説明

二重管の曲げ加工用芯金

【課題】曲げ加工用芯金の外芯金が係合構造により屈曲可能な可撓芯金を有することにより、二重管の製造コストの削減、曲がり部の形成精度の向上および曲げ加工終了後の外芯金の抜取作業の容易化を図る。
【解決手段】二重管10の曲げ加工用芯金Mは、内芯金20と円筒状の外芯金30とから構成される。外芯金30は、曲がり部10bに沿って曲がる可撓芯金32と、可撓芯金32が連結される支持芯金31とから構成される。可撓芯金32は軸線方向に配列される複数の筒状芯金40,40aから構成され、隣り合う筒状芯金40,40a同士は係合構造により連結される。該係合構造は、内向き凹部41と、該内向き凹部41に曲げ方向に屈曲可能に係合する外向き凹部46とから構成される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、内管および外管から構成される二重管の曲げ加工に使用される曲げ加工用芯金に関し、詳細には、内管と外管との間に形成される筒状空間に配置される外芯金に関する。そして、該曲げ加工用芯金は、例えばロータリーダイを備える曲げ加工装置に備えられる。
【背景技術】
【0002】
内管および外管から構成される二重管に曲がり部を形成する曲げ加工装置に備えられる曲げ加工用芯金が、内管の内部空間に配置される内芯金と、内管と外管との間の筒状空間に配置される筒状の外芯金とから構成されるものは知られている(例えば特許文献1参照)。
【特許文献1】特開平10−71430号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
曲げ加工時に二重管の曲がり部が形成される位置に配置される内芯金および外芯金のうち、内芯金は可撓性を有する一方で、外芯金が可撓性を有していない場合、曲がり部における内管の内側形状および外管の外側形状を規定する外芯金の前端部では、その肉厚が薄くならざるを得ない。しかしながら、該前端部には二重管から作用する荷重により変形や摩耗が発生しやすいことから、曲がり部の形成精度を高めるために、外芯金を高価な高強度の材料で形成したり、変形や摩耗による精度低下を防止するために外芯金の交換サイクルを短くする必要があって、二重管の製造コストが増加する原因になっていた。
また、外芯金が外芯金自体の弾性を利用して可撓性を持たせた可撓部を有するものでは、二重管の曲がり部の曲がり量が大きい場合や可撓部が内管が筒状である場合には、外芯金の弾性力に起因して二重管との間の摩擦による抵抗で、曲げ加工後に二重管からの外芯金の抜取作業に手間がかかり、製造コストの増加につながる。
【0004】
本発明は、このような事情に鑑みてなされたものであり、請求項1〜9記載の発明は、曲げ加工用芯金の外芯金が係合構造により屈曲可能な可撓芯金を有することにより、二重管の製造コストの削減および曲がり部の形成精度の向上を図ることを目的とする。そして、請求項2記載の発明は、さらに、曲げ加工終了後の外芯金の抜取作業の容易化を図ることを目的とし、請求項4,8記載の発明は、さらに、二重管への外芯金の挿入作業の容易化を図ることを目的とし、請求項6記載の発明は、さらに、可撓芯金または筒状芯金の屈曲化および直線化を円滑にすることを目的とし、請求項7記載の発明は、さらに、可撓芯金の連結作業の容易化を図ることを目的とし、請求項9記載の発明は、さらに、支持芯金と可撓芯金との連結作業の容易化を図ることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
請求項1記載の発明は、内管および外管から構成される二重管の曲げ加工用芯金であって、前記内管の内部空間に配置される内芯金と、前記内管と前記外管との間の筒状空間に配置される外芯金とから構成される曲げ加工用芯金において、前記外芯金は、曲げ加工の際に前記二重管が曲げ方向に曲げられて曲がり部が形成される曲げ形成位置に前記内管を囲んで配置されると共に前記曲がり部に沿って曲がる筒状の可撓芯金と、前記曲げ形成位置よりも後方に配置される支持芯金とから構成され、前記支持芯金および前記可撓芯金は係合構造によりに連結される曲げ加工用芯金である。
請求項2記載の発明は、請求項1記載の曲げ加工用芯金において、前記係合構造は、第1係合部と、前記第1係合部に前記曲げ方向に屈曲可能に係合する第2係合部とから構成され、前記支持芯金には前記第1係合部が設けられ、前記可撓芯金には前記第2係合部が設けられるものである。
請求項3記載の発明は、内管および外管から構成される二重管の曲げ加工用芯金であって、前記内管の内部空間に配置される内芯金と、前記内管と前記外管との間の筒状空間に配置される外芯金とから構成される曲げ加工用芯金において、前記外芯金は、曲げ加工の際に前記二重管が曲げ方向に曲げられて曲がり部が形成される曲げ形成位置に前記内管を囲んで配置されると共に前記曲がり部に沿って曲がる可撓芯金と、前記曲げ形成位置よりも後方に配置されて前記可撓芯金が連結される支持芯金とから構成され、前記可撓芯金は軸線方向に配列される複数の筒状芯金から構成され、隣り合う前記筒状芯金同士は係合構造により連結され、前記係合構造は、第1係合部と、前記第1係合部に前記曲げ方向に屈曲可能に係合する第2係合部とから構成され、前記筒状芯金同士を構成する一方の筒状芯金および他方の筒状芯金に、それぞれ前記第1係合部および前記第2係合部が設けられる曲げ加工用芯金である。
請求項4記載の発明は、請求項1または3記載の曲げ加工用芯金において、前記内管および前記外管は円管であり、前記可撓芯金または前記筒状芯金は円筒状部材であり、前記係合構造は周方向での任意の位置で屈曲可能であるものである。
請求項5記載の発明は、請求項4記載の曲げ加工用芯金において、前記第1係合部および前記第2係合部は、軸線方向に相対移動したときに軸線方向で互いに当接する所定間隔を形成するものである。
