説明

互いに所定の距離にある2つの物体間の磁気結合に影響を及ぼす方法、およびその方法を実行するための装置

互いにある所定の距離にある2つの物体(10、12)の間の磁気結合に影響を及ぼす方法であって、磁場排除領域を有する制御可能な磁場排除装置(13)が、2つの物体(10、12)の間に収められ、2つの物体(10、12)の間の磁場(11)が、磁場排除装置(13)を適切に駆動することによって、磁場排除装置(13)の磁場排除領域から所定の方法で排除されることを特徴とする方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、磁場に影響を及ぼす分野に関する。特に、本発明は、請求項1の前提部に記載の、互いに所定の距離にある2つの物体間の磁気結合に影響を及ぼす方法、およびその方法を実行するための装置に関する。
【背景技術】
【0002】
反磁性は、物質を通る磁場を物質の内部から多かれ少なかれ排除し、かつ磁場を弱める物質の特性として定義される。理想的な反磁性体は、第一種超伝導体であり、超伝導体は、狭い縁領域を除き、物質の内部から磁場を完全に排除する。反磁性体の場合、提案されたモデルに基づいて原子レベルで外部磁場によって還流が誘導され、この還流の磁場は、外部磁場とは反対のもので、外部磁場を減衰する。第一種超伝導体の場合、外部磁場によって巨視的な大きさで縁領域に無損失スクリーン電流が生じ、この磁場により超伝導体の内部に磁場が存在しなくなる。
【0003】
磁場の排除により、物体間の磁気結合の領域内に反磁性物体がもたらされると、原則的に、2つの物体間の磁気結合が反磁性物体によって変化(減衰)されうる。このプロセスを制御することは不可能であり、特に、磁場の排除のオン/オフは簡単には切り換えられない。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明の目的は、2つの物体間の磁気結合へ影響を及ぼし制御することを容易かつ具体的に実行可能な方法および装置を提示することである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
この目的は、請求項1および請求項10の特徴部によって達成される。本発明では、磁場排除領域を有する制御可能な磁場排除装置が2つの物体間に収められ、2つの物体間の磁場が、磁場排除装置を適切に駆動することによって磁場排除装置の磁場排除領域から所定の方法で排除されることが必須である。磁場排除装置は、この場合、磁気誘導磁束密度(div=0)があり、外部エリアにベクトルポテンシャル(rot=0および=0)がある空間領域を規定する。
【0006】
1つの制御可能性は、2つの物体間の磁気結合に影響を及ぼすために、磁場排除装置をオンまたはオフに切り換えることである。これにより、磁気結合の切り換えプロセスに対応した、完全磁場排除と非磁場排除との間での変化が生じる。
【0007】
例えば、誘導された交流とともに生じるもののような周期的に変化する結合を達成するために、磁場排除装置は、2つの物体間の磁気結合に影響を及ぼすために、オンおよびオフに周期的に切り換え可能である。
【0008】
しかしながら、例えば、正弦波プロセス中に起こるもののような連続的な変化を達成するために、2つの物体間の磁気結合に影響を及ぼすように磁場排除装置の磁場排除の強度を変動させることも実現可能である。
【0009】
この場合、磁場排除領域を生成するために、本質的に閉じられた少なくとも1つのトロイダルコイルが使用されることが好ましい。さらに、ベクトルポテンシャルは、トロイダルコイルの軸線方向に、電流が流れ、少なくとも1つのトロイダルコイル内を通る巻線によって影響を及ぼされる。
【0010】
影響を及ぼされる磁気結合は、同一の物体または異なる物体間に存在してもよい。したがって、物体のうち少なくとも1つが、磁場が別の物体と相互作用する永久磁石であってもよい。特に、両方の物体が永久磁石であってもよく、極性に応じて両物体の相互作用の過程で互いに誘引または反発する。
【0011】
しかしながら、物体の少なくとも1つは、電磁コイルであってもよく、電磁コイルは、電磁コイルに電流が流れて磁場を生成するか、または誘導コイルとして変動磁場が流れる。特に、両物体は、電磁コイルであってもよい。
【0012】
この場合、磁場排除装置を制御するために、コントローラが使用されることが好ましい。
【0013】
本発明による磁場排除装置の1つの改良点は、磁場排除装置が、内部の磁場がリング状に閉じられ、外部の磁場が消失する少なくとも1つのトロイダルコイルを有することを特徴とする。特に、電流の印加が可能であり、トロイダルコイルの軸線方向に伸びる巻線(31)が、少なくとも1つのトロイダルコイル内に配設されうる。
