説明

二重爪構造を備えた車両用ラッチ

低解除労力式偏心二重爪型車両用ラッチがラチェット(24)、一次爪(64)、補助ラチェット(44)及び二次爪(84)を確実ロックレバー(104)と組み合わせ状態で有する。確実ロックレバー(104)は、ラッチの時期尚早な又は意図していない開放を阻止するよう二次爪(84)の運動を選択的に阻止する。駆動機構体(140)がラッチを開放するために確実ロックレバー(104)及び二次爪の運動を順序付ける。リセット時、駆動機構体(140)は、補助ラチェット(44)を駆動してこれをその閉鎖状態に戻し、このプロセス中、補助ラチェット(44)は、二次爪(84)に係合し、そして二次爪(84)に加わる付勢力が不十分な場合であっても、これを閉鎖状態に戻す。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、一般に、車両用ラッチの分野に関し、特に二重爪構造を利用した車両用ラッチに関する。
【0002】
〔関連出願の説明〕
本願は、2009年5月26日に出願された国際出願PCT/EP09/003694号の一部継続出願であり、この国際出願を参照により引用し、その記載内容全体を本明細書の一部とする。本願は又、2010年2月5日に出願された米国特許仮出願第61/301,647号の優先権主張出願であり、この米国特許仮出願を参照により引用し、その記載内容全体を本明細書の一部とする。
【背景技術】
【0003】
二重爪構造は、ラッチ止め技術分野において知られている。二重爪構造は、第1の爪及びラチェットの組を第2の爪及びラチェットに連結した状態で利用する場合がある。連結手段は、第1の爪及びラチェットの組の受ける力のほんの一部分が第2の爪及びラチェットの組に加えられ、かくして、ラッチを解除するのに比較的小さい労力しか必要でないようにするよう構成されている場合がある。このことは望ましいが、これにより、不均衡状態の力が意図しない状況、例えば衝突事故の際にラッチを意図しないにもかかわらず解除する場合があるという問題も又生じる。かかる状況の発生を防ぐことが望ましい。
【0004】
加うるに、二重爪構造では、両方の爪は、これらのロック位置にリセットされなければならない。従来、不正手段、例えばばねがかかる目的のために用いられている。しかしながら、時間が経過するにつれ、これら付勢力が低下する場合があり又は爪のこれらのそれぞれのロック位置への戻りに対する他の妨げに対処するには場合によっては不十分な場合がある。かかる問題に対する気の利いた安価な解決手段が要望されている。
【発明の概要】
【0005】
本発明の広義の一観点は、ラチェット、一次爪、補助ラチェット及び二次爪を確実ロックレバーと組み合わせ状態で有する車両用ラッチに関し、確実ロックレバーは、ラッチの時期尚早な又は意図していない開放を阻止するよう二次爪の運動を選択的に阻止する。駆動機構体がラッチを開放するために確実ロックレバー及び二次爪の運動を順序付ける。
【0006】
本発明のこの観点によれば、ラチェットは、ラチェットがストライカを受け入れるよう位置決めされるストライカ解除位置と、ラチェットがストライカを保持するよう位置決めされるストライカ捕捉位置との間で動くことができ、ラチェットは、ストライカ解除位置に向かって付勢されている。一次爪は、一次爪がラチェットをストライカ捕捉位置に保つよう位置決めされるラチェット制止位置と、一次爪がストライカ捕捉位置からのラチェットの離脱運動を可能にするラチェット解除位置との間で動くことができ、一次爪は、ラチェット制止位置に向かって付勢されている。補助ラチェットは、一次爪に作動的に連結されており、補助ラチェットは、一次爪がそのラチェット制止位置まで動くことができるようになった動作可能位置と、補助ラチェットが一次爪をそのラチェット解除位置に位置決めする動作不能位置との間で動くことができる。二次爪は、二次爪が補助ラチェットをその動作可能位置に保持するよう位置決めされる補助ラチェット保持位置と、二次爪が補助ラチェットのその動作不能位置への運動を可能にするよう位置決めされる補助ラチェット解除位置との間で動くことができ、二次爪は、補助ラチェット保持位置に付勢されている。確実ロックレバーは、確実ロックレバーが二次爪のその補助ラチェット保持位置からの離脱運動を阻止するロック位置と、解除位置との間で動くことができ、確実ロックレバーは、二次爪のその補助ラチェット解除位置への運動を可能にし、確実ロックレバーは、ロック位置に付勢されている。駆動機構体は、確実ロックレバーをその解除位置に動かすと共に二次爪をその補助ラチェット解除位置に動かすギヤホイールを含む。
【0007】
本発明の別の広義の観点は、ラチェット、一次爪、補助ラチェット及び二次爪を備えたラッチに関する。駆動機構体がラッチを開閉するために二次爪及び補助ラチェットとインターフェースする。補助ラチェットは、閉鎖時に二次爪に係合してこれを動かすよう構成されている。
【0008】
