説明

井戸揚水量調査システムおよび井戸揚水量調査方法

【課題】井戸孔へ流入する地下水の流入状況を帯水層ごとに個別に把握する。
【解決手段】井戸揚水量調査システム10は、第1ストレーナー部34aよりも上方に配置された吸入口40aを有する揚水ポンプ40と、第1ストレーナー部34aの上下方向中央部の初期水温t01を検知する第1水温検知手段(光ファイバ温度計44)と、第1ストレーナー部34aの上端部の揚水時の水温t1を検知する第2水温検知手段(光ファイバ温度計44)と、第2ストレーナー部34bの上端部の揚水時の水温t2を検知する第3水温検知手段(光ファイバ温度計44)と、演算装置46とを備え、演算装置46は、第1ストレーナー部34aから井戸孔22へ流入する揚水量Q1inを以下の式に基づいて算出する。Q1in=Q*(t1−T1)/DT1

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、異なる深さに存在する少なくとも2つの帯水層のそれぞれに対応する少なくとも2つのストレーナー部を有する揚水井戸について、ストレーナー部ごと(すなわち、帯水層ごと)の揚水量を調査する、井戸揚水量調査システムおよび井戸揚水量調査方法に関する。
【背景技術】
【0002】
揚水井戸の集水能力を評価する方法としては、「段階揚水試験」の結果に基づいて「適正揚水量」を算出する方法や、「段階揚水試験」の結果に基づいて「最大可能揚水量」を算出する方法等が周知である(非特許文献1参照)。
【0003】
前者の方法は、図7に示すように、(a)揚水量を段階的に増大させながら、各段階における井戸孔内の水の水位低下量を測定し、(b)揚水量と水位低下量との関係をグラフにプロットすることによって揚水量が急激に減少する始点(すなわち、限界点)を読み取り、(c)この「限界点」における揚水量(すなわち、限界揚水量)の60〜80%を「適正揚水量」とするものである。
【0004】
後者の方法は、(a)揚水量を段階的に増大させながら井戸孔内の水の水位を測定し、(b)井戸孔内の水の水位が揚水ポンプの吸入口まで低下したときの揚水量を「最大可能揚水量」とするものである。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0005】
【非特許文献1】「地下水の適正な揚水量の算定手法について」東北農政局、http://www.maff.go.jp/j/nousin/noukan/tyotei/t#seika/pdf/10tikasui.pdf
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
一般的な揚水井戸においては、複数の帯水層から井戸孔へ地下水が流入するため、井戸孔の内部に集水された水は、複数の帯水層から流入した地下水の集合である。したがって、上述の「適正揚水量」または「最大可能揚水量」によって評価できる集水能力は、複数の帯水層からの集水能力を一括した総合的なものであり、従来では、帯水層ごとの集水能力を個別に評価することはできなかった。
【0007】
本発明は、上記課題を解決するためになされたものであり、井戸孔へ流入する地下水の流入状況を帯水層ごとに個別に把握することができる、井戸揚水量調査システムおよび井戸揚水量調査方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
前記課題を解決するために、本発明に係る井戸揚水量調査システムは、第1帯水層と前記第1帯水層よりも下方に存在する第1不透水層と前記第1不透水層よりも下方に存在する第2帯水層とに亘って掘削された井戸孔と、前記井戸孔の内面の前記第1帯水層に対応する領域に配設され、かつ、前記第1帯水層から前記井戸孔へ地下水を取り込む第1ストレーナー部と、前記井戸孔の内面の前記第2帯水層に対応する領域に配設され、かつ、前記第2帯水層から前記井戸孔へ地下水を取り込む第2ストレーナー部とを備える揚水井戸について、ストレーナー部ごとの揚水量を調査する井戸揚水量調査システムであって、前記井戸孔の内部における前記第1ストレーナー部よりも上方の領域に配置された吸入口を有し、前記井戸孔の内部の水を揚水する揚水ポンプと、前記第1ストレーナー部の上下方向中央部に存在する井戸孔内の水の初期水温を検知する第1水温検知手段と、前記第1ストレーナー部の上端部に存在する井戸孔内の水の揚水時の水温を検知する第2水温検知手段と、前記第2ストレーナー部の上端部に存在する井戸孔内の水の揚水時の水温を検知する第3水温検知手段と、入力されたデータに基づいて演算処理を実行する演算装置とを備え、前記演算装置は、前記第1ストレーナー部からの揚水量Q1inを以下の式に基づいて算出する、井戸揚水量調査システム。
【0009】
dT1=0.5*c1*L1
dT2=c12*D12+c1*L1
T1=t01−dT1
T2=t2−dT2
DT1=T2−T1
Q1in=Q*(t1−T1)/DT1
Q1in :第1ストレーナー部からの揚水量(ton/hour)
Q :揚水ポンプの揚水量(ton/hour)
t01 :第1水温検知手段による検知温度(℃)
t1 :第2水温検知手段による検知温度(℃)
t2 :第3水温検知手段による検知温度(℃)
L1 :第1ストレーナー部の上下方向長さ(m)
D12 :第1ストレーナー部と第2ストレーナー部との距離(m)
c1 :第1ストレーナー部における井戸孔内の水の揚水時の温度低減係数(℃/m)
