説明

亜鉛蒸気の供給方法及び亜鉛蒸気の供給装置

【解決課題】亜鉛蒸気を用いる装置に一定の供給速度で亜鉛蒸気を供給することができる亜鉛蒸気の供給方法及び亜鉛蒸気の供給装置を提供すること。
【解決手段】亜鉛蒸発器に溶融亜鉛を供給しつつ、蒸発させた亜鉛蒸気を該亜鉛蒸発器から排出して後段の装置へ供給する亜鉛蒸気の供給方法において、一定の供給速度で該亜鉛蒸発器に該溶融亜鉛を供給しつつ、且つ、該亜鉛蒸発器内の亜鉛の液面の高さを測定し、該亜鉛の液面の高さが一定になるように、該亜鉛蒸発器内の亜鉛を蒸発させることを特徴とする亜鉛蒸気の供給方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、亜鉛蒸気が用いられる装置に、亜鉛蒸気を供給するための亜鉛蒸気の供給方法及び亜鉛蒸気の供給装置であり、特に、多結晶シリコン製造用の反応炉に亜鉛蒸気を供給するための亜鉛蒸気の供給方法及び亜鉛蒸気の供給装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年の太陽電池の普及に伴い、多結晶シリコンの需要は急増している。従来、高純度の多結晶シリコンを製造する方法としてシーメンス法(Siemens Method)が挙げられる。シーメンス法はトリクロロシラン(SiHCl)を水素(H)によって還元する方法である。シーメンス法により製造される多結晶シリコンは純度がイレブン−ナイン(11−N)と非常に高く、半導体用シリコンとして使用されている。太陽電池用シリコンもこの半導体用シリコンとして製造された製品の一部を使用してきたが、11−Nほどの純度を必要としない点とシーメンス法が多くの電力を消費する点から、太陽電池用シリコンに適した安価な製造方法が求められている。
【0003】
このような中、太陽電池用シリコンの製造方法として、亜鉛還元法による多結晶シリコンの製造方法が提案されており、その反応は下記式(1):
SiCl + 2Zn = Si + 2ZnCl (1)
により示すものである。
【0004】
亜鉛還元法による多結晶シリコンの製造方法では、製造される多結晶シリコンの純度はシックス−ナイン(6−N)程度であり、半導体用シリコンに比べると純度は低いものの、シーメンス法と比較して5倍程度にも達する程反応効率に優れ且つ製造コストも有利な製造方法である。
【0005】
亜鉛還元法による多結晶シリコンの製造方法としては、四塩化珪素蒸気と亜鉛蒸気を反応炉に供給して、反応炉内で多結晶シリコンを析出させる多結晶シリコンの製造方法がある。そして、そのような多結晶シリコンの製造方法で、安定して多結晶シリコンの製造を行うためには、反応炉内に原料蒸気が一定の供給速度で供給されることが重要である。
【0006】
四塩化珪素蒸気の沸点は57.6℃と低いため、蒸気流量を流量計で測定できるので、流量計を設置して四塩化珪素蒸気の供給速度を制御することはできるが、一方、「化学便覧」(日本化学会編)によると、亜鉛の沸点は907℃と非常に高いため、気体の流量計で蒸気流量を測定することは困難なので、流量計を設置して亜鉛蒸気の供給速度を制御することは困難であった。
【0007】
亜鉛の流量を測定する方法としては、例えば、溶融金属めっき装置における溶融亜鉛の流量測定として、溶融亜鉛中の粒子の移動速度、溶融亜鉛の流れと直交する槽内断面の面積および溶融亜鉛の密度から求める方法が記載されている(特許文献1)。
【0008】
また、連続溶融亜鉛めっきで亜鉛を供給する際、事前に亜鉛を溶融して亜鉛ポットへ供給するプリメルト法があり、このプリメルトポットと溶融亜鉛ポットを結ぶ連通管に電磁流量計による非接触の測定が報告されている(特許文献2)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特開2001−288548号公報(段落番号0020)
