亜鉛原料の処理方法
【課題】
湿式亜鉛製錬における亜鉛原料の処理において、前記亜鉛原料を硫酸酸性溶液で処理す
る際に、当該硫酸酸性溶液へ溶出したシリカ等を、迅速かつ固液分離容易な形態で析出沈
殿させる。
【解決方法】 湿式亜鉛製錬における電解尾液の液体部分とを混合して浸出液とし、添加
物質として、
ビスマス酸化物、チタン酸化物、アンチモン酸化物、錫酸化物、ガリウム酸化物、カドミニウム酸化物、リン酸カルシウム塩、酸化リン、弗化カルシウム、鉛酸化物、パラジウム、銀酸化物、銀、鉄酸化物、マンガン酸化物から選択される1種以上を添加す
る。次に、当該浸出液中へ所定量の亜鉛原料の焙焼物を投入し、亜鉛原料の焙焼物を浸出
する。そして、浸出完了後、得られた浸出液に凝集剤を添加し、溶出したシリカ等をスラ
リーとして分離する。
湿式亜鉛製錬における亜鉛原料の処理において、前記亜鉛原料を硫酸酸性溶液で処理す
る際に、当該硫酸酸性溶液へ溶出したシリカ等を、迅速かつ固液分離容易な形態で析出沈
殿させる。
【解決方法】 湿式亜鉛製錬における電解尾液の液体部分とを混合して浸出液とし、添加
物質として、
ビスマス酸化物、チタン酸化物、アンチモン酸化物、錫酸化物、ガリウム酸化物、カドミニウム酸化物、リン酸カルシウム塩、酸化リン、弗化カルシウム、鉛酸化物、パラジウム、銀酸化物、銀、鉄酸化物、マンガン酸化物から選択される1種以上を添加す
る。次に、当該浸出液中へ所定量の亜鉛原料の焙焼物を投入し、亜鉛原料の焙焼物を浸出
する。そして、浸出完了後、得られた浸出液に凝集剤を添加し、溶出したシリカ等をスラ
リーとして分離する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は湿式亜鉛製錬工程における亜鉛原料の湿式処理工程に関し、特に、前記亜鉛原料を硫酸酸性溶液で浸出した後に、シリカの沈降性・ろ過性を向上させる亜鉛原料の処理方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、湿式亜鉛製錬は、ZnS(硫化亜鉛)を主成分とする鉱石を選鉱して亜鉛原料とし、当該亜鉛原料の焙焼物を硫酸酸性溶液を用いて浸出し、得られた浸出液を固液分離して亜鉛浸出残査を除去した後、さらに浄液し、当該液体部分より電解採取を経て電気亜鉛を得ている。このとき前記鉱石に不純物が多く存在すると、亜鉛製錬工程の操業において様々な課題が発生する。
例えば、前記亜鉛原料に不純物としてFe(鉄)やSi(ケイ素)が多く含有されていると、焙焼物の浸出後に生成する亜鉛浸出残渣の沈降性が悪化する。特に、不純物がSi化合物であるシリカであると、その含有量が多くなるに従い当該シリカがゲル化し、前記亜鉛浸出残渣と絡み合うため、前記固液分離工程の沈降性・ろ過性が著しく悪くなる。そこで、前記固液分離工程における沈降性・ろ過性を向上させるため、特許文献1を始めとする提案がされている。
【0003】
【特許文献1】特許第3464602号
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
例えば、特許文献1は、前記固液分離工程における沈降性・ろ過性を向上させるため、浸出工程において、浸出を行う酸溶解槽内の組成物中のシリカの量に応じ、所定量以上の可溶性シリカ、またはシリカを含有する亜鉛浸出残渣を前記溶解槽へ供給することを提案している。
【0005】
しかし、本発明者らが検討したところ、当該浸出工程において酸溶解槽における組成物中のシリカの量に応じ、所定量以上の可溶性シリカを前記溶解槽へ供給しても、前記固液分離工程におけるシリカの沈降性・ろ過性の向上は、満足できる水準ではなかった。
【0006】
本発明は、上述の課題を解決するために成されたものであり、工程の複雑化や浸出時間の延長をもたらすことなく、固液分離工程においてシリカの沈降性・ろ過性を向上させる亜鉛原料の処理方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らは、上記の課題を解決すべく鋭意研究を続け試行錯誤の結果、前記浸出工程で用いる硫酸酸性溶液へ、亜鉛製錬工程で産出するPb(鉛)・Ag(銀)残査を添加した後に当該浸出を行うと、固液分離工程においてシリカの沈降性・ろ過性が向上することを見出した。本発明者らは、この知見を出発点として研究を続け、Bi酸化物(ビスマス酸化物)を始めとする各種の物質を添加した硫酸酸性溶液を用いると、共沈作用、またはアンカー効果により固液分離工程においてシリカの沈降性・ろ過性が向上することを見出し本発明を完成した。
【0008】
上述の課題を解決するための第1の手段は、
亜鉛原料から亜鉛を抽出する湿式亜鉛製錬工程において、
焙焼した亜鉛原料を硫酸酸性溶液を用いて浸出する際、ビスマス酸化物、チタン酸化物、アンチモン酸化物、錫酸化物、ガリウム酸化物、カドミニウム酸化物、リン酸カルシウム塩、酸化リン、弗化カルシウム、鉛酸化物、硫酸鉛、硫化鉛、パラジウム、銀酸化物、銀、鉄酸化物、マンガン酸化物、から選択される1種以上の添加物質が添加された硫酸酸性溶液を用いて、浸出をおこなうことを特徴とする亜鉛原料の処理方法である。
【0009】
第2の手段は、
前記鉄酸化物として、前記湿式亜鉛製錬工程から産出するヘマタイトを用いることを特徴とする第1の手段に記載の亜鉛原料の処理方法である。
【0010】
第3の手段は、
前記マンガン酸化物として、前記湿式亜鉛製錬工程から産出するMn澱物を用いることを特徴とする第1の手段に記載の亜鉛原料の処理方法である。
【0011】
第4の手段は、
前記酸化ビスマスおよび/または銀として、
鉛製錬工程から産出され、BiまたはAgを3wt%以上含有する、Bi密陀および/または鉛電解スライムを用いることを特徴とする第1または第2の手段に記載の亜鉛原料の処理方法である。
【0012】
第5の手段は、
前記添加物質の1種以上が添加され、当該添加物質を0.02g/L以上含有する硫酸酸性溶液を用いることを特徴とする第1から第4の手段のいずれかに記載の亜鉛原料の処理方法である。
【0013】
第6の手段は、
前記添加物質としてBi2O3を用い、前記硫酸酸性溶液中に4g/L以上添加することを特徴とする第1の手段に記載の亜鉛原料の処理方法である。
【0014】
第7の手段は、
前記添加物質として鉛製錬工程から産出するBi密陀を用い、前記硫酸酸性溶液中に4g/L以上添加することを特徴とする第1の手段に記載の亜鉛原料の処理方法である。
【0015】
第8の手段は、
前記添加物質として鉛製錬工程から産出する鉛電解スライムを用い、前記硫酸酸性溶液中に1g/L以上添加することを特徴とする第1の手段に記載の亜鉛原料の処理方法である。
【0016】
第9の手段は、
前記浸出前の前記硫酸酸性溶液のpHを、1.5以下とすることを特徴とする第1から第8の手段のいずれかに記載の亜鉛原料の処理方法である。
【0017】
第10の手段は、
前記亜鉛原料を浸出する時間を、10分間以上5時間以下とすることを特徴とする第1から第9の手段のいずれかに記載の亜鉛原料の処理方法である。
【発明の効果】
【0018】
上述した第1〜第10の手段のいずれかに記載の亜鉛原料の処理方法によれば、当該亜鉛原料を硫酸酸性溶液で浸出した後の固液分離工程において、前記亜鉛原料に含有されたシリカを含む固形成分が、液体成分より容易に分離して沈殿した。
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
本発明の実施の形態を、湿式亜鉛製錬工程における亜鉛原料の処理フロー例である図1を参照しながら説明する。
図1に示すように、亜鉛鉱石等の亜鉛原料は、まず、焙焼・粉砕されるが、粉砕は浸出の前後で実施され粉砕物となる。この粉砕物へ、後述する電解尾液の液体部分や脱鉄后液の混合液を含む硫酸酸性の浸出液を加え、1次の浸出操作の後、固液分離工程を行って液体の浸出液と固体の亜鉛浸出残査とを得る。次に、当該浸出液を浄液操作の後に電解処理し、電気亜鉛と電解尾液とを得る。当該電気亜鉛は亜鉛製錬の次工程へと送られるが、電解尾液は固液分離工程の後、液体部分は上述した浸出液として循環使用され、固体部分はMn澱物となる。
【0020】
一方、上述の亜鉛浸出残査は、例えばSO2(二酸化硫黄)を用いて2次浸出操作を行った後、固液分離操作を行い、液体の2次浸出液と固体のPb・Ag残査とを得る。この2次浸出液に炭酸カルシウムを加えて1段中和を行い固液分離工程の後、液体の1段中和液と固体の1段石膏とを得る。この1段中和液に亜鉛末を加えて脱砒操作を行い、液体の脱砒液と固体のRT残査とを得る。尚、ここでRT残渣とはResidue Treatmentの略称で、Cu3Asを主成分とした銅・砒素化合物である。この脱砒液に炭酸カルシウムを加えて2段中和を行い固液分離工程の後、液体の2段中和液と固体の2段石膏とを得る。この2段中和液にO2・蒸気を加えて脱鉄処理を行い、液体の脱鉄后液と固体のヘマタイトとを得る。得られた脱鉄后液は、上述した電解尾液の液体部分と伴に浸出液として循環使用する。
【0021】