c12 :第1ストレーナー部と第2ストレーナー部との間の領域における井戸孔内の水の揚水時の温度低減係数(℃/m)
この構成では、既知のデータまたは容易に取得可能なデータに基づいて、演算装置により第1ストレーナー部からの揚水量Q1inを算出することができる。また、第2ストレーナー部以深からの揚水量Q2を「Q2=Q−Q1in」の式で算出することができる。
【0010】
前記井戸孔は、さらに前記第2帯水層よりも下方に存在する第2不透水層と前記第2不透水層よりも下方に存在する第3帯水層とに亘って掘削されており、前記井戸孔の内面の前記第3帯水層に対応する領域には、前記第3帯水層から前記井戸孔へ地下水を取り込む第3ストレーナー部が配設されており、前記第2ストレーナー部の上下方向中央部に存在する井戸孔内の水の初期水温を検知する第4水温検知手段と、前記第3ストレーナー部の上端部に存在する井戸孔内の水の揚水時の水温を検知する第5水温検知手段とをさらに備えており、前記演算装置は、前記第2ストレーナー部からの揚水量Q2inを以下の式に基づいて算出するものであってもよい。
【0011】
dT3=0.5*c2*L2
dT4=c23*D23+c2*L2
T3=t02−dT3
T4=t3−dT4
DT2=T4−T3
Q2in=(Q−Q1in)*(t2−T3)/DT2
Q2in :第2ストレーナー部からの揚水量(ton/hour)
Q :揚水ポンプの揚水量(ton/hour)
Q1in :第1ストレーナー部からの揚水量(ton/hour)
t02 :第4水温検知手段による検知温度(℃)
t2 :第3水温検知手段による検知温度(℃)
t3 :第5水温検知手段による検知温度(℃)
L2 :第2ストレーナー部の上下方向長さ(m)
D23 :第2ストレーナー部と第3ストレーナー部との距離(m)
c2 :第2ストレーナー部における井戸孔内の水の揚水時の温度低減係数(℃/m)
c23 :第2ストレーナー部と第3ストレーナー部との間の領域における井戸孔内の水の揚水時の温度低減係数(℃/m)
この構成では、第2ストレーナー部からの揚水量Q2inを先に求めた揚水量Q1in等に基づいて簡単に算出することができる。また、第3ストレーナー部以深からの揚水量Q3を「Q3=Q−Q1in−Q2in」の式で算出することができる。
【0012】
前記第1ストレーナー部と前記第2ストレーナー部との間の第1不透水領域に位置する第1測定点に存在する井戸孔内の水の揚水時の水温を検知する第6水温検知手段と、前記第1不透水領域における前記第1測定点よりも下方に位置する第2測定点に存在する井戸孔内の水の揚水時の水温を検知する第7水温検知手段とをさらに備え、前記演算装置は、前記第1不透水領域における井戸孔内の水の揚水時の温度低減係数c12を以下の式に基づいて算出するものであってもよい。
【0013】
c12=(tb1−ta1)/d1
c12 :第1不透水領域における井戸孔内の水の揚水時の温度低減係数
ta1 :第6水温検知手段による検知温度(℃)
tb1 :第7水温検知手段による検知温度(℃)
d1 :第1測定点と第2測定点との距離(m)
この構成では、容易に取得可能なデータに基づいて演算装置により温度低減係数c12を算出することができる。
【0014】
少なくとも、前記第2水温検知手段および前記第3水温検知手段は、前記井戸孔の内部に配設された光ファイバセンサケーブルを有する光ファイバ温度計によって実現されていてもよい。
【0015】
この構成では、1つの光ファイバ温度計によって、少なくとも2つの水温t1,t2を簡単に測定することができる。
【0016】
前記課題を解決するために、本発明に係る井戸揚水量調査方法は、第1帯水層と前記第1帯水層よりも下方に存在する第1不透水層と前記第1不透水層よりも下方に存在する第2帯水層とに亘って掘削された井戸孔と、前記井戸孔の内面の前記第1帯水層に対応する領域に配設され、かつ、前記第1帯水層から前記井戸孔へ地下水を取り込む第1ストレーナー部と、前記井戸孔の内面の前記第2帯水層に対応する領域に配設され、かつ、前記第2帯水層から前記井戸孔へ地下水を取り込む第2ストレーナー部とを備える揚水井戸について、ストレーナー部ごとの揚水量を調査する井戸揚水量調査方法であって、(a)前記第1ストレーナー部の上下方向中央部に存在する井戸孔内の水の初期水温t01を検出し、(b)前記井戸孔の内部における前記第1ストレーナー部よりも上方の領域から所定の揚水量Qで揚水し、(c)前記第1ストレーナー部の上端部に存在する井戸孔内の水の揚水時の水温t1と、前記第2ストレーナー部の上端部に存在する井戸孔内の水の揚水時の水温t2とを検出し、(d)前記第1ストレーナー部からの揚水量Q1inを以下の式に基づいて算出する、井戸揚水量調査方法。
【0017】
Q1in=Q*(t1−T1)/DT1
この構成では、既知のデータまたは容易に取得可能なデータに基づいて、演算装置により第1ストレーナー部からの揚水量Q1inを算出することができる。また、第2ストレーナー部以深からの揚水量Q2を「Q2=Q−Q1in」の式で算出することができる。
【0018】
前記井戸孔は、さらに前記第2帯水層よりも下方に存在する第2不透水層と前記第2不透水層よりも下方に存在する第3帯水層とに亘って掘削されており、前記井戸孔の内面の前記第3帯水層に対応する領域には、前記第3帯水層から前記井戸孔へ地下水を取り込む第3ストレーナー部が配設されており、前記(a)工程では、前記第2ストレーナー部の上下方向中央部に存在する井戸孔内の水の初期水温t02を検出し、前記(c)工程では、前記第3ストレーナー部の上端部に存在する井戸孔内の水の揚水時の水温t3を検出し、前記(d)工程より後に、(e)前記第2ストレーナー部からの揚水量Q2inを以下の式に基づいて算出するものであってもよい。
