説明

五弗化燐−塩化水素−混合物中の五弗化燐の含量を増加させる方法

五弗化燐−塩化水素−混合物の分離または含量の増加は、30〜60バールでの圧力蒸留によって行なわれ、この場合分別は、五弗化燐の臨界温度をまさに下廻る温度範囲または五弗化燐の臨界温度をまさに上廻る温度範囲で、しかも塩化水素の臨界温度を下廻って実施される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、五弗化燐(PF)−塩化水素(HCl)−混合物を分離する方法または五弗化燐−塩化水素−混合物中の五弗化燐の含量を増加させる方法に関する。
【0002】
五弗化燐は、例えば三塩化燐を弗化水素および塩素と反応させることによって製造される(欧州特許第0816287号明細書)。
【0003】
PCl + 5 HF + Cl → PF5 + 5 HCl
この反応は、通常、塩素の存在で実施され、三価の出発化合物を五価の段階に酸化する。この場合、この方法を連続的に実施することは、有利であることが証明され、この場合には、バッチ式の実施も、同様に可能である。
【0004】
連続的な方法の場合、反応器中には、三価の出発化合物が存在する。同様に、酸化剤を過剰量で使用することも可能である。反応体の化学量論的量の使用も同様に可能である。
【0005】
フッ酸は、有利に化学量論的な必要量で使用される。このフッ酸を過剰量で使用する場合には、フッ酸は、同時に溶剤として使用することができる。例えば、HFは、反応混合物に対して70質量%またはそれ以上であることができる。反応速度は、酸化剤の計量供給によって制御されることができる。
【0006】
五弗化燐は、一般に5倍量の塩化水素との混合物で得ることができる。前記混合物からの五弗化燐の単離、例えば、弗化水素との反応によってヘキサフルオロ燐酸に変え、引続きこの化合物を熱分解することによって望ましい五弗化燐に変えることは、時折、記載されている。しかし、この精製は、多大に付加的な装置的費用を必要とし、したがってめったに利用されない。
【0007】
本発明の課題は、五弗化燐−塩化水素−混合物を分離する方法を提供するかまたは五弗化燐−塩化水素−混合物中の五弗化燐の含量を増加させる方法を提供することである。
【0008】
30〜60バールの圧力範囲および五弗化燐の臨界温度をまさに下廻る温度ならびに五弗化燐をまさに上廻る温度で圧力蒸留することによって、塩化水素含量を最少化することができることが見出された。それによって、塩化水素の含量が減少された五弗化燐−塩化水素−混合物を得ることができる。
【0009】
PF/HCl混合物の常圧下での分別は、困難である。それというのも、双方の化合物の沸騰温度は、実際に等しいからである。
【0010】
【表1】

【0011】
本発明によれば、圧力蒸留は、30〜60バールの圧力範囲および五弗化燐の臨界温度をまさに下廻る温度、有利には五弗化燐の臨界温度をまさに上廻る温度で、しかも塩化水素の臨界温度を下廻って実施される。圧力蒸留は、−10℃〜51.4℃の温度で実施される。
【0012】
1つの実施態様において、圧力蒸留は、五弗化燐の臨界温度をまさに下廻る温度で−10℃〜20℃で実施される。
【0013】
別の実施態様において、圧力蒸留は、塩化水素の臨界温度を下廻る温度で20〜51.4℃で実施される。
【0014】
分離は、塩化水素の臨界点を下廻って行なわれるので、塩化水素は、液状の形で蒸留塔の塔底部から導出されうる。
【0015】
ガス状の五弗化燐は、蒸留塔の塔頂部から取り出される。
【0016】
分離ファクターは、次の等式によって定められる。
【0017】
【数1】

【0018】
本発明による条件下で好ましい実施態様においては、五弗化燐の臨界点を上廻って作業され、即ちさらに圧力を上昇させた場合でももはや液化することはできない。従って、五弗化燐は、圧力を上昇させた場合でも気相でのみ存在する。塩化水素は、記載された条件下で液相で含量が増加され、それによってこの相中でのモル比は、変化する。
【0019】
次の実施例により、本発明を詳説するが、しかし、本発明は、制限されるものではない。
【0020】
実施例:
圧力蒸留装置中でPF/HCl混合物を記載された条件下で分別した。
【0021】
【表2】

【0022】
本発明により精製された五弗化燐を特にリチウムヘキサフルオロホスフェートの製造のための出発物質として使用し、極めて純粋なリチウムヘキサフルオロホスフェートの製造を可能にする。
【0023】
前記化合物の製造のために、五弗化燐をハロゲン化リチウムおよび液状弗化水素からなる溶液または懸濁液中に導入する。この場合、五弗化燐は、フッ化リチウムと次の方程式:
LiF + PF → LiPF
により反応し、リチウムヘキサフルオロホスフェートに変わる。
【0024】
リチウムヘキサフルオロホスフェートは、なかんずく再充電可能なリチウム電池のための導電性塩として必要とされている。前記の使用範囲にとって、高い純度の生成物を使用することができることは、利点である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
五弗化燐−塩化水素−混合物を分離するかまたは五弗化燐−塩化水素−混合物中の五弗化燐の含量を増加させる方法において、30〜60バールで塩化水素の臨界温度を下廻る温度で圧力蒸留を実施することを特徴とする、五弗化燐−塩化水素−混合物を分離するかまたは五弗化燐−塩化水素−混合物中の五弗化燐の含量を増加させる方法。
【請求項2】
圧力蒸留を塩化水素の臨界温度を下廻る温度および五弗化燐の臨界温度を上廻る温度で実施する、請求項1記載の五弗化燐−塩化水素−混合物を分離するかまたは五弗化燐−塩化水素−混合物中の五弗化燐の含量を増加させる方法。
【請求項3】
圧力蒸留を20〜51.4℃の温度で実施する、請求項1または2記載の五弗化燐−塩化水素−混合物を分離するかまたは五弗化燐−塩化水素−混合物中の五弗化燐の含量を増加させる方法。
【請求項4】
圧力蒸留を五弗化燐の臨界温度をまさに下廻る温度で実施する、請求項1記載の五弗化燐−塩化水素−混合物を分離するかまたは五弗化燐−塩化水素−混合物中の五弗化燐の含量を増加させる方法。
【請求項5】
圧力蒸留を−10〜20℃の温度で実施する、請求項4記載の五弗化燐−塩化水素−混合物を分離するかまたは五弗化燐−塩化水素−混合物中の五弗化燐の含量を増加させる方法。

【公表番号】特表2007−513853(P2007−513853A)
【公表日】平成19年5月31日(2007.5.31)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−540326(P2006−540326)
【出願日】平成16年11月18日(2004.11.18)
【国際出願番号】PCT/EP2004/013098
【国際公開番号】WO2005/061381
【国際公開日】平成17年7月7日(2005.7.7)
【出願人】(592165314)ゾルファイ フルーオル ゲゼルシャフト ミット ベシュレンクテル ハフツング (55)
【氏名又は名称原語表記】Solvay Fluor GmbH
【住所又は居所原語表記】Hans−Boeckler−Allee 20,D−30173 Hannover,Germany
【Fターム(参考)】