説明

二重断面構造の部分を有する自転車用ハンドルバー

【課題】過度の歪みによって変形が生じるような場合に、運転者のリスクを軽減することのできる自転車用ハンドルバーを提供する。
【解決手段】本発明の自転車用ハンドルバーは、マスターチューブ、マスターチューブの両端に設けられた2つのハンドグリップ、およびフォークに取り付けるためのステムを備えており、さらに、前記マスターチューブは、少なくとも一部に二重断面を有しており、その断面は上方外壁、下方外壁、上方内壁および下方内壁で構成され、上方外壁には上方内壁から離れた部分と接合した部分とがあり、下方外壁には下方内壁から離れた部分と接合した部分とがあり、上方内壁は下方内壁から離れている。構造的変形が比較的ゆっくり生じるので、運転者にダメージを与えるリスクを減少することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、自転車用ハンドルバーに関する。
【背景技術】
【0002】
典型的な自転車用ハンドルバーは、マスターチューブ、マスターチューブの両端に設けられた2つのハンドグリップ、およびフォークに取り付けるためのステムを備える。
【0003】
自転車の分野では、運転者の負担を減らすために、全ての部品について軽量化が常に要求されている。特に、この要求は、レース用の自転車の場合に極めて重要である。軽量化を実現するために、いわゆる複合材料のような、軽量性と機械強度とを兼ね備えた材料の使用が急速に広がっている。しかし、当然ながら、軽量化を最大限にまで追及すると、強度の過剰な低下につながるリスクがある。
【0004】
当然のことながら、何らかの理由で機械強度を上回る歪みが部品に加わると、場合に応じて様々な特性をもつ変形(yielding)が生じる。このような変形は、多かれ少なかれ運転者にとって深刻な影響を及ぼす。特に、変形する部品がハンドルバーである場合、自転車の制御を突然かつ完全に失うことになるので、運転者は極めて危険な状況に陥る。
【0005】
カーボン繊維系の複合材料において典型的に起こることであるが、過剰な歪が突然の変形を引き起こす、その突然性の程度に応じて、運転者への危険性が著しく上昇する。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
つまり、過度の歪みによってハンドルバーに変形が生じる場合において、いかにして運転者のリスクを軽減するか、という課題が提起される。
【課題を解決するための手段】
【0007】
以上を踏まえて、本発明は、請求項1に記載された自転車用ハンドルバーに関する。従属請求項には、その好適な特徴が記載されている。
【0008】
詳細には、本発明は、マスターチューブ、前記マスターチューブの両端に設けられた2つのハンドグリップ、およびフォークに取り付けるためのステムを備える自転車用ハンドルバーに関し、このマスターチューブは、断面が上方外壁、下方外壁、上方内壁および下方内壁で構成された二重断面構造を有する、少なくとも1つの部分を具備しており、
前記上方外壁には前記上方内壁から離れた部分と接合した部分とがあり、
前記下方外壁には前記下方内壁から離れた部分と接合した部分とがあり、
前記上方内壁は前記下方内壁から離れていることを特徴とする。
【0009】
このような二重断面構造を有する部分を具備する構成により、次に述べる2つの効果が同時に得られる。まず、ハンドルバーの残りの部分に対して適切に相対的な寸法決めをすることにより、当該二重断面構造の部分を、過度の歪みを受けた場合に変形が生じる最も弱い部分とすることができる。さらに、当該断面構造に多数の壁が存在することから、変形が生じたとしても、変形は1つの壁から次の壁へと比較的ゆっくりと順番に進むので、運転者が危険を察知して対処するための時間を与え、怪我のリスクが軽減される。
【0010】
好ましくは、前記二重断面構造の部分では、前記上方外壁と前記上方内壁とが上方筒状構造部を形成し、前記下方外壁と前記下方内壁とが下方筒状構造部を形成し、これら2つの上方および下方筒状構造部は別体で互いに離間しており、これにより、前記二重断面構造を有する部分にわたってギャップが形成されている。このようにして、2つの互いに実質的に独立した、閉じた形状(closed profile)の強固な構造部が得られる。これら2つの構造部は、優れた機械強度を保証すると同時に、互いに独立して寸法決めすることができる。
【0011】