この時、当初の亜鉛原料中にSiO2(シリカ)が多量に含有されていると、当該SiO2、が亜鉛焙焼物の浸出時にZnSiO3となって浸出液中に溶解し、当該浸出液のpHの上昇とともに析出してゲル化し、固液分離工程時における亜鉛浸出残査の沈降性・ろ過性を悪くする。ここで、当該固液分離工程時における亜鉛浸出残査の沈降性を良好に保持するには、当初の亜鉛原料中のSiO2品位が1%以下であることが好ましいのだが、それ以上になると亜鉛浸出残査の沈降性不良・ろ過性不良が発生することとなる。しかし、当初の亜鉛原料中のSiO2含有量は多様であり、2%を超える場合もある。
【0022】
このようなSiO2を多量に含有する亜鉛原料を用いた場合の、固液分離工程時における亜鉛浸出残査の沈降性・ろ過性は悪く、例えば、後述する実施例1で行った沈降性評価結果によれば、1分間後の沈降距離で12mm、ろ過速度で1.75l/m2/minであった。ここで当該浸出液へ、上述のPb・Ag残査を10g/L(約10000ppm)添加したところ、1分間後の沈降距離が39mm、ろ過速度が3.13l/m2/minへと向上した。次に、当該浸出液へ、上述のMn澱物を10g/L添加したところ、1分間後の沈降距離が27mm、ろ過速度が6.45l/m2/minへと向上した。さらに当該浸出液へ、上述のヘマタイトを10g/L添加したところ、1分間後の沈降距離が22mm、ろ過速度が5.32l/m2/minへと向上した。これらの知見から、当該浸出液へ添加することで亜鉛浸出残査の沈降性・ろ過性を向上させることの出来る物質を探索したところ、ビスマス酸化物(BiO、Bi2O3、およびそれらの混合物)、チタン酸化物(TiO2)、アンチモン酸化物(Sb2O3)、錫酸化物(SnO2)、ガリウム酸化物(Ga2O3)、カドミニウム酸化物(CdO)、リン酸カルシウム塩(Ca3(PO4)2)、酸化リン(P2O5)、弗化カルシウム(CaF2)、鉛酸化物(PbO2)、硫酸鉛(PbSO4)、硫化鉛(PbS)、パラジウム(Pb)粉、銀酸化物(AgO)、銀(Ag)粉、鉄酸化物(Fe2O3)、マンガン酸化物(MnO2)が見出された。そして、これらの物質から選択される1種以上の物質を、当該浸出液に添加してから亜鉛原料の浸出操作を行うことで、亜鉛浸出残査の固液分離工程において亜鉛残査の沈降性、ろ過性を向上させることが出来た。
【0023】
ここで、上述した物質についてさらに説明する。
Pb・Ag残査とは、上述した1次の浸出操作で産出した固形分である亜鉛浸出残渣(ジンクフェライトというFeとZn(亜鉛)との化合物である。)を、さらにSO2等により2次浸出した残査のことである。主成分は、PbSO4とSiO2とであり、他に、少量のSn・Sb化合物、極少量のAgが含有されている。これらの各成分は、当初の亜鉛原料(亜鉛精鉱や、それを焙焼した焼鉱)の成分比率により変化する。即ち、当初の亜鉛原料において、Pbが少ないものはPbが少なくなるし、Agが極少量含まれれば、極少量のAgを含むこととなる。当社での操業におけるPbAg残渣の代表的な組成比率としては、SiO2が20%、Pbが20%その他、SO4などの塩類やSn・Sb化合物であり、Agは約2000ppmである。尤も、Ag濃度は鉱石ブレンドによって変動し、4000〜5000ppmになることもある。
【0024】
当該Pb・Ag残査を浸出液に添加した際、残査中のSiO2は、上記2次浸出時に熱作用を受けるため結晶性のSiO2となっており浸出液に溶解しない。Pbも、PbSO4の形態で存在しているため硫酸にはほとんど溶解しない。この結果、当該Pb・Ag残査を添加した浸出液で亜鉛原料の焙焼物を浸出する際、析出するシリカの沈降性・ろ過性向上の効果をもたらしたと考えられる。
また、Agは、非酸化性の酸には溶解しないので、当該Agが析出するシリカの種晶として効果をもたらしていると考えられる。
【0025】
さらに、当該Agが析出するシリカの種晶として効果をもたらす際、Agの絶対的存在量という観点から見ると、バルク時のAgを添加する場合よりも少ないAg量を含むAg・Pb残査でも、沈降性・ろ過性に効果がある。これは、上述したPbSO4とSiO2との協働効果の他に、PbAg残渣中に含有されているAgが微細に分散しており、その表面積が大きいことも原因と考えられる。さらに、Agは、浸出液中に含まれる酸化性の酸(4価のMn)により極少量が浸出液に溶解するが、亜鉛原料の焙焼物が浸出されていくと同時に、浸出液の酸化還元電位(以下ORPと記載する。)が低下することで、一旦溶解したAgが析出するので、その際の共沈効果も考えられる。加えて、Agの形態は、必ずしも単体のAgである必要はなく、Ag2S、AgCuS等の硫化物であってもよい。これら硫化物によっても、単体と同様にSiO2の沈降性・ろ過性を改善する。
【0026】
Mn澱物は、亜鉛原料の鉱石中に含まれるMnより供給される澱物である。当該鉱石の種類により差はあるが、当該亜鉛原料中にしめるMnの含有率はおよそ1000ppm程度である。当該Mnは硫酸酸性溶液である浸出液により1次浸出され、2価のMnイオン(Mn2+)として浸出液中に存在することとなる。当該1次浸出液からZnを電解採取する際、アノードとしてPb板を用いることが一般的であるが(将来、他の材料を使うことも検討されている。)、当該電解採取を進めていくと、上述した浸出液中に含まれるMn2+が酸化されMn4+となる。このときMn4+は溶解度が小さいため、MnO2となりアノードにスケールとして析出・付着する。そのスケールを除去・収集したものがMn澱物と呼ばれ、主成分はMnO2であるが、その他PbO2やSrSO4(硫酸ストロンチウム)などが不純物として含まれている。
【0027】
当該Mn澱物を浸出液に添加した場合、Mn澱物中の固形分はほとんど溶解しない。このため、浸出液からシリカが析出する際の種晶として作用し、当該シリカの沈降性・ろ過性向上の効果をもたらしていると考えられる。加えて、MnO2には、酸化還元電位を上昇させる効果があるため為、浸出液に添加されることで亜鉛原料の鉱石中に含まれるCuの浸出に役立ち、塩基性硫酸銅の析出防止にも役に立つことで、沈降性低下防止の効果を発揮していると考えられる。
【0028】
ヘマタイトは、上述した亜鉛浸出残査を脱鉄処理する際に生成するα-Fe2O3である。当該ヘマタイトを浸出液に添加した場合、溶解する傾向にはあるが僅かに固形分が残っており、当該固形分が種晶として、またはSiO2析出の際の共沈物として作用し、SiO2の沈降性向上、ろ過性向上の効果をもたらしていると考えられる。
【0029】
これに対し、Bi2O3を浸出液に添加すると、ほぼ全量溶解するが、pHが0.5となった時点でBi濃度は3000mg/Lとなり、浸出液中にて種晶として存在していると考えられる。
この種晶として存在しているBi2O3が、一旦、再溶解したSiO2が再析出する際の種晶として作用していると考えられる。さらに、BiはPbと同様に、非常に重い元素である為、化合物自身の比重が重いことによるアンカー効果によって、SiO2の沈降性、ろ過性を改善していると考えられる。ここでBi濃度範囲を調整して浸出液に添加したところ、浸出液中のBi濃度の増加に伴い、シリカの沈降性・ろ過性向上の効果が現れるが、4g/L以上になると、該効果が顕著になることが判明した。
【0030】
TiO2、Sb2O3、SnO2、Ga2O3、CdO、Ca3(PO4)2、P2O5、CaF2、PbO2、Pd、PbSO4、PbS、AgO、Ag、Fe2O3、MnO2の各化合物等を浸出液に添加した場合、浸出液に溶解するが、これらの物質は、浸出液に添加され溶解することで、当該浸出液の液性を変化させて沈降性・ろ過速度などを改善していると考えられる。
【0031】
以上説明した各物質は、当該物質粒子の表面に酸化物が存在することにより、SiO2の種晶になり得るという効果があると考えられる。さらに、当該種晶になり得る効果だけでなく、各物質自身の比重が重いことによるアンカー効果によって、SiO2の沈降性、ろ過性を改善していると考えられる。
【0032】
一方、Pbの酸化物を浸出液に添加した場合、PbS、PbSO4、PbOに比較してPbO2であると、SiO2の沈降性、ろ過性を改善に非常に効果があることが判明した。これは、同じPb化合物ではあっても、当該粒子の表面性である酸化物の違いによると考えられる。
【0033】
また、Ca3(PO4)2を浸出液に添加すると、SiO2の沈降性は却って低下したが、ろ過性は非常に良くなった。この原因は詳しいところは不明であるが、当該Ca3(PO4)2と、上記他の種晶となる化合物とを組合わせて使用することで、容易にSiO2の沈降性・ろ過性を改善することが出来る。以上説明した各物質は、浸出液にそれぞれ単独で添加しても効果を発揮するが、上述したCa3(PO4)2を始めとして、他の物質と混合使用することも好ましい構成である。
【0034】