本発明のこの観点によれば、ラチェットは、ラチェットがストライカを受け入れるよう位置決めされるストライカ解除位置と、ラチェットがストライカを保持するよう位置決めされるストライカ捕捉位置との間で動くことができ、ラチェットは、ストライカ解除位置に向かって付勢されている。一次爪は、一次爪がラチェットをストライカ捕捉位置に保つよう位置決めされるラチェット制止位置と、一次爪がストライカ捕捉位置からのラチェットの離脱運動を可能にするラチェット解除位置との間で動くことができ、一次爪は、ラチェット制止位置に向かって付勢されている。補助ラチェットは、一次爪に作動的に連結されており、補助ラチェットは、一次爪がそのラチェット制止位置まで動くことができるようになった動作可能位置と、補助ラチェットが一次爪をそのラチェット解除位置に位置決めする動作不能位置との間で動くことができる。二次爪は、二次爪が補助ラチェットをその動作可能位置に保持するよう位置決めされる補助ラチェット保持位置と、二次爪が補助ラチェットのその動作不能位置への運動を可能にするよう位置決めされる補助ラチェット解除位置との間で動くことができ、二次爪は、補助ラチェット保持位置に付勢されている。駆動機構体は、ラッチの開放プロセス中、二次爪をその補助ラチェット解除位置に動かし、後で、ラッチを閉鎖するプロセス中、補助ラチェットをその動作可能位置に動かす。補助ラチェットは、補助ラチェットがその動作可能位置に向かって動いているときに、二次爪に係合してこれをその補助ラッチ保持位置に動かすよう構成されている。
【0009】
本発明の上記観点及び他の観点は、図面を参照すると容易に理解されよう。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1A】前カバーがこの図から取り去られた状態のラッチの正面図である。
【図1B】後カバーがこの図から取り去られた状態のラッチの背面図である。
【図2A】後カバーがこの図から取り去られた状態の変形実施形態としてのラッチの背面図側斜視図である。
【図2B】後カバーがこの図から取り去られた状態の変形実施形態の背面図側平面図である。
【図3】ラッチ内の種々の力を示す略図である。
【図4】ラッチ、具体的には種々のレバーと相互作用するギヤホイールの隔離部分の斜視図である。
【図5】図4の場合と同様なラッチ部分の斜視図であるが、図4に示されているレバーのうちの1本がこの図から取り去られている状態を示す図である。
【図6A】ギヤホイールを単独で示す斜視図である。
【図6B】ギヤホイールを図6Aとは異なる視点から取って単独で示す斜視図である。
【図7】ラッチを開放する部分作動状態にあるラッチの部分背面図である。
【図8】第2の部分作動開放状態にあるラッチの部分背面図である。
【図9】第3の部分作動開放状態にあるラッチの部分正面図である。
【図10】第4の部分作動開放状態にあるラッチの部分背面図である。
【図11】第5の部分作動開放状態にあるラッチの部分背面図である。
【図12】ラッチをリセットする第1の部分作動状態にあるラッチの部分正面図である。
【図13】第2の部分作動リセット状態にあるラッチの部分正面図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
図1Aは、電気ラッチ20の正面図であり、この電気ラッチは、ハウジング22を有し、ラチェット24がハウジング22内に設けられたピン26周りに回転できる状態でハウジング22内に回動可能に設けられている。ラチェット24は、ストライカ28(二点鎖線で概略的に示されている)が図1Aに示されているようにラチェット24のフック30又は爪状部により捕捉される完全閉鎖又はストライカ捕捉位置と、ストライカ28がフック又は爪状部30によって捕らえられておらず、従ってフック又は爪状部に設けられたスロットから自由に出ることができる開放又はストライカ解除位置との間で回動する。(図1Aの向きでは、ラチェット24は、時計回りに回転して開放又はストライカ解除位置に動く。)
【0012】
ラチェット24は、付勢ばね(図示せず)により開放位置に付勢されている。ストライカバンパ32がストライカの衝撃力を和らげるようハウジング22内に(ラチェット24の下に)設けられており、ラチェットバンパ34も又、ラチェットの衝撃力を和らげるようハウジング22内に設けられたポスト36周りに設けられている。
【0013】
カムとも呼ばれる場合がある補助ラチェット44も又、この補助ラチェットが図1Aに示されているようにラチェット24に当接する閉鎖又は動作可能位置と以下に詳細に説明する開放又は動作不能位置との間で動くことができるようピン46によりハウジング22内に回動可能に設けられている。(図1Aの向きでは、補助ラチェット44は、時計回りに回転して開放又は動作不能位置に動く。)
【0014】
