説明

二重架橋粘着付与感圧接着剤

グリシジルモノマー、不飽和カルボン酸モノマーおよび粘着付与剤を用いて、アクリル骨格から成る共重合体を含む粘着付与PSAおよびテープであり、前記接着剤が二重硬化性であり、LSE基材上で優れた剥離接着力、高温せん断性能、優れた応力緩和特性、および優れた変換特性の組合せを有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
[関連出願の相互参照]
本出願は、全体として参照により本明細書に組み入れられる、2009年9月11日に出願された米国仮特許出願第61/241,553号の利益を享受することを主張する。
【0002】
[技術分野]
本発明は、感圧接着剤および、特に、粘着化後のアジリジン架橋剤とインラインで混合され、かつ、二重硬化性粘着付与アクリル系感圧接着剤に関する。
【背景技術】
【0003】
自動車業界、消費者家電業界、消費者電子製品業界、および他の業界は長期耐久性、高温連続曝露への抵抗性、金属、プラスチック、ペンキ等の幅広い基材に対する良好な剥離接着力などの組合せ特性がある接着剤を必要としている。ゴム/樹脂系接着剤は多くの基材に対して良好な剥離接着力を示す一方で、高温では性能が低下する。一方、アクリル系接着剤は優れた剥離接着力と高温での低性能か、または低下した剥離接着力と高温での高性能のいずれかである。望まれる形態は低表面エネルギー(LSE)基材に対する良好な剥離接着力、高せん断接着崩壊温度、良好な応力除去特性、さらには、優れた変換特性を持つ耐久性の接着力である。
【0004】
アクリル感圧接着剤が低分子量粘着樹脂を配合すれば、種々の基材に対する剥離接着力が一般的には増強することは周知である。例えば、下記特許文献1(日本国公開特許公報昭60(1985年)−69180号公報(Nittoに譲渡))は光架橋性の感圧接着剤において粘着付与剤としてテルペンフェノール系樹脂の使用を教示している。ロジン樹脂を含めたその他のタイプの樹脂の使用は下記非特許文献1(日本接着学会誌「接着」(23号、489〜504頁、1984年))に記載されている。シクロヘキセン樹脂の使用は下記特許文献2(ドイツ特許公報323122号(1983年))に記載されている。
【0005】
下記特許文献3(ケーリー(Kealy)らによる米国特許第4,418,120号)はイソオクチルアクリレートおよび3〜7重量%のアクリル酸をベースにした架橋した粘着付与ポリマーを記載している。前記ポリマーは、硬化前は0.75〜1.5dl/gの固有粘度と主張されている。硬化物は70℃で少なくとも5、000分でのせん断値をもつと主張された。低分子量樹脂を接着剤に組込むと高温せん断接着性能が劣る接着剤が典型的には出来上がる。
【0006】
また、感圧接着剤の耐久性、接着性、およびその他の特性は共重合体を含むモノマーの選択と使用された硬化のタイプの両方で影響をうける。下記特許文献4(日本国公開特許公報昭59(1984年)−18774号公報)はテルペンフェノール系樹脂およびグリシジルメタクリレートモノマーを含むエネルギー線硬化形感圧組成物を記載している。硬化は炭素‐炭素二重結合で形成されエネルギー線で活性化する。
【0007】
下記特許文献5(ケー.メランコン(K.Melancon)らによる米国特許第6,893,718 B2号)は、高温抵抗性および接着性能があるビスアミド架橋剤を含むPSA組成物を記載しているが、しかし、これらのタイプのPSAはポリプロピレン基材などの低表面エネルギー基材に張り付かない。同様に、下記特許文献6(エイムズ(Ames)らによる米国特許第4,456,741号)は、良好な剥離接着力および恒久的粘着性があるが、低せん断接着である粘着付与剤を含むホットメルトアクリル接着剤を記載している。
【0008】
下記特許文献7(トレイノー(Traynor)らによる米国特許第4,726,982号)は、N−ビニル−2−ピロリドンを含む粘着付与アクリル系感圧組成物を記載し、ハイソリッド自動車用塗料への付着に役立つものとして記載されている。
【0009】
下記特許文献8(石黒らによる米国特許第7,109,266号)は、アクリルポリマー、および高い初期接着力を持つPSA組成物を作り、本質的に酸成分を生じない粘着付与剤樹脂の酸改質により得た粘着付与剤を含むアクリル感圧接着剤組成物を記載している。
【0010】