ここで、本発明者らは、ビスマス酸化物、チタン酸化物、アンチモン酸化物、錫酸化物、ガリウム酸化物、カドミニウム酸化物、リン酸カルシウム塩、酸化リン、弗化カルシウム、鉛酸化物、硫酸鉛、硫化鉛、パラジウム、銀酸化物、銀、鉄酸化物、マンガン酸化物から選択される1種以上の添加物質において、浸出液の沈降性・ろ過性改善効果を発揮する最小添加量についても検討した。その結果、対象とする亜鉛原料中のSiO2品位が2.3%程度であったとしても、各物質の1種以上が当該浸出液中に0.02g/L(約20ppm)以上存在すれば効果があるが、作業性等の観点から、好ましくは4g/L以上、さらに好ましくは10g/L以上添加すれば良いことが判明した。また、添加する各物質は、当該浸出液中にて小さく分散していることが肝要であるが、純度の観点からは100%の純品である必要はない。
【0035】
一方、本発明者らは、本発明を実施するためのコストを低減するために、ビスマス酸化物および/または銀の供給源として、鉛製錬工程で生成するBi密陀および/または鉛電解スライムに注目した。また、鉛電解スライムとは、鉛の電解精製において陽極に付着したスライムであり、その組成分析例は鉛が2〜20wt%、ビスマスが1〜20wt%、アンチモンが1〜20wt%、この他、金、銀も含まれる。ここで、Bi密陀とは、このスライムを酸化処理して、酸化鉛中にビスマスを濃縮させたものであり、その組成分析例は、鉛が1〜10wt%、ビスマスが50〜90wt%である。従って、Bi密陀および鉛電解スライムとも、多量のビスマス酸化物および銀を含有しており、ビスマス酸化物および/または銀の供給源として好適である。尚、ビスマス酸化物としては、BiO、Bi2O3、および、それらの混合物がある。
【0036】
そして、本発明者らが検討した結果、Bi密陀や鉛電解スライム中に、ビスマス酸化物または銀が3wt%以上含有されている場合、上記ビスマス酸化物や銀と同様に使用することが出来、Bi密陀であれば4g/L以上、鉛電解スライムであれば1g/L以上を、浸出液に含有させることで、沈降性・ろ過性改善効果を発揮することが判明した。
【0037】
好ましいことには、Bi密陀、鉛電解スライムとも、Bi2O3およびAgよりコストが安いので、これらを用いることにより、原料コストを削減することができる。さらに好ましいことに、浸出液へ該Bi密陀や鉛電解スライムを加えて、SiO2を沈降・ろ過した後、2次侵出工程を経て得られた残査を再び鉛製錬工程へ戻すことが出来る。当該構成を採ることで、原料コストを大きく削減することも出来る。
【0038】
また、以上説明した物質を含む浸出前の前記硫酸酸性溶液のpHは1.5以下とすることが好ましい構成である。これは当該pH1.5以下とすると、浸出液の酸濃度が確保されるため、化学工学でいうところの拡散・物質移動(dC/dt=k・A・(CL−CS)の関係で、時間当たりの濃度変化は、物質移動係数k・抽出面積A(撹拌による接触回数の増加も含まれる)・および濃度差(CL−CS))の効果により、亜鉛原料からの亜鉛が浸出され易くなるためである。この結果、浸出時間を短縮できるため、浸出槽を多く設置する等の工程複雑化を回避でき、亜鉛の浸出率が向上するからである。
【0039】
さらに、以上説明した物質を含む浸出前の前記硫酸酸性溶液を用いて、前記亜鉛原料を浸出する際の時間は、10分間以上行えばSiO2の沈降性・ろ過性を改善することが出来るし、5時間以下であれば処理コストの増加にはつながらないので好ましい構成である。
【実施例】
【0040】
以下、実施例を参照しながら本発明をより具体的に説明する。ただし、本発明はこれらによって限定されるものではない。
【0041】
(実施例1)
原料として用いた亜鉛原料の焙焼物の組成を表1に示し、浸出液として用いた電解尾液の液体部分および脱鉄后液の組成を表2に示す。
【表1】
【表2】
電解尾液の液体部分440g、脱鉄后液272gを混合したものを浸出液とし、ビーカーにセットして温度を60℃に加温した。この時、当該浸出液のpHは、おおむね0.0を示し、ORP(Ag/AgCl電極)は、1150mVであった。
【0042】
次に、添加物質として、PbS、PbSO4、PbO、PbO2、AgO、Ag粉、ヘマタイト、Mn澱物、Bi2O3、TiO2、Sb2O3、SnO2、Ga2O3、CdO、Pd粉、Ca3(PO4)2、P2O5、CaF2を準備した。
ここで、AgO、Ag粉は、同和ハイテック(株)製のAgO(粒径約10ミクロン)、Ag粉(粒径約1ミクロン)、Pb・Ag残渣を準備した。
ヘマタイトは、上述した亜鉛製錬工程の脱鉄工程で発生するヘマタイト(純度90%以上)を乾燥し解砕したものを準備した。
Mn澱物は、上述した亜鉛錬工程の電解工程でアノードに付着する澱物を採集し、乾燥・解砕して準備した。
Pb・Ag残渣は、上述した亜鉛製錬工程における亜鉛残査を2次浸出して採取されたものを乾燥・解砕して調整し準備した。
Pd粉は、小坂製錬(株)製のPd粉体(粒径約100ミクロン)を準備した。
その他の添加物は、市販の試薬を準備した。
【0043】
各添加物質を各々6.6g計量し、焼鉱添加に先立って、各々を前記浸出液へ添加し5分間撹拌した。尚、撹拌速度は300rpmである。この攪拌後の浸出液の液温、pH、ORPを測定し、さらに0.2ミクロンのフィルターでろ過し、液中の金属元素の分析を行った。その結果を表3に示す。
【表3】
【0044】
次に、亜鉛原料の焙焼物を132gずつ計量し、各々の添加物質が添加された浸出液中に一気に投入した。浸出液の液温は直ちに80℃以上にまで上昇し、5分後のpHは4.0から4.2となった。焙焼物添加後の浸出液のpHを4.2に保持する為、若干量の浸出液を添加して調整し、加温しながら30分撹拌を継続し、亜鉛原料の焙焼物を浸出した。尚、当該浸出の際、浸出液の温度は80℃に制御した。このとき浸出液のpHは4.1〜4.2、ORPは170〜620mVであった。
【0045】
浸出完了後、浸出液の液温、pH、ORPを測定し、さらに0.2ミクロンのフィルターでろ過し、金属元素の分析を行った。その結果を表4に示す。
【表4】
【0046】
また、浸出完了後の浸出液からのSiO2等の沈降性評価を行うため、各々の浸出液へ凝集剤として三洋化成(株)製のサンポリーA511を15ppm添加した。具体的には、サンポリー1gを1Lの純水に希釈し、当該希釈液を内容量9mlの注射器で計量して添加した。凝集剤の添加後、さらに10秒間手撹拌した後、当該浸出液を1Lのメスシリンダーに移して30分間の沈降性を評価した。当該評価は目視とストップウォッチとでおこなった。この沈降性評価結果の一覧を表5に示し、併せて、時間毎の当該沈降性評価結果を図2に縦軸を沈降距離、横軸を時間としたグラフで示し、1分間後の沈降性評価結果を棒グラフで図3に示し、同様に30分間後の沈降性評価結果を図4に示した。
【表5】
【0047】
ここで、1分間後の沈降性評価結果より、1次浸出後の固液分離工程における固形分の沈降速度の速さを評価することができる。また、30分間後の沈降性評価結果より、後工程におけるのスラリー密度の評価を行うことが出来る。即ち、後工程におけるアンダーフローのスラリーは、フィルタープレス等により固液分離され、得られた固形分は、2次浸出工程で処理される。このとき30分間後の沈降性評価結果が小さいと、当該スラリー密度が低くなり、フィルタープレス等にかけられるスラリーのケーキ密度も低くなるという相関がある。当該ケーキ密度が低いとフィルタープレス等の開板作業が増え、生産性が低下するという問題が生じる。また、30分間後の沈降性評価結果が小さいと、ろ過速度も遅くなる傾向があり、これも生産性低下という問題を生じる。
【0048】
前記30分間の評価後、メスシリンダー内に沈降したスラリーを、116mm直径、3ミクロンPTFEろ紙が設置された加圧ろ過器に入れて4kgf/cm2で加圧ろ過し、全量排出となる時間を計測してろ過速度を測定し、各スラリーのろ過性評価をおこなった。このろ過性評価結果の一覧を表5に示し、併せて、各添加物質毎のろ過速度を図5に棒グラフで示した。この時、浸出液は若干冷めており、液温は60℃から45℃となっていた。
【0049】
(比較例1)
原料、浸出液は、実施例1と同様のものを用いるが、浸出液へ添加物質を加えることなく実施例1と同様の操作をおこなった。
まず、各添加物質を添加しない浸出液の液温を60℃とし、pH、ORPを測定し、さらに0.2ミクロンのフィルターでろ過し、金属元素の分析を行った。その結果も表3に示す。
【0050】
次に、亜鉛原料の焙焼物を132g計量し、浸出液中に一気に投入した。浸出液の液温は直ちに約80℃にまで上昇し、5分後のpHは4.1となった。その結果も表4に示す。焙焼物添加後の浸出液のpHを4.2に保持する為、若干量の浸出液を添加して調整し、加温しながら30分撹拌を継続し、亜鉛原料の焙焼物を浸出した。尚、当該浸出中の時、温度は80℃に制御した。
【0051】
浸出完了後、浸出液の液温、pH、ORPを測定し、さらに0.2ミクロンのフィルターでろ過し、金属元素の分析を行った。その結果を表4に示す。
実施例1と同様に浸出液へ凝集剤を15ppm添加し、さらに10秒間手撹拌した後、30分間の沈降性を評価した。この沈降性評価結果の一覧も表5に示し、併せて、当該沈降性評価結果を、図4に縦軸を沈降距離、横軸を時間としたグラフで示し、1分間後の沈降性評価結果を棒グラフで図2に示し、同様に30分間後の沈降性評価結果を図3に示した。