請求項6記載の発明は、請求項5記載の曲げ加工用芯金において、前記第1係合部および前記第2係合部は、軸線方向に延びる基部と前記基部から径方向に突出する凸部とを有する鉤形部により構成され、前記第1係合部の前記凸部の先端部における前記第2係合部との接触部位および前記第2係合部の前記凸部の先端部における前記第1係合部との接触部位は曲面に形成されているものである。
請求項7記載の発明は、請求項4記載の曲げ加工用芯金において、前記第1係合部および前記第2係合部において、一方の係合部は他方の係合部にその径方向内方に嵌り込んで前記他方の係合部と径方向で重なり、前記一方の係合部には、前記他方の係合部への嵌め込みが可能となるように、前記一方の係合部を弾性変形により縮径させるためのスリットが設けられるものである。
請求項8記載の発明は、請求項1または3記載の曲げ加工用芯金において、前記可撓芯金の前端部は、前記筒状空間への前記可撓芯金の挿入時に、前記内管または前記外管との接触により前記前端部を前記筒状空間に案内するテーパ面を有するものである。
請求項9記載の発明は、請求項1または3記載の曲げ加工用芯金において、前記支持芯金は、前記係合構造により前記可撓芯金に連結される第1支持芯金と、前記第1支持芯金に着脱可能に結合される第2支持芯金とを備え、前記第1支持芯金は、周方向に分割された複数の分割片により構成されると共に前記各分割片が互いに分離した分離状態で前記可撓芯金と係合および係合解除可能であり、前記第2支持芯金は、前記第1支持芯金が前記係合構造により前記可撓芯金との係合状態を維持するように前記第1支持芯金と結合されるものである。
【発明の効果】
【0006】
請求項1記載の発明によれば、外芯金において、曲がり部の形状を規定する部分(以下、「曲がり規定部」という。)である可撓芯金が二重管の曲がり部に沿って曲がることから、曲がり規定部が非可撓性である外芯金とは異なり、曲がり規定部の肉厚を薄くする必要がないために、曲がり規定部の強度が高められ、しかも外芯金の交換サイクルを長くすることができるので、二重管の製造コストが削減される。また、可撓芯金が筒状であることから、周方向で、内管および外管の変形防止効果が向上し、内管・外管間の間隔の均一性が向上するので、曲がり部の形成精度が向上する。
請求項2記載の発明によれば、可撓芯金は、第1,第2係合部から構成される係合構造により屈曲可能であるので、可撓芯金が弾性変形により屈曲する場合に比べて、曲げ加工終了後に外芯金を二重管から抜き取る際の可撓芯金と二重管との間での摩擦による抵抗を小さくできて、外芯金の抜取作業が容易になる。
請求項3記載の発明によれば、外芯金において、曲がり規定部である可撓芯金が互いに屈曲可能に連結される複数の筒状芯金から構成されて二重管の曲がり部に沿って曲がることから、曲がり規定部の強度を高めることおよび交換サイクルを長くすることによる二重管の製造コストの削減の点、曲がり部の形成精度の向上の点、および外芯金の抜取作業の容易化の点で、請求項1,2記載の発明と同様の効果が奏されるほか、可撓芯金が複数の筒状芯金から構成されることにより、可撓芯金を軸線方向に長くすることができるので、外芯金の抜取作業の容易化が確保されたうえで、曲がり部の形成精度を一層向上させることができる。
請求項4記載の事項によれば、可撓芯金または筒状芯金は、形成が容易な円筒状部材であるので、可撓芯金の製造コストが削減されて、二重管の製造コストの削減に寄与する。さらに、可撓芯金または筒状芯金は周方向での任意の位置で屈曲可能であることから、周方向での外芯金の位置に無関係に外芯金を二重管内に挿入することができるので、二重管に対する周方向での外芯金の位置決めが不要になって、外芯金の挿入作業が容易になる。
請求項5記載の事項によれば、曲がり部の外側では、第1,第2係合部が互いに当接するまでの間隔は、曲がり部の内側に比べて小さくなるので、二重管から外芯金を抜き取る際に、可撓芯金または各筒状芯金においては内側に対して先ず外側が抜き取り方向に移動することにより、可撓芯金または筒状芯金の曲げ量が小さくなった後、可撓芯金または各筒状芯金が抜き取り方向に移動するので、可撓芯金の曲がり量が大きい場合にも、二重管からの外芯金の抜取作業が容易になる。
請求項6記載の事項によれば、屈曲するときまたは屈曲状態から直線状になるときに、凸部の先端部が係合相手の係合部に接触するときの摺動が円滑になるので、円滑な屈曲化および直線化が可能になって、曲がり部の形成精度の向上および外芯金の抜取作業の容易化に寄与する。
請求項7記載の事項によれば、スリットにより一方の係合部を弾性変形させやすくなるので、弾性変形により縮径させた一方の係合部が、他方の係合部に挿入された後、その弾性により拡径して元の形状に戻ることで、両係合部が係合する。これにより、支持芯金および可撓芯金の連結作業、または筒状芯金同士の連結作業が容易になる。
請求項8記載の事項によれば、外芯金がテーパ面により案内されて筒状空間に挿入されるので、二重管への外芯金の挿入作業が容易になる。
請求項9記載の事項によれば、第1支持芯金と筒状の可撓芯金とを係合させるにあたり、第1支持芯金を各分割片に分離された分離状態にすることで、第1支持芯金と可撓芯金との係合が容易になるので、係合構造により連結される第1支持芯金おおび可撓芯金の連結作業が容易になる。しかも、係合部に係合を容易にするためのスリットを設ける必要がないので、係合部の強度を高めることができて、外芯金の交換サイクルを一層長くすることができ、二重管の製造コストの削減に寄与する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0007】
以下、本発明の実施形態を図1〜図9を参照して説明する。
図1〜図6は第1実施形態を説明するための図である。
図1,図2を参照すると、本発明が適用された曲げ加工用芯金を備える曲げ加工装置1は、ロータリーダイ4を回転させることにより、ロータリーダイ4に固定された二重管10に曲げ加工を施して曲がり部10bを形成するものであり、加工された二重管10は、例えば内燃機関の排気管に使用される。
【0008】
