説明

亜鉛フタロシアニン顔料組成物及びその製造方法

【課題】 従来の亜鉛フタロシアニン顔料に比べて、より青味が強い着色物を得ることが出来る、着色剤として好適な亜鉛フタロシアニン顔料組成物及びそれの好適な製造方法を提供する。
【解決手段】 質量換算で亜鉛フタロシアニン顔料(A)100部当たりフタルイミドアルキル化金属フタロシアニン(B)0.1〜10部を含有する青色顔料組成物及び質量換算で亜鉛フタロシアニン100部当たりフタルイミドアルキル化金属フタロシアニン0.1〜10部含有する混合物を、ソルベントソルトミリングする工程を含む前記載の青色顔料組成物の製造方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、被着色物に混合分散させた際により青味が強い着色物を得ることが出来る、着色剤として好適な青色顔料組成物、それの好適な製造方法及び当該青色顔料組成物を着色剤としてより優れた色再現性が得られる静電荷像現像用トナーに関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、被着色物に混合分散させて青色着色物を得る際には、着色剤としてC.I.ピグメントブルー15:3、C.I.ピグメントブルー15:6に代表される銅フタロシアニン顔料が用いられている。これら銅フタロシアニン顔料は、比較的安価であることや耐久性に優れることから、印刷インキ、塗料、プラスチック成形品といった汎用分野は勿論、インクジェット記録用インク、カラーフィルタ画素、静電荷像現像用トナー等の先進用途を含め、多様な用途に活用されている。銅フタロシアニン顔料は歴史ある顔料であるため、目的とする用途において最適な性能が発現されるよう、様々な改良が行われてきている。
【0003】
しかしながら、最近、幾つかの末端用途における要求品質水準が著しく高まっており、銅フタロシアニン顔料をベースに改良を行ったのでは、その要求品質を満たせないことが顕在化してきている。そのため、銅フタロシアニン顔料に代わるフタロシアニン顔料として、(銅以外の中心金属を有する)異種金属フタロシアニン顔料が注目されてきている(特許文献1〜3参照。)。
【0004】
この特許文献1には、(銅以外の中心金属を有する)異種金属フタロシアニンを、有機液体の存在下において、水溶性結晶性無機塩と混練し、次いで水を加え、濾過し、洗浄して顔料を前記塩から分離し、次いで乾燥させる、異種金属フタロシアニン顔料の製造方法が提案されており、そこで得られた亜鉛フタロシアニン顔料やニッケルフタロシアニン顔料が、ポリ塩化ビニルシートの着色や、静電荷像現像用トナーの調製に用いられたことが記載されている。
【0005】
また、特許文献2〜3にも、亜鉛フタロシアニン顔料が、静電荷像現像用トナーを初めとした各種用途に使用できることが記載されている。
【0006】
しかしながら、上記した様な特許文献1〜3にある様な、従来の亜鉛フタロシアニン顔料は、L*a*b*表色系色度図上においては、色相が緑方向であるものの青味でないという欠点があった。このため、特に多色印刷が行なわれる静電荷像現像用トナーの分野においては、依然として目標色の画像形成が達成できないという欠点があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特表2003−506516公報
【特許文献2】特開2000−302792公報
【特許文献3】特開2000−302993公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明が解決しようとする課題は、従来の亜鉛フタロシアニン顔料に比べて、より青味が強い着色物を得ることが出来る、着色剤として好適な亜鉛フタロシアニン顔料組成物及びその好適な製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者らは、前記実状に鑑みて鋭意検討した結果、着色剤として、従来の上記した様な亜鉛フタロシアニン顔料をそれ単体で用いるのではなく、亜鉛フタロシアニン顔料とフタルイミドアルキル化金属フタロシアニンとを併用することで、より青味の強い着色物が得られることを見い出し、本発明を完成するに至った。
【0010】
即ち本発明は、質量換算で亜鉛フタロシアニン顔料(A)100部当たりフタルイミドアルキル化金属フタロシアニン(B)0.1〜10部を含有する青色顔料組成物を提供する。
【0011】
また、質量換算で亜鉛フタロシアニン100部当たりフタルイミドアルキル化金属フタロシアニン0.1〜10部含有する混合物を、ソルベントソルトミリングする工程を含む、亜鉛フタロシアニン顔料(A)とフタルイミドアルキル化金属フタロシアニン(B)とを含有する青色顔料組成物の製造方法を提供する。
【発明の効果】
【0012】
本発明の青色顔料組成物は、従来の亜鉛フタロシアニン顔料に加えて、フタルイミドアルキル化金属フタロシアニンを含むので、被着色物に混合分散させた際により青味が強い着色物を得ることが出来る、という格別顕著な技術的効果を奏する。