好ましくは、前記上方および下方筒状構造部は、部分円周に略沿って延びる外壁と、互いに離間した線に略沿って延びる内壁とで構成された、伸長し、かつ丸状の断面を有する。したがって、全体的な外形は単一の円形構造に近いものとなるが、各筒状構造部の伸長した形状により、低い空力抵抗(aerodynamic resistance)を実現できる。これは、自転車、特に、レース用の自転車にとって常に好適な特性である。
【0012】
好ましくは、前記内壁が略沿って延びる線は直線である。これにより、空力抵抗を最小限にできるだけでなく、空気の通過に伴う煩わしいヒューヒュー音(whistling)や騒音の発生するリスクを抑えることができる。
【0013】
好ましい一実施形態において、前記自転車用ハンドルバーは、2つの結合壁を備え、この2つ結合壁は、前記上方外壁と前記下方外壁とを結合することによって単一の円形壁を形成する。これにより、前述した強度に係る利点および変形のコントロールに係る利点の両方を保証する複数の壁で構成された構造を維持したまま、例えばアクセサリー(付属品)などの支持体を連結するのに適した単純な円状の外形を実現することができる。
【0014】
1つ以上の前記二重断面構造を有する部分が、前記自転車用ハンドルバーの互いに異なる領域に設けられてもよい。
【0015】
好ましい一実施形態では、前記二重断面構造の部分の1つが、前記マスターチューブが前記ステムと結合する前記マスターチューブの中央領域に設けられている。ステムが、マスターチューブとの一体品で形成されたものでなくて、マスターチューブの中央領域に締付け固定された独立の部品である場合、この中央領域に二重断面構造の部分を設けることにより、ステムのマスターチューブへの締付け固定力(挟持力)に抗する優れた強度を確保することができる。なお、上記の締付け固定力は、(しばしば起こるように)主に一方向に向けられることが多い。そのような場合、それと同じ方向に2つの内壁の向きを設定することにより、最大の歪みが生じる方向において最大の強度が得られるという最良の効果がもたらされる。
【0016】
好ましくは、前記二重断面構造を有する部分は、前記マスターチューブが前記ステムに結合する前記マスターチューブの前記中央領域と、当該マスターチューブの両側端部に向かって延びる前記中央領域の両側部分とに延在している。これにより、前述した強度に係る利点が、ステムを固定する中央領域において特に向上し、かつ、空気力学的な利点が、中央領域の両側に位置する側方領域において顕著となる。
【0017】
好ましくは、前記二重断面構造を有する部分は、前記マスターチューブの長さの半分以下の長さで延在している。事実、二重断面構造で規定された前記2つの構造部が互いに変形及び移動しないように、マスターチューブの実質的部分、少なくとも半分の長さを、単一の断面構造(二重断面でない構造)に維持する必要があると考えられる。
【0018】
好ましい一実施形態では、2つの前記二重断面構造を有する部分が、前記マスターチューブと前記ステムとが互いに結合する前記マスターチューブの中央領域と、前記マスターチューブの両端との間に設けられている。この構成により、前述した空気力学的な利点が得られるだけでなく、はっきりと視認できる位置に二重断面構造を有する部分が設けられるので、変形が生じているか否かを即座に確認することができる。
【0019】
前記2つの二重断面構造を有する部分は、大なり小なりマスターチューブの長さ方向に延在している。好ましくは、前記2つの二重断面構造を有する部分は、併せて前記マスターチューブの長さの半分以下の長さである。これにより、自転車用ハンドルバーの全体的な剛性を高く維持することを確保することができるので、2つの筒状構造部が互いに遠ざかるように変形したり互いに近づくように変形したりするリスクが排除される。
【0020】
好ましい一実施形態では、1つの前記二重断面構造を有する部分が、前記ステムに設けられている。事実、場合によっては、自転車用ハンドルバーにおいて最も応力を受ける部分がまさにステムであり、その場合、突然の変形が生じるリスクはステムにおいて最大となることが観察された。好ましくは、前記二重断面構造を有する部分は、前記ステムの長さの半分以下の長さで延在している。これにより、ステム自身の全体的な剛性を維持することができる。
【0021】
他の好ましい実施形態では、前記ステムと前記マスターチューブとが一体品で形成されており、単一の前記二重断面構造を有する部分が、前記ステムおよび前記マスターチューブの両方で延在している。この場合、自転車用ハンドルバーにおける空気力学的な通過性(aerodynamic penetration)が最良となる。