曲げ加工装置1は、図示されない基台(以下、「基台」という。)に固定されるワイパーダイ2と、基台に水平方向に移動可能に支持されるプレッシャーダイ3と、基台に回転可能に支持される回転テーブル(図示されず。以下、「回転テーブル」という。)に固定されて上下方向に延びる回転中心線L0を該回転テーブルと共有するロータリーダイ4と、回転テーブルに水平方向に移動可能に支持されると共に前記回転テーブルと一体に回転可能なクランプダイ5と、基台に水平方向に移動可能に支持されて二重管10を曲げ加工位置に送り出す送り部材6と、二重管10内に配置される曲げ加工用芯金Mと、基台に固定されて芯金Mが固定される保持部材7とを備える。
二重管10は、いずれも円管である内管11および外管12から構成される。そして、中心軸線L1を共有するように同軸に配置された内管11および外管12により、内管11の内方に柱状の内部空間13が形成され、内管11と外管12との間に筒状空間14が形成される。
明細書または特許請求の範囲において、円とは、横断面が真円またはほぼ真円(すなわち、厳密には真円ではないが、真円である場合に比べて発明の作用効果上で有意の差異がなく、実質的に真円として扱える円。)を意味する。
【0009】
ワイパーダイ2およびプレッシャーダイ3は、二重管10がロータリーダイ4に向けて一直線状に移動するように、外管12を摺動可能に案内する。そして、二重管10が曲げ加工装置1により曲がり部10bが形成され始める位置B(以下、「曲げ開始位置B」という。)よりも後方で、プレッシャーダイ3は、ワイパーダイ2および二重管10に対して、曲げ加工開始前に外管12を摺動可能に保持するために進出し、曲げ加工終了後に外管12を解放するために後退するように、アクチュエータにより駆動される。
なお、明細書または特許請求の範囲において、前後は、曲げ加工時の二重管10の送り方向を基準としたものであり、軸線方向とは、二重管10の中心軸線L1が延びる方向であり、径方向および周方向とは、中心軸線L1を中心とする径方向および周方向である。また、横断面とは中心軸線L1に直交する平面での断面であり、縦断面とは、中心軸線L1を含む平面での断面である。さらに、曲げ中心線方向は、ロータリーダイ4による曲げ中心線L3の方向であり、内側および外側は、二重管10の曲げの内側および外側を意味する。中心軸線L1aは曲げ開始位置Bおよびその後方における直線状の二重管10の中心軸線Lである。
【0010】
モータ(図示されず)により駆動されて回転方向に回転するロータリーダイ4は、該モータにより駆動される回転軸8に固定された円盤状の本体4aと、本体4aの外周部に着脱可能に固定されるチャック部4bとを有する。本体4aの外周には、外管12の曲げ形状を規定する規定面4c1を有する溝が形成された型部4cが設けられる。一方、クランプダイ5は、回転テーブルに対して二重管10を挟持する位置と解放する位置との間で移動可能に支持される本体5aと、本体5aに対して着脱可能に固定されるチャック部5bとを有する。チャック部5bは、チャック部4bと協働して外管12を挟持することにより、二重管10をロータリーダイ4に固定する。
内管11および外管12の後端部11b,12bがそれぞれ固定される送り部材6は、両支持ロッド29,39に対して、曲げ開始位置Bよりも後方での中心軸線L1aに平行に軸線方向に移動可能であり、後述する芯金Mが挿入された二重管10をロータリーダイ4の回転に同期して曲げ開始位置Bに向けて送るように、アクチュエータにより駆動される。
【0011】
併せて図3,図4を参照すると、二重管10が曲げ加工装置1に位置決めされる前に二重管10内に挿入される芯金Mは、円柱状の内部空間13に配置される内芯金20と、円筒状の筒状空間14に配置される筒状、ここでは円筒状の外芯金30とから構成される。
【0012】
内管11の後端部11bから中心軸線L1aに平行に軸線方向に内部空間13に挿入されて外芯金30の径方向内方に配置される内芯金20は、保持部材7に固定される支持ロッド29が固定される支持芯金21と、曲げ加工の際に二重管10が曲げ方向に曲げられて曲がり部10bが形成される曲げ形成位置(すなわち、曲げ開始位置Bよりも前方。)に配置されると共に曲がり部10bが沿って曲がる可撓芯金22とから構成される。可撓芯金22は、可撓芯金22よりも後方に配置される支持芯金21に屈曲可能に連結される。ここで、曲げ方向とは、曲げ加工の曲げ中心線L3(回転中心線L0でもある。)を中心とする回転方向と一致する方向である。
【0013】
内管11を摺動可能に支持する支持芯金21は、直管状で非可撓性の単一の部材からなる芯金であり、前端面21a1が曲げ開始位置Bよりも前方に位置する前端部21aを有する。可撓芯金22は、該前端部21aに曲げ方向に屈曲可能に連結される。具体的には、前端部21aには、支持ロッド29がねじ込まれる半割構造の連結部23が嵌合して設けられ、該連結部23に、可撓芯金22の支持芯金21との連結部を構成する後述する要素芯金24bの連結部25aが屈曲可能となるように揺動可能に連結される。
【0014】
可撓芯金22は、軸線方向に配列されて曲げ方向に互いに屈曲可能に連結される複数の、この実施形態では同一構造の3つの要素芯金24から構成される。要素芯金24は、球状の第1の連結部25aおよび別の要素芯金24の連結部25aを中心点を中心にして屈曲可能となるように揺動可能に連結される球状の凹部を形成する第2の連結部25bを有する基部25と、基部25に設けられて内管11の内周面に全周に渡って接触可能な球面からなる外周面を有する形状規定部26とを有する。半割構造の基部25は、1対の半体が合わせられることにより構成され、円環状の形状規定部26に嵌合した状態で止め輪27により抜止されて、形状規定部26と一体に結合される。
【0015】