補助ラチェット44は、一次爪64を回動可能に取り付ける円筒形ボア48を有している。一次爪64は、この一次爪をハウジング22ではなく、補助ラチェット44のボア48内に回動可能に設けるための円筒形スタブ66を有する。これにより、一次爪64を取り付ける極めて簡単な手段が提供され、一次爪は、単純な打ち抜き加工又は焼結金属片で形成できる。
【0015】
補助ラチェット44は、アンビル52で終端した脚部50を更に有し、アンビル52は、制止肩54及びカムリップ56を有している。補助ラチェット44は、好ましくは、エラストマー材料で封入されており、補助ラチェットは、ラチェット24に接触してこれに対する衝撃を吸収する弾性変形可能なバンド60を提供するよう中空部58を備えている。
【0016】
図1Bの背面図又は反対側の図で理解されるように、この実施形態では、ハウジング22の反対側に設けられた付勢ばね45が補助ラチェット44を開放又は動作不能位置に付勢している。ばね45は、ピン26のキャプスタン27に当接する第1のタング45a及びばね45の反対側の端部に設けられていて、ハウジング22に形成されたスロット23により補助ラチェット44に設けられたフォーク(図示せず)と協働する第2のタング45bを備えている。変形実施形態では、付勢ばね45は、補助ラチェット45を以下に詳細に説明するように閉鎖位置に向かって付勢しても良い。
【0017】
図1Aに戻ってこれを参照すると、一次爪64は、スタブ66から延びる制止アーム68を有する。制止アーム68は、制止アーム68が図1Aに示されているようにラチェット24の開放押圧を止める閉鎖又はラチェット制止位置と制止アーム68が開放又はストライカ解除位置へのラチェット24の回転を阻止することがない開放又はラチェット解除位置との間で回動する。(図1Aの向きでは、一次爪64は、時計回りに回転して開放又はラチェット解除位置に動く。)
【0018】
制止アーム68の角度的スイープ範囲は、一方の側が補助ラチェット44に設けられた縁63によって制限され、他方の側が補助ラチェットの脚部50によって制限される。一次爪64の封入体で形成された長鼻状バンパ72が補助ラチェット脚部50に対する制止アーム68の衝撃を和らげるよう設けられるのが良い。さらに、補助ラチェット縁63に対する制止アーム68の衝撃を減少させ又は和らげるためにストライカバンパ32の延長部33が設けられるのが良い。
【0019】
一次爪64は、好ましくは、ばね74によって閉鎖又はラチェット制止位置に付勢され、ばね74は、補助ラチェット44のアンビル52に設けられたポスト76の周りに巻かれている。ばね74の一方のタング(図1Aでは見えない)が補助ラチェット脚部50に載り、別のタング78は、一次爪64の制止アーム68に当接している。付勢ばね74が固定状態のハウジング22ではなく補助ラチェット44に取り付けられているので、一次爪64に加わる付勢力は、補助ラチェット44が回転しているとき、それほど変化しないであろう。
【0020】
ラチェット24は、一次爪64の制止アーム68と相互作用する一次肩38及び二次肩40を備えている。一次肩38は、ストライカ28がラチェット24のフック又は爪状部30内にしっかりと嵌まり込んで車両ドア(図示せず)が完全に閉められてドアシール(図示せず)が圧縮されるラチェット24の完全閉鎖ロック位置を提供する。二次肩40は、ストライカ28がラチェット24のフック30内にルーズに固定されて車両ドアがロックされるがそのシールに当たって完全には閉鎖されないラチェット24の部分閉鎖ロック位置を提供する。
【0021】
補助又は二次爪84も又、二次爪84が図1Aに示されているように補助ラチェット44の開放運動を制止する閉鎖又は補助ラチェット保持位置と開放又は補助ラチェット解除位置との間で動くことができるようピン86周りに回動可能にハウジング22内に設けられている。(図1Aの向きでは、一次爪64は、反時計回りに回転して開放又は補助ラチェット解除位置に動く)二次爪84は、補助ラチェット制止肩54に係合するフック肩88及び突出部90を備え、この突出部の目的については、以下において説明する。二次爪84は、ハウジング22に形成された孔94を貫通して突き出た第1の曲げタブ92及びハウジング22に設けられた別の孔95を貫通して突き出ている第2の曲げタブ93を更に有し、これらタブの目的についても以下において説明する。
【0022】
二次爪84は、ピン86の周りに設けられたばね96(図3では部分的に見える)によって閉鎖又は補助ラチェット保持位置に付勢されている。
【0023】