本発明の青色顔料組成物の製造方法は、亜鉛フタロシアニンとフタルイミドアルキル化金属フタロシアニンの混合物をソルベントソルトミリングするので、より微細な青色顔料組成物が簡便に得られ、被着色物に混合分散させた際に更に青味が強い着色物を得ることが出来る、という格別顕著な技術的効果を奏する。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明の詳細について説明する。
本発明は、亜鉛フタロシアニン顔料(A)とフタルイミドアルキル化金属フタロシアニン(B)とを含有する青色顔料組成物である。
【0014】
本発明における亜鉛フタロシアニン顔料(A)とは、銅フタロシアニン顔料の中心金属である銅が亜鉛にて置換された構造を有するフタロシアニン顔料である。各種の結晶型の亜鉛フタロシアニン顔料があるが、本発明では、より青味が強い着色物が得られる点で、β型のみまたはβ型が主成分である亜鉛フタロシアニン顔料を用いることが好ましい。
【0015】
亜鉛フタロシアニン自身は公知物質であり、例えば、フタロジニトリルと触媒とを有機溶媒中で、不活性ガス下で加熱撹拌し、そこに塩化亜鉛を加えて昇温することで製造できる。こうして得られた亜鉛フタロシアニンを含む反応混合物を濾過、洗浄、必要に応じて乾燥する等して粗製亜鉛フタロシアニンを得ることが出来る。亜鉛フタロシアニン顔料(B)は、粗製亜鉛フタロシアニンを湿式摩砕したり、乾式摩砕で得られた亜鉛フタロシアニンを湿式摩砕することで、容易に得ることができる。
【0016】
フタルイミドアルキル化金属フタロシアニン(B)とは、金属フタロシアニンの少なくとも一つのベンゼン環の少なくとも一つの水素原子がフタルイミドアルキル基で置換された化合物である。本発明においては、数あるフタロシアニン誘導体のうち、フタルイミドアルキル化金属フタロシアニンが選択的に、色味の改善効果が顕著であることを知見している。ここでフタルイミドアルキル基とは、以下に示す置換基を意味する。
【0017】
【化1】

【0018】
上記式中、メチレン結合の繰り返し単位数nは1〜3である。フタルイミドアルキル化金属フタロシアニンは、上記メチレン結合の繰り返し単位数nは1〜3の各単体であっても混合物であっても良い。
【0019】
フタルイミドアルキル化金属フタロシアニン(B)は、亜鉛フタロシアニン顔料(A)単体では不充分な青味を補う、本発明において不可欠な成分である。
【0020】
フタルイミドアルキル化金属フタロシアニン(B)としては、例えば分子中1〜6のフタルイミドアルキル基を含有するフタルイミドアルキル化金属フタロシアニンが挙げられる。
【0021】
この様なフタルイミドアルキル化金属フタロシアニン(B)としては、フタルイミドメチル化銅フタロシアニン、フタルイミドメチル化亜鉛フタロシアニン、フタルイミドエチル化ニッケルフタロシアニン、フタルイミドプロピル化コバルトフタロシアニン等の、中心金属が二価金属であるフタルイミドアルキル化金属フタロシアニンが挙げられるが、中でも分子中1〜3のフタルイミドアルキル基を含有する中心金属が二価金属のフタルイミドメチル化金属フタロシアニンが、本発明の好適な青色顔料組成物を調製する際の後記するソルベントソルトミリング時においては、結晶成長抑制などの結晶制御により優れた効果がある。
【0022】
フタルイミドアルキル化金属フタロシアニンとしては、分子中のフタルイミドアルキル基の置換数が異なる各フタルイミドアルキル化金属フタロシアニンの混合物であっても良い。この様な混合物としては、分子中のフタルイミドアルキル基の平均置換数1〜2のものが好適である。
【0023】
本発明の青色顔料組成物は、前記した亜鉛フタロシアニン顔料(A)とフタルイミドアルキル化金属フタロシアニン(B)とを混合することで調製することができるが、具体的には、質量換算で、亜鉛フタロシアニン顔料(A)100部当たりフタルイミドアルキル化金属フタロシアニン(B)0.1〜10部、なかでも0.5〜5部となる様にすることが、被着色物に混合分散させた際により青味が強い着色物を得ることが出来る点で好ましい。
【0024】
尚、本発明の青色顔料組成物には、前記した亜鉛フタロシアニン顔料(A)と、フタルイミドアルキル化金属フタロシアニン(B)とは異なる、その他のフタロシアニン誘導体を含有させることも出来る。この様なフタロシアニン誘導体としては、金属フタロシアニンスルホン酸、スルホンアミド化金属フタロシアニン、カルボキシベンズアミドアルキル化金属フタロシアニン、或いは前記した誘導体の金属塩、アンモニア塩やアミン塩等を用いることが出来る。
【0025】
亜鉛フタロシアニン顔料(A)とフタルイミドアルキル化金属フタロシアニン(B)と必要に応じて用いられるフタロシアニン誘導体は、いずれも同様の小粒子径や高純度のものを用いることが、精細で鮮明な記録画像を得やすく、ブリード等の着色物からの経時浸出が少なく、各種規制に対応できる等、最終的に得られる用途における要求性能を満たしやすくなる点で好ましい。
【0026】
本発明の青色顔料組成物の粒子径は特に制限されるものではないが、一次粒子の平均粒子径は10〜500nmであることが好ましく、なかでも、インクジェット記録用インク、静電荷像現像用トナー、カラーフィルタ画素の調製に用いた時に、精細かつ鮮明なものにできることから、一次粒子の平均粒子径は20〜100nmであることが特に好ましい。
【0027】
