説明

二重床構造

【課題】 床のリニューアル工事等において、置敷表面材30をフロアパネル20から剥離した後のフロアパネル表面に付着する接着剤50を取り除くために、回収したフロアパネル20をいったん回収し、再生工場で洗浄・削りなおしを行っていた。この方法は、フロアパネル20を回収し、再生工場まで運搬し、洗浄・切削などを行うため、時間、コストともに無駄が多いという問題点があった。
【解決手段】 置敷表面材30はフロアパネル20に取り付けられたカバー部材40を介してフロアパネル20に接着剤50で接着されているとともに、置敷表面材30をフロアパネル20から剥離した時に前記カバー部材40がフロアパネル20に取り付けられたまま残っていることを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本願発明は、床面に支持材を介して敷設されるフロアパネルと置敷表面材から構成される二重床構造に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来から、オフィス等の床材としては、無機質あるいは有機質のボードからなるフロアパネル(床パネル)が敷設されている。この種のフロアパネルはその上面にタイルカーペットを貼り付けて使用される場合が多い(特許文献1および非特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】実開平5−87132号公報
【非特許文献】
【0004】
【非特許文献1】ニチアス技術時報No.336(2003年2号)第1頁〜第5頁
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、床のリニューアル工事を行う場合には、置敷表面材(タイルカーペット等)がフロアパネルに接着されているため、この置敷表面材をフロアパネルから剥離すると、接着剤の付着しているフロアパネル上面に塵等のゴミが付着する。このため、性能・材質等には全く問題無いにもかかわらず、外観が悪いために商取引上好ましくなかった。そこで、フロアパネルはいったん回収し、再生工場で洗浄・削りなおしを行っていた。この方法は、フロアパネルを回収し、再生工場まで運搬し、洗浄・切削などを行うため、時間、コストともに無駄が多いという問題点があった。
【0006】
そこで、本願発明は、上述した問題点を解決するためになされたものであって、フロアパネルと置敷表面材の間に「カバー部材」を介在させることで、置敷表面材から転写された接着剤等の汚れを簡単にかつすばやく剥離することができることを見出し、本願発明を完成させるに至った。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本願発明の第1の発明は、床面に支持材を介して敷設されるフロアパネルと置敷表面材から構成される二重床構造であって、置敷表面材はフロアパネルに取り付けられたカバー部材を介してフロアパネルに接着剤で接着されているとともに、置敷表面材をフロアパネルから剥離した時に前記カバー部材がフロアパネルに取り付けられたまま残っていることを特徴とする二重床構造である。
ここで「置敷表面材」としては、タイルカーペットやピータイル、ビニル床タイルなどが挙げられるが、フロアパネルに敷設するタイルであれば限定されるものではない。
また、フロアパネルと置敷表面材との接着には「接着剤」が用いられるが、この「接着剤」とは、脱着可能なものであって、アクリル系,エポキシ系,ウレタン系,ゴム系等のものをいい、好ましくはアクリル系エマルジョンのものをいう。
第2の発明は、置敷表面材をフロアパネルから剥離しフロアパネルに取り付けられたまま残っている前記カバー部材に、置敷表面材をフロアパネルに接着していた前記接着剤が残留していないことを特徴とする同二重床構造である。
第3の発明は、カバー部材はシュリンク処理によってフロアパネルに取り付けられたことを特徴とする同二重床構造である。
この場合、「カバー部材」には熱収縮フィルムを使用する。
【発明の効果】
【0008】
本願発明によれば、次のような効果を有する。
(1)置敷表面材をフロアパネルから剥離した時に前記カバー部材がフロアパネルに取り付けられたまま残っていることで、このカバー部材をフロアパネルから取り外せば、置敷表面材をフロアパネルに接着するために使用した接着剤が残らず、そのままフロアパネルの再利用(リユース)が可能になる。
(2)また、置敷表面材をフロアパネルから剥離した時に前記カバー部材がフロアパネルに取り付けられたまま残っていることで、置敷表面材をフロアパネルに接着する接着剤の接着効果が弱くなった場合にも、フロアパネルに直接接着剤を塗布することなく(フロアパネルを汚すことなく)、接着剤の塗り増を可能にする。
(3)置敷表面材をフロアパネルから剥離しフロアパネルに取り付けられたまま残っている前記カバー部材に、置敷表面材をフロアパネルに接着していた前記接着剤が残留していないことで、このカバー部材をフロアパネルから取り外すこともなく、そのままの状態でフロアパネルの再利用(リユース)が可能になる。
(4)カバー部材はシュリンク処理によってフロアパネルに取り付けられたことで、カバー部材を簡単且つ確実にフロアパネルに取り付けることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
本願発明の実施形態を図面に基づいて説明する。