かくして、上記の説明から、ラッチ20は、解除労力を軽くする偏心二重爪構造を提供している。特に、図3に示されているように、車両ドアを閉めたときに密封力の反力である力Fsがラチェット24に加わった状態で存在している。力Fsは、ラチェット付勢力と一緒になって、ラチェット24に加わるモーメントM1を生じさせる。かくして、一次爪64を動かすのに必要な力は、制止アーム68とラチェット肩38との間に生じる摩擦係数にほぼFsのX/Yである力を乗算した量に関連付けられ、この場合、Xは、ストライカとラチェット回動箇所(ピン26のところ)との間の半径方向距離であり、Yは、一次爪/ラチェット接触領域とラチェット回動箇所との間の距離である。実際、比X/Yは、約40%であると言って良い。同様に、一次爪68に加わる力X/Y・Fsは、補助ラチェット44回りのモーメントM2を生じさせる。かくして、二次爪84を動かすのに必要な力は、二次爪フック肩88と補助ラチェット制止肩54との間に生じる摩擦係数にほぼX/Y・FsのA1/A2である力を乗算した量に関連付けられ、この場合、A1は、一次爪64に加わる力の箇所と補助ラチェット回動箇所(ピン46のところ)との間の半径方向距離であり、A2は、二次爪/補助ラチェット接触領域と補助ラチェット回動箇所との間の距離である。事実、比A1/A2は、10〜20%という低い値であると言って良い。かくして、ラッチ20を開くのに必要な解除労力は、比較的軽くすることができる。
【0024】
さらに図1Bに示されているラッチ20の背面側又は反対側の側面図を参照すると、ラッチ20は、ハウジング22内に設けられたポスト106周りに回動可能に取り付けられた確実ロックレバー104を有している。確実ロックレバー104は、図1Bに示されているように、確実ロックレバーの親指状部108が二次爪84のその開放位置への運動を制止するために二次爪84の曲げタブ92に係合するロック位置と、親指状部108が二次爪84のその開放位置への運動を阻止することはない解除位置との間で回動する。(図1Bの向きでは、確実ロックレバー104は、反時計回りに回動してその解除位置に動く。)
【0025】
ハウジング22によって支持された第1のタング113及び確実ロックレバー104に載っている第2のタング114を備えたばね112が確実ロックレバー104をそのロック位置に付勢している。ハウジング22に取り付けられた小さなバンパ110が確実ロックレバー104がそのロック位置にあるとき、確実ロックレバー104の親指状部108を二次爪タブ92と位置合わせするために、確実ロックレバー104のための角度的限度を設定している。
【0026】
確実ロックレバー104は、親指状部108と反対側の長い指状部116を含む二又状設計を備えている。指状部116は、以下に詳細に説明するようにギヤ組立体140と協働する球形端部118を有している。
【0027】
ギヤ組立体140は、ハウジング22内に形成されたコンパートメント内に収納された電気モータ142を含む。モータ142は、電子コントローラ(図示せず)により制御され、電子コントローラは、好ましくは、電力をモータに供給してこれを選択的に駆動するようラッチ内に収納されている。モータ142は、ウォームギヤ144を駆動し、このウォームギヤは、ギヤホイール146を駆動し、ギヤホイール146は、ハウジング内に設けられた別のコンパートメント内に収納されると共にこの中に設けられたポスト147周りに回転可能に設けられている。
【0028】
さらにラッチ20の種々の部分を単独で示す図4、図5、図6A及び図6Bのそれぞれの図を参照すると、ギヤホイール146は、補助ラチェット44、二次爪84及び確実ロックレバー104と相互作用することが理解されよう。特に。図4に最も良く示されているように、ギヤホイール146は、ギヤホイール146の円板150から軸方向に延びるプッシュブロック148を有している。プッシュブロック148は、二次爪84の垂下した楔形当接部98に係合し、この楔形当接部は、二次爪84の金属タブ93の内方に配置された状態でこれによって支持されている。ハウジング孔95(図1A)は、二次爪タブ93及び垂下当接部98の所要の運動を可能にするよう寸法決めされている。図5、図6A及び図6Bに最も良く示されているように、ギヤホイール146は、円板150に設けられていて、補助ラチェット44の垂下ポスト62を収容する第1のウェル160を更に有する。第1のウェル160は、その互いに反対側の周方向端部に半径方向押し表面162,164を有する。ギヤホイール146は、第1のウェル160と部分的に共通して配置されているが、第1のウェル160とは軸方向に異なる高さ位置又は平面に設けられた第2のウェル166を更に有している。第2のウェル166は、以下に説明するように確実ロックレバー104の球形端部118にときどき係合する半径方向カム面168(図6Bに最も良く示されている)を有する。ギヤホイール146は、以下に説明するように確実ロックレバー104の球形端部118にときどき係合する周方向案内面170を更に備えている。
【0029】
動作原理を説明すると、図1A及び図3に示されているような閉鎖又は補助ラチェット保持位置では、二次爪84は、例えば衝突の場合に生じることがある慣性力Fi(図3参照)を受ける場合がある。上述したようにラッチを開くのに必要な解除労力が軽いとすれば、特に大きいことが必要であるわけではない力Fiは、二次爪84を開く傾向がある。しかしながら、図1Bに最も良く示されているように、確実ロックレバー104の親指状部108は、有利には、二次爪84がその開放又は補助ラチェット解除位置に回動するのを阻止する。