【0022】
前述した理由と同じ理由により、前記単一の二重断面構造を有する部分は、前記ステムの長さの半分以下と前記マスターチューブの長さの半分以下の長さで延在しているのが好ましい。
【0023】
前記自転車用ハンドルバーは様々な材料から作製されてもよいが、本発明は、前記マスターチューブが、構造繊維を樹脂マトリクスで固めた複合材料製である場合、および/または前記ステムが、構造繊維を樹脂マトリクスで固めた複合材料製である場合に極めて有利である。事実、突然の構造的変形に起因する問題は、この種の材料において最も頻繁に生じる。
【0024】
本発明にかかる自転車用ハンドルバーのさらなる特徴および利点は、添付の図面を参照しながら行う、好ましい実施形態についての以下の説明から明らかになる。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【図1】本発明の一実施形態にかかるハンドルバーのフロント部(マスターチューブ及びハンドグリップ)を示す斜視図である。
【図2】図1のハンドルバーのフロント部を示す正面図である。
【図3】図1のハンドルバーのフロント部を示す背面図である。
【図4】図1のハンドルバーのフロント部を上方からみた図である。
【図5】図1のハンドルバーのフロント部を示す側断面図である。
【図6】本発明のさらなる実施形態にかかるハンドルバーのリア部(ステム)を示す斜視図である。
【図7】図6のハンドルバーのリア部を上方からみた図である。
【図8】図6のハンドルバーのリア部を示す側断面図である。
【図9】図1の実施形態のフロント部と図6の実施形態のリア部とを備えた、本発明にかかるハンドルバーを示す概略断面図である。
【図10】本発明のさらなる実施形態にかかるハンドルバーを示す斜視図である。
【図11】図10のハンドルバーを示す正面図である。
【図12】図10のハンドルバーを示す背面図である。
【図13】図10のハンドルバーを上方からみた図である。
【図14】図10のハンドルバーを示す側面図である。
【図15】図10のハンドルバーを示す側断面図である。
【図16】図10のハンドルバーを示す正断面図である。
【図17】本発明のさらなる実施形態にかかるハンドルバーを上方からみた図である。
【図18】本発明のさらなる実施形態にかかるハンドルバーを示す斜視図である。
【図19】図18のハンドルバーのフロント部の、図18における矢印XIX−XIXの方向に沿った断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0026】
図1〜図5に自転車用ハンドルバーのフロント部100を示す。フロント部100は、マスターチューブ110を具備しており、そのマスターチューブ110の両端には、2つのハンドグリップ180が設けられている。2つのハンドグリップ180は湾曲形状であり、かつ、マスターチューブ110と一体品で形成されている。これは、競争用のレーシング自転車における典型的な構成である。当然ながら、ハンドグリップ180は他の任意の形状、例えば、直線形状であってもよい。自転車用ハンドルバーのフロント部100は、図1〜図5に示されていないステムによって自転車のフォークに取り付けられる。
【0027】
マスターチューブ110は、断面が上方外壁121、下方外壁122、上方内壁123および下方内壁124で構成された二重断面構造120を有する、少なくとも1つの部分を有している。上方外壁121には、上方内壁123から離間した部分と接合した部分とがあり(the upper outer wall 121 is distanced from and joined to the upper inner wall 123)、この両方で自転車用ハンドルバーの長手方向に伸長し、かつ丸状の閉じた断面を有する、上方筒状構造部125を形成しているのが好ましい(本発明において「長手方向」とは、自転車の分野で自転車又は自転車の構成品について述べる際の一般的な慣習と同じく、自転車の走行方向のことを指す)。同じく、下方外壁122には、下方内壁124から離間した部分と接合した部分とがあり、この両方で自転車用ハンドルバーの長手方向に伸長し、かつ丸状の閉じた断面を有する下方筒状構造部126を形成しているのが好ましい。上方内壁123と下方内壁124とは互いに離間しており、かつ、上記2つの上方および下方筒状構造部125,126は別体で離間している。二重断面構造の部分120にわたって上記筒状構造部125,126間にはギャップ(隙間)127が形成されている。好ましくは、上方外壁121および下方外壁122は、主として同じ円周の部分に沿って延び、他方、上方内壁123および下方内壁124は、主としてそれぞれの線、直線または略直線に沿って延びる。