【特許文献2】特開平3−207843号公報(第2頁右下欄第3行)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
ところが、これら特許文献1及び2に記載の方法は、いずれも、溶融亜鉛の流量を測定する方法であり、亜鉛蒸気の流量を測定する方法ではない。
【0011】
従来、亜鉛蒸気を用いる装置に亜鉛蒸気を供給するに当たって、亜鉛蒸気の供給速度を正確に測定する方法がなく、そのため、装置へ一定の供給速度で亜鉛蒸気を供給する方法がなかった。
【0012】
そこで、本発明の目的は、亜鉛蒸気を用いる装置に一定の供給速度で亜鉛蒸気を供給することができる亜鉛蒸気の供給方法及び亜鉛蒸気の供給装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明者らは、上記従来技術における課題を解決すべく、鋭意研究を重ねた結果、亜鉛蒸発器に溶融亜鉛を供給しつつ、蒸発させた亜鉛蒸気を該亜鉛蒸発器から排出して後段の装置へ供給する際に、一定の供給速度で該亜鉛蒸発器に該溶融亜鉛を供給しつつ、且つ、該亜鉛蒸発器内の亜鉛の液面の高さを測定し、該亜鉛の液面の高さが一定になるように、該亜鉛蒸発器の温度を制御して、該亜鉛蒸発器内の亜鉛を蒸発させることにより、一定の供給速度で亜鉛蒸気を後段の装置へ供給できることを見出し、本発明を完成させるに至った。
【0014】
すなわち、本発明(1)は、亜鉛蒸発器に溶融亜鉛を供給しつつ、蒸発させた亜鉛蒸気を該亜鉛蒸発器から排出して後段の装置へ供給する亜鉛蒸気の供給方法において、一定の供給速度で該亜鉛蒸発器に該溶融亜鉛を供給しつつ、且つ、該亜鉛蒸発器内の亜鉛の液面の高さを測定し、該亜鉛の液面の高さが一定になるように、該亜鉛蒸発器内の亜鉛を蒸発させることを特徴とする亜鉛蒸気の供給方法を提供するものである。
【0015】
また、本発明(2)は、亜鉛蒸発器と、該亜鉛蒸発器に一定速度で溶融亜鉛を供給するための溶融亜鉛の供給手段と、蒸発した亜鉛を該亜鉛蒸発器から排出するための亜鉛蒸気の排出管と、該亜鉛蒸発器内の亜鉛の液面との距離を測定するための非接触式の距離測定器と、該亜鉛の液面と該非接触式の距離測定器との距離の信号が入力され、該距離から亜鉛の液面の高さを算出し、該亜鉛の液面の高さが一定になるように、該亜鉛蒸発器のヒーターに出力制御信号を出力する制御手段と、を有することを特徴とする亜鉛蒸気の供給装置を提供するものである。
【0016】
また、本発明(3)は、前記非接触式の距離測定器が、予め定めた変調周波数で変調された距離測定用レーザー光を発生させるレーザー光発生部と、該測定用レーザー光を被測定点に向けて発信するレーザー光発信部と、該被測定点から反射してくる反射光を受光する受光部と、該反射光と該測定用レーザー光との位相差を検出する位相差検出部と、該位相差から該被測定点までの距離を計算する計算部と、を有するレーザー式距離測定器であることを特徴とする本発明(2)の亜鉛蒸気の供給装置を提供するものである。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、亜鉛蒸気を用いる装置に一定の供給速度で亜鉛蒸気を供給することができる亜鉛蒸気の供給方法及び亜鉛蒸気の供給装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】本発明の亜鉛蒸気の供給装置を示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
本発明の亜鉛蒸気の供給方法及び本発明の亜鉛蒸気の供給装置について、図1を参照して説明する。図1は、本発明の亜鉛蒸気の供給装置を示す模式図である。なお、図1では、説明の都合上、亜鉛蒸発器及び亜鉛溶融器については、断面図で示している。
【0020】