本発明において一次粒子の平均粒子径とは、次の様に測定される。まず、透過型電子顕微鏡または走査型電子顕微鏡で視野内の粒子を撮影する。そして、二次元画像上の、凝集体を構成する一次粒子の50個につき、個々の粒子の内径の最長の長さ(最大長)を求める。個々の粒子の最大長の平均値を一次粒子の平均粒子径とする。一方、粒子の最大長となる線に直交する様に無数に引くことの出来る仮想線のうち最短となる長さを最小長とし、これも50個につき求めることが出来る。
【0028】
尚、アスペクト比は、この様にして得られた個々の粒子の最大長の平均値と最小長の平均値を求め、これらの値を用いて(最大長の平均値)/(最小長の平均値)に基づいて算出する。本発明の青色顔料組成物のアスペクト比としては2.5以下、中でも1.5以下であることが好ましい。
【0029】
本発明の青色顔料組成物は、上記した亜鉛フタロシアニン顔料(A)とフタルイミドアルキル化金属フタロシアニン(B)とを混合することで調製することが出来るが、この様な各成分を単純に混合することにより調製するのに比べて、より微細な平均粒子径の青色顔料組成物が簡便に得られる点で、亜鉛フタロシアニンとフタルイミドアルキル化金属フタロシアニンとを必須成分として必要に応じてフタロシアニン誘導体をも含有する混合物を、ソルベントソルトミリングする工程を含む様にして青色顔料組成物を製造することが好ましい。
【0030】
このソルベントソルトミリングに当たっては、上記単純に混合する場合に用いる、亜鉛フタロシアニン顔料(A)やフタルイミドアルキル化金属フタロシアニン(B)の代わりに、粗製亜鉛フタロシアニンや粗製フタルイミドアルキル化金属フタロシアニンを用いることも出来る。
【0031】
本発明において、ソルベントソルトミリング(工程)とは、亜鉛フタロシアニンとフタルイミドアルキル化金属フタロシアニンとの混合物を混練摩砕すること(工程)を意味する。より具体的には、亜鉛フタロシアニンと、フタルイミドアルキル化金属フタロシアニンと、無機塩と、有機溶剤とが混練摩砕される。亜鉛フタロシアニンとフタルイミドアルキル化金属フタロシアニンとの混合物には、必要に応じて上記フタロシアニン誘導体を含めることが出来る。この製造方法は、亜鉛フタロシアニンとフタルイミドアルキル化金属フタロシアニンとが、必須成分として共に摩砕されることから、共摩砕と呼ばれる。
【0032】
このソルベントソルトミリングでは、勿論、より粒子径の小さい亜鉛フタロシアニン顔料を用いても良いし、粗製亜鉛フタロシアニンを乾式摩砕してから用いても良い。具体的には、亜鉛フタロシアニンと、フタルイミドアルキル化金属フタロシアニンと、無機塩と、それを溶解しない有機溶剤とを混練機に仕込み、その中で混練摩砕を行う。この際の混練機としては、例えばニーダーやミックスマーラー等が使用できる。
【0033】
上記無機塩としては、水溶性無機塩が好適に使用でき、例えば塩化ナトリウム、塩化カリウム、硫酸ナトリウム等の無機塩を用いることが好ましい。また、平均粒子径0.5〜50μmの無機塩を用いることがより好ましい。この様な無機塩は、通常の無機塩を微粉砕することにより容易に得られる。
【0034】
従来より微細な青色顔料組成物は、例えばインクジェット記録用インク、静電荷像現像用トナー、カラーフィルタ画素部の調製用途に好適に用いられることから、この好適な青色顔料組成物を得るに当たっては、ソルベントソルトミリングにおける亜鉛フタロシアニンとフタルイミドアルキル化金属フタロシアニンとの合計使用量に対する無機塩使用量を高くするのが好ましい。即ち当該無機塩の使用量は、質量換算で亜鉛フタロシアニンとフタルイミドアルキル化金属フタロシアニンとの混合物1部に対して5〜20部とするのが好ましく、7〜12部とするのがより好ましい。
【0035】
有機溶剤としては、結晶成長を抑制し得る有機溶剤を使用することが好ましく、このような有機溶剤としては水溶性有機溶剤が好適に使用でき、例えばジエチレングリコール、グリセリン、エチレングリコール、プロピレングリコール、液体ポリエチレングルコール、液体ポリプロピレングリコール、2−(メトキシメトキシ)エタノール、2−ブトキシエタノール、2ー(イソペンチルオキシ)エタノール、2−(ヘキシルオキシ)エタノール、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングルコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールモノブチルエーテル、トリエチレングリコール、トリエチレングリコールモノメチルエーテル、1−メトキシ−2−プロパノール、1−エトキシ−2−プロパノール、ジプロピレングリコール、ジプロピレングリコールモノメチルエーテル、ジプロピレングリコールモノメチルエーテル、ジプロピレングリコール等を用いることができる。
【0036】
この際の水溶性有機溶剤の使用量は、特に限定されるものではないが、質量換算で亜鉛フタロシアニンとフタルイミドアルキル化金属フタロシアニンとの混合物1部に対して0.01〜5部、0.8〜2部が好ましい。
【0037】
ソルベントソルトミリング時の温度は、30〜150℃が好ましく、80〜100℃がより好ましい。ソルベントソルトミリングの時間は、5〜20時間が好ましく、8〜18時間がより好ましい。