さらに実施例1と同様にスラリーのろ過性評価をおこなった。このろ過性評価結果の一覧も表5に示し、併せて、ろ過速度を図5に棒グラフで示した。この時、浸出液は若干冷めており液温は60℃となっていた。
【0052】
(実施例1、比較例1のまとめ)
表3〜5に示した試験結果より、種晶となる各物質を添加する実施例1と、添加しない比較例1とを比較した。すると表3より、いずれの物質を添加した場合であっても、無添加の場合より沈降性またはろ過性の少なくとも一方で向上が見られた。そして、PbO2、AgO、Ag粉、ヘマタイト、Mn澱物、Bi2O3、TiO2、Sb2O3、SnO2、Ga2O3、CdO、Pd、P2O5、CaF2を添加した場合は、無添加の場合より沈降性およびろ過性で向上が見られた。さらに、PbO2、Ag粉、Bi2O3、Ca3(PO4)2、CaF2を添加した場合は、PbAg残渣を添加した場合以上のろ過性改善の効果があることが判明した。
【0053】
また、表4の結果より以下のことが考えられた。
前記浸出液にPbO2を添加しても、それほどPb濃度は上がらないが、Mn濃度が下がる。この時、MnがMnO2となって析出しているのが観察される。つまり、PbO2の大半が種晶となっていると推測される。
AgO添加では、ほぼ全量が溶解し、浸出後も溶解したままであった。それにも拘わらず、比較例1と比較して沈降性が改善されているのは、液性の変化によると考えられる。
Ag粉添加では、約半分が溶解したが、pHの上昇と共に析出した為、液中には残っていない。つまりAgは、共沈による効果と種晶としての効果との両方の効果を発現した可能性が考えられる。
ヘマタイト添加では、若干Fe濃度が上昇していることから、一部溶解したと考えられるが、大部分は種晶として残ることで効果を発揮したと考えられる。
Bi2O3添加では、浸出前に、ほぼ全量溶解している。そして、浸出後はBiが液中に存在しないことから、共沈による効果と種晶としての効果との両方の効果を発現した可能性が考えられる。
Sb2O3添加では、一部が溶解し、一部が未溶解であることから共沈による効果と種晶としての効果との両方の効果を発現した可能性が考えられる。
SnO2およびGa2O3添加では、ほとんど未溶解であることから種晶として効果を発揮したと考えられる。
CdO添加では全量が溶解し、pHが上昇しても溶解したままであった。それにも拘わらず、比較例1と比較して沈降性が改善されているのは、液性の変化によると考えられる。
Ca3(PO4)2およびCaF2添加では、亜鉛原料の焙焼物添加前における浸出液のCa濃度が若干上昇していることから、ごく僅かは溶解していると考えられるが、ほとんど未溶解であることから種晶として効果を発揮したと考えられる。
P2O5添加では、P2O5+3H2O→2H3PO4の反応により、H3PO4となり浸出液に入れると同時に溶解している。
【0054】
(実施例2)
原料として、実施例1で説明したものと同様の亜鉛原料の焙焼物、浸出液として電解尾液の液体部分および脱鉄后液を準備した。実施例1と同様に、電解尾液の液体部分440g、脱鉄后液272gを混合したものを浸出液とした。
【0055】
市販のBi2O3を準備し、これを前記浸出液へ添加し5分間撹拌して、Bi2O3濃度が0g/L(0wt%)、1g/L(0.5wt%)、2g/L(1wt%)、4g/L(2wt%)、8g/L(4wt%)の各試料を調製した。尚、撹拌速度は300rpmである。
【0056】
次に、亜鉛原料の焙焼物を132gずつ計量し、各試料液中に一気に投入したのち、実施例1と同様の処理を行い、浸出完了後、pH、ORPを測定し、さらに0.2ミクロンのフィルターでろ過し、金属元素の分析を行った。その結果を表6に示す。
【0057】
【表6】
【0058】
また、実施例1と同様に浸出完了後の浸出液からのSiO2等の沈降性評価を行った。該沈降性評価結果を時間毎の沈降性評価結果として、縦軸を沈降距離、横軸を時間としたグラフを用いて図6に示す。さらに、ろ過速度を図7に示す。尚、図7において縦軸はろ過速度、横軸はBi2O3の添加量である。
【0059】
図6、図7の結果より、Bi2O3の浸出液へ添加により、沈降距離およびろ過速度とも向上していることが判明した。そして、この添加効果は、Bi2O3の添加量が4g/L(2wt%)以上となると顕著になった。
【0060】
(実施例3)
実施例1、2と同様に浸出液を準備した。実施例2で説明したBi2O3に加えて、市販のAg、鉛製錬工程から採取したBi密陀、およびPb電解スライムを準備した。これらを前記浸出液へ10g/L(5wt%)添加し、各試料を調製した。尚、撹拌速度は300rpmである。
尚、該Bi密陀、およびPb電解スライムの分析結果を表7に示す。表8より、該Bi密陀、およびPb電解スライムとも、3wt%以上のBiおよびAgを含有していることが判明した。
【0061】
【表7】
【0062】
次に、実施例12と同様に、亜鉛原料の焙焼物を計量し、各試料液中に一気に投入したのち、実施例1、2と同様の処理を行い、浸出完了後、pH、ORPを測定し、さらに0.2ミクロンのフィルターでろ過し、金属元素の分析を行った。その結果を表8に示す。
【0063】
【表8】
【0064】
また、実施例1、2と同様に浸出完了後の浸出液からのSiO2等の沈降性評価を行った。該沈降性評価結果を時間毎の沈降性評価結果として、縦軸を沈降距離、横軸を時間としたグラフを用いて図8に示す。さらに、各試料のろ過速度を図9に、沈降性試験結果(2分間後)を図10に、沈降性試験結果(30分間後)を図11に示す。
【0065】
図8〜図11の結果より、Bi密陀、およびPb電解スライムの浸出液へ添加により、沈降距離およびろ過速度とも、顕著に向上していることが判明した。そして、この添加効果は、同量のBi2O3および銀の添加効果に勝ることも判明した。
【図面の簡単な説明】
【0066】
【図1】本発明の実施の形態に係る亜鉛原料の処理フロー例である。
【図2】本発明の実施例1および比較例に係る各添加物質を添加したときの時間毎の沈降性評価結果を示すグラフである。
【図3】本発明の実施例1および比較例に係る各添加物質を添加したときの1分間後の沈降性評価結果示した棒グラフである。
【図4】本発明の実施例1および比較例に係る各添加物質を添加したときの30分間後の沈降性評価結果示した棒グラフである。
【図5】本発明の実施例1および比較例に係る各添加物質を添加したときのろ過性評価結果を示す棒グラフである。
【図6】本発明の実施例2に係るBi2O3を添加したときの時間毎の沈降性評価結果を示すグラフである。
【図7】本発明の実施例2に係るBi2O3を添加したときのろ過速度を示すグラフである。
【図8】本発明の実施例3に係る各添加物質を添加したときの時間毎の沈降性評価結果を示すグラフである。
【図9】本発明の実施例3に係る各添加物質を添加したときのろ過速度を示す棒グラフである。
【図10】本発明の実施例3に係る各添加物質を添加したときの2分間後の沈降性評価結果示した棒グラフである。
【図11】本発明の実施例3に係る各添加物質を添加したときの30分間後の沈降性評価結果示した棒グラフである。
【技術分野】
【0001】
本発明は湿式亜鉛製錬工程における亜鉛原料の湿式処理工程に関し、特に、前記亜鉛原料を硫酸酸性溶液で浸出した後に、シリカの沈降性・ろ過性を向上させる亜鉛原料の処理方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、湿式亜鉛製錬は、ZnS(硫化亜鉛)を主成分とする鉱石を選鉱して亜鉛原料とし、当該亜鉛原料の焙焼物を硫酸酸性溶液を用いて浸出し、得られた浸出液を固液分離して亜鉛浸出残査を除去した後、さらに浄液し、当該液体部分より電解採取を経て電気亜鉛を得ている。このとき前記鉱石に不純物が多く存在すると、亜鉛製錬工程の操業において様々な課題が発生する。
例えば、前記亜鉛原料に不純物としてFe(鉄)やSi(ケイ素)が多く含有されていると、焙焼物の浸出後に生成する亜鉛浸出残渣の沈降性が悪化する。特に、不純物がSi化合物であるシリカであると、その含有量が多くなるに従い当該シリカがゲル化し、前記亜鉛浸出残渣と絡み合うため、前記固液分離工程の沈降性・ろ過性が著しく悪くなる。そこで、前記固液分離工程における沈降性・ろ過性を向上させるため、特許文献1を始めとする提案がされている。
【0003】
【特許文献1】特許第3464602号
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
例えば、特許文献1は、前記固液分離工程における沈降性・ろ過性を向上させるため、浸出工程において、浸出を行う酸溶解槽内の組成物中のシリカの量に応じ、所定量以上の可溶性シリカ、またはシリカを含有する亜鉛浸出残渣を前記溶解槽へ供給することを提案している。
【0005】
しかし、本発明者らが検討したところ、当該浸出工程において酸溶解槽における組成物中のシリカの量に応じ、所定量以上の可溶性シリカを前記溶解槽へ供給しても、前記固液分離工程におけるシリカの沈降性・ろ過性の向上は、満足できる水準ではなかった。