【0028】
二重断面構造の部分120の中央部分130は、マスターチューブ110とステムとが互いに結合する当該マスターチューブ110の中央領域に設けられている。二重断面構造の部分120は、その中央部分130に2つの結合壁131,132を備えている。これら2つの結合壁131,132は、上方外壁121と下方外壁122とを結合することによって単一の円形壁を形成する。中央部分130の両側には2つの側方領域140が隣接している。側方領域140では、上方外壁121と下方外壁122との間に結合壁が設けられていない。好ましくは、上方内壁123と下方内壁124とは、各側方領域140と中央部分130との間、および各側方領域140と二重断面構造の部分120が終了するマスターチューブ110の外方部分との間で、互いに結合する。これにより、各側方領域140には、長手方向の前後両方に開いたウィンドウ141がそれぞれ形成される。
【0029】
好ましくは、マスターチューブ110に沿う二重断面構造の部分120の全体の長さは、マスターチューブ110の長さの半分以下に相当する長さである。
【0030】
図6〜図8に自転車用ハンドルバーのリア部200を示す。リア部200はステム210を備える。ステム210は、自転車のフォークに取り付けられる後方の取付領域211と、自転車用ハンドルバーのフロント部のマスターチューブを取り付ける前方の取付領域212との間で延びている。
【0031】
ステム210は、断面が上方外壁221、下方外壁222、上方内壁223および下方内壁224で構成された二重断面構造を有する一部分220を有する。上方外壁221は、上方内壁223から離間した部分と接合した部分を有しており、両方で、自転車用ハンドルバーの横断方向に伸長し、かつ丸状の閉じた断面を有する、上方筒状構造部225を形成するのが好ましい(本発明において「横断方向」とは、自転車の前進に対して横断する方向のことを指す)。同じく、下方外壁222は、下方内壁224から離間した部分と接合した部分を有しており、両方で、自転車用ハンドルバーの横断方向に伸長し、かつ丸状の閉じた断面を有する、下方筒状構造部226を形成するのが好ましい。上方内壁223と下方内壁224とは互いに離間しており、かつ、上記2つの上方および下方筒状構造部225,226は別体で離間している。これにより、二重断面構造の部分220にわたって上記筒状構造部225,226間にはギャップ(隙間)227が形成されている。好ましくは、上方外壁221および下方外壁222は、主として同じ円周の部分に沿って延び、他方、上方内壁223および下方内壁224は、主としてそれぞれ、線、直線または略直線に沿って延びている。
【0032】
二重断面構造の部分220は、後方の取付領域211と前方の取付領域212との中間にある位置に延設されている。好ましくは、上方内壁223と下方内壁224とは、二重断面構造の部分220とステム210における隣接領域との間で互いに結合する。これにより、ステム210には、横断方向の両側に開いたウィンドウ241が形成されている。
【0033】
好ましくは、ステム210に沿った二重断面構造の部分220の全体の長さは、ステム210の長さの半分以下に相当する長さである。
【0034】
図9に、図1〜図5を参照しながら説明したフロント部100と図6〜図8を参照しながら説明したリア部200とを備えるハンドルバー300を示す。いずれにせよ、本発明によれば、前述したように、ハンドルバーにおいて、前述したフロント部100は従来品のリア部と併用することができ、同様に、本発明にかかる前述したリア部200は従来品のフロント部と併用することができる。フロント部100とリア部200とは、図示しないねじ又は同様の手段でステム210の取付領域212を中央部分130に締付け固定することによって互いに結合される。
【0035】
図10〜図16に、一体構造(in a single piece)のフロント部500およびリア部600を備える自転車用ハンドルバー400を示す。フロント部500は、マスターチューブ510を具備しており、その両端には2つのハンドグリップ580がある。2つのハンドグリップ580は湾曲型であり、かつ、マスターチューブ510と一体品で形成されている。当然ながら、ハンドグリップ580は他の任意の形状、例えば、直線型であってもよい。リア部600はステム610を備えており、ステム610は自転車のフォークに取り付けられる取付部分611を有する。