そして、可撓芯金22の後端部を構成する要素芯金24bはその連結部25aにて支持芯金21の連結部23に連結され、かつ要素芯金24同士は一方の要素芯金24の連結部25aにて他方の要素芯金24の連結部25bに連結されることにより、可撓芯金22が屈曲可能になる。それゆえ、連結部23および各連結部25a,25bは、支持芯金21と要素芯金24とを屈曲可能に連結する、および要素芯金24同士を屈曲可能に連結する自在継手構造である連結構造を構成する。
【0016】
二重管10の後端部11b,12bから中心軸線L1aに平行に軸線方向に筒状空間14に挿入される円筒状の外芯金30は、保持部材7に固定される管状の支持ロッド39がねじ込まれて固定される支持芯金31と、曲げ形成位置に内管11を全周に渡って囲んで配置されると共に曲がり部10bに沿って曲がる可撓芯金32とから構成される。円筒状部材である可撓芯金32は、前記曲げ形成位置よりも後方に直線状の配置される支持芯金31に屈曲可能に連結される。
【0017】
曲げ加工装置1に位置決めされた状態で内芯金20と同軸に配置される支持芯金31は、直管状で非可撓性の単一の部材からなる芯金であり、前端面31a1が曲げ開始位置Bよりも後方に配置される前端部31aを有する。前端部31aには、後述する内向き凹部41が設けられ、該内向き凹部41に、可撓芯金32における支持芯金31との係合部を構成する後述する筒状芯金40bの外向き凹部46が屈曲可能となるように係合して連結される。また、支持芯金31は径方向での内管11・外管12間の間隔を規定する肉厚を有し、支持芯金31に対して内管11および外管12が摺動可能である。
【0018】
可撓芯金32は、軸線方向に配列されて曲げ方向に互いに屈曲可能に連結される複数の、この実施形態では8つの要素芯金としての筒状芯金40,40aから構成され、その前端部を構成する筒状芯金40aが支持芯金31よりも前方に位置する。非可撓性の円筒状部材である各筒状芯金40,40aにおいて、前記筒状芯金40a以外のすべての筒状芯金40は同一構造である。
【0019】
図3,図4,図5を参照すると、各筒状芯金40,40aは、外管12の内周面に接触可能な外周面51aを有する大径部としての外管形状規定部51と、内管11の外周面に接触可能な内周面56aを有する小径部としての内管形状規定部56とを有し、軸線方向に配列した外管形状規定部51と内管形状規定部56とが一体成形により一体化された部材である。外管形状規定部51は、外周面51aが外管12の内周面に接触することにより、外管12の変形を防止し、内管形状規定部56は、内周面が内管11の外周面に接触することにより、内管11の変形を防止し、これにより、両規定部51,56は、径方向での内管11・外管12間の間隔を軸線方向および周方向で均一化する。
【0020】
外管形状規定部51は、外周面51aを有する円環状の基部42と、軸線方向での筒状芯金40の端部としての前端部(基部42の端部でもある。)に形成される内向き凸部43とを有する円環状の内向き凹部41から構成される。内向き凸部43は、軸線方向に沿って延びる基部42から径方向内方に向かって突出する円環状の突条から構成される。そして、内向き凹部41(すなわち外管形状規定部51)により外向きに開放する円環状の空間44が形成される。
【0021】
一方、内管形状規定部56は、内周面56aを有する円環状の基部47と、軸線方向での筒状芯金40,40aの端部としての後端部(基部47の端部でもある。)に形成される外向き凸部48とを有する円環状の外向き凹部46から構成される(筒状芯金40aについては図6も参照)。外向き凸部48は、軸線方向に沿って延びる基部47から径方向外方に向かって突出する円環状の突条から構成される。そして、外向き凹部46(すなわち内管形状規定部56)により外向きに開放する円環状の空間44,49が形成される。それゆえ、筒状芯金40の縦断面はS字形状である。
【0022】
軸線方向で隣り合う筒状芯金40,40a同士は係合構造により連結される。この係合構造は、第1係合部としての内向き凹部41と、内向き凹部41に曲げ方向に屈曲可能に係合する第2係合部としての外向き凹部46とから構成され、筒状芯金40,40a同士を構成する一方の筒状芯金40(例えば図3の筒状芯金40b)および他方の筒状芯金40,40a(例えば図3の筒状芯金40c)に、それぞれ内向き凹部41および外向き凹部46が設けられる。また、内向き凹部41の基部42および内向き凸部43からなる部分の縦断面、および外向き凹部46の基部47および外向き凸部48からなる部分の縦断面は、いずれも鉤形状またはL字形状を呈することから、基部42および内向き凸部43は第1鉤形部を構成し、基部47および外向き凸部48は第2鉤形部を構成する。
【0023】
そして、内向き凹部41と外向き凹部46(または、前記第1鉤形部と前記第2鉤形部)とが係合した状態で互いに連結される筒状芯金40,40a同士において、一方の筒状芯金40の内向き凸部43が他方の筒状芯金40,40aの外向き凹部46の空間49に収容されると共に、他方の筒状芯金40,40aの外向き凸部48が一方の筒状芯金40の外向き凹部41の空間44に収容されることにより、筒状芯金40,40a同士が、内向き凹部41と外向き凹部46とにおいて、互いに軸線方向および径方向に相対移動可能に連結される。そして、環状の凹部41,46同士の係合により、可撓芯金32または筒状芯金40,40aは周方向での任意の位置で屈曲可能である。
【0024】
より具体的には、内向き凹部41および外向き凹部46は、軸線方向に相対移動したときに軸線方向で互いに当接する所定間隔d(図5(C)参照)を形成する。所定間隔dは、内向き凹部41の空間44に収容される係止部としての外向き凸部48が内向き凹部41に対して空間44内で軸線方向に相対移動するときの最大移動量または外向き凹部46の空間49に収容される係止部としての内向き凸部43が外向き凹部46に対して空間49内で軸線方向に相対移動するときの最大移動量であり、この実施形態では、両最大移動量は等しく設定されている。