【0006】
本発明は、上述の課題を解決するために成されたものであり、工程の複雑化や浸出時間の延長をもたらすことなく、固液分離工程においてシリカの沈降性・ろ過性を向上させる亜鉛原料の処理方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らは、上記の課題を解決すべく鋭意研究を続け試行錯誤の結果、前記浸出工程で用いる硫酸酸性溶液へ、亜鉛製錬工程で産出するPb(鉛)・Ag(銀)残査を添加した後に当該浸出を行うと、固液分離工程においてシリカの沈降性・ろ過性が向上することを見出した。本発明者らは、この知見を出発点として研究を続け、Bi酸化物(ビスマス酸化物)を始めとする各種の物質を添加した硫酸酸性溶液を用いると、共沈作用、またはアンカー効果により固液分離工程においてシリカの沈降性・ろ過性が向上することを見出し本発明を完成した。
【0008】
上述の課題を解決するための第1の手段は、
亜鉛原料から亜鉛を抽出する湿式亜鉛製錬工程において、
焙焼した亜鉛原料を硫酸酸性溶液を用いて浸出する際、ビスマス酸化物、チタン酸化物、アンチモン酸化物、錫酸化物、ガリウム酸化物、カドミニウム酸化物、リン酸カルシウム塩、酸化リン、弗化カルシウム、鉛酸化物、硫酸鉛、硫化鉛、パラジウム、銀酸化物、銀、鉄酸化物、マンガン酸化物、から選択される1種以上の添加物質が添加された硫酸酸性溶液を用いて、浸出をおこなうことを特徴とする亜鉛原料の処理方法である。
【0009】
第2の手段は、
前記鉄酸化物として、前記湿式亜鉛製錬工程から産出するヘマタイトを用いることを特徴とする第1の手段に記載の亜鉛原料の処理方法である。
【0010】
第3の手段は、
前記マンガン酸化物として、前記湿式亜鉛製錬工程から産出するMn澱物を用いることを特徴とする第1の手段に記載の亜鉛原料の処理方法である。
【0011】
第4の手段は、
前記酸化ビスマスおよび/または銀として、
鉛製錬工程から産出され、BiまたはAgを3wt%以上含有する、Bi密陀および/または鉛電解スライムを用いることを特徴とする第1または第2の手段に記載の亜鉛原料の処理方法である。
【0012】
第5の手段は、
前記添加物質の1種以上が添加され、当該添加物質を0.02g/L以上含有する硫酸酸性溶液を用いることを特徴とする第1から第4の手段のいずれかに記載の亜鉛原料の処理方法である。
【0013】
第6の手段は、
前記添加物質としてBi2O3を用い、前記硫酸酸性溶液中に4g/L以上添加することを特徴とする第1の手段に記載の亜鉛原料の処理方法である。
【0014】
第7の手段は、
前記添加物質として鉛製錬工程から産出するBi密陀を用い、前記硫酸酸性溶液中に4g/L以上添加することを特徴とする第1の手段に記載の亜鉛原料の処理方法である。
【0015】
第8の手段は、
前記添加物質として鉛製錬工程から産出する鉛電解スライムを用い、前記硫酸酸性溶液中に1g/L以上添加することを特徴とする第1の手段に記載の亜鉛原料の処理方法である。
【0016】
第9の手段は、
前記浸出前の前記硫酸酸性溶液のpHを、1.5以下とすることを特徴とする第1から第8の手段のいずれかに記載の亜鉛原料の処理方法である。
【0017】
第10の手段は、
前記亜鉛原料を浸出する時間を、10分間以上5時間以下とすることを特徴とする第1から第9の手段のいずれかに記載の亜鉛原料の処理方法である。
【発明の効果】
【0018】
上述した第1〜第10の手段のいずれかに記載の亜鉛原料の処理方法によれば、当該亜鉛原料を硫酸酸性溶液で浸出した後の固液分離工程において、前記亜鉛原料に含有されたシリカを含む固形成分が、液体成分より容易に分離して沈殿した。
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
本発明の実施の形態を、湿式亜鉛製錬工程における亜鉛原料の処理フロー例である図1を参照しながら説明する。
図1に示すように、亜鉛鉱石等の亜鉛原料は、まず、焙焼・粉砕されるが、粉砕は浸出の前後で実施され粉砕物となる。この粉砕物へ、後述する電解尾液の液体部分や脱鉄后液の混合液を含む硫酸酸性の浸出液を加え、1次の浸出操作の後、固液分離工程を行って液体の浸出液と固体の亜鉛浸出残査とを得る。次に、当該浸出液を浄液操作の後に電解処理し、電気亜鉛と電解尾液とを得る。当該電気亜鉛は亜鉛製錬の次工程へと送られるが、電解尾液は固液分離工程の後、液体部分は上述した浸出液として循環使用され、固体部分はMn澱物となる。
【0020】
一方、上述の亜鉛浸出残査は、例えばSO2(二酸化硫黄)を用いて2次浸出操作を行った後、固液分離操作を行い、液体の2次浸出液と固体のPb・Ag残査とを得る。この2次浸出液に炭酸カルシウムを加えて1段中和を行い固液分離工程の後、液体の1段中和液と固体の1段石膏とを得る。この1段中和液に亜鉛末を加えて脱砒操作を行い、液体の脱砒液と固体のRT残査とを得る。尚、ここでRT残渣とはResidue Treatmentの略称で、Cu3Asを主成分とした銅・砒素化合物である。この脱砒液に炭酸カルシウムを加えて2段中和を行い固液分離工程の後、液体の2段中和液と固体の2段石膏とを得る。この2段中和液にO2・蒸気を加えて脱鉄処理を行い、液体の脱鉄后液と固体のヘマタイトとを得る。得られた脱鉄后液は、上述した電解尾液の液体部分と伴に浸出液として循環使用する。
【0021】
この時、当初の亜鉛原料中にSiO2(シリカ)が多量に含有されていると、当該SiO2、が亜鉛焙焼物の浸出時にZnSiO3となって浸出液中に溶解し、当該浸出液のpHの上昇とともに析出してゲル化し、固液分離工程時における亜鉛浸出残査の沈降性・ろ過性を悪くする。ここで、当該固液分離工程時における亜鉛浸出残査の沈降性を良好に保持するには、当初の亜鉛原料中のSiO2品位が1%以下であることが好ましいのだが、それ以上になると亜鉛浸出残査の沈降性不良・ろ過性不良が発生することとなる。しかし、当初の亜鉛原料中のSiO2含有量は多様であり、2%を超える場合もある。
【0022】
このようなSiO2を多量に含有する亜鉛原料を用いた場合の、固液分離工程時における亜鉛浸出残査の沈降性・ろ過性は悪く、例えば、後述する実施例1で行った沈降性評価結果によれば、1分間後の沈降距離で12mm、ろ過速度で1.75l/m2/minであった。ここで当該浸出液へ、上述のPb・Ag残査を10g/L(約10000ppm)添加したところ、1分間後の沈降距離が39mm、ろ過速度が3.13l/m2/minへと向上した。次に、当該浸出液へ、上述のMn澱物を10g/L添加したところ、1分間後の沈降距離が27mm、ろ過速度が6.45l/m2/minへと向上した。さらに当該浸出液へ、上述のヘマタイトを10g/L添加したところ、1分間後の沈降距離が22mm、ろ過速度が5.32l/m2/minへと向上した。これらの知見から、当該浸出液へ添加することで亜鉛浸出残査の沈降性・ろ過性を向上させることの出来る物質を探索したところ、ビスマス酸化物(BiO、Bi2O3、およびそれらの混合物)、チタン酸化物(TiO2)、アンチモン酸化物(Sb2O3)、錫酸化物(SnO2)、ガリウム酸化物(Ga2O3)、カドミニウム酸化物(CdO)、リン酸カルシウム塩(Ca3(PO4)2)、酸化リン(P2O5)、弗化カルシウム(CaF2)、鉛酸化物(PbO2)、硫酸鉛(PbSO4)、硫化鉛(PbS)、パラジウム(Pb)粉、銀酸化物(AgO)、銀(Ag)粉、鉄酸化物(Fe2O3)、マンガン酸化物(MnO2)が見出された。そして、これらの物質から選択される1種以上の物質を、当該浸出液に添加してから亜鉛原料の浸出操作を行うことで、亜鉛浸出残査の固液分離工程において亜鉛残査の沈降性、ろ過性を向上させることが出来た。
【0023】
ここで、上述した物質についてさらに説明する。
Pb・Ag残査とは、上述した1次の浸出操作で産出した固形分である亜鉛浸出残渣(ジンクフェライトというFeとZn(亜鉛)との化合物である。)を、さらにSO2等により2次浸出した残査のことである。主成分は、PbSO4とSiO2とであり、他に、少量のSn・Sb化合物、極少量のAgが含有されている。これらの各成分は、当初の亜鉛原料(亜鉛精鉱や、それを焙焼した焼鉱)の成分比率により変化する。即ち、当初の亜鉛原料において、Pbが少ないものはPbが少なくなるし、Agが極少量含まれれば、極少量のAgを含むこととなる。当社での操業におけるPbAg残渣の代表的な組成比率としては、SiO2が20%、Pbが20%その他、SO4などの塩類やSn・Sb化合物であり、Agは約2000ppmである。尤も、Ag濃度は鉱石ブレンドによって変動し、4000〜5000ppmになることもある。
【0024】
当該Pb・Ag残査を浸出液に添加した際、残査中のSiO2は、上記2次浸出時に熱作用を受けるため結晶性のSiO2となっており浸出液に溶解しない。Pbも、PbSO4の形態で存在しているため硫酸にはほとんど溶解しない。この結果、当該Pb・Ag残査を添加した浸出液で亜鉛原料の焙焼物を浸出する際、析出するシリカの沈降性・ろ過性向上の効果をもたらしたと考えられる。