図1中、亜鉛蒸気の供給装置20は、亜鉛蒸発器1と、該亜鉛蒸発器1を加熱するためのヒーター7と、亜鉛溶融器2と、該亜鉛溶融器2を加熱するためのヒーター9と、粒状亜鉛計量器3と、距離測定用レーザー光を発生させるためのレーザー光発生部18と、該距離測定用レーザー光を該亜鉛蒸発器1内の亜鉛の液面23に発信し且つ該亜鉛の液面23から反射してくる反射光を受光するレーザー光の発信部兼受光部4と、該レーザー光の発信部兼受光部4で受光した反射光と該距離測定用レーザー光との位相差を検出する位相検出部5と、該位相差から該レーザー光の発信部兼受光部4から該亜鉛の液面23までの距離を計算する計算部22と、該計算部22で計算された該レーザー光の発信部兼受光部4から該亜鉛の液面23までの距離に基づいて該亜鉛蒸発器1のヒーター7の出力を制御する制御手段6と、を有する。
【0021】
該粒状亜鉛計量器3は、一定量の粒状亜鉛を一定時間毎に計量して、該亜鉛溶融器2に供給するための粒状亜鉛の計量器である。つまり、該粒状亜鉛計量器3により、該亜鉛溶融器2に一定の供給速度で粒状亜鉛が供給される。該粒状亜鉛計量器3を用いて、該亜鉛溶融器2に粒状亜鉛を一定の供給速度で供給する方法としては、特に制限されないが、例えば、該粒状亜鉛計量器3の粒状亜鉛の貯蔵部内から、一定の時間間隔で設定量の粒状亜鉛を計量して(例えば、30秒毎に30gの粒状亜鉛を計量して)、該亜鉛溶融器2に供給するように、該粒状亜鉛計量器3の制御部にプログラミングする方法、例えば、30秒毎に30gの粒状亜鉛が供給されるようにスクリューフィーダーの回転数を制御するスクリューフィーダー方式の供給方法が挙げられる。その際、計量間隔や一回当たりに計り取る粒状亜鉛の量、スクリューフィーダーの回転数等は、粒状亜鉛の供給速度が、該亜鉛蒸気の供給装置20の後段に設置される装置への亜鉛蒸気の供給速度の設置値と同じになるように、適宜選択される。
【0022】
そして、該粒状亜鉛計量器3で計量された粒状亜鉛は、該粒状亜鉛計量器3の粒状亜鉛供給部11及び該粒状亜鉛供給部11に繋がっている粒状亜鉛の供給管24を経て、該亜鉛溶融器2に供給される。なお、該粒状亜鉛計量器3で計量される亜鉛の形状は、粒状に制限されるものではなく、該粒状亜鉛計量器3で計量可能であり、一定の供給速度での供給が可能な形状、大きさであればよい。
【0023】
該亜鉛溶融器2は、該粒状亜鉛計量器3から供給される固体の亜鉛を、該ヒーター9を用いて亜鉛の融点以上の温度に加熱して溶解させて、溶融亜鉛16にするための亜鉛の溶融器である。該亜鉛溶融器2には、該粒状亜鉛供給管24が繋がっている。また、該亜鉛溶融器2には、オーバーフロー管12が付設されており、該粒状亜鉛計量器3から該亜鉛溶融器2に供給された粒状亜鉛の分だけ、該溶融亜鉛16がオーバーフローして、該亜鉛溶融器2から排出されて、該亜鉛蒸発器1に供給される。
【0024】
そして、一定の供給速度で粒状亜鉛が該粒状亜鉛計量器3から該亜鉛溶融器2に供給されることにより、一定の排出速度で該溶融亜鉛16が該亜鉛溶融器2からオーバーフローするので、該亜鉛蒸発器1には、一定の供給速度で該溶融亜鉛16が供給される。つまり、図1では、該粒状亜鉛計量器3、該粒状亜鉛供給管24、該亜鉛溶融器2及び該オーバーフロー管12が、該亜鉛蒸発器1に一定の供給速度で溶融亜鉛を供給するための溶融亜鉛の供給手段25(図1中、符号25の一点鎖線で囲まれている部分)である。
【0025】
該亜鉛溶融器2の加熱温度は、亜鉛の融点以上の温度であり、通常、420〜850℃、好ましくは600〜800℃である。
【0026】
該亜鉛蒸発器1は、亜鉛15を、該ヒーター7を用いて沸点以上の温度に加熱し蒸発させて、亜鉛蒸気を発生させるための亜鉛の蒸発器である。該亜鉛蒸発器1には、該オーバーフロー管12が繋がっている。また、該亜鉛蒸発器1には、亜鉛蒸気の排出管8が付設されており、該亜鉛蒸気の排出管8は、後段の装置に繋がっている。そして、該亜鉛蒸発器1で発生した亜鉛蒸気10は、該亜鉛蒸気の排出管8を通って、後段の装置に供給される。