下記特許文献9(プラムソッタム(Plamthottam)らによる米国特許第5,639,811号)は、グリシジルモノマー、不飽和カルボン酸モノマーおよび好ましくは、ビニルラクタムモノマー、および粘着付与剤、二重硬化性であり、かつ、優れた剥離接着力と高温剪断性能を示す前記接着剤を用いた、アクリル骨格から成る共重合体を含む粘着付与感圧接着剤およびテープを教示している。しかしながら、極めて高温のせん断条件を満たすには分子量は十分に大きくない。
【0011】
下記特許文献10(国際公開第WO2008/116033号パンフレット)は、a)Tgが20℃以下で20、000以上の分子量を有するアクリレートポリマー、b)室温では液体であり、少なくとも1つの架橋性機能基を有するオリゴマー、および、c)他の存在下でa)とb)の少なくとも1つが架橋している、少なくとも1つの架橋剤を含む混合物から形成された感圧接着剤を教示している。
【0012】
下記特許文献11(エヴァアーツ(Everaerts)らによる米国公開特許第2005−0061435 A1号)は、感圧接着剤を形成する需要に応じて可塑剤で活性化することが可能な潜在的粘着性を強化された接着剤を掲載している。この接着剤はアジリジン架橋剤を利用するが、製品使用の間、高温せん断を向上させることはない。
【0013】
下記特許文献12(ペロキン(Peloquin)らによる米国特許第5,874,143号)は、粘着付与アクリルPSAに可塑剤材料の組み入れを記載している。得られたPSAは、高密度ポリエチレンプラスチックなどの低エネルギー表面にフィルムやラベルをマーキングする向上した結合を提供することが示された。
あらゆる試みにもかかわらず、低表面エネルギー基材への高い剥離接着力、高温せん断、優れた応力緩和特性、および優れた変換特性の組合せを有するようなPSAは得られていない。新素材での多くの産業用テープ結合の用途には、PSAは高い粘着力、低表面エネルギー基材への接着力、および応力緩和特性などの特性の組合せが、まだ要求されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0014】
【特許文献1】日本国公開特許公報昭60−69180号公報
【特許文献2】ドイツ特許公報323122号(1983年)
【特許文献3】米国特許第4、418、120号
【特許文献4】日本国公開特許公報昭59−18774号公報
【特許文献5】米国特許第6,893,718 B2号
【特許文献6】米国特許第4,456,741号
【特許文献7】米国特許第4,726,982号
【特許文献8】米国特許第7,109,266号
【特許文献9】米国特許第5,639,811号
【特許文献10】国際公開第WO2008/116033号パンフレット
【特許文献11】米国公開特許第2005−0061435 A1号
【特許文献12】米国特許第5,874,143号
【特許文献13】米国特許第4,726,983号
【特許文献14】ヨーロッパ公開特許第EP0,303,430号
【非特許文献】
【0015】
【非特許文献1】日本接着学会誌「接着」(23号、489〜504頁、1984年)
【非特許文献2】(セイタス(Satas)、ハンドブック オブ プレッシャーセンシティヴ アドヒーシヴ テクノロジー(Handbook of Pressure Sensitive Adhesive Technology)、ヴォン ノストランド レインホールド カンパニー(Von Nostrand Reinhold Company)、第20章、527−584頁 (1989年))
【非特許文献3】テスト メソッド フォー プレッシャー センシティヴ アドヒーシヴズ(Test Methods for Pressure Sensitive Adhesives)、第8版(8th edition)、PSTC#1
【非特許文献4】テスト メソッド フォー プレッシャー センシティヴ アドヒーシヴズ(Test Methods for Pressure Sensitive Adhesives)、第8版(8th edition)、PSTC#7
【発明の開示】
【0016】
本発明は、インラインで混合されたアジリジン架橋剤と共に粘着付与剤と混合した場合に、高い粘着強度、低表面エネルギー基材への良好な接着力、および良好な応力緩和特性を有する二重重合接着剤を提供するような、ペンダントエポキシの機能性およびペンダントカルボン酸の機能性がアクリル系共重合体に組み入れられている高分子量アクリル系感圧系接着剤を提供する。
