説明

二重係止コネクタ

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、自動車用ワイヤハーネス等の接続に用いられる多極コネクタに関する。
【0002】
【従来の技術】自動車における電装機器の増加に伴う電線の増加に伴って、その接続に供されるコネクタが多極化する傾向にあり、かかる多極コネクタとして、例えば、図5及び図6に示すような実開昭61−153975に開示されているコネクタがある。
【0003】このコネクタは、端子の二重係止が可能なコネクタであって、一列に配置された複数個の電気接触子141を受け入れ、かつ、保持するようになっている電気絶縁材からなるハウジング140を有し、各電気接触子141が前記ハウジング140中の肩部142によって一方の軸方向への運動が阻止されている。
【0004】ハウジング140にバンド接続された移動杆145によって、電気接触子141の後方への運動が阻止されており、移動杆145は、電気接触子141がハウジング140に対して挿入され又は引き抜かれうる開位置と、移動杆145の一部が電気接触子141に係合して電気接触子141を肩部142に向かって押圧する閉位置との間で運動可能となっている。
【0005】移動杆145のバンド147は、電気接触子141の列の両側端に配設され、移動杆145に複数個の接触子係合肩部146を、またハウジング140に接触子係合肩部146が嵌入する開口部149をそれぞれ電気接触子141に対応させて設け、移動杆145が開位置にあるときに、接触子係合肩部146が電気接触子141から離れ、移動杆145が閉位置にあるときに、移動杆145と電気接触子141が互いに係合して閉状態を保持する係合部148を接触子係合肩部146とハウジング140に設けている。尚、上記ハウジング140の前面には、雄端子の挿入を容易にすべく、雄端子金具の案内テーパ部が150が形成されている。
【0006】一方、図7及び図8に示すコネクタは、実開昭64−34770に開示されているものであって、合成樹脂で成形された直方体のハウジング231の前後方向に延設された複数の端子収容室232が左右に配列され、このハウジング231の底面後方に各端子収容室232に達する開口が形成され、各端子収容室232には後方から端子234がそれぞれ挿入、収容される。
【0007】各端子234は、その係止爪235が上記端子収容室232内のランス233と係合し、上記開口を塞いで2次係止部238がハウジング231に脱着自在に取付けられる。2次係止部238の前面に上記端子234の突部251の背面が係合されて端子234が係止され、上記ハウジング231の左右の両側面下部に左右に撓むことができる弾性係合部241が一体に形成され、これら弾性係合部241に、上記2次係止部238の左右の両側にそれぞれ一体に突出した係止爪239がそれぞれ係合され、上記弾性係合部241の底面と2次係止部238の左右の両端部とにそれぞれ、U字状バンド244の両端が一体に連結されている。

