サッシの横断面図であり、図3は本発明品の遮音効果試験の結果を比較例と共に示すグラフである。
第1実施の形態にかかる二重サッシ1は、内側閉塞体3と、外側閉塞体5と、内側閉塞体3と外側閉塞体5とに共通のサッシ枠7とを備えている。
内側閉塞体3は、引違いサッシであり、互いに引き違う2枚の障子6は框9と框9に取付けられた単板ガラス11とから構成されている。各障子6は、各々サッシ枠7の室内側レール13を移動して開閉するようになっている。
外側閉塞体5は、引違いサッシであり、互いに引き違う2枚の障子8は框15と框15に取付けられた単板ガラス17とから構成されている。各障子8は、各々サッシ枠7の室外側レール19を移動して開閉するようになっている。
サッシ枠7の内周側には内側閉塞体3と外側閉塞体5との間に中間空気層20が設けられている。
サッシ枠7は、上枠21と、下枠23と、左右の竪枠25、25とから構成されており、上枠21と、左右の竪枠25、25とは内部に吸音材31を配置する吸音材収納空間33と、吸音材収納空間33の室内側に設けた室内側枠内空気層35と、吸音材収納空間33の室外側に設けた室外側枠内空気層37とを有しており、これらの吸音材収納空間33と、室内側枠内空気層35と、室外側枠内空気層37とは連通されている。
尚、本実施の形態では、室内側枠内空気層35と室外側枠内空気層37とは略同じ容積としてある。
吸音材収納空間33が位置するサッシ枠7の内周壁7aには、吸音材31の脱着孔39が設けてある。脱着孔39には、目板41が着脱自在に取付けてあり、吸音材31を隠蔽している。
目板41はパンチングメタルであり複数の連通口42が形成されており、吸音材収納空間33と中間空気層20との連通が図られている。
吸音材31は、発泡コンクリートやセラミック等の剛性吸音材であり且つ略直方体形状を成しており、内周側面31aが中間空気層20に面し、室内側面31bが室内側枠内空気層35に面し、室外側面31cが室外側枠内空気層37に面して、各々の空気層に連通している。
【0013】
次に、本実施の形態にかかる二重サッシ1の作用及び効果について説明する。二重サッシ1において、中間空気層20に伝播した音は、開口部39からサッシ枠7の内部27に設けた吸音材31により減衰されると共に、サッシ枠7の内部27で吸音材31の室内側にある室内側枠内空気層35及び室外側枠内空気層37の各枠内空気層でも減衰されるので、遮音性能を高めることができる。特に、吸音材31で遮音し難い周波数(例えば、低周波数)の遮音を室内側枠内空気層35及び室外側枠内空気層37の各枠内空気層で減衰できるので、各周波数の音でもバランス良く遮音できる。
本実施の形態では、中間空気層20の音エネルギーが吸音材31で減衰されて室内側空気層35及び室外側枠内空気層37へ移動して各枠内空気層35、37で減衰され、再度吸音材31を通って減衰されて中間空気層20に戻ったり、室内側空気層35から吸音材31を通過して室外側枠内空気層37へ移動したり、室外側空気層37から吸音材31を通過して室内側枠内空気層37へ移動したり、中間空気層20から再び吸音材31へ移動して減衰されるという工程を繰り返すことによって遮音効果を得ることができる。
また、中間空気層20に伝播した音に限らず、サッシ枠7に直接伝播した音もサッシ枠7の内部27にある吸音材31、室内側枠内空気層35及び室外側枠内空気層37で減衰できるので高い遮音効果を得ることができる。
吸音材31はサッシ枠7の内部27に設けており、外部から見え難くいので、外観が良い。また、吸音材31はサッシ枠7の内部27に納めることにより、形状、材質等の制限が少なくでき使用する吸音材の自由度が高い。
吸音材31が目板41によりサッシ枠の内周側から隠蔽されているので、更に外観が良いと共に、目板41が脱着自在であるから吸音材31のメンテナンスが容易である。
尚、本実施の形態において、サッシ枠内部27の室内側枠内空気層35及び室外側枠内空気層37の少なくとも一方の容積を増せば、より遮音効果を高めることができる。
【0014】
次に、本発明品と比較例品とについて遮音効果試験を行ったので、その試験及び結果について説明する。
試験では、内側閉塞体と外側閉塞体とのそれぞれに厚み5mmの単板ガラスを用い、内側閉塞体と外側閉塞体間の中間空気層は115mmとした。
上述した実施例と同様にサッシ枠の上枠及び竪枠の内部に吸音材31と室内側枠内空気層35と室外側枠内空気層37とを設けたものを本発明品とした。尚、吸音材31は上枠及び竪枠における各断面積が各々30mm×50mmであり、室内側枠内空気層35及び室外側枠内空気層37は上枠及び竪枠における断面積が各々約70mm×50mmである。
一方、中間空気層20は本発明品と同じとし、サッシ枠内部に吸音材や枠内空気層を設けていないものを比較例品1とした。
また、中間空気層は本発明品と同じとし、サッシ枠内部に本実施の形態と同様に吸音材のみを設け、枠内空気層を設けていないものを比較例品2とした。
上記本発明品と比較例品1及び2について、JIS A 1416に規定する測定方法に基づいて各周波数毎に音響透過損失を測定したので、その結果を下記表1に示すと共に、本発明品と比較例品1及び2の各値をプロットしたものを図3のグラフに示す。尚、下記表1及び図3のグラフにおいて、○は本発明品であり、●は比較例品1、△は比較例品2である。
【0015】
【表1】