【0027】
該亜鉛蒸発器のヒーター7は、電気ヒーターであり、該制御手段6から出力される出力制御信号21を受け取る。その出力制御信号21が、出力を高める信号であった場合は、該ヒーター7は出力を高めて該亜鉛蒸発器1内の温度を上げ、出力を下げる信号であった場合は、該ヒーター7は出力を下げて該亜鉛蒸発器1内の温度を下げる。
【0028】
また、該亜鉛蒸発器1の上方、つまり、該亜鉛蒸発器1内の該亜鉛の液面23の上方には、該レーザー光の発信部兼受光部4が設置されている。
【0029】
図1中、該レーザー光発生部18、該レーザー光の発信部兼受光部4、該位相差検出部5及び該計算部22が、レーザー式距離測定器17(図1中、符号17の一点鎖線で囲まれている部分)である。該レーザー式距離測定器17は、該亜鉛の液面23と該レーザー式距離測定器17との距離、更に詳細には、該亜鉛の液面23と該レーザー光の発信部兼受光部4との距離を測定するための距離測定器である。該レーザー光発生部18は、距離測定用のレーザー光、すなわち、該亜鉛の液面23に向けて発信されるレーザー光の発生部であり、該レーザー光の発信部兼受光部4は、該距離測定用レーザー光を該亜鉛の液面23に向けて発信し、該亜鉛の液面23で反射された反射光を受光するためのレーザー光の発信部兼受光部であり、該位相差検出部5は、該反射光と該距離測定用レーザー光との位相差を検出するための位相差検出部であり、該計算部22は、該位相差から該亜鉛の液面23と該レーザー光の発信部兼受光部4との距離を計算する計算部である。
【0030】
そして、該レーザー式距離測定器17では、先ず、該レーザー光発生部18で、予め定めた変調周波数で変調された距離測定用レーザー光を発生させ、次いで、発生させた該距離測定用レーザー光を、該レーザー光発信部兼受光部4から、該亜鉛の液面23に向けて発信させる。発信された該距離測定用レーザー光は、該亜鉛の液面23で反射するので、その反射光を、該レーザー光の発信部兼受光部4で受光する。次いで、該位相差検出部5が、該反射光と該距離測定用レーザー光との位相差を検出し、検出された位相差の信号26を、該計算部22へと出力する。次いで、該計算部22は、該位相差から、該亜鉛の液面23と該レーザー光の発信部兼受光部4との距離(該亜鉛の液面23と該レーザー式距離測定器17との距離)を計算し、計算された該亜鉛の液面23と該レーザー光の発信部兼受光部4との距離の信号を、該制御手段6へと出力する。
【0031】
該制御手段6は、該レーザー式距離測定器17の該計算部22と繋がっており、該計算部22から伝達される該亜鉛の液面23と該レーザー光の発信部兼受光部4との距離(該亜鉛の液面23と該レーザー式距離測定器17との距離)の信号19を取り込む。先ず、該制御手段6は、亜鉛蒸気の供給開始時の該亜鉛の液面23と該レーザー光の発信部兼受光部4との距離の値を取り込み記録する。この亜鉛蒸気の供給開始時の該亜鉛の液面23と該レーザー光の発信部兼受光部4との距離から、亜鉛蒸気の供給開始時の該亜鉛の液面23の高さを計算する。つまり、亜鉛蒸気の供給開始時の該亜鉛の液面23と該レーザー光の発信部兼受光部4との距離を測定することにより、亜鉛蒸気の供給開始時の該亜鉛の液面23の高さを測定することになる。
【0032】
次いで、亜鉛蒸気供給中の該亜鉛の液面23と該レーザー光の発信部兼受光部4との距離の値を一定の時間間隔で取り込む。この亜鉛蒸気供給中の該亜鉛の液面23と該レーザー光の発信部兼受光部4との距離から、亜鉛蒸気供給中の該亜鉛の液面23の高さを計算する。つまり、亜鉛蒸気供給中の該亜鉛の液面23と該レーザー光の発信部兼受光部4との距離を測定することにより、亜鉛蒸気供給中の該亜鉛の液面23の高さを測定することになる。