【0014】
この改良点の1つの好ましい展開によれば、平面で互いに直接隣接する複数のトロイダルコイルが、一方が他方の内側に同心円状に配設される。
【0015】
一方が他方の上方に配設させた2つの平面上で各々が互いに直接隣接する複数のトロイダルコイルが、一方が他方の内側に同心円状に配設されれば、磁場排除装置に特に均一な磁場排除領域が生成されうる。
【0016】
トロイダルコイルまたは巻線は、この場合、コントローラによって制御される電源に接続されることが好ましい。
【0017】
以下、例示的な実施形態を用いて、図面とともに本発明についてさらに詳細に説明する。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】(a)〜(d)は本発明による方法の1つの例示的な実施形態による、2つの永久磁石間の磁気結合に影響を及ぼすためのステップを非常に簡潔な形で示す。
【図2】本発明の1つの例示的な実施形態による磁場排除装置の一部であるトロイダルコイルの断面図を示す。
【図3】一方が他方の上方に位置する2つの平面上で交互に作動される同心円状のトロイダルコイルを有する、本発明による磁場排除装置の1つの例示的な実施形態の断面図を示す。
【図4】本発明により、永久磁石と電磁コイルとの間の結合に影響が及ぼされるアレンジメントを図1と比較して示した図である。
【図5】本発明により、2つの電磁コイル間の結合に影響が及ぼされるアレンジメントを図4と比較して示した図である。
【図6】ベクトルポテンシャルを制御するために、トロイダルコイルおよび追加の巻線が周囲に伸びた状態の本発明の別の例示的な実施形態による磁場排除装置の断面図を示す。
【発明を実施するための形態】
【0019】
本発明は、所定の空間領域(磁場排除領域)において、反磁性の現象および効果を生成可能である方法、および一定または経時変化し、異なる外部独立源(例えば、外部永久磁石または電磁石)からこの領域内に伸びる磁場または電磁場を相互作用させるように、外部電流により生成されるこの反磁性空間領域(磁場排除領域)を使用する方法に関する。
【0020】
特に、本発明の提案は、外部源から生じる磁場の外部定常磁束、および/または、時間とともに変動する磁束の制御に及ぶ。
【0021】
反磁性空間領域を生成するために、特定の磁場排除装置、詳細には、変数およびパラメータが添え字で注釈付けされる反磁性発生器(以下の記載において、DMG)が提案される。固定された所定の空間領域内において、DMGは、一定および/または経時変化する磁場の磁束密度の閉循環を生成し、この場合、div=0(空間領域の内部)である。固定された空間領域外において、半径方向の勾配(gradr、D)を有するベクトルポテンシャルが生成され、ここでrot=0、=0である。これらの2つの領域の固定された相互作用は、他の外部源(例えば、永久磁石や電磁石)からこの領域内に伸びる磁場および/または電磁場の他の外部磁束との関係において、反磁性の現象のような振る舞いをする。
【0022】
例示的に、電力源から供給される円形ソレノイド(トロイダルコイル)が、円形の本質的に閉じられた電磁場(電磁場の方向は、円形ソレノイドの軸線に沿ったものである)を生成するDMGとして使用されうる。半径方向の勾配(gradr、D)およびこの領域におけるパラメータ=0、rot=0を有するベクトルポテンシャルの外部円形領域も存在する。ソレノイドが直流で供給される場合は、d/dt=0である。対照的に、ソレノイドが交流で供給されれば、d/dt=A0.Df(v)であり、ここで、A0.D=ベクトルポテンシャルの振幅、f(v)=交流の周波数の関数、およびKの波動現象形を考慮した補正係数である。
【0023】
図1は、さまざまなステップの形態(図の要素)における本発明による方法の原理を非常に簡略化して示した図である。図1の(a)によれば、この方法は、2つの物体10および12に基づくものであり、これらの物体は、互いに所定の距離にあり、この場合、例示的に、永久磁石の形態であり、2つの物体間に、ゼロではない磁気誘導磁束密度11を有する領域が形成されるように磁気的に結合される。この例において、2つの永久磁石の反対の極性は互いに対面し、その結果、磁気相互作用が2つの物体10、12に引力をかける。
【0024】
今や、本発明によれば、ゼロではなく、外部制御(図1の(b))に対する制御入力14(矢印記号で示す)を有する磁気誘導磁束密度11の領域内に、制御可能な磁場排除装置13が導入される。この場合、磁場排除装置13は、磁場排除の作用が、2つの物体10、12の磁気結合で最大になるように位置決めされることが好ましい。
