説明

交流発電機及び関連した電気システム

【課題】高効率であり、無負荷損がほとんどない交流発電機を提供する。
【解決手段】交流発電機は、回転可能に組み立てられており、その磁化方向が回転軸に直交する永久磁石と、永久磁石を囲んで、回転軸から75度未満の二面角内で、永久磁石の外部から径方向に永久磁石の直径の四分の一乃至半分の距離分延びた範囲内に亘って回転軸を含む面に略平行な面に複数回巻かれてある鉄心無しの巻線とを備えている。複数の巻線は、互いに角度をずらして配置されて多相電源を構成している。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、低電力の交流発電機、すなわち0.1乃至100ワット、通常1乃至3ワットの電力を生成する交流発電機に関する。このような交流発電機は、特にはクランクにより再充電される自転車用照明装置又は懐中電灯に用いられる。
【背景技術】
【0002】
交流発電機、すなわち直流電圧を供給する電気発電機をここで検討する。永久磁石から形成されたロータと巻線から形成されたステータとを備えた交流発電機をより具体的に検討する。従来、このような交流発電機を作製しようとする場合、ロータが生成する磁場の集束及び使用を最適化すべくステータの巻線を軟鉄の磁心に関連付ける。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】米国特許出願公開第2010/295400号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ステータに磁心を設けると、交流発電機の無負荷運転トルク及び重量は相当大きくなる。従って、「ダイナモ」と呼ばれて自転車に用いられる交流発電機の効率は、一般的に非常に不十分である。例えば、15km/hの自転車の速度に対して3,750rpmで回転して、約3ワットの有効電力を供給可能な従来の「ダイナモ」の損失は、約6ワットである。交流発電機が接続されていないときの損失は約7ワットである。従って、供給されるべき機械的動力が7乃至9ワットである。このような損失は、自転車の乗り手が通常の速度でペダルを漕ぐことにより得られる全作動力に対して相当大きい。実際には、平坦な地面で速度が15km/hであるように良質な自転車を用いて通常の速度でペダルを漕ぐ自転車の乗り手は、約70ワットの作動力を供給する必要があるとみなされ得る。交流発電機が用いられるとき、全負荷又は無負荷モードで、自転車の乗り手は通常の作動力より10%大きい作動力を供給する必要がある。そのために、自転車の乗り手は、交流発電機を必要としないときは交流発電機を非作動位置に置く必要があり、交流発電機の作動又は停止のための機械部品、例えば自転車の車輪上を回転するローラが必要とされる。この追加の作動力を回避するために、自転車の乗り手は、夜になり自身の安全を危険にさらしながら、自転車の照明の使用を遅らせることがある。
【0005】
本発明の目的は、従来の交流発電機の欠点の少なくとも一部を克服する交流発電機を提供することである。
【0006】
本発明の別の目的は、高効率の交流発電機を提供することである。
【0007】
本発明の別の目的は、無負荷損がほとんどない交流発電機を提供することである。
【0008】
本発明の別の目的は、軽量で嵩張らず、少数の簡単な部品から形成された交流発電機を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
従って、本発明は、回転可能に組み立てられており、その磁化方向が回転軸に直交する永久磁石と、該永久磁石を囲んで、前記回転軸から75度未満の二面角内で、前記永久磁石の外部から径方向に前記永久磁石の直径の四分の一乃至半分の距離分延びた範囲内に亘って前記回転軸を含む面に略平行な面に複数回巻かれてある鉄心無しの巻線とを備えていることを特徴とする交流発電機を提供する。
【0010】
本発明によれば、複数の前記巻線は、互いに角度をずらして配置されて多相電源を構成している。
【0011】
本発明によれば、3本の前記巻線は、互いに60度ずらして配置されて3相電源を構成している。
【0012】
本発明によれば、前記永久磁石は柱状である。
【0013】
本発明は、照明装置に接続された上記の交流発電機を備えていることを特徴とする電気調整システムを提供する。
【0014】
本発明は、電池に接続された上記の交流発電機を備えていることを特徴とする電気調整システムを提供する。
【0015】
本発明の前述及び他の目的、特徴及び利点を、添付図面を参照して本発明を限定するものではない特定の実施形態について以下に詳細に説明する。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】交流発電機の構成を示す斜視図である。
【図2】本発明の実施形態に係る交流発電機の構成を概略的に示す平面図である。
【図3】本発明の実施形態に係る交流発電機の構成を概略的に示す平面図である。
【図4】巻線が設けられていない状態の本発明の実施形態に係る交流発電機を示す斜視図である。
【図5】図4に示された交流発電機の横断面図である。
【図6】図4に示された交流発電機の縦断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
明瞭化のために、同一の要素は異なる図面において同一の参照番号で示されてあり、図面は正しい縮尺で示されていない。
【0018】