【0033】
そして、距離の値を取り込む毎に、該亜鉛蒸気の供給開始時の該亜鉛の液面23と該レーザー光の発信部兼受光部4との距離と、亜鉛蒸気供給中の該亜鉛の液面23と該レーザー光の発信部兼受光部4との距離の差(亜鉛蒸気の供給開始時−亜鉛蒸気供給中の各取り込み時)を算出する。この距離の差より、亜鉛蒸気の供給開始時の該亜鉛の液面23の高さと、亜鉛蒸気供給中の各距離の値の取り込み時の該亜鉛の液面23の高さとの差を把握する。
【0034】
なお、亜鉛蒸気供給中は、亜鉛が沸騰状態にあるため、該亜鉛の液面23は、波打つように変動していることがある。そのため、該亜鉛の液面23が波打つように変動している場合は、例えば、1秒間に10回距離の測定を行い、該制御手段6に、この10回の距離の値を取り込ませ、この10回の距離の値の平均値を計算させ、算出された平均距離を、この1秒間を代表する距離の値として採用して、上記距離の差(亜鉛蒸気の供給開始時−亜鉛蒸気供給中の各取り込み時)を計算させてもよく、また、この10回の距離の値の分布に1つ以上のピークがある場合にはその中での最長の値を、この1秒間を代表する距離の値として採用してもよい。更に、上記の1秒間を代表する距離の値の10秒間の平均値をその10秒間を代表する距離の値として採用して上記距離の差を計算させてもよい。あるいは、10秒間に100回の測定を行い、測定距離の分布に1つ以上のピークがある場合にはその中で上位1〜10個の距離の値の平均値をその10秒間を代表する距離の値として採用して上記距離の差を計算させてもよい。また、該制御手段6に、そのような計算がされるようにプログラミングすることができる。
【0035】
また、該制御手段6は、該亜鉛蒸発器のヒーター7と繋がっており、算出された亜鉛蒸気の供給開始時と各取り込み時の該亜鉛の液面23と該レーザー光の発信部兼受光部4との距離の差に基づいて、該亜鉛の液面23の高さが、亜鉛蒸気の供給開始時の該亜鉛の液面23の高さで一定になるように、該亜鉛蒸発器のヒーター7に出力制御信号21を出力する。言い換えると、算出された亜鉛蒸気の供給開始時と各取り込み時の該亜鉛の液面23の高さの差に基づいて、該亜鉛の液面23の高さが、亜鉛蒸気の供給開始時の該亜鉛の液面23の高さで一定になるように、該亜鉛蒸発器のヒーター7に出力制御信号21を出力する。該制御手段6は、そのような出力制御信号を出力するようにプログラミングされている電子計算機である。
【0036】
具体的には、亜鉛蒸気の供給開始時と各取り込み時の距離の差が、負の値であった場合は、つまり、亜鉛蒸気の供給開始時より各取り込み時の方が該亜鉛の液面23の高さが低かった場合は、該亜鉛蒸発器1の温度を下げるように、該亜鉛蒸発器のヒーター7に出力を下げる出力制御信号21を出力し、一方、亜鉛蒸気の供給開始時と各取り込み時の距離の差が、正の値であった場合は、つまり、亜鉛蒸気の供給開始時より各取り込み時の方が該亜鉛の液面23の高さが高かった場合は、該亜鉛蒸発器1の温度を上げるように、該亜鉛蒸発器のヒーター7に出力を上げる出力制御信号21を出力する。なお、図1では、各信号の伝達経路を点線で示した。
【0037】
また、該亜鉛蒸発器1には、該亜鉛蒸発器1内を不活性ガス雰囲気にするための不活性ガスの供給管が付設されていてもよく、この場合、該不活性ガスの供給管から供給された該不活性ガスは、該亜鉛蒸発器1及び該亜鉛蒸気供給管8を経て、後段の装置へと移動する。該不活性ガスとしては、窒素ガス、ヘリウムガス、ネオンガス、アルゴンガス、キセノンガス等が挙げられ、これらのうち、窒素ガスが好ましい。
【0038】
また、該亜鉛溶融器2には、該亜鉛溶融器2内を不活性ガス雰囲気にするための不活性ガスの供給管が付設されていてもよい。
【0039】