それゆえ、筒状芯金40,40a同士はこの所定間隔dの範囲で軸線方向に伸縮可能であり、収縮状態で、外向き凸部48(または内向き凸部43)が内向き凹部41の第1当接部41a(または外向き凹部46の第1当接部46a)に軸線方向で当接し、伸長状態で外向き凸部48(または内向き凸部43)が内向き凹部41の第2当接部である内向き凸部43(または外向き凹部46の第2当接部である外向き凸部48)に軸線方向で当接する。これにより、可撓芯金32も軸線方向に伸縮可能である。
【0025】
そして、図3に示されるように、芯金Mが二重管10に挿入された曲げ加工開始前の状態で、内芯金20は、軸線方向に伸縮不能な可撓芯金22が支持芯金21と共に一直線状に延びて内部空間13に配置され、一方、外芯金30は、可撓芯金32が収縮状態で、支持芯金31と共に一直線状に延びて筒状空間14に配置される。
また、図4に示されるように、曲げ加工開始後の状態で、内芯金20では、可撓芯金22が単に曲げ方向に曲がる一方で、曲がり部10bの外側に向かうほど曲率半径が大きくなるために、外芯金30では、各筒状芯金40,40aと内管11および外管12との摩擦により可撓芯金32が伸長して、隣り合う筒状芯金40,40a同士が、したがって可撓芯金32が、曲がり部10bの内側から外側に向かうほど大きく伸長した状態で曲がる。このとき、隣り合う筒状芯金40,40a同士(または凸部43,48同士)が可撓芯金32が伸長する方向に相対移動可能な軸線方向での間隔d1は外側に向かうほど小さい。
【0026】
そして、内向き凹部41および外向き凹部46において、一方の係合部としての外向き凹部46は他方の係合部としての内向き凹部41にその径方向内方に嵌り込んで内向き凹部41と径方向で重なる。そして、各筒状芯金40,40aの外向き凹部46には、内向き凹部41への嵌め込みが可能となるように、外向き凹部46を弾性変形により縮径させるためのスリット構造(図5(A),(B)参照)が設けられる。このスリット構造は、外向き凹部46から内向き凹部41の一部まで軸線方向に平行に延びると共に周方向に等しい間隔をおいて設けられる複数、例えば6つのスリット59から構成される。
【0027】
筒状芯金40,40a同士を連結する際には、スリット59が設けられたことにより弾性変形しやすくなっている外向き凹部41,46に径方向内方の押圧荷重を加えることにより、外向き凸部48の外径が内向き凸部43の内径よりも小径となるまで弾性変形で縮径される。その後、縮径された外向き凹部46が別の筒状芯金40の内向き凹部41の内方に挿入された後、前記押圧荷重を除くことで外向き凹部46が拡径して内向き凹部41と係合し、筒状芯金40,40a同士が連結される。
【0028】
図5(C)を参照すると、各凸部43,48の径方向での先端部43a,48aは、その表面が曲面に形成された曲面部Sを有する。曲面部Sは、先端部43a,48aにおいて、係合する相手である外向き凹部46または内向き凹部41との接触部位に設けられる。
【0029】
図3,図6を参照すると、可撓芯金32の前端部である筒状芯金40aは、外向き凹部46(内管形状規定部56)と、外管12の内周面に接触可能な外周面51aを有する外管形状規定部51とを有する。筒状芯金40aの前部である外管形状規定部51は、その内周面として、筒状空間14への可撓芯金32の挿入時に、内管11との接触により筒状芯金40aを筒状空間14に案内するテーパ面61を有する。テーパ面61は、前方に向かうにつれて内径が大きくなり、その最小径は内周面56aの径と同じであり、その最大径は該最小径よりも内管11の肉厚の2倍以上大きい。
【0030】
また、各筒状芯金40,40aは、スチール製の円管材から所要長さの円筒状の素材を切り出した後、該素材に切削加工を施すことにより形成される。そして、切削加工後の素材に、焼き入れによる熱処理が施されて強度が高められて、筒状芯金40,40aが製造される。
【0031】
次に、曲げ加工装置1による二重管10の曲げ加工について説明する。
曲げ加工の開始直前の状態を示す図1を参照すると、内芯金20および外芯金30が二重管10内に配置された状態で、ワイパーダイ2およびプレッシャーダイ3が二重管10を摺動可能に保持する。二重管10の被挟持部10aが両チャック部4b,5bにより挟持されて二重管10がロータリーダイ4に固定され、ロータリーダイ4およびクランプダイ5が一緒に所定の回転速度で回転方向に回転し、それに同期して二重管10が送り部材6により曲げ開始位置Bに向けて送られる。
曲げ加工が開始されると、図2に示されるように、二重管10は、ロータリーダイ4の型部4c、内芯金20の可撓芯金32および外芯金30の可撓芯金32により、曲げ中心線L3を中心に曲げ加工が施されて、曲がり部10bが形成される。曲がり部10bにおいて、内管11は、主に、内芯金20の可撓芯金32および外芯金30の内管形状規定部56(図4参照)により、しわや座屈の発生が防止され、また外管12は、主に、型部4cの規定面4c1および外芯金30の可撓芯金32の外管形状規定部51(図4参照)により、しわや座屈の発生が防止されて、内管11・外管12間の間隔が均一な曲がり部10bが形成され。
曲げ加工終了後、二重管10の後端部11b,12b(図1参照)から内芯金20および外芯金30が中心軸線L1aに平行に軸線方向に抜き取られる。その際、両可撓芯金22,32は、それぞれ支持芯金21,31を通じて二重管10から引き抜かれる。
【0032】
次に、前述のように構成された実施形態の作用および効果について説明する。