【0019】
Q2in=(Q−Q1in)*(t2−T3)/DT2
この構成では、第2ストレーナー部からの揚水量Q2inを先に求めた揚水量Q1in等に基づいて簡単に算出することができる。また、第3ストレーナー部以深からの揚水量Q3を「Q3=Q−Q1in−Q2in」の式で算出することができる。
【発明の効果】
【0020】
本発明の井戸揚水量調査システムおよび井戸揚水量調査方法によれば、第1ストレーナー部からの揚水量Q1inを既知のデータまたは容易に取得可能なデータに基づいて簡単に算出することができ、第2ストレーナー部以深からの揚水量Q2を「Q2=Q−Q1in」の式で算出することができる。たとえば、井戸孔が掘削された地盤に「帯水層」が2つだけ存在する場合には、「ストレーナー部」も2つしか存在しないため、第3ストレーナー部以深からの地下水の流入を考慮する必要はなく、「Q−Q1in」の式で第2ストレーナー部からの揚水量Q2inを算出することができる。
【0021】
また、帯水層が3つ以上存在する場合でも、第2ストレーナー部からの揚水量Q2inを先に求めた揚水量Q1in等に基づいて簡単に算出することができ、第3ストレーナー部以深からの揚水量Q3を「Q3=Q−Q1in−Q2in」の式で算出することができる。たとえば、帯水層が3つだけ存在する場合には、第4ストレーナー部以深からの地下水の流入を考慮する必要はなく、「Q−Q1in−Q2in」の式で3ストレーナー部からの揚水量Q3inを算出することができる。
【0022】
さらに、帯水層が4つ以上存在する場合でも、同様の手法によって、各ストレーナー部における揚水量を上層側から順番に算出していくことができる。
【0023】
なお、ストレーナー部は各帯水層に対応して配設されており、「ストレーナー部からの揚水量」は、「ストレーナー部から井戸孔へ流入する地下水の流入量」と一致するので、「揚水量をストレーナー部ごとに算出すること」は「井戸孔へ流入する地下水の流入量を帯水層ごとに算出すること」を意味する。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【図1】第1実施形態に係る井戸揚水量調査システムの構成を示す概略図である。
【図2】第1実施形態に係る井戸揚水量調査方法における温度低減係数c12,c23の算出方法を示す図である。
【図3】水温t1と揚水量Q1in,Q2との関係を示す表である。
【図4】水温t1と揚水量Q1in,Q2との関係を示すグラフである。
【図5】水温t3と揚水量Q2in,Q3との関係を示す表である。
【図6】水温t3と揚水量Q2in,Q3との関係を示すグラフである。
【図7】従来の井戸集水能力の評価方法を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0025】
以下に、本発明の実施形態に係る「井戸揚水量調査システム」および「井戸揚水量調査方法」について図面を参照しながら説明する。
【0026】
(第1実施形態)
図1は、本発明の第1実施形態に係る井戸揚水量調査システム10の構成を示す概略図である。井戸揚水量調査システム10は、地盤12に設けられた揚水井戸14について、揚水井戸14内に流入する地下水の流入状況を調査するシステムである。
【0027】
[地盤の構成]
地盤12は、不透水性の表面層16、第1帯水層18a、第1不透水層20a、第2帯水層18b、第2不透水層20b、第3帯水層18cおよび第3不透水層20cが地表面側からこの順に積層された多層構造を有している。そして、第1帯水層18a、第2帯水層18bおよび第3帯水層18cには地下水が流れており、これらの地下水が揚水井戸14を通して揚水される。
【0028】
[揚水井戸の構成]
揚水井戸14は、井戸孔22と、4つのケーシング管24a〜24dと、3つのストレーナー管26a〜26cとによって構成されている。
【0029】
井戸孔22は、地盤12の地表面から第3不透水層20cに亘って掘削された縦穴であり、井戸孔22の内面における表面層16に対応する領域に第1ケーシング管24aが配設されており、第1不透水層20a、第2不透水層20bおよび第3不透水層20cのそれぞれに対応する領域に第2ケーシング管24b、第3ケーシング管24cおよび第4ケーシング管24dが配設されており、第1帯水層18a、第2帯水層18bおよび第3帯水層18cのそれぞれに対応する領域に第1ストレーナー管26a、第2ストレーナー管26bおよび第3ストレーナー管26cが配設されている。
【0030】
ケーシング管24a〜24cは、井戸孔22の内面を補強する補強管であり、合成樹脂(塩化ビニル等)または金属(鉄等)によって直管状に形成されている。そして、最下部に位置する第4ケーシング管24dの下端部には、井戸底を構成する底板部28が形成されている。
【0031】
ストレーナー管26a〜26cは、井戸孔22へ地下水を取り込むとともに、井戸孔22への土砂の流入を防止する透水管であり、合成樹脂(塩化ビニル等)または金属(鉄等)によって形成された直管状の本体部30a〜30cを有している。そして、本体部30a〜30cのそれぞれには、地下水を取り込むための複数の取水口32a〜32cが鉛直方向へ延びてスリット状に形成されており、複数の取水口32a〜32cが形成された領域がストレーナー部34a〜34cとなっている。