図1に示す該亜鉛蒸気の供給装置20を用いて亜鉛蒸気を供給する方法について説明する。先ず、該亜鉛蒸発器1を該ヒーター7で加熱し、該亜鉛溶融器2を該ヒーター9で加熱して、容器内の亜鉛を溶融させる。次いで、該亜鉛蒸発器1の温度を、亜鉛の沸点以上の温度に上げて、亜鉛を沸騰させる。亜鉛の沸騰が開始した時点から、該粒状亜鉛計量器3を用いて、該亜鉛溶融器2への粒状亜鉛の供給を開始すると共に、該亜鉛蒸気の排出管8から該亜鉛蒸気10を排出して、後段の装置への亜鉛蒸気の供給を開始する。また、該レーザー式距離測定器17を用いて、該亜鉛蒸発器1内の該亜鉛の液面23の高さ(該亜鉛の液面23と該レーザー光の発信部兼受光部4との距離)の測定を開始して、亜鉛蒸気の供給開始時の値を、該制御手段6に記録させる。
【0040】
そして、該粒状亜鉛計量器3を用いて、粒状亜鉛を一定の供給速度で該亜鉛溶融器2に供給して、供給した粒状亜鉛の分だけ、溶融亜鉛を該亜鉛溶融器2からオーバーフローさせることにより、溶融亜鉛を一定の供給速度で該亜鉛蒸発器1に供給しつつ、該亜鉛蒸発器1では、亜鉛を蒸発させて、該亜鉛蒸気10を該亜鉛蒸気の供給管8から排出する。
【0041】
このとき、該レーザー式距離測定器17を用いて、該亜鉛蒸発器1内の該亜鉛の液面23の高さ(該亜鉛の液面23と該レーザー光の発信部兼受光部4との距離)を測定して、その値に基づいて、該亜鉛の液面23の高さが、亜鉛蒸気の供給開始時の該亜鉛の液面23の高さで一定になるように、該ヒーター7で該亜鉛蒸発器1の温度を調節して、該亜鉛蒸発器1内の亜鉛の蒸発速度を調節する。
【0042】
このようして、一定の供給速度で該亜鉛蒸発器1に溶融亜鉛を供給することにより、一定の供給速度で亜鉛蒸気を後段の装置へ供給することができる。つまり、本発明の亜鉛蒸気の供給方法では、一定の供給速度で溶融亜鉛を該亜鉛蒸発器1に供給しつつ、該亜鉛蒸発器1内の該亜鉛の液面23の高さが一定になるように、該亜鉛蒸発器1内の亜鉛を蒸発させることにより、該溶融亜鉛の供給量と亜鉛蒸気の蒸発量とが同じになる。そのため、本発明の亜鉛蒸気の供給方法では、該溶融亜鉛の供給速度を一定にすれば、同じ一定の速度で亜鉛蒸気を後段の装置へ供給することができる。なお、図1中の該亜鉛蒸気の供給装置20を用いる場合には、該粒状亜鉛計量器3による粒状亜鉛の供給速度を一定にすれば、同じ一定の速度で亜鉛蒸気を供給することができる。
【0043】
すなわち、本発明の亜鉛蒸気の供給装置は、亜鉛蒸発器と、該亜鉛蒸発器に一定速度で溶融亜鉛を供給するための溶融亜鉛の供給手段と、蒸発した亜鉛を該亜鉛蒸発器から排出するための亜鉛蒸気の排出管と、該亜鉛蒸発器内の亜鉛の液面との距離を測定するための非接触式の距離測定器と、該亜鉛の液面と該非接触式の距離測定器との距離の信号が入力され、該距離から亜鉛の液面の高さを算出し、該亜鉛の液面の高さが一定になるように、該亜鉛蒸発器のヒーターに出力制御信号を出力する制御手段と、を有することを特徴とする亜鉛蒸気の供給装置である。
【0044】
本発明の亜鉛蒸気の供給装置に係る該溶融亜鉛の供給手段は、図1に示す該溶融亜鉛の供給手段25のように、オーバーフロー式の亜鉛溶融器と該亜鉛溶融器に一定の供給速度で固体の亜鉛を供給することができる固体亜鉛の供給器との組み合わせが好ましいが、これに限定されるものではなく、該亜鉛蒸発器1に一定の供給速度で溶融亜鉛を供給することができるものであればよい。
【0045】
本発明の亜鉛蒸気の供給装置に係る該亜鉛蒸発器のヒーターは、特に制限されないが、該制御手段からの出力制御信号に対する応答が速いことが好ましため、温度制御が速やかに行える点で、電気ヒーターが好ましい。
【0046】
また、本発明の亜鉛蒸気の供給方法は、亜鉛蒸発器に溶融亜鉛を供給しつつ、蒸発させた亜鉛蒸気を該亜鉛蒸発器から排出して後段の装置へ供給する亜鉛蒸気の供給方法において、一定の供給速度で該亜鉛蒸発器に該溶融亜鉛を供給しつつ、且つ、該亜鉛蒸発器内の亜鉛の液面の高さを測定し、該亜鉛の液面の高さが一定になるように、該亜鉛蒸発器内の亜鉛を蒸発させることを特徴とする亜鉛蒸気の供給方法である。