【0038】
こうして、亜鉛フタロシアニン顔料(A)、フタルイミドアルキル化金属フタロシアニン(B)、無機塩、有機溶剤を主成分として含む混合物が得られるが、この混合物から有機溶剤と無機塩を除去し、必要に応じて亜鉛フタロシアニン顔料(A)、フタルイミドアルキル化金属フタロシアニン(B)を主体とする固形物を洗浄、濾過、乾燥、粉砕等をすることにより、微細な青色顔料組成物の粉体を得ることが出来る。
【0039】
洗浄としては、水洗、湯洗のいずれも採用できる。洗浄回数は、1〜5回の範囲で繰り返すことも出来る。水溶性無機塩及び水溶性有機溶剤を用いた前記混合物の場合は、水洗することで容易に有機溶剤と無機塩を除去することが出来る。
【0040】
本発明の青色顔料組成物は、そこに含有される、亜鉛フタロシアニン顔料(A)、フタルイミドアルキル化金属フタロシアニン(B)及びその他必要に応じて併用したフタロシアニン誘導体以外の有機不純物の含有量は、極力ゼロに近くなる様に精製した上で用いることが好ましい。また、遊離のハロゲンイオンや金属イオンも極力ゼロに近くなる様に精製の上で用いることが好ましい。例えば、洗浄の目安は、洗浄水の比電導度が原水の比電導度+20μS/cm以下となるまでである。この精製に当たっては、アルカリ洗浄、酸洗浄による精製のほか、イオン交換膜による精製を用いることもできる。
【0041】
上記した濾別、洗浄後の乾燥としては、例えば、乾燥機に設置した加熱源による80〜120℃の加熱等により、顔料の脱水及び/又は脱溶剤をする回分式あるいは連続式の乾燥等が挙げられ、乾燥機としては一般に箱型乾燥機、バンド乾燥機、スプレードライヤー等がある。また、乾燥後の粉砕は、比表面積を大きくしたり一次粒子の平均粒子径を小さくするための操作ではなく、例えば箱型乾燥機、バンド乾燥機を用いた乾燥の場合の様に顔料がランプ状等となった際にその顔料を解して粉体化するために行うものであり、例えば、乳鉢、ハンマーミル、ディスクミル、ピンミル、ジェットミル等による粉砕等が挙げられる。
【0042】
また本発明の青色顔料組成物は、亜鉛フタロシアニン顔料(A)、フタルイミドアルキル化金属フタロシアニン(B)とを必須成分として含有していれば良く、それらだけを青色顔料として用いても良いが、必要であれば、β型銅フタロシアニン顔料の様な、その他の青色有機顔料を更に併用しても良い。
【0043】
本発明の青色顔料組成物は、塗料、プラスチック(樹脂成型品)、印刷インク、ゴム、レザー、捺染、カラーフィルタ画素、静電荷像現像用トナー、インクジェット記録用インク、熱転写インキ等の着色に適用することが出来る。
【0044】
本発明の青色顔料組成物は、これら用途の中でも静電荷像現像用シアントナーの着色剤として有用である。
【0045】
即ち、質量換算で亜鉛フタロシアニン顔料(A)100部当たりフタルイミドアルキル化金属フタロシアニン(B)0.1〜10部を含有する青色顔料組成物または質量換算で亜鉛フタロシアニン100部当たりフタルイミドアルキル化金属フタロシアニン0.1〜10部含有する混合物を、ソルベントソルトミリングする工程を含む亜鉛フタロシアニン顔料(A)とフタルイミドアルキル化金属フタロシアニン(B)とを含有する青色顔料組成物の製造方法で得られた青色顔料組成物と、バインダー樹脂とを含有させることで静電気荷像現像用トナーを得ることが出来る。
【0046】
カラートナーの色相目標は、大きく以下の2つに分類される。一つは、印刷におけるものさしである「Japan Color」であり、もう一つは、ディスプレイやプリンタ等の機器の違いによらず、意図した通りの色を表す「sRGB」である。
【0047】
シアントナーの着色剤としては、従来から銅フタロシアニンが用いられてきているが、銅フタロシアニン単独では、Japan Colorを再現するのには緑味が不足していた。そのため、それに緑色を呈するハロゲン化銅フタロシアニンを混合した顔料も用いられてきたが、彩度が低下してしまうことや、塩素が含まれるために環境面に影響を与えること等の問題点があった。
【0048】
一方、sRGBの色空間においては、銅フタロシアニン顔料がブルー色域の再現性には優れているものの、シアン・グリーン色域での再現性に劣っている。したがって、sRGBの色空間にも十分に対応できていないという課題があった。
【0049】
そして、亜鉛フタロシアニン顔料単独では、L*a*b*表色系にて、銅フタロシアニン顔料との比較から、a*値が負の方向に大きくなっており、色相が緑方向になるものの、b*値が0に近づくために、青味が低下してしまうという問題点が挙げられている。本発明の青色顔料組成物は、これらの従来技術の技術的課題を一挙に解決するものである。
【0050】
本発明における静電荷像現像用トナーは、静電荷像現像用トナー中に磁性体を含有する一成分シアン色磁性トナー(磁性一成分現像用シアントナー)、磁性体を含有しない非磁性一成分シアン色トナー(非磁性一成分現像用シアントナー)、又は、キャリアーを混合して用いる二成分色現像剤用シアントナー(二成分現像用シアントナー)であり、本発明の青色顔料組成物を用いることで、これら静電荷像現像用シアントナーはいずれも容易に調製することができる。