【0032】
第1ストレーナー部34aの上下方向長さL1、第2ストレーナー部34bの上下方向長さL2、第1ストレーナー部34aと第2ストレーナー部34bとの距離D12、および第2ストレーナー部34bと第3ストレーナー部34cとの距離D23のそれぞれの値は、揚水井戸14を構築する際に定まる値であり、本実施形態では、L1=50(m)、L2=50(m)、D12=200(m)、D23=300(m)となるように設計されている。
【0033】
なお、ストレーナー部34a〜34cを構成する取水口32a〜32cの形状は、特に限定されるものではなく、本実施形態のようなスリット状の他、円形状、四角形状、メッシュ状またはコイル状等であってもよい。また、ストレーナー部34a〜34cの長さは、特に限定されるものではなく、本実施形態のように、ストレーナー管26a〜26cの長さよりも短く設計されてもよいし、或いは、ストレーナー管26a〜26cの長さとほぼ同じに設計されてもよい。
【0034】
[井戸揚水量調査システムの構成]
井戸揚水量調査システム10は、図1に示すように、揚水ポンプ40と、揚水量測定装置42と、光ファイバ温度計44と、演算装置46を内蔵した制御装置48とを備えている。
【0035】
揚水ポンプ40は、インペラー(図示省略)と、インペラーを回転させるモータ(図示省略)とを有しており、揚水ポンプ40の吸入口40aが、井戸孔22の内部における第1ストレーナー部34aよりも上方の領域に配置されており、揚水ポンプ40の吐出口40bが、通水管50を介して地上に設けられた排水路(図示省略)に連通されている。そして、モータ(図示省略)には、これを制御するための制御装置48が電気的に接続されている。
【0036】
揚水量測定装置42は、通水管50の途中において揚水ポンプ40の「実際の揚水量」を測定するものであり、揚水量測定装置42には、「実際の揚水量」をデータとして取得する制御装置48が電気的に接続されている。
【0037】
光ファイバ温度計44は、井戸孔22の内部のほぼ全長に亘って配設された光ファイバセンサケーブル52と、光ファイバセンサケーブル52を被覆する金属管54と、金属管54の下端に取り付けられた重錘56と、レーザー光源58を内蔵した回路基板60とを有しており、回路基板60には、光ファイバセンサケーブル52と、各種の温度をデータとして取得する制御装置48とが電気的に接続されている。
【0038】
光ファイバ温度計44において、レーザー光源58から出射されたレーザー光が光ファイバセンサケーブル52の入射口52aから入射されると、光ファイバセンサケーブル52の各部位で後方散乱が発生し、散乱光の一部が入射口52aへ戻される。当該散乱光には、温度の影響を受け難い「ストークス光」と温度の影響を受け易い「アンチストークス光」とが含まれており、回路基板60では、これらの光の強度比から光ファイバセンサケーブル52における各部位の温度が検出される。散乱光の発生部位は、当該散乱光が入射口52aへ戻って来るまでに要した時間に基づいて算出される。したがって、光ファイバ温度計44を用いて井戸孔22の内部の水温をほぼ全長に亘って検出することが可能であり、また、複数の部位の温度を同時に検出することが可能である。
【0039】
光ファイバ温度計44の測定対象温度は、第1ストレーナー部34aの上下方向中央部に存在する井戸孔内の水の揚水ポンプ40の揚水運転前における水温(以下、「初期水温」という。)t01(℃)、第2ストレーナー部34bの上下方向中央部に存在する井戸孔内の水の初期水温t02(℃)、第1ストレーナー部34aの上端部に存在する井戸孔内の水の揚水ポンプ40の揚水運転時における水温(以下、「揚水時の水温」という。)t1、第2ストレーナー部34bの上端部に存在する井戸孔内の水の揚水時の水温t2、第3ストレーナー部34cの上端部に存在する井戸孔内の水の揚水時の水温t3、第1ストレーナー部34aと第2ストレーナー部34bとの間の領域(以下、「第1不透水領域」という。)35aに位置する第1測定点pa1に存在する井戸孔内の水の揚水時の水温ta1、第1不透水領域35aにおける第1測定点pa1よりも下方に位置する第2測定点pb1に存在する井戸孔内の水の揚水時の水温tb1、第2ストレーナー部34bと第3ストレーナー部34cとの間の領域(以下、「第2不透水領域」という。)35bに位置する第3測定点pa2に存在する井戸孔内の水の揚水時の水温ta2、第2不透水領域35bにおける第3測定点pa2よりも下方に位置する第4測定点pb2に存在する井戸孔内の水の揚水時の水温tb2である。つまり、本実施形態では、1つの光ファイバ温度計44が、これら9個の温度を検出する「水温検出手段」として機能する。
【0040】
なお、「水温検出手段」の種類は、特に限定されるものではなく、光ファイバ温度計44の他、熱電対式温度計等であってもよいが、井戸孔22の内部の水温をほぼ全長に亘って同時に検出できる点において、光ファイバ温度計44を用いることが望ましい。
【0041】
制御装置48は、以下の[表1]に示す各種のデータに基づいて演算処理を実行する演算装置(CPU)46と、各種のデータおよびプログラムを記憶する記憶装置(ROM,RAM)62とを有しており、ストレーナー部34a〜34cのそれぞれから井戸孔22へ流入する揚水量Q1in〜Q3inが、各種のデータおよびプログラムに基づいて、演算装置46によって算出される。