曲げ加工用芯金Mを構成する外芯金30は、曲がり部10bが形成される前記曲げ形成位置に内管11を全周に渡って囲んで配置されると共に曲がり部10bに沿って曲がる可撓芯金32と、前記曲げ形成位置よりも後方に配置されて可撓芯金32が連結される支持芯金31とから構成され、可撓芯金32は軸線方向に配列される複数の筒状芯金40,40aから構成され、隣り合う筒状芯金40,40a同士は、内向き凹部41と、内向き凹部41に曲げ方向に屈曲可能に係合する外向き凹部46とから構成される前記係合構造により連結されることにより、外芯金30において、曲がり規定部である可撓芯金32が二重管10の曲がり部10bに沿って曲がることから、曲がり規定部が非可撓性である外芯金とは異なり、曲がり規定部の肉厚を薄くする必要がないために、曲がり規定部の強度が高められ、しかも交換サイクルを長くすることができるので、二重管10の製造コストが削減される。また、可撓芯金32が円筒状で内管11を全周に渡って囲むことから、周方向で、内管11および外管12の変形防止効果が向上し、内管11・外管12間の間隔の均一性が向上するので、曲がり部10bの形成精度が向上する。さらに、可撓芯金32は前記係合構造により屈曲可能であるので、可撓芯金が弾性変形により屈曲する場合に比べて、曲げ加工終了後に外芯金30を二重管10から抜き取る際の可撓芯金32と二重管10との間での摩擦による抵抗を小さくできて、外芯金30の抜取作業が容易になる。
また、可撓芯金32が複数の筒状芯金40,40aから構成されることにより、可撓芯金32を軸線方向に長くすることができるので、外芯金30の抜取作業の容易化が確保されたうえで、曲がり部10bの形成精度を一層向上させることができる。このため、二重管10の曲がり角度が大きくなる場合、例えば該曲がり角度が180°程度となる場合にも、内管11および外管12の中心軸線L1のズレが極めて少ない二重管10が得られる。
【0033】
内管11および外管12は円管であり、筒状芯金40,40a,40bは円筒状部材であり、前記係合構造は周方向での任意の位置で屈曲可能であることにより、筒状芯金40,40aは、形成が容易な円筒状部材であるために可撓芯金32の製造コストが削減されて、二重管10の製造コストの削減に寄与する。さらに、可撓芯金32または筒状芯金40,40aは周方向での任意の位置で屈曲可能であることから、周方向での外芯金30の位置に無関係に外芯金30を二重管10内に挿入することができるので、二重管10に対する周方向での外芯金30の位置決めが不要になって、外芯金30の挿入作業が容易になる。
【0034】
内向き凹部41および外向き凹部46は、軸線方向に相対移動したときに軸線方向で互いに当接する所定間隔dを形成することにより、曲がり部10bの外側では、内向き凹部41および外向き凹部46が互いに当接するまでの間隔は、曲がり部10bの内側に比べて小さくなるので、二重管10から外芯金30を軸線方向に抜き取る際に、可撓芯金32または各筒状芯金40,40aにおいては内側に対して先ず外側が抜き取り方向に移動することにより、可撓芯金32または筒状芯金40,40aの曲げ量が小さくなった後、可撓芯金32または各筒状芯金40,40aが抜き取り方向に移動するので、可撓芯金32の曲がり量が大きい場合にも、二重管10からの外芯金30の抜取作業が容易になる。
【0035】
内向き凹部41および外向き凹部46は、それぞれ基部42,47と凸部43,48とを有する鉤形部により構成され、各凸部43,48の先端部43a,48aが曲面部Sを有することにより、筒状芯金40,40aが屈曲するときまたは屈曲状態から直線状になるときに、先端部43a,48aが係合相手の凹部46,41に接触するときの摺動が円滑になるので、円滑な屈曲化および直線化が可能になって、曲がり部10bの形成精度の向上および外芯金30の抜取作業の容易化に寄与する。しかも、凸部43,48と凹部46,41との間の摺動が円滑に行われ、凸部43,48と基部42,47との連結部に応力集中が発生することが防止される。
【0036】
外向き凹部46は内向き凹部41にその径方向内方に嵌り込んで内向き凹部41と径方向で重なり、外向き凹部46には、内向き凹部41への嵌め込みが可能となるように、外向き凹部46を弾性変形により縮径させるための前記スリット構造が設けられることにより、スリット59により外向き凹部46を弾性変形させやすくなるので、弾性変形により縮径させた外向き凹部46が、内向き凹部41に挿入された後、その弾性により拡径して元の形状に戻ることで、両凹部41,46が係合する。これにより、支持芯金31および可撓芯金32の連結作業、または筒状芯金40,40a同士の連結作業が容易になる。
【0037】
可撓芯金32の前端部としての筒状芯金40aは、筒状空間14への可撓芯金32の挿入時に、内管11との接触により筒状芯金40aを筒状空間14に案内するテーパ面61を有することにより、外芯金30がテーパ面61により案内されて筒状空間14に挿入されるので、二重管10への外芯金30の挿入作業が容易になる。
【0038】
外芯金30の可撓芯金32において、各筒状芯金40の外管形状規定部51および内管形状規定部56がそれぞれ係合部を構成する内向き凹部41および外向き凹部46を兼ねるので、筒状芯金40が軸線方向にコンパクトになり、曲がり部10bの形成精度の向上に寄与する。
【0039】
次に、図7,図8を参照して、本発明の第2実施形態を説明する。この第2実施形態は、第1実施形態とは、支持芯金の構造が相違し、その他は基本的に同一の構成を有するものである。そのため、同一の部分についての説明は省略または簡略にし、異なる点を中心に説明する。なお、第1実施形態の部材と同一の部材または対応する部材については、必要に応じて同一の符号を使用した。
【0040】
円筒状の外芯金30は、支持ロッド39がねじ込まれて固定される円筒状の支持芯金31と、前記曲げ形成位置に配置されると共に曲がり部10bに沿って曲がる円筒状の可撓芯金32とから構成される。可撓芯金32は1つの筒状芯金90のみにより構成される。筒状芯金90は、第1実施形態における筒状芯金40aと比べたとき、外向き凹部46に渡るスリット59が設けられていない点で異なり、その他は同一の構造になっている。
【0041】
