説明

亜鉛ハロゲン化物の割合が低減されている水銀フリー高圧放電ランプ

本発明は、キセノンと、ナトリウム、スカンジウム及び亜鉛のハロゲン化物とを少なくとも含んでいる、水銀フリーの充填物として構成されている、ガス放電を生じさせるための充填物と電極(11,12)とが封入されている放電空間(106)を有する、気密に閉じられた放電容器(10)を備えている車両ヘッドライト用の高圧放電ランプに関する。充填物は、放電空間体積の1cm3当たり0mgから1mgの範囲の割合で亜鉛ハロゲン化物を有しており、放電容器(10)の放電空間(106)内に存在するハロゲン化物の量は放電空間体積の1cm3当たり8mgから15mgの範囲にあり、キセノンの低温充填圧力は1.0MPaから1.8MPaの範囲にあり、且つ、放電容器(10)の放電空間(106)の体積は0.015cm3から0.022cm3の範囲の値を有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は請求項1の上位概念に記載されている高圧放電ランプに関する。
【0002】
I.従来技術
その種の高圧放電ランプは、例えばEP 1 351 276 A2に開示されている。この刊行物には、亜鉛ヨウ化物の割合が放電容器体積の1cm3当たり2mgから6mgの範囲にある、水銀フリーの充填物を有する車両ヘッドライト用の高圧放電ランプが開示されている。
【0003】
刊行物US 7,126,281 B1には、約35Wの消費電力を有し、且つ、キセノンと金属としてのナトリウム、スカンジウム、インジウム及び亜鉛のハロゲン化物とを含有している、水銀フリーの充填物を有する車両ヘッドライト用の高圧放電ランプが開示されている。
【0004】
充填物の亜鉛成分は以前に使用されていた水銀に代わるものであり、また、高圧放電ランプのいわゆるランプ電圧の調整に必要とされる。ランプ電圧という概念は、高圧放電ランプの点弧フェーズ及び始動フェーズが終了し、且つ、全ての充填物成分が気体の状態で存在している、ほぼ安定した動作状態に達した後の高圧放電ランプの動作電圧を表している。しかしながら、充填物に亜鉛成分を使用することは、高圧放電ランプによって生成される光束が充填物における亜鉛の割合が増加するにつれ低下するという欠点を有している。
【0005】
II.発明の開示
本発明の課題は、前述の欠点を有していない、冒頭で述べたような高圧放電ランプを提供することである。特に、上述の従来技術に比べて消費電力が低減されており、同等のランプ電圧を有しており、また、車両ヘッドライトにおいて光源として使用するには十分に高い光束を生成する、水銀フリーの充填物を有する高圧放電ランプが提供されるべきである。
【0006】
この課題は、本発明によれば、請求項1の特徴部分に記載された構成を備えた高圧放電ランプによって解決される。本発明の殊に有利な実施の形態は従属請求項に記載されている。
【0007】
本発明に係る高圧放電ランプは、車両のフロントヘッドライトにおける光源として設けられており、また、電極とガス放電を形成するための充填物とが封入されている、放電空間を備えた気密に閉じられている放電容器を有している。充填物は、ナトリウム、スカンジウム及び亜鉛のハロゲン化物とキセノンとを少なくとも含有している水銀フリーの充填物として構成されている。本発明によれば、充填物は、亜鉛の割合が低減された充填物として、又は、亜鉛ハロゲン化物の割合が放電空間体積の1cm3当たり0mgから1.0mgの範囲にある亜鉛フリーの充填物として構成されており、放電空間内のハロゲン化物の量は放電空間体積の1cm3当たり8mgから15mgの範囲にあり、キセノンの低温充填圧力(即ち25℃の温度で測定された放電空間内のキセノンの圧力)は1.0MPaから1.8MPaの範囲にあり、且つ、放電空間の体積は0.015cm3から0.022cm3の範囲にある。水銀フリーの充填物の概念は、放電容器の放電空間内に水銀も水銀化合物も封入されていないことを意味する。
【0008】