本発明は、特に軽量の交流発電機を得るために、ステータ巻線に関する鉄心を有さない交流発電機を提供する。
【0019】
鉄心を有さない交流発電機、一般的には発電機は、効率が不十分であると考えられている。実際には、鉄心の目的は、ロータが生成する磁場を適切に方向付けて、磁場をステータ巻線内で最大限に使用することにある。
【0020】
既に示したように、(電力が10ワット未満である)低電力の発電機では、効率が不十分であり、すなわち60%を上回ることはほとんどなく、場合によっては50%未満である。実際には、2個の同一の発電機を異なる寸法で比較したとき、より大きい発電機の巻線の抵抗がより低い一方、一ターン当りの電圧がより大きい。従って、銅損がより低い。更に、より大きい発電機の磁気回路の磁気抵抗(磁場による貫通を阻止する磁気回路の特性)はより低く、従って、磁場システムは所与の磁場強度(一般的には1テスラ程度)を得るのにより少数のアンペアターンしか必要としない。従って、より小さい発電機の回転速度が一般的により高くても、周速度、ひいては生成される電圧は低いままである。
【0021】
図1は、鉄心を有さない交流発電機の概略図である。ロータ1は、円柱状の永久磁石から形成されており、永久磁石の磁化方向は回転軸の方向と直交している。ロータ1は、少数のターン、例えば単一のターンから形成されたステータ巻線3内で回転する。このような交流発電機は、効率が非常に不十分であり非実用的な実験用であり、基本的には効率を高めることができないとみなされている。多数のターンを有する実証用の交流発電機は、十分な効率を得ることなく構成されている。
【0022】
この原理に基づく交流発電機が、ある条件下で、軽量である利点と高い効率とを有することをここで説明する。また前記交流発電機は、無負荷損が非常に低いという利点を有することも説明する。
【0023】
図2は、図1に示されたタイプの交流発電機を示す横断面図であり、ここでは巻線10は、複数ターンを並列に有して電気的に直列である。ロータ1の中心から巻線10の端までの角度として定義された二面角αを最適化する必要があることを説明する。実際には、この二面角αが過度に大きい場合、二面角αを2分割する軸12から最も離れた側方のターンは、有効磁場成分をほとんど捕捉せず、電圧の供給にほとんど寄与しない。しかしながら、他のターンと直列のこのような側方のターンの抵抗が、巻線の全抵抗に追加されて、銅損を増大させ、ひいては効率を低下させる。本発明者により行われた計測及びシミュレーションは、内部抵抗と生成電圧との最適な折衷案として、二面角αが、60°に近い値、例えば45°乃至75°の間で選択する必要があることを示している。中央部分のターンと比較すると、45°に配置されたターンが生成電圧に対して90%寄与して、75°に配置されたターンが生成電圧に対して90%寄与している。角度が大きくなるほど、ターンの寄与率は急激に低下する。
【0024】
更に、図3に示されているように、磁場を集束する鉄心が設けられていないにも関わらず、ロータが生成する回転磁場を可能な限り利用すべく、巻線を所与の径方向の距離に亘って延ばすことが望ましい。本発明者により行われた計測及びシミュレーションは、巻線の直列抵抗の値と、最大電圧の収集すなわち生成磁場の最大の使用との適切な折衷案は、永久磁石の表面から永久磁石の直径dの約四分の一乃至半分までの距離の範囲に巻線を径方向に延ばすことである。直径が18mmである円柱状の永久磁石の表面から1mm離れて計測した磁場が、磁極の正面で0.54テスラである。永久磁石の直径の四分の一の距離では、計測した磁場が0.25テスラであり、永久磁石の直径の半分の距離では、計測した磁場が0.11テスラである。
【0025】
上記の説明では、二極磁石、すなわち単一のN極及び単一のS極を有する磁石を検討している。実際には、本発明者は、四極磁石又は別の多極磁石の磁場における磁力線分布が、二極磁石の磁場における磁力線分布よりも鉄心を有さない状態で生成された磁場線の集束に関して更に不十分であることを示している。これは、鉄心を有する発電機での一般的な選択に反するものであり、一般的に多極磁場システム(例えば、磁石)を選択することにより効率が増大する。
【0026】
しかしながら、回転する磁石により放射される磁場を最適に利用するために、既に説明された巻線(コイル)が、限定された最適な角度の範囲に亘って設けられている場合、互いに角度をずらして多相交流発電機を構成する複数の同様の巻線を用いることが好ましい。最適な解決策は、以下に詳細に説明するように、3相電流を生成するために3本の巻線を配置することであり、各巻線は約60度の角度の範囲に亘って設けられている。尚、低電力の交流発電機に3相組立体を使用することは非常に例外的であり、3相組立体は通常1kWを上回る電力の発電機用に用いられている。
【0027】
図4、図5及び図6は、本発明の実施形態に係る交流発電機を示している。
【0028】
図4は、ステータ巻線が設けられていない状態のこのような交流発電機を示す斜視図である。図4は、ステータ巻線を受けるための筺体20を示している。この筺体20の周囲の空間を6つの領域に分割すべく、フィン22が設けられている。磁石は、図4には示されていないが、軸受26を設けたことにより筺体20内で回転する軸24に密に取り付けられている。
【0029】