【0051】
一成分シアン色磁性トナーは、通常使用されているものと同様に、例えば、着色剤、結着樹脂、磁性粉、電荷制御剤(CCA)や離型剤に代表されるその他添加剤等から構成できる。
【0052】
本発明で用いられる青色顔料組成物の、静電荷像現像用トナー中に占める割合(含有量)は特に限定されるものではないが、当該トナーを構成する結着樹脂100質量部に対して0.5〜25質量部の割合で使用することが好ましく、青色顔料組成物自身の有する帯電性能を一層顕著ならしめる点から結着樹脂100質量部に対し2〜15質量部であることがより好ましい。
【0053】
結着樹脂100質量部に対して青色顔料組成物の割合が0.5質量部以下の場合には、隠蔽力が不足して充分な色濃度が得られない点で好ましくない。また、結着樹脂100質量部に対して青色顔料組成物の割合が25質量部以上の場合には、色の彩度が損なわれ、定着特性、帯電特性への影響が現れる点で好ましくない。
【0054】
本発明の静電荷像現像用トナーに用いられる結着樹脂としては、公知慣用のものがいずれも使用できるが、なかでも、熱又は圧力の適用下で接着性を示す天然樹脂、合成樹脂、天然ゴム、合成ゴム、合成ワックス等が使用できる。
【0055】
本発明において有用な天然樹脂としては、例えば、バルサム樹脂、ロジン、シェラック、コーバル等が挙げられ、これらの樹脂は後記するビニル樹脂、アクリル樹脂、アルキド樹脂、フェノール樹脂等から選ばれる1種又はそれ以上の樹脂で変性されていてもよい。
【0056】
また、本発明において有用な合成樹脂および合成ワックスとしては、例えば、ポリ塩化ビニル、ポリアセタール、ポリアミド、ポリカーボネート、ポリスチレン、ポリアクリロニトリル、ポリプリピレン、ポリエチレン、フッ素樹脂、ポリウレタン、エポキシ樹脂、シリコーン樹脂、ポリエステル、メラミン樹脂、ユリア樹脂、フェノール樹脂、メタクリル樹脂、アクリル樹脂、アルキド樹脂、ビニル樹脂又はこれらの樹脂の各モノマー成分からできる共重合体、脂肪族又は脂環式炭化水素樹脂、芳香族系石油樹脂、塩素化パラフィン、パラフィンワックス等が挙げられる。
【0057】
また、本発明において有用な天然又は合成ゴム物質としては、例えば、天然ゴム、塩素化ゴム、環化ゴム、ポリイソブチレンゴム、エチレン−プロピレンゴム、エチレン−プロピレン−ジエンゴム、ポリブタジエンゴム、ブチルゴム、スチレン−ブタジエンゴム、アクリロニトリル−ブタジエンゴム、クロロプレンゴム、シリコンゴム、フッ素ゴム、クロロヒドリンゴム等が挙げられる。
【0058】
本発明の静電荷像現像用トナーに用いられる結着樹脂としては、これらに限定されるものではなく、結着樹脂成分の2種以上が適宜混合されたものを使用してもよい。
【0059】
尚、結着樹脂としては、熱定着性を有する結着樹脂が好ましく、ポリスチレン、スチレン−(メタ)アクリル酸エステル共重合体等のスチレン系樹脂、ポリエステル系樹脂及びエポキシ系樹脂を用いることがより好ましい。
【0060】
本発明の静電荷像現像用トナーに用いられる磁性粉としては、特に限定されるものではないが、それ自身の色が再現された色に影響を及ぼしにくいものが好ましく使用でき、例えば、γ−酸化鉄、黄色γ−酸化鉄、フェライト等の酸化鉄;鉄、コバルト、ニッケルのような金属、或いはこれらの金属とアルミニウム、コバルト、銅、鉛、マグネシウム、錫、亜鉛、アンチモン、ベリリウム、ビスマス、カドミウム、カルシウム、マンガン、セレン、チタン、タングステン、バナジウムのような金属との合金、ポリ−1,4−ビス(2,2,6,6,−テトラメチル−4−オキシル−4−ピペリジル−1−オキシル)ブタジエンポルフィリン金属錯体の様な有機磁性体及びそれらの混合物等が挙げられる。なかでも色相の面から、黄色γ−酸化鉄の使用がより好ましい。
【0061】
これら磁性粉の粒径は平均粒径0.1〜1μmの範囲が好ましく、なかでも帯電安定性及び色相の点から0.1〜0.5μmの範囲がより好ましい。また、これらをシアントナーに含有させる量としては結着樹脂100質量部に対して30〜150質量%が好ましく、帯電安定性及び色相の点から結着樹脂100質量部に対して40〜120質量%がより好ましい。
【0062】
本発明の静電荷像現像用トナーは前記した各成分の他に必要に応じてトナーの熱特性、電気特性、物理特性等を調整する目的で各種の可塑剤、抵抗調整剤および電荷制御剤等を更に添加してもよい。
【0063】
可塑剤としては、例えば、フタル酸ジブチル、フタル酸ジオクチル等が挙げられ、抵抗調整剤としては、例えば、酸化スズ、酸化鉛、酸化アンチモン等が挙げられ、電荷制御剤としては、例えば、四級アンモニウム塩、ピリジニウム塩、含金属染料等が挙げられる。
【0064】
更に、本発明においてはシアントナー粒子の製造後、これにTiO、Al、SiO等の微粉末を添加してシアントナーの流動性改良を図ったり、ステアリン酸亜鉛、フタル酸等を添加して感光体の劣化防止を図っても良い。TiO、Al、SiO等の微粉末は、平均粒子径が0.02μm以下の微粉末と、平均粒子径が0.03〜1μmの微粉末とを併用する様にすると、より連続印刷を行った場合に、長期に亘って良好な画像が得られる。
【0065】