本発明によれば、上記の特徴によって、同等のランプ電圧において従来技術による高圧放電ランプに比べて消費電力が低減されており、且つ、十分に高い光束を生成するので、車両のフロントヘッドライトにおける光源に適している、高圧放電ランプが実現される。特に、充填物内の亜鉛及び亜鉛のハロゲン化物の低減によって、高い光束を達成することができる。キセノンの比較的高い充填圧力は、放電空間の小さい体積及び金属ハロゲン化物のドーピングと共に、高圧放電ランプの十分に高いランプ電圧に寄与するので、本発明に係る高圧放電ランプのランプ電圧の調整を目的として、充填物に水銀又は水銀化合物を添加することを省略することができる。
【0009】
有利には、高圧放電ランプの十分に高いランプ電圧及び光束を補償するために、充填物における亜鉛ハロゲン化物の割合は放電空間体積の1cm3当たり0mgよりも大きく、また有利には、放電空間体積の1cm3当たり0.1mgから1.0mgの範囲にある。図3には、放電空間内のハロゲン化物量における亜鉛ハロゲン化物の割合(単位重量%)と、高圧放電ランプの光束(曲線1)並びに高圧放電ランプのランプ電圧(曲線2)との関係が概略的に示されている。横軸には、充填物内のハロゲン化物の総量に関連付けられた亜鉛ハロゲン化物の割合が重量%の単位でプロットされている。縦軸には、一方では(図3の左側)高圧放電ランプの光束がルーメンの単位でプロットされており、他方では(図3の右側)高圧放電ランプのランプ電圧がボルトの単位でプロットされている。曲線1(実線)は高圧放電ランプの光束と充填物内の亜鉛ハロゲン化物の関係を示しており、これに対し曲線2(破線)は高圧放電ランプのランプ電圧と充填物内の亜鉛ハロゲン化物の関係を示している。曲線1及び曲線2からは、亜鉛ハロゲン化物の割合が増加するにつれ、高圧放電ランプのランプ電圧が上昇し、光束が低下することがはっきりと見て取れる。
【0010】
有利には、本発明に係る高圧放電ランプの充填物は更にインジウムハロゲン化物を含有しており、充填物内のインジウムハロゲン化物の割合はハロゲン化物の総量の3.0重量%以下であり、従って充填物内のナトリウムハロゲン化物及びスカンジウムハロゲン化物の割合よりも遥かに少ない。充填物内の僅かな割合のインジウムハロゲン化物は、CIE1931及びDIN5033に準拠する標準表色系における、高圧放電ランプから放出される白色光の色度座標の調整に使用される。充填物内の比較的少ない割合のインジウムハロゲン化物を用いることにより、本発明に係る高圧放電ランプが規格ECE規則99に準拠する白色光を形成することが保証されている。インジウムハロゲン化物の割合が比較的多い場合には、高圧放電ランプの光束に悪影響が及ぼされる虞がある。
【0011】
有利には、4000Kから4500Kの範囲にある色温度を有する、規格ECE規則99に準拠する白色光を形成するために、充填物内のナトリウムハロゲン化物の割合はハロゲン化物の総量の30重量%から50重量%の範囲にあり、且つ、充填物内のスカンジウムハロゲン化物の割合はハロゲン化物の総量の30重量%から60重量%の範囲にある。付加的に、本発明に係る高圧放電ランプの充填物はランプ電圧の調整を目的としてツリウム、例えばツリウムハロゲン化物の形態のツリウムを含有しており、ツリウムハロゲン化物の割合はハロゲン化物の10重量%から30重量%までの範囲にあることが考えられる。ここでのツリウムの作用は亜鉛の作用に類似するもの、即ち、ランプ電圧の上昇、ツリウムの割合の増加に伴う光束の低下であるが、亜鉛の場合ほど大きくはない。
【0012】
有利には、充填物内の亜鉛ハロゲン化物の割合はハロゲン化物の総量に関して6重量%以下である。これによって、亜鉛の添加により光束が過度に小さくなることなく、十分に高いランプ電圧(40V)を生じさせることができる。
【0013】
本発明に係る高圧放電ランプの放電容器は、有利には、放電空間の領域において楕円状の外輪郭を有しており、且つ、電極間の領域において円筒状の内輪郭を有しており、放電容器の壁厚の比率については以下の関係
1.0≦D1/D2≦1.4
が成り立ち、それどころか有利には以下の関係
1.2≦D1/D2≦1.3
が成り立ち、ここでD1は電極間の領域における放電容器の壁厚であり、D2は内部に電極が配置されている放電空間の端部区間における放電容器の壁厚を表す。
【0014】