また、Agは、非酸化性の酸には溶解しないので、当該Agが析出するシリカの種晶として効果をもたらしていると考えられる。
【0025】
さらに、当該Agが析出するシリカの種晶として効果をもたらす際、Agの絶対的存在量という観点から見ると、バルク時のAgを添加する場合よりも少ないAg量を含むAg・Pb残査でも、沈降性・ろ過性に効果がある。これは、上述したPbSO4とSiO2との協働効果の他に、PbAg残渣中に含有されているAgが微細に分散しており、その表面積が大きいことも原因と考えられる。さらに、Agは、浸出液中に含まれる酸化性の酸(4価のMn)により極少量が浸出液に溶解するが、亜鉛原料の焙焼物が浸出されていくと同時に、浸出液の酸化還元電位(以下ORPと記載する。)が低下することで、一旦溶解したAgが析出するので、その際の共沈効果も考えられる。加えて、Agの形態は、必ずしも単体のAgである必要はなく、Ag2S、AgCuS等の硫化物であってもよい。これら硫化物によっても、単体と同様にSiO2の沈降性・ろ過性を改善する。
【0026】
Mn澱物は、亜鉛原料の鉱石中に含まれるMnより供給される澱物である。当該鉱石の種類により差はあるが、当該亜鉛原料中にしめるMnの含有率はおよそ1000ppm程度である。当該Mnは硫酸酸性溶液である浸出液により1次浸出され、2価のMnイオン(Mn2+)として浸出液中に存在することとなる。当該1次浸出液からZnを電解採取する際、アノードとしてPb板を用いることが一般的であるが(将来、他の材料を使うことも検討されている。)、当該電解採取を進めていくと、上述した浸出液中に含まれるMn2+が酸化されMn4+となる。このときMn4+は溶解度が小さいため、MnO2となりアノードにスケールとして析出・付着する。そのスケールを除去・収集したものがMn澱物と呼ばれ、主成分はMnO2であるが、その他PbO2やSrSO4(硫酸ストロンチウム)などが不純物として含まれている。
【0027】
当該Mn澱物を浸出液に添加した場合、Mn澱物中の固形分はほとんど溶解しない。このため、浸出液からシリカが析出する際の種晶として作用し、当該シリカの沈降性・ろ過性向上の効果をもたらしていると考えられる。加えて、MnO2には、酸化還元電位を上昇させる効果があるため為、浸出液に添加されることで亜鉛原料の鉱石中に含まれるCuの浸出に役立ち、塩基性硫酸銅の析出防止にも役に立つことで、沈降性低下防止の効果を発揮していると考えられる。
【0028】
ヘマタイトは、上述した亜鉛浸出残査を脱鉄処理する際に生成するα-Fe2O3である。当該ヘマタイトを浸出液に添加した場合、溶解する傾向にはあるが僅かに固形分が残っており、当該固形分が種晶として、またはSiO2析出の際の共沈物として作用し、SiO2の沈降性向上、ろ過性向上の効果をもたらしていると考えられる。
【0029】
これに対し、Bi2O3を浸出液に添加すると、ほぼ全量溶解するが、pHが0.5となった時点でBi濃度は3000mg/Lとなり、浸出液中にて種晶として存在していると考えられる。
この種晶として存在しているBi2O3が、一旦、再溶解したSiO2が再析出する際の種晶として作用していると考えられる。さらに、BiはPbと同様に、非常に重い元素である為、化合物自身の比重が重いことによるアンカー効果によって、SiO2の沈降性、ろ過性を改善していると考えられる。ここでBi濃度範囲を調整して浸出液に添加したところ、浸出液中のBi濃度の増加に伴い、シリカの沈降性・ろ過性向上の効果が現れるが、4g/L以上になると、該効果が顕著になることが判明した。
【0030】
TiO2、Sb2O3、SnO2、Ga2O3、CdO、Ca3(PO4)2、P2O5、CaF2、PbO2、Pd、PbSO4、PbS、AgO、Ag、Fe2O3、MnO2の各化合物等を浸出液に添加した場合、浸出液に溶解するが、これらの物質は、浸出液に添加され溶解することで、当該浸出液の液性を変化させて沈降性・ろ過速度などを改善していると考えられる。
【0031】
以上説明した各物質は、当該物質粒子の表面に酸化物が存在することにより、SiO2の種晶になり得るという効果があると考えられる。さらに、当該種晶になり得る効果だけでなく、各物質自身の比重が重いことによるアンカー効果によって、SiO2の沈降性、ろ過性を改善していると考えられる。
【0032】
一方、Pbの酸化物を浸出液に添加した場合、PbS、PbSO4、PbOに比較してPbO2であると、SiO2の沈降性、ろ過性を改善に非常に効果があることが判明した。これは、同じPb化合物ではあっても、当該粒子の表面性である酸化物の違いによると考えられる。
【0033】
また、Ca3(PO4)2を浸出液に添加すると、SiO2の沈降性は却って低下したが、ろ過性は非常に良くなった。この原因は詳しいところは不明であるが、当該Ca3(PO4)2と、上記他の種晶となる化合物とを組合わせて使用することで、容易にSiO2の沈降性・ろ過性を改善することが出来る。以上説明した各物質は、浸出液にそれぞれ単独で添加しても効果を発揮するが、上述したCa3(PO4)2を始めとして、他の物質と混合使用することも好ましい構成である。
【0034】
ここで、本発明者らは、ビスマス酸化物、チタン酸化物、アンチモン酸化物、錫酸化物、ガリウム酸化物、カドミニウム酸化物、リン酸カルシウム塩、酸化リン、弗化カルシウム、鉛酸化物、硫酸鉛、硫化鉛、パラジウム、銀酸化物、銀、鉄酸化物、マンガン酸化物から選択される1種以上の添加物質において、浸出液の沈降性・ろ過性改善効果を発揮する最小添加量についても検討した。その結果、対象とする亜鉛原料中のSiO2品位が2.3%程度であったとしても、各物質の1種以上が当該浸出液中に0.02g/L(約20ppm)以上存在すれば効果があるが、作業性等の観点から、好ましくは4g/L以上、さらに好ましくは10g/L以上添加すれば良いことが判明した。また、添加する各物質は、当該浸出液中にて小さく分散していることが肝要であるが、純度の観点からは100%の純品である必要はない。
【0035】
一方、本発明者らは、本発明を実施するためのコストを低減するために、ビスマス酸化物および/または銀の供給源として、鉛製錬工程で生成するBi密陀および/または鉛電解スライムに注目した。また、鉛電解スライムとは、鉛の電解精製において陽極に付着したスライムであり、その組成分析例は鉛が2〜20wt%、ビスマスが1〜20wt%、アンチモンが1〜20wt%、この他、金、銀も含まれる。ここで、Bi密陀とは、このスライムを酸化処理して、酸化鉛中にビスマスを濃縮させたものであり、その組成分析例は、鉛が1〜10wt%、ビスマスが50〜90wt%である。従って、Bi密陀および鉛電解スライムとも、多量のビスマス酸化物および銀を含有しており、ビスマス酸化物および/または銀の供給源として好適である。尚、ビスマス酸化物としては、BiO、Bi2O3、および、それらの混合物がある。
【0036】
そして、本発明者らが検討した結果、Bi密陀や鉛電解スライム中に、ビスマス酸化物または銀が3wt%以上含有されている場合、上記ビスマス酸化物や銀と同様に使用することが出来、Bi密陀であれば4g/L以上、鉛電解スライムであれば1g/L以上を、浸出液に含有させることで、沈降性・ろ過性改善効果を発揮することが判明した。
【0037】
好ましいことには、Bi密陀、鉛電解スライムとも、Bi2O3およびAgよりコストが安いので、これらを用いることにより、原料コストを削減することができる。さらに好ましいことに、浸出液へ該Bi密陀や鉛電解スライムを加えて、SiO2を沈降・ろ過した後、2次侵出工程を経て得られた残査を再び鉛製錬工程へ戻すことが出来る。当該構成を採ることで、原料コストを大きく削減することも出来る。
【0038】
また、以上説明した物質を含む浸出前の前記硫酸酸性溶液のpHは1.5以下とすることが好ましい構成である。これは当該pH1.5以下とすると、浸出液の酸濃度が確保されるため、化学工学でいうところの拡散・物質移動(dC/dt=k・A・(CL−CS)の関係で、時間当たりの濃度変化は、物質移動係数k・抽出面積A(撹拌による接触回数の増加も含まれる)・および濃度差(CL−CS))の効果により、亜鉛原料からの亜鉛が浸出され易くなるためである。この結果、浸出時間を短縮できるため、浸出槽を多く設置する等の工程複雑化を回避でき、亜鉛の浸出率が向上するからである。
【0039】
さらに、以上説明した物質を含む浸出前の前記硫酸酸性溶液を用いて、前記亜鉛原料を浸出する際の時間は、10分間以上行えばSiO2の沈降性・ろ過性を改善することが出来るし、5時間以下であれば処理コストの増加にはつながらないので好ましい構成である。
【実施例】
【0040】
以下、実施例を参照しながら本発明をより具体的に説明する。ただし、本発明はこれらによって限定されるものではない。
【0041】
(実施例1)
原料として用いた亜鉛原料の焙焼物の組成を表1に示し、浸出液として用いた電解尾液の液体部分および脱鉄后液の組成を表2に示す。
【表1】
【表2】