【0047】
本発明の亜鉛蒸気の供給方法では、該亜鉛蒸発器内の亜鉛の液面の上方に非接触式の距離測定器を設置して、該亜鉛の液面と該非接触式の距離測定器との距離を測定することにより、該亜鉛蒸発器内の亜鉛の液面の高さを測定することが好ましい。
【0048】
本発明の亜鉛蒸気の供給装置及び本発明の亜鉛蒸気の供給方法に係る該非接触式の距離測定装置としては、例えば、図1中に示す該レーザー式距離測定器17が挙げられるが、これに限定されるものではなく、非接触式で該亜鉛の液面23との距離を測定することができる非接触式の距離測定器であればよい。該非接触式の距離測定装置としては、他には、超音波法、赤外線法、高周波法、差圧法、画像処理法等の装置が挙げられる。
【0049】
該非接触式の距離測定器としては、予め定めた変調周波数で変調された距離測定用レーザー光を発生させるレーザー光発生部と、該測定用レーザー光を被測定点に向けて発信するレーザー光発信部と、該被測定点から反射してくる反射光を受光する受光部と、該反射光と該測定用レーザー光との位相差を検出する位相差検出部と、該位相差から該被測定点までの距離を計算する計算部と、を有するレーザー式距離測定器が好ましい。
【0050】
なお、本発明において、予め定めた変調周波数で変調されたレーザー光とは、任意の周波数の正弦波変調されたレーザー光であり、発振波長は1060nm又は1310nmが望ましい。また、該反射光と該測定用レーザー光との位相差を検出するとは、被測定点に向けて連続して照射する測定用レーザー光とは別に、同一の光源から分岐する参照光を用意し、この参照光と該被測定点から反射してくる反射光の位相差を位相検出部に加え、その差分出力を積分することにより、位相差を検出することを指す。また、該位相差から該被測定点までの距離は、「C:光の速度(km/s)、f:変調周波数(MHz)、Δφ:位相(度)、ΔL:被測定点までの距離(mm)」とおくと、例えば、変調周波数fが700MHzの場合、以下の計算式で算出される。
ΔL=(((C/f)×Δφ)/2)/360
=(((30万/700)×Δφ)/2)/360
=0.595×Δφ
位相検出能力として1/3度の分解能があるとすると、距離分解能は0.198mmとなる。
【0051】
該レーザー式距離測定器としては、例えば、特開2009−198477号公報、特表2004−507742号公報、特開平7−35861号公報、特開平6−138231号公報等に記載されているレーザー式距離測定器が挙げられる。
【0052】
本発明の亜鉛蒸気の供給装置及び本発明の亜鉛蒸気の供給方法により、亜鉛蒸気が供給される装置としては、亜鉛蒸気を用いる装置であれば、特に制限されないが、例えば、四塩化珪素蒸気及び亜鉛蒸気が供給される反応炉であり、該反応炉内で四塩化珪素蒸気と亜鉛蒸気の反応が行われ、該反応炉内で多結晶シリコンの析出が行われるような多結晶シリコン製造用の反応炉が挙げられる。他には、亜鉛の蒸気を酸素と反応させる亜鉛華(酸化亜鉛)の製造装置等が挙げられる。
【0053】
次に、実施例を挙げて本発明を更に具体的に説明するが、これは単に例示であって、本発明を制限するものではない。
【実施例】
【0054】
(実施例1)
図1に示す亜鉛蒸気の供給装置20を用いて、下記のようにして、亜鉛蒸気の供給を行った。
<スタートアップ>
亜鉛蒸発器1の温度設定を950℃に、亜鉛溶融器2の温度設定を700℃に設定し、亜鉛蒸発器1及び亜鉛溶融器2内に窒素を供給して窒素雰囲気として、加熱を開始した。
<溶融亜鉛の供給>