【0030】
ラッチ20を図1Aに示された完全閉鎖位置から開放するためには、コントローラ(図示せず)がギヤ組立体140に動力を供給してギヤホイール146が回転するようにする(図1Bの向きで時計回りに)。図7(図7の向きでは、ギヤホイール146も又時計回りに回転する)の背面側想像図に示されているように、ギヤホイール146のカム面168は、まず最初に、指状部116の球形端部118を押して確実ロックレバー104を第2のギヤホイールウェル166から出す。その結果、確実ロックレバー親指状部108は、その制止位置から離脱されてもはやタブ92と位置合わせされておらず、かくして、二次爪84は、その開放又は補助ラチェット解除位置に回動することができる。
【0031】
次に、図8(ここでは、ギヤホイール146は、想像線で示されている)の単独背面側想像図に示されているように、確実ロックレバー104の指状部116は、ギヤホイール周方向案内面170に乗り始める。加うるに、ギヤホイールプッシュブロック148は、二次爪84をその開放又は補助ラチェット解除位置に動かすよう二次爪84の垂下当接部98に係合し始める。図9の単独正面側想像図に示されているように、補助ラチェット制止肩54が二次爪フック肩88を通過すると、補助ラチェット44に加わる付勢力及び/又は密封力Fsの反力は、代表的には、補助ラチェット44をその開放又は動作不能位置に飛び込ませる。そして、補助ラチェット44がその開放又は動作不能位置に回動すると、一次爪64及びその制止アーム68は、縁63によってその開放又はラチェット解除位置に運ばれ、その後、ラチェット24は、図9に示されているようにその開放又はストライカ解除位置に飛び込む。
【0032】
しかしながら、補助ラチェット44に加わる付勢力及び/又は密封力が不十分である場合、ギヤホイール146は、補助ラチェット44をその開放又は動作不能位置に押しやるよう機能することができる。特に、ギヤホイール146が想像線で示されている図10及び図11の単独背面側想像図に示されているように、コントローラは、引き続きギヤホイール146を回転させ、補助ラチェット44がまだ開放状態にばね押しされていない場合、第1のギヤホイールウェル160の半径方向押し面162は、図10に示されているように、補助ラチェット44の垂下ポスト62に係合し始め、そして図11に示されているように、補助ラチェット44を一次爪制止アーム68が図示のようにラチェット一次肩38を通過するその開放又は動作不能位置に押圧し、かくして、ラチェット24に作用する付勢力及び/又は密封力に起因したラチェット24のその開放又はストライカ解除位置への回転を阻止することはないであろう。
【0033】
コントローラは、補助ラチェット44がその開放又は動作不能位置に完全に動かされる限度に達するまでギヤホイール146を回転させる。この限度は、リミットスイッチ(例えば、「ドアオープン」スイッチ、ハンドルスイッチ又はこれら両方)の使用により、一部がハードリミットに当たった結果としての電流スパイクを検出することによって又は電力をモータギヤ組立体140に供給するための指定された時間に達することによって報知されるのが良い。好ましい実施形態は、不必要な電力消費を回避するためにタイムアウト(時間切れ)と関連してスイッチ検出技術を採用するが、しかしながら、限度は、これに達したときに確認され、コントローラは、即座にギヤホイール146を逆方向に回転させ始めてラッチのためのリセット作業を開始し、その後、ストライカがラチェット24に再び入る。
【0034】
かくして、図6B、図11及び図12を参照すると、短い空動き(ロストモーション)期間後、第1のギヤホイールウェル160の反対側の半径方向押し面164は、補助ラチェット44の垂下ポスト62に係合してこれを回転させてその閉鎖又は動作可能位置に向かって戻し始める。このプロセス中、二次爪84は、ギヤホイールプッシュブロック148(これは、二次爪垂下当接部98に係合する)がその初期状態に戻っているときに二次爪84に加わる付勢力の結果としてその閉鎖又は補助ラッチ保持位置に戻る。
【0035】
また、二次爪に加わる付勢力が何らかの理由で二次爪84をその閉鎖又は補助ラッチ保持位置に戻す(又は、これを十分迅速に戻す)のに不十分である場合、ギヤホイール146により駆動される補助ラチェット44の運動は、この機能を達成することができる。具体的に説明すると、補助ラチェットアンビル52のカムリップ56は、二次爪84を回動させてこれをその閉鎖又は補助ラチェット保持位置に戻すために二次爪の突出部90に係合するよう構成されている。かくして、ギヤ組立体140は、二次爪84に運動学的に作用して二次爪をラッチリセット中、その閉鎖又は補助ラチェット保持位置に動かすよう働く。