上記の壁厚の比率に基づき、本発明に係る高圧放電ランプの放電容器は、従来技術による高圧放電ランプの放電容器よりも小さい凸状の湾曲部を有している。従って本発明に係る高圧放電ランプにおいては、従来技術による高圧放電ランプにおける電極間隔に比べて大きい(レントゲン撮影により測定された)実際の電極間隔を用いて、ECE規則99に準拠する、例えば車両ヘッドライトランプに関して指示されている光学的な、又は光学的に作用する4.2mmの電極間隔を達成することができる。例えば、従来技術による高圧放電ランプにおける実際の電極間隔は3.6mmであり、これに対し本発明に係る高圧放電ランプにおける実際の電極間隔は有利には3.8mmから4.0mmの範囲にある。比較的大きい電極間隔は、同様に、本発明に係る高圧放電ランプの比較的高いランプ電圧に寄与するので、この理由からも亜鉛成分の量が低減されているにもかかわらず、また、充填物において水銀が省略されているにもかかわらず、十分に高いランプ電圧を達成することができる。
【0015】
有利には、放電容器は電極間の領域において2.0mmから2.7mmの範囲、特に有利には2.1mmから2.4mmの内径と、5.0mmから6.0mmの範囲、特に有利には5.3mmから5.7mmの外径とを有している。これによって、放電容器は電極間の領域において比較的厚い壁厚を有しており、そのような厚い壁厚は、亀裂に対する改善された保護及び放電容器の良好な熱絶縁に寄与する。
【0016】
本発明に係る高圧放電ランプの電極は、電極の高い電流負荷能力を保証するために、有利にはロッド状に構成されており、且つ、有利には0.20mmから0.30の範囲、特に有利には0.25mmから0.27mmの範囲にある直径を有しているので、本発明に係る高圧放電ランプは、点弧フェーズの直後に続き、且つ、充填物のハロゲン化物が蒸発する始動フェーズの間に定格出力の3倍から5倍の値で動作することができ、これによって高圧放電ランプのほぼ安定した動作状態への可能な限り迅速な移行を達成することができる。
【0017】
上記において既に述べたように、本発明に係る高圧放電ランプの充填物におけるキセノンの低温充填圧力は1.0MPaから1.8MPaの範囲にある。もっとも1.5MPaから1.7MPaの範囲が特に有利である。何故ならば、比較的高いキセノン圧力によって、本発明に係る高圧放電ランプのランプ電圧を高めることができ、また、高いキセノン圧力によって高圧放電ランプの点弧直後に既に白色光を形成できるからである。
【0018】
上述のように、本発明に係る高圧放電ランプの放電容器の内部空間におけるハロゲン化物の量は放電空間体積の1cm3当たり8mgから15mgの範囲にあり、且つ、放電空間体積は0.015cm3から0.022cm3の範囲の値を有している。特に有利には、本発明に係る高圧放電ランプのほぼ安定した動作状態において22Wから28Wの範囲にある消費電力を実現するために、本発明に係る高圧放電ランプについてハロゲン化物の量は放電空間の1cm3当たり10mgから14mgの範囲にあり、且つ、放電空間体積は0.016cm3から0.019cm3の範囲にある。
【0019】
ヘッドライトウォッシャーを有していない車両ヘッドライトに本発明に係る高圧放電ランプを使用できるようにするために、本発明に係る高圧放電ランプがその動作中に2000lm以下の光束を形成するように本発明に係る高圧放電ランプを構成することができる。
【0020】
III.有利な実施例の説明
以下では、本発明を有利な実施例に基づいて詳細に説明する。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】本発明の有利な実施例による高圧放電ランプの概略的な断面図を示す。
【図2】図1に示した高圧放電ランプの放電容器の放電空間を拡大した概略的な部分図を示す。
【図3】高圧放電ランプの光束及びランプ電圧と充填物内の亜鉛ハロゲン化物の割合との関係を示す。
【0022】