【0036】
マスターチューブ510は、断面が上方外壁521、下方外壁522、上方内壁523および下方内壁524で構成された二重断面構造を有する、少なくとも1つの部分520を有している。上方外壁521には、上方内壁523から離間した部分と接合した部分とがあり、両方で、自転車用ハンドルバーの長手方向に伸長し、かつ丸状の閉じた断面を有する、上方筒状構造部525を形成しているのが好ましい。同じく、下方外壁522は、下方内壁524から離間した部分と接合した部分を有しており、その両方で自転車用ハンドルバーの長手方向に伸長し、かつ丸状の閉じた断面を有する、下方筒状構造部526を形成しているのが好ましい。上方内壁523と下方内壁524とは互いに離間しており、かつ、上記2つの上方および下方筒状構造部525,526は別体で離間している。これにより、二重断面構造の部分520にわたって上記筒状構造部525,526間にはギャップ(隙間)527が形成されている。好ましくは、上方外壁521および下方外壁522は、主として同じ円周の部分に沿って延び、他方、上方内壁523および下方内壁524は、主としてそれぞれ、線、直線または略直線に沿って延びている。
【0037】
ステム610は、断面が上方外壁621、下方外壁622、上方内壁623および下方内壁624で構成された二重断面構造の部分620を有する。上方外壁621は上方内壁623から離間した部分と接合した部分を有しており、その両方でハンドルバー400の横断方向に伸長し、かつ丸状の閉じた断面を有する、上方筒状構造部625を形成しているのは好ましい。同じく、下方外壁622は下方内壁624から離間した部分および接合した部分を有しており、その両方で、自転車用ハンドルバー400の横断方向に伸長し、かつ丸状の閉じた断面を有する、下方筒状構造部626を形成しているのが好ましい。上方内壁623は下方内壁624から離間しており、かつ、上記2つの上方および下方筒状構造部625,626は別体で離間している。これにより、二重断面構造の部分620にわたって上記筒状構造部625,626間にはギャップ(隙間)627が形成されている。好ましくは、上方外壁621および下方外壁622は、主として同じ円周の部分に沿って延び、他方、上方内壁623および下方内壁624は、主としてそれぞれの線、直線又は略直線に沿って延びている。
【0038】
二重断面構造の部分520は、マスターチューブ510とステム610とが互いに結合する当該マスターチューブ510の中央部分530に設けられている。二重断面構造の部分520は、マスターチューブ510の中央部分530のどの部分にも、上方外壁521と下方外壁522との間に結合壁を有していない。好ましくは、上方内壁523と下方内壁524とは、二重断面構造の部分520とマスターチューブ510におけるその隣接領域との間で互いに結合する。
【0039】
二重断面構造の部分620は、ステム610の前方位置に延設されている。好ましくは、上方内壁623と下方内壁624とは、二重断面構造の部分620と、ステム610において当該二重断面構造の部分620に隣接する後方領域との間で互いに結合する。この目的のために、上方又は下方からの平面視で略V字形状の壁641が設けられている。
【0040】
マスターチューブ510における隙間527とステム610における隙間627とは、実質的に連続性が遮断されることなく互いに向かい合っている。これにより、ハンドルバー400では、マスターチューブ510とステム610との間に、長手方向の前後と横断方向の両側に開いた単一のウィンドウ441が形成されている。そのため、マスターチューブ510における二重断面構造の部分520とステム610における二重断面構造の部分620とは、単一の二重断面構造の部分を事実上形成している。
【0041】
なお、壁641のV字形状は、走行中に開口441の前方に進入する空気流を徐々に広げて、取付部分611の両側にそらせることにより、ハンドルバー400の空気力学的効果を向上させる。
【0042】
好ましくは、マスターチューブ510に沿う二重断面構造の部分520の全体の長さは、マスターチューブ510それ自身の長さの半分以下に相当する長さである。好ましくは、ステム610に沿う二重断面構造の部分620の全体の長さは、ステム610それ自身の長さの半分以下に相当する長さである。
【0043】