本発明の静電荷像現像用トナーは、特定の製造方法に依らず極めて一般的な製造方法によって得ることができる。例えば、前記した各成分を押出機、2本ロール、3本ロール又は加熱ニーダー等の混練手段により混合し、冷却後、ジェットミル等の粉砕機で粉砕し、風力分級機により分級する、いわゆる粉砕法といわれる方法により本発明の目的とする静電荷像現像用トナーが得られる。また上記粉砕法以外にも、乳化分散法、懸濁重合法等により、本発明の目的とするシアントナーを得ることもできる。
【0066】
本発明の静電荷像現像用トナーは、粒子径5〜15μmとすることが好ましい。
【0067】
二成分色現像剤用静電荷像現像用トナーの調製には、一成分シアン色磁性トナーに使用されているものと同じ着色剤、結着樹脂、上記した様なその他添加剤等を使用することができる。
【0068】
更に、本発明の静電荷像現像用トナーに用いられるキャリアとしては、例えば、鉄粉、ニッケル粉、フェライト粉、ガラスビーズ、或いはこれらを芯材とし表面にスチレン−アクリル酸エステル共重合体、スチレン−メタクリル酸エステル共重合体、アクリル酸エステル重合体、メタクリル酸エステル重合体、シリコーン樹脂、ポリアミド樹脂、アイオノマー樹脂、ポリフェニレンサルファイド樹脂等又はこれらの樹脂の混合物をコーティングしたものが挙げられ、その粒子径は50〜300μmが好ましい。
【0069】
二成分色現像剤は、これらのキヤリア粒子と本発明の静電荷像現像用シアントナーとを、例えば水平円筒形、V形等の容器回転型混合機で摩擦混合することによって得ることができる。
【0070】
また、キャリアと本発明の静電荷像現像用トナーとの混合比は、適切な画像濃度を得るために通常、キャリア100質量部に対して静電荷像現像用シアントナー2〜10質量部の範囲で使用できるが、なかでも静電荷像現像用シアントナー3〜6質量部の範囲で使用することがより好ましい。
【0071】
こうして得られた本発明の静電荷像現像用トナーは、被記録媒体上に画像を形成させるために用いられる。被記録媒体としては、例えば、紙、合成樹脂フィルム、金属箔等が挙げられる。勿論、本発明の静電荷像現像用トナーは、シアン色単色においてのモノカラー画像でより高い色再現性、発色性を発現するものではあるが、イエロートナー及びマゼンタトナー及び必要に応じてブラックトナーと組み合わせたトナーセットとして、YMC(K)減法混色によるフルカラー画像において、ブルー色域、シアン色領域及びグリーン色域の全般の色再現性、発色性が更に顕著に発現する。
【0072】
本発明においては、着色物上のシアン画像から、色相がより青味で透明性および鮮明性に優れ、より高い色再現性、発色性を確認することが出来る。
【0073】
具体的には、本発明の青色顔料組成物を含む塗料を用いて展色を実施したり、本発明の静電荷像現像用トナーを含む二成分現像剤を用いて乾式普通紙複写機等で現像試験を実施することにより、普通紙や合成樹脂フィルムの様な被記録媒体上に、色相がより青味で透明性および鮮明性に優れ、より高い色再現性、発色性を有するシアン画像(ベタ部)を得られる。
【0074】
任意の方法で得られたシアン画像を分光光度計(測定用光源として、例えば、D65光源、視野角10°)により測色することにより、シアン画像の色(CIE表色系色度L*a*b*)を定量的に評価することができる。尚、a*b*はそれぞれ色の方向を示し、a*がプラスで色相は赤味方向、マイナスで緑味方向を表し、またb*がプラスで黄味方向、マイナスで青味方向を表す。
【0075】
本発明においては、△a*がプラス方向であり、且つ△b*がマイナス方向ほど、標準顔料である亜鉛フタロシアニン顔料単独で使用した場合と比較して、色相がより青味にあると定義する。ここで△a*、△b*とは、前記標準顔料との(色相)差を意味する。
【0076】
〔実施例〕
以下、実施例および比較例を用いて本発明をさらに詳細に説明する。以下の実施例および比較例において、「部」および「%」は、いずれも質量基準である。
製造例1
1000mlの4口フラスコ中に、フタロジニトリル51.2g、1,8−ジアザビシクロ[5.4.0]−7−ウンデセン(DBU)30.4g、及びn−ペンタノール200mlを仕込み、窒素雰囲気下で加熱、撹拌した。70〜75℃で、これに塩化亜鉛13.62gを添加した後、95〜100℃で5時間加熱した。析出物を濾取して、有機溶剤で洗浄した後、乾燥、精製をして、粗製亜鉛フタロシアニンを得た。この粗製亜鉛フタロシアニンはβ型からなっていた。
【実施例1】
【0077】
2L双腕型ニーダーに、上記製造例1で得た粗製亜鉛フタロシアニン 120部、フタルイミドメチル化銅フタロシアニン(フタルイミド基の平均置換数1.2)6部、粉砕した塩化ナトリウム(以下、食塩と略記。)960部、およびジエチレングリコール120部を仕込み、内容物の温度を90〜95℃に保って7時間摩砕を行なった。その間、内容物が均一な粘調性を保つように適宜ジエチレングリコールを加えた。