【0042】
【表1】

【0043】
[井戸揚水量調査方法]
第1実施形態に係る「井戸揚水量調査方法」は、ストレーナー部34a〜34cから井戸孔22へ流入する地下水(すなわち、帯水層18a〜18cからストレーナー部34a〜34cを通して井戸孔22へ流入する地下水)の揚水量Q1in〜Q3inを個別に算出するものであり、上述の井戸揚水量調査システム10を用いて実施される。
【0044】
<各種データの取得>
ストレーナー部34a〜34cからの揚水量Q1in〜Q3inを算出する際には、これらの算出に必要な各種のデータ(表1)を取得する。
【0045】
すなわち、まず、第1ストレーナー部34aの上下方向長さL1と、第2ストレーナー部34bの上下方向長さL2と、第1ストレーナー部34aと第2ストレーナー部34bとの距離D12と、第2ストレーナー部34bと第3ストレーナー部34cとの距離D23とを測定し、これらのデータを制御装置48の記憶装置62に記憶させる。これらのデータは、揚水井戸14を構築する際に測定することが可能であり、また、設計図等に基づいて知得することも可能である。
【0046】
続いて、第1ストレーナー部34aの上下方向中央部に存在する井戸孔内の水の初期水温t01と、第2ストレーナー部34bの上下方向中央部に存在する井戸孔内の水の初期水温t02とを光ファイバ温度計44を用いて検出し、これらのデータを回路基板60から制御装置48の記憶装置62に記憶させる。
【0047】
この段階のデータ取得においては、光ファイバ温度計44が、初期水温t01を検知する「第1水温検知手段」として機能し、かつ、初期水温t02を検知する「第4水温検知手段」として機能する。
【0048】
初期水温t01,t02の取得が完了すると、揚水ポンプ40の揚水運転を開始し、揚水ポンプ40の「実際の揚水量」を揚水量測定装置42で測定しながら、「実際の揚水量」を所定の揚水量Qに維持する。つまり、揚水量測定装置42で測定される「実際の揚水量」が予め定められた「揚水量Q」となるように、制御装置48により揚水ポンプ40をフィードバック制御する。
【0049】
そして、揚水ポンプ40を揚水量Qで運転させている状態において、第1ストレーナー部34aの上端部に存在する井戸孔内の水の揚水時の水温t1と、第2ストレーナー部34bの上端部に存在する井戸孔内の水の揚水時の水温t2と、第3ストレーナー部34cの上端部に存在する井戸孔内の水の揚水時の水温t3と、第1測定点pa1に存在する井戸孔内の水の揚水時の水温ta1と、第2測定点pb1に存在する井戸孔内の水の揚水時の水温tb1と、第3測定点pa2に存在する井戸孔内の水の揚水時の水温ta2と、第4測定点pb2に存在する井戸孔内の水の揚水時の水温tb2とを光ファイバ温度計44を用いて検出し、これらのデータを回路基板60から制御装置48の記憶装置62に記憶させる。
【0050】
この段階のデータ取得においては、光ファイバ温度計44が、水温t1を検知する「第2水温検知手段」、水温t2を検知する「第3水温検知手段」、水温t3を検知する「第5水温検知手段」、水温ta1を検知する「第6水温検知手段」、水温tb1を検知する「第7水温検知手段」、水温ta2を検知する「第8水温検知手段」、水温tb2を検知する「第9水温検知手段」として機能する。なお、揚水ポンプ40の揚水量Qは、第1ストレーナー部34aの上端部における井戸孔22内の水の流量Q1と一致する。
【0051】
<第1ストレーナー部からの揚水量Q1inの算出>
以上の工程により必要なデータ(表1)の取得が完了すると、演算装置46による演算処理を実行し、以下の[式1]に基づいて、第1ストレーナー部34aから井戸孔22へ流入する揚水量Q1inを算出する。
【0052】
dT1=0.5*c1*L1
dT2=c12*D12+c1*L1
T1=t01−dT1
T2=t2−dT2
DT1=T2−T1
Q1in=Q*(t1−T1)/DT1・・・[式1]
Q1in :第1ストレーナー部34aからの揚水量(ton/hour)
Q :揚水ポンプ40の揚水量(ton/hour)
t01 :第1水温検知手段による検知温度(℃)
t1 :第2水温検知手段による検知温度(℃)
t2 :第3水温検知手段による検知温度(℃)
L1 :第1ストレーナー部34aの上下方向長さ(m)
D12 :第1ストレーナー部34aと第2ストレーナー部34bとの距離(m)
c1 :第1ストレーナー部34aにおける井戸孔内の水の揚水時の温度低減係数(℃/m)
c12 :第1不透水領域35aにおける井戸孔内の水の揚水時の温度低減係数(℃/m)
ここで、温度低減係数c12は、図2に示すグラフ(井戸深さ−温度)の勾配であり、以下の[式2]に基づいて算出される値である。
【0053】
c12=(tb1−ta1)/d1・・・[式2]
ta1 :第6水温検知手段による検知温度(℃)
tb1 :第7水温検知手段による検知温度(℃)
d1 :第1測定点pa1と第2測定点pb1との距離(m)
一方、温度低減係数c1は、温度低減係数c12に基づいて推定される値であり、本実施形態では、「c12=c1」であると推定されている。
【0054】
<第2ストレーナー部からの揚水量Q2inの算出>