本発明の有利な実施例は、25Wの消費電力を有する、水銀フリーのハロゲン金属蒸気高圧放電ランプである。このランプは車両フロントヘッドライトに使用するために設けられている。ランプは両側が密閉されている放電容器10を有しており、この放電容器10は石英から成り、体積17mm3の放電空間106を有しており、また内部にはイオン化可能な充填物が気密に封入されている。放電空間106の領域において放電容器10の外輪郭は楕円状に構成されており、且つ、電極11,12間の領域において放電容器の内輪郭は円筒状に構成されている(図2を参照されたい)。従って、放電容器10の壁は放電空間106の領域において凸状に湾曲されており、電極11,12間では、その電極11,12が内部に配置されている放電空間106の二つの端部における壁厚よりも厚い壁厚を有している。壁厚D1/D2の比率は1.2から1.3の範囲にある。即ち、以下の関係
1.2≦D1/D2≦1.3
が成り立つ。ここで、D1は電極11,12間の領域における放電容器10の壁厚を表し、D2は内部に電極11,12が配置されている放電空間106の端部区間における放電容器10の壁厚を表す。
【0023】
放電空間106の中央においては、放電容器の内径は2.2mmであり、外径は5.5mmである。放電容器10の二つの端部101,102はそれぞれ、モリブデン箔溶融封止部103,104を用いてシーリングされている。モリブデン箔103,104はそれぞれ7.5mmの長さ、2mmの幅及び25μmの厚さを有している。放電容器10の内部空間には二つの電極11,12が設けられており、それら電極11,12の間ではランプの動作中に放電アークが生じ、それにより光が放出される。電極11,12はタングステンから構成されている。電極の厚さ又は直径は0.26mmである。電極11,12の長さはそれぞれ6.5mmである。電極11,12間の実際の間隔、即ちレントゲン撮影により測定された間隔は3.7mmであり、他方では、電極11,12間の光学的な間隔又は光学的に作用する間隔は約3.9mmである。電極11,12の実際の間隔と光学的な間隔とのこの差は、放電空間106の領域における放電容器10の壁の光学的な特性(例えば凸状の湾曲部及び光学的な屈折率)に起因する。電極11、12はそれぞれモリブデン箔溶融封止部103,104を介して、及び、ソケット側とは反対側の電流供給部13及び電流帰還部17を介して、又は、ソケット側の電流供給部14を介して、実質的にプラスチックから構成されているランプソケット15の電気的な端子と導電的に接続されている。放電容器10はガラス製の外管16によって包囲されている。外管16はソケット15内に固定されている延長部161を有している。放電容器10はソケット側に石英から成る管状の伸長部105を有しており、この伸長部105内にソケット側の電流供給部14が延在している。
【0024】
放電容器10において電流帰還部17と対向している表面領域には、光不透過性の導電性コーティング部107が設けられている。このコーティング部107はランプの長手方向において、放電空間106の全長及び放電容器10のシーリングされている端部101,102の長さの一部、約50%にわたり延びている。コーティング部107は放電容器10の外面に設けられており、放電容器10の周囲の約5%から10%にわたり延びている。しかしながらコーティング部107が放電容器10の周囲の50%以上、又はそれどころか放電容器の周囲の50%超にわたり延びていても良い。コーティング部107のその種の幅の実施の形態は、コーティング部107が高圧放電ランプの効率を高めるという利点を有している。何故ならば、コーティング部107は放電によって生じる赤外線放射の一部を放電容器へと反射させ、これによってランプ動作中に、イオン化可能な充填物の金属ハロゲン化物が集中する、電極の下方にある放電容器10の比較的冷たい領域が選択的に加熱されるからである。コーティング部107はドーピングされたスズ酸化物、例えばフッ素又はアンチモンでドーピングされたスズ酸化物、もしくは、例えばホウ素及び/又はリチウムでドーピングされたスズ酸化物から構成されている。この高圧放電ランプは水平な姿勢で動作され、即ち高圧放電ランプは水平な平面に配置された電極11,12を有しており、電流帰還部17が放電容器30及び外管16の下方に延在するようにランプは配向されている。点弧補助部として機能するこのコーティング部107の詳細はEP 1 632 985 A1に記載されている。外管16は、紫外線放射を吸収する材料、例えばセリウム酸化物及びチタン酸化物でドーピングされている石英から構成されている。外管ガラスに適したガラス組成はEP 0 700 579 B1に開示されている。