得られた内容物を大過剰の水で洗浄後、0.4%塩酸水溶液で洗浄し、濾過し、濾液の比電導度が原水の比電導度+20μS/cm以下となるまで水洗することによって、β型亜鉛フタロシアニン顔料と、フタルイミドメチル化銅フタロシアニンとを主成分として含有する青色顔料組成物のウエットケーキを得た。得られたウエットケーキを、濾過、温水洗浄、乾燥、粉砕し、実質的にβ型のみからなる亜鉛フタロシアニン顔料と、フタルイミドメチル化銅フタロシアニンとからなる本発明の青色顔料組成物1を得た。この青色顔料組成物は、一次粒子の平均粒子径は20〜50nmの範囲にあった。アスペクト比は、1.5以下であった。
【実施例2】
【0078】
粗製亜鉛フタロシアニン100部、フタルイミドメチル銅フタロシアニン5部、食塩1000部、ジエチレングリコール120部とする以外は、実施例1と全く同様の操作を行って、実質的にβ型のみからなる亜鉛フタロシアニン顔料と、フタルイミドメチル化銅フタロシアニンとからなる本発明の青色顔料組成物2を得た。この青色顔料組成物2は、一次粒子の平均粒子径は20〜50nmの範囲にあった。アスペクト比は、1.5以下であった。
【0079】
〔比較例1〕
粗製亜鉛フタロシアニン120部、食塩960部、ジエチレングリコール120部とする以外は、実施例1と全く同様の操作を行って、青色顔料組成物3を得た。この青色顔料組成物3は、亜鉛フタロシアニン顔料のみを含有するものであり、一次粒子の平均粒子径は30〜80nmの範囲にあった。
【0080】
〔比較例2〕
粗製亜鉛フタロシアニン100部、食塩1000部、ジエチレングリコール120部とする以外は、実施例1と全く同様の操作を行って、青色顔料組成物4を得た。この青色顔料組成物4は、亜鉛フタロシアニン顔料のみを含有するものであり、一次粒子の平均粒子径は30〜80nmの範囲にあった。
【0081】
〔比較例3〕
粗製銅フタロシアニン120部、フタルイミドメチル銅フタロシアニン6部、食塩960部、ジエチレングリコール120部とする以外は、実施例1と全く同様の操作を行って、青色顔料組成物5を得た。この青色顔料組成物5は、β型銅フタロシアニン顔料とフタルイミドメチル化銅フタロシアニンとを主成分として含有するもので、一次粒子の平均粒子径は20〜50nmの範囲にあった。
【0082】
〔比較例4〕
粗製銅フタロシアニン100部、フタルイミドメチル銅フタロシアニン5部、食塩1000部、ジエチレングリコール120部を加える以外は、実施例1と全く同様の操作を行って、青色顔料組成物6を得た。この青色顔料組成物6は、β型銅フタロシアニン顔料とフタルイミドメチル化銅フタロシアニンとを主成分として含有するもので、一次粒子の平均粒子径は20〜50nmの範囲にあった。
【0083】
〔比較例5〕
粗製銅フタロシアニン120部、食塩960部、ジエチレングリコール120部を加える以外は、実施例1と全く同様の操作を行って、青色顔料組成物7を得た。この青色顔料組成物7は、β型銅フタロシアニン顔料のみを含有するものであり、一次粒子の平均粒子径は30〜60nmの範囲にあった。
【0084】
〔比較例6〕
粗製銅フタロシアニン100部、食塩1000部、ジエチレングリコール120部を加える以外は、実施例1と全く同様の操作を行って、青色顔料組成物8を得た。この青色顔料組成物8は、β型銅フタロシアニン顔料のみを含有するものであり、一次粒子の平均粒子径は30〜60nmの範囲にあった。
【0085】
尚、実施例及び比較例の各青色顔料組成物は、平均粒子径は20〜80nmの範囲にあるというだけでなく、いずれも同等水準の平均粒子径であり、粒子径の相違による後記する測色結果への影響は排除されている。
【0086】
このようにして得られた実施例及び比較例の各青色顔料組成物を用いて、それぞれ塗料を調製の上でプラスチックフィルム上への展色を実施し、得られたシアン画像につき、分光光度計(D65光源、視野角10°)により測色を行なった。
100ml蓋付きプラスチック容器に、青色顔料組成物 2.0g、メラミンアルキッド樹脂(DIC株式会社製 ベッコゾールJ−524−IM−60/スーパーベッカミンG−821−60=7/3)不揮発分 16.0g、混合溶剤(キシレン/n−ブタノール=7/3) 12.0g、ガラスビーズ 80.0gを量り込み、試験用分散機(株式会社東洋精機製作所製)を用いて1時間分散してミルベースを作製した。その後、そこに上記メラミンアルキッド樹脂 50.0gを追加して、試験用分散機で10分間分散して、メラミンアルキッド樹脂塗料を得た。
得られた塗料をPETフィルム上に展色した。1時間静置後、140℃で15分間焼き付けを行い、放冷し展色物を得た。
上記で得られた展色物について、米国dator color international社製の分光光度計(SPECTRA FLASH SF600 PLUS CT)を使用して測色を行い、L*a*b*値を得た。
尚、色相はCIE(国際照明委員会)で規格された表色系の定義に基づくものである。色相を表す色度はL*a*b*という単位で設定される。a*b*はそれぞれ色の方向を示し、a*がプラスで色相は赤味方向、マイナスで緑味方向を表し、またb*がプラスで色相は黄味方向、マイナスで青味方向を表す。
【0087】
実施例及び比較例の青色顔料組成物から得られた各展色物の測色結果(a*値、b*値)9を、表1及び図1(a*b*直交座標)に示した。
【0088】
表1
【0089】
【表1】

【0090】