アクリル共重合体は、重合されたアルキルアクリレートエステルおよび/またはアルキルメタクリレートエステルモノマーを主骨格とし、かつ、所望のエポキシの機能性と不飽和カルボン酸のポジティブ量を含有する、重合グリシジルモノマーを含む。前記共重合体はインラインで混合されたアジリジン架橋剤と共に粘着付与剤と混合して、「二重硬化性」粘着付与感圧接着剤を得る。前記接着剤は当初は(または主に)熱に対する露出により硬化したときには、優れた粘着性と剥離性および高温せん断性能の良好なバランスを示す接着剤となる。次に、接着剤が使用時の条件下での高温に曝露されるとき(二次硬化)、固有相互作用が隣接する共重合体鎖間で起こる。いずれの特定の理論にもとらわれることなく、グリシジルモノマーのエポキシ部はカルボン酸部と相互作用をするようであり、それにより、さらに共重合体を架橋する固有の二次硬化をもたらす。
【0017】
さらに、本発明の接着剤はフィラー、顔料、希釈剤などの他の従来のアジュバントを含む。また本発明は、本発明の接着剤の使用、例えば、本発明の接着剤のコアおよび少なくとも1つの表面層を含む転写テープおよび片面または両面被覆テープを提供する。本発明の接着剤やテープは種々の基材への良好な接着性を示し、かつ、構造接着および他の用途に使用可能である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
本発明の感圧接着剤は、或る高分子量アクリル系共重合体(「共重合体」という)をインラインで混合されたアジリジンと共に粘着付与剤と混合し、混合物を熱に曝露して初期硬化させる。これは、一次(または初期)硬化として知られている。
【0019】
共重合体は、アルキルアクリレートエステルおよびその混合物から成る群から選択された少なくとも1つのモノマーと、アリルグリシジルエーテル、アクリル酸グリシジルエステル、メタクリル酸グリシジルエステル、およびこれらの混合物、ならびに不飽和カルボン酸から成る群から選択されるグリシジルモノマーと、を含むモノマーの混合物を共重合させて調製される。
【0020】
約−15℃より低いガラス転移温度で共重合体が出来上がらない量に限定して、アルキル群に4個の炭素原子以下を含むアルキルアクリレートまたはメタクリレートエステルを共重合体に組込んでもよい。
【0021】
共重合をさせた場合、典型的には、本発明の共重合体はアルキル群に4から約12個の炭素原子を含有するアルキルアクリレートまたはアルキルメタクリレートエステルの約55から約85重量%、アルキル群に1から約4個の炭素原子を含有するアルキルアクリレートまたはアルキルメタクリレートエステルの0から約35重量%、グリシジルモノマーの0.01から約2重量%、および不飽和カルボン酸の最大でも約15、好ましくは約5から約13重量%のポジティブ量、を含む。
【0022】
一実施形態において、モノマーの比率はポリマーにガラス転移温度が約−15℃であるように選択した。本発明の未硬化状態の共重合体はポリスチレンを用いて校正されたサイズ排除クロマトグラフィーで決定される、少なくとも約200,000、好ましくは約200、000から約1、000、000の重量平均分子量を有する。
【0023】
アルキル基に4個から約12個の炭素原子を含有するアクリル酸アルキルまたはメタクリル酸アルキルの実施例は、アクリル酸2−エチルヘキシル、アクリル酸イソオクチル、アクリル酸ブチル、sec−ブチルアクリレート、メチルブチルアクリレート、4−メチル−2−ペンチルアクリレート、メタクリル酸イソデシル、アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、メタクリル酸メチルなど、およびこれらの混合物が含まれるがこれらに限定されない。
【0024】
本発明において有効な不飽和カルボン酸の実施例は、アクリル酸、メタクリル酸、フマル酸など、およびこれらの混合物が含まれるがこれらに限定されない。
【0025】
以下に述べるように、共重合体はまた、共重合体中に存在すると典型的には使用時の条件下で接着剤が固有の高温の2次的硬化を経る温度を下げるようなアクチベーターモイエティモノマーを、0から約30重量%、好ましくは約0.01から約1重量%含んでもよい。
【0026】