電解尾液の液体部分440g、脱鉄后液272gを混合したものを浸出液とし、ビーカーにセットして温度を60℃に加温した。この時、当該浸出液のpHは、おおむね0.0を示し、ORP(Ag/AgCl電極)は、1150mVであった。
【0042】
次に、添加物質として、PbS、PbSO4、PbO、PbO2、AgO、Ag粉、ヘマタイト、Mn澱物、Bi2O3、TiO2、Sb2O3、SnO2、Ga2O3、CdO、Pd粉、Ca3(PO4)2、P2O5、CaF2を準備した。
ここで、AgO、Ag粉は、同和ハイテック(株)製のAgO(粒径約10ミクロン)、Ag粉(粒径約1ミクロン)、Pb・Ag残渣を準備した。
ヘマタイトは、上述した亜鉛製錬工程の脱鉄工程で発生するヘマタイト(純度90%以上)を乾燥し解砕したものを準備した。
Mn澱物は、上述した亜鉛錬工程の電解工程でアノードに付着する澱物を採集し、乾燥・解砕して準備した。
Pb・Ag残渣は、上述した亜鉛製錬工程における亜鉛残査を2次浸出して採取されたものを乾燥・解砕して調整し準備した。
Pd粉は、小坂製錬(株)製のPd粉体(粒径約100ミクロン)を準備した。
その他の添加物は、市販の試薬を準備した。
【0043】
各添加物質を各々6.6g計量し、焼鉱添加に先立って、各々を前記浸出液へ添加し5分間撹拌した。尚、撹拌速度は300rpmである。この攪拌後の浸出液の液温、pH、ORPを測定し、さらに0.2ミクロンのフィルターでろ過し、液中の金属元素の分析を行った。その結果を表3に示す。
【表3】
【0044】
次に、亜鉛原料の焙焼物を132gずつ計量し、各々の添加物質が添加された浸出液中に一気に投入した。浸出液の液温は直ちに80℃以上にまで上昇し、5分後のpHは4.0から4.2となった。焙焼物添加後の浸出液のpHを4.2に保持する為、若干量の浸出液を添加して調整し、加温しながら30分撹拌を継続し、亜鉛原料の焙焼物を浸出した。尚、当該浸出の際、浸出液の温度は80℃に制御した。このとき浸出液のpHは4.1〜4.2、ORPは170〜620mVであった。
【0045】
浸出完了後、浸出液の液温、pH、ORPを測定し、さらに0.2ミクロンのフィルターでろ過し、金属元素の分析を行った。その結果を表4に示す。
【表4】
【0046】
また、浸出完了後の浸出液からのSiO2等の沈降性評価を行うため、各々の浸出液へ凝集剤として三洋化成(株)製のサンポリーA511を15ppm添加した。具体的には、サンポリー1gを1Lの純水に希釈し、当該希釈液を内容量9mlの注射器で計量して添加した。凝集剤の添加後、さらに10秒間手撹拌した後、当該浸出液を1Lのメスシリンダーに移して30分間の沈降性を評価した。当該評価は目視とストップウォッチとでおこなった。この沈降性評価結果の一覧を表5に示し、併せて、時間毎の当該沈降性評価結果を図2に縦軸を沈降距離、横軸を時間としたグラフで示し、1分間後の沈降性評価結果を棒グラフで図3に示し、同様に30分間後の沈降性評価結果を図4に示した。
【表5】
【0047】
ここで、1分間後の沈降性評価結果より、1次浸出後の固液分離工程における固形分の沈降速度の速さを評価することができる。また、30分間後の沈降性評価結果より、後工程におけるのスラリー密度の評価を行うことが出来る。即ち、後工程におけるアンダーフローのスラリーは、フィルタープレス等により固液分離され、得られた固形分は、2次浸出工程で処理される。このとき30分間後の沈降性評価結果が小さいと、当該スラリー密度が低くなり、フィルタープレス等にかけられるスラリーのケーキ密度も低くなるという相関がある。当該ケーキ密度が低いとフィルタープレス等の開板作業が増え、生産性が低下するという問題が生じる。また、30分間後の沈降性評価結果が小さいと、ろ過速度も遅くなる傾向があり、これも生産性低下という問題を生じる。
【0048】
前記30分間の評価後、メスシリンダー内に沈降したスラリーを、116mm直径、3ミクロンPTFEろ紙が設置された加圧ろ過器に入れて4kgf/cm2で加圧ろ過し、全量排出となる時間を計測してろ過速度を測定し、各スラリーのろ過性評価をおこなった。このろ過性評価結果の一覧を表5に示し、併せて、各添加物質毎のろ過速度を図5に棒グラフで示した。この時、浸出液は若干冷めており、液温は60℃から45℃となっていた。
【0049】
(比較例1)
原料、浸出液は、実施例1と同様のものを用いるが、浸出液へ添加物質を加えることなく実施例1と同様の操作をおこなった。
まず、各添加物質を添加しない浸出液の液温を60℃とし、pH、ORPを測定し、さらに0.2ミクロンのフィルターでろ過し、金属元素の分析を行った。その結果も表3に示す。
【0050】
次に、亜鉛原料の焙焼物を132g計量し、浸出液中に一気に投入した。浸出液の液温は直ちに約80℃にまで上昇し、5分後のpHは4.1となった。その結果も表4に示す。焙焼物添加後の浸出液のpHを4.2に保持する為、若干量の浸出液を添加して調整し、加温しながら30分撹拌を継続し、亜鉛原料の焙焼物を浸出した。尚、当該浸出中の時、温度は80℃に制御した。
【0051】
浸出完了後、浸出液の液温、pH、ORPを測定し、さらに0.2ミクロンのフィルターでろ過し、金属元素の分析を行った。その結果を表4に示す。
実施例1と同様に浸出液へ凝集剤を15ppm添加し、さらに10秒間手撹拌した後、30分間の沈降性を評価した。この沈降性評価結果の一覧も表5に示し、併せて、当該沈降性評価結果を、図4に縦軸を沈降距離、横軸を時間としたグラフで示し、1分間後の沈降性評価結果を棒グラフで図2に示し、同様に30分間後の沈降性評価結果を図3に示した。
さらに実施例1と同様にスラリーのろ過性評価をおこなった。このろ過性評価結果の一覧も表5に示し、併せて、ろ過速度を図5に棒グラフで示した。この時、浸出液は若干冷めており液温は60℃となっていた。
【0052】
(実施例1、比較例1のまとめ)
表3〜5に示した試験結果より、種晶となる各物質を添加する実施例1と、添加しない比較例1とを比較した。すると表3より、いずれの物質を添加した場合であっても、無添加の場合より沈降性またはろ過性の少なくとも一方で向上が見られた。そして、PbO2、AgO、Ag粉、ヘマタイト、Mn澱物、Bi2O3、TiO2、Sb2O3、SnO2、Ga2O3、CdO、Pd、P2O5、CaF2を添加した場合は、無添加の場合より沈降性およびろ過性で向上が見られた。さらに、PbO2、Ag粉、Bi2O3、Ca3(PO4)2、CaF2を添加した場合は、PbAg残渣を添加した場合以上のろ過性改善の効果があることが判明した。
【0053】
また、表4の結果より以下のことが考えられた。
前記浸出液にPbO2を添加しても、それほどPb濃度は上がらないが、Mn濃度が下がる。この時、MnがMnO2となって析出しているのが観察される。つまり、PbO2の大半が種晶となっていると推測される。
AgO添加では、ほぼ全量が溶解し、浸出後も溶解したままであった。それにも拘わらず、比較例1と比較して沈降性が改善されているのは、液性の変化によると考えられる。
Ag粉添加では、約半分が溶解したが、pHの上昇と共に析出した為、液中には残っていない。つまりAgは、共沈による効果と種晶としての効果との両方の効果を発現した可能性が考えられる。
ヘマタイト添加では、若干Fe濃度が上昇していることから、一部溶解したと考えられるが、大部分は種晶として残ることで効果を発揮したと考えられる。
Bi2O3添加では、浸出前に、ほぼ全量溶解している。そして、浸出後はBiが液中に存在しないことから、共沈による効果と種晶としての効果との両方の効果を発現した可能性が考えられる。
Sb2O3添加では、一部が溶解し、一部が未溶解であることから共沈による効果と種晶としての効果との両方の効果を発現した可能性が考えられる。
SnO2およびGa2O3添加では、ほとんど未溶解であることから種晶として効果を発揮したと考えられる。
CdO添加では全量が溶解し、pHが上昇しても溶解したままであった。それにも拘わらず、比較例1と比較して沈降性が改善されているのは、液性の変化によると考えられる。
Ca3(PO4)2およびCaF2添加では、亜鉛原料の焙焼物添加前における浸出液のCa濃度が若干上昇していることから、ごく僅かは溶解していると考えられるが、ほとんど未溶解であることから種晶として効果を発揮したと考えられる。
P2O5添加では、P2O5+3H2O→2H3PO4の反応により、H3PO4となり浸出液に入れると同時に溶解している。
【0054】
(実施例2)
原料として、実施例1で説明したものと同様の亜鉛原料の焙焼物、浸出液として電解尾液の液体部分および脱鉄后液を準備した。実施例1と同様に、電解尾液の液体部分440g、脱鉄后液272gを混合したものを浸出液とした。
【0055】
市販のBi2O3を準備し、これを前記浸出液へ添加し5分間撹拌して、Bi2O3濃度が0g/L(0wt%)、1g/L(0.5wt%)、2g/L(1wt%)、4g/L(2wt%)、8g/L(4wt%)の各試料を調製した。尚、撹拌速度は300rpmである。
【0056】