【0008】

【発明が解決しようとする課題】しかし、上記第1従来例においては、雄端子金具の電気接触子係合肩部の成型時の型抜きの際、電気接触子係合肩部の位置する側だけ案内テーパー部を形成することができないため、コネクタの小型化により雌コネクタの電気接触子係合肩部の幅と雄端子金具のタブ幅が近似した場合、雌コネクタの案内テーパー部のない部分に雄端子が入り込み、雌端子の間口へ突き剌さること等により端子抜け、または導通不良の原因となっていた。
【0009】そこで、上記第2従来例においては、ランスの位置をずらすことにより案内テーパー部を全周に設けるように構成しているが、ランスをずらすことによりコネクタの外径が大きくなると共に、雌端子箱の高さが高くなるという問題がある。さらに、ランスをずらすことによって形成された案内テーパー部の肉厚が薄いため、雌端子箱に雄端子が挿入される際に、この案内テーパー部を雄端子が突き抜けてしまうおそれがある。
【0010】本発明は上記従来の二重係止コネクタの問題点に鑑みなされたものであって、小型で、かつ雄端子を雌端子の端子挿入部に円滑に案内することのできる二重係止コネクタを提供することを目的とする。
【0011】さらに、本発明は、上記二重係止コネクタにおいて、部品点数を低減すると共に、コネクタの組立作業をより容易にすることを目的とする。
【0012】
【課題を解決するための手段】請求項1記載の発明は、前方に雄端子が挿入される端子挿入部を有すると共に、該雄端子と係合する雌端子を収容するための端子収容室を有する雌コネクタハウジング本体と、前記雌端子を係止するため、前記端子収容室の内壁に突設された可撓係止片と、前記可撓係止片によって前記端子収容室内に係止された前記雌端子の後方への移動を阻止するために前記雌コネクタハウジング本体に着脱可能に設けられるリアホルダと、前記雄端子を前記端子挿入部に案内するため、前記雌コネクタハウジング本体に形成されたハウジング側案内テーパー部と、前記雄端子を前記端子挿入部に案内するため、前記リアホルダに形成されたリアホルダ側案内テーパー部とからなり、前記リアホルダ前記雌コネクタハウジング本体に装着することにより、前記ハウジング側案内テーパー部と前記リアホルダ側案内テーパー部とによって前記端子挿入部の全周にわたって一体的な案内テーパー部が形成されることを特徴とする。
【0013】請求項2記載の発明は、前記リアホルダがヒンジを介して雌コネクタハウジング本体と一体に形成されていることを特徴とする。
【0014】請求項1記載の発明によれぽ、端子の二重係止用のリアホルダを雌コネクタハウジング本体に装着した後に、雄端子挿入部の全周にわたって一体的な案内テーパー部を形成することができる。
【0015】請求項2記載の発明によれば、リアホルダがヒンジを介して雌コネクタハウジング本体と一体に形成されているため、部品点数が低減されると共に、コネクタの組立作業が容易になる。
【0016】
【発明の実施の形態】次に、本発明に係る二重係止コネクタの実施の形態の具体例を図面を参照しつつ説明する。図1は、本発明に係る二重係止コネクタを示す斜視図であり、本二重係止コネクタ1は、ハウジング本体2と、リアホルダ3と、これらを連結するヒンジ4によって構成されている。
【0017】ハウジング本体2は合成樹脂等で形成され、上下2段にそれぞれ複数の雌端子9を収容可能な端子収容室5が設けられている。この端子収容室5の内壁には図4に示すように、基端部10aがハウジング本体2の内壁と一体に形成された可撓係止片10が設けられ、その自由端部10bが端子9の係止段部9aと係合することによりハウジング本体2に端子9を係止する。
【0018】さらに、ハウジング本体2の側壁2aのぞれぞれの前端部には自由端部から切り欠かれたリアホルダ浮上がり防止突起挿入溝2bが形成され、リアホルダ3がハウジング本体2に装着された際に、リアホルダ3のリアホルダ浮上がり防止突起3eがこのリアホルダ浮上がり防止突起挿入溝2bに挿入される。
【0019】ハウジング本体2の前面の端子収容室5の下方又は上方にはリアホルダ側案内テーパー部6が形成され、このテーパー部6が後述するリアホルダ側案内テーパー部7と組み合わされて、図示しない雄端子をハウジング本体2の端子挿入部20に挿入する際の案内テーパー部8を構成する。
【0020】ハウジング本体2の水平方向の中央には、可撓係止腕11が形成され、雌コネクタ1を図示しない雄ハウジングに係止する。
【0021】ハウジング本体2の側面2aには、上下側面2aを結合し水平方向に延設された結合部2eと、この結合部2eの上下に水平方向に延設された延設部2dが形成され、これら延設部2d及び結合部2eは垂直方向に延設された連結部2fによって連結されている。そして、延設部2dと結合部2eの間にはリアホルダ案内係止溝12が形成され、リアホルダ3がハウジング本体2に装着された際に、本係止突起3dと係合し、リアホルダ3をハウジング本体2に固定する。
【0022】リアホルダ3は、ハウジング本体2の上方又は下方に設けられ、それぞれ左右対象の一対のリアホルダ部3aからなる。これらのリアホルダ部3aは連結部3bによって連結されている。各リアホルダ部3aの内壁には端子収容室の一部が形成されると共に、その前面には、リアホルダ側案内テーパー部7が形成され、前述のハウジング側案内テーパー部6と共に雄端子を雌コネクタハウジング本体の端子挿入部に挿入する際の案内テーパー部8を構成する。
【0023】各リアホルダ部3aの後部には、端子係止部3cが設けられている。この端子係止部3cは端子9を二重に係止するために設けられたものであって、端子9の二重係止状態において、図4(b)に示すように、端子9の金具後端部9bに当接する。また、端子係止部3cの側面には、本係止突起3dが形成され、リアホルダ3をハウジング本体2に装着した際に、前述のハウジング本体2に形成されたリアホルダ案内係止溝12と係合し、リアホルダ3をハウジング本体2に装着した際の抜け止めとして機能する。
【0024】ヒンジ4は、ハウジング本体2とリアホルダ3を連結している。すなわち、ヒンジ4の一端はハウジング本体2の側面2a上の突設部2cと、他端はリアホルダ3のリアホルダ部3aの外側表面及びこの外側表面上に形成された突部3fと一体になっている。このヒンジ4の可撓性によりリアホルダ3はハウジング本体2に対して前後方向及び左右方向に相対移動が可能となっている。尚、本実施例においては、リアホルダ3をヒンジ4を介してハウジング本体2に一体に形成しているが、ヒンジ4を使用することなく、リアホルダ3をハウジング本体2とは別部品とすることも可能である。
【0025】図2は上記二重係止コネクタの正面図であって、図3は図2の右方側面図である。これらの図の上半分はリアホルダ3をハウジング本体2に装着する前の状態を示し、下半分はリアホルダ3をハウジング本体2に装着した状態を示している。この図により明らかなように、リアホルダ3及びハウジング本体2のそれぞれに形成されている案内テーパー部の一部6、7がリアホルダ3をハウジング本体2に装着した後において組み合わされ、端子挿入部20の全周にわたって案内テーパー部8が形成されている。
【0026】次に、上記構成を有する本発明に係る二重係止コネクタの作用を図4を参照しつつ説明する。
【0027】まず、端子9をハウジング本体2の後方、すなわち図4(a)の右方向から端子収容室5に挿入する。挿入された端子9の金具は可撓係止片10に当接し、端子9がさらに前方へ移動するにつれて可撓係止片10が弾性変形する。端子9の係止段部9aが可撓係止片10の係合部10bを通過すると可撓係止片10は弾性復帰して元の位置に戻ると共に、端子収容室5の前壁がストッパとして機能するため、端子9が端子収容室5内に固定される。
【0028】次に、図4(a)の下半分に示すように、リアホルダ3を前方に押し、リアホルダ3によってハウジング本体2を覆うようにして、リアホルダ3のリアホルダ浮上がり係止突起3eをハウジング本体2のリアホルダ浮上がり防止突起挿入溝2bに前方より挿入した後後方へ移動させることによりリアホルダ3がハウジング本体2に装着され、この際にハウジング本体2に形成したハウジング側案内テーパー部6と、リアホルダ3に形成したリアホルダ案内テーパー部7が一体的に案内テーパー部8を構成する。
【0029】さらに、図4(b)の上半分に示す状態にあるリアホルダ3の端子係止部3cを時計回りに90度回転することにより、図4(b)の下半分に示す状態になり、端子9が二重係止される。この際、リアホルダ3の端子係止部3cの側面に形成された本係止突起3dがハウジング本体2の側面に設けられたリアホルダ案内係止溝12と係合し、リアホルダ3がハウジング本体2に確実に固定される。
【0030】
【発明の効果】請求項1記載の発明によれば、端子の二重係止用のリアホルダを雌コネクタハウジング本体に装着した後に、雄端子挿入部の全周にわたって一体的な案内テーパー部を形成することができるため、雄端子のタブ幅と雌ハウジングの可撓係止片の型抜き幅が近似した場合においても、雄端子を雌端子の端子収容部に円滑に案内することのできる小型の二重係止コネクタを提供することができる。
【0031】請求項2記載の発明によれぼ、部品点数が低減されると共に、コネクタの組立作業が容易な二重係止コネクタを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明に係る二重係止コネクタの実施例を示す斜視図である。
【図2】図1に示す二重係止コネクタの正面図であって、上半分はリアホルダのハウジング本体への装着前の状態を示し、下半分は装着後を示す。
【図3】図2の二重係止コネクタの右方側面図である。
【図4】図1におけるA−A線断面図であって、二重係止コネクタに端子を二重係止する過程の説明図であって、(a)は端子を可撓係止片によって係止した状態を示し、(b)は端子をリアホルダによって二重係止した状態を示す。
【図5】従来の二重係止コネクタを示す正面図である。
【図6】図5におけるB−B線断面図である。
【図7】従来の二重係止コネクタを示す正面図である。
【図8】図7に示す二重係止コネクタのハウジング231の一部と、端子251を示す斜視図である。
【符号の説明】
1 二重係止コネクタ
2 ハウジング本体
2a 側面
2b リアホルダ浮上がり防止突起挿入溝
3 リアホルダ
3c 端子係止部
3e リアホルダ浮上がり防止突起
4 ヒンジ
5 端子収容室
6 ハウジング側案内テーパー部
7 リアホルダ側案内テーパー部
8 案内テーパー部
9 端子
10 可撓係止片
11 可撓係止腕
12 リアホルダ案内係止溝
20 端子挿入部