共重合体は溶液、エマルジョン、およびバッチ式重合技術を用いて合成してもよい。本発明の実施形態に従って、共重合体は溶剤の混合物を用いて溶液中で調製する。溶液重合には酢酸エチルとアセトンの混合物を使う。溶剤の比率は約68℃から約78℃の還流温度が出る様に調整する。典型的には、所望の重量平均分子量を達成し、かつ、反応炉内で管理可能な粘度をも達成するために、重合が行われる間の固形分含有量は約40%から約60%の範囲でよい。反応は、好ましくはアゾ型、例えば、2,2'−アゾビスイソブチロニトリルなどのフリーラジカル開始剤の存在下で起こる。また、反応炉は、典型的には、500、000以上の分子量を有するポリマーを調製する、窒素パージで挿入してもよい。
【0027】
[粘着付与剤]
共重合体が調製されると、感圧接着剤は、共重合体と粘着付与剤とを混合して製剤される。種々の粘着付与剤は接着剤の粘着性と剥離性を向上させるのに使用することが出来る。そのような粘着付与剤は、ロジンエステル、分画、水素化、脱水素化、および重合したロジンなどの変性ロジン、変性ロジンエステルなどを含む、松のオレオレジンに天然に存在するロジン系材料、ならびにこれらの誘導体を含有するロジンおよびロジン誘導体が含まれるがこれらに限定されない。
【0028】
種々の粘着付与剤は、限定されるものではないが、ハーキュリーズ社(Hercules、Inc.)が製造販売しているフォラル(Foral:登録商標)85(高度安定型ロジンのグリセロールエステル)、フォラル(Foral:登録商標)105(水素化ロジンのペンタエリトリトールエステル)、スタビライト エスター(Stabilite ester)10およびペンタリン エイチ(Pentalyn:登録商標)H、アリゾナケミカル社(Arizona Chemical Co.)が製造しているピーイー スターガム(PE Estergum)など、さらにはシルバケム社(Sylvachem Corporation)が製造しているシルバタック(Sylvatac:登録商標)40N、シルバタック(Sylvatac:登録商標)RX、シルバタック(Sylvatac:登録商標)95が販売されている。
【0029】
また、粘着付与剤として、ほとんどの精油および植物のオレオレジン、さらにα‐ピネン、β‐ピネン、ジペンテン、リモネン、ミルセン、ボルニレン、カンフェンなどのフェノール変性テルペン樹脂にある分子式がC1016の炭化水素であるテルペン樹脂を利用することができる。また、エクソンケミカル社(Exxon Chemical Co.)により製造されるエスコレッツ(Escorez:登録商標)1304のような種々の脂肪族炭化水素樹脂、およびC's、C's、ジシクロペンタジエン、クマロン、インデン、スチレン、置換スチレンおよびスチレン誘導体から成る芳香族炭化水素樹脂も利用することができる。
【0030】
ハーキュリーズ社(Hercules Corporation)により生産されるリーガルレッツ(Regalrez:登録商標)1018、リーガルレッツ(登録商標)1033、リーガルレッツ(登録商標)1078、リーガルレッツ(登録商標)1094、リーガルレッツ(登録商標)1126、リーガルレッツ(登録商標)3102、リーガルレッツ(登録商標)6108などの水素化または部分水素化樹脂は粘着付与剤として同様に利用することができる。シェネクタディケミカル社(Schenectady Chemical Inc.)により製造販売されるタイプ エスピー(type SP)560の種々のテルペンフェノール系樹脂、レイコールドケミカル社(Reichold Chemical Inc.)により製造販売されるニレッツ(Nirez)1100、およびハーキュリーズ社(Hercules Corporation)により製造販売されるピコライト(Piccolyte:登録商標)S‐100は特に有用な本発明の粘着付与剤である。さらに、ハーキュリーズ社により製造販売されるハーコテクス エーディー(Hercotex AD)1100などの種々の混合した脂肪族および芳香族樹脂も粘着付与剤として本発明で使用することができる。
【0031】