亜鉛蒸発器1及び亜鉛溶融器2の温度が共に500℃以上になった時点から、粒状亜鉛計量器3にて、1分毎に粒状亜鉛50gを計量して、亜鉛溶融器2に供給し、オーバーフローした溶融亜鉛を亜鉛蒸発器1に供給した。このとき、亜鉛溶融器2からオーバーフローして、亜鉛蒸発器1に供給される溶融亜鉛の供給速度は、50g/分となる。なお、亜鉛蒸発器1及び亜鉛溶融器2内には窒素を供給し続けて窒素雰囲気とした。
<亜鉛の液面の高さの測定>
亜鉛蒸発器1の温度が950℃になった時点の亜鉛の液面23の高さを測定して、その値を、亜鉛蒸気の供給開始時の亜鉛の液面23として、制御手段6に記録させた。亜鉛蒸発器1への溶融亜鉛の供給を開始した後も、そのまま、亜鉛の液面23の高さの測定を続けた。
<亜鉛の液面の高さの制御>
制御手段6により、亜鉛の液面23の高さが、亜鉛蒸気の供給開始時の亜鉛の液面23の高さで一定になるように、亜鉛蒸発器のヒーターの出力をコントロールした。
<レーザー式距離測定器17>
プレサイズゲージ社製
周波数:700MHz
ビーム径:2mm
分離能:0.15mm
測定:1回/0.1秒
【0055】
上記のようにして、亜鉛蒸気の供給を40時間行った。その間、亜鉛の液面23の高さは一定に保たれており、また、亜鉛蒸発器1内の亜鉛の温度は、950℃であった。
【0056】
次いで、粒状亜鉛の供給速度を、1分毎に50gから、1分毎に70gに代えて、亜鉛蒸気の供給を続けた。その結果、亜鉛の液面の高さは一時的に上昇したが、その後、一定に保たれた。このときの亜鉛蒸発器1内の亜鉛の温度は、964℃であった。
【産業上の利用可能性】
【0057】
本発明によれば、亜鉛蒸気を一定の供給速度で供給できるため、亜鉛蒸気が用いられる製造プロセス、例えば、亜鉛還元法による多結晶シリコンの製造プロセスを、安定して行うことができる。
【符号の説明】
【0058】
1 亜鉛蒸発器
2 亜鉛溶融器
3 粒状亜鉛計量器
4 レーザー光の発信部及び受光部
5 位相差検出部
6 制御手段
7 亜鉛蒸発器のヒーター
8 亜鉛蒸気の排出管
9 亜鉛溶融器のヒーター
10 亜鉛蒸気
11 粒状亜鉛供給部
12 オーバーフロー管
15 亜鉛
16 溶融亜鉛
17 レーザー式距離測定器
18 レーザー光発生部
19 距離の信号
20 亜鉛蒸気の供給装置
21 出力制御信号
22 計算部
23 亜鉛の液面
24 粒状亜鉛の供給管
25 溶融亜鉛の供給手段
26 位相差の信号

【特許請求の範囲】
【請求項1】
亜鉛蒸発器に溶融亜鉛を供給しつつ、蒸発させた亜鉛蒸気を該亜鉛蒸発器から排出して後段の装置へ供給する亜鉛蒸気の供給方法において、一定の供給速度で該亜鉛蒸発器に該溶融亜鉛を供給しつつ、且つ、該亜鉛蒸発器内の亜鉛の液面の高さを測定し、該亜鉛の液面の高さが一定になるように、該亜鉛蒸発器内の亜鉛を蒸発させることを特徴とする亜鉛蒸気の供給方法。
【請求項2】
亜鉛蒸発器と、該亜鉛蒸発器に一定速度で溶融亜鉛を供給するための溶融亜鉛の供給手段と、蒸発した亜鉛を該亜鉛蒸発器から排出するための亜鉛蒸気の排出管と、該亜鉛蒸発器内の亜鉛の液面との距離を測定するための非接触式の距離測定器と、該亜鉛の液面と該非接触式の距離測定器との距離の信号が入力され、該距離から亜鉛の液面の高さを算出し、該亜鉛の液面の高さが一定になるように、該亜鉛蒸発器のヒーターに出力制御信号を出力する制御手段と、を有することを特徴とする亜鉛蒸気の供給装置。
【請求項3】
前記非接触式の距離測定器が、予め定めた変調周波数で変調された距離測定用レーザー光を発生させるレーザー光発生部と、該測定用レーザー光を被測定点に向けて発信するレーザー光発信部と、該被測定点から反射してくる反射光を受光する受光部と、該反射光と該測定用レーザー光との位相差を検出する位相差検出部と、該位相差から該被測定点までの距離を計算する計算部と、を有するレーザー式距離測定器であることを特徴とする請求項2記載の亜鉛蒸気の供給装置。

【図1】
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