次に、亜鉛原料の焙焼物を132gずつ計量し、各試料液中に一気に投入したのち、実施例1と同様の処理を行い、浸出完了後、pH、ORPを測定し、さらに0.2ミクロンのフィルターでろ過し、金属元素の分析を行った。その結果を表6に示す。
【0057】
【表6】
【0058】
また、実施例1と同様に浸出完了後の浸出液からのSiO2等の沈降性評価を行った。該沈降性評価結果を時間毎の沈降性評価結果として、縦軸を沈降距離、横軸を時間としたグラフを用いて図6に示す。さらに、ろ過速度を図7に示す。尚、図7において縦軸はろ過速度、横軸はBi2O3の添加量である。
【0059】
図6、図7の結果より、Bi2O3の浸出液へ添加により、沈降距離およびろ過速度とも向上していることが判明した。そして、この添加効果は、Bi2O3の添加量が4g/L(2wt%)以上となると顕著になった。
【0060】
(実施例3)
実施例1、2と同様に浸出液を準備した。実施例2で説明したBi2O3に加えて、市販のAg、鉛製錬工程から採取したBi密陀、およびPb電解スライムを準備した。これらを前記浸出液へ10g/L(5wt%)添加し、各試料を調製した。尚、撹拌速度は300rpmである。
尚、該Bi密陀、およびPb電解スライムの分析結果を表7に示す。表8より、該Bi密陀、およびPb電解スライムとも、3wt%以上のBiおよびAgを含有していることが判明した。
【0061】
【表7】
【0062】
次に、実施例12と同様に、亜鉛原料の焙焼物を計量し、各試料液中に一気に投入したのち、実施例1、2と同様の処理を行い、浸出完了後、pH、ORPを測定し、さらに0.2ミクロンのフィルターでろ過し、金属元素の分析を行った。その結果を表8に示す。
【0063】
【表8】
【0064】
また、実施例1、2と同様に浸出完了後の浸出液からのSiO2等の沈降性評価を行った。該沈降性評価結果を時間毎の沈降性評価結果として、縦軸を沈降距離、横軸を時間としたグラフを用いて図8に示す。さらに、各試料のろ過速度を図9に、沈降性試験結果(2分間後)を図10に、沈降性試験結果(30分間後)を図11に示す。
【0065】
図8〜図11の結果より、Bi密陀、およびPb電解スライムの浸出液へ添加により、沈降距離およびろ過速度とも、顕著に向上していることが判明した。そして、この添加効果は、同量のBi2O3および銀の添加効果に勝ることも判明した。
【図面の簡単な説明】
【0066】
【図1】本発明の実施の形態に係る亜鉛原料の処理フロー例である。
【図2】本発明の実施例1および比較例に係る各添加物質を添加したときの時間毎の沈降性評価結果を示すグラフである。
【図3】本発明の実施例1および比較例に係る各添加物質を添加したときの1分間後の沈降性評価結果示した棒グラフである。
【図4】本発明の実施例1および比較例に係る各添加物質を添加したときの30分間後の沈降性評価結果示した棒グラフである。
【図5】本発明の実施例1および比較例に係る各添加物質を添加したときのろ過性評価結果を示す棒グラフである。
【図6】本発明の実施例2に係るBi2O3を添加したときの時間毎の沈降性評価結果を示すグラフである。
【図7】本発明の実施例2に係るBi2O3を添加したときのろ過速度を示すグラフである。
【図8】本発明の実施例3に係る各添加物質を添加したときの時間毎の沈降性評価結果を示すグラフである。
【図9】本発明の実施例3に係る各添加物質を添加したときのろ過速度を示す棒グラフである。
【図10】本発明の実施例3に係る各添加物質を添加したときの2分間後の沈降性評価結果示した棒グラフである。
【図11】本発明の実施例3に係る各添加物質を添加したときの30分間後の沈降性評価結果示した棒グラフである。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
亜鉛原料から亜鉛を抽出する湿式亜鉛製錬工程において、
焙焼した亜鉛原料を硫酸酸性溶液を用いて浸出する際、ビスマス酸化物、チタン酸化物、アンチモン酸化物、錫酸化物、ガリウム酸化物、カドミニウム酸化物、リン酸カルシウム塩、酸化リン、弗化カルシウム、鉛酸化物、硫酸鉛、硫化鉛、パラジウム、銀酸化物、銀、鉄酸化物、マンガン酸化物から選択される1種以上の添加物質が添加された硫酸酸性溶液を用いて、浸出をおこなうことを特徴とする亜鉛原料の処理方法。
【請求項2】
前記鉄酸化物として、前記湿式亜鉛製錬工程から産出するヘマタイトを用いることを特徴とする請求項1に記載の亜鉛原料の処理方法。
【請求項3】
前記マンガン酸化物として、前記湿式亜鉛製錬工程から産出するMn澱物を用いることを特徴とする請求項1に記載の亜鉛原料の処理方法。
【請求項4】
前記ビスマス酸化物および/または銀として、
鉛製錬工程から産出され、BiまたはAgを3wt%以上含有する、Bi密陀および/または鉛電解スライムを用いることを特徴とする請求項1または2に記載の亜鉛原料の処理方法。
【請求項5】
前記添加物質の1種以上が添加され、当該添加物質を0.02g/L以上含有する硫酸酸性溶液を用いることを特徴とする請求項1から4のいずれかに記載の亜鉛原料の処理方法。
【請求項6】
前記添加物質としてBi2O3を用い、前記硫酸酸性溶液中に4g/L以上添加することを特徴とする請求項1に記載の亜鉛原料の処理方法。
【請求項7】
前記添加物質として鉛製錬工程から産出するBi密陀を用い、前記硫酸酸性溶液中に4g/L以上添加することを特徴とする請求項1に記載の亜鉛原料の処理方法。
【請求項8】
前記添加物質として鉛製錬工程から産出する鉛電解スライムを用い、前記硫酸酸性溶液中に1g/L以上添加することを特徴とする請求項1に記載の亜鉛原料の処理方法。
【請求項9】
前記浸出前の前記硫酸酸性溶液のpHを、1.5以下とすることを特徴とする請求項1から8のいずれかに記載の亜鉛原料の処理方法。
【請求項10】
前記亜鉛原料を浸出する時間を、10分間以上5時間以下とすることを特徴とする請求項1から9のいずれかに記載の亜鉛原料の処理方法。
【請求項1】
亜鉛原料から亜鉛を抽出する湿式亜鉛製錬工程において、
焙焼した亜鉛原料を硫酸酸性溶液を用いて浸出する際、ビスマス酸化物、チタン酸化物、アンチモン酸化物、錫酸化物、ガリウム酸化物、カドミニウム酸化物、リン酸カルシウム塩、酸化リン、弗化カルシウム、鉛酸化物、硫酸鉛、硫化鉛、パラジウム、銀酸化物、銀、鉄酸化物、マンガン酸化物から選択される1種以上の添加物質が添加された硫酸酸性溶液を用いて、浸出をおこなうことを特徴とする亜鉛原料の処理方法。
【請求項2】
前記鉄酸化物として、前記湿式亜鉛製錬工程から産出するヘマタイトを用いることを特徴とする請求項1に記載の亜鉛原料の処理方法。
【請求項3】
前記マンガン酸化物として、前記湿式亜鉛製錬工程から産出するMn澱物を用いることを特徴とする請求項1に記載の亜鉛原料の処理方法。
【請求項4】
前記ビスマス酸化物および/または銀として、
鉛製錬工程から産出され、BiまたはAgを3wt%以上含有する、Bi密陀および/または鉛電解スライムを用いることを特徴とする請求項1または2に記載の亜鉛原料の処理方法。
【請求項5】
前記添加物質の1種以上が添加され、当該添加物質を0.02g/L以上含有する硫酸酸性溶液を用いることを特徴とする請求項1から4のいずれかに記載の亜鉛原料の処理方法。
【請求項6】
前記添加物質としてBi2O3を用い、前記硫酸酸性溶液中に4g/L以上添加することを特徴とする請求項1に記載の亜鉛原料の処理方法。
【請求項7】
前記添加物質として鉛製錬工程から産出するBi密陀を用い、前記硫酸酸性溶液中に4g/L以上添加することを特徴とする請求項1に記載の亜鉛原料の処理方法。
【請求項8】
前記添加物質として鉛製錬工程から産出する鉛電解スライムを用い、前記硫酸酸性溶液中に1g/L以上添加することを特徴とする請求項1に記載の亜鉛原料の処理方法。
【請求項9】
前記浸出前の前記硫酸酸性溶液のpHを、1.5以下とすることを特徴とする請求項1から8のいずれかに記載の亜鉛原料の処理方法。
【請求項10】
前記亜鉛原料を浸出する時間を、10分間以上5時間以下とすることを特徴とする請求項1から9のいずれかに記載の亜鉛原料の処理方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【公開番号】特開2006−257540(P2006−257540A)
【公開日】平成18年9月28日(2006.9.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−164799(P2005−164799)
【出願日】平成17年6月3日(2005.6.3)
【出願人】(000224798)同和鉱業株式会社 (550)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成18年9月28日(2006.9.28)
【国際特許分類】
【出願日】平成17年6月3日(2005.6.3)
【出願人】(000224798)同和鉱業株式会社 (550)
【Fターム(参考)】
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