上述した樹脂は本発明の共重合体を粘着付与するのに極めて有用である一方、特定の粘着付与樹脂および/または所定の配合物のために選択された量は粘着付与されたアクリルポリマーの型に依存する。フォラル(Foral:登録商標)85などの一部の樹脂は、アクリル組成物と広く互換性がある。リーガルレッツ(Regalrez:登録商標)6108などの他のものは、限られた数の組成物を粘着付与する。使用される量と共に粘着付与樹脂の型はアクリルポリマーと実質的に互換性があることになる。本明細書においては、「実質的に互換性がある」という用語は、粘着付与剤と共重合体が混合されるときに、得られる混合物が正常な視力で見ると混濁ではなく実質的に透明であることを意味する。粘着付与アクリル系感圧系接着剤として有用な当分野で周知の多くの樹脂は、本発明の実施においては効果的に使用することができるが、本発明の範囲はそのような樹脂のみに限定されない。上記非特許文献2(セイタス(Satas)、ハンドブック オブ プレッシャーセンシティヴ アドヒーシヴ テクノロジー(Handbook of Pressure Sensitive Adhesive Technology)、ヴォン ノストランド レインホールド カンパニー(Von Nostrand Reinhold Company)、第20章、527−584頁 (1989年))に記載された樹脂(参照することにより本願に援用されている)を使うことも可能である。上記特許文献3(米国特許第4,418,120)および上記特許文献13(米国特許第4,726,983号(参照することにより本願に援用されている))、ならびに上記特許文献14(ヨーロッパ公開特許第EP0、303、430号(参照することにより本願に援用されている))に記載された樹脂は特に有用である。
【0032】
ここでも、本発明に使用される粘着付与剤の量は共重合体の型および使用される粘着付与剤に依存する。典型的には、本発明に従って調製された感圧接着組成物は総重量でみると1つ以上の粘着付与剤の約5%から約60%を含む。
【0033】
[架橋剤]
粘着付与接着剤は、アジリジン架橋剤を使用して架橋することができる。従来のアジリジン架橋剤を使用することができる。一実施形態において、アジリジン架橋剤はディーエスエム ネオレジンズ社(DSM NeoResins)のCX−100である。アジリジン架橋剤CX−100は100%活性多官能化アジリジン液体架橋剤である。前記架橋剤は、ウェブ上に混合物を被覆する前に、インラインミキサ工程を使用して添加することができる。架橋剤レベルの範囲は、乾燥接着剤の重量を基準にして、重量の約0.05から約1%である。
【0034】
[その他の添加剤]
また、本発明の接着剤は顔料、フィラー、可塑剤、希釈剤などの1つ以上の従来のアジュバントを含んでもよい。必要に応じて、顔料は接着剤に所望の色を出すのに十分な量で提供する。顔料の実施例はカーボンブラック、二酸化チタンなどの固体型無機フィラー、さらに有機色素が含まれるがこれらに限定されない。
【0035】
必要に応じて、可塑剤などの希釈剤を粘着性と粘着強度の特性を変えるために、粘着付与剤の一部の場所に添加してもよい。
【0036】
本発明の感圧接着剤は熱、化学的架橋剤、化学線、または電子ビーム放射線への曝露により一次的に硬化する。その結果、優れた粘着性と剥離性および高温せん断性能の良好なバランスになる。共重合反応へのアクリル酸グリシジルおよび/またはメタクリル酸グリシジルの組み入れは、所望の高分子量ポリマーの生成を促進しているとみられる。
【0037】
本発明の一態様では、接着剤は乾燥状態における熱への曝露により一次的に硬化し、つまり、接着剤は組成物から溶剤を蒸発させるのに十分な高温で硬化する。典型的には、そのような温度は約70℃から120℃の範囲である。
【0038】
接着剤の「2次硬化」は、接着剤がその後、典型的には使用時の条件下で、高温に曝された時に起こる。理論にとらわれるものではないが、固有の相互作用は、重合グリシジル含有モノマーのペンダントエポキシの機能性と重合不飽和カルボン酸モノマーのペンダントカルボン酸機能性の間に大部分が起こると考えられている。また、「2次硬化」は1次硬化の条件下で、熱に接着剤を曝すことで後者が起こった時、少なくとも一部が起こりえると理解すべきである。従って、エポキシとカルボン酸の機能性の間の一部の相互作用が1次硬化の間に起こり得る。これにより、強化された高温性能を得る。
【0039】
2次硬化の活性化温度を下げる効果があり、かつ、本発明の粘着付与アクリル系接着剤と互換性が有る化学種を使用してもよい。典型的には、活性化温度は約120℃以下である。使用するアクチベーターモイエティの量と型を調整することで、2次硬化の温度を「ダイヤルイン」することが可能である。
【0040】
上述した接着剤組成物に加えて、本発明は転写テープと層構造のテープの両方を提供するが、後者は本発明の粘着付与アクリル系共重合体から成る表面層をもち1面または両面を被覆したコアから成るものである。
【0041】