【0025】
磁場排除装置13がオンに切り換えられると(図1の(c)の制御入力14でブロック矢印の記号で示す)、切り換えられることにより生じる磁場排除により、異なる磁気誘導磁束密度11’が生成され、それに応じて、物体間の磁気結合も異なるものになる。磁場排除装置13が再度オフに切り換えられると(図1の(d))、図1の(a)から最初の状態が再度生成される。
【0026】
しかしながら、2つの永久磁石間の磁気結合の代わりに、図4および図5に示すように、磁場排除装置18は、永久磁石12と電磁石コイル25(図4)との間、または2つの電磁石コイル25および26(図5)の間の磁気結合に影響を及ぼすように使用されてもよく、後者の場合、電磁石コイル25、26は、定磁場または交番磁場を生成したり、投入された磁場の変動により電流を誘導したりするために使用される。
【0027】
本発明による磁場排除装置13または18の1つの例示的な実施形態の中心要素は、図2の断面の形態に示すタイプのトロイダルコイル15であり、その内部において、コイル電流は、外部エリアに磁場がない間、リング状に閉じられた磁気誘導磁束17を形成する。
【0028】
図3に示すように、一方が他方の上方に配設された2つの平面上に各々が互いに直接隣接する複数のトロイダルコイル19、...、21および19’、...、21’が、磁場排除装置18を形成するために、一方が他方の内側に同心円状に配設されれば、(反磁性作用)磁場排除領域22が、コイル平面間に形成され、コイル19、...、21および19’、...、21’がオンに切り換えられると、図1の(c)に示す効果を有する。この場合、トロイダルコイル19、...、21および19’、...、21’は、各平面内および平面間の両方で交互に作動される。
【0029】
磁気結合に影響を及ぼすことで、磁気力に影響を及ぼす(磁気力を切り換える)だけでなく、交流の生成および処理に関与することもある誘導プロセスを制御することも可能である。
【0030】
図6は、図2に相当する図において、本発明による磁場排除装置の別の例示的な実施形態を示す。図6の磁場排除装置30は、中心(円形)軸線33に沿って伸び、コイル電流34が流れるトロイダルコイル32を有する。コイル電流34は、磁場領域に磁場を生成し、図の左側の平面内に向けられ、図の右側の平面から出る。トロイダルコイル32の内部の軸線33に沿って、追加の巻線31が配設されることで(例示的に、一般性に何ら制約を加えることはないが、図6は、4巻数を示す)、さらなる磁場領域36に追加の磁場が生成され、コイル電流34に平行に配向され、トロイダルコイル32の磁場に対して直角に配向される。
【0031】
変数gradr、Dは、追加の巻線31によって影響を及ぼされる。ベクトルポテンシャルAr、Dおよび変数gradr、Dは、2つの磁場およびの相互作用によって影響を及ぼされ、この場合、トロイダルコイル32のコイル電流34を変動させることなく、影響を生じさせるために巻線31を流れる電流を変動させることが可能である。これにより、反磁性磁場排除領域により磁気結合に影響を及ぼすことが可能なさらなる方法が得られる。
【符号の説明】
【0032】
10、11…永久磁石、11、11’…磁気誘導磁束密度、13、18、30…磁場排除装置(制御可能)、14…制御入力、15…トロイダルコイル、16…コイル電流、17…磁気誘導磁束、19、20、21…トロイダルコイル、19’、20’、21’…トロイダルコイル、22…磁場排除領域、23…電力源、24…コントローラ、25、26…電磁コイル、31…巻線、32…トロイダルコイル、33…軸線(トロイダルコイル)、34…コイル電流、35…磁場(巻線31)、36、37…磁場領域。
【図1a)】

【図1b)】

【図1c)】

【図1d)】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
互いに所定の距離にある2つの物体(10、12;25、26)の間の磁気結合に影響を及ぼす方法において、
磁場排除領域(22)を有する制御可能な磁場排除装置(13、18、30)が、前記2つの物体(10、12;25、26)間に配置され、前記2つの物体(10、12;25、26)間の磁場(11)が、前記磁場排除装置(13、18、30)を適切に駆動することによって、前記磁場排除装置(13、18、30)の磁場排除領域(22)から所定の態様で排除されることを特徴とする方法。
【請求項2】