図17に自転車用ハンドルバー700を示す。ハンドルバー700は、フロント部の結合壁731によってフロント部に2つの別個のウィンドウ741が形成されている点を除けば、自転車用ハンドルバー400とほぼ同じである。ハンドルバー700のその他の全ての細部はハンドルバー400と同一なので、本明細書で詳述したり、図17内で参照番号を付したりしていない。
【0044】
図18および図19に、自転車用ハンドルバーのフロント部100に一部類似した、マスターチューブ810および2つのハンドグリップ880を備えた、自転車用ハンドルバーのフロント部800を示す。しかし、フロント部100とは異なり、マスターチューブとステムとが互いに結合する当該マスターチューブ810の中央部分830には、二重断面構造の部分が設けられていない。むしろ、マスターチューブの中央部分830とマスターチューブの両端との間に、2つの別個の二重断面構造の部分820が設けられている。このケースの場合、これら2つの二重断面構造の部分820の全体の長さは、マスターチューブ810の長さの半分以下である。各部分820には、上方外壁821、下方外壁822、上方内壁823および下方内壁824が設けられており、かつ、ギャップ(隙間)827によって互いに離間した上方の筒状構造部825および下方の筒状構造部826が形成されている。これにより、各部分820には、それぞれに対応したウィンドウ841が形成されている。
【0045】
好ましくは、前述した自転車用ハンドルバーにおけるフロント部およびリア部は、樹脂マトリクスによって結合された構造繊維からなる複合材料から製造される。
【0046】
いずれにせよ、本発明にかかる自転車用ハンドルバーでは、二重断面構造によって変形が比較的ゆっくりと進行するので、構造的な変形が突然生じるのを防ぐことができる。
【0047】
また、二重断面構造の部分を設けることにより、特に、自転車用ハンドルバーのフロント部に二重断面構造の部分を設けることにより、自転車用ハンドルバーの優れた空気力学的効果が保証され、かつ、フロント部とリア部とが別体である場合には、フロント部とリア部との取付領域の強度を向上させることができる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
マスターチューブ(110;510;810)、前記マスターチューブ(110;510;810)の両端に設けられた2つのハンドグリップ(180;580;880)、およびフォークに取り付けるためのステム(210;610)を備える自転車用ハンドルバーにおいて、
前記マスターチューブは、断面が、上方外壁(121;221;521;621;821)、下方外壁(122;222;522;622;822)、上方内壁(123;223;523;623;823)および下方内壁(124;224;524;624;824)で構成された二重断面構造を有する、少なくとも1つの部分(120;220;520;620;820)を具備しており、
前記上方外壁(121;221;521;621;821)には前記上方内壁(123;223;523;623;823)から離れた部分と接合した部分とがあり、
前記下方外壁(122;222;522;622;822)には前記下方内壁(124;224;524;624;824)から離れた部分と接合した部分とがあり、
前記上方内壁(123;223;523;623;823)は前記下方内壁(124;224;524;624;824)から離れていることを特徴とする、自転車用ハンドルバー。
【請求項2】
請求項1記載の自転車用ハンドルバーにおいて、前記二重断面構造を有する部分(120;220;520;620;820)では、前記上方外壁(121;221;521;621;821)と前記上方内壁(123;223;523;623;823)とが上方筒状構造部(125;225;525;625;825)を形成し、前記下方外壁(122;222;522;622;822)と前記下方内壁(124;224;524;624;824)とが下方筒状構造部(126;226;526;626;826)を形成し、これら2つの上方および下方筒状構造部(125;225;525;625;825,126;226;526;626;826)は別体で互いに離間しており、これにより、前記二重断面構造を有する部分にわたってギャップ(127;227;527;627;827)が形成されている、自転車用ハンドルバー。
【請求項3】