前記曲げ形成位置よりも後方に直線状に配置されると共に直管状で非可撓性の支持芯金31は、内向き凹部41と外向き凹部46とから構成される前記係合構造により可撓芯金32に連結される第1支持芯金70と、第1支持芯金70に結合構造としての螺合構造により着脱可能に結合される第2支持芯金80とを備える。第1支持芯金70は、周方向に分割された複数の分割片、この実施形態では第1支持芯金70の中心軸線を含む平面により分割された2つの半円筒状の分割片71,72により構成される。
同一の構造である各分割片71,72は、内向きの部分凹部41,41が設けられる前端部71aと、第2支持芯金80との結合部としての部分雄ネジ部71c,72cが設けられた後端部71b,72bとを有する。前端部71a,72aにおいて、部分係合部としての部分凹部41,41に、可撓芯金32の外向き凹部46が屈曲可能となるように係合して各分割片71,72が連結される。そして、すべての分割片71,72が合わされた集合状態で、各部分凹部41,41が集まって第1支持芯金70の内向き凹部41が形成され、各部分雄ネジ部71c,72cが集まって第1支持芯金70の雄ネジ部70cが形成され、各前端部71a,72aおよび各後端部71b,72bがそれぞれ集まって第1支持芯金70の前端部70aおよび後端部70bが形成される。
【0042】
そして、支持芯金31は、例えば次のようにして組み立てられる。
図8(B)を参照すると、第2支持芯金80(図7参照)から取り外された状態の第1支持芯金70は、各分割片71,72が互いに分離された分離状態にされる。第1支持芯金70のこの分離状態では、各分割片71,72を可撓芯金32(または筒状芯金90)の外向き凹部46よりも径方向外方に配置することができるので、外向き凹部46が各分割片71,72に対して内側に配置された状態で各分割片71,72を径方向内方に移動させることにより、部分凹部41,41と外向き凹部46とを簡単に係合させることができる。
すべての分割片71,72が係合したとき、図8(C)に示されるように、第1支持芯金70は前記集合状態になって、第1支持芯金70と可撓芯金32とが係合して連結される。
次いで、第2支持芯金80の内側に第1支持芯金70の後端部70bが挿入されて、雄ネジ部70cに、第2支持芯金80に設けられた第1支持芯金70との結合部としての雌ネジ部80cが螺合される。そして、第1,第2支持芯金70,80が両ネジ部70c,80cからなる前記螺合構造により結合されることで、第1支持芯金70と可撓芯金32との前記係合構造による係合状態が維持される。
また、支持芯金31からの可撓芯金32の取外しは、前述の組立工程とは逆の順序で行われる。すなわち、まず前記螺合構造による結合状態を解除することにより第1支持芯金70から第2支持芯金80が取り外され、次いで第1支持芯金70が前記分離状態とされて、各部分凹部41,41と外向き凹部46とが係合解除された後、可撓芯金32が第1支持芯金70から取り外される。
したがって、第1支持芯金70は、前記分離状態で可撓芯金32と係合および係合解除可能である。
【0043】
この第2実施形態によれば、可撓芯金32を構成する筒状芯金の個数に関連する点を除いて、第1実施形態と同様の作用および効果が奏されるほか、次の作用および効果が奏される。
支持芯金31は、可撓芯金32に連結される第1支持芯金70と該第1支持芯金70に着脱可能に結合される第2支持芯金80とを備え、第1支持芯金70は、周方向に分割された複数の分割片71,72により構成されると共に前記分離状態で可撓芯金32と係合および係合解除可能であり、第2支持芯金80は、第1支持芯金70が前記係合構造により可撓芯金32との係合状態を維持するように第1支持芯金70と結合されることにより、筒状の第1支持芯金70と筒状の可撓芯金32とを係合させるにあたり、第1支持芯金70を各分割片71,72に分離された前記分離状態にすることで、第1支持芯金70と可撓芯金32との係合が容易になるので、前記係合構造により連結される第1支持芯金70おおび可撓芯金32の連結作業が容易になる。しかも、係合部(例えば外向き凹部46)に係合を容易にするためのスリットを設ける必要がないので、該係合部の強度を高めることができて、外芯金30の交換サイクルを一層長くすることができ、二重管10の製造コストの削減に寄与する。
また、外芯金30は、可撓芯金32が1つであるため、第1実施形態に比べて低コストであり、第1実施形態よりも小さい曲がり角度の二重管10の形成に好適である。
【0044】
以下、前述した実施形態の一部の構成を変更した実施形態について、変更した構成に関して説明する。
筒状芯金40,40aには前記スリット構造が設けられることなく、筒状芯金40,40aが、周方向に分割される分割構造、例えば2つの分割片から構成される半割構造を有し、支持芯金31または筒状芯金40に対して、各分割片が組み付けられた後、分割片同士を溶接などの結合手段により一体に結合することで、支持芯金31および筒状芯金40が連結され、または筒状芯金40,40a同士が連結されてもよい。
図9に示されるように、テーパ面61の代わりに、筒状芯金40aの前部が、その外周面として、筒状空間14(図1参照)への可撓芯金32の挿入時に、外管12との接触により筒状芯金40,40a,40bを筒状空間14に案内するために、前方に向かって小径となるテーパ面62を有していてもよい。
支持芯金31が可撓芯金32と同様の構造を有する可撓芯金により構成されて、外芯金30全体が可撓芯金により構成されてもよい。
可撓芯金32または筒状芯金40,40aは、内管11の全周を囲むことなく、内管11の大部分を周方向で囲む形状であってもよい。
本発明の二重管は、3以上の管から構成される多重管において二重管を構成する部分であってもよい。可撓芯金32がすべて同一構造の筒状芯金40により構成されてもよい。
内管、外管、外芯金の横断面の形状は真円以外の形状であってもよい。
支持芯金の前端部の係合部が外向き凹部により構成され、支持芯金に係合する筒状芯金の係合部が内向き凹部により構成されてもよい。この場合、第2実施形態においては、分割片71,72が可撓芯金32(筒状芯金90)の径方向内方から順次係合するようにして、第1支持芯金70と可撓芯金32とが連結される。