【0025】
放電容器内に封入されている充填物は、1.6MPaの低温充填圧力、即ち25℃の温度で測定された充填圧力を有するキセノンと、ナトリウム、スカンジウム及びインジウムのヨウ化物とから構成されている。ランプのランプ温度は約40Vである。ランプの色温度は約4500Kである。充填物における金属としてのナトリウム、スカンジウム、亜鉛及びインジウムのハロゲン化物又はヨウ化物の総量は13.83mg/cm3、即ち放電空間体積の1立方センチメートル当たり13.83ミリグラムであり、金属としてのナトリウム、スカンジウム、亜鉛及びインジウムのヨウ化物の重量の割合はハロゲン化物の総量に関して以下の通りである:
ナトリウムヨウ化物:43.4重量%、6mg/cm3の充填量に相当
スカンジウムヨウ化物:50.6重量%、7mg/cm3の充填量に相当
亜鉛ヨウ化物:5.8重量%、0.8mg/cm3の充填量に相当
インジウムヨウ化物:0.2重量%、0.03mg/cm3の充填量に相当
【0026】
これは2.5:1のモルナトリウム対スカンジウムの比に相当する。ハロゲン金属蒸気高圧放電ランプの演色評価数は65であり、その光効率は90lm/Wである。壁負荷は約80W/cm2である。高圧放電ランプは2000lm以下の光束を形成し、従って、例えばデイドライビングライト、フォグライト又はロングビームを形成するために、ヘッドライトウォッシャーを有していない車両ヘッドライトにおいて動作することができる。
【0027】
本発明に係るハロゲン金属蒸気高圧放電ランプは、放電容器におけるガス放電の点弧直後に、イオン化可能な充填物における金属ハロゲン化物の迅速な蒸発を保証するために、3倍から5倍の定格出力又は定格電流でもって駆動される。ガス放電の点弧直後に、ガス放電はほぼ専らキセノンによって行われる。何故ならば、この時点においてはキセノンのみが気体状で放電容器に存在するからである。従って高圧放電ランプはこの時点において、また、イオン化可能な充填物の金属ハロゲン化物が蒸発フェーズに移行する、いわゆる始動フェーズ中はキセノン高圧放電ランプのように動作し、光放射も放電の電気的な特性、特に放電区間にわたる電圧降下もキセノン及び電極間隔によってのみ決定される。イオン化可能な充填物の上記のヨウ化物が蒸発しており、このヨウ化物が放電に関与したときに初めて、ランプが25Wの定格出力及び40Vの動作電圧で動作する、ランプのほぼ安定した動作状態が達成されている。従って、動作電圧の概念はほぼ安定した動作時の高圧放電ランプの動作電圧を表している。
【0028】
本発明は上記において詳細に説明した実施例に限定されるものではない。例えば、充填物は金属としてのナトリウム、スカンジウム及びインジウムのヨウ化物の他にツリウムヨウ化物も含むことができる。更には、前述の金属のヨウ化物の代わりに、又はそれらの金属のヨウ化物の他に、別のハロゲン化物、例えばそれらの金属の臭化物又は塩化物も充填物に使用することができる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
キセノンと、ナトリウム、スカンジウム及び亜鉛のハロゲン化物とを少なくとも含んでいる、水銀フリーの充填物として構成されている、ガス放電を生じさせるための充填物と電極(11,12)とが封入されている放電空間(106)を有する、気密に閉じられた放電容器(10)を備えている車両ヘッドライト用の高圧放電ランプにおいて、
前記充填物は、放電空間体積の1cm3当たり0mgから1mgの範囲の割合で亜鉛ハロゲン化物を含んでおり、前記放電容器(10)の前記放電空間(106)内に存在する前記ハロゲン化物の量は放電空間体積の1cm3当たり8mgから15mgの範囲にあり、
前記キセノンの低温充填圧力は1.0MPaから1.8MPaの範囲にあり、且つ、
前記放電容器(10)の前記放電空間(106)の体積は0.015cm3から0.022cm3の範囲の値を有することを特徴とする、高圧放電ランプ。
【請求項2】
前記亜鉛ハロゲン化物の割合は前記放電空間体積の1cm3当たり0mgより多く、有利には、前記放電空間体積の1cm3当たり0.1mgから1.0mgの範囲にある、請求項1に記載の高圧放電ランプ。