【0036】
ギヤホイールの戻り動程の終わりに、確実ロックレバー104は又、確実ロックレバー指状部116の球形端部118が第2のウェル166内に捕捉されて親指状部108が二次爪タブ92と整列し、二次爪84の開放運動を阻止するとそのロック位置(図1B参照)に戻る。
【0037】
その結果、リセットプロセスの終わりに、図12に示されているように、補助ラチェット44は、その閉鎖又は動作可能位置に動かされ、二次爪84は、その閉鎖又は補助ラチェット制止位置に動かされ、確実ロックレバー104は、そのロック位置に動かされる。しかしながら、一次爪64は、まだその閉鎖又はラチェット制止位置を取っていない。というのは、制止アーム68は、開放状態のラチェット24に単にかすった状態で当たっているに過ぎないからである。車両ドアが閉じられてストライカがラチェットフック又は爪状部30に再び入った場合にのみ、ラチェット24は、その閉鎖又はストライカ保持位置に向かって回転し、それにより、一次爪64に加わった状態で存在する付勢力が制止アーム68を図1Aに示すようにラチェット一次肩38(又は、弱く閉じられたドアの場合には二次肩40)と一緒に制止位置に動かすことができる。
【0038】
開放時にラッチを即座にリセットする順序は、ラッチを後で閉鎖するプロセス中、可動部品がラチェット44及び一次爪64だけであるという点で利点を有し、これら部品の運動が生じるノイズは、比較的低い。より重要なこととして、車両ドアをどれほど早く閉じるかに応じて極めて迅速に又はゆっくりと起こる場合のあるラッチの開放時の部品の運動を同期させる必要はない。かくして、ラッチは、速度に敏感ではなく、かくして、ラッチを閉鎖中にリセットする際のかかる問題を回避することが可能である。
【0039】
図2A及び図2Bは、変形実施形態としてのラッチ20′を示しており、この場合、同一の部品は、ラッチ20と同一の参照符号で示されている。ラッチ20′は、確実ロックレバー104をそのロック位置から解除する追加の機構体を有する。この機構体は、ピン86に回転可能に取り付けられていて、3つの肢部126,128,130を備えた非常時解除レバー124及びラッチハウジングに一体的に取り付けられたピンに回転可能に取り付けられていて、2つの肢部134,136を備えた中間非常時解除レバー132を有する。レバー124,126は、相互に係合している肢部126,134により運動学的に連結されており、その結果、反時計回りの方向(図2Bの向きを参照されたい)における中間解除レバー132の作動により、非常時解除レバー124は、時計回りに(図2Bの向きを参照されたい)に回転し、それにより、肢部128は、確実ロックレバー104をそのロック位置から押し出し、肢部130は、二次爪84の曲げタブ92に係合してこれをその開放又は補助ラチェット解除位置に動かす。中間解除レバー132は、一次爪に係合してこれをその開放又はラチェット解除位置に動かす付属部133を更に有している。かくして、追加の解除機構体は、車両ドアの解除を保証し、これが再び閉じるのを阻止する。
【0040】
以下に説明するように1本又は2本以上のオプションとしてのレバーによって中間非常時解除レバー132を作動させるのが良い。まず最初に、ラッチ20′内にはボーデンケーブルによって内部ハンドル(図示せず)に連結された状態で内側解除レバー138を設けるのが良い。内側解除レバー138は、中間非常時解除レバー132を作動させるようこれに直接連結されている。このオプションは、従来型内側ハンドルからの手動バックアップを備えた電気ラッチに適している場合がある。変形例として、サービス(点検整備)係員が工具、例えばねじ回しを用いて内側解除レバー138を手動で動かすことができるようラッチに接近穴(図示せず)を設けても良い。このオプションは、点検整備サービス用機械的非常時解除手段を提供するラッチ20の全電気式バージョンに適している場合がある。第2に、内側解除レバー138が2つの部分138a,138bに設けられるのが良く、第2の部分138bは、レバー138aとの共通回転箇所に設けられる。第2のレバー138bは、中間解除レバー132に直接係合し、この第2のレバーは、リンク機構体139によって第1のレバー138aに選択的に結合され又は結合解除され、リンク機構体139は、モータ139a、歯車列139b及び摺動リンク139cを有する。リンク機構体139は、第1のレバー138aを第2のレバー138bから選択的に結合解除することによって内側解除レバー138を動作不能にする二重ロック機能を提供する。このオプションは、デッドロック又はチャイルドロック機能が望ましい場合に適していることがある。
【0041】
上記説明は、本発明の特定の実施形態に関しているが、本発明の精神から逸脱することなく、本明細書において説明した詳細な実施形態に対して改造及び変形を行うことができることは理解されよう。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両用ラッチであって、