第1ストレーナー部34aからの揚水量Q1inが求まると、演算装置46で「Q−Q1in」の式を計算することによって、第2ストレーナー部34b以深からの揚水量、すなわち第2ストレーナー部34bおよびそれよりも深い領域からの揚水量Q2(Q2=Q−Q1in)を算出する。ここで、第3ストレーナー部34cが存在しないと仮定すると、揚水量Q2(Q2=Q−Q1in)は、すなわち第2ストレーナー部34bからの揚水量Q2inとなるため、この段階で演算処理を終了することができる。しかし、本実施形態では、第3ストレーナー部34cが存在しているため、揚水量Q2(Q2=Q−Q1in)は、第2ストレーナー部34bからの揚水量Q2inと第3ストレーナー部34cからの揚水量Q3inとの合計揚水量(Q2in+Q3in)となる。そこで、演算装置46による演算処理を続行し、以下の[式3]に基づいて、第2ストレーナー部34bから井戸孔22へ流入する揚水量Q2inを算出する。なお、[式3]は、[式1]で用いた上層の各種データを下層の各種データに変更したものであり、両式の計算原理は同じである。
【0055】
dT3=0.5*c2*L2
dT4=c23*D23+c2*L2
T3=t02−dT3
T4=t3−dT4
DT2=T4−T3
Q2in=(Q−Q1in)*(t2−T3)/DT2・・・[式3]
Q2in :第2ストレーナー部34bからの揚水量(ton/hour)
Q :揚水ポンプ40の揚水量(ton/hour)
Q1in :第1ストレーナー部34aからの揚水量(ton/hour)
t02 :第4水温検知手段による検知温度(℃)
t2 :第3水温検知手段による検知温度(℃)
t3 :第5水温検知手段による検知温度(℃)
L2 :第2ストレーナー部34bの上下方向長さ(m)
D23 :第2ストレーナー部34bと第3ストレーナー部34cとの距離(m)
c2 :第2ストレーナー部34bにおける井戸孔内の水の揚水時の温度低減係数(℃/m)
c23 :第2不透水領域35bにおける井戸孔内の水の揚水時の温度低減係数(℃/m)
ここで、温度低減係数c23は、図2に示すグラフ(井戸深さ−温度グラフ)の勾配であり、以下の[式4]に基づいて算出される値である。
【0056】
c23=(tb2−ta2)/d2・・・[式4]
ta2 :第8水温検知手段による検知温度(℃)
tb2 :第9水温検知手段による検知温度(℃)
d2 :第3測定点pa2と第4測定点pb2との距離(m)
一方、温度低減係数c2は、温度低減係数c23に基づいて推定される値であり、本実施形態では、「c23=c2」であると推定されている。
【0057】
<第3ストレーナー部からの揚水量Q3inの算出>
第1ストレーナー部34aからの揚水量Q1inと、第2ストレーナー部34bからの揚水量Q2inとが求まると、「Q−Q1in−Q2in」の式に基づいて、第3ストレーナー部34c以深からの揚水量、すなわち第3ストレーナー部34cおよびそれよりも深い領域からの揚水量Q3(Q3=Q−Q1in−Q2in)を算出する。本実施形態では、第3ストレーナー部34cよりも下方に他の「ストレーナー部」が存在しないので、揚水量Q3(Q3=Q−Q1in−Q2in)は、すなわち第3ストレーナー部34cからの揚水量Q3inとなる。つまり、第3ストレーナー部34cから井戸孔22へ流入する揚水量Q3inは、以下の式[式5]に基づいて求めることができる。
【0058】
Q3in=Q3=Q−Q1in−Q2in・・・[式5]
ここで、第3ストレーナー部34cよりも下方に他の「ストレーナー部」が存在すると仮定すると、次の工程において、第3ストレーナー部34c以深からの揚水量Q3(Q3=Q−Q1in−Q2in)と他のデータ(表1に示したデータと同種のデータ)とに基づいて、[式1]および[式3]と同じ計算原理により、揚水量Q3inを算出するとともに、第4ストレーナー部(図示省略)以深からの揚水量Q4(Q4=Q−Q1in−Q2in−Q3in)を算出する。
【0059】
このように、本実施形態によれば、同じ計算原理に基づく計算を繰り返し実行することによって、ストレーナー部34a〜34cから井戸孔22へ流入する揚水量Q1in〜Q3inをストレーナー部ごとに個別に算出することができ、ストレーナー部34a〜34cのそれぞれの揚水量を個別に調査することができる。
したがって、本実施形態と従来の集水能力評価方法とを併用すれば、揚水ポンプ40の揚水量Qを「適正揚水量」または「最大可能揚水量」に合わせることによって、「適正揚水量」または「最大可能揚水量」での揚水時における揚水量Q1in〜Q3inをストレーナー部ごとに個別に把握することができる。
【0060】
(第2実施形態)
第2実施形態に係る「井戸揚水量調査方法」は、図3および図4に示すような「水温t1と揚水量Q1in,Q2との相関関係」を利用して、水温t1に基づいて揚水量Q1in,Q2を求めるようにしたものであり、第1実施形態に係る「井戸揚水量調査方法」と併用することによって、調査の利便性を高めることができる。
【0061】
つまり、揚水ポンプ40の揚水量Qを固定した状態において、第1ストレーナー部34aの上端部の水温t1が変化すると、上記[式1]に基づいて、揚水量Q1in,Q2が変化する。図3の「表」は、水温t1が変化したときの揚水量Q1in,Q2を示したものであり、この「表」に記載された水温t1と揚水量Q1in,Q2とをグラフ上にプロットすると、図4に示すように、これらの関係は「比例直線」として表れる。したがって、水温に関するデータのうち水温t1だけが変動する場合には、変動後の揚水量Q1in,Q2を当該「比例直線」に基づいて簡単に求めることができ、また、揚水量Q1in,Q2の変化を当該「比例直線」に基づいて簡単に予測することができる。