前記磁場排除装置(13、18、30)が、前記2つの物体(10、12;25、26)間の磁気結合に影響を及ぼすために、オンまたはオフに切り換えられることを特徴とする、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記磁場排除装置(13、18、30)が、前記2つの物体(10、12;25、26)間の磁気結合に影響を及ぼすために、周期的にオンまたはオフに切り換えられることを特徴とする、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記磁場排除装置(13、18、30)の磁場排除の強さが、前記2つの物体(10、12;25、26)間の磁気結合に影響を及ぼすために変更されることを特徴とする、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
前記磁場排除領域(22)を生成するために、本質的に閉じられている少なくとも1つのトロイダルコイル(15;19、20、21、19’、20’、21’;32)が使用されることを特徴とする、請求項1〜4のいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
ベクトルポテンシャル(r、D)が、前記トロイダルコイル(32)の軸線方向(33)において、電流が流れ、前記少なくとも1つのトロイダルコイル(32)内を通る巻線(31)によって影響を及ぼされることを特徴とする、請求項5に記載の方法。
【請求項7】
前記物体(10、12;25、26)の少なくとも1つが、永久磁石(10、12)であることを特徴とする、請求項1〜6のいずれか一項に記載の方法。
【請求項8】
前記2つの物体(10、12)が、永久磁石であることを特徴とする、請求項7に記載の方法。
【請求項9】
前記物体(10、12;25、26)の少なくとも1つが、電磁コイル(25、26)であることを特徴とする、請求項1〜6のいずれか一項に記載の方法。
【請求項10】
前記2つの物体(25、26)が、電磁コイルであることを特徴とする、請求項9に記載の方法。
【請求項11】
前記磁場排除装置(13、18、30)を制御するために、コントローラ(24)が使用されることを特徴とする、請求項1〜10のいずれか一項に記載の方法。
【請求項12】
前記方法を実行するための磁場排除装置(13、18、30)において、
磁気誘導磁束密度(div=0)があり、かつ、外部エリアにベクトルポテンシャル(rot=0および=0)がある空間領域を規定することを特徴とする、磁場排除装置。
【請求項13】
当該磁場排除装置(13、18、30)は、内部磁場がリング状に閉じられ、外部磁場が消失する少なくとも1つのトロイダルコイル(15;19、...、21;19’、...21’;32)を有することを特徴とする、請求項12に記載の磁場排除装置。
【請求項14】
電流を印加可能であり、前記トロイダルコイル(32)の軸線(33)の方向に延びる巻線(31)が、前記少なくとも1つのトロイダルコイル(32)内に配設されることを特徴とする、請求項13に記載の磁場排除装置。
【請求項15】
平面上で互いに直接的に隣接した複数のトロイダルコイル(15;19、...、21;19’、...21’)は、一方が他方の内側に同心円状に配設されることを特徴とする、請求項13に記載の磁場排除装置。
【請求項16】
一方が他方の上方に配設される2つの平面上で各々が互いに直接的に隣接した複数のトロイダルコイル(15;19、...、21;19’、...21’)は、一方が他方の内側に同心円状に配設されることを特徴とする、請求項15に記載の磁場排除装置。
【請求項17】
1つまたは複数の前記トロイダルコイル(15;19、...、21;19’、...21’;32)または前記巻線(31)が、コントローラ(24)によって制御される電力源(23)に接続されることを特徴とする、請求項12〜16のいずれか一項に記載の磁場排除装置。

【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公表番号】特表2010−527161(P2010−527161A)
【公表日】平成22年8月5日(2010.8.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−507847(P2010−507847)
【出願日】平成20年5月15日(2008.5.15)
【国際出願番号】PCT/EP2008/003917
【国際公開番号】WO2008/138623
【国際公開日】平成20年11月20日(2008.11.20)
【出願人】(509314965)フィリップ セイント ゲア アーゲー (4)
【Fターム(参考)】