第1実施形態の支持芯金31が、第2実施形態のように、周方向に分割された複数の分割片71,72により構成される第1支持芯金70と、該第1支持芯金70に着脱可能に結合される第2支持芯金80とを備える支持芯金31により構成されてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0045】
【図1】本発明の第1実施形態を示し、本発明が適用された曲げ加工用芯金を備える曲げ加工装置の概略の構成を、主に断面で示す平面図であり、二重管の曲げ加工の開始直前の状態を示す。
【図2】図1の曲げ加工装置において、二重管の曲げ加工開始後の要部の図である。
【図3】図1の要部拡大図である。
【図4】図2の要部拡大図である。
【図5】可撓芯金を構成する筒状芯金を示す図であり、(A)は図3のV−V矢視図であり、(B)は(A)のb矢視図であり、(c)は(A)のc−c断面図である。
【図6】図3の可撓芯金の前端部を構成する筒状芯金の拡大断面図である。
【図7】本発明の第2実施形態を示し、図2に対応する図である。
【図8】図7の曲げ加工用芯金を構成する外芯金を示す図であり、(A)は、可撓芯金の外観図、(B)は、係合前の、分離状態にある第1支持芯金と可撓芯金との断面図、(C)は、係合状態にある第1支持芯金と可撓芯金との断面図、(D)は、第1支持芯金と第2支持芯金とが結合されたときの外芯金の断面図である。
【図9】本発明の可撓芯金の前端部を構成する筒状芯金の変形例を示し、図6に対応する図である。
【符号の説明】
【0046】
1…曲げ加工装置、10…二重管、11…内管、12…外管、20…内芯金、30…外芯金、31…支持芯金、32…可撓芯金、40,90…筒状芯金、M…曲げ加工用芯金。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
内管および外管から構成される二重管の曲げ加工用芯金であって、前記内管の内部空間に配置される内芯金と、前記内管と前記外管との間の筒状空間に配置される外芯金とから構成される曲げ加工用芯金において、
前記外芯金は、曲げ加工の際に前記二重管が曲げ方向に曲げられて曲がり部が形成される曲げ形成位置に前記内管を囲んで配置されると共に前記曲がり部に沿って曲がる筒状の可撓芯金と、前記曲げ形成位置よりも後方に配置される支持芯金とから構成され、前記支持芯金および前記可撓芯金は係合構造によりに連結されることを特徴とする曲げ加工用芯金。
【請求項2】
前記係合構造は、第1係合部と、前記第1係合部に前記曲げ方向に屈曲可能に係合する第2係合部とから構成され、前記支持芯金には前記第1係合部が設けられ、前記可撓芯金には前記第2係合部が設けられることを特徴とする請求項1記載の曲げ加工用芯金。
【請求項3】
内管および外管から構成される二重管の曲げ加工用芯金であって、前記内管の内部空間に配置される内芯金と、前記内管と前記外管との間の筒状空間に配置される外芯金とから構成される曲げ加工用芯金において、
前記外芯金は、曲げ加工の際に前記二重管が曲げ方向に曲げられて曲がり部が形成される曲げ形成位置に前記内管を囲んで配置されると共に前記曲がり部に沿って曲がる可撓芯金と、前記曲げ形成位置よりも後方に配置されて前記可撓芯金が連結される支持芯金とから構成され、前記可撓芯金は軸線方向に配列される複数の筒状芯金から構成され、隣り合う前記筒状芯金同士は係合構造により連結され、前記係合構造は、第1係合部と、前記第1係合部に前記曲げ方向に屈曲可能に係合する第2係合部とから構成され、前記筒状芯金同士を構成する一方の筒状芯金および他方の筒状芯金に、それぞれ前記第1係合部および前記第2係合部が設けられることを特徴とする曲げ加工用芯金。
【請求項4】
前記内管および前記外管は円管であり、前記可撓芯金または前記筒状芯金は円筒状部材であり、前記係合構造は周方向での任意の位置で屈曲可能であることを特徴とする請求項1または3記載の曲げ加工用芯金。
【請求項5】
前記第1係合部および前記第2係合部は、軸線方向に相対移動したときに軸線方向で互いに当接する所定間隔を形成することを特徴とする請求項4記載の曲げ加工用芯金。
【請求項6】
前記第1係合部および前記第2係合部は、軸線方向に延びる基部と前記基部から径方向に突出する凸部とを有する鉤形部により構成され、前記第1係合部の前記凸部の先端部における前記第2係合部との接触部位および前記第2係合部の前記凸部の先端部における前記第1係合部との接触部位は曲面に形成されていることを特徴とする請求項5記載の曲げ加工用芯金。
【請求項7】
前記第1係合部および前記第2係合部において、一方の係合部は他方の係合部にその径方向内方に嵌り込んで前記他方の係合部と径方向で重なり、前記一方の係合部には、前記他方の係合部への嵌め込みが可能となるように、前記一方の係合部を弾性変形により縮径させるためのスリットが設けられることを特徴とする請求項4記載の曲げ加工用芯金。
【請求項8】
前記可撓芯金の前端部は、前記筒状空間への前記可撓芯金の挿入時に、前記内管または前記外管との接触により前記前端部を前記筒状空間に案内するテーパ面を有することを特徴とする請求項1または3記載の曲げ加工用芯金。
【請求項9】
前記支持芯金は、前記係合構造により前記可撓芯金に連結される第1支持芯金と、前記第1支持芯金に着脱可能に結合される第2支持芯金とを備え、前記第1支持芯金は、周方向に分割された複数の分割片により構成されると共に前記各分割片が互いに分離した分離状態で前記可撓芯金と係合および係合解除可能であり、前記第2支持芯金は、前記第1支持芯金が前記係合構造により前記可撓芯金との係合状態を維持するように前記第1支持芯金と結合されることを特徴とする請求項1または3記載の曲げ加工用芯金。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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