ラチェット(24)を有し、前記ラチェット(24)は、前記ラチェットがストライカ(30)を受け入れるよう位置決めされるストライカ解除位置と、前記ラチェットが前記ストライカを保持するよう位置決めされるストライカ捕捉位置との間で動くことができ、前記ラチェット(24)は、前記ストライカ解除位置に向かって付勢されており、
一次爪(64)を有し、前記一次爪(64)は、前記一次爪が前記ラチェット(24)を前記ストライカ捕捉位置に保つよう位置決めされるラチェット制止位置と、前記一次爪が前記ストライカ捕捉位置からの前記ラチェットの離脱運動を可能にするラチェット解除位置との間で動くことができ、前記一次爪(64)は、前記ラチェット制止位置に向かって付勢されており、
前記一次爪(64)に作動的に連結された補助ラチェット(44)を有し、前記補助ラチェット(44)は、前記一次爪(64)がそのラチェット制止位置まで動くことができるようになった動作可能位置と、前記補助ラチェット(44)が前記一次爪(64)をそのラチェット解除位置に位置決めする動作不能位置との間で動くことができ、
二次爪(84)を有し、前記二次爪(84)は、前記二次爪(84)が前記補助ラチェット(44)をその動作可能位置に保持するよう位置決めされる補助ラチェット保持位置と、前記二次爪(84)が前記補助ラチェット(44)のその動作不能位置への運動を可能にするよう位置決めされる補助ラチェット解除位置との間で動くことができ、前記二次爪(84)は、前記補助ラチェット保持位置に付勢されている、車両用ラッチにおいて、
確実ロックレバー(104)を有し、前記確実ロックレバー(104)は、前記確実ロックレバー(104)が前記二次爪(84)のその補助ラチェット保持位置からの離脱運動を阻止するロック位置と、解除位置との間で動くことができ、前記確実ロックレバー(104)は、前記二次爪(84)のその補助ラチェット解除位置への運動を可能にし、前記確実ロックレバー(104)は、前記ロック位置に付勢されており、
前記確実ロックレバー(104)をその解除位置に動かすと共に前記二次爪(84)をその補助ラチェット解除位置に動かすギヤホイール(146)を含む駆動機構体を有する、車両用ラッチ。
【請求項2】
前記駆動機構体(140)は又、前記補助ラチェット(44)が前記二次爪(84)のその補助ラチェット保持位置からの離脱運動時に補助ラチェット(44)がその動作不能位置に動かない場合に前記補助ラチェット(44)をその動作不能位置に動かす、請求項1記載の車両用ラッチ。
【請求項3】
前記駆動機構体(140)は、
まず最初に、前記ラッチを開放して(a)前記確実ロックレバー(104)をその解除位置に動かし、(b)前記二次爪(84)をその補助ラチェット解除位置に動かし、(c)必要ならば、前記補助ラチェット(44)をその動作不能位置に動かし、それにより前記ラチェット(24)がそのストライカ解除位置に動くようにし、
次に、前記ラチェット(24)がそのストライカ捕捉位置に動く前に、前記ラッチを直ちにリセットして、(d)前記補助ラチェット(44)をその動作可能位置に動かし、(e)前記二次爪(84)をその補助ラチェット保持位置に動かすことができ、(f)前記確実ロックレバー(104)をそのロック位置に動かすことができるよう制御される、請求項2記載の車両用ラッチ。
【請求項4】
前記補助ラチェット(44)は、前記補助ラチェット(44)がその動作可能位置に向かって動いているときに、前記二次爪(84)に係合してこれをその補助ラチェット保持位置に動かすよう構成されている、請求項1〜3のうちいずれか一に記載の車両用ラッチ。
【請求項5】
前記ギヤホイール(146)にはウェル(166)が設けられており、前記確実ロックレバー(104)は、前記ラッチ内に回動可能に設けられ、前記確実ロックレバーは、第1の部分(108)及び第2の剛結部分(118)を有し、前記第2の部分(118)が前記ギヤホイールウェル(166)内に位置決めされると、前記第1の部分(108)は、前記二次爪(84)が動くのを阻止し、前記第2の部分(118)が前記駆動機構体(140)によって前記ギヤホイールウェル(166)から出されると、前記第1の部分(108)は、前記二次爪(84)が動くのを阻止することはない、請求項1〜4のうちいずれか一に記載の車両用ラッチ。
【請求項6】
前記ギヤホイール(146)にはウェル(160)が設けられ、
前記補助ラチェット(44)は、ポスト(62)を有し、
前記補助ラチェットポスト(62)は、前記ギヤホイールウェル(160)内に収められて前記ギヤホイールウェルの1つ又は2つ以上の壁(162,164)と係合する、請求項1〜5のうちいずれか一に記載の車両用ラッチ。
【請求項7】
前記駆動機構体(140)は、プッシュブロック(148)を備えたギヤホイール(146)を含み、