本発明に従い調製された転写テープは、上述したように感圧接着剤の自己支持性フィルム、および少なくとも1つの剥離ライナーを含む。従って、感圧接着剤はシリコン剥離紙などの剥離ライナー上に被覆し、かつ、ロールとして保存してもよい。
【0042】
本発明の接着剤およびテープは金属、プラスチック、および塗料などの種々の基材に対して優れた剥離接着力を示す。
【0043】
以下の試験を本発明の種々の物理的特性の決定に使用した。
【0044】
90°剥離接着力は、2milのマイラーフィルム上に積層された接着剤を用いて、非特許文献3(テスト メソッド フォー プレッシャー センシティヴ アドヒーシヴズ(Test Methods for Pressure Sensitive Adhesives)、第8版(8th edition)、PSTC#1)に記載された方法と同様方法で計測した。
【0045】
高温せん断(232℃)を24時間の滞留時間で、非特許文献4(テスト メソッド フォー プレッシャー センシティヴ アドヒーシヴズ(Test Methods for Pressure Sensitive Adhesives)、第8版(8th edition)、PSTC#7)に記載された方法と同様方法で計測した。
【0046】
電気せん断試験を以下のように行った。L字型ステンレス鋼パネルを試験が実施されている感圧接着剤を用いて末端に穴がある第2のステンレス鋼パネルと結合させた。荷重200gを穴から第2のパネルに掛ける。2つのパネルの積層部が水平設置され、かつ、分銅が垂直に設置されるようにL字型パネルを基材に固定する。接着剤の保持力を特徴付ける、60℃で第2のパネルがL字型パネルから外れるまでの時間を計測する。
【0047】
ドームテントリフト試験では、穴の中に11mmのリベットを入れ直径13mmの穴の上に2milの厚さのアルミニウム裏敷きを置いて1"×1"テープを貼りつけて計測した。トライアングルドームテント形態に1つのプレート当たり3つの穴がある。1kgの分銅を穴の中心に置き、穴の底の周りの接着剤リフトを計測した。
【0048】
8mmの平行板があるティーエーインスツルメンツ社の(TA Instruments)ARESを使用して、動的せん断特性(モジュールおよびTan−delta)を計測した。時間温度換算を基準温度25℃で実施した。
【0049】
限定するものではないが、以下は本発明を説明する。
【0050】
[実施例1−HPAHC]
モノマー混合物は207gのブチルアクリレート、61.2gのアクリル酸2‐エチルヘキシル、23.1gのアクリル酸、および0.1gのメタクリル酸グリシジルを混合して調製した。前記混合物68.5gをピッチドタービン型攪拌機、還流コンデンサーおよびサーミスタが装備された1.5リットルの窒素パージした反応炉に入れた。また、酢酸エチル29.7gとアセトン18gを添加した。反応炉の内容物を加熱還流し、続けて、デュポン(Dupont)社が製造販売しているバゾ(Vazo:登録商標)64(2−2'−アゾ−ビス−イソブチロニトリル)0.05gを酢酸エチル4.5gに添加した。活発な還流が短い時間に開始されたが反応炉の内容物を15分間保持した。この時点で、残存するモノマーを酢酸エチル195g、アセトン40gおよび0.24gのバゾ(Vazo:登録商標)64 と混合し、続けて、シングル供給混合物として3時間以上添加した。供給している間、反応炉の内容物を還流下にしておく温度を維持した。供給終了1時間後、0.12gのバゾ(Vazo:登録商標)64を酢酸エチル9gおよびアセトン4g中で添加し、さらに1時間保持した。この工程を2回繰り返した。最終添加終了時に、さらに1時間保持し、次に、トルエン178gとヘプタン27gを添加した。終了時の固形分濃度は36%であり、かつ、粘性はブルックフィールド(Brookfield)粘度計により、12rpmで4番スピンドルを用いて8000Pa.sであった。得られたポリマーは71重量%のブチルアセテート、21重量%のアクリル酸2‐エチルヘキシル、8重量%のアクリル酸、および0.03重量%のメタクリル酸グリシジルから成る。ポリマーはフランスのDRT社が製造した20重量%のデルトフェンT粘着付与剤(テルペンフェノール)を用いて調製した。次に、粘着付与接着剤はオランダのネオレジンズ(NeoResins)社の0.1%のアジリジン架橋剤CX−100を用いて、インライン工程で混合された。HPA HCとして同定されている実施例1を生成するウェブ上に被覆する前に、正確に測定し、粘着付与接着剤をアジリジン架橋剤と均一に混合するために、特別な計量と混合システムであるスイスのドパッグ(DOPAG)社製造のラドミックス(LADO−MIX)V−SBを使用した。