図5は、軸24に直交する面に沿った断面図であり、軸24に取り付けられた磁石28を示している。筺体20のフィン22も示されている。3本の巻線30,32,34が、図1乃至図3に関連して説明したように巻かれてあり、3相交流発電機を構成している。各巻線30,32,34は、空間的に対向する領域を画定する一対のフィン間に巻かれている。
【0030】
図6の縦断面図では、図4及び図5と同一の参照符号が同一の要素に付与されている。軸受26が、図6に示されており、図6には更に、3相電力が利用可能な結線40,41,42が示されている。
【0031】
本出願人により行われた実験では、全体の直径が36mmであり、重量が60gであり、3,750rpmで回転するこのような交流発電機の無負荷損が、10.8Vの実効値の無負荷電圧に関して40ミリワットであることが示されている。この交流発電機は、1ワットの電力を90%の効率で供給し、3ワットの公称電力を75%の効率で供給することが可能である。このような3相交流電源は、直径が0.17mmであるエナメル絶縁線で300ターンを有する3本の巻線によって得られる。
【0032】
非常に低い無負荷損の値が、本発明の交流発電機の重要な利点である。実際に、無負荷損の値がこのように低いと、本発明に係る交流発電機は常時接続されたままであってもよく、従来の自転車用の交流発電機に必要である機械的な分離手段が不要である。一方、交流発電機は、(平坦な地面で適切な速度を維持すべく自転車の乗り手により与えられる作動力に対して僅かな)1ワットの電力で約90%の効率を有して略常時作動させてもよい。それにより、利用可能な電力が、例えば自転車を停止させるか又は非常に低速で走行するときに使用され得る電池を常時再充電するために用いられ得る。最大電力が、自転車の乗り手が照明装置又は他の電気器具の使用と望むときにのみ使用される。
【0033】
言うまでもなく、交流発電機は様々な周波数及び電圧で動作し、それが照明装置の電力供給に妨げとなることがある。照明強度が略一定であることが望まれている場合、電子調整手段が設けられる。
【0034】
交流発電機が、自転車用照明装置への特定の適用例に関して説明されているが、このような交流発電機は、プロペラ又はタービンで交流発電機の軸を駆動することにより、他の用途、例えばローラ、歩行器若しくは車椅子等の非モータ式陸上車両、又はグライダ、パラグライダ若しくは帆船等の非陸上車両に関連した他の用途に用いられてもよい。また、荷物用牽引車又は電子玩具類の保安灯として用いられてもよい。本発明の高性能且つ軽量な交流発電機による機械動力から電気動力への変換により、摩擦発電型電動車のようなある玩具の電池が制御され得る。熱利用模型玩具、無線操縦機又は熱機関型園芸工具の電子回路の電源、小型の高性能な風車としての使用、機械的に作動させる懐中電灯のための使用、携帯電話又は他の携帯機器のための予備充電器としての使用も可能である。
【0035】
更に、磁石は円柱状の磁石として説明されているが、他の任意の形状の磁石、例えば球状の磁石又は棒状の磁石も可能である。しかしながら、効率と機械的な簡易さとの理由から、円柱状の磁石が好ましい。
【0036】
更に、鉄心を設けない場合、交流発電機のコイル(巻線)の外側に回転磁場が残る。ある適用例では、外部シールドを設けてこのような磁場を遮蔽してもよい。この外部シールドを磁石に沿って回転させてもよい。
【0037】
言うまでもなく、本発明は、当業者に容易に考案される様々な変更、調整及び改良が行われることができる。このような変更、調整及び改良は本開示の一部であることを意図しており、本発明の趣旨及び範囲内であることを意図している。従って、前述の記載は単なる一例であり、本発明を限定することを意図していない。本発明は、以下の特許請求の範囲及びその均等物にのみ限定される。
【符号の説明】
【0038】
28 永久磁石
30,32,34 巻線

【特許請求の範囲】
【請求項1】
回転可能に組み立てられており、その磁化方向が回転軸に直交する永久磁石と、
該永久磁石を囲んで、前記回転軸から75度未満の二面角内で、前記永久磁石の外部から径方向に前記永久磁石の直径の四分の一乃至半分の距離分延びた範囲内に亘って前記回転軸を含む面に略平行な面に複数回巻かれてある鉄心無しの巻線と
を備えていることを特徴とする交流発電機。
【請求項2】
複数の前記巻線は、互いに角度をずらして配置されて多相電源を構成していることを特徴とする請求項1に記載の交流発電機。
【請求項3】
3本の前記巻線は、互いに60度ずらして配置されて3相電源を構成していることを特徴とする請求項1又は2に記載の交流発電機。
【請求項4】
前記永久磁石は柱状であることを特徴とする請求項1乃至3のいずれかに記載の交流発電機。
【請求項5】
照明装置に接続された請求項1乃至4のいずれかに記載の交流発電機を備えていることを特徴とする電気調整システム。
【請求項6】
電池に接続された請求項1乃至4のいずれかに記載の交流発電機を備えていることを特徴とする電気調整システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2011−125214(P2011−125214A)
【公開日】平成23年6月23日(2011.6.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−273950(P2010−273950)
【出願日】平成22年12月8日(2010.12.8)
【出願人】(507362786)コミサリア ア エナジー アトミック エ オックス エナジーズ オルタネティヴ (22)
【Fターム(参考)】