【特許請求の範囲】
【請求項1】 前方に雄端子が挿入される端子挿入部を有すると共に、該雄端子と係合する雌端子を収容するための端子収容室を有する雌コネクタハウジング本体と、前記雌端子を係止するため、前記端子収容室の内壁に突設された可撓係止片と、前記可撓係止片によって前記端子収容室内に係止された前記雌端子の後方への移動を阻止するために前記雌コネクタハウジング本体に着脱可能に設けられるリアホルダと、前記雄端子を前記端子挿入部に案内するため、前記雌コネクタハウジング本体に形成されたハウジング側案内テーパー部と、前記雄端子を前記端子挿入部に案内するため、前記リアホルダに形成されたリアホルダ側案内テーパー部とからなり、前記リアホルダを前記雌コネクタハウジング本体に装着することにより、前記ハウジング側案内テーパー部と前記リアホルダ側案内テーパー部とによって前記端子挿入部の全周にわたって一体的な案内テーパー部が形成されることを特徴とする二重係止コネクタ。
【請求項2】 前記リアホルダは、ヒンジを介して雌コネクタハウジング本体と一体に形成されていることを特徴とする請求項1記載の二重係止コネクタ。

【図2】
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【図3】
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【図1】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【特許番号】特許第3083070号(P3083070)
【登録日】平成12年6月30日(2000.6.30)
【発行日】平成12年9月4日(2000.9.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願平7−220275
【出願日】平成7年8月29日(1995.8.29)
【公開番号】特開平9−63682
【公開日】平成9年3月7日(1997.3.7)
【審査請求日】平成10年10月13日(1998.10.13)
【出願人】(000006895)矢崎総業株式会社 (7,019)
【参考文献】
【文献】実開 平3−33975(JP,U)