【0051】
前記組成物を剥離フィルム上に被覆し、約60gsmの皮膜厚さを得たが、このフィルムを70℃で15分間乾燥させた。
【0052】
比較のために、本製品FT2022を表1に示して評価した。
【0053】
【表1】

【0054】
【表2】

【0055】
【表3】

【0056】
周波数はtan dの最大値の場合の周波数を意味する。
【0057】
表1に示したように、本発明による調製のテープは(1)プラスチックではより高い90℃剥離接着力、(2)より高80℃(高温)剥離接着力、(3)荷重400gでの232℃では、かなり高いせん断値、および(4)より小さいドームテントリフティングを示すので、より良い応力緩和特性を示唆している。
【0058】
表2に示したように、本発明による調製のテープは、荷重200gでの60℃では、別の2つの比較例と比べた場合に最長の破損時間を示した。
【0059】
表3に示したように、本発明による調製のテープは、100、000rad/s周波数で、販売されている対応物である3M300 LSEより、かなり高いG'/tan d値を示した。この比率は、比率が高いほど接着剤のダイカット性がより良く、接着剤のダイカット性を予測するのに使用されてきた。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
アジリジン架橋剤を含有する二重硬化性アクリル系共重合体を含む粘着付与感圧接着剤組成物。
【請求項2】
前記アクリル系共重合体は、アルキルアクリレートエステルおよびその混合物から成る群から選択された少なくとも1つのモノマーと、アリルグリシジルエーテル、アクリル酸グリシジルエステル、メタクリル酸グリシジルエステル、およびこれらの混合物、ならびに不飽和カルボン酸から成る群から選択されるグリシジルモノマーと、を含むモノマーの混合物の共重合から成る、請求項1に記載の組成物。
【請求項3】
フィラー、顔料、希釈剤、可塑剤等から選択される1つ以上のアジュバントをさらに含む、請求項1または2に記載の組成物。
【請求項4】
共重合をさせた場合、90〜50%のBA、5〜40%の2−EHA、0.01から0.1%のメタクリル酸グリシジルエステル、最大約10%のポジティブ量の不飽和カルボン酸モノマー、10から40%の粘着付与剤、および0.05から1%のアジリジン架橋剤を含有する、架橋アクリル系共重合体を含む粘着付与感圧接着剤組成物。
【請求項5】
二重硬化性感圧系接着剤を調製する方法であって、
a)アルキルアクリレートエステルおよびその混合物から成る群から選択された少なくとも1つのモノマーと、アリルグリシジルエーテル、アクリル酸グリシジルエステル、メタクリル酸グリシジルエステル、およびこれらの混合物、ならびに不飽和カルボン酸から成る群から選択されるグリシジルモノマーと、を含むモノマーの混合物を共重合し、共重合体を形成することと、
b)粘着付与剤を添加し、粘着付与接着剤を調製することと、
c)アジリジン架橋剤を前記粘着付与接着剤に添加し、二重硬化性感圧接着剤を得ることと、
を含む方法。
【請求項6】
前記二重硬化性感圧系接着剤に、フィラー、顔料、希釈剤、可塑剤等から選択される1つ以上のアジュバントを添加することをさらに含む、請求項5に記載の方法。
【請求項7】
d)基材上に接着剤を被覆することと、
e)接着剤を乾燥させることと、
をさらに含む、請求項5に記載の方法。
【請求項8】
請求項1または2に記載の感圧接着剤を含む、接着剤被覆生成物。
【請求項9】
前記生成物はテープである、請求項3に記載の生成物。

【公表番号】特表2013−504664(P2013−504664A)
【公表日】平成25年2月7日(2013.2.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−528954(P2012−528954)
【出願日】平成22年9月13日(2010.9.13)
【国際出願番号】PCT/US2010/048598
【国際公開番号】WO2011/032074
【国際公開日】平成23年3月17日(2011.3.17)
【出願人】(511205046)エイブリィ デニソン コーポレーション (15)
【Fターム(参考)】