【請求項3】
前記充填物は更にインジウムハロゲン化物を含んでおり、該インジウムハロゲン化物の前記充填物における割合はハロゲン化物の量の3.0重量%以下である、請求項1又は2に記載の高圧放電ランプ。
【請求項4】
前記充填物におけるナトリウムハロゲン化物の割合はハロゲン化物の総量の30重量%から50重量%の範囲にある、請求項1乃至3のいずれか一項に記載の高圧放電ランプ。
【請求項5】
前記充填物におけるスカンジウムハロゲン化物の割合はハロゲン化物の総量の30重量%から60重量%の範囲にある、請求項1乃至4のいずれか一項に記載の高圧放電ランプ。
【請求項6】
前記充填物は更にツリウムハロゲン化物を含んでおり、該ツリウムハロゲン化物の前記充填物における割合はハロゲン化物の総量の10重量%から30重量%の範囲にある、請求項1乃至5のいずれか一項に記載の高圧放電ランプ。
【請求項7】
前記放電容器(10)は前記放電空間(106)の範囲において楕円状の外輪郭を有しており、且つ、前記電極(11,12)間の領域において円筒状の内輪郭を有しており、
前記放電容器(10)の壁厚の比率については以下の関係、即ち、
1.0≦D1/D2≦1.4
が成り立ち、ここでD1は前記電極間の領域における前記放電容器(10)の壁厚で表し、D2は前記電極(11,12)が内部に配置されている前記放電空間(106)の端部区間における前記放電容器(10)の壁厚を表す、請求項1乃至6のいずれか一項に記載の高圧放電ランプ。
【請求項8】
前記放電容器(10)の前記壁厚に関して以下の関係、即ち、
1.2≦D1/D2≦1.3
が成り立つ、請求項7に記載の高圧放電ランプ。
【請求項9】
前記放電容器(10)は、前記電極(11,12)間の領域において2.0mmから2.7mmの範囲にある内径を有しており、且つ、5.0mmから6.0mmの範囲にある外径を有している、請求項7又は8に記載の高圧放電ランプ。
【請求項10】
前記放電容器(10)は、前記電極(11,12)間の領域において2.1mmから2.4mmの範囲にある内径を有しており、且つ、5.3mmから5.7mmの範囲にある外径を有している、請求項9に記載の高圧放電ランプ。
【請求項11】
前記電極(11,12)はロッド状に構成されており、0.20mmから0.30mmの範囲、有利には0.25mmから0.27mmの範囲の直径をそれぞれ有している、請求項1乃至10のいずれか一項に記載の高圧放電ランプ。
【請求項12】
前記放電容器(10)の前記放電空間(106)内のハロゲン化物の量は、前記放電空間体積の1cm3当たり10mgから14mgの範囲にある、請求項1乃至11のいずれか一項に記載の高圧放電ランプ。
【請求項13】
前記キセノンの低温充填圧力は1.6MPaから1.8MPaの範囲にある、請求項1乃至12のいずれか一項に記載の高圧放電ランプ。
【請求項14】
前記放電容器(10)の前記放電空間(106)の体積は0.016cm3から0.019cm3の範囲の値を有する、請求項1乃至13のいずれか一項に記載の高圧放電ランプ。
【請求項15】
前記高圧放電ランプは22Wから28Wの範囲の消費電力のために構成されている、請求項1乃至14のいずれか一項に記載の高圧放電ランプ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公表番号】特表2013−511117(P2013−511117A)
【公表日】平成25年3月28日(2013.3.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−538272(P2012−538272)
【出願日】平成22年10月29日(2010.10.29)
【国際出願番号】PCT/EP2010/066472
【国際公開番号】WO2011/057903
【国際公開日】平成23年5月19日(2011.5.19)
【出願人】(512288684)オスラム ゲーエムベーハー (28)
【氏名又は名称原語表記】OSRAM GmbH
【住所又は居所原語表記】Hellabrunner Str. 1, D−81543 Muenchen, Germany
【Fターム(参考)】