実施例1と比較例1の対比からわかる通り、亜鉛フタロシアニン顔料とフタルイミドメチル化銅フタロシアニンとを含有する本発明の青色顔料組成物からの着色物は、フタルイミドメチル化銅フタロシアニンを含有しない従来の青色顔料組成物からの着色物に比べて、b*値がマイナス方向に大きな値をとっており、より青味であることがわかる。
また、この実施例1と比較例1の実験セット(亜鉛フタロシアニン顔料系)と、比較例3と比較例5の実験セット(銅フタロシアニン顔料系)との対比からわかる通り、フタルイミドメチル化銅フタロシアニンを含有させることによるb*値のマイナス方向へのシフトの程度は、銅フタロシアニン顔料系での実験結果から類推不能なほど亜鉛フタロシアニン顔料系では大きく、「公知技術の単なる転用」の域を超え格別顕著な効果を奏するものである。
本発明の亜鉛フタロシアニン顔料を用いた着色物では、L*a*b*表色系において、従来の銅フタロシアニン顔料よりも、a*の絶対値が大きく、緑味である。そして、従来の亜鉛フタロシアニン単独顔料と比較しても、b*の絶対値も大きいことから、青味も十分であることは明白である。
【実施例3】
【0091】
(静電荷像現像用シアントナーの製造)
スチレン−アクリル酸共重合体(ハイマーSBM100、三洋化成工業(株)製)100部、前記実施例1の青色顔料組成物5部、黄色γ−酸化鉄(MAPICO Y−LOP、チタン工業(株)製)40部を押出機で混練後、ジェットミルで分級粉砕して平均粒子径が10μmのシアントナーを得た。次いでこのシアントナーに疎水性シリカ(アエロジル R−972、日本アエロジル社製)を1%混合して一成分シアン色磁性トナーを得た。
【0092】
(現像剤の調製と現像試験)
この一成分シアン色磁性トナーをキャリア(フェライトキャリア F−150、パウダーテック社製)100部に対して5部加え、摩擦混合させて二成分型現像剤を得た。この現像剤を用いて、乾式普通紙複写機(リコピー FT3010、(株)リコー製)で現像試験を実施した結果、色相がより青味で、透明性および鮮明性に優れ、十分な色再現性、発色性を有するシアン画像が得られた。
【0093】
(画像の色相評価試験)
上記現像剤を用いてシアン画像(ベタ部)が得られた印刷物について、当該シアン画像を、分光光度計〔SPECTRAFLASH SF600(データカラーインターナショナル社製)〕を用い、測定用光源としてD65光源、視野角10°で測色を行い、色相(a*、b*)を定量的に評価した。塗料の展色物の測色結果と同様な結果が得られた。
フタルイミドメチル銅フタロシアニンには、ハロゲン化銅フタロシアニン顔料を併用する時の様な彩度の低下が無く、銅フタロシニアニン顔料と併用した際に頻繁に起こる、透明性、鮮明性及び発色性等の低下は、このシアン単色評価では見られなかった。
【0094】
上記実施例3の青色顔料組成物に代えてイエロー顔料(C.I.ピグメントイエロー74)及びマゼンタ顔料(C.I.ピグメントレッド122)同量をそれぞれ用いる以外は実施例3と同様にして、一成分イエロー色磁性トナーと一成分マゼンタ色磁性トナーを調製した。
【0095】
上記したYMC3色の各二成分型現像剤を用い、テストパターンに従って、フルカラー画像が記録された印刷物を得た。得られた各印刷物は、銅フタロシアニン顔料単独、銅フタロシアニン顔料とフタルイミドメチル銅フタロシアニンとの混合物、亜鉛フタロシアニン顔料単独のいずれを着色剤として用いた一成分シアン色磁性トナーを用いた場合の印刷物より、色再現域が広く、特に、シアン単色での評価に比べて、混色によるブルー色領域及びグリーン色領域の各フルカラー画像での色再現性に優れることが顕著であった。
【0096】
カラートナーの色相目標は、印刷におけるものさしである「Japan Color」であり、もう一つは、ディスプレイやプリンタ等の機器の違いによらず、意図した通りの色を表す「sRGB」であるが、本発明の青色顔料組成物から得られた静電荷像現像用トナーは、従来の青色顔料組成物から得られた静電荷像現像用トナーに比べて、「Japan Color」、「sRGB」で規定されたのに、より近い色まで再現が可能であることがわかる。
【産業上の利用可能性】
【0097】
本発明の青色顔料組成物は、より青味の大きい着色物が得られることから、例えばそれを用いれば色相がより青味で、透明性および鮮明性に優れ、十分な色再現性、発色性を有する静電荷像現像用トナーを提供出来る。
【図面の簡単な説明】
【0098】
【図1】実施例及び比較例の各青色顔料組成物から得られた各展色物の測色結果(a*値、b*値)を、a*b*直交座標にプロット示した図。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
質量換算で亜鉛フタロシアニン顔料(A)100部当たりフタルイミドアルキル化金属フタロシアニン(B)0.1〜10部を含有する青色顔料組成物。
【請求項2】
質量換算で亜鉛フタロシアニン100部当たりフタルイミドアルキル化金属フタロシアニン0.1〜10部含有する混合物を、ソルベントソルトミリングする工程を含む請求項1記載の青色顔料組成物の製造方法。

【図1】
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