図1は、本願発明に係る二重床構造を示す説明図である。
図1に示すように、本願発明に係る二重床構造10は、床面に支持材(図示省略)を介して敷設されるフロアパネル20と置敷表面材30から構成されるものである。詳しくは、置敷表面材30はフロアパネル20に取り付けられたカバー部材40を介してフロアパネル20に接着剤50で接着されている。そして、置敷表面材30をフロアパネル20から剥離した時に前記カバー部材40が、フロアパネル20に取り付けられたまま残っていることを特徴とするものである。
【0010】
なお、図1に記載した寸法は、本実施形態における一例であり、本願発明はこの寸法に限定されるものではない。また、置敷表面材30の一辺(対向する他辺も同様)が接着剤50によって接着される糊代部分aの幅は、100mm以上あるのが好ましい。さらに、カバー部材40は、フロアパネル20そのものを破損等から保護することを目的とするのではなく、あくまでも接着剤の残留を防止することが目的であるので、シート状やフィルム状のものが好適である。
【0011】
二重床構造10が上記のような構造を有することで、置敷表面材30をフロアパネル20から剥がしても、カバー部材40はフロアパネル20に取り付けられたまま残っている。このため、このカバー部材40をフロアパネル20から取り外せば、接着剤50はフロアパネル20から無くなり、そのままフロアパネル20の再利用(リユース)が可能になるのである。
【0012】
この時、置敷表面材30を剥がした後のカバー部材40に接着剤50が残留していなければ(置敷表面材30側に接着剤50が残留している)、さらによい。すなわち、接着剤50がカバー部材40に残留していなければ、カバー部材40をフロアパネル20から取り外すこともなく、そのままの状態でフロアパネル20の再利用(リユース)が可能になるからである。例えば、カバー部材40の表面に凹凸加工(例:エンボス加工)されている材質のものを使用することで、カバー部材40への接着剤50の残留を無くすことができる場合もある。
【0013】
次に、フロアパネルのカバー部材による被覆について説明する。
カバー部材によるフロアパネルのパネル部分の被覆方法としては、次のようなものが考えられる。
(1)熱収縮フィルムによる被覆(図2参照)
熱により収縮するフィルム40を用いてフロアパネル20のパネル部分を被覆する方法である。
(2)接着フィルムによる被覆
接着するフィルム(例:脱着可能な養生テープなど)を用いてフロアパネルのパネル部分を被覆する方法である。
(3)脱可能な塗布剤による被覆
脱離可能な塗布剤を用いてフロアパネルのパネル部分を被覆する方法である。「塗布剤」には、剥離可能なコーティングスプレーや剥離性の良いペンキ等を用いることができる。
(4)両面テープによる被覆(図3参照)
フロアパネル20のパネル部分の中央に両面テープ40(100〜200mm幅)を貼り付けて、二重床設置作業時に表面の離けい紙41を剥がして使用する方法である。
(5)ラップフィルムの巻装による被覆
フロアパネルにラップフィルム(例えば、PVDC:ポリ塩化ビニリデンなど)を巻き付けて(巻装)積層させ、フロアパネルから剥離しない状態にして、フロアパネルのパネル部分を被覆する方法である。
【産業上の利用可能性】
【0014】
本願発明は、フロアパネルを使用した二重床構造として利用できるものである。特に、リニューアル工事が頻繁に行われる施工現場においては、フロアパネルの再利用(リユース)が要求されるので、その場合に本願発明の二重床構造を幅広く利用できる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】本願発明に係る二重床構造を示す説明図。
【図2】フロアパネルのパネル部分の被覆方法を示す説明図(一例)。
【図3】フロアパネルのパネル部分の被覆方法を示す説明図(一例)。
【符号の説明】
【0016】
10 二重床構造
20 フロアパネル
30 置敷表面材
40 カバー部材
50 接着剤
a 糊代

【特許請求の範囲】
【請求項1】
床面に支持材を介して敷設されるフロアパネルと置敷表面材から構成される二重床構造であって、
置敷表面材はフロアパネルに取り付けられたカバー部材を介してフロアパネルに接着剤で接着されているとともに、置敷表面材をフロアパネルから剥離した時に前記カバー部材がフロアパネルに取り付けられたまま残っていることを特徴とする二重床構造。
【請求項2】
置敷表面材をフロアパネルから剥離しフロアパネルに取り付けられたまま残っている前記カバー部材に、置敷表面材をフロアパネルに接着していた前記接着剤が残留していないことを特徴とする請求項1記載の二重床構造。
【請求項3】
カバー部材はシュリンク処理によってフロアパネルに取り付けられたことを特徴とする請求項1又は2記載の二重床構造。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2010−255186(P2010−255186A)
【公開日】平成22年11月11日(2010.11.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−102737(P2009−102737)
【出願日】平成21年4月21日(2009.4.21)
【出願人】(000110804)ニチアス株式会社 (432)
【Fターム(参考)】