【0016】
図3から明らかなように、本発明品は比較例品1との比較においては、低周波域(周波数125Hz〜約400Hz)及びコインシデンス領域(周波数2530Hz近辺の高周波域)において音響透過損失に優れ、低周波域とコインシデンス領域との間では音響透過損失は略同等であった。また、本発明品と比較例品2との比較においては、コインシデンス領域では音響透過損失が略同等であり、低周波域とコインシデンス領域との間では本発明品は比較例品2に比べて音響透過損失が僅かに劣っているが、低周波域では本発明品の方が優れていた。即ち、本発明品は、低周波域とコインシデンス領域とを総合的に見ると、比較例品1及び2よりも遮音効果に優れている。
尚、図3において、T−1〜T−5で示すのは、遮音性能の適合等級(T−1〜T−4まではJIS A 4706に規定してあり、T−5はT−4等級線の各周波数に5dBを加算することにより設定した)である。遮音性能の適合等級について、表1の測定値から判定したところ、本発明品はT−5の適合等級であった。
【0017】
次に、図4を参照して本発明の第2実施の形態を説明するが、以下に説明する実施の形態において、上述した第1実施の形態と同一の作用効果を奏する部分には同一の符号を付することによりその部分の詳細な説明を省略し、以下の説明では上述した実施1実施の形態と主に異なる点を説明する。
第2実施の形態では、吸音材31の外周側面31dに外周側枠内空気層38を設けている点が第1実施の形態と異なる。尚、第2実施の形態では、上枠21の他に左右竪枠25にも上枠21と同様に外周側枠内空気層38を設けている。
この第2実施の形態によれば、吸音材31の室内側と室外側と外周側との三方に枠内空気層を設けているので、第1実施の形態よりも更に遮音効果に優れた二重サッシを提供することができる。
【0018】
本発明は、上述した実施の形態に限らず、本発明の要旨を逸脱しない範囲で種々変形可能である。
例えば、第1実施の形態において、サッシ枠7の内部27には室内側枠内空気層35と室外側枠内空気層37と両方設けることに限らず、いずれか一方のみであってもよい。また、室内側枠内空気層35と室外側枠内空気層37とは異なる容積としてもよいし、第2実施の形態において、室内側枠内空気層35と室外側枠内空気層37とを設けずに、外周側枠内空気層38のみとしてもよい。
内側閉塞体3、外側閉塞体5は樹脂パネルであってもよい。
吸音材31は、グラスウールやロックウール等の繊維系吸音材や、薄膜吸音材、穴あき板、スリット板やこれらを複合して用いたものであってもよい。
また、吸音材31は上枠21のみや竪枠25のみ配置してもよい。
下枠23にも吸音材31を配置すると共に吸音材の室内側及び室外側の少なくとも一方にサッシ枠の枠内空気層35又は37を設けてもよい。
目板41は、パンチングメタルに限らず、網材やスリット板であってもよく、中間空気層と吸音材を連通させるものであればよい。尚、請求項1及び2に記載の発明にあっては、目板41は設けないで、サッシ枠の内周側面に連通口42を設けて吸音材31と中間空気層20とを連通するものであってもよい。
上述した実施の形態において、内側閉塞体3と外側閉塞体5との少なくとも一方を複層パネルとしてもよい。
二重サッシ1は、内側閉塞体3と外側閉塞体5との両方を嵌め殺し障子としてもよいし、両方を上げ下げ障子や開き障子としてもよいし、あるいは内側閉塞体3と外側閉塞体5とを異なる窓種の障子としてもよいし、各閉塞体の種類は問わない。
サッシ枠内部27の室内側枠内空気層35と室外側枠内空気層37とは、互いに異なる容積としてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】本発明の第1実施の形態にかかる二重サッシの縦断面図である。
【図2】本発明の第1実施の形態にかかる二重サッシの横断面図である。
【図3】本発明について比較例と比較した試験結果を示すグラフである。
【図4】本発明の第2実施の形態にかかる二重サッシの縦断面図である。
【符号の説明】
【0020】
1 二重サッシ
3 内側閉塞体
5 外側閉塞体
7 サッシ枠
31 吸音材
35 室内側枠内空気層
37 室外側枠内空気層
38 外周側枠内空気層
41 目板
42 連通口

【特許請求の範囲】
【請求項1】
サッシ枠と、サッシ枠内周側を閉塞する内側閉塞体と、内側閉塞体の室外側においてサッシ枠内周側を閉塞する外側閉塞体とを備え、内側閉塞体と外側閉塞体の間には中間空気層が設けてあり、サッシ枠の上下左右枠の少なくとも一つの枠は、吸音材と枠内空気層とを内部に有しており、吸音材の内周側面が中間空気層に面し且つ吸音材の外周側面、室内側面及び室外側面のうちの少なくとも一つの面が枠内空気層に面していることを特徴とする二重サッシ。
【請求項2】
枠内空気層は吸音材の室内側面及び室外側面に面していることを特徴とする請求項1に記載の二重サッシ。
【請求項3】
サッシ枠は複数の連通口を有する目板をサッシ枠内周側に着脱自在に有し、目板で吸音材を隠蔽してあることを特徴とする請求子1又は2に記載の二重サッシ。


【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate


【公開番号】特開2006−2466(P2006−2466A)
【公開日】平成18年1月5日(2006.1.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−180995(P2004−180995)
【出願日】平成16年6月18日(2004.6.18)
【出願人】(000175560)三協アルミニウム工業株式会社 (529)
【Fターム(参考)】