前記二次爪(84)は、当接部(98)を有し、
前記ギヤホイールプッシュブロック(148)は、前記二次爪当接部(98)に係合して前記二次爪(84)をその補助ラチェット解除位置に駆動する、請求項1〜6のうちいずれか一に記載の車両用ラッチ。
【請求項8】
前記一次爪(64)は、前記補助ラチェット(44)に回動可能に取り付けられている、請求項1〜7のうちいずれか一に記載の車両用ラッチ。
【請求項9】
前記補助ラチェット(44)は、第1の軸線(46)回りに回動可能であり、前記一次爪(64)は、前記第1の軸線(46)からオフセットした第2の軸線(66)回りに回動可能に前記補助ラチェット(44)に取り付けられている、請求項8記載の車両用ラッチ。
【請求項10】
使用に当たり、前記ラチェット(24)は、前記ストライカ(30)からのドア密封力(Fs)を受け入れるよう前記ストライカと係合可能であり、前記一次爪(64)が前記ラチェット制止位置にあるとき、前記ラチェット(24)は、前記ドア密封力(Fs)を受け取って対応の第2の力(Fs・X/Y)を前記第2の軸線(66)とほぼ交差する第2の力方向に伝達するよう位置決めされ、前記対応の第2の力は、前記補助ラチェット(44)をその動作不能位置に向かって押圧するモーメント(M2)を発生させるよう前記一次爪(64)から前記補助ラチェット(44)に伝達可能である、請求項9記載の車両用ラッチ。
【請求項11】
車両用ラッチであって、
ラチェット(24)を有し、前記ラチェット(24)は、前記ラチェットがストライカ(30)を受け入れるよう位置決めされるストライカ解除位置と、前記ラチェットが前記ストライカを保持するよう位置決めされるストライカ捕捉位置との間で動くことができ、前記ラチェット(24)は、前記ストライカ解除位置に向かって付勢されており、
一次爪(64)を有し、前記一次爪(64)は、前記一次爪が前記ラチェット(24)を前記ストライカ捕捉位置に保つよう位置決めされるラチェット制止位置と、前記一次爪が前記ストライカ捕捉位置からの前記ラチェットの離脱運動を可能にするラチェット解除位置との間で動くことができ、前記一次爪(64)は、前記ラチェット制止位置に向かって付勢されており、
前記一次爪(64)に作動的に連結された補助ラチェット(44)を有し、前記補助ラチェット(44)は、前記一次爪(64)がそのラチェット制止位置まで動くことができるようになった動作可能位置と、前記補助ラチェット(44)が前記一次爪(64)をそのラチェット解除位置に位置決めする動作不能位置との間で動くことができ、
二次爪(84)を有し、前記二次爪(84)は、前記二次爪(84)が前記補助ラチェット(44)をその動作可能位置に保持するよう位置決めされる補助ラチェット保持位置と、前記二次爪(84)が前記補助ラチェット(44)のその動作不能位置への運動を可能にするよう位置決めされる補助ラチェット解除位置との間で動くことができ、前記二次爪(84)は、前記補助ラチェット保持位置に付勢され、
前記ラッチの開放プロセス中、前記二次爪(84)をその補助ラチェット解除位置に動かし、後で、前記ラッチを閉鎖するプロセス中、前記補助ラチェット(44)をその動作可能位置に動かす駆動機構体(140)を有する車両用ラッチにおいて、
前記補助ラチェット(44)は、前記補助ラチェット(44)がその動作可能位置に向かって動いているときに、前記二次爪(84)に係合してこれをその補助ラッチ保持位置に動かすよう構成されている、車両用ラッチ。

【図1A】
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【図1B】
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【図2A】
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【図2B】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6A】
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【図6B】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【公表番号】特表2013−519011(P2013−519011A)
【公表日】平成25年5月23日(2013.5.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−551452(P2012−551452)
【出願日】平成22年11月26日(2010.11.26)
【国際出願番号】PCT/CA2010/001890
【国際公開番号】WO2011/094834
【国際公開日】平成23年8月11日(2011.8.11)
【出願人】(512203665)マグナ クロージャーズ ソシエタ ペル アチオニ (1)
【Fターム(参考)】