【0062】
(第3実施形態)
第3実施形態に係る「井戸揚水量調査方法」は、図5および図6に示すような「水温t3と揚水量Q2in,Q3との相関関係」を利用して、水温t3に基づいて揚水量Q2in,Q3を求めるようにしたものであり、第1実施形態に係る「井戸揚水量調査方法」と併用することによって、調査の利便性を高めることができる。
【0063】
つまり、揚水量Q2(Q2=Q−Q1in)を固定した状態において、第3ストレーナー部34cの上端部の水温t3が変化すると、上記[式3]に基づいて、揚水量Q2in,Q3が変化する。図5の「表」は、水温t3が変化したときの揚水量Q2in,Q3を示したものであり、「表」に記載された水温t3と揚水量Q2in,Q3とをグラフ上にプロットすると、図6に示すように、これらの関係は「水温t3が高くなるにつれて揚水量Q2in,Q3の変化量が小さくなる曲線」として表れる。したがって、水温に関するデータのうち水温t3だけが変動する場合には、変動後の揚水量Q2in,Q3を当該「曲線」に基づいて簡単に求めることができ、また、揚水量Q2in,Q3の変化を当該「曲線」に基づいて簡単に予測することができる。
【符号の説明】
【0064】
10… 井戸揚水量調査システム
12… 地盤
14… 揚水井戸
16… 表面層
18a〜18c… 帯水層
20a〜20c… 不透水層
22… 井戸孔
24a〜24c… ケーシング管
26a〜26c… ストレーナー管
30a〜30c… 本体部
32a〜32c… 取水口
34a〜34c… ストレーナー部
40… 揚水ポンプ
40a… 吸入口
40b… 吐出口
42… 揚水量測定装置
44… 光ファイバ温度計
46… 演算装置
48… 制御装置
50… 通水管
52… 光ファイバセンサケーブル
54… 金属管
58… レーザー光源
60… 回路基板
62… 記憶装置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1帯水層と前記第1帯水層よりも下方に存在する第1不透水層と前記第1不透水層よりも下方に存在する第2帯水層とに亘って掘削された井戸孔と、前記井戸孔の内面の前記第1帯水層に対応する領域に配設され、かつ、前記第1帯水層から前記井戸孔へ地下水を取り込む第1ストレーナー部と、前記井戸孔の内面の前記第2帯水層に対応する領域に配設され、かつ、前記第2帯水層から前記井戸孔へ地下水を取り込む第2ストレーナー部とを備える揚水井戸について、ストレーナー部ごとの揚水量を調査する井戸揚水量調査システムであって、
前記井戸孔の内部における前記第1ストレーナー部よりも上方の領域に配置された吸入口を有し、前記井戸孔の内部の水を揚水する揚水ポンプと、
前記第1ストレーナー部の上下方向中央部に存在する井戸孔内の水の初期水温を検知する第1水温検知手段と、
前記第1ストレーナー部の上端部に存在する井戸孔内の水の揚水時の水温を検知する第2水温検知手段と、
前記第2ストレーナー部の上端部に存在する井戸孔内の水の揚水時の水温を検知する第3水温検知手段と、
入力されたデータに基づいて演算処理を実行する演算装置とを備え、
前記演算装置は、前記第1ストレーナー部からの揚水量Q1inを以下の式に基づいて算出する、井戸揚水量調査システム。
dT1=0.5*c1*L1
dT2=c12*D12+c1*L1
T1=t01−dT1
T2=t2−dT2
DT1=T2−T1
Q1in=Q*(t1−T1)/DT1
Q1in :第1ストレーナー部からの揚水量(ton/hour)
Q :揚水ポンプの揚水量(ton/hour)
t01 :第1水温検知手段による検知温度(℃)
t1 :第2水温検知手段による検知温度(℃)
t2 :第3水温検知手段による検知温度(℃)
L1 :第1ストレーナー部の上下方向長さ(m)
D12 :第1ストレーナー部と第2ストレーナー部との距離(m)
c1 :第1ストレーナー部における井戸孔内の水の揚水時の温度低減係数(℃/m)
c12 :第1ストレーナー部と第2ストレーナー部との間の領域における井戸孔内の水の揚水時の温度低減係数(℃/m)
【請求項2】
前記井戸孔は、さらに前記第2帯水層よりも下方に存在する第2不透水層と前記第2不透水層よりも下方に存在する第3帯水層とに亘って掘削されており、前記井戸孔の内面の前記第3帯水層に対応する領域には、前記第3帯水層から前記井戸孔へ地下水を取り込む第3ストレーナー部が配設されており、
前記第2ストレーナー部の上下方向中央部に存在する井戸孔内の水の初期水温を検知する第4水温検知手段と、前記第3ストレーナー部の上端部に存在する井戸孔内の水の揚水時の水温を検知する第5水温検知手段とをさらに備えており、
前記演算装置は、前記第2ストレーナー部からの揚水量Q2inを以下の式に基づいて算出する、請求項1に記載の井戸揚水量調査システム。
dT3=0.5*c2*L2
dT4=c23*D23+c2*L2
T3=t02−dT3
T4=t3−dT4
DT2=T4−T3
Q2in=(Q−Q1in)*(t2−T3)/DT2
Q2in :第2ストレーナー部からの揚水量(ton/hour)
Q :揚水ポンプの揚水量(ton/hour)
Q1in :第1ストレーナー部からの揚水量(ton/hour)
t02 :第4水温検知手段による検知温度(℃)
t2 :第3水温検知手段による検知温度(℃)
t3 :第5水温検知手段による検知温度(℃)