請求項2記載の自転車用ハンドルバーにおいて、前記上方および下方筒状構造部(125;225;525;625;825,126;226;526;626;826)は、部分円周に略沿って延びる外壁(121,122;221,222;521,522;621,622;821,822)と、互いに離間した線に略沿って延びる内壁(123,124;223,224;523,524;623,624;823,824)とで構成された、伸長し、かつ丸状の断面を有する、自転車用ハンドルバー。
【請求項4】
請求項3記載の自転車用ハンドルバーにおいて、前記内壁が略沿って延びる線を直線とした、自転車用ハンドルバー。
【請求項5】
請求項1記載の自転車用ハンドルバーにおいて、さらに、前記上方外壁(121)と前記下方外壁(122)とを結合することによって単一の円形壁を形成する、2つの結合壁(131)を備える、自転車用ハンドルバー。
【請求項6】
請求項1から5のいずれか一項記載の自転車用ハンドルバーにおいて、1つの前記二重断面構造を有する部分(120;520)が、前記マスターチューブ(110;510)が前記ステムに結合する前記マスターチューブ(110;510)の中央領域(130;530)に設けられている、自転車用ハンドルバー。
【請求項7】
請求項6記載の自転車用ハンドルバーにおいて、前記二重断面構造を有する部分(120)が、前記マスターチューブ(110)が前記ステムに結合する前記マスターチューブ(110)の前記中央領域(130)と、前記中央領域(130)の両側にあり、当該マスターチューブ(110)の両側端部に向かって延びる領域(140)とに延在する、自転車用ハンドルバー。
【請求項8】
請求項7記載の自転車用ハンドルバーにおいて、前記二重断面構造を有する部分(120;520)は、前記マスターチューブ(110;510)の長さの半分以下の長さで延在している、自転車用ハンドルバー。
【請求項9】
請求項1から5のいずれか一項記載の自転車用ハンドルバーにおいて、2つの前記二重断面構造を有する部分(820)が、前記マスターチューブ(810)が前記ステムに結合する前記マスターチューブ(810)の中央領域(830)と、前記マスターチューブ(810)の両端との間に設けられている、自転車用ハンドルバー。
【請求項10】
請求項9記載の自転車用ハンドルバーにおいて、前記2つの二重断面構造を有する部分(820)は、2つ併せて、前記マスターチューブ(810)の長さの半分以下の長さで延在している、自転車用ハンドルバー。
【請求項11】
請求項1から5のいずれか一項記載の自転車用ハンドルバーにおいて、前記二重断面構造を有する部分(220;620)の一つが、前記ステム(210,610)に設けられている、自転車用ハンドルバー。
【請求項12】
請求項11記載の自転車用ハンドルバーにおいて、前記二重断面構造を有する部分(220;620)は、前記ステム(210;610)の長さの半分以下の長さで延在している、自転車用ハンドルバー。
【請求項13】
請求項1から5のいずれか一項記載の自転車用ハンドルバーにおいて、前記ステム(610)と前記マスターチューブ(510)とが一体品で形成されており、単一の前記二重断面構造を有する部分(520,620)が、前記ステム(610)と前記マスターチューブ(510)の両方に延在している、自転車用ハンドルバー。
【請求項14】
請求項13記載の自転車用ハンドルバーにおいて、前記単一の二重断面構造を有する部分(520,620)が、前記ステム(610)の長さの半分以下と前記マスターチューブ(510)の長さの半分以下の長さで延在している、自転車用ハンドルバー。
【請求項15】
請求項1から14のいずれか一項記載の自転車用ハンドルバーにおいて、前記マスターチューブ(110;510;810)が、構造繊維を樹脂マトリクスで固めた複合材料製である、自転車用ハンドルバー。
【請求項16】
請求項1から15のいずれか一項記載の自転車用ハンドルバーにおいて、前記ステム(210;610)が、構造繊維を樹脂マトリクスで固めた複合材料製である、自転車用ハンドルバー。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【公開番号】特開2012−250706(P2012−250706A)
【公開日】平成24年12月20日(2012.12.20)
【国際特許分類】
【外国語出願】
【出願番号】特願2012−124028(P2012−124028)
【出願日】平成24年5月31日(2012.5.31)
【出願人】(592072182)カンパニョーロ・ソシエタ・ア・レスポンサビリタ・リミタータ (94)
【氏名又は名称原語表記】CAMPAGNOLO SOCIETA A RESPONSABILITA LIMITATA
【Fターム(参考)】