L2 :第2ストレーナー部の上下方向長さ(m)
D23 :第2ストレーナー部と第3ストレーナー部との距離(m)
c2 :第2ストレーナー部における井戸孔内の水の揚水時の温度低減係数(℃/m)
c23 :第2ストレーナー部と第3ストレーナー部との間の領域における井戸孔内の水の揚水時の温度低減係数(℃/m)
【請求項3】
前記第1ストレーナー部と前記第2ストレーナー部との間の第1不透水領域に位置する第1測定点に存在する井戸孔内の水の揚水時の水温を検知する第6水温検知手段と、前記第1不透水領域における前記第1測定点よりも下方に位置する第2測定点に存在する井戸孔内の水の揚水時の水温を検知する第7水温検知手段とをさらに備え、
前記演算装置は、前記第1不透水領域における井戸孔内の水の揚水時の温度低減係数c12を以下の式に基づいて算出する、請求項1または2に記載の井戸揚水量調査システム。
c12=(tb1−ta1)/d1
c12 :第1不透水領域における井戸孔内の水の揚水時の温度低減係数
ta1 :第6水温検知手段による検知温度(℃)
tb1 :第7水温検知手段による検知温度(℃)
d1 :第1測定点と第2測定点との距離(m)
【請求項4】
少なくとも、前記第2水温検知手段および前記第3水温検知手段は、前記井戸孔の内部に配設された光ファイバセンサケーブルを有する光ファイバ温度計によって実現されている、請求項1ないし3のいずれかに記載の井戸揚水量調査システム。
【請求項5】
第1帯水層と前記第1帯水層よりも下方に存在する第1不透水層と前記第1不透水層よりも下方に存在する第2帯水層とに亘って掘削された井戸孔と、前記井戸孔の内面の前記第1帯水層に対応する領域に配設され、かつ、前記第1帯水層から前記井戸孔へ地下水を取り込む第1ストレーナー部と、前記井戸孔の内面の前記第2帯水層に対応する領域に配設され、かつ、前記第2帯水層から前記井戸孔へ地下水を取り込む第2ストレーナー部とを備える揚水井戸について、ストレーナー部ごとの揚水量を調査する井戸揚水量調査方法であって、
(a)前記第1ストレーナー部の上下方向中央部に存在する井戸孔内の水の初期水温t01を検出し、
(b)前記井戸孔の内部における前記第1ストレーナー部よりも上方の領域から所定の揚水量Qで揚水し、
(c)前記第1ストレーナー部の上端部に存在する井戸孔内の水の揚水時の水温t1と、前記第2ストレーナー部の上端部に存在する井戸孔内の水の揚水時の水温t2とを検出し、
(d)前記第1ストレーナー部からの揚水量Q1inを以下の式に基づいて算出する、井戸揚水量調査方法。
dT1=0.5*c1*L1
dT2=c12*D12+c1*L1
T1=t01−dT1
T2=t2−dT2
DT1=T2−T1
Q1in=Q*(t1−T1)/DT1
Q1in :第1ストレーナー部からの揚水量(ton/hour)
Q :揚水量(ton/hour)
t01 :第1ストレーナー部の上下方向中央部に存在する井戸孔内の水の初期水温(℃)
t1 :第1ストレーナー部の上端部に存在する井戸孔内の水の揚水時の水温(℃)
t2 :第2ストレーナー部の上端部に存在する井戸孔内の水の揚水時の水温(℃)
L1 :第1ストレーナー部の上下方向長さ(m)
D12 :第1ストレーナー部と第2ストレーナー部との距離(m)
c1 :第1ストレーナー部における井戸孔内の水の揚水時の温度低減係数(℃/m)
c12 :第1ストレーナー部と第2ストレーナー部との間の領域における井戸孔内の水の揚水時の温度低減係数(℃/m)
【請求項6】
前記井戸孔は、さらに前記第2帯水層よりも下方に存在する第2不透水層と前記第2不透水層よりも下方に存在する第3帯水層とに亘って掘削されており、前記井戸孔の内面の前記第3帯水層に対応する領域には、前記第3帯水層から前記井戸孔へ地下水を取り込む第3ストレーナー部が配設されており、
前記(a)工程では、前記第2ストレーナー部の上下方向中央部に存在する井戸孔内の水の初期水温t02を検出し、
前記(c)工程では、前記第3ストレーナー部の上端部に存在する井戸孔内の水の揚水時の水温t3を検出し、
前記(d)工程より後に、(e)前記第2ストレーナー部からの揚水量Q2inを以下の式に基づいて算出する、請求項5に記載の井戸揚水量調査方法。
dT3=0.5*c2*L2
dT4=c23*D23+c2*L2
T3=t02−dT3
T4=t3−dT4
DT2=T4−T3
Q2in=(Q−Q1in)*(t2−T3)/DT2
Q2in :第2ストレーナー部からの揚水量(ton/hour)
Q :揚水ポンプの揚水量(ton/hour)
Q1in :第1ストレーナー部からの揚水量(ton/hour)
t02 :第2ストレーナー部の上下方向中央部に存在する井戸孔内の水の初期水温(℃)
t2 :第2ストレーナー部の上端部に存在する井戸孔内の水の揚水時の水温(℃)
t3 :第3ストレーナー部の上端部に存在する井戸孔内の水の揚水時の水温(℃)
L2 :第2ストレーナー部の上下方向長さ(m)
D23 :第2ストレーナー部と第3ストレーナー部との距離(m)
c2 :第2ストレーナー部における井戸孔内の水の揚水時の温度低減係数(℃/m)
c23 :第2ストレーナー部と第3ストレーナー部との間の領域における井戸孔内の水の揚水時の温度低減係数(℃/m)

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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